(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20220624BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/06 A
(21)【出願番号】P 2017116250
(22)【出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2017061877
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】桐山 武士
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌樹
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014518(JP,A)
【文献】特開2011-007610(JP,A)
【文献】特開2002-310967(JP,A)
【文献】特開2005-337945(JP,A)
【文献】特開平09-112661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 15/00-15/14
G01N 27/72-27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間に磁場を印加し、潤滑油中に浮遊する磁性粉を前記電極間に集積して、前記電極間の電気抵抗の低下を検知するセンサであって、
前記電極間の少なくとも一部に前記磁性粉が集積可能な検知領域が設けられ、
前記検知領域以外の前記電極の周囲の空間である非検知領域において前記磁性粉の集積が抑制され、
前記電極が、
第1電極と、
複数の第2電極と、を含み、
前記第1電極と各前記第2電極との間にそれぞれギャップ部が設けられ、
前記第1電極と前記第2電極とが前記ギャップ部に面する部分において異なる極性に磁化されることにより、前記ギャップ部のそれぞれに前記磁場が印加される検知領域が設けられ、
前記第2電極間に電気絶縁性を有する非磁性材料から形成された部材が介在する、
センサ。
【請求項2】
前記磁場を生じさせる磁石を更に備えた、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記非検知領域において、前記電極を被覆して前記磁性粉の集積を抑制する被覆部材を備えた、
請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記磁石の全周が磁石用被覆部材によって被覆された、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記磁場が、前記検知領域に選択的に印加される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記複数の検知領域において、ギャップ長がそれぞれ異なる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記検知領域から外部に磁束が漏れないように構成された、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記検知領域が、
前記第1電極に形成された内周面と、
前記第2電極に形成された、前記内周面と平行に対向する外周面と、で挟まれた領域であり、
前記検知領域において、磁束が前記内周面及び前記外周面と垂直に交わる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機等の機械装置では、歯車や軸受等の機械部品の損傷を防止するため、機械部品を収容するハウジング内に潤滑油が貯められている。潤滑油内には、機械装置の運転時に機械部品が摩耗することにより、摩耗粉(主に鉄粉)が混入する。
【0003】
一般に、機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、潤滑油への摩耗粉の混入量(機械部品における摩耗粉の発生量)が増加する。予防保全を行うためには、摩耗粉の発生量増加を適切なタイミングで検知する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1に、オイル内の金属粉量を検知するセンサが記載されている。特許文献1に記載のセンサは、永久磁石を有するセンサヘッド部と、センサヘッド部の先端面に設けられたカップ状電極と、センサヘッド部の外周面に並べて配置された複数の棒状導電体を備えている。永久磁石によって磁場が印加される棒状導電体とカップ状電極の対向する端面間(検知領域)に摩耗粉が集積して導電体が短絡すると、センサの出力が変化する。特許文献1では、センサの出力が変化することにより、オイルの汚れ具合を検知することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のセンサでは、検知領域以外の周辺空間にも磁束が漏れ出して、検知領域以外の箇所にも摩耗粉が集積するため、検知領域に集積する摩耗粉が少なくなり、検知感度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摩耗粉等の磁性粉を検知領域に効率的に集積させることにより、センサが磁性粉を検知する感度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るセンサは、電極間に磁場を印加し、潤滑油中に浮遊する磁性粉が存在する磁性粉を電極間に集積して、電極間の電気抵抗の低下を検知するセンサであって、電極間の少なくとも一部に磁性粉が集積可能な検知領域が設けられ、検知領域以外の電極の周囲の空間である非検知領域において磁性粉の集積が抑制された、ことを特徴とする。
