(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置およびこのようなアクチュエータ装置を運転する方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
F16K31/02 A
(21)【出願番号】P 2021512404
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2019071332
(87)【国際公開番号】W WO2020048723
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】102018214970.4
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519205132
【氏名又は名称】メティスモーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MetisMotion GmbH
【住所又は居所原語表記】Paulsdorfferstr. 36, Eingang C, 81549 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク バッハマイアー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゲアリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ツェルス
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-099780(JP,A)
【文献】特開昭61-290202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ装置(10)であって、
流体により付勢可能であり、これにより保持位置(H)に可動である少なくとも1つの被動要素(12)と、
交互に駆動制御可能であり、これにより前記流体を前記被動要素(12)に向かって搬送することができ、前記被動要素(12)を前記流体により付勢可能である少なくとも2つの固体アクチュエータ(20,22)と、
前記固体アクチュエータ(20,22)に共通の連結要素(28)と、
前記流体を前記被動要素(12)から排出可能な少なくとも1つの排出通路(34)と、
少なくとも1つの弁要素(36)であって、該弁要素(36)は、前記排出通路(34)を遮断する少なくとも1つの閉鎖状態であって、前記排出通路(34)を遮断して前記被動要素(12)を前記流体により前記保持位置(H)に保持することが可能な閉鎖状態と、前記排出通路(34)を解放する少なくとも1つの開放状態であって、前記弁要素(36)が、前記被動要素(12)から前記排出通路(34)を介して前記流体を排出させることを可能にし、これにより、前記保持位置(H)から少なくとも1つの退避位置(A)に前記被動要素(12)を移動させることを可能にする開放状態との間で位置変更可能であり、前記弁要素(36)は、前記連結要素(28)を介してそれぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)により前記固体アクチュエータ(20,22)のそれぞれの駆動制御によって操作可能であり、これにより前記閉鎖状態に移行可能である、弁要素(36)と、
を備える、アクチュエータ装置(10)。
【請求項2】
前記流体を収容し貯留する少なくとも1つのリザーバ(42)を備える、請求項1記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項3】
それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)に少なくとも1つの駆動要素(44,46)が割り当てられており、前記駆動要素(44,46)は、それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)によりそれぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)の駆動制御によって操作可能、特に可動であり、これにより前記流体を前記被動要素(12)に向かって搬送することができる、請求項1または2記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項4】
それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)のそれぞれの駆動制御に続く、それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)のそれぞれの期間中、前記流体は、前記リザーバ(42)からそれぞれの前記駆動要素(44,46)により吸引可能であり、それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)の、次に続く駆動制御によって、それぞれの前記駆動要素(44,46)により、それぞれの前記駆動要素(44,46)から前記被動要素(12)に向かって搬送可能である、請求項2を引用する請求項3記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項5】
前記駆動要素(44,46)のうちの第1の駆動要素は、前記第1の駆動要素(44)に割り当てられた前記固体アクチュエータ(20)の駆動制御に続く期間中、前記連結要素(28)を介して能動的に、第2の駆動要素(46)に割り当てられた前記固体アクチュエータ(22)により、前記第2の駆動要素(46)に割り当てられた前記固体アクチュエータ(22)の駆動制御の結果、前記第1の駆動要素(44)が前記流体を前記リザーバ(42)から吸引するように可動である、請求項4記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項6】
内部でそれぞれの前記駆動要素(44,46)が、それぞれ割り当てられた前記固体アクチュエータ(20,22)の駆動制御により可動となっている第1の領域(70)が、それぞれの前記駆動要素(44,46)に対して、かつ/または内部に前記固体アクチュエータ(20,22)が配置されている第2の領域(72)に対して、膜(68)、特に弾性変形可能なかつ/またはそれぞれの前記駆動要素(44,46)とともに可動の膜(68)により封止されている、請求項3から5までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項7】
前記連結要素(28)は、前記第1の領域(70)内に配置されている、請求項6記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項8】
前記連結要素(28)は、それぞれの前記駆動要素(44,46)のそれぞれの切欠き(74,76)に係合し、かつ/またはそれぞれの前記駆動要素(44,46)とともに可動である、請求項3から7までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項9】
前記駆動要素(44,46)は、前記流体を搬送するための、流体に関して有効なそれぞれの面について互いに異なっている、請求項3から8までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項10】
前記固体アクチュエータ(20,22)は、前記連結要素(28)を介して互いに連結されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項11】
前記連結要素(28)は、旋回軸線(30)回りに旋回可能なロッカとして形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項12】
電子式の計算装置(24)を備えており、該電子式の計算装置(24)は、前記固体アクチュエータ(20,22)を交互に駆動制御し、その結果、前記固体アクチュエータ(20,22)の一方の駆動制御時に、他方の前記アクチュエータ(22,20)の駆動制御を行わず、その逆もまた同様であるように形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項13】
前記計算装置(24)は、それぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)を正弦形の電流により駆動制御するように形成されており、前記固体アクチュエータ(20,22)を駆動制御する前記正弦形の電流は、180°互いに位相シフトされている、請求項12記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項14】
