(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】操作入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
G06F3/041 480
(21)【出願番号】P 2017202868
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】丸田 孝知
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/059887(WO,A1)
【文献】特開2015-053037(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114793(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132144(WO,A1)
【文献】特開2017-138735(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057593(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025479(US,A1)
【文献】国際公開第2013/057940(WO,A1)
【文献】特開2016-035646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルを振動させる振動素子を有し、前記操作パネルが所定周波数で振動することで操作面に所定の触感が生じる操作部と、
前記操作パネルを前記所定周波数で振動させる第1駆動信号、および前記操作パネルを前記所定周波数の近傍周波数で振動させる第2駆動信号を前記振動素子へ入力する駆動部と
を備え、
前記駆動部は、
前記所定周波数と前記近傍周波数を前記操作パネルの同じ共振帯域内とし、
前記近傍周波数により発生する可聴域の音が、当該所定周波数により発生する可聴域の音によって聴覚上マスキングされる周波数として第1駆動信号および第2駆動信号を前記振動素子へ入力する
ことを特徴とする操作入力装置。
【請求項2】
前記操作パネルが前記所定周波数および所定振動量で振動することで操作面に所定の触感が生じる前記操作部において、
前記駆動部は、
前記振動素子へ前記第1駆動信号を入力することによる前記操作パネルの振動量と、前記振動素子へ前記第2駆動信号を入力することによる前記操作パネルの振動量との総和を前記所定振動量と同等にする
ことを特徴とする請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記所定周波数は、
可聴域より高く、
前記駆動部は、
前記近傍周波数を当該近傍周波数の分数次に相当する周波数の音が前記所定周波数の分数次に相当する周波数の音によって聴感上マスキングされる帯域内の周波数にする
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記近傍周波数が共振帯域内で前記操作パネルの共振周波数から乖離するほど信号レベルが大きくなる複数の前記第2駆動信号を前記振動素子へ出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記操作部は、
一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなる振動構造を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記操作パネルは、
幅および厚さの少なくとも一方が連続的に変化する前記振動構造を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記操作部は、
幅および厚さの少なくとも一方が連続的に変化するリブが前記操作パネルに設けられる前記振動構造を有する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の操作入力装置。
【請求項8】
前記操作部は、
前記操作パネルと基板とを接着する接着層の剛性が連続的に変化する前記振動構造を有する
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の操作入力装置。
【請求項9】
前記操作部は、
前記振動素子として振動量が異なる少なくとも2以上の振動素子が設けられる前記振動構造を有する
ことを特徴とする請求項5~8のいずれか一つに記載の操作入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザによって操作される操作パネルを振動させることによって、入力操作を行うユーザに所定の触感を与える操作入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の操作入力装置は、ユーザに所定の触感を与えるために操作パネルを振動させると、操作パネルから可聴域ノイズが発生することがある。操作入力装置は、操作パネルの振動量を抑えることによって可聴域ノイズを低減することは可能であるが、振動量を抑えるとユーザに所定の触感を与えることができなくなる。