【0009】
上記のセンサにおいて、第1電極と、第2電極と、を含み、第1電極と第2電極との間にギャップ部が設けられ、ギャップ部の少なくとも一部に、磁場が印加される検知領域が設けられた構成としてもよい。
【0010】
上記のセンサにおいて、第1電極が、磁場を生じさせる磁石である構成としてもよい。
【0011】
上記のセンサにおいて、磁場を生じさせる磁石を更に備えた構成としてもよい。
【0012】
上記のセンサにおいて、非検知領域において、電極を被覆して磁性粉の集積を抑制する、非磁性体の被覆部材を備えた構成としてもよい。
【0013】
上記のセンサにおいて、磁石の全周が磁石用被覆部材によって被覆された構成としてもよい。
【0014】
上記のセンサにおいて、磁場が、検知領域に選択的に印加される構成としてもよい。
【0015】
上記のセンサにおいて、検知領域が複数設けられた構成としてもよい。
【0016】
上記のセンサにおいて、第1検知領域と第2検知領域を有し、磁石のN極に隣接して第1検知領域が設けられ、磁石のS極に隣接して第2検知領域が設けられた構成としてもよい。
【0017】
上記のセンサにおいて、複数の第2電極を備え、複数の第2電極と第1電極との間にそれぞれギャップ部が設けられ、ギャップ部のそれぞれに検知領域が設けられた構成としてもよい。
【0018】
上記のセンサにおいて、複数の検知領域において、ギャップ長がそれぞれ異なる構成としてもよい。
【0019】
上記のセンサにおいて、第1電極と第2電極の電極対を複数備え、複数の電極対において、ギャップ長がそれぞれ異なる構成としてもよい。
【0020】
上記のセンサにおいて、外周部に幅の狭い凹部を有し、凹部の奥部に検知領域が設けられた構成としてもよい。
【0021】
上記のセンサにおいて、検知領域と外部空間との間に配置された、大粒子径の異物の通過を阻止するフィルタ部材を備えた構成としてもよい。
【0022】
上記のセンサにおいて、検知領域から外部に磁束が漏れないように構成された構成としてもよい。
【0023】
上記のセンサにおいて、検知領域が、第1電極に形成された第1平面と、第2電極に形成された、第1平面と平行に対向する第2平面と、で挟まれた領域であり、磁束が、検知領域において、第1平面及び第2平面と垂直に交わる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態によれば、非検知領域において磁性粉の集積が抑制されるため、磁性粉を検知領域に効率的に集積させることを可能にし、その結果、センサの検知感度が向上し、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットに備えられる関節部及びその周辺の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るセンサの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るセンサの構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例3に係るセンサの構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例4に係るセンサの構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施例5に係るセンサの構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例6に係るセンサの構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施例7に係るセンサの構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施例8に係るセンサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態として、産業用ロボットを例に取り説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る産業用ロボット1の側面図である。産業用ロボット1は、6軸の垂直多関節ロボットである。
【0028】
図1に示されるように、産業用ロボット1は、床、壁又は天井等に産業用ロボット1を取り付けるための取付部11と、アームA1~A5及び関節部J1~J6を備えている。関節部J1は、取付部11とアームA1とを可動に連結する。関節部J2は、アームA1とアームA2とを可動に連結する。関節部J3は、アームA2とアームA3とを可動に連結する。関節部J4は、アームA3とアームA4とを可動に連結する。関節部J5は、アームA4とアームA5とを可動に連結する。産業用ロボット1の先端部(関節部J6の先端部)には、不図示のハンドピースが取り付けられる。
