(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 47/04 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
F16H47/04 C
(21)【出願番号】P 2021564182
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2019112636
(87)【国際公開番号】W WO2021068284
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】201910949522.9
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517405840
【氏名又は名称】江▲蘇▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 鎮
(72)【発明者】
【氏名】蔡 英鳳
(72)【発明者】
【氏名】陳 龍
(72)【発明者】
【氏名】夏 長高
(72)【発明者】
【氏名】田 翔
(72)【発明者】
【氏名】韓 江▲義▼
(72)【発明者】
【氏名】孫 暁東
(72)【発明者】
【氏名】施 徳華
(72)【発明者】
【氏名】王 峰
(72)【発明者】
【氏名】袁 朝春
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-051149(JP,A)
【文献】特開平11-030306(JP,A)
【文献】独国実用新案第202015102282(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第102007000619(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第109296724(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109723789(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸1、分路機構2、機械式伝動部品3、液圧式伝動部品4、及び出力軸5が含まれ、前記の入力軸1が分路機構2を介して、互いに並列に接続された機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4に接続され、前記の機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4共に出力軸5に接続される多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置であって、前記の機械式伝動部品3は、互いに直列に接続された前部遊星列部品31及び後部遊星列部品32が含まれ、
前記の前部遊星列部品31は、第1のクラッチ311、第2のクラッチ312、第3のクラッチ313、前部遊星列リングギア314、前部遊星列遊星キャリア315、前部遊星列太陽歯車316、及び第1のワンウェイクラッチ317が含まれ、前記の第1のクラッチ311は、分路機構2と前部遊星列リングギア314との間に位置し、前記の第2のクラッチ312と第3のクラッチ313は、互いに並列に接続され、それぞれ前部遊星列太陽歯車316に接続され、前記の第3のクラッチ313と前部遊星列太陽歯車316の間には、第1のワンウェイクラッチ317が設けられ、前記の出力軸5は、前部遊星列遊星キャリア315に接続され、
前記の後部遊星列部品32は、第4のクラッチ321、後部遊星列太陽歯車322、後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324、第1のブレーキ325、第2のブレーキ326、及び第2のワンウェイクラッチ327が含まれ、前記の第4のクラッチ321は、分路機構2と後部遊星列太陽歯車322との間に位置し、前記の第1のブレーキ325は、後部遊星列太陽歯車322に接続され、前記の後部遊星列遊星キャリア323は、前部遊星列リングギア314に接続されて、互いに並列に接続された第2のブレーキ326及び第2のワンウェイクラッチ327に接続され、前記の後部遊星列リングギア324は、出力軸5に接続される
ことを特徴とする、多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置。
【請求項2】
液圧式伝動部品4は、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動入力歯車対42、液圧ポンプ43、油圧管44、液圧モーター45、液圧式伝動出力歯車対46、及び液圧式伝動出力クラッチ47が含まれ、前記の液圧ポンプ43は、液圧式伝動入力歯車対42に介して分路機構2に接続され、前記の液圧式伝動入力歯車対42と液圧ポンプ43の間には、液圧式伝動入力クラッチ41が設けられ、前記の液圧ポンプ43は、油圧管44に介して液圧モーター45に接続され、前記の液圧モーター45は、液圧式伝動出力歯車対46に介して出力軸5に接続され、前記の液圧モーター45と液圧式伝動出力歯車対46との間には、液圧式伝動出力クラッチ47が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置。
【請求項3】
前記の分路機構2は、分路ブレーキ21、分路機構太陽歯車22、分路機構遊星キャリア23、及び分路機構リングギア24が含まれ、前記の入力軸1は、分路機構リングギア24に接続され、前記の分路機構太陽歯車22は、液圧式伝動部品4に接続され、前記の分路機構太陽歯車22には、分路ブレーキ21が設けられ、前記の分路機構遊星キャリア23は、機械式伝動部品3に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置。
【請求項4】
ブレーキとクラッチとの間の組み合わせを切り替えることにより、単純な液圧式伝動、機械油圧式複合伝動、及び単純な機械式伝動の3種類の伝動を実現し、具体的に、
単純な液圧式伝動には、第1のブレーキ325、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動出力クラッチ47、及び第4のクラッチ321が接合し、他のクラッチとブレーキが離間し、第4のクラッチ321と第1のブレーキ325が接合し、分路機構遊星キャリア23がブレーキされ、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が接合し、動力が入力軸1、分路機構リングギア24、分路機構太陽歯車22、液圧式伝動入力歯車対42、及び入力クラッチ41を介して液圧ポンプ43を駆動して作動させ、前記の液圧ポンプ43が機械動力を高圧油に変換し、液圧管44に介して液圧モーター45を駆動して作動させ、液圧モーター45により出力された機械動力が液圧式伝動出力クラッチ47及び液圧式伝動出力歯車対46を介して出力軸5に伝達される、
単純な機械式伝動には、分路ブレーキ21が接合し、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動出力クラッチ47、第2のブレーキ326、及び第4のクラッチ321が離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって単純な機械式伝動モードにおける伝動速度比が異なるギアシフトを実現し、分路ブレーキ21が接合し、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が離間し、動力が液圧式伝動部品4に入力せず、入力軸1、分路機構リングギア24、及び分路機構遊星キャリア23を介して機械式伝動部品3に伝達され、機械式伝動部品3は、速度比が調節された後、出力軸5から出力する、
機械油圧式複合伝動には、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が接合し、分路ブレーキ21、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって機械油圧式複合伝動モードにおける伝動速度比が異なるギアシフトを実現し、動力が入力軸1及び分路機構リングギア24を介して分路機構遊星キャリア23に伝達され、分路機構遊星キャリア23で分路し、それぞれ機械式伝動部品3と分路機構太陽歯車22へ流れ、前記の分路機構太陽歯車22は、液圧式伝動部品4に接続され、最後に出力軸5に合流して出力する