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザに所定の触感を与えつつ、操作パネルが発生する可聴域ノイズを低減することができる操作入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る操作入力装置は、操作部と、駆動部とを備える。操作部は、操作パネルを振動させる振動素子を有し、前記操作パネルが所定周波数および所定振動量で振動することで操作面に所定の触感が生じる。駆動部は、前記操作パネルを前記所定周波数で前記所定振動量よりも小さく振動させる第1駆動信号、および前記操作パネルを前記所定周波数の近傍周波数で振動させる第2駆動信号を前記振動素子へ入力する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様に係る操作入力装置は、ユーザに所定の触感を与えつつ、操作パネルが発生する可聴域ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る操作入力装置の説明図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態に係る操作パネルの駆動方法の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態に係る操作パネルの駆動方法の説明図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る操作パネルの駆動方法の説明図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る操作パネルの駆動方法の説明図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る駆動方法の変形例の説明図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る駆動方法の変形例の説明図である。
【
図4C】
図4Cは、実施形態に係る駆動方法の変形例の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態に係る基底膜の応答特性を示す説明図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造の応答特性を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する操作入力装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る操作入力装置1の説明図である。
【0010】
図1に示すように、操作入力装置1は、ユーザが指先Fによって操作する操作部2と、操作部2の動作を制御するとともに、ユーザによる操作部2の操作を検知する制御部3とを備える。
【0011】
操作部2は、表面がユーザによって操作される操作面となる操作パネル21と、操作パネル21の裏面に設けられて操作パネル21を振動させる振動素子22と、台座23と、台座23上で操作パネル21を保持する保持部材(接着層)24とを備える。
【0012】
操作パネル21は、例えば、支持板41と、接触センサ42と、保護層43とが積層された3層構造となっている。支持板41は、例えば、平面視矩形状で厚さが均一な樹脂製の板体である。接触センサ42は、例えば、操作パネル21の面方向に配置される複数の静電容量式感圧センサを備える。保護層43は、例えば、ガラス製または樹脂製の薄膜である。
【0013】
振動素子22は、例えば、制御部3から入力される駆動信号に応じて振動する圧電素子である。かかる振動素子22は、例えば、正弦波の駆動信号が入力される場合に、正弦波の周波数で振動することによって操作パネル21を振動させる。また、振動素子22は、駆動信号の信号レベルに比例した振動量で振動する。
【0014】
制御部3は、駆動部31と、検知部32とを備える。駆動部31は、振動素子22へ駆動信号を入力して振動素子22を振動させることにより、操作パネル21を所定周波数および所定振動量で振動させることで操作面に所定の触感を生じさせる。
【0015】
例えば、駆動部31は、ユーザが操作パネル21の操作面上で指先Fをスライドさせる操作を行う場合に、操作パネル21を超音波帯域の周波数で振動させる。これにより操作パネル21の操作面上にスクイーズ膜が形成される。
【0016】
スクイーズ膜は、操作パネル21が超音波帯域の周波数で振動することで、操作面とユーザの指先Fとの間に空気が引き込まれることにより形成される薄い空気層である。操作パネル21は、操作面と指先Fとの間にかかるスクイーズ膜を形成することによって、操作面の摩擦抵抗を低減することで、指先Fで操作面を操作するユーザにつるつるとした触感を与えることができる。
【0017】
検知部32は、接触センサ42から入力される信号に基づいて、操作パネル21におけるユーザの操作位置を判定する。接触センサ42は、前述したように、操作パネル21の面方向に配置される複数の静電容量式感圧センサを備えており、各静電容量式感圧センサの静電容量に応じた電圧信号を検知部32へ出力する。かかる接触センサ42は、ユーザが操作パネル21を操作すると、操作面におけるユーザの操作位置に対応する位置に配設された静電容量式感圧センサの静電容量が変動する。
