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  • 特許-通気弁を有するカートリッジピストン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】通気弁を有するカートリッジピストン
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/01 20060101AFI20220624BHJP
   F16K 24/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B05C17/01
F16K24/06 B
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017203309
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2018065127
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】20 2016 006 508.5
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517368693
【氏名又は名称】リッター ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ritter GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(72)【発明者】
【氏名】フランク リッター
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/041984(WO,A1)
【文献】特開2010-184235(JP,A)
【文献】特開2010-164196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0089200(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102502060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 17/01
F16K 24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部(2)はピストン(1)の前側の凹みに挿入され、凹みは通過可能な開口(11)と開口を囲む環状の溝(12)を備え、弁部(2)は、ピストン(1)の通過可能な開口(11)を通過する中心体(21)と、少し離れてそれを囲む壁体(22)とからなり、
壁体は、環状の溝(12)に入り、壁部(23)によりピストンの前側で中心体(21)に接続され、それ自身とピストン(1)の環状の壁部(14)との間の環状の隙間(17)により分離される中心体(21)は、環状の溝(12)から通過可能な開口(11)を分離し、後方に向かって先細になるとともに通過可能な開口(11)内に形成される開口壁の突出部(18)の密閉端(42)と働き合う錐体末梢の表面部(41)を有し、
中心体(21)は、その後端で、ピストン(19)の後ろ側から突き出る突出部(29)を有し、錐体末梢表面部(41)と密閉端(42)との間の弁の隙間を開けるために、その突出部を超えて中心体(21)が、バネとして働く壁部(23)によって発生する復旧力に対するピストン(1)の後ろ側(19)に働く圧力に基づいて前方へ押されることができ、
出口を与える通路は、環状の溝(12)と、壁体(22)と環状の壁部(14)と間に形成されるろ過通路(3)を通じて、同様に環状の隙間(17)を通じて通るように規定される、
通気弁を有するカートリッジピストンにおいて、
壁体(22)は、外側壁(25)と内側壁(26)とを有し、それらの間に隙間(27)が形成される2つの壁のある形状であり、隙間は壁部(23)により前端で閉じられ、壁部はピストンの前側から隙間(27)に導く少なくとも1つの空気の通過する開口(28)により貫通され、
内側壁(26)と環状の壁部(14)との間でろ過通路(3)が形成され、そのろ過通路内へ内側壁(26)の後端を回って隙間(27)から空気が入ることができるとともに、環状の壁部(14)の前端を回ってろ過通路(3)から環状の隙間(17)に入ることができることを特徴とする通気弁を有するカートリッジピストン。
【請求項2】
弁部(2)は、壁体(22)の外側壁(25)の外周と環状の溝壁(13)との間のロッキング(15、24)により環状の溝(12)内に閉じ込められる、
請求項1に記載の通気弁を有するピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通気弁を有するカートリッジピストンに関する。この発明は、糊状のかたまりを含むカートリッジのための一般的なピストンと環状のピストンとの両方に適用できる。このピストンは、一室のみまたは同心円状に配列された二室を有し得る。