ことを特徴とする、請求項3に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項5】
前記の単純な機械式伝動モードは、機械式伝動ギアI、機械式伝動ギアII、機械式伝動ギアIII、及び機械式伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
機械式伝動ギアIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第2のクラッチ312が離間し、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、前部遊星列太陽歯車316、前部遊星列遊星キャリア315を順次介して出力軸5に伝達される、
機械式伝動ギアIIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、第2のクラッチ312、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第3のクラッチ313と第1のワンウェイクラッチ317が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、前部遊星列太陽歯車316を順次介して前部遊星列遊星キャリア315に伝達され、前部遊星列遊星キャリア315でそれぞれ出力軸5と前部遊星列リングギア314に分路し、前記の前部遊星列リングギア314の動力が後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324に順次伝達され、最後に出力軸5に合流する、
機械式伝動ギアIIIには、第1のブレーキ325、第2のクラッチ312、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第1のクラッチ311、第3のクラッチ313、及び第1のワンウェイクラッチ317が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第1のクラッチ311に入力され、そこで分路してそれぞれ前部遊星列リングギア314と前部遊星列太陽歯車316へ流れ、前部遊星列遊星キャリア315で合流し、最後に出力軸5から出力される、
機械式伝動ギアIVには、第2のクラッチ312、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第1のクラッチ311と第1のブレーキ325が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第1のクラッチ311、前部遊星列リングギア314、後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324を順次介して出力軸5で出力される
ことを特徴とする、請求項4に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項6】
前記の機械油圧式複合伝動モードは、複合伝動ギアI、複合伝動ギアII、複合伝動ギアIII、及び複合伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
複合伝動ギアIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第4のクラッチ321が離間し、第2のブレーキ326と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312、前部遊星列太陽歯車316、前部遊星列遊星キャリア315を順次介して、最後に出力軸5に合流して出力される、
複合伝動ギアIIには、第2のブレーキ326、第1のクラッチ311、及び第4のクラッチ321が離間し、第1のブレーキ325と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312、前部遊星列太陽歯車316を順次介して前部遊星列遊星キャリア315に伝達され、前部遊星列遊星キャリア315でそれぞれ出力軸5と前部遊星列リングギア314に分路し、前記の前部遊星列リングギア314の動力が後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324に順次伝達され、最後に3つの分路の動力が出力軸5に合流する、
複合伝動ギアIIIには、第1のブレーキ325、第2のブレーキ326、及び第4のクラッチ321が離間し、第1のクラッチ311と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312に入力され、そこで分路してそれぞれ前部遊星列リングギア314と前部遊星列太陽歯車316へ流れ、前部遊星列遊星キャリア315で合流し、機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4が出力軸5で合流して出力する、
複合伝動ギアIVには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第2のクラッチ312が離間し、第2のブレーキ326と第4のクラッチ321が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第4のクラッチ321、後部遊星列太陽歯車322、後部遊星列リングギア324を順次介して出力軸5に伝達され、機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4が出力軸5で合流して出力する
ことを特徴とする、請求項4に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項7】
前記の機械油圧式複合伝動モードは、ギアを切り替えると、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアIII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIVが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、交互作用のない3つまたは4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表により分析され、4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における4つの列を十分に活用し、3つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における3つの列を任意に選ばれ、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のある直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータにより、グループの形で各グループのギアシフト素子のスイッチングタイミングを制御する
ことを特徴とする、請求項6に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項8】
前記の機械油圧式複合伝動モードのギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及び時間tを選択し、α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量は、
【数43】
出力軸の角速度の変化率は、
【数44】
出力軸のトルクは、
【数45】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数46】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率であり、
【数47】
【数48】
【表8】
表中、各記号の数式は、次の通りであり、
【数49】
であり、幅データによって各因子の優先順位を決定し、1つの評価指標の好ましいスキームを決定し、最後に重み係数により最も好ましいスキームを決定し、