前記固体アクチュエータ(20,22)は、インバーから形成されたハウジング(32)内に配置されており、かつ/または前記固体アクチュエータ(20,22)は、そのそれぞれの機能原理について互いに異なっている、請求項1から13までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(10)。
【請求項15】
アクチュエータ装置(10)を運転する方法であって、前記アクチュエータ装置(10)は、
流体により付勢可能であり、これにより保持位置(H)に可動である少なくとも1つの被動要素(12)と、
交互に駆動制御され、これにより前記流体を前記被動要素(12)に向かって搬送し、前記被動要素(12)を前記流体により付勢する少なくとも1つの第1の固体アクチュエータ(20)および少なくとも1つの第2の固体アクチュエータ(22)と、
前記固体アクチュエータ(20,22)に共通の連結要素(28)と、
前記流体を前記被動要素(12)から排出可能な少なくとも1つの排出通路(34)と、
少なくとも1つの弁要素(36)であって、該弁要素(36)は、前記連結要素(28)を介してそれぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)によりそれぞれの前記固体アクチュエータ(20,22)のそれぞれの駆動制御によって操作され、これにより、前記排出通路(34)を遮断する閉鎖状態であって、前記排出通路(34)を遮断して前記被動要素(12)を前記流体により前記保持位置(H)に保持する閉鎖状態に移行され、前記弁要素(36)は、前記第1の固体アクチュエータ(20)の駆動制御も、前記第2の固体アクチュエータ(22)の駆動制御もともに行われないとき、前記閉鎖状態から、前記排出通路(34)を解放する開放状態であって、前記弁要素(36)が、前記被動要素(12)から前記排出通路(34)を介して前記流体を排出させることを可能にし、これにより、前記被動要素(12)が、前記保持位置(H)から少なくとも1つの退避位置(A)に移動する開放状態に位置変更する、弁要素(36)と、
を有する、
アクチュエータ装置(10)を運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置およびこのようなアクチュエータ装置を運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全が重要な多くの用途、例えばサーキットブレーカ、エレベータ、ロボット、搬送システム等において、例えば非常時にそれぞれのシステムをできる限り迅速に無力かつ/または無電圧に切り換え、かつ/または好適な制動によって迅速に停止状態に移行させるアクチュエータ、例えば安全スイッチ、クランプユニットおよび/またはブレーキが有利である。しばしば、それぞれのアクチュエータによりシステムの所望の状態を引き起こすために、すなわち、例えばシステムを無力かつ/または無電圧に切り換え、かつ/または制動するために、10ミリ秒未満の時間が要求される。所望の状態をそれぞれのアクチュエータによって迅速に設定することができるように、一方では、大きな力が必要である場合がある。他方では、しかし、アクチュエータの高い機能的な信頼性も期待されている。このことは、電圧供給の失陥時またはエレクトロニクスの故障時にそれぞれのアクチュエータが自ずと保安状態を占め、または安全な状態に切り換わることが望ましいことを意味している。
【0003】
制動、解放および/または切り換えは、通常、蓄力手段および/または相応の接触力の解放を介して実施される。このために必要な位置エネルギは、その際、スピンドルにより、かつ/または液圧シリンダおよび/または空気圧シリンダにより形成され、トリガユニットを介して解放またはリセットされる。それゆえ、力の発生は、大抵の場合、ポンプまたは電気モータにより、そしてリリースは、電気機械式のトリガユニットまたは弁により、別々に実施される。例えば機能的な信頼性に状態監視がいる場合、付加的にさらに力センサ、圧力センサおよび/または位置センサが有利である。さらに、より高い力の密度を有するシステムの場合、液圧コンポーネントまたは空気圧コンポーネントが必要である。しかし、このことは、様々な理由、特に媒体供給、保守の手間および高い所要組み付けスペースに関する理由から、システム上の欠点を必然的に伴うことがあり、または禁じられてしまうこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、本発明の課題は、アクチュエータ装置およびこのようなアクチュエータ装置を運転する方法を提供して、アクチュエータ装置または方法によりシステムまたは装置の所望の状態を迅速かつ確実にもたらすことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の合目的な発展形を含む有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の第1の態様は、アクチュエータ装置、特にシステムまたは装置用のアクチュエータ装置に関する。アクチュエータ装置により、例えばシステムの所望の、特に安全な状態を短時間で引き起こし、特に設定することができる。所望の状態を、本発明に係るアクチュエータ装置によって迅速にかつ特に確実に設定し、または引き起こすことができる。なぜなら、本発明に係るアクチュエータ装置自体の特に高い機能的な信頼性を実現できるからである。
【0007】
このために、本発明に係るアクチュエータ装置は、少なくとも1つの被動要素であって、流体、特に液体により付勢可能であり、これにより保持位置に可動であり、かつ例えば被動要素に作用するロードに抗して保持位置に保持可能、すなわち、保持され得る被動要素を備えている。したがって、アクチュエータ装置は、例えば被動要素を介して、ロードとは反対に作用する反力を提供することができ、これにより、例えば前述のシステムを、特にシステムが通常運転中にあり、機能不全がなければ、システムの第1の状態に保持することが可能である。
【0008】
言及したロードの例は、例えば、特に通常運転時に、システムの少なくとも1つの構成要素からアクチュエータ装置、特に被動要素に作用し得る力および/またはトルクおよび/またはその他の荷重である。システムが完成された状態で、システムは、アクチュエータ装置を有していることができる。換言すれば、システムが完成された状態で、本発明に係るアクチュエータ装置は、システムの構成部材であることができる。
【0009】
アクチュエータ装置は、さらに少なくとも2つの固体アクチュエータを備えている。例えば、固体アクチュエータの一方は第1の固体アクチュエータともいい、固体アクチュエータの他方は第2の固体アクチュエータともいう。固体アクチュエータは、交互に駆動制御可能であるまたは駆動制御される。固体アクチュエータの交互の駆動制御によって、固体アクチュエータにより流体は、被動要素に向かって搬送することができ、これにより被動要素は、流体により付勢可能であるかまたは付勢される。単にアクチュエータともいう固体アクチュエータが交互に駆動制御されることにより、例えばそれぞれの固体アクチュエータは、それ自体で見れば、駆動制御された状態と駆動制御されていない状態とを交互に繰り返す。これにより、それぞれのアクチュエータの作動期間と非作動期間とが連続して交番し、その結果、それぞれのアクチュエータのそれぞれの作動期間には、それぞれのアクチュエータのそれぞれの非作動期間が続く。作動期間の間または作動期間中、それぞれのアクチュエータは、駆動制御される。換言すれば、それぞれのアクチュエータのそれぞれの作動期間中またはそれぞれのアクチュエータのそれぞれの作動期間の間、それぞれのアクチュエータの駆動制御が実施され、それぞれの非作動期間中またはそれぞれの非作動期間の間、それぞれのアクチュエータの駆動制御は行われない。アクチュエータが交互に駆動制御されるので、例えば第1の固体アクチュエータがその作動期間にあるときは、第2の固体アクチュエータがその非作動期間にあり、第1の固体アクチュエータが非作動期間にあるときは、第2の固体アクチュエータがその作動期間にある。例示的に、それぞれのアクチュエータの、直接または間に何も介さずに連続する2つの作動期間の間には、それぞれのアクチュエータの正確に1つの非作動期間があり、それぞれのアクチュエータの、間に何も介さずにまたは直接連続する2つの非作動期間の間には、それぞれのアクチュエータの正確に1つの作動期間がある。2つの作動期間または非作動期間が間に何も介さずにまたは直接連続するという特徴は、間に何も介さずにまたは直接連続する2つの作動期間または非作動期間の間に、さらなる別の作動期間または非作動期間がないことと解すべきである。
【0010】
流体は、ガスであってもよい。しかし、好ましくは、流体は、液体、特に少なくとも実質的に非圧縮性の液体であり、その結果、被動要素は、例えば液圧式の被動要素または液圧式に操作可能もしくは運転可能な被動要素である。
【0011】
アクチュエータ装置は、さらに、固体アクチュエータに共通の連結要素と、流体を被動要素から排出可能な少なくとも1つの排出通路とを備えている。換言すれば、例えば被動要素を流体により付勢し、保持位置に移動させるかまたは保持位置に保持するために、それぞれのアクチュエータにより被動要素に向かって搬送されるかまたは搬送された流体を、被動要素から排出することができる。