【0029】
各関節部J1~J6は、それぞれ駆動用のサーボモータ及び減速機を備えている。関節部J1~J6の基本的な構成は共通しているため、以下、関節部J1~J6を代表して関節部J2について具体的な構成を説明し、関節部J1、J3~J6については詳細の説明を省略する。
【0030】
図2は、関節部J2及びその周辺の構成を示す部分断面図である。
図2に示されるように、関節部J2は、フランジ10、減速機20及びサーボモータ30を備えている。
【0031】
フランジ10は関節部J2のフレームであり、減速機20及びサーボモータ30のケースがフランジ10に取り付けられる。また、フランジ10は、アームA1に固定される。フランジ10は、中空部(空間S)を有する略筒状の部材である。フランジ10の軸方向両端の開口部は、それぞれ減速機20及びサーボモータ30により塞がれ、密閉された空間Sが形成される。空間S内には潤滑油が充填され、フランジ10はオイルバスとしても機能する。
【0032】
減速機20は、フランジ10に取り付けられたケース206と、サーボモータ30の出力軸31に接続された入力軸202と、アームA2に固定された出力軸204を備えている。入力軸202及び出力軸204は、ケース206に対して回転軸AX周りに回転可能に支持されている。サーボモータ30の出力は、入力軸202を介して減速機20に入力され、減速機20によって減速された後、出力軸204を介してアームA2に伝達される。この構成により、サーボモータ30を回転駆動すると、アームA2がアームA1に対して回転軸AX周りに回転駆動されるようになっている。
【0033】
減速機20の歯車機構が収容されるケース206内の空間は、フランジ10内の空間Sと連絡している。減速機20が作動すると、ケース206内の歯車機構の回転に伴い、ケース206内の空間とフランジ10内の空間Sとの間で潤滑油の循環が生じる。この潤滑油の循環により、減速機20の内部で発生した摩耗粉がフランジ10内の空間Sに排出される。
【0034】
空間S内には、潤滑油中に浮遊する摩耗粉の増加を検知するためのセンサ40が支持部材214に取り付けられている。センサ40は、磁石によって摩耗粉を電極間のギャップ部に集積させて、電極間の電気抵抗の変化によって潤滑油中の摩耗粉の量を検知するセンサである。センサ40には、複数のバリエーションが考えられる。
図3~
図10の夫々に、センサ40のバリエーションの一部を例示する。なお、センサ40はケース206内に配置しても良い。
【0035】
[実施例1]
図3は、本発明の実施例1に係るセンサ40Aの構成を示す図である。
図3(a)~(c)は、それぞれ、センサ40Aの平面図、右側面図、正面図である。
図3(d)は、
図3(a)のA
A-A
A線における断面図である。
図3(e)は、
図3(c)のB
A-B
A線における断面図である。また、以下の説明において、
図3(e)における左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、
図3(d)における上下方向をZ軸方向(高さ方向、軸方向)と呼ぶ。また、
図3(d)における上方(Z軸正方向)を上、下方(Z軸負方向)を下と呼ぶ。なお、センサ40Aは、使用時には、いずれの方向を鉛直方向に向けてもよい。
【0036】
図3に示されるように、センサ40Aは、永久磁石402A、箱状電極(電極)406A、保持部材408A及びジャケット部材410Aを備えている。なお、
図3(d)に示されるように、信号線41は箱状電極406Aに接続され、信号線42は永久磁石402Aに接続されている。これにより、永久磁石402Aは磁石と電極とを兼ねている。
【0037】
箱状電極406Aは、例えば鉄やフェライトコア、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって形成された磁性体の部材である。箱状電極406Aは、略円筒状であるが、その軸方向における一端側(
図3における下側)の開口部が底部406Aaで塞がれ、上面に開口部を有する、円筒箱状となっている。なお、箱状電極406Aの形状は、箱状のみならず、上面のみ開口した直方体形状や下面が塞がれた多角管形状などの電極でもよい。さらに、電極406Aは、非磁性体の銅などでも良い。
【0038】
箱状電極406Aの中空部には、非磁性体(絶縁体)である樹脂製の保持部材408A(被覆部材)が配置されている。保持部材408Aの上部中央には、永久磁石402Aが埋め込まれている。
【0039】
すなわち、箱状電極406Aは、永久磁石402Aが埋設された保持部材408Aを取り囲う位置に配置されている。なお、永久磁石402Aの形状は、直方体状に限らず、円柱状や多角柱状など、他の形状としてもよい。
【0040】
図3(e)に示されるように、永久磁石402Aの外形は、箱状電極406Aの内周よりも小さい。そのため、永久磁石402Aと箱状電極406Aとの間には、永久磁石402Aの全周に亘って(永久磁石402Aを取り囲う位置に)ギャップ部G
Aが形成されている。言い換えると、永久磁石402Aと箱状電極406Aは、ギャップ部G
Aを介して対向配置されている。
【0041】