最も好ましいスキームは、
【数50】
3)直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、9回の実験を実施し、実験結果を得る、
4)実験結果により幅を算出し、因子の優先順位を決定し、
【数51】
機液複合ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数52】
5)最適なスキームが要件を満たさなければ、「繰り上げ」及び「遅延」の時間を増減することができ、要件が満たされるまで異なる「繰り上げ」時間及び「遅延」時間を選択することもできる、
6)異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータにより、各グループのギアシフト素子のスイッチングタイミングを制御する
ことを特徴とする、請求項7に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項9】
前記の単純な機械式伝動モードは、ギアが切り替えると、機械ギアIから機械ギアIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIIから機械ギアIVへの切り替え3つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIIIへの切り替えが2つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIVへの切り替えが5つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIVの切り替えが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、3つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、5つのギアシフト素子と係り且つその中の3つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、及び4つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフトは、いずれも直交表で分析され、分析には対応するリストを選択し、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のない直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、実験データにより幅を算出し、因子の優先順位を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態の最適なスキームをペアマトリックスにし、ギアの間の切り替えが制御されるようにプログラムを作成する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【請求項10】
前記の単純な機械式伝動モードギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及び時間tを選択し、α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量は、
【数53】
出力軸の角速度の変化率は、
【数54】
出力軸のトルクは、
【数55】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数56】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率であり、
【数57】
【数58】
【表9】
表中、各記号の数式は、次の通りである、
【数59】
3)表3に示すような直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、27回の実験を実行し、x
i(i=1,・・・,27)の実験結果を得、関わる統計値を算出する、
4)分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、F値を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、
【表10】
総偏差平方和Q
T、各因子の偏差平方和Q
F、及び誤差の偏差平方和Q
eは、それぞれ
【数60】
であり、総自由度f
T=26、各因子の自由度f
F=2、誤差の自由度f
e=4、
因子と誤差との平均偏差の平方和は、
【数61】
であり、機械式伝動モード素子のスイッチングタイミング分散分析表は、表4に示すように
変動要因が主に(1)「a」、「b」、「c」、「d」、及び「e」、(2)「e×c」(e×c1とe×c2とが含まれる)、「e×d」(e×d1とe×d2とが含まれる)、及び「c×d」(c×d1とc×d2とが含まれる)、(3)誤差e
*の3つの部分にあり、
算出された変動要因の各因子と誤差との偏差平方和、自由度、及び平均偏差の平方和により、F
F値とF
α(f
F,f
e)値を比較し、
F
F>F
α(f
F,f
e)の場合は、該因子による影響が有意であり、それ以外の場合は、有意性がなく、有意性のある因子を選択し、各因子の重要性を直感的に分析し、ギアシフトの最適なスキームを決定する。
機械ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数62】
異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータにより、各グループのギアシフト素子のスイッチングタイミングを制御する
ことを特徴とする、請求項9に記載の多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動装置及びその制御方法に関し、特に多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置及び制御方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリング作業装置では、運転開始時や移動時に伝動装置が高トルク・低回転数の速度伝達比を提供することが求められ、場所移転中に伝動装置が小トルク・高回転数の速度伝達比を提供することが求められる。従って、エンジニアリング作業装置は、その作動状態の複雑さによって、伝動装置が一般的な車両よりも高い要件が求められ、構造がより複雑で、エンジニアリング作業装置の伝動装置では、高い速度伝達比とトルクが必要である。
【0003】
伝動装置は、エンジニアリング作業装置の燃費経済性に重要な影響を与え、伝動装置でエンジンを出来る限り経済的な状態下で作動させることにより、燃費経済性の向上に寄与する。しかし、従来の工程機械の伝動装置は、流体トルクコンバーター、ギアボックスから構成され、一般にデュアルクラッチトランスミッション系とも呼ばれている。流体トルクコンバーターの役割は、エンジンとギアボックスとの間に非剛性的な接続を形成し、エンジンの回転数とトルクをギアボックスに伝達することである。最終に、エンジニアリング作業装置は、速度伝達比の変換がギアボックスのギアシフトによって達成され、従来の機械式伝動モードに属し、複雑な作動状態の速度伝達比に対する要件を満たすことができない。
【0004】
現在、エンジニアリング作業装置は、液圧ポンプをエンジンで駆動し、液圧モーターを駆動して移動を実現する液圧式伝動系が現れているが、そのような液圧式伝動系は、伝動媒介が液圧オイルであり、伝動中に高圧油が生成され、素子間のシール性が高く要求され、液圧素子の耐圧性に対する要求が高いほど、素子のコストがより高く、機械式伝動系と比べて伝動効率が高くない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、前記した問題を解決するために、多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置及び制御方法を提供することにある。本発明では、複雑な作動状態に応じて複数の出力分配モードを提供し、十分に活用する機械式伝動の効率的な伝動性能と液圧式伝動の無段階速度調整の性能、車両の作動効率、動力性能、及び経済性の向上に寄与する。