【0018】
したがって、検知部32は、かかる静電容量が変動した静電容量式感圧センサの配設位置を操作パネル21における操作位置と判定することができる。検知部32は、判定した操作パネル21におけるユーザの操作位置を示す信号を操作入力装置1の操作によって動作が制御される制御対象の装置(図示略)へ出力する。
【0019】
次に、
図2A~
図3Bを参照し、実施形態に係る駆動部31が操作パネル21を振動させる駆動方法の一例について説明する。
図2A~
図3Bは、実施形態に係る操作パネル21の駆動方法の説明図である。
【0020】
図2Aに示すように、駆動部31は、超音波帯域の所定周波数f(以下、「超音波周波数」と記載する)および所定振動量で操作パネル21を振動させることにより、操作パネル21の操作面上に前述したスクイーズ膜を形成することができる。これにより、操作入力装置1は、操作パネル21を操作するユーザに所定のつるつるした触感を与えることができる。
【0021】
しかしながら、操作入力装置1は、操作パネル21を超音波周波数で振動させた場合に、超音波周波数の分数次(N分の1(Nは、2以上の整数)、典型的には2分の1、以下では、N=2として説明する)に相当する周波数f/2(以下、「分数次周波数」と記載する)の可聴域ノイズ(以下、単に「ノイズ」と記載する)が発生する。
図2Bに示すように、分数次周波数のノイズは、可聴域の周波数の音であり、ユーザに聞き取られると、ユーザに不快感を与えるため低減する必要がある。
【0022】
ここで、人間の聴覚は、所定レベルの音が鳴っている場合に、鳴っている音の近傍周波数の音が鳴っても音圧が所定レベル未満であれば反応しない(聞こえない)という特性がある。このため、ユーザは、例えば、分数次周波数のノイズが鳴っている場合、
図2Bに略放物線状の点線で示す帯域内の音が鳴っても聞き取ることができない。
【0023】
そこで、駆動部31は、
図3Aに示すように、操作パネル21を超音波周波数で所定振動量よりも小さく振動させる第1駆動信号と、操作パネル21を超音波周波数の近傍周波数で振動させる第2駆動信号とを同時に振動素子22へ入力する。
【0024】
ここでの所定振動量は、
図2Aに示す単一の超音波周波数で操作パネル21を振動させて、操作パネル21の操作面とユーザの指先Fとの間にスクイーズ膜が形成される操作パネル21の振動量である。
【0025】
これにより、駆動部31は、超音波周波数の音圧のピークを
図2Aに示す場合より低減することができ、その結果、分数次周波数のノイズの音圧のピークを
図2Aに示す場合よりも低減することができるので、分数次周波数のノイズを低減することができる。
【0026】
このとき、駆動部31は、第1駆動信号を振動素子22へ入力するだけでは、超音波周波数の音圧が
図2Aに示す場合よりも弱いため、ユーザへ与える触感が弱まるが、第2駆動信号を振動素子22へ入力することで、弱まった分の音圧を補うことができる。したがって、操作入力装置1は、ユーザに所定の触感を与えることができる。
【0027】
また、駆動部31は、振動素子22へ第1駆動信号を入力することによる操作パネル21の振動量と、振動素子22へ第2駆動信号を入力することによる操作パネル21の振動量との総和を所定振動量と同等にする。
【0028】
これにより、駆動部31は、
図2Aに示す単一の超音波周波数で操作パネル21を振動させて、操作パネル21の操作面とユーザの指先Fとの間にスクイーズ膜が形成される場合と同様の触感をユーザに与えることができる。
【0029】
また、駆動部31が操作パネル21を超音波周波数の近傍周波数で振動させる第2駆動信号を振動素子22へ入力する場合、
図3Aに示すように、各近傍周波数の分数次に相当する周波数の音が操作パネル21から発生する。
【0030】
このため、駆動部31は、近傍周波数を、近傍周波数の分数次に相当する周波数の音が超音波周波数の分数次に相当する周波数の音によって聴感上マスキングされる帯域内の周波数にする。
【0031】
これにより、
図3Aに示すように、実際には分数次周波数の近傍周波数の音が鳴っているが、かかる音は、
図3Bに示すように、分数次周波数の音によって聴感上マスキングされるので、ユーザに聞き取られることがない。したがって、
図2Bに示す場合に比べてノイズを低減することができる。以上により、所定の触感をユーザに与えつつ、ユーザに不快感を与える可聴音ノイズを低減することができる。
【0032】
なお、上述した操作パネル21を振動させる駆動方法は一例であり、駆動部31が行う操作パネル21の駆動方法は、これに限定されるものではない。次に、実施形態に係る駆動部31が操作パネル21を振動させる駆動方法の変形例について説明する。
図4A~
図4Cは、実施形態に係る駆動方法の変形例の説明図である。
【0033】
操作パネル21は、厚さが均一で平面視矩形状である場合、例えば、
図4Aに略放物線状の実線で示すような固有の応答特性を有する。かかる操作パネル21は、
図4Aにおける略放物線状の実線が存在する共振帯域の周波数で振動するが、共振帯域外の周波数では効率よく振動することができない。このため、駆動部31は、操作パネル21の操作面に所定の触感を生じさせるには、共振帯域内の周波数の駆動信号を振動素子22へ入力する必要がある。
