(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】杭穴掘削ヘッド
(51)【国際特許分類】
E21B 10/32 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
E21B10/32
(21)【出願番号】P 2017253901
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】松本 行紀
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112082(JP,A)
【文献】実公昭48-012413(JP,Y1)
【文献】特開平09-119281(JP,A)
【文献】実開昭59-192981(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、自然状態で、一側と他側を結ぶ線を水平とした状態で、この水平位置を保つ場合の前記一側の重量をAとして、前記他側の重量をAと同等またはAより大きく形成した。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記
ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5)前記掘削腕の一側の掘削刃は、前記掘削腕長さ方向で他側の反対側に刃先を向けて配置した。
【請求項2】
オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、長さ方向を部材軸として、前記部材軸が前記水平軸と交差する位置に部材軸と直交する区画軸を設定する。前記区画軸から一側の重量をB、前記区画軸から他側の重量をCとし、
重量B≦重量C、または、重量B≒重量C
とした。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記
ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5) 前記掘削腕の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(6) 前記補助掘削刃は、掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きのなるように、形成した。
【請求項3】
オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、長さ方向の部材軸に対して、前記掘削腕の重心の位置が、前記部材軸上で、水平軸と同等または、水平軸よりも他側に寄っている。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記
ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5) 掘削腕の拡大掘削時の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(6) 前記補助掘削刃は、拡大掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きのなるように、形成した。
【請求項4】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1または
請求項3記載の杭穴掘削ヘッド。
(1) 掘削腕の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(2) 前記補助掘削刃は、掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向き
になるように、形成した。
【請求項5】
以下のように構成したことを特徴とする
請求項1または請求項2記載の杭穴掘削ヘッド。
(1) 掘削腕の拡大掘削時の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(2) 前記補助掘削刃は、拡大掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向き