【0006】
本発明の技術態様は、多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置であって、該装置は、入力軸、分路機構、機械式伝動部品、液圧式伝動部品、及び出力軸が含まれ、上記の入力軸が分路機構に介して、互いに並列に接続された機械式伝動部品及び液圧式伝動部品に接続され、上記の機械式伝動部品と液圧式伝動部品は、共に出力軸に接続され、上記の機械式伝動部品が互いに直列に接続された前部遊星列部品及び後部遊星列部品が含まれ、
上記の前部遊星列部品は、第1のクラッチ、第2のクラッチ、第3のクラッチ、前部遊星列リングギア、前部遊星列遊星キャリア、前部遊星列太陽歯車、及び第1のワンウェイクラッチが含まれ、上記の第1のクラッチは分路機構と前部遊星列リングギアの間に位置し、上記の第2のクラッチと第3のクラッチは、互いに並列に接続され、それぞれ前部遊星列太陽歯車に接続され、上記の第3のクラッチと前部遊星列太陽歯車との間には、第1のワンウェイクラッチが設けられ、上記の出力軸は、前部遊星列遊星キャリアに接続され、
上記の後部遊星列部品は、第4のクラッチ、後部遊星列太陽歯車、後部遊星列遊星キャリア、後部遊星列リングギア、第1のブレーキ、第2のブレーキ、及び第2のワンウェイクラッチが含まれ、上記の第4のクラッチは、分路機構と後部遊星列太陽歯車との間に位置し、上記の第1のブレーキは、後部遊星列太陽歯車に接続され、上記の後部遊星列遊星キャリアは、前部遊星列リングギアに接続され、互いに並列に接続された第2のブレーキ及び第2のワンウェイクラッチに接続され、上記の後部遊星列リングギアは、出力軸に接続される。
【0007】
液圧式伝動部品は、液圧式伝動入力クラッチ、液圧式伝動入力歯車対、液圧ポンプ、油圧管、液圧モーター、液圧式伝動出力歯車対、及び液圧式伝動出力クラッチが含まれ、上記の液圧ポンプは、液圧式伝動入力歯車対に介して分路機構に接続され、上記の液圧式伝動入力歯車対と液圧ポンプとの間には、液圧式伝動入力クラッチが設けられ、上記の液圧ポンプは、油圧管に介して液圧モーターに接続され、上記の液圧モーターは、液圧式伝動出力歯車対に介して出力軸に接続され、上記の液圧モーターと液圧式伝動出力歯車対との間には、液圧式伝動出力クラッチが設けられる。
【0008】
上記の分路機構は、分路ブレーキ、分路機構太陽歯車、分路機構遊星キャリア、及び分路機構リングギアが含まれ、上記の入力軸は、分路機構リングギアに接続され、上記の分路機構太陽歯車は、液圧式伝動部品に接続され、上記の分路機構太陽歯車には、分路ブレーキが設けられ、上記の分路機構遊星キャリアは、機械式伝動部品に接続される。
【0009】
ブレーキとクラッチとの間の組み合わせを切り替えることにより、単純な液圧式伝動、機械油圧式複合伝動、及び単純な機械式伝動の3種類の伝動を実現し、具体的に、
単純な液圧式伝動には、第1のブレーキ、液圧式伝動入力クラッチ、液圧式伝動出力クラッチ、及び第4のクラッチが接合し、他のクラッチとブレーキが離間し、第4のクラッチと第1のブレーキが接合し、分路機構遊星キャリアがブレーキされ、液圧式伝動入力クラッチと液圧式伝動出力クラッチが接合し、動力が入力軸、分路機構リングギア、分路機構太陽歯車、液圧式伝動入力歯車対、及び入力クラッチを介して液圧ポンプを駆動して作動させ、上記の液圧ポンプが機械動力を高圧油に変換し、液圧管に介して液圧モーターを駆動して作動させ、液圧モーターにより出力された機械動力が液圧式伝動出力クラッチ及び液圧式伝動出力歯車対を介して出力軸に伝達される。
【0010】
単純な機械式伝動には、分路ブレーキが接合し、液圧式伝動入力クラッチ、液圧式伝動出力クラッチ、第2のブレーキ、及び第4のクラッチが離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって単純な機械式伝動モードにおける異なる速度伝達比のギアシフトを実現し、分路ブレーキが接合し、液圧式伝動入力クラッチと液圧式伝動出力クラッチが離間し、動力が液圧式伝動部品に入力せずに、入力軸、分路機構リングギア、及び分路機構遊星キャリアを介して機械式伝動部品に伝達され、機械式伝動部品は、速度比が調節された後、出力軸から出力する。
【0011】
機械油圧式複合伝動には、液圧式伝動入力クラッチと液圧式伝動出力クラッチが接合し、分路ブレーキ、第3のクラッチ、第1のワンウェイクラッチ、及び第2のワンウェイクラッチが離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって機械油圧式複合伝動モードにおける異なる速度伝達比のギアの間の切り替えを実現し、動力が入力軸、分路機構リングギアを介して分路機構遊星キャリアに伝達され、分路機構遊星キャリアで分路し、それぞれ機械式伝動部品と分路機構太陽歯車へ流れ、上記の分路機構太陽歯車が液圧式伝動部品に接続され、最後に出力軸に合流して出力する。
【0012】
上記の単純な機械式伝動モードは、機械式伝動ギアI、機械式伝動ギアII、機械式伝動ギアIII、及び機械式伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
機械式伝動ギアIには、第1のブレーキ、第1のクラッチ、及び第2のクラッチが離間し、第3のクラッチ、第1のワンウェイクラッチ、及び第2のワンウェイクラッチが接合し、動力が分路機構遊星キャリアから第3のクラッチ、第1のワンウェイクラッチ、前部遊星列太陽歯車、及び前部遊星列遊星キャリアを順次介して出力軸に伝達される。
【0013】
機械式伝動ギアIIには、第1のブレーキ、第1のクラッチ、第2のクラッチ、及び第2のワンウェイクラッチが離間し、第3のクラッチと第1のワンウェイクラッチが接合し、動力が分路機構遊星キャリアから第3のクラッチ、第1のワンウェイクラッチ、前部遊星列太陽歯車を順次介して前部遊星列遊星キャリアに伝達され、前部遊星列遊星キャリアでそれぞれ出力軸と前部遊星列リングギアに分路し、上記の前部遊星列リングギアの動力が後部遊星列遊星キャリア、後部遊星列リングギアに順次伝達され、最後に出力軸に合流する。
【0014】
機械式伝動ギアIIIには、第1のブレーキ、第2のクラッチ、及び第2のワンウェイクラッチが離間し、第1のクラッチ、第3のクラッチ、及び第1のワンウェイクラッチが接合し、動力が分路機構遊星キャリアから第1のクラッチ処分路に入力され、それぞれ前部遊星列リングギアと前部遊星列太陽歯車へ流れ、前部遊星列遊星キャリアで合流し、最後に出力軸から出力される。
【0015】
機械式伝動ギアIVには、第2のクラッチ、第3のクラッチ、第1のワンウェイクラッチ、及び第2のワンウェイクラッチが離間し、第1のクラッチと第1のブレーキが接合し、動力が分路機構遊星キャリアから第1のクラッチ、前部遊星列リングギア、後部遊星列遊星キャリア、後部遊星列リングギアを順次介して出力軸に出力される。
【0016】
上記の機械油圧式複合伝動モードは、複合伝動ギアI、複合伝動ギアII、複合伝動ギアIII、及び複合伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
複合伝動ギアIには、第1のブレーキ、第1のクラッチ、及び第4のクラッチが離間し、第2のブレーキと第2のクラッチが接合し、動力が分路機構リングギアから分路機構遊星キャリアで分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリアから分路機構太陽歯車を介して液圧式伝動部品へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリアから第2のクラッチ、前部遊星列太陽歯車、及び前部遊星列遊星キャリアを順次介して、最後に出力軸に合流する出力される。
【0017】
複合伝動ギアIIには、第2のブレーキ、第1のクラッチ、及び第4のクラッチが離間し、第1のブレーキと第2のクラッチが接合し、動力が分路機構リングギアから分路機構遊星キャリアで分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリアから分路機構太陽歯車を介して液圧式伝動部品へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリアから第2のクラッチ、前部遊星列太陽歯車を順次介して前部遊星列遊星キャリアに伝達され、前部遊星列遊星キャリアでそれぞれ出力軸と前部遊星列リングギアに分路し、上記の前部遊星列リングギアの動力が後部遊星列遊星キャリア、後部遊星列リングギアに順次伝達され、最後に3つの分路の動力が出力軸に動力が合流する。