【0034】
そこで、駆動部31は、前述した所定周波数が操作パネル21の共振周波数と同等の第1駆動信号を振動素子22へ入力し、近傍周波数が操作パネル21の共振帯域内の周波数である第2駆動信号を振動素子22へ入力する。
【0035】
これにより、駆動部31は、例えば、共振周波数である超音波周波数の第1駆動信号の信号レベルを低く抑えることで分数次周波数のノイズを低減しつつ、共振周波数の近傍周波数の第2駆動信号によって操作パネル21の振動量を稼ぐことができる。したがって、操作入力装置1は、ユーザに所定の触感を与えつつ、操作パネル21が発生するノイズを低減することができる。
【0036】
また、操作パネル21は、
図4Aに示す略放物線状の実線のピークに対応する共振周波数の駆動信号が振動素子22に入力される場合に、駆動信号の信号レベルに対する振動量が最も大きい。また、操作パネル21は、駆動信号の周波数が共振帯域内で共振周波数から乖離するほど駆動信号の信号レベルに対する振動量が小さくなる。
【0037】
そこで、駆動部31は、
図4Bに示すように、第1駆動信号の周波数である共振周波数の近傍周波数が操作パネル21の共振帯域内で共振周波数から乖離するほど信号レベルが大きくなる複数の第2駆動信号を振動素子22へ出力する。
【0038】
これにより、駆動部31は、
図4Cに示すように、共振周波数の近傍周波数の分数次に相当する周波数で操作パネル21を可能なかぎり大きく振動させることができ、その分、共振周波数での振動量を小さくすることによりノイズを低減することができる。
【0039】
なお、前述したように、操作パネル21は、厚さが均一で平面視矩形状である場合、例えば、
図4Aに略放物線状の実線で示すような固有の応答特性を有するが、共振帯域の幅を広げることができれば、分数次周波数のノイズをさらに低減することができる。
【0040】
具体的には、駆動部31は、操作パネル21の共振帯域が広がると、より多くの近傍周波数の第2駆動信号を振動素子22へ入力し、より多くの近傍周波数で操作パネル21を振動させることにより、操作パネル21の振動量をさらに稼ぐことができる。
【0041】
したがって、操作入力装置1は、共振帯域の幅を広げることができれば、共振周波数での操作パネル21の振動量をさらに小さくして、ユーザに所定の触感を与えつつ、操作パネル21が発生するノイズをより一層低減することができる。
【0042】
そこで、本実施形態では、共振帯域が非常に広い人体における内耳の基底膜の構造を模擬した振動構造を操作部2に採用することによって、操作パネル21の共振帯域を広げる。これにより、本実施形態では、共振周波数の分数次周波数のノイズをさらに低減することができる。
【0043】
ここで、
図5Aおよび
図5Bを参照し、基底膜の応答特性および基底膜の構造を模擬した振動構造の応答特性について説明する。
図5Aは、実施形態に係る基底膜の応答特性を示す説明図である。
図5Bは、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造の応答特性を示す説明図である。
【0044】
人の基底膜は、細長い薄膜が螺旋状に巻回した器官であり基端部から先端部へ向けて硬度(変形し難さ)が徐々に小さくなる構造になっている。これにより、基底膜は、人の耳に高周波帯域の音波が到来すると、長手方向の基端部に近い部位が振動する。また、基底膜は、人の耳に中周波帯域の音波が到来すると、長手方向の中央部に近い部位が振動する。人の耳に低周波帯域の音波が到来すると、長手方向の先端部に近い部位が振動する。
【0045】
このように、基底膜は、加えられる振動の周波数毎に振動する部位が決まっており、
図5Aに示すように、可聴域内の周波数帯域全体にわたって広く均等な応答特性(共振特性)を有する。
【0046】
そこで、本実施形態では、基底膜の構造を模擬した振動構造を操作部2に採用することによって、後述する操作パネルの共振帯域を
図5Bに略放物線状の実線で示すように、平面視矩形平板状の操作パネルの共振帯域(
図5Bに示す略放物線状の点線参照)よりも広くした。
【0047】
以下、
図6~
図12を参照し、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例について説明する。
図6~
図12は、実施形態に係る基底膜の構造を模擬した振動構造例の説明図である。
【0048】
以下の説明では、
図6~
図12に示す構成要素のうち、
図1に示す構成要素と同一の構成要素については、
図1に示す構成要素と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。なお、
図6~
図12では、制御部3の図示を省略している。
【0049】
まず、
図6を参照し、第1構造例に係る操作部2aについて説明する。
図6における上図には、操作部2aの平面視形状を示している。また、
図6の下図には、操作部2aの側面視形状を示している。
【0050】
図6の上図に示すように、操作部2aの操作パネル21aは、平面視台形状をしており、平面視における幅が長手方向の一端から他端へ向かうにつれて連続的に広くなる形状である。また、
図6の下図に示すように、操作パネル21aは、側面視における厚さが均等な平板形状である。
