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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】円筒型電池冷却用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20220624BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20220624BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20220624BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220624BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/653
H01M10/6561
H01M10/6568
H01M50/107
H01M50/204 401H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017104486
(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公開番号】P2018200785
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-02-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503976(JP,A)
【文献】特開平10-106521(JP,A)
【文献】特表2005-534143(JP,A)
【文献】特開2010-114063(JP,A)
【文献】特開2008-311130(JP,A)
【文献】特開平09-266016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/617
H01M 10/625
H01M 10/643
H01M 10/653
H01M 10/6561
H01M 10/6568
H01M 50/107
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円筒型電池を冷却するための熱交換器であって、
所定方向に長くかつ並列状に配置された複数の熱交換部を一体に有しており、各熱交換部が、前記所定方向にのびかつ円筒型電池の外周面における周方向の一部と熱的に接触させられる円弧溝形の伝熱面を有しているとともに、伝熱面に沿うように前記所定方向にのびた貫通孔よりなる冷媒通路を有している熱交換器本体と、
熱交換器本体の一端に設けられ、かつ全ての熱交換部の冷媒通路の一端に通じる冷媒供給路を有しているとともに、冷媒供給路に冷媒を流入させる冷媒入口を有している入口ヘッダと、
熱交換器本体の他端に設けられ、かつ全ての熱交換部の冷媒通路の他端に通じる冷媒回収路を有しているとともに、冷媒回収路から冷媒を流出させる冷媒出口を有している出口ヘッダとを備えており、
前記冷媒通路を構成する外壁および内壁がともに同心の円弧状であり、外壁と内壁の間隔である流通高さが一定となっており、複数の前記冷媒通路の断面積が等しい、円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項2】
熱交換器本体の複数の熱交換部が一列並列状に設けられている、請求項1記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項3】
熱交換器本体の複数の熱交換部がそれぞれ略半円筒状のものであって、隣り合う熱交換部の縁部どうしがフランジ状の連結部によって連結されている、請求項2記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項4】
熱交換器本体の複数の熱交換部が二列並列状に設けられており、一方の列を構成する熱交換部と、他方の列を構成する熱交換部とは、伝熱面が互いに反対方向を向いているとともに、全体として千鳥配列となされている、請求項1記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項5】
熱交換器本体の複数の熱交換部がそれぞれ略半円筒状のものであって、一方の列の熱交換部と他方の列の熱交換部の斜めに隣り合うものどうしが、両熱交換部の共通するラジアル方向に沿ってのびた放射リブ状の連結部によって連結されている、請求項4記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項6】