【0018】
複合伝動ギアIIIには、第1のブレーキ、第2のブレーキ、及び第4のクラッチが離間し、第1のクラッチと第2のクラッチが接合し、動力が分路機構リングギアから分路機構遊星キャリアで分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリアから分路機構太陽歯車を介して液圧式伝動部品へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリアから第2のクラッチに入力され、そこで分路してそれぞれ前部遊星列リングギアと前部遊星列太陽歯車へ流れ、前部遊星列遊星キャリアで合流し、機械式伝動部品及び液圧式伝動部品が出力軸で合流して出力する。
【0019】
複合伝動ギアIVには、第1のブレーキ、第1のクラッチ、及び第2のクラッチが離間し、第2のブレーキと第4のクラッチが接合し、動力が分路機構リングギアから分路機構遊星キャリアで分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリアから分路機構太陽歯車を介して液圧式伝動部品へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリアから第4のクラッチ、後部遊星列太陽歯車、後部遊星列リングギアを順次介して出力軸に伝達され、機械式伝動部品及び液圧式伝動部品が出力軸で合流して出力する。
【0020】
【0021】
上記の機械油圧式複合伝動モードは、ギアを切り替えると、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアIII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIVが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、交互作用のない3つまたは4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表により分析され、4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における4つの列を十分に活用し、3つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における3つの列を任意に選ばれ、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のある直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータにより、グループの形で各グループのギアシフト素子のスイッチングタイミングを制御する。
【0022】
上記の機械油圧式複合伝動モードのギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及びギアシフト時間tを選択する。α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量は、
【数1】
出力軸の角速度の変化率は、
【数2】
出力軸のトルクは、
【数3】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数4】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率であり、
【数5】
【0023】
【数6】
【表2】
【数7】
であり、幅データによって各因子の優先順位を決定し、1つの評価指標の好ましいスキームを決定し、最後に重み係数により最も好ましいスキームを決定し、
最も好ましいスキームは、
【数8】
【0024】
3)直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、9回の実験を実施し、実験結果を得る。
【0025】
4)実験結果により幅を算出し、因子の優先順位を決定し、
【数9】
機液複合ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数10】
【0026】
5)最適なスキームが要件を満たさなければ、「繰り上げ」及び「遅延」の時間を増減することができ、要件が満たされるまで異なる「繰り上げ」時間及び「遅延」時間を選択することもできる。
【0027】
上記の単純な機械式伝動モードは、ギアが切り替えると、機械ギアIから機械ギアIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIIから機械ギアIVへの切り替え3つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIIIへの切り替えが2つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIVへの切り替えが5つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIVへの切り替えが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、3つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、5つのギアシフト素子と係り且つその中の3つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、及び4つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフトは、いずれも直交表で分析され、分析には対応するリストを選択し、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のない直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、実験データにより幅を算出し、因子の優先順位を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態の最適なスキームをペアマトリックスにし、ギアの間の切り替えが制御されるようにプログラムを作成する。
【0028】
上記の単純な機械式伝動モードギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及び時間tを選択し、α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量は、
【数11】
出力軸の角速度の変化率は、
【数12】
出力軸のトルク、
【数13】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数14】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率であり、
【数15】
【0029】
【数16】
【表3】
表中、各記号の数式は次の通りである。
【数17】
【0030】
3)表4の直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、27回の実験を実行し、xi(i=1,・・・,27)の実験結果を得、関わる統計値を算出する。
【0031】
4)分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、F値を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、
【表4】
総偏差平方和Q
T、各因子の偏差平方和Q
F、及び誤差の偏差平方和Q
eは、それぞれ
【数18】
であり、総自由度f
T=26、各因子の自由度f
F=2、誤差の自由度f
e=4、
因子と誤差との平均偏差の平方和は、
【数19】
機械式伝動モード素子のスイッチングタイミング分散分析表は、表1に示すように、
変動要因が主に(1)「a」、「b」、「c」、「d」、及び「e」、(2)「e×c」(e×c1とe×c2とが含まれる)、「e×d」(e×d1とe×d2とが含まれる)、及び「c×d」(c×d1とc×d2とが含まれる)、(3)誤差e