永久磁石402Aは電極としての機能を兼ねている。永久磁石402A、箱状電極406Aの各電極には、出力ライン(
図2及び
図3に示される信号線41、42)が接続されている。なお、例えば永久磁石402Aの上面等に、磁性体である別の電極が取り付けられていてもよい。また、永久磁石402Aは、磁石や電磁石でも良く、磁石を銅などの非磁性体で被覆しこの銅に信号線42を接続しても良い。
【0042】
出力ラインの出力端は、センサ40Aの抵抗値をモニタして、抵抗値の変動から潤滑油の劣化を判定するセンサ駆動回路(不図示)と接続されている。一定量を超える摩耗粉がギャップ部GAに集積する(概略的にはギャップ部GAが摩耗粉で埋まる)と、永久磁石402Aと箱状電極406Aとの間の電気抵抗が低下して(短絡して)、出力ラインの出力レベルが変化する。センサ駆動回路は、この電気抵抗の低下により潤滑油の劣化を検知する。また、電気抵抗の低下には、非通電と電通によるオンオフ信号も含まれ、非通電と通電の2つの状態で検知(以下、「デジタル検知」と言う)しても良い。
【0043】
センサ駆動回路は、有線又は無線により、マニピュレータ等の上位制御装置に接続されている。回路基板43は、出力ラインの出力(センサ40Aの出力)を上位制御装置に常時送信してもよく、また、省電力化のため、上位制御装置に間欠的(所定の時間間隔毎)に送信してもよい。
【0044】
上位制御装置は、回路基板43より受け取った出力ラインの出力レベルの変化を検知すると、所定の報知手段(表示装置や音声出力装置)により、例えば減速機20のメンテナンスを促す警告を発する。
【0045】
永久磁石402Aは、
図3(d)の矢印M
A方向に着磁されている。そのため、
図3(d)に示される磁束経路φ
Aが形成される。永久磁石402Aの全周に亘るギャップ部G
Aの中で、磁束経路上に位置する領域には強い磁束が流れる。また、永久磁石402AのS、Nの各磁極近傍に位置する領域にも強い磁束が流れる。以下、説明の便宜上、この領域を「検知領域」と記し、本実施例1における検知領域に符号「G
A」を付す。
【0046】
ギャップ部GAには、永久磁石402Aの磁力により、潤滑油へ混入した機械部品の摩耗粉が吸着される。摩耗粉は、特に、強い磁束が流れる検知領域DAに吸着される。検知領域DAには、安定した量(例示的には、潤滑油への混入量に大凡比例した量)の摩耗粉が吸着される。
【0047】
ギャップ部GAのうち、検知領域DA以外の領域(以下、「非検知領域」と記す。)は、永久磁石402Aとの距離が遠く離れている。そのため、永久磁石402Aとの距離が離れた非検知領域には、ほとんど磁束が流れず、摩耗粉が殆ど吸着されない。
【0048】
このように、本実施例1では、永久磁石402Aとギャップ部GAとが適切な位置関係で配置されることにより、ギャップ部GA内の限られた領域が検知領域DAとして設定されている。吸着量が安定した検知領域DAに摩耗粉が集中的に吸着されるため、センサ40Aの出力が安定する。そのため、上位制御装置は、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することができる。デジタル検知の場合においても、摩耗粉の発生量増加を検出して通電状態となり、検知信号を発信できる。
【0049】
附言するに、ギャップ部GAのうち、検知領域DAから離れた領域ほど磁束が弱くなり、摩耗粉の吸着量が安定しない。言い換えると、このような領域には、典型的には、潤滑油への混入量に比例しない量の摩耗粉が吸着される。非検知領域に吸着された摩耗粉は、吸着量が不安定であることから、センサ40Aにとってはノイズとなり得る。
【0050】
そこで、本実施例1では、樹脂製のジャケット部材410A(被覆部材)がギャップ部GAの上面に接着等によって取り付けられている。ジャケット部材410Aは、ギャップ部GAのうち、検知領域DAのみを外観に露出させる。言い換えると、ジャケット部材410Aは、ギャップ部GAのうち、非検知領域を覆い隠す。
【0051】
ジャケット部材410Aをギャップ部GAの上面に取り付けることにより、非検知領域(より正確には、当該領域の上方に位置するジャケット部材410Aの面)では、永久磁石402Aとの距離が遠く離れる。そのため、永久磁石402Aとの距離が離れたジャケット部材410Aの外面には、摩耗粉が殆ど吸着されない。従って、本実施例1では、摩耗粉の吸着領域が検知領域DAに実質的に制限される。
【0052】
本実施例では、永久磁石402Aの上面と箱状電極406Aの上端面とが同一平面上に配置されている。また、センサ40Aは、永久磁石402A及び箱状電極406Aの形状、サイズ、配置等により、ギャップGAにおいて磁束φAが永久磁石402Aの上面と平行に流れるように構成されている。そのため、磁束φAが磁束経路φAから外れてセンサ40Aの外部にほとんど漏れ出ることがなく、摩耗粉は、センサ40Fの外表面等の非検知領域(検知領域DA以外の箇所)には集積せず、専ら検知領域DA内で磁束φAに拘束されて集積する。
【0053】
[実施例2]
図4は、本発明の実施例2に係るセンサ40Bの構成を示す図である。
図4(a)、
図4(b)は、それぞれ、センサ40Bの平面図、正面図である。
図4(c)は、
図4(a)のA
B-A
B線における断面図である。