熱交換器本体がアルミニウム押出形材よりなる、請求項1~5のいずれか1つに記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項7】
熱交換器本体が樹脂成形品よりなる、請求項1~5のいずれか1つに記載の円筒型電池冷却用熱交換器。
【請求項8】
3つ以上の熱交換器を積層状に組み合わせてなる円筒型電池冷却用熱交換器ユニットであって、
前記3つ以上の熱交換器が、請求項2記載の円筒型電池冷却用熱交換器よりなりかつ積層方向両端位置に熱交換部の伝熱面を積層方向内方に向けて配置された2つの第1の熱交換器と、請求項4記載の円筒型電池冷却用熱交換器よりなりかつ積層方向中間位置に二列の熱交換部の伝熱面を積層方向両側に向けて配置された少なくとも1つの第2の熱交換器とで構成されており、
第1の熱交換器の熱交換部と、第2の熱交換器の各列の熱交換部とは、数およびピッチが同一であるとともに、伝熱面の形状および大きさが同一であり、
積層方向に隣り合う熱交換器の対応する熱交換部の伝熱面によって、円筒型電池を収容する円筒孔状の収容部が形成されている、円筒型電池冷却用熱交換器ユニット。
【請求項9】
請求項8記載の円筒型電池冷却用熱交換器ユニットと、同熱交換器ユニットの複数の収容部にそれぞれ収容された複数の円筒型電池とを備えている、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電気自動車、ハイブリッドカー等に搭載される電池モジュールに用いられる円筒型電池を冷却するための熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車の場合、航続距離の延長ニーズに伴い電池の大容量化が求められているため、電気自動車に搭載される電池モジュールには、多数の単電池が収容される。また、劣化による電池の寿命低下を低減するため、電池モジュールを構成する多数の単電池間に生じる温度のバラツキを極小にする対策も必要となる。
ここで、単電池としては、円筒型電池、角型電池、ラミネート型電池などがあり、構造面および性能面からみれば、角型電池やラミネート型電池が大容量の電池モジュールに適しているが、円筒型電池の場合、電池本体の容量当たりのコストに大きなアドバンテージがあるため、電池モジュールに使用されることがある。
【0003】
しかしながら、円筒型電池を電池モジュールに使用する場合、その形状や搭載数の多さから、一般に、個々の電池を冷却して温度調節するための構造が複雑化する傾向にある。
電池モジュール等を構成する複数の円筒型電池を冷却する手段として、例えば下記の特許文献1~3に開示されたものが提案されている。
特許文献1には、アルミニウム等よりなる冷却ブロックを備えており、冷却ブロック内に、横断面円形の貫通孔よりなり円筒型電池が収容される複数の収容部と、複数の収容部に沿うように蛇行状に配された冷媒管路とが形成されている、蓄電池電源装置が開示されている。
特許文献2には、U形に折り曲げられた中空板体よりなる冷却フィンを備えており、冷却フィンの対向する2つの面に、円筒型電池の外周面に熱的に接触させられる円弧溝形の複数の凹部が所定ピッチで形成されているとともに、冷却フィンの内部に、円筒型電池の長さ方向と直交する方向にのびる冷媒通路が形成されている、バッテリー装置が開示されている。
また、特許文献3には、複数段に配置される複数の円筒型電池と、波板状の金属板よりなりかつ隣り合う段の円筒型電池どうしの間に円筒型電池の外周面と熱的に接触するように介在されている集熱板と、集熱板に加熱部が取り付けられているヒートパイプと、ヒートパイプの放熱部に取り付けられている放熱部材とを備えている、電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3312852号公報
【文献】特許第5547918号公報
【文献】特開2001-297741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の蓄電池電源装置の場合、冷却ブロック内の冷媒管路が蛇行状となされているので、冷媒管路の入口側に近い箇所と同出口側に近い箇所とで冷却性能に差が生じ、複数の円筒型電池間の温度のバラツキを効果的に抑制できないおそれがあった。また、この装置の場合、冷却ブロックの重量が大きく、かつスペースが嵩むという問題もあった。