*の3つの部分にあり、
算出された変動要因の各因子と誤差との偏差平方和、自由度、及び平均偏差の平方和により、F
F値とF
α(f
F,f
e)値を比較し、
F
F>F
α(f
F,f
e)の場合は、該因子による影響が有意であり、それ以外の場合は、有意性がない。有意性のある因子を選択し、各因子の重要性を直感的に分析し、ギアシフトの最適なスキームを決定する。
【0032】
機械ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数20】
【発明の効果】
【0033】
1、本発明では、液圧式伝動、機液複合伝動、及び機械式伝動を切り替えることができ、各伝動方式は、複数のギアを選択可能で、複雑な作動状態に応じて複数の出力分配モードを提供し、機械式伝動の伝動性能と液圧式伝動の無段階速度調整の性能を十分に活用することにより、車両の作動効率、動力性能、及び経済性の向上に寄与する。2、機械式ギアシフト装置は、ワンウェイクラッチを採用して、エンジンブレーキを実現するだけではなく、各ギアシフト素子を均一に使用して耐用年数を延ばすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】本発明の単純な液圧式伝動における電力潮流の模式図である。
【
図3】本発明の機械式伝動ギアIにおける電力潮流の模式図である。
【
図4】本発明の機械式伝動ギアIIにおける電力潮流の模式図である。
【
図5】本発明の機械式伝動ギアIIIにおける電力潮流の模式図である。
【
図6】本発明の機械式伝動ギIVにおける電力潮流の模式図である。
【
図7】本発明の複合伝動ギアIにおける電力潮流の模式図である。
【
図8】本発明の複合伝動ギアIIにおける電力潮流の模式図である。
【
図9】本発明の複合伝動ギアIIIにおける電力潮流の模式図である。
【
図10】本発明の複合伝動ギアIVにおける電力潮流の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明をさらに説明する。
図1に示すように、多重出力分配モードの機械油圧式複合伝動装置は、入力軸1、分路機構2、機械式伝動部品3、液圧式伝動部品4、及び出力軸5が含まれ、上記の入力軸1が分路機構2を介して、互いに並列に接続された機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4に接続され、上記の機械式伝動部品3と液圧式伝動部品4が共に出力軸5に接続され、上記の機械式伝動部品3は、互いに直列に接続された前部遊星列部品31及び後部遊星列部品32が含まれ、
上記の前部遊星列部品31は、第1のクラッチ311、第2のクラッチ312、第3のクラッチ313、前部遊星列リングギア314、前部遊星列遊星キャリア315、前部遊星列太陽歯車316、及び第1のワンウェイクラッチ317が含まれ、上記の第1のクラッチ311は、分路機構2と前部遊星列リングギア314との間に位置し、上記の第2のクラッチ312と第3のクラッチ313は、互いに並列に接続され、それぞれ前部遊星列太陽歯車316に接続され、上記の第3のクラッチ313と前部遊星列太陽歯車316の間には、第1のワンウェイクラッチ317が設けられ、上記の出力軸5は、前部遊星列遊星キャリア315に接続され、
上記の後部遊星列部品32は、第4のクラッチ321、後部遊星列太陽歯車322、後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324、第1のブレーキ325、第2のブレーキ326、及び第2のワンウェイクラッチ327が含まれ、上記の第4のクラッチ321は、分路機構2と後部遊星列太陽歯車322との間に位置し、上記の第1のブレーキ325は、後部遊星列太陽歯車322に接続され、上記の後部遊星列遊星キャリア323は、前部遊星列リングギア314に接続されて、互いに並列に接続された第2のブレーキ326及び第2のワンウェイクラッチ327に接続され、上記の後部遊星列リングギア324は、出力軸5に接続される。
【0036】
液圧式伝動部品4は、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動入力歯車対42、液圧ポンプ43、油圧管44、液圧モーター45、液圧式伝動出力歯車対46、及び液圧式伝動出力クラッチ47が含まれ、上記の液圧ポンプ43は、液圧式伝動入力歯車対42に介して分路機構2に接続され、上記の液圧式伝動入力歯車対42と液圧ポンプ43の間には、液圧式伝動入力クラッチ41が設けられ、上記の液圧ポンプ43は、油圧管44に介して液圧モーター45に接続され、上記の液圧モーター45は、液圧式伝動出力歯車対46に介して出力軸5に接続され、上記の液圧モーター45と液圧式伝動出力歯車対46との間には、液圧式伝動出力クラッチ47が設けられる。
【0037】
上記の分路機構2は、分路ブレーキ21、分路機構太陽歯車22、分路機構遊星キャリア23、及び分路機構リングギア24が含まれ、上記の入力軸1は、分路機構リングギア24に接続され、上記の分路機構太陽歯車22は、液圧式伝動部品4に接続され、上記の分路機構太陽歯車22には、分路ブレーキ21が設けられ、上記の分路機構遊星キャリア23は、機械式伝動部品3に接続される。
【0038】
表1に示すように、ブレーキとクラッチとの間の組み合わせを切り替えることにより、単純な液圧式伝動、機械油圧式複合伝動、及び単純な機械式伝動の3種類の伝動を実現し、具体的には、
図2に示すように、単純な液圧式伝動には、第1のブレーキ325、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動出力クラッチ47、及び第4のクラッチ321が接合し、他のクラッチとブレーキが離間し、第4のクラッチ321と第1のブレーキ325が接合し、分路機構遊星キャリア23がブレーキされ、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が接合し、動力が入力軸1、分路機構リングギア24、分路機構太陽歯車22、液圧式伝動入力歯車対42、及び入力クラッチ41を介して液圧ポンプ43を駆動して作動させ、上記の液圧ポンプ43が機械動力を高圧油に変換し、液圧管44に介して液圧モーター45を駆動して作動させ、液圧モーター45により出力された機械動力が液圧式伝動出力クラッチ47及び液圧式伝動出力歯車対46を介して出力軸5に伝達される。
【0039】
図3、4、5及び6に示すように、単純な機械式伝動には、分路ブレーキ21が接合し、液圧式伝動入力クラッチ41、液圧式伝動出力クラッチ47、第2のブレーキ326、及び第4のクラッチ321が離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって単純な機械式伝動モードにおける異なる速度伝達比のギアシフトを実現し、分路ブレーキ21が接合し、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が離間し、動力が液圧式伝動部品4に入力せず、入力軸1、分路機構リングギア24、及び分路機構遊星キャリア23を介して機械式伝動部品3に伝達され、機械式伝動部品3は、速度比が調節された後、出力軸5から出力する。
【0040】
図7、8、9、10に示すように、機械油圧式複合伝動には、液圧式伝動入力クラッチ41と液圧式伝動出力クラッチ47が接合し、分路ブレーキ21、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、他のクラッチとブレーキとの間の組み合わせによって機械油圧式複合伝動モードにおける異なる速度伝達比のギアの間の切り替えを実現し、動力が入力軸1及び分路機構リングギア24を介して分路機構遊星キャリア23に伝達され、分路機構遊星キャリア23で分路し、それぞれ機械式伝動部品3と分路機構太陽歯車22へ流れ、上記の分路機構太陽歯車22は、液圧式伝動部品4に接続され、最後に出力軸5に合流して出力する。
【0041】
上記の単純な機械式伝動モードは、機械式伝動ギアI、機械式伝動ギアII、機械式伝動ギアIII、及び機械式伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