になるように、形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の構築に際して、杭穴を掘削する杭穴掘削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削機のオーガに接続された掘削ロッドの下端に掘削ヘッドを連結して、杭穴の掘削をしていた。この際、掘削ヘッドは各種提案がなされているが、この発明は、掘削ロッドに連結するヘッド本体に揺動自在に掘削腕(先端に掘削刃を備えている)を設けて構成した掘削ヘッドに係るもので、この掘削ヘッドでは、掘削ヘッド(掘削ロッド、オーガ)を回転させることにより、掘削腕(特に先端部の掘削刃周辺)が土圧を受けることにより、掘削腕が揺動して、揺動角度に応じた径で掘削ができた(特許文献1、2)。掘削腕を開閉(揺動)させるために地上から油圧や機械操作が不要で、かつ径の異なる掘削の切り替えが容易で、また掘削径の大小比が大きくとれた。
【0003】
また、この場合、揺動軸となる水平軸を揺動腕の上端部を取り付けていた。なるべく水平軸から掘削刃(掘削腕の先端)までの長さを長くして掘削径を大きくするためである。したがって、ニュートラル状態(非回転状態(土圧を受けていない状態))で、掘削腕は下方に刃先を向けて垂れている状態にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-112082号公報
【文献】特開平6-336890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
杭穴の軸部の掘削径に対して、杭穴の底(根固め部)や中間深さや地面付近に、軸部より大径で拡大掘削をする場合、拡大掘削用に大きく揺動する際の土圧の大きさによっては、掘削腕が拡大するまでやや時間を要する場合があった。とりわけ、いったん軸部径で杭穴底まで掘削して、杭穴底から杭穴壁を削いで押し広げて拡大掘削する場合に、顕著であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、揺動自在の掘削腕を備えた杭穴掘削ヘッドで、少ない土圧でも掘削腕がより大きく開くように(より大きな揺動角度を取れるように)、掘削腕の上端部で、水平軸より上端側(掘削刃の反対側)をより重くしてあるいは同等の重さとして、少ない土圧でも容易に掘削腕が開き易く構成し、前記問題を解決した。
【0007】
即ちこの第一の発明は、オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、自然状態で、一側と他側を結ぶ線を水平とした状態で、この水平位置を保つ場合の前記一側の重量をAとして、前記他側の重量をAと同等またはAより大きく形成した。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5)前記掘削腕の一側の掘削刃は、前記掘削腕長さ方向で他側の反対側に刃先を向けて配置した。
【0008】
また、第二の発明は、オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、長さ方向を部材軸として、前記部材軸が前記水平軸と交差する位置に部材軸と直交する区画軸を設定する。前記区画軸から一側の重量をB、前記区画軸から他側の重量をCとし、
重量B≦重量C、または、重量B≒重量C
とした。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5) 前記掘削腕の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(6) 前記補助掘削刃は、掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きのなるように、形成した。
【0009】
また、第三の発明は、オーガに連結した掘削ロッドの下端に連結して使用する杭穴を掘削するヘッドであって、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 前記掘削ロッドの下端に連結できるヘッド本体に、水平軸周りに回転自在に掘削腕を連結した。
(2) 前記掘削腕は、長さ方向の中間部に前記水平軸が位置し、前記水平軸から一側に掘削刃を形成し、前記水平軸から他側に錘を形成した。
(3) 前記掘削腕は、長さ方向の部材軸に対して、前記掘削腕の重心の位置が、前記部材軸上で、水平軸と同等または、水平軸よりも他側に寄っている。