特許文献2のバッテリー装置では、中空板状の冷却フィン内を円筒型電池の長さ方向と直交する方向に冷媒が流れるため、複数の円筒型電池間の温度のバラツキを解消できないおそれがあった。また、同装置の場合、冷却フィンの構造が複雑になるという問題もあった。
特許文献3の電池パックの場合、ヒートパイプからの距離によって集熱性能に差が生じるため、複数の円筒型電池間の温度のバラツキを効果的に抑制できないおそれがあった。しかも、この電池パックは、円筒型電池の冷却手段が、集熱板、ヒートパイプおよび放熱部材によって構成されるため、部品点数が多く、構造が複雑であり、また、設置スペースの面でも問題があった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みて考案されたものであって、例えば電気自動車等の電池モジュールに用いられる複数の円筒型電池間の温度のバラツキを効果的に抑制することができる円筒型電池冷却手段を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
なお、以下において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他に、アルミニウム合金を含むものとする。
【0008】
1)複数の円筒型電池を冷却するための熱交換器であって、
所定方向に長くかつ並列状に配置された複数の熱交換部を一体に有しており、各熱交換部が、前記所定方向にのびかつ円筒型電池の外周面における周方向の一部と熱的に接触させられる円弧溝形の伝熱面を有しているとともに、伝熱面に沿うように前記所定方向にのびた貫通孔よりなる冷媒通路を有している熱交換器本体と、
熱交換器本体の一端に設けられ、かつ全ての熱交換部の冷媒通路の一端に通じる冷媒供給路を有しているとともに、冷媒供給路に冷媒を流入させる冷媒入口を有している入口ヘッダと、
熱交換器本体の他端に設けられ、かつ全ての熱交換部の冷媒通路の他端に通じる冷媒回収路を有しているとともに、冷媒回収路から冷媒を流出させる冷媒出口を有している出口ヘッダとを備えている、円筒型電池冷却用熱交換器。
【0009】
2)熱交換器本体の複数の熱交換部が一列並列状に設けられている、上記1)の円筒型電池冷却用熱交換器。
【0010】
3)熱交換器本体の複数の熱交換部がそれぞれ略半円筒状のものであって、隣り合う熱交換部の縁部どうしがフランジ状の連結部によって連結されている、上記2)の円筒型電池冷却用熱交換器。
【0011】
4)熱交換器本体の複数の熱交換部が二列並列状に設けられており、一方の列を構成する熱交換部と、他方の列を構成する熱交換部とは、伝熱面が互いに反対方向を向いているとともに、全体として千鳥配列となされている、上記1)の円筒型電池冷却用熱交換器。
【0012】
5)熱交換器本体の複数の熱交換部がそれぞれ略半円筒状のものであって、一方の列の熱交換部と他方の列の熱交換部の斜めに隣り合うものどうしが、両熱交換部の共通するラジアル方向に沿ってのびた放射リブ状の連結部によって連結されている、上記4)の円筒型電池冷却用熱交換器。
【0013】
6)熱交換器本体がアルミニウム押出形材よりなる、上記1)~5)のいずれか1つの円筒型電池冷却用熱交換器。
【0014】
7)熱交換器本体が樹脂成形品よりなる、上記1)~5)のいずれか1つの円筒型電池冷却用熱交換器。
【0015】
8)3つ以上の熱交換器を積層状に組み合わせてなる円筒型電池冷却用熱交換器ユニットであって、
前記3つ以上の熱交換器が、上記2)の円筒型電池冷却用熱交換器よりなりかつ積層方向両端位置に熱交換部の伝熱面を積層方向内方に向けて配置された2つの第1の熱交換器と、上記4)の円筒型電池冷却用熱交換器よりなりかつ積層方向中間位置に二列の熱交換部の伝熱面を積層方向両側に向けて配置された少なくとも1つの第2の熱交換器とで構成されており、
第1の熱交換器の熱交換部と、第2の熱交換器の各列の熱交換部とは、数およびピッチが同一であるとともに、伝熱面の形状および大きさが同一であり、
積層方向に隣り合う熱交換器の対応する熱交換部の伝熱面によって、円筒型電池を収容する円筒孔状の収容部が形成されている、円筒型電池冷却用熱交換器ユニット。
【0016】
9)上記8)の円筒型電池冷却用熱交換器ユニットと、同熱交換器ユニットの複数の収容部にそれぞれ収容された複数の円筒型電池とを備えている、電池モジュール。
【発明の効果】
【0017】