【0012】
さらに、アクチュエータ装置は、例えばチェック弁として形成された少なくとも1つの弁要素であって、排出通路を遮断する少なくとも1つの閉鎖状態と、排出通路を解放する少なくとも1つの開放状態との間で位置変更可能な弁要素を備えている。このことは、閉鎖状態では、排出通路が弁要素により遮断、すなわち流れが遮断または閉鎖されており、その結果、排出通路が流体によって貫流され得ないことを意味している。しかし、開放状態では、弁要素が排出通路を解放し、その結果、開放状態では、流体が排出通路を通して貫流可能である。閉鎖状態は、例えば弁要素の少なくとも1つの閉鎖位置に対応し、開放状態は、例えば弁要素の少なくとも1つの開放位置に対応する。弁要素は、例えば、閉鎖位置と開放位置との間で、特に、例えば弁ハウジングともいうハウジングと、弁要素とを有する弁装置のハウジングに対して、可動、特に並進可動かつ/または回転可動である。
【0013】
閉鎖状態では、弁要素により引き起こされる排出通路の遮断下で、被動要素を流体により、特にロードに抗して保持位置に保持することができる。換言すれば、弁要素が閉鎖状態にあるとき、流体は、または過大な量の流体は、被動要素から流出または被動要素から排流できず、これにより被動要素は、被動要素を付勢するかまたは例えば被動要素内にある流体により保持位置に保持される。
【0014】
しかし、開放状態では、弁要素は、被動要素から排出通路を介して流体を排出させることを可能にし、これにより、保持位置から、保持位置とは異なる少なくとも1つの退避位置に被動要素を、例えばロードを受けて退避移動させることを可能にする。換言すれば、弁要素が排出通路を開放状態に解放するので、流体が、または閉鎖状態よりも多量の流体が、排出要素から流出または流去することができる。なぜなら、流体が排出通路を貫流することができるからである。続いて、被動要素は、もはや流体によってロードに抗して保持位置に保持されないので、被動要素は、ロードを受けて退避することができ、または退避し、特にロードにより保持位置から退避位置に移動させられる。換言すれば、被動要素は、弁要素の開放状態でロードを受けて退避し、これにより退避位置に移行することができる。これにより、例えば被動要素は、システムの前述の構成要素を、この構成要素が第1の状態で占める第1の位置から、この構成要素が例えば第1の状態とは異なる第2の状態で占める、第1の位置とは異なる第2の位置に移動させることを可能にする。したがって、アクチュエータ装置は、第1の状態から第2の状態にシステムを移行させることを可能にしまたは引き起こすことができる。換言すれば、本発明に係るアクチュエータ装置は、特に、閉鎖状態から開放状態への弁要素の位置変更を可能にし、または引き起こすことで、第1の状態から第2の状態へのシステムの切り換えを、迅速に、ロバストにかつ高い機能信頼性をもって引き起こすことができる。
【0015】
第2の状態は、例えば、システムが、無力かつ/または無電圧であり、かつ/または例えばシステムのエラーまたは故障に起因する結果を回避または少なくとも抑制することができるように制動されるエラー状態または安全状態である。
【0016】
その際、弁要素は、連結要素を介してそれぞれの固体アクチュエータにより固体アクチュエータのそれぞれの駆動制御によって操作可能であり、これにより閉鎖状態に移行可能である。例えば弁要素は、連結要素を介してそれぞれの固体アクチュエータにより固体アクチュエータのそれぞれの駆動制御によって操作可能であり、これにより閉鎖状態に移行可能であり、閉鎖状態に保持可能である。換言すれば、例えば本発明に係るアクチュエータ装置の初期状態では、第1の固体アクチュエータの駆動制御も、第2の固体アクチュエータの駆動制御も行われず、その結果、弁要素は、弁要素の初期状態から開放状態にある。そして固体アクチュエータが、説明したように交互に駆動制御され、特に電気的に駆動制御されると、弁要素は、開放状態から閉鎖状態に固体アクチュエータにより移行、特に移動させられ、例えば閉鎖状態に保持される。さらに、固体アクチュエータにより流体は、被動要素に向かって搬送、特に圧送され、これにより被動要素は、流体により付勢される。これにより例えば被動要素は、退避位置から保持位置に移動し、これにより例えば構成要素は、第2の位置から第1の位置に移動する。さらに、被動要素は保持位置に保持され、前述の構成要素も第1の位置に保持される。これにより、例えばシステムは、第1の状態に移行し、第1の状態に保持される。
【0017】
而して、例えば、第1の固体アクチュエータの駆動制御も、第2の固体アクチュエータの駆動制御もともに行われないことを結果的に招くエラー事象が生起すると、固体アクチュエータにより流体がもはや被動要素に向かって搬送されず、固体アクチュエータは、閉鎖状態から開放状態に弁要素を位置変更することを可能にする。前述したように、而して被動要素は、特にロード下で保持位置から退避位置に移動することができ、システムは、安全な第2の状態に至る。
【0018】
それぞれのアクチュエータのそれぞれの駆動制御により、それぞれのアクチュエータは、例えば変位され、すなわち変形され、その際、例えば拡大される。それぞれのアクチュエータのそれぞれの駆動制御により、例えばそれぞれのアクチュエータの完全な、またはしかし、半分だけの変位が引き起こされる。換言すれば、例えばそれぞれのアクチュエータは、それぞれの駆動制御により部分的にのみ、半分だけまたは完全に変位される。特に両固体アクチュエータが、部分的にのみ、特に半分だけ変位されるか、または固体アクチュエータの一方のみが、特に完全に変位されることが可能である。
【0019】
固体アクチュエータに含まれるのは、本発明の範囲内では、例えばポリマーアクチュエータ、ピエゾアクチュエータおよび形状記憶合金アクチュエータ、すなわち、少なくとも1種の形状記憶合金から形成されているかまたは少なくとも1種の形状記憶合金を含んでいるアクチュエータである。
【0020】
本発明の根底には、固体アクチュエータが一方では、高い機能的な信頼性を有し、他方では、極めて高い力の密度を有しているという認識がある。しかし、従来慣用の固体アクチュエータの1つの欠点は、例えば固体アクチュエータの駆動制御により固体アクチュエータが引き起こし得る変位が僅かにすぎないことである。駆動制御とは、例えば、それぞれの固体アクチュエータの駆動制御時に電気エネルギ、特に電圧がそれぞれの固体アクチュエータに印加され、またはそれぞれの固体アクチュエータへのこのような電圧の印加が、それぞれの駆動制御時に行われないことと解すべきである。したがって、例えばそれぞれの作動期間の間またはそれぞれの作動期間中は、それぞれの固体アクチュエータに電気エネルギ、特に電流がかかっているかまたは印加されるようになっている。したがって、例えばそれぞれの非作動期間中またはそれぞれの非作動期間の間は、それぞれの固体アクチュエータへの電気エネルギまたは電圧の印加が行われないようになっている。逆も同じく可能である。それぞれのアクチュエータの駆動制御により、それぞれのアクチュエータの変形、ひいては変位が引き起こされる。
【0021】
例えば僅かな変位または僅かな機械的エネルギの欠点を補償すべく、例えば電圧サイクルとしても形成される複数のサイクルにわたる、それぞれの固体アクチュエータの変位、ひいては蓄積される位置エネルギを積分するようになっていてもよい。しかし、解放は、通例、直接、すなわちマイグレーションなしに実施されなければならない。なぜなら、さもなければ高速または短時間での解放は、極めて困難にのみ実現可能となってしまうからである。
【0022】
本発明に係るアクチュエータ装置は、今や第1の状態から第2の状態へのシステムの移行の特に迅速な解放を可能にする。なぜなら、両固体アクチュエータが、これらの固体アクチュエータに共通の連結要素を介して、これらの固体アクチュエータに共通の弁要素に作用することができるからである。換言すれば、これにより、本発明に係るアクチュエータ装置は、システムを第1の状態から第2の状態への移行に関して特に迅速にまたは特に短時間で解放することを可能にし、その結果、例えば第1の状態から出発して、システムの特に安全な第2の状態を、特に迅速に、ひいては短時間で許可または設定することができる。
【0023】
換言すれば、本発明に係るアクチュエータ装置は、システムを短時間で、ひいては特に迅速に第1の状態から第2の状態に移行させ、またはこのような移行を引き起こすことを可能にする。第2の状態でシステムは、例えば無力かつ/または無電圧であり、かつ/またはシステムの制動が実施され、その結果、特に安全な状態を設定することができる。
【0024】
本発明に係るアクチュエータ装置の特に高い機能的な信頼性を実現すべく、本発明の一実施の形態では、アクチュエータ装置が、流体を収容し、貯留する少なくとも1つのリザーバを備えている。
【0025】