(4) 前記杭穴掘削時に、前記掘削刃が刃先を下方に向けるように、前記掘削腕の揺動を規制するストッパーを、前記ヘッド本体または前記掘削腕に取り付けた。
(5) 掘削腕の拡大掘削時の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(6) 前記補助掘削刃は、拡大掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きのなるように、形成した。
【0010】
また、前記各発明において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 掘削腕の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(2) 前記補助掘削刃は、掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きになるように、形成した。
【0011】
また、前記各発明において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 掘削腕の拡大掘削時の揺動方向で前側に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃を突設した。
(2) 前記補助掘削刃は、拡大掘削時に前記掘削腕が揺動した際に、刃先が水平方向より上向きになるように、形成した。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、一側に主掘削刃を備えた掘削腕で、他側に錘を設けて、
(1)自然状態で、一側と他側を結ぶ線を水平とした状態で、この水平位置を保つ場合の前記他側の重量をAとして、他側の重量をAと同等またはAより大きく形成し、
あるいは、
(2)一側の重量WB≒他側の重量WC、または WB≦WC
とし、あるいは、
(3)掘削腕の重心の位置を、部材軸上で、水平軸と同等または、水平軸よりも他側に寄せた。
ので、少ない土圧で、確実に掘削腕を揺動させることができるので、掘削効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の杭穴掘削ヘッドの実施形態で、(a)は掘削時の正面図、(b)はニュートラル状態の正面図、(b)は同じくニュートラル状態の他の正面図、を表す。
【
図2】この発明の杭穴掘削ヘッドの実施形態で、(a)はニュートラル状態の正面図、(b)は同じく底面図、(c)は他のニュートラル状態の正面図で、(d)は同じく底面図、を表す。
【
図3】この発明の杭穴掘削ヘッドの実施形態の正面図で、(a)は軸部掘削時、(b)はニュートラル状態、(c)は拡大掘削時、を表す。
【
図4】この発明の杭穴掘削ロッドの正面図で、(a)は軸部掘削時、(b)は拡大掘削開始時、(c)は拡大掘削時、を表す。
【
図5】この発明の杭穴掘削ヘッドの他の実施例で、(a)は軸部掘削時の正面図、(b)はニュートラル時の正面図、を表す。
【
図6】この発明の杭穴掘削ヘッドを使用した施工方法を説明する概略した平面図及び縦断面図で、(a)は軸部掘削開始時、(b)は軸部掘削完了時、(c)は拡底部掘削開始時、(d)は拡底部掘削完了時、を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づき、この発明の杭穴掘削ヘッドの実例形態について説明する。
【0015】
1.杭穴掘削ヘッド30の基本原理について
【0016】
(1) 掘削ロッド4などとの連結部4を有するヘッド本体1は、下端に固定掘削刃5、5を有する。ヘッド本体1に、本体軸3からL1だけずらした水平軸8周りに揺動自在に掘削腕10A、10Bを取り付ける。掘削腕10A、10Bの下端には主掘削刃13、13が設けてある。
このように構成した杭穴掘削ヘッド30で、掘削腕10A、10Bの水平軸8を通る長さ方向の軸を部材軸19とし、部材軸8に直交し水平軸8を通る線を区画軸20とする(
図1(a))。
区画軸20を境に、主掘削刃13側を一側11として、一側11の重量をWBとする。区画軸20の一側11の反対側を他側12として、錘17を形成して、他側12の重量をWCとする。ここで、
WB<WC
とする。
【0017】
(2) また、他の構成として、以下のように考えることもできる。
ヘッド本体1の水平軸8に揺動時在に掘削腕10A、10Bを設けた杭穴掘削ヘッド30を構成し、掘削腕10A、10Bで水平軸8から主掘削刃13、13側を一側11とし、反対側を他側12として、錘17を形成してある(