上記1)の円筒型電池冷却用熱交換器にあっては、外周面の一部が熱交換器本体の複数の熱交換部の伝熱面と熱的に接触させられている複数の円筒型電池と、複数の熱交換部内において円筒型電池の長さ方向と平行にのびる冷媒通路を同一方向に流通する冷媒との間で熱交換が行われ、それによって複数の円筒型電池が均一に冷却される。したがって、上記1)の熱交換器によれば、複数の円筒型電池間の温度のバラツキを効果的に抑制することができる。
また、上記1)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、構造が単純であって、製造が容易であるので、コストが抑えられる。
【0018】
上記2)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体の複数の熱交換部が一列並列状に設けられているので、複数の円筒型電池をコンパクトな一列並列状に配置した状態で均一に冷却することができ、また、構造も単純化される。
【0019】
上記3)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体が軽量かつコンパクトであるので、例えば電気自動車等の電池モジュールの構成要素として好適に使用することができる。
【0020】
上記4)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体の複数の熱交換部が二列並列状に設けられているので、複数の円筒型電池を二列並列状に配置した状態で均一に冷却することができ、また、単位スペース当たりに配置される円筒型電池の数を多くすることができるので、同熱交換器を使用することでコンパクトな電池モジュールが得られる。
【0021】
上記5)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体が軽量かつコンパクトであるので、例えば電気自動車等の電池モジュールの構成要素として好適に使用することができる。
【0022】
上記6)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体がアルミニウム押出形材よりなるので、熱伝導率が高く、優れた冷却性能が得られ、また、冷媒通路を形成するための後加工を必要とせず、製造が容易である。
【0023】
上記7)の円筒型電池冷却用熱交換器によれば、熱交換器本体が樹脂成型品よりなるので、より一層の軽量化を図ることができ、また、冷媒通路を形成するための後加工を必要とせず、容易に製造しうる。
【0024】
上記8)の円筒型電池冷却用熱交換器ユニットによれば、多数の円筒型電池を、複数列並列状に配置した状態で、第1の熱交換器および第2の熱交換器によって均一に冷却することができるので、電池間の温度のバラツキを効果的に抑制することがきる。
また、同熱交換器ユニットによれば、単位スペース当たりに配置される円筒型電池の数を多くすることができるので、コンパクトな電池モジュールが得られる。
さらに、同熱交換器ユニットによれば、第1の熱交換器および第2の熱交換器の構造が単純であって、製造が容易であるので、コストが抑えられる。
【0025】
上記9)の電池モジュールによれば、これを構成する多数の円筒型電池を、第1の熱交換器および第2の熱交換器よりなる熱交換器ユニットによって、均一に冷却することができるので、大きな電気容量を確保しつつ、電池間の温度のバラツキを抑えて寿命低下を防止することができる。
また、上記9)の電池モジュールによれば、全体を軽量かつコンパクトなものとすることができるので、例えば電気自動車等に搭載するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の第1の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器を示す分解斜視図である。
図2】同熱交換器の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】この発明の第2の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器を示す分解斜視図である。
図6】同熱交換器の平面図である。
図7図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図7のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】この発明の第3の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器ユニットの要部を示す分解斜視図である。