別の一実施の形態は、それぞれの固体アクチュエータに少なくとも1つまたは正確に1つの駆動要素が割り当てられており、駆動要素は、それぞれの固体アクチュエータにより、かつそれぞれの固体アクチュエータの駆動制御によって操作可能、特に可動であり、これにより流体を、それぞれの駆動要素により被動要素とともに搬送できることを特徴とする。これにより、例えば被動要素を、特に高いロードに抗しても保持位置に移動させ、または保持位置に保持することができ、その結果、アクチュエータ装置の特に高い機能的な信頼性が具現可能である。
【0026】
リザーバは、例えばアクチュエータに対して付加的に、駆動要素に対して付加的にかつ被動要素に対して付加的に設けられており、その結果、特に安全な運転を保証できる。
【0027】
本発明の特に有利な一実施の形態では、それぞれの固体アクチュエータのそれぞれの駆動制御に続く、それぞれの固体アクチュエータのそれぞれの非作動期間中、流体は、リザーバから駆動要素により吸引可能であり、それぞれの固体アクチュエータの、次に続く駆動制御によって、すなわち、それぞれの固体アクチュエータのそれぞれの作動期間中、駆動要素によりそれぞれの駆動要素から被動要素に向かって搬送可能である。これにより、例えばアクチュエータは、そしてアクチュエータとともに駆動要素は、特に迅速にそれぞれの作動期間と、それぞれの非作動期間との間で切り換え可能である。なぜなら、例えば過剰な負圧がそれぞれの駆動要素内に生じることを回避できるからである。
【0028】
排出通路は、例えば流体に関してリザーバに接続されているかまたはリザーバに開口しているので、例えば、排出通路の解放下で被動要素から流去または流出する流体をリザーバ内に流動させ、ひいてはリザーバ内に集めて貯留することができる。
【0029】
別の一実施の形態は、駆動要素のうちの第1の駆動要素が、第1の駆動要素に割り当てられた固体アクチュエータの駆動制御に続く非作動期間中、連結要素を介して能動的に、第2の駆動要素に割り当てられた固体アクチュエータにより、第2の駆動要素に割り当てられた固体アクチュエータの駆動制御の結果、第1の駆動要素が流体をリザーバから吸引するように可動であるかまたは移動されることを特徴とする。例えば、第1の駆動要素には第1の固体アクチュエータが割り当てられており、第2の駆動要素には第2の固体アクチュエータが割り当てられている。第2の固体アクチュエータ、または第2の固体アクチュエータの駆動制御は、第1の駆動要素が連結要素を介して第2の固体アクチュエータによって移動され、これにより第1の駆動要素が流体をリザーバから吸引することを引き起こす。これに応じて、例えば第1の固体アクチュエータ、または第1の固体アクチュエータの駆動制御は、第2の駆動要素が連結要素を介して第1の固体アクチュエータにより移動され、これにより第2の駆動要素が流体をリザーバから吸引することを引き起こす。例えば、第1の駆動要素が流体をリザーバから吸引している間、第2の駆動要素は、流体を第2の駆動要素から被動要素に向かって搬送する。反対に、例えば第2の駆動要素が流体をリザーバから吸引しているとき、第1の駆動要素は、流体を第1の駆動要素から被動要素に向かって搬送するようになっている。これにより、システムを特にロバストに第1の状態に保持することができる。同時に、第1の状態から第2の状態へのシステムの特に迅速な移行を可能にしまたは引き起こすことができる。
【0030】
それぞれの駆動要素は、例えば、特にそれぞれの駆動ハウジングに対して並進的に可動、特に移動方向に沿って可動である。その際、それぞれの駆動要素は、例えばピストンとして形成されていることができ、それぞれの駆動要素は、例えば、内部に駆動要素が可動に配置されていることができるそれぞれのシリンダまたはそれぞれの収容室を画定している。
【0031】
本発明の特に有利な一実施の形態では、内部でそれぞれの駆動要素が、それぞれ割り当てられた固体アクチュエータの駆動制御により特に並進的に可動となっている第1の領域が、それぞれの駆動要素に対して、かつ/または内部に固体アクチュエータが配置されている第2の領域に対して、膜、特に弾性変形可能な、かつそれぞれの駆動要素とともに可動の膜により封止されている。これにより、アクチュエータ装置の特に高い機能的な信頼性を保証することができる。
【0032】
その際、連結要素が、第1の領域内に配置されていると、特に有利であることがわかっている。これにより、第1の状態から第2の状態への特に迅速な移行を保証することができる。
【0033】
アクチュエータ装置の特に高い機能的な信頼性を保証することができるように、本発明の別の構成では、連結要素が、それぞれの駆動要素のそれぞれの切欠きに係合するようになっている。代替的または付加的に、連結要素は、それぞれの駆動要素とともに可動であるようになっている。
【0034】
駆動要素が、例えば液体として形成される流体を搬送するための、流体に関して有効、特に液圧的に有効なそれぞれの面について互いに異なっていると、さらに特に有利であることがわかっている。流体に関して有効な面は、例えば移動方向に対して垂直に延び、その結果、流体に向かう駆動要素の移動により面を介してそれぞれの駆動要素から力または圧力が流体に及ぼされるか、または及ぼされることができ、この力または圧力によって流体は搬送される。
【0035】
一方の面は第1の値を有し、他方の面は、第1の値よりも大きなまたは小さな値を有している。したがって、第2の面は、前述の一方の面よりも大きいまたは小さい。例えば、前述の一方の面が前述の他方の面よりも大きければ、前述の一方の面を有する駆動要素により、流体を大きな力で搬送することができる。特に、流体を、前述の一方の面を有する駆動要素により、前述の他方の面を有する駆動要素によるよりも大きな力で、しかし、より低い速度で搬送することができる。これに対して、前述の他方の面を有する駆動要素により、流体を、特に迅速に、または前述の一方の面を有する駆動要素によるよりも迅速に、しかし、より小さな力で搬送することができる。これにより、流体を特に需要に応じて搬送することができる。
【0036】
本発明の特に有利な一実施の形態では、固体アクチュエータが連結要素を介して互いに連結されている。これにより例えば、弁要素が、アクチュエータのうちの一方のアクチュエータにより閉鎖状態に保持される一方、それぞれ他方のアクチュエータがその非作動期間にあり、その間、例えば前述の一方のアクチュエータがその作動期間にある(その逆も同様である)ことを保証できる。これにより、本発明に係るアクチュエータ装置の特に高い機能的な信頼性を保証することができる。
【0037】
固体アクチュエータが、連結要素を介してかつ駆動要素を介して互いに連結されていると、さらに特に有利であることがわかっている。これにより、特に組み付けスペースにとって有利な構造を保証することができ、その結果、特に高い機能的な信頼性を実現できる。
【0038】
さらに、固体アクチュエータが、連結要素を介してかつ駆動要素の迂回下で互いに連結されていることが可能である。これにより、アクチュエータは、特に迅速にそれぞれの作動期間とそれぞれの非作動期間との間で交番することができる。
【0039】
本発明の別の構成では、アクチュエータ装置は、制御ユニット、制御器または制御装置ともいう電子式の計算装置を備えており、電子式の計算装置は、固体アクチュエータを交互に駆動制御し、その結果、固体アクチュエータの一方の駆動制御時、それぞれ他方のアクチュエータの駆動制御を行わず、その逆もまた同様であるように形成されている。これにより、固体アクチュエータは、流体を被動要素に向かって搬送、特に圧送すべく、ひいては、被動要素を特にロードに抗して保持位置に保持すべく、ポンプとして作業することができる。同時に、その作動期間中にあるそれぞれの固体アクチュエータは、弁要素を閉鎖状態に保持することができる一方、それぞれ他方の固体アクチュエータは、その非作動期間中にある。したがって、閉鎖状態から開放状態への弁要素の望ましくない位置変更を効果的に防止することができる。
【0040】
別の一実施の形態は、計算装置が、それぞれの固体アクチュエータを正弦形の電流により駆動制御するように形成されており、固体アクチュエータを駆動制御する正弦形の電流は、180度互いに位相シフトされていることを特徴とする。これにより、特に簡単な、エネルギ面で効率的なかつロバストな駆動制御を保証することができ、その結果、本発明に係るアクチュエータ装置の特に高いロバスト性が具現可能である。
【0041】
好ましくは、正弦形の電流は、任意の角度量の分だけ互いに位相シフトされており、角度量は、360度を固体アクチュエータの数で割ったものに相当している。換言すれば、角度量は、360度を固体アクチュエータの数で割ることで得られる。したがって、アクチュエータ装置が、前述の固体アクチュエータの形態の正確に2つの固体アクチュエータを有している場合、角度量は180度である。アクチュエータ装置が例えば正確に3つの固体アクチュエータを有している場合、角度量は120度である。アクチュエータ装置が例えば正確に4つの固体アクチュエータを有している場合、角度量は90度である。