図3に示すように、機械式伝動ギアIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第2のクラッチ312が離間し、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、前部遊星列太陽歯車316、前部遊星列遊星キャリア315を順次介して出力軸5に伝達される。
【0042】
図4に示すように、機械式伝動ギアIIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、第2のクラッチ312、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第3のクラッチ313と第1のワンウェイクラッチ317が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、前部遊星列太陽歯車316を順次介して前部遊星列遊星キャリア315に伝達され、前部遊星列遊星キャリア315でそれぞれ出力軸5と前部遊星列リングギア314に分路し、上記の前部遊星列リングギア314の動力が後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324に順次伝達され、最後に出力軸5に合流する。
【0043】
図5に示すように、機械式伝動ギアIIIには、第1のブレーキ325、第2のクラッチ312、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第1のクラッチ311、第3のクラッチ313、及び第1のワンウェイクラッチ317が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第1のクラッチ311に入力され、そこで分路してそれぞれ前部遊星列リングギア314と前部遊星列太陽歯車316へ流れ、前部遊星列遊星キャリア315で合流し、最後に出力軸5から出力される。
【0044】
図6に示すように、機械式伝動ギアIVには、第2のクラッチ312、第3のクラッチ313、第1のワンウェイクラッチ317、及び第2のワンウェイクラッチ327が離間し、第1のクラッチ311と第1のブレーキ325が接合し、動力が分路機構遊星キャリア23から第1のクラッチ311、前部遊星列リングギア314、後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324を順次介して出力軸5で出力される。
【0045】
上記の機械油圧式複合伝動モードは、複合伝動ギアI、複合伝動ギアII、複合伝動ギアIII、及び複合伝動ギアIVが含まれ、具体的に、
図7に示すように、複合伝動ギアIには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第4のクラッチ321が離間し、第2のブレーキ326と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312、前部遊星列太陽歯車316、前部遊星列遊星キャリア315を順次介して、最後に出力軸5に合流して出力される。
【0046】
図8に示すように、複合伝動ギアIIには、第2のブレーキ326、第1のクラッチ311、及び第4のクラッチ321が離間し、第1のブレーキ325と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312、前部遊星列太陽歯車316を順次介して前部遊星列遊星キャリア315に伝達され、前部遊星列遊星キャリア315でそれぞれ出力軸5と前部遊星列リングギア314に分路し、上記の前部遊星列リングギア314の動力が後部遊星列遊星キャリア323、後部遊星列リングギア324に順次伝達され、最後に3つの分路の動力が出力軸5に合流する。
【0047】
図9に示すように、複合伝動ギアIIIには、第1のブレーキ325、第2のブレーキ326、及び第4のクラッチ321が離間し、第1のクラッチ311と第2のクラッチ312が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第2のクラッチ312に入力され、そこで分路してそれぞれ前部遊星列リングギア314と前部遊星列太陽歯車316へ流れ、前部遊星列遊星キャリア315で合流し、機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4が出力軸5で合流して出力する。
【0048】
図10に示すように、複合伝動ギアIVには、第1のブレーキ325、第1のクラッチ311、及び第2のクラッチ312が離間し、第2のブレーキ326と第4のクラッチ321が接合し、動力が分路機構リングギア24から分路機構遊星キャリア23で分路し、動力の一部が分路機構遊星キャリア23から分路機構太陽歯車22を介して液圧式伝動部品4へ流れ、他の部分が分路機構遊星キャリア23から第4のクラッチ321、後部遊星列太陽歯車322、後部遊星列リングギア324を順次介して出力軸5に伝達され、機械式伝動部品3及び液圧式伝動部品4が出力軸5で合流して出力する。
【0049】
上記の機械油圧式複合伝動モードは、ギアを切り替えると、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアIII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIIIが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアI→複合伝動ギアIVが2つのギアシフト素子と係り、複合伝動ギアII→複合伝動ギアIVが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、交互作用のない3つまたは4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表により分析され、4つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における4つの列を十分に活用し、3つのギアシフト素子と係わったギアシフトは、直交表における3つの列を任意に選ばれ、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のある直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータにより、グループの形で各グループのギアシフト素子のスイッチングタイミングを制御する。
【0050】
上記の機械油圧式複合伝動モードのギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及び時間tを選択し、α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量は、
【数21】
出力軸の角速度の変化率は、
【数22】
出力軸のトルクは、
【数23】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数24】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率であり、
【数25】
【0051】
【数26】
複合伝動ギアIIから複合伝動IVへの切り替えを例として、
「4つの因子」としては、ブレーキB2、ブレーキB3、クラッチC3、及びクラッチC5が決定され、それらの4つのギアシフト素子のスイッチングタイミングは、伝動系のギアシフトの品質に影響を与える4つの因子である。
【0052】
「3つの水準」としては、ギアシフト素子の「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを選択し、実際の情況に応じて「繰り上げ」及び「遅延」の時間を選択でき、「繰り上げ」及び「遅延」の時間は、同じでもよく、異なってもよい。この例では、「繰り上げ」及び「遅延」の時間は、0.3sである。
【0053】
【表5】
表中、各記号の数式は、次の通りであり、
【数27】
であり、幅データによって各因子の優先順位を決定し、1つの評価指標の好ましいスキームを決定し、最後に重み係数により最も好ましいスキームを決定し、
最も好ましいスキームは、
【数28】
【0054】