図11】同熱交換器ユニットの正面図である。
図12】同熱交換器ユニットの垂直横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
図1図4は、この発明の第1の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器(1)を示している。
なお、以下の説明において、図2の左右を「左右」、同下を「前」、同上を「後」といい、また、図3および図4の上下を「上下」というものとする。
【0028】
図1図4に示す熱交換器(1)は、熱交換器本体(2)と、熱交換器本体(2)の前端に設けられた入口ヘッダ(3)と、熱交換器本体(2)の後端に設けられた出口ヘッダ(4)とを備えている。
【0029】
熱交換器本体(2)は、前後方向に長い複数(ここでは4つ)の熱交換部(21)を一体に有している。これらの熱交換部(21)は、左右方向に一列並列状に配置されている。熱交換器本体(2)は、アルミニウム押出形材よりなるが、樹脂成形品としてもよい。
各熱交換部(21)は、略半円筒状のものであって、前後方向にのびかつ円筒型電池(B)の外周面における周方向の略半分と熱的に接触させられる略半円弧溝形の伝熱面(22)を上面側に有しているとともに、伝熱面(22)に沿うように前後方向にのびた貫通孔よりなる冷媒通路(23)を有している。
伝熱面(22)の半径は、円筒型電池(B)の外周面の半径とほぼ等しくなされている。伝熱面(22)の長さは、円筒型電池(B)の長さとほぼ等しくなされているが、1つの伝熱面(22)に2つ以上の電池(B)を直列に配置する場合には、それに応じた長さとなされる。
冷媒通路(23)の前後端は、熱交換部(21)の前後端面に開口させられている。図1および図3に示すように、冷媒通路(23)は、前後方向にのびる仕切壁(24)により、周方向に複数に分割されている。なお、図示の冷媒通路(23)は5つに分割されているが、分割する数は、円筒型電池(B)のサイズや要求される冷却性能等に応じて適宜増減可能である。
複数の熱交換部(21)は、隣り合う熱交換部(21)の縁部どうしが水平フランジ状の連結部(25)によって連結されることにより、一体のものとなされており、それによって熱交換器本体(2)の軽量化およびコンパクト化が図られている。
【0030】
入口ヘッダ(3)は、全ての熱交換部(2)の冷媒通路(23)の前端に通じる冷媒供給路(31)を有しているとともに、冷媒供給路(31)に冷媒を流入させる冷媒入口(32)を有している。
入口ヘッダ(3)は、熱交換器本体(2)の前端面に片面が接合されたアルミニウム製中間プレート(33)と、中間プレート(33)の他面に接合されたアルミニウム製エンドプレート(34)とで構成されている。
中間プレート(33)は、左右方向に長いものであって、熱交換器本体(2)の前端面における複数の熱交換部(21)の伝熱面(22)の輪郭に沿うように上縁から略半円弧状に切り欠かれた複数の切欠部(331)を有している。また、中間プレート(33)には、熱交換器本体(2)の前端面における複数の熱交換部(21)の冷媒通路(23)の前端に対応する箇所に、略半円弧状の連通孔(332)が、切欠部(331)に沿うように形成されている。
エンドプレート(34)は、中間プレート(33)とほぼ同一の外形輪郭を有するものであって、中間プレート(33)の切欠部(331)と合致する切欠部(341)を備えている。また、エンドプレート(34)には、中間プレート(33)と接合される面に、所定パターンの冷媒供給路形成用凹所(342)が形成されている。同凹所(342)は、エンドプレート(34)の下縁部に沿って水平にのびかつ右端がエンドプレート(34)の右端縁に開口した水平直線部(342a)と、中間プレート(33)の連通孔(332)に対応する箇所に切欠部(341)に沿うように形成された複数の円弧部(342b)と、各円弧部(342b)の下端と水平直線部(342a)とを連通させる垂直連通部(342c)とを備えている。なお、各円弧部(342b)の下端を水平直線部(342a)に直に連通させて、垂直連通部(342c)を省略することも可能である。そして、エンドプレート(34)の上記凹所(342)と中間プレート(33)の面とで囲まれた空間により、冷媒供給路形成用凹所(342)と同一パターン、すなわち、水平直線部(31a)、円弧部(31b)および垂直連通部(31c)を備えた冷媒供給路(31)が構成されている。また、冷媒供給路(31)の水平直線部(31a)の右端が、冷媒入口(32)となされている。冷媒入口(32)には、冷媒流通パイプ(35)の一端が挿入固定されている。