図4(d)は、
図4(b)のB
B-B
B線における断面図である。なお、以降の実施例において、前出の実施例と重複する内容の説明は、適宜簡略又は省略する。
【0054】
図4に示されるように、センサ40Bは、永久磁石402B、箱状電極404B(第1電極)、箱状電極406B(第2電極)及び保持部材408B(磁石用被覆部材)を備えている。なお、
図4(c)に示されるように、信号線41は箱状電極404Bに接続され、信号線42は箱状電極406Bに接続されている。磁石用被覆部材で前記磁性粉の集積を抑制するようにしても良い。
【0055】
箱状電極404B及び406Bは、それぞれ、軸方向における一端側の開口部が塞がれた(言い換えると、他端側のみ開口した)円筒状の部材である。箱状電極404Bは、開口部を箱状電極406Bに向けて配置されている。箱状電極406Bは、開口部を箱状電極404Bに向けて、箱状電極404Bと開口部を向かい合わせるように同心に配置されている。
【0056】
保持部材408Bは、箱状電極404B及び406Bの内径よりも僅かに小さな外径の円柱状に形成されていて、箱状電極404Bと箱状電極406Bの中空部内に収容されている。内壁面によって規定される空間に配置されている。
【0057】
箱状電極404Bと箱状電極406Bは、互いの環状の対向面(
図4(c)中、符合404Bcと406Bc)が所定量だけ離間して配置されている。対向面が離間して配置されることにより、対向面間に保持部材408Bの軸方向中央部を囲む環状のギャップ部G
Bが形成されている。
【0058】
永久磁石402Bは、
図4(c)の矢印M
B方向にS極とN極が配置されている。永久磁石402Bは、磁極同士を結ぶ直線が保持部材408Bの中心軸と直交し且つギャップ部G
Bと交差する姿勢で保持部材408Bに埋設されている。このため、保持部材408Bの側面全周に亘るギャップ部G
Bのうち、
図4(c)及び
図4(d)にて黒く塗り潰された領域が、選択的に磁場が印加され、本実施例2における検知領域となっている。以下、この検知領域を「検知領域D
B」と記す。
【0059】
検知領域DB以外の非検知領域は、磁束経路上に位置しておらず且つ永久磁石402Bの各磁極から離れて位置している。そのため、検知領域DBでは強い磁束が流れるが、非検知領域では、ほとんど磁束が流れない。そのため、検知領域DB以外の領域では、摩耗粉が殆ど吸着されない。
【0060】
このように、本実施例2においても、永久磁石402Bとギャップ部GBとが適切な位置関係で配置されることにより、ギャップ部GB内の限られた領域が検知領域DBとして選択的に設定されている。吸着量が安定した検知領域DBに摩耗粉が集中的に吸着されるため、センサ40Bの出力が安定する。そのため、上位制御装置は、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することができる。
【0061】
また、本実施例2では、検知領域DBだけに限らずギャップ部GB全体が外観上露出している。本実施例1と比べて検知領域DBを取り囲う構造物が少ないため、検知領域DBに引き寄せられる摩耗粉が構造物に阻まれにくく、検知領域DBに吸着されやすい。
【0062】
なお、永久磁石402B並びに箱状電極404B及び406Bの形状や位置関係は、
図4に例示されるものに限らない。ギャップ部G
B内の一部の領域にだけ摩耗粉が集中的に吸着される構成であれば、他の形状や位置関係に置き換えられてもよい。
【0063】
また、本実施例では、このように、センサ40Bは、永久磁石402B、箱状電極404B及び406Bの形状、サイズ、配置等により、摩耗粉は、センサ40Fの外表面等には吸着せず、専ら検知領域DB内で磁束に拘束されて集積する。また、永久磁石402Bは、磁石や電磁石でも良い。箱状電極404B及び406Bの形状は、箱状に限定されることなく、円盤状や検知領域DBにのみに形成される円弧状でも良い。
【0064】
[実施例3]
図5は、本発明の実施例3に係るセンサ40Cの構成を示す図である。
図5(a)、
図5(b)は、それぞれ、センサ40Cの平面図、正面図である。
図5(c)は、
図5(a)のA
C-A
C線における断面図である。
図5(d)は、
図5(b)のB
C-B
C線における断面図である。
【0065】
図5に示されるように、本実施例3に係るセンサ40Cは、本実施例2に係るセンサ40Bに対して樹脂製の保護部材410C及び412Cを取り付けることにより、センサ40Cの部品としての取り扱い易さ(絶縁性)を向上させた構成となっている。すなわち、作業者が電極に触れることを低減し感電し難い構成となっている。
【0066】
保護部材410C、412Cは、それぞれ、箱状電極404C、406Cの外面全体を覆っている。但し、検知領域DBに引き寄せられる摩耗粉を阻まないため、対向する保護部材410Cと保護部材412Cとの端面同士の間隔は、少なくともギャップ部GBの幅以上に設定されている。言い換えると、保護部材410C及び保護部材412Cにより、少なくともギャップ部GB全体を含む領域に開口が形成されている。
【0067】
本実施例3においても、吸着量が安定した検知領域DBに摩耗粉が集中的に吸着されるため、センサ40Cの出力が安定する。そのため、上位制御装置は、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することができる。