図1(b)(c))。
掘削腕10A、10Bを水平方向にした場合、自然状態で(外力が加わっていない状態。ニュートラル状態)、掘削腕10A、10Bの部材軸19が水平な状態を維持できる状態がある(
図1(c)、
図2(c)(d))。この状態の一側11の重量をWAとする。
この際に、掘削腕10A、10Bは、他側12(錘17側)が下になるように、掘削腕10A、10Bを垂直にした場合も、同様に垂直状態を維持できる(
図1(b)、(
図2(a)(b))。
そして、掘削腕10の他側12の重量を、WAより大きく形成するように、掘削腕10(10A、10B)を構成する。
一般に、掘削径に応じて、掘削腕10の一側11の長さや構造が決まるので(=WAが決まる)、それに応じて、他側12(すなわち錘17の重さ)を調整することになる。
【0018】
(3) また、掘削腕10A、10Bで、一側11の重量WBとし、水平軸8から一側11の重心までの距離LBとし、他側12の重量WCとし、水平軸8から他側12の重心までの距離LCとした場合、
WB×LB<WC×LC
とすることもできる(図示していない)。
【0019】
(4) このように形成した杭穴掘削ヘッド30では、掘削腕10A(10B)のみを取り出すと、部材軸19に対して、掘削腕10A(10B)の重心26は水平軸8よりも他側12側に位置していることになる(
図3)。部材軸19が水平軸8を通る鉛直線25と一致していれば釣り合うことになり、わずかに部材軸19が傾けば、傾いた側に掘削腕10A(部材軸19)は揺動してその位置を維持することになる。
したがって、主掘削刃13に矢示27方向(右から左に向けて)土圧が作用すれば(
図3(a)(b))、わずかな土圧でも、掘削腕10Aは
図3(a)のように揺動して、その位置を保ち、杭穴の軸部掘削(小径掘削)できる。
また、他側12(錘17)が右側に傾いた掘削腕10Aの状態(
図3(a))から、逆側の矢示27方向(左から右に向けて)土圧が作用すれば、少ない土圧で、掘削腕10Aは部材軸19が垂直線25に一致する位置を経由して、他側12(錘17)が左側に傾いた掘削腕10Aの状態(
図3(c))に至ることができる。したがって、掘削腕10Aは
図3(c)のように揺動して、その位置を保ち、杭穴の拡大掘削(大径掘削)ができる(
図3(c))。
また、他側12(錘17)が左側に傾いた掘削腕10Aの状態(
図3(c))から、矢示28方向の土圧を解除して、わずかに矢示27方向の土圧を作用させれば、同様に、他側12(錘17)が右側に傾いた掘削腕10Aの状態(
図3(a))とすることもできる。杭穴掘削ヘッド30を掘削した杭穴から引き上げる際に、有効である。
【0020】
(5) 従来の杭穴掘削ヘッドでは、一側11が他側12より重いので、重い一側11の重量(他側12との差)を超えた大きな土圧が作用しなければ、掘削腕10Aの揺動を切り替えることができなかったが、この発明では、小さな土圧の変化で、掘削腕10Aの揺動を切り替えることができる。
なお、一般に土圧の方向27、28の切り替えは、杭穴掘削ヘッド30の回転方向の切り替えで行う。
【0021】
(6) なお、前記において、「掘削腕10の他側12の重量を、WAより大きく形成するように」または「WB<WC」となるように掘削腕10(10A、10B)を構成したの
でよりよいが、「掘削腕10の他側12の重量を、WAと同程度で形成する」または「WB≒WC」とすることも
できる。この場合には、
図3(b)で重心26と水平軸8とがほぼ一致する状態となるので、矢示27、28への土圧の変化は少なくても、掘削腕10A(部材軸19)の揺動を切り替えることができる。
「WB×LB≒WC×LC」とした場合も同様である。
【0022】
2.杭穴掘削ヘッド30の構成
【0023】
(1) 掘削機のオーガ(図示していない)に連結した掘削ロッド40の下端に、連結できる連結部4を備えるヘッド本体1は、下端に下方に向けた固定掘削刃5a、5bを、刃先6、6を下方に向けて、突設する。連結部3の軸芯(掘削ロッド40の軸芯)を通る軸を本体軸3とし、固定掘削刃5a、5bは、本体軸3に近い側の掘削刃5aの刃先6aを短く(上方に位置し)、本体軸3から遠い側の掘削刃5b刃先6bを長く(下方に位置し)設定してある。ヘッド本体1は、横断面が長方形となるように偏平に形成され、垂直面の面積が広い側を大平面2、2とする。
