アルコール化合物の残基である、下記式(1)または下記式(2)で表される末端基を含み、芳香族モノヒドロキシ化合物を0.1~500ppm含有するポリカーボネート樹脂。
は、置換されてもよい炭素数6~15のアルキル基、置換されてもよい炭素数6~15のアルコキシ基、置換されてもよい炭素数6~14のアリール基、置換されてもよい炭素数6~15のアルケニル基、または置換されてもよい炭素数7~15のアラルキル基を表す。)
はそれぞれ独立に、置換されてもよい炭素数1~12のアルキレン基、置換されてもよい炭素数6~14のアリーレン基、置換されてもよい炭素数2~12のアルケニレン基、置換されてもよい炭素数7~15のアリールアルキレン基、または置換されてもよい炭素数7~15のアルキルアリーレン基を表す。R
は、水素原子、置換されてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換されてもよい炭素数6~14のアリール基、置換されてもよい炭素数2~12のアルケニル基、または置換されてもよい炭素数7~15のアラルキル基を表す。nは1~20の整数を示す。)
下記式(B-1)で示されるカーボネート構成単位を含み、単位(A)と単位(B-1)とのモル比(A/B-1)が60/40~90/10である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
アルコール化合物である、下記式(a)または下記式(b)で表されるアルコール化合物を反応させる工程を含む、請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
近年、石油資源の枯渇の懸念や、地球温暖化を引き起こす空気中の二酸化炭素の増加の問題から、原料を石油に依存せず、また燃焼させても二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが成り立つバイオマス資源が大きく注目を集めている。ポリマーの分野においても、バイオマス資源から生産されるバイオマスプラスチックが盛んに開発されている。
バイオマスプラスチックの代表例がポリ乳酸である。ポリ乳酸は、バイオマスプラスチックの中でも比較的高い耐熱性、機械特性を有するため、食器、包装材料、雑貨などに用途展開が広がりつつある。更に、工業材料としての可能性も検討されるようになってきた。しかしながら、ポリ乳酸は、工業材料として使用するに当っては、その耐熱性が不足し、また生産性の高い射出成形によって成形品を得ようとすると、結晶性ポリマーとしてはその結晶性が低いため成形性が劣るという問題がある。
バイオマス資源を原料として使用し、かつ耐熱性が高い非晶性のポリカーボネート樹脂として、糖質から製造可能なエーテルジオール残基から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂が検討されている。特に、モノマーとしてイソソルビドを中心に用いてポリカーボネートに組み込むことが検討されてきた。
イソソルビドと脂肪族ジヒドロキシ化合物とを共重合することにより、耐熱性と成形性に優れたポリカーボネート樹脂が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、脂肪族ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネートと比較して、熱安定性が悪く、熱による劣化が起こりやすい欠点があった。そのため、高温下での重合が困難である。また芳香族ジヒドロキシ化合物と比較して、脂肪族ジヒドロキシ化合物の反応性が高いため、副生成物であるフェノールが十分に留去されず、ポリマー中に多く残存する問題があった。そのため、押出工程によるフェノール低減や横型の反応機を用いる方法が提案されている(特許文献3、特許文献4)。しかし、これらの提案でもフェノール低減効果が不十分であり、押出時に色相が悪化することがある。また、末端に芳香族基が多く存在するため紫外線の透過率が低いという特徴があった。
また、吸水率や成形加工性を改善するために、末端変性を行なったポリカーボネートが提案されているが、残存フェノールや色相に関しては、検討されていない(特許文献5)。
紫外領域の透過率が高いフィルムは、例えば農業用ハウスのフィルムで求められている。例えば、茄子などのアントシアニンの生合成や紫外線を感知するミツバチの受粉交配のためのイチゴ栽培などに紫外線領域の透過率が高いフィルムが必要とされている。また、フォトリソグラフィ工程のフォトマスクのための防塵フィルム(ペリクル)にも、KrFエキシマレーザの波長248nmの透過率が高いフィルムが求められている。さらに、食品包装用フィルムとして、内部に食品を包装後に紫外線殺菌処理するために、紫外線透過率の高いフィルムが求められている。
本発明の目的は、色相に優れ、熱安定性の高いポリカーボネート樹脂およびその製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、紫外線の透過率が高く、農業ハウス用フィルム、防塵フィルム、食品包装用フィルムに適したフィルムを提供することにある。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
(単位(A))
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(A)で表されるカーボネート構成単位(A)を含有する。単位(A)の含有量は、全繰り返し単位を基準として、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上であり、特に好ましくは60モル%以上である。単位(A)の含有量の上限は、全繰り返し単位を基準として、好ましくは94モル%、好ましくは90モル%、より好ましくは87モル%、さらに好ましくは85モル%である。式(A)で示されるカーボネート構成単位の含有量が、全カーボネート構成単位の50~94モル%であることが好ましい。
単位(A)は前記式(A)に示したように、エーテル基を有する脂肪族ジオールから誘導されるものである。前記式(A)は、バイオマス資源の中でエーテル結合を有するジオールから誘導され、耐熱性および鉛筆硬度が高い材料である。
前記式(A)として、立体異性体の関係にある下記式で表される単位(A1)、(A2)および(A3)が例示される。
これらは、糖質由来のエーテルジオールであり、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。単位(A1)、(A2)および(A3)を誘導するエーテル基を有する脂肪族ジオールは、それぞれイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドと呼ばれる。イソソルビドは、でんぷんから得られるDーグルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドのなかでも特に、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドロ-D-ソルビトール)から誘導される単位は、製造の容易さ、耐熱性に優れることから好ましい。