【0031】
出口ヘッダ(4)は、全ての熱交換部(2)の冷媒通路(23)の後端に通じる冷媒回収路(41)を有しているとともに、冷媒回収路(41)から冷媒を流出させる冷媒出口(42)を有している。
出口ヘッダ(4)も、入口ヘッダ(3)と同様に、熱交換器本体(2)の後端面に片面が接合されたアルミニウム製中間プレート(43)と、中間プレート(44)の他面に接合されたアルミニウム製エンドプレート(44)とで構成されている。
出口ヘッダ(4)の中間プレート(43)およびエンドプレート(44)は、入口ヘッダ(3)のそれら(33)(34)と実質的に同一であって、中間プレート(43)には、複数の切欠部(431)および連通孔(432)が形成されており、エンドプレート(44)には、複数の切欠部(441)および冷媒回収路形成用凹所(442)が形成されている。同凹所(442)は、水平直線部(442a)、ならびに複数の円弧部(442b)および垂直連通部(442c)を有しているが、水平直線部(442a)は、入口ヘッダ(3)とは逆に、その左端がエンドプレート(44)の左端縁に開口している。そして、エンドプレート(44)の上記凹所(442)と中間プレート(43)の面とで囲まれた空間により、水平直線部(41a)、円弧部(41b)および垂直連通部(41c)を備えた冷媒回収路(41)が構成されている。また、冷媒回収路(41)の水平直線部(41a)の左端が、冷媒出口(42)となされている。冷媒出口(42)には、冷媒流通パイプ(45)の一端が挿入固定されている。
【0032】
アルミニウム製の熱交換器本体(2)、入口ヘッダ(3)および出口ヘッダ(4)の接合一体化は、通常、ろう付によって行われる。ろう付による場合、入口ヘッダ(3)および出口ヘッダ(4)の中間プレート(33)(43)を、両面にろう材層を有する両面ブレージングシートとし、同エンドプレート(34)(44)をベア材とするか、あるいは、中間プレート(33)(43)を、熱交換器本体(2)側の面にろう材層を有する片面ブレージングシートとし、エンドプレート(34)(44)を、中間プレート(33)(43)側の面にろう材層を有する片面ブレージングシートとすればよい。
なお、熱交換器本体を樹脂成形品とする場合には、入口ヘッダおよび出口ヘッダをそれぞれ単一の樹脂成形品によって構成し、これらの構成部材を接着等により接合一体化すればよい。
【0033】
上記の円筒型電池冷却用熱交換器(1)にあっては、熱交換器本体(2)の各熱交換部(21)に円筒型電池(B)が配置されて同電池(B)の外周面の略半分が伝熱面(22)と熱的に接触された状態で、入口ヘッダ(3)の冷媒入口(32)から冷媒が導入されると、冷媒は、冷媒供給路(31)を経て複数の熱交換部(21)の冷媒通路(23)に分配され、これらの冷媒通路(23)を後方に向かって並行して流通し、その間に、各熱交換部(21)の伝熱面(22)を介して、円筒型電池(B)との間で熱交換を行う。これにより、複数の熱交換部(21)に配された円筒型電池(B)が冷却される。その後、冷媒は、各熱交換部(21)の冷媒通路(23)の後端から出口ヘッダ(4)の冷媒回収路(41)に流入し、冷媒出口(42)から排出される。
したがって、上記熱交換器(1)によれば、複数の円筒型電池(B)を、その配置にかかわらず、均一に冷却することができるので、電池(B)間の温度のバラツキが効果的に抑制され、電池寿命の低下が防止される。
【0034】
<第2の実施形態>
図5図9は、この発明の第2の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器(1X)を示している。
以下の説明において、図6の左右を「左右」、同下を「前」、同上を「後」といい、また、図7図9の上下を「上下」というものとする。また、第2の実施形態の熱交換器(1X)において、第1の実施形態の熱交換器(1)と実質的に同一の部材および同一の部分については、図面に同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0035】
図示の円筒型電池冷却用熱交換器(1X)は、第1の実施形態の熱交換器(1)と同様に、熱交換器本体(2X)、入口ヘッダ(3X)、および出口ヘッダ(4X)を備えているが、熱交換器本体(2X)は、上下二列に並列状に配置された複数(ここでは上下各列4つずつ)の熱交換部(21)を備えたものとなされている。