【0068】
[実施例4]
図6は、本発明の実施例4に係るセンサ40Dの構成を示す図である。
図6(a)、
図6(b)は、それぞれ、センサ40Dの平面図、正面図である。
図6(c)は、
図6(a)のA
D-A
D線における断面図である。
図6(d)は、
図6(b)のB
D-B
D線における断面図である。
【0069】
図6に示されるように、センサ40Dは、永久磁石402B、箱状電極404Ba(第1電極)、箱状電極404Bb(第1電極)、箱状電極406Ba(第2電極)、箱状電極406Bb(第2電極)及び保持部材408Bを備えている。なお、本実施例では、二対の出力ライン(信号線41a及び41b、信号線42a及び42b)がセンサ40Dに接続される。
図6(c)に示されるように、信号線41a、41b、42a及び42bは、それぞれ箱状電極404Ba、404Bb、406Ba及び406Bbに接続されている。
【0070】
本実施例4に係るセンサ40Dは、本実施例2に係るセンサ40Bに対し、箱状電極404Bを2つの電極(箱状電極404Baと箱状電極404Bb)に分割すると共に、箱状電極406Bを2つの電極(箱状電極406Baと箱状電極406Bb)に分割した構成となっている。箱状電極404Baと箱状電極404Bbとの間には、ギャップ部G’が形成されている。箱状電極406Baと箱状電極406Bbとの間には、ギャップ部G”が形成されている。
【0071】
減速機20等の機械装置を加工した際の大粒子径の異物(例えば切粉)がオイルバス20B内に混入することがある。この種の異物がギャップ部GBaに吸着すると、例えば摩耗粉が殆ど発生していない状態であっても、その時点で電極間が短絡して出力ラインの出力レベルが変化し、摩耗粉の発生量が増加したと誤検知される虞がある。
【0072】
そこで、本実施例4では、ギャップ部GBaに加えてギャップ部GBbが形成されている。本実施例4では、全てのギャップ部(ギャップ部GBa、GBb)において電極間が短絡することにより、検知信号を発信するようにすることができる。または、上位制御装置が、摩耗粉が増加したことを判断するように制御しても良い。これにより、外乱(例えば大粒子径の切粉)による誤検知を低減して、上位制御装置は、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することができる。デジタル検知の場合においても、検知領域DBaと検知領域DBbの両方で短絡信号(オン信号)を検知したときに、摩耗粉が増加したと判断するようにしてもよい。
【0073】
[実施例5]
図7は、本発明の実施例5に係るセンサ40Eの構成を示す図である。
図7(a)~(c)は、それぞれ、センサ40Eの平面図、右側面図、正面図である。
図7(d)は、
図7(a)のA
E-A
E線における断面図である。
図7(e)は、
図7(c)のB
E-B
E線における断面図である。
【0074】
センサ40Eは、上述した実施例1に係るセンサ40Aに対してメッシュカバー412E(フィルタ部材)を取り付けた構成となっている。
【0075】
メッシュカバー412Eは、ギャップ部GA(及びジャケット部材410A)全体を覆っている。そのため、例えばメッシュサイズよりも大きい粒子径の切粉や摩耗粉が検知領域DAに吸着される不都合が避けられる。そのため、ロバスト性が向上する。
【0076】
本実施例5では、吸着量が安定した検知領域DAに細かい摩耗粉が集中的に吸着されるため、センサ40Eの出力がより一層安定する。そのため、上位制御装置は、摩耗粉の発生量増加を確実に(高い信頼性で)検知することができる。
【0077】
[実施例6]
図8は、本発明の実施例6に係るセンサ40Fの構成を示す図である。
図8(a)はセンサ40Fの平面図であり、
図8(b)は正面図である。また、
図8(c)は、
図8(a)の切断線A
F-A
Fで示された切断面の断面図であり、
図8(d)は、
図8(c)の切断線B
F-B
Fで示された切断面の断面図である。
【0078】
センサ40Fは、永久磁石402F、箱状電極406F(第2電極)、蓋状電極404F(第1電極)、保持部材408B、絶縁シート407F、おねじ414F及びナット415Fを備えている。なお、
図8(c)に示されるように、信号線41は蓋状電極404Fに接続され、信号線42は箱状電極406Fに接続されている。
【0079】
箱状電極406F及び蓋状電極404Fは、導電性を有する磁性材料によって形成された磁性体の部材である。
【0080】
箱状電極406Fは、円筒状の側壁部406Faと、この側壁部406Faの軸方向における一端側(下側)の開口部を塞ぐ円板状の底部406Fbとを有する、円筒箱状(有底円筒状)の部材である。底部406Fbの中央には、おねじ414Fの軸が通される貫通穴406Fhが同心に形成されている。
【0081】
蓋状電極404Fは、略円板状の部材であり、その中央におねじ414Fの軸が通される貫通穴404Fhが同心に形成されている。蓋状電極404Fの外径は、箱状電極406Fの側壁部406Faの内径よりも小さく、蓋状電極404Fの外周面と箱状電極406Fの内周面との間には、センサ40Fの外部空間(オイルバス20B)とつながる円環状の中空部(ギャップGF)が形成される。