3)直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、9回の実験を実施し、実験結果を得る。
【0055】
4)実験結果により幅を算出し、因子の優先順位を決定し、
【数29】
機液複合ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数30】
【0056】
5)最適なスキームが要件を満たさなければ、「繰り上げ」及び「遅延」の時間を増減することができ、要件が満たされるまで異なる「繰り上げ」時間及び「遅延」時間を選択することもできる。
【0057】
異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータをグループの形でギアシフト制御器に入力し、さらに各グループのギアシフト装置のスイッチングタイミングを制御することにより、同じ伝動モードが各ギアシフトの中で良好なギアシフト品質を発揮することが保証される。
【0058】
複合伝動ギアIIIから複合伝動ギアIVの切り替えも同じように、関わる「4つの因子」と「3つの水準」を変えればよい。
【0059】
上記の単純な機械式伝動モードは、ギアが切り替えると、機械ギアIから機械ギアIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIIIへの切り替えが1つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIIから機械ギアIVへの切り替え3つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIIIへの切り替えが2つのギアシフト素子と係り、機械ギアIから機械ギアIVへの切り替えが5つのギアシフト素子と係り、機械ギアIIから機械ギアIVへの切り替えが4つのギアシフト素子と係り、
2つ以下のギアシフト素子と係わったギアシフトは、3回以下の実験で最適なスキームを得ることができ、3つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、5つのギアシフト素子と係り且つその中の3つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフト、及び4つのギアシフト素子と係り且つその中の2つのギアシフト素子が交互作用を有するギアシフトは、いずれも直交表で分析され、分析には対応するリストを選択し、
評価指標として、出力軸の角速度の変化量、出力軸の角速度の変化率、出力軸の角速度の二次微分、及び時間を決定し、「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを3つの水準として選択し、交互作用のない直交分析を実行し、実験を通じて実験データが得られ、実験データにより幅を算出し、因子の優先順位を決定し、各評価指標の好ましいスキームを得、重み係数に従って最適なスキームを決定し、異なる作動状態の最適なスキームをペアマトリックスにし、ギアの間の切り替えが制御されるようにプログラムを作成する。
【0060】
上記の単純な機械式伝動モードギアシフトの制御方法は、具体的に、
1)評価指標として、出力軸の角速度の変化量α、出力軸の角速度の変化率β、出力軸の角速度の二次微分γ、及び時間tを選択し、α、β、γがそれぞれ回転数のゼロ次、1階微分、2階微分であり、時間tと共に時空の評価指標となり、
出力軸の角速度の変化量α
出力軸の角速度の変化量は、
【数31】
出力軸の角速度の変化率は、
【数32】
出力軸のトルクは、以下の式(3)によって決定され、
【数33】
出力軸の角速度の二次微分は、
【数34】
衝撃度は、車両の縦加速度の変化率で、式(5)によって決定され、
【数35】
【0061】
【数36】
表中、「1」、「2」、及び「3」は、それぞれ関わるギアシフト素子の「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを示し、「a」と「b」は、それぞれ交互作用のないギアシフト素子を示し、「c」、「d」、及び「e」は、それぞれ交互作用のあるギアシフト素子を示し、
機械ギアIから機械ギアIVへの切り替えを例として、
「5つの因子」としては、ブレーキB2、クラッチC4、クラッチC6、ワンウェイクラッチF1、及びワンウェイクラッチF2が決定され、それらの5つのギアシフト素子のスイッチングタイミングは、伝動系のギアシフト品質に影響を与える5つの因子である。「5つの因子」の中で、ブレーキB2とクラッチC4とは、交互作用がなく、クラッチC6とワンウェイクラッチF1とワンウェイクラッチF2とは、交互作用がある。
【0062】
「3つの水準」としては、ギアシフト素子の「繰り上げ」、「時間通り」、及び「遅延」の切り替えを選択し、実際の情況に応じて「繰り上げ」、及び「遅延」の時間を選択でき、「繰り上げ」、及び「遅延」の時間は、同じでもよく、異なってもよい。この例では、係わる素子が数多く、またそれらの間で交互作用があるため、「繰り上げ」及び「遅延」の時間は、0.5sが選ばれる。
【0063】
【0064】
3)表3に示すような直交表ヘッダーを設計し、実験計画を明確にし、27回の実験を実行し、xi(i=1,・・・,27)の実験結果を得、関わる統計値を算出する。
【0065】
4)分散分析表に従って因子と誤差との偏差平方和及び自由度を決定し、F値を決定し、それらの値を臨界値と比較して因子と誤差との有意性を決定し、
【表7】
総偏差平方和Q
T、各因子の偏差平方和Q
F、及び誤差の偏差平方和Q
eは、それぞれ
【数38】
であり、総自由度f
T=26、各因子の自由度f
F=2、誤差の自由度f
e=4、
因子と誤差との平均偏差の平方和は、
【数39】
であり、機械式伝動モード素子のスイッチングタイミング分散分析表は、表1に示すように、
変動要因が主に(1)「a」、「b」、「c」、「d」、及び「e」、(2)「e×c」(e×c1とe×c2とが含まれる)、「e×d」(e×d1とe×d2とが含まれる)、及び「c×d」(c×d1とc×d2とが含まれる)、(3)誤差e
*の3つの部分にあり、
算出された変動要因の各因子と誤差との偏差平方和、自由度、及び平均偏差の平方和により、F
F値とF
α(f
F,f
e)値を比較し、
F
F>F
α(f
F,f
e)の場合は、該因子による影響が有意であり、それ以外の場合は、有意性がない。有意性のある因子を選択し、各因子の重要性を直感的に分析し、ギアシフトの最適なスキームを決定する。
【0066】
機械ギアの最適なスキームは、以下の式によって定義され、
【数40】
異なる作動状態下で得られたギアシフト機構のスイッチングタイミングデータをグループの形でギアシフト制御器に入力し、さらに各グループのギアシフト装置のスイッチングタイミングを制御することにより、同じ伝動モードが各ギアシフトの中で良好のギアシフト品質を発揮することが保証される。
【0067】
機械ギアIIIから機械ギアIVへの切り替えは、3つのギアシフト素子と係り、その中で第3のクラッチ313と第1のワンウェイクラッチ317とが交互作用を有し、
【数41】
第4の因子の列を交互の列に切り替えればよい。
【0068】
機械ギアIIから機械ギアIVへの切り替えは、4つのギアシフト素子と係り、その中で第3のクラッチ313と第1のワンウェイクラッチ317とが交互作用を有し、
【数42】
関わる余分な列は、空欄になる。
【符号の説明】
【0069】
1 入力軸
2 分路機構
21 分路ブレーキ
22 分路機構太陽歯車
23 分路機構遊星キャリア
24 分路機構リングギア
3 機械式伝動部品
31 前部遊星列部品
311 第1のクラッチ
312 第2のクラッチ
313 第3のクラッチ
314 前部遊星列リングギア
315 前部遊星列遊星キャリア
316 前部遊星列太陽歯車
317 第1のワンウェイクラッチ
32 後部遊星列部品
321 第4のクラッチ
322 後部遊星列太陽歯車
323 後部遊星列遊星キャリア
324 後部遊星列リングギア
325 第1のブレーキ
326 第2のブレーキ
327 第2のワンウェイクラッチ
4 液圧式伝動部品
41 液圧式伝動入力クラッチ
41 入力クラッチ
42 液圧式伝動入力歯車対
43 液圧ポンプ
44 油圧管
44 液圧管
45 液圧モーター
46 液圧式伝動出力歯車対
47 液圧式伝動出力クラッチ
5 出力軸