【0036】
熱交換器本体(2X)において、上列を構成する複数(4つ)の熱交換部(21)と、下列を構成する複数(4つ)の熱交換部(21)とは、これらの伝熱面(22)が互いに上下反対方向を向いているとともに、全体として千鳥配列となされている。
また、熱交換器本体(2X)において、上列の熱交換部(21)と下列の熱交換部(21)の斜めに隣り合うものどうしが、両熱交換部(21)の共通するラジアル方向(換言すると、両熱交換部(21)の円弧中心軸線を含む傾斜面)に沿ってのびた放射リブ状の連結部(25X)によって連結されている。したがって、熱交換器本体(2X)は、上下2列に配列された多数の熱交換部(21)を有するものであるにもかかわらず、全体として軽量でかつコンパクトなものとなっている。
【0037】
入口ヘッダ(3X)の中間プレート(33X)およびエンドプレート(34X)は、熱交換器本体(2X)の上下各列の熱交換部(21)の伝熱面(22)の輪郭に沿うように上下各縁から略半円弧状に切り欠かれた複数(ここでは上下各4つ)の切欠部(331)を有している。また、中間プレート(33X)には、これらの切欠部(331)に沿うように連通孔(332)が形成されている。エンドプレート(34X)の冷媒供給路形成用凹所(342)は、エンドプレート(34)の上下幅中央部を左右方向にのびている水平直線部(342a)と、上下の切欠部(341)に沿うように形成された円弧部(342b)と、各円弧部(342b)と水平直線部(342a)とを連通させる垂直連通部(342c)とを備えたものであって、水平直線部(342a)の所要箇所(ここでは左端部)に貫通孔(343)があけられている。そして、エンドプレート(34X)の上記凹所(342)と中間プレート(33X)の面とで囲まれた空間により、冷媒供給路(31)が構成されている。また、冷媒供給路(31)の水平直線部(31a)の左端、すなわち、エンドプレート(34X)の貫通孔(343)が、冷媒入口(32)となされており、この冷媒入口(32)に、冷媒流通パイプ(35)の一端が前方から挿入固定されている。
【0038】
出口ヘッダ(4X)の中間プレート(43X)およびエンドプレート(44X)も、入口ヘッダ(3X)の中間プレート(33X)およびエンドプレート(34X)と実質的に同一のものであるが、冷媒出口(42)は、冷媒回収路(41)の水平直線部(41a)の右端に位置するエンドプレート(44X)の貫通孔(443)によって形成されており、この冷媒出口(42)に、冷媒流通パイプ(45)の一端が後方から挿入固定されている。
【0039】
上述した第2の円筒型電池冷却用熱交換器(1X)にあっては、熱交換器本体(2X)の上下各列の複数の熱交換部(21)に円筒型電池(B)が配置されて同電池(B)の外周面の一部が伝熱面(22)と熱的に接触された状態で、入口ヘッダ(3X)の冷媒入口(32)から冷媒が導入されると、冷媒は、冷媒供給路(31)によって上下各列の複数の熱交換部(21)の冷媒通路(23)に分配され、これらの冷媒通路(23)を後方に向かって並行して流通し、その間に、各熱交換部(21)の伝熱面(22)を介して、円筒型電池(B)との間で熱交換を行う。これにより、複数の熱交換部(21)に配された円筒型電池(B)が冷却される。その後、冷媒は、各熱交換部(21)の冷媒通路(23)の後端から出口ヘッダ(4X)の冷媒回収路(41)に流入し、冷媒出口(42)から排出される。
したがって、上記熱交換器(1X)によれば、上下2列に並列状に配された多数の円筒型電池(B)を、その配置にかかわらず、均一に冷却することができるので、電池(B)間の温度のバラツキが効果的に抑制され、電池寿命の低下が防止される。
【0040】
<第3の実施形態>
図10図12は、この発明の第3の実施形態に係る円筒型電池冷却用熱交換器ユニット(10)を示している。
以下の説明において、図11および図12の上下左右を「上下左右」といい、また、これらの図面に向かって手前側を「前」、同奥側を「後」というものとする。
また、第3の実施形態の熱交換器ユニット(10)において、第1および第2の実施形態の熱交換器(1)(1X)と実質的に同一の部材および同一の部分については、図面に同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0041】
図示の円筒型電池冷却用熱交換器ユニット(10)は、3つ以上(ここでは4つ)の熱交換器(1)(1Y)を上下に積層状に組み合わせてなる。