【背景技術】
【0002】
これまで、通気弁は、ピストンが充填材で満たされたカートリッジの後部の開口に挿入されたときに、ピストンと充填材との間の空気をカートリッジの後部の開口を通して逃していた。それと同時に、浸透油のような充填材または充填材の構成要素が通気弁を通じて逃げることを防止し、または、空気が通気弁を通じて入ることとその工程の後期で充填材に到着することを防止すべきである。これは、ピストンが挿入された後でさえ通気弁が堅く密閉されたままであることを必要とする。同様に、弁が充填材の粒子によって汚染されないことも必要とする。
【0003】
通気弁を有するカートリッジピストンは、特許文献1で知られる。そこで図解され、説明される配置では、弁部が対応して適合したピストンの開口に挿入され、ピストンに相互に作用し、そこで連携して弁を形成する。弁部は、ピストンの貫通した開口を通過する中心体を有し、穴を通じてピストンの後部でピストン上に形成される密閉端と相互に作用する錐体部を有する。
【0004】
錐体部から分離されるその前端には、ピストンの前側に対応して形づくられた溝に入るとともに溝の底部よりも近位にある放射状の外側の溝壁に閉じ込められる前側壁部に向けて、中心体がほぼ円筒の壁体に連結している。
【0005】
弁部分の円筒の壁体は、ピストンの溝の放射状の外側の溝壁とで、空気を入らせる隙間を形成する。そして、戻り止めが、空気が通過可能で、かつ、円筒の壁部分と溝の底部との間でさらに通過可能な、いくつかの空気流路により遮られる。
【0006】
狭い流路のろ過通路は、弁部分の放射状の内側の溝壁と円筒の壁体との間で形成され、受けとめる役割をし、戻り止め機構の空気流路を通過するカートリッジの充填材と浸透油のような構成要素とが中心体の錐体部とピストンの密閉した口との間で形成される弁に到達することを防止する。このろ過通路は、戻り止め機構の直ぐあとに続く。
【0007】
中心体は、ピストンの後部より上にわずかに突き出る。このため、圧力がピストン上にその後部で働くとき、ピストンが挿入されるときの場合と同様に、中心体はわずかに前方に押される。これにより、排出する空気が逃げ得る開口を通じて、中心体の錐体部とピストンの後部の密閉端との間の穴の隙間を開ける。圧力がもはやピストンの後部に働かないとき、中心体の前側を円筒の壁体に接続する壁部が、後方へ中心体を偏らせるバネとしての役目をするように配置され、開口を通じたピストンの密閉端と協力して錐体部でそれを圧縮する。そしてこのようにして、弁を閉じた状態にしておく。
【0008】
しかしながら、その知られた配置の不利な点は、円筒の壁体と放射状の外側の溝壁との間の隙間を通して入るカートリッジの充填材が戻り止め機構の空気流路を塞ぎ得ることにより排出を遮ること、または、戻り止め機構の浸透材料が戻り止め機構の直ぐあとに続くろ過通路を塞ぎ得ることである。排気はもはや不可能であり、ピストンと充填材との間の除去できない空気を取り残す。これは、化学反応や充填材の減損処理を引き起こし得るので、一般的に望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】EP1207969号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、この発明の目的は、改良され、かつ、完全な排気で大きい程度の安全性を提供する排気の機能を有する通気弁を有するカートリッジピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、この目的は、請求項1で示される配置によって達成される。
【0012】
この発明の有利な実施形態は、従属項の内容である。この発明によれば、ピストン内の筒状の壁体の戻り止めに通じる排気ももはや発生せず、円筒の壁体と放射状の外側の溝壁との間の環状の隙間を経た排気もまた発生しない。さらに、円筒の壁体は、大きな肉厚のもので、重なった壁で、後方に向かって開き前方で閉じるそれらの間の比較的大きな空間を形成する2つの壁で、形成される。
【0013】
しかしながら、小さい空気の通路の開口は、円筒の壁体の二つの壁の間の空間に入ることができる空気に出口を与えるその開口を通じて、前方の空間から分離した壁体の壁面部に備えられる。円筒の壁体の放射状の内壁と放射状の内側の溝壁との間で、狭い流路のろ過通路が形成され、空気の通路の穴を通して物質を入らせることができる。
【0014】
円筒の壁体の2つの壁の間の空間から、壁体の内壁と放射状の内側の溝壁との間で、それらの間に形成されるろ過通路を通って、出口を与えられた空気が再び前方へ流れて通過し、そして、今再び、中心体とピストンの開口壁の環状の隙間を通って、流れが後方へ転換する。そして、最終的に、空気が、中心体の錐体部とピストンの密閉端との間の開かれた弁の隙間を通って、開口を通って、外に出る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の通気弁を有するピストンの軸方向横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施例を、この発明による通気弁を有するピストンの軸方向横断面を示す図1を参照して、より詳細に、ここに説明する。