(単位(B-1))
本発明のポリカーボネート樹脂の好ましい態様として、上記単位(A)と下記式で示される単位(B-1)を含み、単位(A)と単位(B-1)との合計が全単位中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
{式中、Wは、炭素数2~30のアルキレン基、炭素数6~30のシクロアルキレン基、または-CH
2-Z-CH
2-で表される基である(式中、Zは炭素数6~30のシクロアルキレン基である。)。}
炭素数2~30のアルキレン基の炭素数は、好ましくは4~24、より好ましくは6~20、さらに好ましくは8~12である。アルキレン基として、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
炭素数6~30のシクロアルキレン基の炭素数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~20である。シクロアルキレン基として、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基等が挙げられる。
-CH
2-Z-CH
2-で表される基中のZは、炭素数6~30のシクロアルキレン基である。ここで、炭素数6~30のシクロアルキレン基の炭素数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~20である。シクロアルキレン基として、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基等が挙げられる。
単位(B-1)は、脂肪族ジオール化合物および脂環式ジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から誘導されるカーボネート単位である。
脂肪族ジオール化合物は、直鎖脂肪族ジオール化合物が好ましい。好ましくは炭素数4~24、より好ましくは炭素数6~20、さらに好ましくは炭素数8~12の直鎖脂肪族ジオール化合物が使用される。
脂環式ジオール化合物として、好ましくは炭素数6~24、より好ましくは炭素数6~20の脂環式ジオール化合物が使用される。
直鎖脂肪族ジオール化合物として、具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール,水素化ジオレイルグリコールなどが挙げられる。なかでも1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、特に1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
脂環式ジオール化合物として、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類等が挙げられる。また1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
OH-CH
2-Z-CH
2-OHで表される化合物として、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール類、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類が挙げられる。また、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール等が挙げられる。
これらのうち、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
これらの脂肪族ジオール化合物および脂環式ジオール化合物は、1種もしくは2種類以上併用して用いても良い。また、本発明で使用されるジオール類は、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ジオールを併用してもよい。芳香族ジオール化合物としては、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカンなどが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、単位(A)を含み、さらに単位(B-1)を含むことが好ましい。これら単位(A)と単位(B-1)とのモル比(A/B-1)は好ましくは15/85~99/1である。モル比(A/B-1)が15/85~99/1の範囲では、耐熱性が高く、さらに溶融粘度が適当で成形性も良好となり、それに伴い、衝撃性に優れる。単位(A)と単位(B-1)とのモル比(A/B-1)は、好ましくは30/70~98/2、より好ましくは40/60~96/4、さらに好ましくは50/50~95/5、特に好ましくは60/40~90/10である。各繰り返し単位のモル比は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
本発明のポリカーボネート樹脂が、単位(A)および単位(B-1)の2成分のみから構成される場合、単位(A)の含有量は、単位(A)および単位(B-1)の合計100モル%に対し、好ましくは50~94モル%である。単位(A)の含有量の下限は、好ましくは60モル%、より好ましくは65モル%、さらに好ましくは70モル%である。単位(A)の含有量の上限は、好ましくは90モル%、より好ましくは87モル%、より好ましくは85モル%である。残りの成分が単位(B-1)となる。
上記単位(A)と単位(B-1)を含む共重合ポリカーボネート樹脂は、後述する「ポリカーボネート樹脂の製造方法」に示した方法により製造することができる。
(単位(B-3))
本発明のポリカーボネート樹脂の好ましい態様として、上記単位(A)と下記式(B-3)で表される単位(B-3)を含み、全繰り返し単位中、単位(A)と単位(B-3)との合計が好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
式中、Xは炭素数3~20のアルキレン基または炭素数3~20のシクロアルキレン基を表す。Rは炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表す。mは1~10の整数を示す。
Rは、Xに置換している置換基である。便宜上Xは、置換基Rが無い2価の基として呼ぶ。しかしXの価数は、置換基Rの数であるmに依存し、(2+m)価となる。例えば、mが1の場合で置換基RがXに1個置換した場合は、Xは3価となる。同様に、mが2のときXは4価、mが3のときXは5価、mが4のときXは6価、mが5のときXは7価、mが6のときXは8価、mが7のときXは9価、mが8のときXは10価、mが9のときXは11価、mが10のときXは12価となる。
単位(B-3)は、側鎖アルキル基または側鎖シクロアルキル基を有する脂肪族ジオールから誘導される単位である。
単位(B-3)は、炭素数の合計が4~12の範囲であることが好ましく、5~10の範囲であることがより好ましい。かかる範囲であると、ポリカーボネート樹脂のHDT(荷重たわみ温度)が高く保持される。