【0042】
本発明の特に有利な一実施の形態では、それぞれの固体アクチュエータは、圧電式のアクチュエータとして形成されており、これにより、アクチュエータ装置の特に高いロバスト性、ひいては高い機能的な信頼性を保証することができる。
【0043】
例えば、温度に起因した望ましくないアクチュエータの変形および/または弁要素の位置変更を回避することができるように、固体アクチュエータが、インバーから形成されたアクチュエータハウジングともいうハウジング内に配置されていると、有利であることがわかっている。インバーとは、例えば鉄-ニッケル-合金であるか、またはこのような鉄-ニッケル-合金を少なくとも含む材料または素材と解すべきである。特にインバーとは、極めて低い熱膨張係数を有する鉄-ニッケル-合金と解すべきである。インバーは、例えば64体積パーセントまたは質量パーセントの鉄と、36体積パーセントまたは質量パーセントのニッケルとを含んでいる。インバーの別の称呼は、例えばインバー36、Nilo Alloy 36、Nilvar、NS 36、パーマロイD、Radiometal 36またはVacodil 36である。インバーは、例えば素材番号1.3912を有している。特にインバーは、65質量パーセントまたは体積パーセントの鉄と、35体積パーセントまたは質量パーセントのニッケルとを含んでいてもよい。特に、インバーは、33質量パーセントまたは体積パーセント以上、36質量パーセントまたは体積パーセント以下の範囲内にあるニッケルと、62質量パーセントまたは体積パーセント以上、65質量パーセントまたは体積パーセント以下の範囲内にある鉄とを含んでいることが可能である。さらにインバーは、4質量パーセントまたは体積パーセント以上、5質量パーセントまたは体積パーセント以下の範囲内にあるコバルトを含んでいてもよい。
【0044】
例えば特に高い出力が予定されているか、または必要である場合、アクチュエータ装置は、特に簡単にさらなる固体アクチュエータにより拡張することができ、その結果、アクチュエータ装置は、2つより多くの固体アクチュエータを何ら問題なく有していることができる。固体アクチュエータをインバーからなるハウジング内に配置したことで、アクチュエータ装置の少なくとも略一定のかつ一定して高い性能を、特に少なくとも実質的に温度影響に依存して実現することができる。このことは、特にアクチュエータ装置をブレーキシステム内でまたはブレーキシステムのために使用したとき、有利であることがわかっている。なぜなら、従来は、まさにブレーキシステムにおいて、使用、ひいては加熱に依存せずに、不変の応答時間および力を保証することが、困難であったからである。このことは、本発明に係るアクチュエータ装置を使用することで今や可能である。
【0045】
本発明に係るアクチュエータ装置の1つの大きな利点は、安全システムの徹底した電化を実現し得る可能性にある。換言すれば、本発明に係るアクチュエータ装置は、特に有利には、安全システムのために実現することができ、これにより、安全な第2の状態を迅速かつロバストにもたらすことができる。従来慣用の装置と比較して、空気圧式および/または液圧式のコンポーネントの省略が可能であり、デザインにおけるより高い柔軟性が実現される。さらに、コストおよび重量を削減し得ると同時に、アクチュエータ装置のより良好な閉ループおよび/または開ループ制御可能性が得られる。さらに、状態監視用の付加的なセンサを完全に省略することが可能である。さらに、連結要素を介したアクチュエータの連結により、例えば切り換え弁として機能する弁要素の使用下で、1ミリ秒を下回るまでの、排出通路を解放する切り換え時間を実現することができ、このことは、特に安全用途にとって有利である。これほどまでに短い切り換え時間は、これまで機械的なシステムでは実現することができなかった。排出通路の解放、すなわち、閉鎖状態から開放状態への弁要素の切り換え、位置変更または移行は、例えばアクチュエータ装置の開放である。なぜなら、排出通路の解放により、流体が、または第1の状態から第2の状態へのシステムの移行が可能となるかもしくは引き起こされるに十分に大量の流体が、被動要素から特にロードの作用下で排出され、これは極めて短時間、すなわち高速でなされるからである。
【0046】
最後に、固体アクチュエータがそのそれぞれの機能原理について互いに異なっていると、有利であることがわかっている。このことは、一方のアクチュエータが、第1の種類の固体アクチュエータであり、他方のアクチュエータが、第1の種類とは異なる第2の種類の固体アクチュエータであることを意味している。例えば、一方のアクチュエータがピエゾアクチュエータであるとき、第2のアクチュエータは、例えば形状記憶合金アクチュエータまたはポリマーアクチュエータである。これにより、流体を特に有利に搬送することができる。
【0047】
本発明の第2の態様は、アクチュエータ装置、特に本発明に係るアクチュエータ装置を運転する方法に関する。アクチュエータ装置は、本発明の第2の態様では、流体、特に液体により付勢可能であり、これにより保持位置に可動であり、例えば被動要素に作用するロードに抗して保持位置に保持可能である少なくとも1つの被動要素を備えている。本発明の第2の態様では、アクチュエータ装置は、交互に特に電子式の計算装置により駆動制御され、これにより流体を被動要素に向かって搬送し、被動要素を流体により付勢する少なくとも1つの第1の固体アクチュエータおよび少なくとも1つの第2の固体アクチュエータを備えている。本発明の第2の態様では、アクチュエータ装置は、固体アクチュエータに共通の連結要素を、流体を被動要素から排出可能な少なくとも1つの排出通路とともに備えている。さらにアクチュエータ装置は、本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つの弁要素であって、弁要素は、連結要素を介してそれぞれの固体アクチュエータによりそれぞれの固体アクチュエータのそれぞれの駆動制御によって操作され、これにより、排出通路を遮断する閉鎖状態であって、排出通路を遮断して被動要素を流体により特にロードに抗して保持位置に保持する閉鎖状態に移行され、閉鎖状態に保持される、弁要素を備えている。
【0048】
弁要素は、第1の固体アクチュエータの駆動制御も、第2の固体アクチュエータの駆動制御もともに行われないとき、閉鎖状態から、排出通路を解放する開放状態であって、弁要素が、被動要素から排出通路内に流体を排出させることを可能にし、または流体の少なくとも一部が、排出通路を介して被動要素から排出される開放状態に位置変更する。これにより、被動要素はロードを受けて退避し、保持位置から、保持位置とは異なる少なくとも1つの退避位置に移動し、被動要素は、例えば保持位置から退避位置に並進移動かつ/または回転移動する。本発明の第1の態様の利点および有利な構成は、本発明の第2の態様の利点および有利な構成と見なすことができ、その逆もまた同様である。
【0049】
被動要素が保持位置から退避位置に移動するという特徴は、被動要素が、特に被動要素に作用するロードにより、保持位置から退避位置に移動することと解することができる。したがって、例えば閉鎖状態から開放状態への弁要素の位置変更は、保持位置から退避位置に被動要素を移動させることを可能にする。さらに、被動要素が保持位置から退避位置に移動するという特徴は、被動要素の少なくとも一部または部分領域が保持位置から退避位置に移動することと解することができる。
【0050】
本発明に係るアクチュエータ装置および/または本発明に係る方法は、特に有利には自動車のトランスミッションのパーキングロックのために使用することができる。換言すれば、例えば前述のシステムは、自動車のトランスミッションのパーキングロックとして形成されている。トランスミッションは、例えば少なくとも1つの軸を有し、軸は、自動車の少なくとも1つまたは複数のホイールに連結可能であり、または連結されており、その結果、少なくとも1つのホイールは、軸により駆動可能であり、その逆もまた同様である。少なくとも1つのホイールを介して、自動車は、車両高さ方向下向きに地面に支持されている。基本的に軸は、回転軸線回りにトランスミッションのハウジングに対して回転可能であり、軸は、例えば少なくとも部分的にハウジング内に収容されている。
【0051】
パーキングロックは、その際、相対回動不能に軸に結合されるロックホイールを有し、ロックホイールは、少なくとも1つまたは複数の切欠きを有している。切欠きは、例えば歯列により形成され、ロックホイールの周方向で歯列のそれぞれの歯間に配置されている。ロックホイールは、軸とは別体に形成され、相対回動不能に軸に結合される部品であることができ、またはロックホイールは、軸と一体に形成されている。
【0052】
パーキングロックは、さらにロックポールを有し、ロックポールは、特にハウジングに対してかつ/または軸に対して少なくとも1つのロック位置と、少なくとも1つの解除位置との間で可動、特に旋回可能である。例えばロックポールは、少なくとも間に何かを介してハウジングに保持されている。