積層方向両端、すなわち上下両端に位置する第1の熱交換器は、第1の実施形態と実質的に同一の円筒型電池冷却用熱交換器(1)よりなる。これらの熱交換器(1)は、一列並列状の複数の熱交換部(21)の伝熱面(22)を積層方向内方に向けて配置されている。
積層方向中間に位置にする少なくとも1つ(ここでは2つ)の第2の熱交換器は、第2の実施形態と実質的に同一の熱交換器(1Y)よりなる。同熱交換器(1Y)は、二列並列状の熱交換部(21)の伝熱面(22)を積層方向両側、すなわち上下に向けて配置されている。
第1の熱交換器(1)の熱交換部(21)と、第2の熱交換器(1Y)の上下各列の熱交換部(21)とは、数およびピッチが同一となされているとともに、伝熱面(22)の形状および大きさが同一となされている。
そして、積層方向、すなわち上下に隣り合う熱交換器(1)(1Y)の対応する熱交換部(21)の伝熱面(22)によって、円筒型電池(B)を収容する円筒孔状の収容部(5)が形成されている。収容部(5)は、全体として多段状の千鳥配列となされている。
【0042】
この実施形態の第1の熱交換器(1)は、入口ヘッダ(3)の冷媒入口(32)が冷媒供給路(31)の水平直線部(31a)の長さ中央に設けられている点、およびこれと同様に出口ヘッダ(図示略)の冷媒出口が冷媒回収路の水平直線部の長さ中央に設けられている点を除いて、第1の実施形態の円筒型電池冷却用熱交換器(1)と同一である。
【0043】
この実施形態の第2の熱交換器(1Y)は、熱交換器本体(2Y)における上列の熱交換部(21)と下列の熱交換部(21)の斜めに隣り合う熱交換部(21)ものどうしが、放射リブ状の連結部を介さずに直接連結されているとともに、上下各列において左右に隣り合う熱交換部(21)の縁部どうしが水平フランジ状の連結部(25Y)によって連結されている点で、第2の実施形態の円筒型電池冷却用熱交換器(1X)と相違している。第2の熱交換器(1Y)の熱交換器本体(2Y)には、上下各列における隣り合う熱交換部(21)どうしの間に、横断面略三角形の空洞部(26)が形成されており、これらの空洞部(26)が肉抜きの機能を果たすことで、熱交換器本体(2Y)の軽量化が図られている。また、第2の熱交換器(2Y)では、入口ヘッダ(3Y)の冷媒供給路(31Y)およびこれを形成するためにエンドプレート(34Y)に設けられている凹所(342Y)が、全体として一体化された大きなものとなされており、冷媒供給路(31Y)の中央付近に冷媒入口(32Y)が設けられている。図示は省略したが、出口ヘッダの冷媒回収路も、冷媒供給路(31Y)と同様に、全体として一体化された大きなものとなされており、その中央付近に冷媒出口が設けられている。
【0044】
熱交換器ユニット(10)を構成する熱交換器(1)(1Y)は、図示しない適宜の連結手段(例えば結束部材やケースなど)によって、積層状に一体化される。
この熱交換器ユニット(10)の各収容部(5)に円筒型電池(B)が収容されることにより、電池モジュールが構成される。
そして、各熱交換器(1)(1Y)に冷媒を供給して円筒型電池(B)との間で熱交換させることにより、多数の円筒型電池(B)の冷却が並行して均一に行われ、電池(B)間の温度のバラツキが効果的に抑制される。
また、上記の電池モジュールは、多数の円筒型電池(B)を使用するにもかかわらず、これらを収容保持して冷却するための熱交換器ユニット(10)が、軽量でコンパクトなものであるため、例えば電気自動車やハイブリッドカーに搭載するのに適している。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、例えば電気自動車などに電池モジュールとして搭載される円筒型電池を冷却するための熱交換器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
(1)(1X)(1Y):円筒型電池冷却用熱交換器
(2)(2X)(2Y):熱交換器本体
(21):熱交換部
(22):伝熱面
(23):冷媒通路
(25)(25X)(25Y):連結部
(3)(3X)(3Y):入口ヘッダ
(31)(31Y):冷媒供給路
(32):冷媒入口
(4)(4X):出口ヘッダ
(41):冷媒回収路
(42):冷媒出口
(10):円筒型電池冷却用熱交換器ユニット
(5):収容部
(B):円筒型電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12