また、単位(B-3)は、Xの炭素数(主鎖炭素数)と、Rの炭素数の合計(側鎖炭素数)が、下記式(i)を満足することが好ましく、下記式(i-a)を満足することがより好ましく、下記式(i-b)を満足することがさらに好ましい。下記式(i)を満足すると、耐沸水性に優れ、且つ大幅に吸水率が低減できるため好ましい。
0.3 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 8 (i)
0.4 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 5 (i-a)
0.5 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 2 (i-b)
(単位(B-3)中のX)
前記式(B-3)において、Xは炭素数3~20のアルキレン基または炭素数3~20のシクロアルキレン基を表す。
Xは、好ましくは炭素数3~12のアルキレン基、より好ましくは炭素数3~8のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数3~6のアルキレン基である。アルキレン基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基などが挙げられる。
Xは、好ましくは炭素数3~12のシクロアルキレン基、より好ましくは炭素数3~8のシクロアルキレン基、さらに好ましくは炭素数3~6のシクロアルキレン基である。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。
(単位(B-3)中のR)
式(B-3)において、Rは炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表す。
Rは、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~8のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
Rは、好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8のシクロアルキル基である。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
(単位(B-3)中のm)
式(B-3)において、mは1~10の整数、好ましくは2~8の整数、より好ましくは2~5の整数を示す。
(単位(B-3)中のXが炭素数3~20のアルキレン基のとき)
単位(B-3)中の、Xが炭素数3~20のアルキレン基で、Rが炭素数1~4のアルキル基で、mが2~8の整数であることが好ましい。単位(B)中のXが炭素数3~5のアルキレン基で、Rが炭素数1~4のアルキル基で、mが1~2の整数であることが好ましい。
単位(B-3)中の-X{-(R)
m}-が、下記式で表される単位(Ba)であることが好ましい。
nは2~6の整数、好ましくは3~5の整数である。n個あるR
aは各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基から選ばれる。n個あるR
bは各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基から選ばれる。n個あるR
aおよびn個あるR
bの内、1個若しくは2個は炭素数1~4のアルキル基であり、他は水素原子であることが好ましい。
単位(B-3)中の、-X{-(R)
m}-は、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジイル基、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル基、3-メチル-1,5-ペンタンジイル基であることが好ましい。
(単位(B-3)中のXが炭素数3~20のシクロアルキレン基のとき)
前記式(B-3)において、Xは炭素数4~5のシクロアルキレン基で、Rは炭素数1~10のアルキル基で、mは3~12の整数であることが好ましい。
単位(B-3)が、下記式で表される単位(Bb)であることが好ましい。
R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ同一または異なっていても良いアルキル基であり、R
1~R
4の炭素数の合計が4~10であり、また、R
1とR
2、R
3とR
4が結合して炭素環を形成しても良い。単位(Bb)中のR
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基またはプロピル基であることが好ましい。
単位(B-3)が、下記式で表される単位(Bb-i)であることが好ましい。
単位(B-3)は、側鎖アルキル基または側鎖シクロアルキル基を有する脂肪族ジオールから誘導される。側鎖アルキル基または側鎖シクロアルキル基を有する脂肪族ジオールとしては、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、1,12-オクタデカンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-シクロヘキシル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどが挙げられる。
なかでも3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールが好ましく、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールが特に好ましい。これらは2種類以上併用して用いても良い。
単位(A)と単位(B-3)とのモル比(A/B-3)は、50/50~95/5の範囲が好ましく、60/40~94/6の範囲がより好ましく、70/30~90/10の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であると耐熱性、耐侯性、低吸水性、表面硬度および低温衝撃特性のバランスに優れることから好ましい。モル比(A/B-3)は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂が、単位(A)および単位(B-3)の2成分のみから構成される場合、単位(A)の含有量は、単位(A)および単位(B-3)の合計100モル%に対し、好ましくは50~94モル%である。単位(A)の含有量の下限は、好ましくは60モル%、より好ましくは65モル%、さらに好ましくは70モル%である。単位(A)の含有量の上限は、好ましくは90モル%、より好ましくは87モル%、より好ましくは85モル%である。残りの成分が単位(B-3)となる。
単位(A)および単位(B-3)以外のその他の単位を誘導するジオール化合物としては、前述した単位(B-1)を誘導するモノマー化合物や、それ以外の脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物のいずれでも良い。具体的には国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