【0053】
ロック位置でロックポールは、ロックポールが切欠きにまたは複数ある切欠きの1つに係合することにより、形状結合式にロックホイールと協働する。これにより、ロックホイールと、相対回動不能にロックホイールに結合された軸とは、ロックポールを介して、回転軸線回りにハウジングに対して実施される回転に抗して回り止めされている。これにより、軸はハウジングに対して回転することができず、その結果、ホイールも回転することができない。これにより、例えば傾斜地に停められた自動車の望ましくない転走が防止されている。
【0054】
アクチュエータ装置は、而して例えばロックポールを流体の搬送によりロック位置から解除位置に移動させるために形成されている。換言すれば、保持位置への被動要素の移動により、例えばロックポールは解除位置に移動する。保持位置から退避位置への被動要素の移動を可能にすることで、例えばアクチュエータ装置は、解除位置からロック位置へのロックポールの移動を可能にし、または保持位置から退避位置への被動要素の移動を可能にすることで、例えばアクチュエータ装置は、解除位置からロック位置へのロックポールの移動を引き起こす。例えば、少なくとも1つのばねが設けられており、ばねは、少なくとも解除位置で付勢されていて、これにより少なくとも解除位置でばね力を用意し、このばね力は、少なくとも間に何かを介してロックポールに作用する。
【0055】
アクチュエータ装置は、これによりロックポールをばね力に抗して解除位置に移動させ、かつ/または解除位置に保持することができる。退避位置への被動要素の移動が許可されると、ばねが少なくとも部分的に弛緩されることが許可される。これによりロックポールは、特に迅速にばね力によりロック位置に移動する。代替的または付加的に、例えば被動要素は、ばね力により退避位置に移動させられ、またはばね力は、退避位置への被動要素の移動を助けることができる。アクチュエータ装置は、これにより一方では、ロックポールを需要に応じてかつ十分迅速に解除位置に移動させることを可能にする。さらにアクチュエータ装置は、ロック位置へのロックポールの特に迅速な移動を引き起こすか、または可能にすることができる。
【0056】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の以下の説明から、かつ図面を基に看取可能である。以上の説明の中で言及した特徴および特徴組み合わせ、ならびに以下の図面の説明の中で言及するかつ/または図面にのみ示す特徴および特徴組み合わせは、それぞれ明示の組み合わせに限らず、本発明の範囲を逸脱することなく、別の組み合わせまたは単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明に係るアクチュエータ装置、特にシステム、例えばブレーキシステム用のアクチュエータ装置の第1の実施の形態の概略図である。
【
図2】アクチュエータ装置の第2の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図中、同じまたは機能同一の要素には、同じ符号を付した。
【0059】
図1は、概略図で、全体に符号10を付したアクチュエータ装置を示しており、アクチュエータ装置は、例えば任意のシステムにおいてまたは任意のシステムのために使用される。このシステムは、特に安全システムである。言及したシステムは、例えば、特にシステムの第1の状態でロードを提供し、アクチュエータ装置10に作用させる少なくとも1つの構成要素を有している。このロードは、
図1に、力の矢印ともいう矢印Fにより示してある。システムは、例えばシステムの通常運転中、第1の状態を占め、システムは、通常運転中、エラーまたは故障を有しない。第1の状態でシステムには、例えばテンションおよび/または力がかかっており、または第1の状態でシステムの制動は、行われない。
【0060】
アクチュエータ装置10は、少なくとも1つまたは正確に1つの被動要素12を備えており、被動要素12は、例えば言及した構成要素に連結されているか、または連結可能である。したがって、この構成要素は、矢印Fにより示され、例えば力として形成されるロードを被動要素12に対して作用させる。被動要素12は、例えばベローズである。代替的または付加的に、被動要素12は、例えば少なくとも1つまたは正確に1つのチャンバ14を有しており、チャンバ14には、流体、特に液体が供給可能である。このことは、流体を例えばチャンバ14内に導入し、かつチャンバ14から導出またはチャンバ14から排出できることを意味している。チャンバ14内への流体の導入により、被動要素12は、流体によって付勢される。被動要素12の少なくとも1つの部分領域(部分ともいう)16は、チャンバ14を少なくとも部分的に画定し、その結果、少なくとも部分領域16は、流体によって付勢可能、特に、流体がチャンバ14内に導入または供給されることによって付勢可能である。
【0061】
したがって、被動要素12、特に部分領域16は、流体によって付勢可能であり、これにより、
図1に示す保持位置Hに可動であり、例えばロードに抗して保持位置に保持可能である。
【0062】
例えば、流体がチャンバ14から排出され、その結果、流体が被動要素12または部分領域16から排出されると、部分領域16または被動要素12は、ロードを受けて退避またはロードに負けて移動することができ、これにより、部分領域16または被動要素12は、保持位置Hから、例えば破線で示した退避位置Aに、特に並進的に移動する。したがって、部分領域16は、例えば、
図1に双方向矢印18によって示す移動方向に沿って、特に並進的に保持位置Hと退避位置Aとの間で可動である。
【0063】
アクチュエータ装置10は、少なくとも1つの第1の固体アクチュエータ20と、少なくとも1つの第2の固体アクチュエータ22とを備えている。固体アクチュエータ20および22は、単にアクチュエータともいい、例えば圧電式のアクチュエータとして形成されている。したがって、それぞれのアクチュエータは、例えばピエゾアクチュエータともいう。アクチュエータ装置10を運転する方法の範囲内で、アクチュエータは、交互に、アクチュエータ装置10の、
図1に特に概略的に示す電子式の計算装置24により駆動制御され、これにより流体は、それぞれのアクチュエータにより被動要素12に向かって、かつその際に例えばチャンバ14内に搬送、特に圧送される。これにより、被動要素12、特に部分領域16は、流体によって付勢される。それぞれの固体アクチュエータ20または22は、ピエゾアクチュエータとして形成されていてもよいし、ポリマーアクチュエータとして形成されていてもよいし、または、形状記憶合金アクチュエータ、すなわち少なくとも1種の形状記憶合金を有しており、流体を搬送するために使用するアクチュエータとして形成されていてもよい。
【0064】
駆動制御の範囲内で、例えば電気エネルギ、特に電流または電圧が、それぞれのアクチュエータに印加される。それぞれのアクチュエータが交互に駆動制御されることにより、それぞれのアクチュエータの非作動期間と作動期間とが連続して交互に現れ、それぞれのアクチュエータのそれぞれの作動期間の間または作動期間中、それぞれのアクチュエータの駆動制御が実施され、またはそれぞれのアクチュエータが駆動制御される。それぞれのアクチュエータのそれぞれの非作動期間中または非作動期間の間、それぞれのアクチュエータの前述のまたは任意の駆動制御は行われない。それぞれのアクチュエータの駆動制御により、それぞれのアクチュエータの変形が引き起こされ、特に変形は、
図1に双方向矢印26によって示す変形方向に沿ってそれぞれのアクチュエータの変形が生じるようになされる。例えば、それぞれのアクチュエータは、それぞれのアクチュエータの駆動制御により変形方向に沿って拡大され、その結果、それぞれのアクチュエータの駆動制御により、それぞれのアクチュエータの、変形方向に沿った伸長が引き起こされる。それぞれのアクチュエータの駆動制御の終了により、例えば変形方向に沿ったそれぞれのアクチュエータの短縮が生じる。
【0065】
アクチュエータ装置10は、さらに、固体アクチュエータ20および22に共通の連結要素28を備えており、連結要素28は、例えば、旋回軸線30回りに旋回可能な、特に、
図1に特に概略的に示すハウジング32に対して旋回可能なロッカとして形成されている。さらに、例えば連結要素30、ひいては旋回軸線30は、変形方向に沿って並進的に、特にハウジング32に対して移動可能である。アクチュエータは、例えば、アクチュエータハウジングともいうハウジング32内に少なくとも部分的に、特に少なくとも大部分または完全に収容されている。それぞれのアクチュエータは、一方では、少なくとも、間に何かを介して、特に直接、ハウジング32に支持されている。他方では、それぞれのアクチュエータは、連結要素28に、そして連結要素28を介してそれぞれ他方のアクチュエータに連結されている。
【0066】