平行な両大平面2、2に直角に、水平軸3を設定する。水平軸3は、本体軸3からL1だけ端(掘削腕10の主掘削刃13の揺動方向)に寄せてある。
また、ヘッド本体1の下端に、地上のプラントに連通するセメントミルクなどの吐出口7を形成してある(
図2(b)(d)参照)。
【0024】
(2) 水平軸8に、掘削腕10の長さ方向の中間位置を回転自在に取り付ける。水平軸8は、ヘッド本体1側に凸部(軸)を形成し、掘削腕側に凸部を挿入する凹部(軸受け)を形成することもでき、また逆に掘削腕10に凸部(軸)を形成し、ヘッド本体1側に凹部(軸受け)を形成することもできる(図示していない)。
掘削腕10は、長さ方向で、一側11に主掘削刃13、13を形成し、他側12に錘17を形成してある。主掘削刃13は、長さ方向で他側12の反対側に刃先14を向けて複数個配置してある。
また、掘削腕10の一側11(固定掘削刃13)で、揺動方向で前側(
図1(a)正面の掘削腕10Aで右側。矢示32方向。主掘削刃13がヘッド本体1から外方に突出する側)に、揺動軌跡に沿って補助掘削刃15を突設した。補助掘削刃15は、掘削時に掘削腕10が揺動した際に、刃先16が水平方向より上向きになるように形成してある(
図1(a))。補助掘削刃16の刃先をこのように構成したので、軸部掘削径で杭穴底まで掘削をして、杭穴掘削ヘッド30を上昇させながら杭穴壁を削いで押し広げて拡大掘削をする際に、効率的である。
また、補助掘削刃15の刃先16は、杭穴の軸部掘削時に、掘削腕10A、10Bが揺動した状態で、最も外周側に位置する主掘削刃13の刃先14と垂直位置が同じ程度となるように調整してある(
図1(a)、
図3(a))。
【0025】
(3) 掘削腕10の長さ方向の軸で、水平軸8を通る軸を部材軸19として、部材軸に直交する軸で水平軸8を通る軸を区画軸20とする。区画軸20から一側11(主掘削刃13側)の重量をWB、区画軸20から他側12(錘17側)の重量をWCとし、
重量WB≒重量WC
としてある(
図1(a))。
【0026】
(4) 続いて、掘削ヘッド本体1で、水平軸8より上方に、軸部掘削時に掘削腕10の揺動を制限するストッパー22、22と、拡大掘削時に掘削腕10の揺動を規制するストッパー23、23を固定する(
図1(a))。
ストッパー22、23を水平軸8より上方に固定したので、ストッパー22、23は掘削腕10の他側12(錘17)に当接し、ストッパー22、23により、掘削腕10、10の揺動範囲を規制する。
【0027】
(5)以上のようにして、杭穴掘削ヘッド30を構成する(
図1(a)。
【0028】
3.杭穴掘削ヘッド30の作動
【0029】
(1) 従来同様、下端に杭穴掘削ロッド40を取り付けた掘削ロッド40をオーガに取り付ける。この状態で、杭穴掘削ロッドは、ニュートラルな状態であるので、小さな外力が加わると回転する状態にあるが、ストッパー22、23があるので、掘削腕10Aの揺動範囲を規制している(
図4(a)、
図4(c))。
オーガ(図示していない)を矢示35方向に(上から見ると左周り。
図6(a))回転させると伴い掘削ロッド40も回転して、回転する杭穴掘削ヘッド40の主掘削刃13、13の刃先14を地面に当てると、主掘削刃13、13が土圧を受けて、掘削腕10Aの主掘削刃13は矢示33方向(掘削腕10Bの掘削刃13は矢示32方向)に揺動して(
図1(a))、径D1の杭穴の軸部42の掘削を開始する(
図1(a)、
図4(a)、
図6(a))。この際、掘削腕10A、10Bは、他側12(錘17)がストッパー22に当接するので、この揺動角度を維持して、径D1の杭穴の軸部42を掘削できる。
また、この際、固定掘削刃5a、5bで、杭穴の中心に近い側を掘削する。
【0030】
(2) 掘削ロッド40を継ぎ足しながら、所定の深さ(支持地盤)まで、径D1で杭穴の軸部42を掘削して(
図6(b))、一旦オーガー(掘削ロッド40)の回転を停止する。この際、掘削腕10A、10Bの主掘削刃13(刃先14)は杭穴の底44付近に位置している。
続いて、オーガ(図示していない)を矢示36方向に(上から見ると右周り。
図6(c))回転させると、伴い掘削ロッド40も回転して、回転する杭穴掘削ヘッド40の主掘削刃13、13の刃先14を杭穴壁43または杭穴底44に当てると、主掘削刃13、13は土圧を受けて、掘削腕10Aの主掘削刃13はは