【0082】
永久磁石402Fは、略円板状の部材であり、その中央におねじ414Fの軸が通される貫通穴402Fhが同心に形成されている。
【0083】
保持部材408Fは、実施例1の保持部材408Aと同じ樹脂(非磁性体)から形成された円筒状の部材である。保持部材408Fには、箱状電極406Fが同心に埋め込まれている。保持部材408Fの外径は箱状電極406Fの側壁部406Faの内径よりも僅かに小さく、保持部材408Fは箱状電極406Fの中空部の底に同心に配置される。そのため、永久磁石402Fは、保持部材408Fによって、箱状電極406Fの中空部内に同心に位置決めされて、保持される。また、保持部材408Fの高さ(軸方向における長さ)は、永久磁石402Fの高さと同じであり、保持部材408Fと永久磁石402Fの上面は略同一平面上に配置されている。
【0084】
絶縁シート407Fは、紙や樹脂等から形成された電気絶縁性を有する薄板状の部材である。絶縁シート407Fは、永久磁石402Fよりも外径が大きい円形であり、その中央におねじ414Fの軸が通される貫通穴407Fhが同心に形成されている。絶縁シート407Fは、箱状電極406Fの底部406Fbの上に敷かれて、箱状電極406Fと永久磁石402Fとを電気的に絶縁する。
【0085】
おねじ414F及びナット415Fは、それぞれ樹脂から形成された電気絶縁性を有する非磁性体の部材である。
【0086】
センサ40Fは、箱状電極406Fの底部406Fbの上に絶縁シート407Fを敷き、その上に保持部材408F及び永久磁石402Fを置き、更にその上に蓋状電極404Fを重ねて、おねじ414Fの軸を貫通穴404Fh、406Fh、407Fh及び408Fhに通して、ナット415Fに嵌め、おねじ414Fとナット415Fによって箱状電極406F、絶縁シート407F、永久磁石402F・保持部材408F及び蓋状電極404Fを一体に締め付けることで組み立てられる。
【0087】
永久磁石402Fは
図8(c)の矢印M
F方向に着磁されていて、センサ40F内には、
図8(c)において矢印φ
Fで示される、ギャップG
Fを通る磁束経路が形成される。本実施形態では、蓋状電極404Fの外周面の全周から径方向に放射状に磁束φ
Fが射出され、円環状のギャップG
Fの全周が検知領域D
Fとなる。
【0088】
箱状電極406Fの中空部内に軸方向に積み重ねられる絶縁シート407F、永久磁石402F及び蓋状電極404Fの高さの合計が、箱状電極406Fの中空部の深さと同じ大きさになっている。そのため、組み立て後の蓋状電極404Fの上面と箱状電極406Fの上端面とが同一平面上に配置される。また、蓋状電極404F及び箱状電極406Fの形状、寸法、配置等の調整により、磁束φFが、蓋状電極404Fの外周面から垂直に出て、ギャップGF内を直進し、箱状電極406Fの内周面に垂直に入るように構成されている。そのため、磁束φFが磁束経路φFの外部にほとんど漏れ出ることがなく、摩耗粉は、センサ40Fの外表面等には吸着せず、専ら検知領域DF内で磁束φFに拘束されて集積する。すなわち、検知領域DF以外での摩耗粉の集積が抑制され、検知領域DFに集中的に集積するため、感度の高い検知が可能になる。また、検知領域DFが円周状に形成されることで、多くの摩耗粉を集積するこができ、摩耗粉による減速機等の危機への損傷を低減できる。
【0089】
[実施例7]
図9は、本発明の実施例7に係るセンサ40Gの構成を示す図である。
図9(a)はセンサ40Gの平面図であり、
図9(b)は正面図である。また、
図9(c)は、
図9(a)の切断線A
G-A
Gで示される切断面の断面図であり、
図9(d)は、
図9(b)の切断線B
G-B
Gで示される切断面の断面図である。
【0090】
センサ40Gは、実施例4のセンサ40Dの構成の一部(具体的には、箱状電極404Bb及び406Bb)に変更を加えたものである。実施例4のセンサ40Dでは、箱状電極404Baと404BbのZ軸方向における長さが等しく、また、箱状電極406Baと406BbのZ軸方向における長さも等しいため、箱状電極404Baと箱状電極406Baの間のギャップ部GBaと、箱状電極404Bbと箱状電極406Bbの間のギャップ部GBbは、ギャップ長(ギャップ部における電極間隔)が等しくなっている。これに対して、本実施例では、箱状電極404Bb´のZ軸方向における長さが箱状電極404Baよりも長く、箱状電極406Bb´のZ軸方向における長さが箱状電極406Baよりも長いため、箱状電極404Baと箱状電極406Baの間のギャップ部GBaよりも、箱状電極404Bb´と箱状電極406Bb´の間のギャップ部GBb´の方が、ギャップ長が短くなっている。
【0091】
本実施例では、上述のように、ギャップ部GBb´の方がギャップ部GBaよりもギャップ長が短いため、検知領域DBb´の方が検知領域DBaよりも電極間の導通に必要な摩耗粉の集積量が少なく、早期に導通する。すなわち、本実施例では、正極及び負極の電極(箱状電極404B及び箱状電極406B)をそれぞれ2分割して二組の電極対を設けて、各電極対の間のギャップ長を異なる長さにすることにより、電極間の導通が生じる鉄粉量の閾値(すなわち、導通が生じるタイミング)を2つ設定することが可能になっている。このような構成のセンサを使用することにより、摩耗粉の増加を段階的に検知することが可能になるため、減速機の部品の摩耗の進行状況をより詳細に把握することができ、減速機の故障をより正確に予測することが可能になる。