アクチュエータ装置10は、さらに、少なくとも1つの排出通路34を備えており、排出通路34を介して流体は、チャンバ14から、ひいては被動要素12、特に部分領域16から排出可能である。したがって、例えば当初チャンバ14内に収容されていた流体が、排出通路34を介してチャンバ14から排出されると、これにより部分領域16は、ロードにより保持位置Hから退避位置Aに移動可能である。
【0067】
さらに、アクチュエータ装置10は、例えば玉として形成される弁要素36を備えており、弁要素36は、ここではチェック弁38の構成部材である。チェック弁38は、排出通路34内に配置されており、弁要素36と、対応する第2の弁要素40とを有している。この弁要素40は、例えば弁要素36のための弁座を形成している。弁要素36は、特に変形方向に沿ってかつ/または並進的に、弁要素40に対してかつ/またはハウジング32に対して、排出通路34を解放する少なくとも1つの開放位置と、排出通路34の流れを遮断する少なくとも1つの閉鎖位置との間で可動である。閉鎖位置で弁要素36は、弁要素40により形成される対応する弁座に着座する。弁要素36が閉鎖位置にあるとき、弁要素36は閉鎖状態にある。弁要素36が開放位置にあるとき、弁要素36は開放状態にある。弁要素36も、連結要素28に連結されており、ひいては連結要素28を介してアクチュエータに連結されている。
【0068】
閉鎖状態または閉鎖位置では、弁要素36により排出通路34の遮断が引き起こされ、被動要素12、特に部分領域16は、チャンバ14内にある流体により保持位置Hに保持される。開放状態または開放位置では、弁要素36は、流体を被動要素12またはチャンバ14、ひいては部分領域16から排出通路34を介して排出させることを可能にし、これにより弁要素36は、被動要素12または部分領域16を保持位置Hから退避位置Aに移動させることを可能にする。その際、弁要素36は、連結要素28を介してそれぞれの固体アクチュエータ20または22により、それぞれの固体アクチュエータ20または22のそれぞれの駆動制御によって操作可能であり、これにより閉鎖状態に移行可能であるかまたは閉鎖位置に移動可能であり、弁要素36を閉鎖状態または閉鎖位置に保持することができる。
【0069】
アクチュエータ装置10は、さらに、流体を収容し、貯留する少なくとも1つのリザーバ42を備えている。特に、リザーバ42に作用し、
図1に矢印F2により示す荷重が入力されると、例えばベローズとして形成されたリザーバ42は、当初リザーバ42内に収容されていた流体を提供することができる。好ましくは、流体は液体であり、したがってアクチュエータ装置10は、液圧式のアクチュエータ装置であってよい。
【0070】
さらに、第1の固体アクチュエータ20には、例えばピストンとして形成された第1の駆動要素44が割り当てられており、第2の固体アクチュエータ22には、例えばピストンとして形成された第2の駆動要素46が割り当てられている。それぞれの駆動要素44または46は、例えば変形方向に沿って、特に並進的に可動である。ピストンは、例えば駆動ハウジング48または50内に並進的に可動に収容されている。例えば、それぞれの固体アクチュエータ20または22が駆動制御されると、これによりそれぞれのピストンは、例えば、変形方向と一致する第1の摺動方向で、特に駆動ハウジング48または50に対して摺動する。これにより流体は、駆動ハウジング48または50から搬出され、被動要素12に向かって、かつその際にチャンバ14内に搬送される。これにより、例えば部分領域16は、流体により付勢される。それぞれのアクチュエータのそれぞれの非作動期間時、それぞれのアクチュエータの短縮が生じると、それぞれの駆動要素44または46は、第1の摺動方向とは反対の、変形方向と一致する第2の摺動方向で、駆動ハウジング48または50に対して移動する。これにより、例えばそれぞれの管路52または54を介して流体が、リザーバ42からそれぞれの駆動要素44または46により吸引され、それぞれの駆動ハウジング48および50内に吸入される。第1の摺動方向でのそれぞれの駆動要素44または46の移動時、流体は、それぞれの駆動ハウジング48または50からそれぞれの管路56または58内に流動し、管路56または58を通して流体は、それぞれの駆動ハウジング48または50から被動要素12に向かって、かつその際に例えばチャンバ14内に導かれる。全体として、それぞれの駆動要素44または46が、それぞれのアクチュエータの駆動制御により、かつその際にそれぞれのアクチュエータ自体によって操作可能、特に可動であり、これにより流体を、それぞれの駆動要素44または46から被動要素12に向かって搬送することができ、または搬送することが看取可能である。
【0071】
第1の状態の間、アクチュエータは、交互に駆動制御されるので、例えば固体アクチュエータ20がその作動期間にある間、固体アクチュエータ22は、その非作動期間にあり、例えば固体アクチュエータ22がその作動期間にある間、固体アクチュエータ20は、非作動期間にある。これにより、弁要素36は、システムの第1の状態では、閉鎖状態に保持され、部分領域16は、保持位置Hに保持される。
【0072】
そして、かつ好ましくは、固体アクチュエータ20の駆動制御も、固体アクチュエータ22の駆動制御もともに行われないときだけ、弁要素36は、特に弁要素36に作用する流体の圧力により、閉鎖位置から開放位置に移動し、これにより部分領域は、保持位置Hから退避位置Aに移動する。続いて、システムは、例えば無電圧かつ/または無力に切り換えられ、かつ/またはシステムは、制動される。
【0073】
前述の、弁要素36に作用する流体の圧力は、例えば、矢印Fにより示すロードが、部分領域16を介して、チャンバ14内に収容された流体に作用して、この流体が、例えば排出通路34、例えば排出管路として形成された排出通路34を介して弁要素36に作用し得ることから生じる。したがって、例えばアクチュエータの交互の駆動制御によって、弁要素36を、ロードに抗して閉鎖位置に保持することができる。固体アクチュエータ20の駆動制御と、固体アクチュエータ22の駆動制御とがともに行われないとき、弁要素36は、そして部分領域16も、ロードを受けて退避し、開放位置または初期位置Aに移動することができる。
【0074】
図1からは、管路52内にチェック弁60が配置されており、チェック弁60は、駆動要素44または駆動ハウジング48に向かって開弁し、反対方向で閉弁することが看取可能である。これにより、駆動要素44は、第2の摺動方向で移動するとき、流体をリザーバ42から管路52を介して吸引することができる。管路54内には、チェック弁62が配置されており、チェック弁62は、駆動要素46または駆動ハウジング50に向かって開弁し、反対方向で閉弁する。これにより、駆動要素46は、第2の摺動方向で移動するとき、流体をリザーバ42から管路54とチェック弁62とを介して吸引することができる。
【0075】
管路56内にはチェック弁64が配置されており、チェック弁64は、被動要素12に向かって開弁し、反対方向で閉弁する。これにより、駆動要素44は、第1の摺動方向で移動するとき、流体を駆動ハウジング48から搬送し、管路56を通して搬送し、被動要素12に向かってまたは被動要素12内に搬送することができる。これに応じて、管路58内にもチェック弁66が配置されており、チェック弁66は、駆動要素46に向かって遮断し、反対方向で開弁する。これにより駆動要素46は、第1の摺動方向で移動するとき、流体を駆動ハウジング50から搬送し、管路58を通して搬送することができ、これにより駆動要素46は、流体を駆動ハウジング50から被動要素12に向かってまたは被動要素12内に搬送することができる。
【0076】
連結要素28は、好ましくは剛体であり、または弾性的、特にゴム弾性的でない。特に、連結要素28は、自己剛性または形状安定性を有している。連結要素28は、特にロッカアームとして形成されていてもよい。弁要素36は、その際、連結要素28により互いに結合される2つの固体アクチュエータ20および22により操作される切り換え弁として機能する。
【0077】
初期状態で切り換え弁は、例えば当初開いている。この初期状態で、アクチュエータの駆動制御は行われていない。換言すれば、アクチュエータは、初期状態では無電圧である。切り換え弁を閉鎖すべく、すなわち、弁要素36を開放位置から閉鎖位置に移動させるべく、電圧が両アクチュエータに印加され、または両アクチュエータの一方にのみ電圧が印加され、その結果、例えば両アクチュエータが半分ずつ、またはアクチュエータの一方のみが完全に変位される。これにより、弁要素36は閉鎖され、弁要素36にはプリロードが加えられる。連結要素28の使用により実現可能な運動機構に基づいて、アクチュエータの一方が完全に変位されるか、または両アクチュエータが半分ずつ変位されるかに違いはない。アクチュエータの運転のために、180度互いにずらされたまたは位相シフトされたアクチュエータの正弦形の駆動制御が選択され、これにより、切り換え弁が開放されずに、圧送が実現される。なぜなら、切り換え弁を閉鎖位置に保持する閉鎖力は、アクチュエータ装置10内の液圧を介して実現されるのではなく、機械的な連結要素28を介して実現されるからである。このことは、アクチュエータにより流体を被動要素12に向かってかつ被動要素12内に圧送することができる一方、弁要素36は、閉鎖位置にとどまることを意味する。