単位(A)と単位(B-3)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。これらの製造方法について基本的な手段は、上述した単位(A)と単位(B-1)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂の手段と同様である。
(末端基)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)または下記式(2)で表される末端基を含む。下記式(1)または下記式(2)で表される末端基の含有量は、全末端基に対して5~95モル%が好ましく、7~93モル%がより好ましく、10~90モル%がさらに好ましく、15~80モル%がよりさらに好ましく、20~75モル%が特に好ましく、23~70モル%がもっとも好ましい。末端基が下限以上であれば芳香族モノヒドロキシ化合物の留去効果が高くなり、上限以下であれば重合度が高くなり好ましい。
式(1)においてR
1は、置換されてもよい炭素数6~15のアルキル基、置換されてもよい炭素数6~15のアルコキシ基、置換されてもよい炭素数6~14のアリール基、置換されてもよい炭素数6~15のアルケニル基、または置換されてもよい炭素数7~15のアラルキル基を表す。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~15のアルキル基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは8~13である。アルキル基として、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~15のアルコキシ基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは8~13である。アルコキシ基として、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~14のアリール基の炭素数は、好ましくは6~12、より好ましくは7~11である。アリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~15のアルケニル基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは8~13である。アルケニル基として、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、ペンタデセニル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数7~15のアラルキル基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは8~13である。アラルキル基として、ベンジル基が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
R
1は、置換されてもよい炭素数6~15のアルキル基が好ましい。
式(2)においてR
2およびR
3はそれぞれ独立に、置換されてもよい炭素数1~12のアルキレン基、置換されてもよい炭素数6~14のアリーレン基、置換されてもよい炭素数2~12のアルケニレン基、置換されてもよい炭素数7~15のアリールアルキレン基または置換されてもよい炭素数7~15のアルキルアリーレン基を表す。
炭素数1~12のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~9、より好ましくは2~6である。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~14のアリーレン基の炭素数は、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルケニレン基の炭素数は、好ましくは3~10、より好ましくは3~8である。アルケニレン基として、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、ノニレニン基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数7~15のアリールアルキレン基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは7~12である。アリールアルキレン基として、フェニレンビス(メチレン)基、フェニルエチレン基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数7~15のアルキルアリーレン基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは7~12である。メチルフェニレン基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
式(2)においてnは、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。
式(2)においてR
4は、水素原子、置換されてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換されてもよい炭素数6~14のアリール基、置換されてもよい炭素数2~12のアルケニル基、または置換されてもよい炭素数7~15のアラルキル基を表す。
炭素数1~12のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。アルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数6~14のアリール基の炭素数は、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。アリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルケニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~8である。アルケニル基として、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノニレニル基等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数7~15のアラルキル基の炭素数は、好ましくは7~14、より好ましくは7~12である。アラルキル基としてベンジル基、フェネチル等が挙げられる。置換基としては、メチル基、エチル基、構造異性体を含むプロピル基、構造異性体を含むブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、構造異性体を含むプロポキシ基、構造異性体を含むブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、式(1)または式(2)以外の末端基として、フェニル基末端(原料に使用する炭酸ジエステルに由来する末端)、OH基末端(原料に使用するイソソルビドを含むジヒドロキシ化合物に由来する末端)を含む。