【0051】
かかる構造により、操作パネル21aは、平面視における長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0052】
なお、
図6に示す例では、操作パネル21aの平面視における台形の斜辺に相当する端辺が直線となっているが、操作パネル21aの平面視における幅が長手方向の一端から他端へ向かうにつれて連続的に広くなる形状であれば端辺が曲線になってもよい。
【0053】
次に、
図7を参照し、第2構造例に係る操作部2bについて説明する。
図7における上図には、操作部2bの平面視形状を示している。また、
図7の下図には、操作部2bの側面視形状を示している。
【0054】
操作部2bの操作パネル21bは、
図7の上図に示すように、平面視矩形状をしており、
図7の下図に示すように、長手方向の一端から他端へ向かうにつれて厚さが連続的に薄くなる形状である。なお、操作部2bは、一方の保持部材24b1と、他方の保持部材24b2の厚さを異ならせることによって、操作パネル21bの操作面を台座23の面と平行にしている。
【0055】
かかる構造によっても、操作パネル21bは、平面視における長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0056】
次に、
図8を参照し、第3構造例に係る操作部2cについて説明する。
図8における上図には、操作部2cの平面視形状を示している。また、
図8の下図には、操作部2cの側面視形状を示している。なお、
図8では、振動素子22の図示を省略したが、操作部2cにおいても、他の操作部と同様に操作パネル21の裏面に振動素子22が設けられる。
【0057】
図8の下図に示すように、操作部2cの操作パネル21の裏面には、長手方向の一端から他端へ向かうにつれて厚さが連続的に薄くなるリブ(補強部材)25が設けられる。かかるリブ25は、
図8の上図に示すように、操作パネル21の平面視における2つの長辺のそれぞれに沿って設けられる。なお、操作部2cは、一方の保持部材24c1と、他方の保持部材24c2の厚さを異ならせることによって、操作パネル21の操作面を台座23の面と平行にしている。
【0058】
かかる構造によっても、操作パネル21は、平面視における長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0059】
次に、
図9を参照し、第4構造例に係る操作部2dについて説明する。
図9における左図には、操作部2dの長辺側の側面視形状を示している。また、
図9の右図には、操作部2dの短辺側の側面視形状を示している。
【0060】
なお、
図9の左図に示す保持部材24dのハッチングは、保持部材24dの材料の硬度(剛性)を示しており、ハッチングの斜線の間隔が短いほど硬度(剛性)が高いことを示している。
図9に示すように、操作部2dの保持部材24dは、長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度(剛性)が徐々に小さくなる。
【0061】
かかる構造によっても、操作パネル21は、平面視における長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0062】
次に、
図10を参照し、第5構造例に係る操作部2eについて説明する。
図10における左図には、操作部2eの長辺側の側面視形状を示している。また、
図10の右図には、操作部2eの短辺側の側面視形状を示している。
【0063】
図10に示すように、操作部2eは、操作パネル21の長手方向の一端から他端へ向かう方向に沿って設けられる、複数(ここでは、5つ)の保持部材24e1,24e2,24e3,24e4,24e5を備える。
【0064】
5つの保持部材24e1,24e2,24e3,24e4,24e5は、操作パネル21の長手方向の一端に近いものほど操作パネル21の長手方向の長さが長い。また、5つの保持部材24e1,24e2,24e3,24e4,24e5の間隔は、操作パネル21の長手方向の他端に近いほど大きい。
【0065】
かかる構造によっても、操作パネル21は、平面視における長手方向の一端から他端へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0066】
次に、
図11を参照し、第6構造例に係る操作部2fについて説明する。
図11における上図には、操作部2fの平面視形状を示している。また、
図11の下図には、操作部2fの側面視形状を示している。
【0067】
図11の下図に示すように、操作部2fの操作パネル21の裏面には、操作パネル21の平面視における2つの長辺のそれぞれに沿って一対の振動素子22f1,22f2が設けられる。
【0068】
一対の振動素子22f1,22f2のうち、一方の振動素子22f1は、他方の振動素子22f2よりも平面視における面積が大きい。これにより、操作パネル21は、一方の振動素子22f1が設けられる側の部位が、他方の振動素子22f2が設けられる部位よりも振動し易くなる。
【0069】