【0017】
図1は、この発明の通気弁を有するピストンの軸方向横断面を示す。弁部2は、ピストン1にその前側から、ピストンの対応する凹みに挿入される。
【0018】
ピストン1の凹みは、通過可能な開口11と、開口を同心円状に取り囲む環状の溝12とからなる弁部2を収容していた。
【0019】
この図では、ピストンの前側は上方に示され、ピストンの後ろ側は下方に示される。以下では、全ての方向の表現が、この状態で言及される。
【0020】
弁部2は、ピストンの貫通した開口11を通じて延びる中心体21と、同心円状に中心体21を囲むとともに環状の溝12に入るほぼ円筒の壁体22と、ピストンの前側で中心体21を円筒の壁体22に接続する壁部23とで構成される。
【0021】
弁部2の円筒の壁体22を収容する環状の溝12は、放射状に外側には外側の溝壁13で区切られ、放射状に内側には環状の溝12を貫通穴11から分離するピストン1のほぼ円筒の壁部14で区切られる。
【0022】
弁部2の円筒の壁体22は、環状の溝12のロッキング機構により、ピストン上の決まった場所に積極的に固定される。このロッキング機構は、壁体22の後端のロッキング要素24が溝の底部16の近くの外側の環状の溝壁13のくり抜き部分15に固着させている。
【0023】
弁部2の円筒の壁体22は、2つの壁の構成を提供し、それらの間の円筒の輪の形で隙間27を定義する外側の円筒壁25と内側の円筒壁26とを有する。隙間は、弁部2の後端(図では下端)に向かって開き、壁部23により弁部2の前端(図では上端)で閉ざされる。壁部23は、その末梢28の周囲に分布した幾つかの小さい空気の通路の開口により穴が開けられる。そして、その開口は、弁部の前表面から隙間27に導く。
【0024】
それ自身と環状の壁部14との間で、壁体22の内壁26は、空気を許可して他の物質を通さない狭い流路により形成されるろ過通路3を形成する。環状の壁部14の長さは、隙間がその前端と壁部23との間で維持されるような方法で必要な寸法に形づくられる。
【0025】
開口11を通じたその末梢の表面と内側の末梢の表面との間で、弁部2の中心体21は、出口を与えられた空気がそれを通じて流れ得る環状の隙間17を形成する。
【0026】
実際の弁4は、ピストンの通路の開口11の後端で放射状に内方に突き出る開口壁の突出部18の密閉端42と協力して、中心体の錐体側面の表面部41により形成される。弁4をきつく閉じるために中心体21の錐体末梢の表面部41が開口壁の突出部18の密閉端42に対して押し付けられるようにしてピストン内に閉じ込められる円筒壁体22の外側の壁25と関連して、全体として、弁部は、壁部23が中心体21をピストンの後ろ側に向かって偏らせるバネとして働くような方法で配置される。
【0027】
その後端では、中心体21は、ピストン19の後方の上に突き出るピンのような突出部29を有する。カートリッジ内にピストンが挿入された時の場合のように、仮に圧力がピストンの後方に対して働けば、ピンのような突出部29は前方に押し付けられる。これにより、中心体21の錐体末梢の表面部41と開口壁の突出部の密閉端42との間の弁の隙間が開き、そこを通じて出口を与えられた空気が逃げ得る。圧力がピストンの後方から取り除かれる時、中心体は再び弾力のある状態で後方へ移動し、密閉端42と協力して弁の隙間を閉じる。
【0028】
ピストンの導入に際し、充填物とピストンの前側との間のカートリッジの後部からの空気が、空気の通路の開口28を通じて、壁体22の外側壁25と内側壁26との間の隙間27に入る。出口を与える工程の間の空気の流れ道は、矢印により示される。中心体22の内側壁26は、環状の溝12の溝の底部16に乗せられる外側壁25よりも僅かに短い。このため、隙間27に入る空気は、内側壁26の後端の周りを流れることができ、また、内側壁26と環状の壁部14との間のろ過通路3の中へ、そしてろ過通路3を通って流れることができる。そして、それは、後ろの方と壁部23との間の隙間を通って環状の壁部14の先導する後端部の周りを通り、中心体21と環状の壁部14との間の環状の隙間の中を通る。そして、そこで、空気がこの環状の隙間を通って流れ、最終的に弁の隙間の開口から出ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・ピストン
2・・・弁部
3・・・ろ過通路
4・・・弁
11・・・開口
12・・・環状の溝
13・・・溝壁
14・・・円筒(環状)壁部
15・・・くり抜き部
16・・・溝の底部
17・・・環状の隙間
18・・・突出部
19・・・ピストン
21・・・中心体
22・・・円筒の壁体
23・・・壁部
24・・・ロッキング要素
25・・・外側の円筒壁
26・・・内側の円筒壁
27・・・隙間
28・・・末梢
29・・・突出部
41・・・表面部
42・・・密閉端
図1