【0092】
[実施例8]
図10は、本発明の実施例8に係るセンサ40Hの構成を示す図である。
図10(a)はセンサ40Hの平面図であり、
図10(b)は正面図である。また、
図10(c)は、
図10(a)の切断線A
H-A
Hで示される切断面の断面図であり、
図10(d)は、
図10(b)の切断線B
H-B
Hで示される切断面の断面図である。
【0093】
センサ40Hは、実施例6のセンサ40Fの構成の一部(具体的には、蓋状電極404F)に変更を加えて、実施例7のセンサ40Gと同様に摩耗粉の増加を段階的に検出できるようにしたものである。
【0094】
本実施形態の蓋状電極404Hは、4つの電極404Ha、404Hb、404Hc及び404Hdと、4つのスペーサ404Hsとを有している。電極404Ha~dは、実施例6の円板状の蓋状電極404Fを扇形に4分割した磁性体部材である。但し、電極404Ha、404Hb、404Hc及び404Hdの扇の半径は、この順で段階的に(例えば等差的に)大きくなっている。なお、本実施例では、1本の信号線41(接地線)と4本の信号線42a、42b、42c及び42dにより出力ラインが構成される。
図10(d)に示されるように、信号線41は406Fに接続され、信号線42a、42b、42c及び42dは、それぞれ電極404Ha、404Hb、404Hc及び404Hdに接続されている。
【0095】
スペーサ404Hsは、例えば、樹脂やセラミックス等の電気絶縁性を有する非磁性材料により形成された板状部材である。4つの電極404Ha~dは、スペーサ404Hsを介して、接着剤等で周方向に貼り合わされている。
【0096】
このように、蓋状電極404Hの半径が周方向で段階的に変化するため、蓋状電極404Hの外周面と箱状電極406Fの内周面との間のギャップ部GFのギャップ長も、周方向で段階的に変化する。ギャップ部GFは、電極404Ha、404Hb、404Hc及び404Hdにそれぞれ隣接するギャップ部GHa、GHb、GHc及びGHdと、各スペーサ404Hsに隣接する4箇所のギャップ部GHsに区分される。永久磁石402Fにより、箱状電極406Fと蓋状電極404H(各電極404Ha~d)とは、ギャップ部G
Ha
、G
Hb
、G
Hc
及びG
Hd
に面する部分において異なる極性に磁化される。これにより、ギャップ部GHa、GHb、GHc及びGHdは、その全体を磁束φHが通るため、それぞれ検知領域DHa、DHb、GHc及びGHdとなる。ギャップ部GHsは、摩耗粉を集積させる磁束φHが通らないため、非検知領域となる。
【0097】
ギャップ部GFa、GFb、GFc及びGFd(検知領域DHa、DHb、GHc及びGHd)のギャップ長は、例えば等差的に、この順で小さくなっていて、電極間の導通に必要な摩耗粉の集積量も、この順で少なくなっている。従って、電極間の導通は、その逆順、すなわち検知領域DHd、DHc、GHb、GHdの順で発生する。すなわち、本実施例のセンサ40Hは、実施例7のセンサ40Gよりも多い4段階で摩耗粉の増加を段階的に検知可能になっているため、減速機の部品の摩耗の進行状況を更に詳細に把握することができ、減速機の故障を更に正確に予測することが可能になる。
【0098】
なお、本実施例では、蓋状電極404Fを4分割した電極404Ha~dを使用する構成が採用されているが、2分割、3分割又は5分割以上に分割する構成としてもよい。
【0099】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0100】
例えば、センサ40は、上記の実施形態では、産業用ロボット1の旋回胴や腕関節の旋回部を構成する減速機に備えられているが、別の実施形態では、他の工作機械の旋回部等を構成する減速機に備えられたものであってもよい。
【0101】
また、センサ40は、
図2に例示される揺動減速機に限らず、遊星歯車減速機等の他のタイプの減速機に備えられてもよい。
【0102】
また、センサ40は、減速機に限らず、他の機械装置に用いられてもよい。一例として、センサ40は、エンジンオイルの汚れ具合をチェックするためのチェックセンサに転用してもよい。
【0103】
また、上記の実施例1では、ギャップ部GAの一部をジャケット部材410A(被覆部材)で塞ぐことによって非検知領域が設けられているが、磁気を遮蔽する磁気シールド部材(例えば、鉄等の強磁性体の網を樹脂で被覆したもの。)によってギャップ部の一部を覆い、外部空間とを磁気的に遮蔽することによって非検知領域を設けることもできる。
【符号の説明】
【0104】
1 産業用ロボット
20 減速機
30 サーボモータ
40A センサ
202 入力軸
202a 駆動側歯車
204 入力歯車
206 ケース
208 キャリア
210 クランク軸
212a、212b 揺動歯車
214 支持部材
402A 永久磁石
406A 箱状電極
408A 保持部材
410A ジャケット部材
A1~A5 アーム
J1~J6 関節部