【0078】
ここに示す実施例では、アクチュエータ装置10は、正確に2つのアクチュエータを備えている。これに代えて、2つのアクチュエータに対して付加的に、少なくとも1つまたは複数の別の固体アクチュエータが設けられていてもよく、これらの固体アクチュエータは、連結要素28を介して互いに連結されており、その結果、弁要素36は、連結要素28を介してそれぞれの固体アクチュエータにより操作可能である。少なくとも2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くの数のアクチュエータの運転のために、所定の角度量の分だけ互いにずらされたまたは位相シフトされた、アクチュエータの正弦形の駆動制御が選択され、これにより前述の圧送が実現される。角度量は、その際、360度をアクチュエータの数で割ることで得られる。
【0079】
両固体アクチュエータ20および22が同時に無電圧に切り換えられて初めて、または切り換えられていて初めて、弁要素36(切り換え弁)は開弁し、これにより、システム圧ともいう例えばチャンバ14内を支配する圧力、特に流体の圧力は解消される。流体が圧送されることによって、増圧が液圧式の被動要素12、特にチャンバ14内に引き起こされる。この圧送、ひいては被動要素12内の増圧は、アクチュエータの、作動ともいう交互の駆動制御を介して実施され、これにより、両液圧式の駆動要素44および46の交互の作動が実現される。チェック弁60,62,64および66の使用とその配置とにより、各サイクル中、すなわち、それぞれのアクチュエータの駆動制御のたびに、流体が、それぞれの駆動ハウジング48または50から被動要素12内に昇圧のために圧送されるか、または流体が、液圧式の補償要素として機能するリザーバ42からそれぞれの駆動ハウジング48または50内に吸い込まれ、ひいては補充されることが保証される。
【0080】
アクチュエータの、180度互いにずらされたまたは位相シフトされた駆動制御は、特に簡単な、ひいては低コストのパワーエレクトロニクスにより具現可能である。なぜなら、この駆動制御は、少なくとも略無効電力なしに実施可能であるからである。この理由は、この駆動制御により常にアクチュエータの両キャパシタンス間で電気エネルギを往復移動させることができるからである。例えば、インダクタンスによって固定のターンアラウンド周波数が選択される場合、付加的に、クロック制御される出力段を、このために必要なフィルタを含め、省略することが可能である。
【0081】
好ましくは、弁要素36は、少なくとも1つの液圧的に有効な面を有している。この面を介して、かつ例えば圧力センサにより、流体の、弁要素36に作用する圧力が検出されてもよい。続いて、良好な電気機械式の連結によりシステム圧を検出、特に測定することができ、これにより、特に持続的な圧力監視が可能となる。
【0082】
図2は、アクチュエータ装置10の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態では、例えば2つの被動要素12が設けられており、被動要素12は、2つの被動部分を有している。第2の実施の形態では、ハウジング32がインバーから形成されているので、有利な温度補償が実現可能である。その際、アクチュエータは、ハウジング32内に収容されている。第2の実施の形態では、アクチュエータ装置10は、膜68、特に弾性変形可能な膜68を備えている。膜68により、例えば、内部でそれぞれの駆動要素44または46が可動となっている第1の領域70が、それぞれの駆動要素44または46に対して、またはそれぞれの駆動ハウジング48もしくは50に対して、かつ/またはハウジング32に対して、かつ/または内部に固体アクチュエータ20および22が配置されている第2の領域72に対して、封止されている。換言すれば、第2の実施の形態では、両液圧式の駆動要素44および46の封止が膜68により実施される。
【0083】
第2の実施の形態では、例えばピストンとして形成されたそれぞれの駆動要素44または46の、例えば削成部として形成されたそれぞれの切欠き74または76に連結要素28が係合するように、連結要素28は駆動要素44および46に結合されている。
【0084】
固体アクチュエータ20および22のための前述の温度補償は、例えば並列のハウジング32が有利な材料、例えばインバーから形成されているように実施されている。これにより、温度変化時、それぞれ異なる温度膨張係数、特にアクチュエータのそれぞれ異なる温度膨張係数により引き起こされる切り換え弁の望ましくない開放を防止することができる。
【0085】
アクチュエータ装置10は、クイックリリース機能を有する積分型のアクチュエータユニットとして形成されてもよく、この場合、アクチュエータ装置10は、流体が固体アクチュエータ20および22の交互の駆動制御により被動要素12に向かって、特に被動要素12内に圧送されることにより、積分型のアクチュエータユニットである。前述のクイックリリース機能は、積分プロセスなしに簡単に、固体アクチュエータ20および22が、第1の固体アクチュエータ20の駆動制御も第2の固体アクチュエータ22の駆動制御もともに行われないように無電圧に切り換えられることによって、具現することができる。これにより、第1の状態から第2の状態へのシステムの迅速な移行が可能となり、または迅速な移行を引き起こすことができる。
【0086】
アクチュエータは、いわゆる電子ベーンのように機能し得るまたは運転され得る。それぞれのアクチュエータの駆動制御により、すなわち、それぞれのアクチュエータへの電流の印加により、それぞれのアクチュエータは、例えば膨張する。駆動制御が終終了すると、それぞれのアクチュエータは再び収縮する。アクチュエータの一方が収縮すると、またはアクチュエータの一方が収縮した瞬間、電荷は、一方のアクチュエータから他方のアクチュエータに向かって、または他方のアクチュエータ内に移動し、その逆もまた同様である。これにより、言及した電子ベーンが実現されている。
【0087】
本発明のさらなる利点は、アクチュエータを10ヘルツ未満の極めて低い周波数で運転または交互に駆動制御して、定位置にとどまることが可能であることである。これにより、例えばピエゾアクチュエータとして形成されたアクチュエータの消極または分極反転を回避することができる。
【0088】
さらに、アクチュエータの相応の配置を介して力制限を実現することが可能である。特に、このような有利な力制限を具現する少なくとも2つの可能性がある。第1の可能性では、力制限の実現が、アクチュエータの相応の寸法設定により実施される。これにより、弁要素36が、特に常に、力、例えば被動要素12に作用する力が閾値に達するか、または超過すると開放され、すなわち開放状態に位置変更されることが保証される。アクチュエータの相応の寸法設定により、閾値を設定またはプリセットすることができる。換言すれば、力が閾値に達するか、または超過すると、弁要素36は、開動作する。
【0089】
これにより、弁要素36は、例えば、これらのアクチュエータが、またはこれらのアクチュエータの少なくとも1つまたは正確に1つが駆動制御される間、力が閾値を超過するとき(も)、開放状態に位置変更される。第2の可能性では、力制限を、いわゆるオフセット電圧またはベース電圧、特にそれぞれのアクチュエータの駆動制御のオフセット電圧またはベース電圧を介して実現することができる。それぞれのアクチュエータの駆動制御は、少なくとも2つまたは正確に2つの電圧成分を有している。第1の電圧成分は、ベース電圧であり、ベース電圧は、ゼロラインを超える基本的な電圧上昇である。第2の電圧成分は、正弦形の駆動制御または正弦形の電流を実現する正弦波である。正弦波は、例えば圧送が行われる速度を設定する。ベース電圧の設定により、例えば閾値または力制限を設定することができる。これにより、アクチュエータを、固有安全アクチュエータとして形成することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 アクチュエータ装置
12 被動要素
14 チャンバ
16 部分領域
18 双方向矢印
20 第1の固体アクチュエータ
22 第2の固体アクチュエータ
24 電子式の計算装置
26 双方向矢印
28 連結要素
30 旋回軸線
32 ハウジング
34 排出通路
36 弁要素
38 チェック弁
40 弁要素
42 リザーバ
44 駆動要素
46 駆動要素
48 駆動ハウジング
50 駆動ハウジング
52 管路
54 管路
56 管路
58 管路
60 チェック弁
62 チェック弁
64 チェック弁
66 チェック弁
68 膜
70 第1の領域
72 第2の領域
74 切欠き
76 切欠き
A 退避位置
F 矢印
F2 矢印
H 保持位置