フェニル基末端の含有量は、全末端基に対して5~90モル%が好ましい。より好ましくは6~80モル%、さらに好ましくは8~70モル%、最も好ましくは10~60モル%である。
OH基末端の含有量は、全末端基に対して10~90モル%が好ましい。より好ましくは12~70モル%、さらに好ましくは13~60モル%、最も好ましくは15~50モル%である。
上記式(1)または下記式(2)で表される末端基を誘導するアルコール化合物の具体例としては、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシブタノール、フェノキシペンタノール、フェノキシヘキサノール、フェノキシヘプタノール、フェノキシオクタノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、シクロヘキサンプロパノール、シクロヘキサンブタノール、シクロヘキサンペンタノール、シクロヘキサンブタノール、シクロヘキサンペンタノール、シクロヘキサンヘキサノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノペンチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノペンチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテルトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノペンチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテルなどが挙げられる。その中でもデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシブタノールが好ましく、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、フェノキシエタノールがより好ましく、フェノキシエタノールが特に好ましい。
デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール等の長鎖アルキルアルコールは、芳香族モノヒドロキシ化合物の留去効果は高いが、得られたポリカーボネートのガラス転移温度が低下するため、用途が限定される。フェノキシエタノール等の芳香族を含むアルコールから得られたポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度がほとんど低下しないため、より好ましい。
また、紫外線透過率に優れるフィルムを形成するためには、上記式(1)において、R
1は置換されてもよい炭素原子数6~15のアルキル基または置換されてもよい炭素原子数6~15のアルコキシ基が好ましく、上記式(2)において、R
2およびR
3はそれぞれ独立に置換されてもよい炭素原子数1~12のアルキレン基が好ましく、R
4は水素原子または置換されてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が好ましい。式(1)または式(2)で表される末端基の含有量は全末端基に対して、10~90モル%が好ましい。より好ましくは20~85モル%、さらに好ましくは30~82モル%、特に好ましくは40~80モル%である。
(芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量)
本発明のポリカーボネート樹脂に残存する芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量は、0.1~500ppmであり、1~300ppmが好ましく、10~250ppmがより好ましく、50~200ppmが特に好ましい。500ppmより多いと成形安定性や色相が悪化し好ましくない。芳香族モノヒドロキシ量は少なければ少ないほうが、好ましいが、0.1ppm以上はポリマー中に残存する。また芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が、500ppmより少なければポリカーボネート樹脂から形成されたフィルムの紫外線透過率に優れる。本発明においては、イソソルビドに代表される特定の脂肪族ジヒドロキシ化合物由来のカーボネート構成単位を主鎖とするポリカーボネート樹脂を製造する際に、特定のアルコール化合物を重合反応中に特定量含有させることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得るための重合反応時間を調整することができ、重合反応時の減圧時間を長くすることが可能となるため、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が少ない特定のアルコール化合物由来の末端基を含むポリカーボネート樹脂を得ることができる。
(比粘度:η
SP)
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(η
SP)は、0.18~0.5が好ましく、0.21~0.47がより好ましく、0.24~0.45がさらに好ましく、0.26~0.42がよりさらに好ましく、0.27~0.40が特に好ましく、0.30~0.38が最も好ましい。ポリカーボネート樹脂の比粘度が、0.18以上であれば強度が充分高く、0.5以下であれば成形性が良好となる。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求める。
比粘度(η
SP)=(t-t
0)/t
0
[t
0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、具体的な比粘度の測定としては、例えば次の要領で行うことができる。まず、ポリカーボネート樹脂をその20~30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~140℃、さらに好ましくは100~135℃、特に好ましくは110~130℃である。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が70℃以上であると、光学成形体として使用した際に耐熱性が十分となり好ましい。また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が150℃以下であると、射出成形の際の成形加工性が良好となり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
(光弾性係数)
本発明のポリカーボネート樹脂の光弾性係数は、好ましくは30×10
-12Pa
-1以下、より好ましくは28×10
-12Pa
-1以下、特に好ましくは20×10
-12Pa
-1以下である。30×10
-12Pa
-1以下であると、応力による光学ひずみが発生し難いため、ディスプレイ用途として好ましい。
(鉛筆硬度)