かかる構造によっても、操作パネル21は、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。なお、ここでは、2つの振動素子22f1,22f2が設けられるが、3つ以上の振動素子が設けられてもよい。
【0070】
次に、
図12を参照し、第7構造例に係る操作パネル21gについて説明する。
図12には、操作パネル21gの平面視形状を示している。
図12に示すように、操作パネル21gは、平面視帯状のパネルが渦巻き状に巻回された形状をしている。そして、帯状のパネルは、渦の中心から外周へ向かうにつれて幅が徐々に広くなる形状である。
【0071】
かかる構造によっても、操作パネル21gは、帯状のパネルが渦の中心から外周へ向かうにつれて硬度が徐々に小さくなり、基底膜の変形特性と類似した変形特性になるので、平面視矩形平板状の操作パネル21よりも共振周波数を広くすることができる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、例えば、操作パネル21を超音波周波数で振動させることにより、ユーザの指先Fにつるつるとした触感を与える場合について説明したが、本実施形態は、ユーザの指先Fにクリック感を与える場合にも適用することができる。
【0073】
例えば、操作入力装置1は、ユーザが操作パネル21にタッチした場合に、可聴域の低周波数で操作パネル21を振動させることによって、ユーザの指先Fにクリック感を与えることができる。
【0074】
このとき、操作パネル21は、可聴域の振動数で振動するので無駄な音を発生させてしまい、状況によっては、かかる音が周囲に迷惑をかけることがある。そこで、駆動部31は、ユーザの指先Fにクリック感を与える場合にも、前述した駆動方法と同様の駆動方法で操作パネル21を振動させることにより、発生する音を低減することができる。
【0075】
具体的には、駆動部31は、振動量を抑えつつ低周波数の所定周波数で操作パネル21を振動させる第1駆動信号と、操作パネル21を所定周波数の近傍周波数で振動させる第2駆動信号とを振動素子22へ入力する。
【0076】
このとき、駆動部31は、近傍周波数を近傍周波数の音が所定周波数の音によって聴感上マスキングされる帯域内の周波数にする。これにより、操作入力装置1は、低周波数の所定周波数で振動する操作パネル21の振動量を小さくすることにより、操作パネル21から発生する無駄な音を低減することができる。
【0077】
また、操作入力装置1は、所定周波数での振動量を低減した分を、所定周波数の近傍周波数での振動量によって補うことによって、操作パネル21にタッチするユーザの指先Fに十分なクリック感を与えることができる。このとき、近傍周波数での振動により発生する音は、所定周波数の音によってマスキングされるので、ユーザや周囲の人に聞き取られることはない。
【0078】
なお、上述した操作パネル21の駆動方法は、単独でも十分に効果的であるが、さらに他の駆動方法を併用することによって、操作パネル21から発生するノイズをさらに低減することが可能である。
【0079】
例えば、操作入力装置1は、上述した操作パネル21の駆動方法を実行しつつ、振動素子22へ入力する第1駆動信号および第2駆動信号の信号レベルを周期的に増減させたり、第1駆動信号および第2駆動信号を間欠的に入力したりする制御を併用してもよい。
【0080】
操作入力装置1は、かかる制御を行うことにより、単位時間内に操作パネル21を振動させる総振動時間を短縮することによって、操作パネル21が発生するノイズをさらに低減することができる。
【0081】
また、操作入力装置1は、例えば、ユーザが操作パネル21をタップ操作する場合には、正弦波の駆動信号ではなく、振動素子22へ矩形波の駆動信号を1発入力することで、ユーザの指先Fに重い触感を与える。
【0082】
そして、操作入力装置1は、ユーザが操作パネル21上で指先Fをスライドさせるスライド操作するときに限って、正弦波の前述した第1駆動信号および第2駆動信号を振動素子22へ入力して指先Fにつるつるとした触感を与える。
【0083】
これにより、操作入力装置1は、ユーザの指先Fにつるつるとした触感を与える頻度(分数次の周波数のノイズが発生する頻度)を減少させることによって、ユーザにノイズを気付かせ難くすることができる。
【0084】
また、操作入力装置1は、例えば、前述した操作パネル21の駆動方法を実行しつつ、操作パネル21から発生するノイズを抑圧する抑圧音を操作パネル21から発生させる制御を併用してもよい。
【0085】
例えば、操作入力装置1は、予め行われる実験や演算によって導出された抑圧条件を満たし、ノイズに重畳することでノイズと抑圧音とが相殺されるような抑圧音を操作パネル21から発生させる。これにより、操作入力装置1は、操作パネル21が発生するノイズをより一層低減することができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 操作入力装置
2,2a,2b,2c,2d,2e,2f 操作部
3 制御部
21,21a,21b,21g 操作パネル
22,22f1,22f2 振動素子
23 台座
24,24b1,24b2,24c1,24c2,24d,24e1,24e2,24e3,24e4,24e5 保持部材
25 リブ
31 駆動部
32 検知部
41 支持板
42 接触センサ
43 保護層
F 指先