図1(a)の矢示32方向(掘削腕10Bの主掘削刃13は矢示33方向)に移動して、掘削腕10A、10Bは部材軸19が鉛直線25(本体軸3)を越えて、他側に揺動して、掘削径D2(>D1)となる(
図4(b))。引き続き、掘削腕10A、10Bは揺動して、掘削腕10A、10Bは、他側12(錘17)がストッパー23、23に当接するので、この揺動角度を維持して、径D3(>D2>D1)の杭穴の拡底部45を掘削できる(
図4(c)、
図6(c))。
【0031】
(3) 上記(2)の場合、杭穴の底44から杭穴掘削ヘッド30を上昇させながら、杭穴の径D1の軸部42の穴壁43を削ぐように広げて、径D3の拡底部を掘削する(
図4(c))。この際、補助掘削刃15が刃先16を上方に向けるので、杭穴掘削ヘッド30を上昇させながら杭穴壁43を削ぐように掘削する際に、掘削効率を高めることができる(
図4(c))。
所定の高さまで杭穴掘削ヘッド30を上昇させて、所定の深さ(高さ)の杭穴の拡底部45の掘削を完了する(
図6(d))。
【0032】
(4) 杭穴の拡底部45に掘削が完了したならば、掘削ロッド(オーガ)40の回転を止めて、杭穴の底44から掘削ロッド40ともに、吐出口7から杭穴内にセメントミルクを吐出しながら、杭穴掘削ヘッド30を引き上げる。この際、オーガ(図示していない)の回転を矢示35方向に(上から見ると右周り。
図6(a)(b))とすれば、掘削腕10A、10Bの主掘削腕13は、わずかな土圧により、掘削腕10Aの主掘削刃13は矢示33方向(掘削腕10Bの主掘削刃13は矢示32方向に移動して、ストッパー23から離れ、部材軸19が鉛直線25(本体軸3)を容易に越えて、他側12(錘17)がストッパー22に当たるまで揺動して、径D1の掘削径を維持できる(
図1(a)、
図4(a))。よって、杭穴掘削ロッド30を杭穴の軸部42を容易に通過できる。
引き続き、杭穴内に既製杭を埋設する(図示していない)。
【0033】
(5) なお、杭穴の中間深さに拡大径を有する部分を掘削する場合にも、同様に、その深さで、オーガ(図示していない)の回転方向を矢示36方向に切り替えれば、掘削腕10A、10Bの揺動角度を大きくして、杭穴壁43を削ぐように、掘削径を拡大できる(図示していない)。これは、杭穴の軸部42を掘削中に、一旦戻って拡大し、あるいは、一旦、穴底44まで掘削したあとに中間深さで拡大掘削することもできる(図示していない)。
【0034】
4.他の実施形態
【0035】
(1) 前記実施形態において、補助掘削刃15は掘削時に水平より上向きに形成されれば、他の構成は任意とすることもできる(図示していない)。また、掘削腕10A、10Bの一側11(主掘削刃13、13で十分な土圧を受けることができれば、補助掘削刃15は省略することもできる(図示していない)。
【0036】
(2) また、前記実施形態において、区画軸20から一側11の重量をWB、区画軸20から他側12の重量をWCとして、
重量(一側11)WB≒重量(他側12)WC
としたので、少ない土圧で効率良く掘削できたが、
重量(一側11)WB≦重量WC(他側12)
とすることでも同様の効果を得られる。ただし、この場合、揺動を制御するストッパー22、23の荷重負担が大きくなるので、
重量(一側11)WB×(1.0~1.5)≒重量WC(他側12)
程度が好ましい。
【0037】
(3) また、前記実施形態において、上記構造としたので、掘削腕10A、10Bの長さL2を短くでき、掘削腕10A、10Bの重量を軽くして、水平軸8の構造も簡略化でき、結果として、ヘッド本体1の高さL2をはじめ、ヘッド本体1の構造を小さくかつ簡略化できる(
図4(a)(b))。よって、同じ掘削径に適した杭穴掘削ヘッド30の構造を小型化、簡略化できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ヘッド本体
2 偏平平面
3 本体軸
4 連結部
5a、5b 固定掘削刃
6a、6b 刃先
7 吐出口
8 水平軸
10 掘削腕
11 掘削腕の一側
12 掘削腕の他側
13 主掘削刃
14 刃先
15 補助掘削刃
16 刃先
17 錘
19 部材軸
20 区画軸
22 ストッパー
23 ストッパー
25 鉛直線
26 掘削腕の重心
30 杭穴掘削ヘッド
32、33 矢示
35、36 回転方向
40 掘削ロッド
42 杭穴の軸部
43 杭穴の軸部の穴壁
44 杭穴の底
45 杭穴の拡底部