本発明のポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度が好ましくはHB以上である。耐傷性に優れるという点で、F以上がより好ましく、H以上がさらに好ましい。鉛筆硬度とは、本発明の樹脂を特定の鉛筆硬度を有する鉛筆で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことである。JIS K-5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いる鉛筆硬度を指標とする。鉛筆硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
(全光線透過率)
本発明のポリカーボネート樹脂から形成される成形品における厚み1mmの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上である。80%以上であると、ディスプレイ用途のシートやフィルムとして使用した際の視認性が優れ好ましい。全光線透過率は、日本電飾工業(株)製 Haze Meter NDH 2000を用い、ISO13468に準じて測定することができる。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下、所定割合のジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応は、A工程、B工程およびC工程の3つの工程に分けることができる。
A工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満になるようにエステル交換させる工程である。その際の樹脂温度が120℃以上190℃未満、真空度が10kPa以下1kPa以上の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満になるようにエステル交換させる工程である。その際の樹脂温度が170℃以上190℃未満、真空度が2kPa以下0.1kPa以上の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下になるようにエステル交換させる工程である。その際の樹脂温度が190℃以上250℃未満、真空度が0.5kPa以下の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
また、反応工程以外に別途、溶解槽を設けることもできる。
A工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満にエステル交換させる際の樹脂温度が140℃以上180℃未満で、真空度が5kPa以下2kPa以上の範囲が好ましい。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満にエステル交換させる際の樹脂温度が175℃以上190℃未満で、真空度が1.5kPa以下0.5kPa以上の範囲が好ましい。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下にエステル交換させる際の樹脂温度が196℃以上240℃未満で、真空度が0.3kPa以下の範囲が好ましい。
これらの工程は少なくとも2器直列に連結されたものであり、第1反応器の出口から出た反応物は第2反応器に入るものが用いられる。連結する反応器の数は特に限定されないが、2~7器が好ましく、3~5器がより好ましく、3~4器が更に好ましい。反応器の種類も特に限定されないが、前段反応の反応器は竪型攪拌反応器が1器以上であることが好ましく、後段反応の反応器は横型攪拌反応器が1器以上であることが好ましい。前記の反応器と次の反応器との連結は、直接配管のみで連結してもよいし、必要に応じて、予熱器等を介して行ってもよい。配管は二重管式等で反応液を冷却固化させることなく移送ができ、ポリマー側に気相がなく、かつデッドスペースを生じないものが好ましい。
使用する反応器は公知のいかなるものでもよい。例えば、熱油またはスチームを加熱媒体とした、ジャケット形式の反応器または内部にコイル状の伝熱管を有する反応器等が挙げられる。反応副生物であるモノヒドロキシ化合物を凝集させるためにコンデンサーを用いることができる。公知の種類のコンデンサーを用いることができ、A工程におけるコンデンサー内部の熱媒の温度は35~50℃が好ましい。さらに好ましくは35~45℃である。
本発明にかかるポリカーボネート樹脂の製造方法の反応方式は、バッチ式または連続式であることが好ましい。反応器は、複数器の竪型攪拌反応器、または該複数器の竪型攪拌反応器およびこれに続く少なくとも1器の横型攪拌反応器が用いられる。これらの反応器は直列に設置され、バッチ毎もしくは連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、ポリカーボネート中の未反応原料若しくは反応副生物であるモノヒドロキシ化合物を脱揮除去する工程、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤若しくは色剤等を添加する工程、または得られたポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程等を適宜追加してもよい。前記の反応器で発生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物は、タンクに収集しておき、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行って回収した後、ジフェニルカーボネートまたはビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。本発明の製造方法において、副生モノヒドロキシ化合物の精製方法に特に制限はないが、蒸留法を用いることが好ましい。
本発明においては、下記式(a)または下記式(b)で表されるアルコール化合物を使用する。
(式中R
1は前記式(1)のR
1と同じである。)
(式中R
2、R
3、R
4およびnは、前記式(2)のR
2、R
3、R
4およびnと同じである。)
すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法として、イソソルビドを含むジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステルおよび上記式(a)または上記式(b)で表されるアルコール化合物を反応させる工程を含むことが好ましい。
本発明で使用されるアルコール化合物の量は、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.1~10モル%が好ましい。より好ましくは0.1~5モル%であり、さらに好ましくは0.3~4.5モル%であり、特に好ましくは0.5~4モル%であり、最も好ましくは1~3モル%である。0.1モル%以上であれば芳香族モノヒドロキシ化合物の留去効果が高くなり、10モル%以下であれば末端が多くのアルコール化合物で封鎖され難く、重合度が高く維持され好ましい。
本発明で使用されるアルコール化合物の沸点(常圧)は180℃~300℃が好ましい。より好ましくは185℃~280℃、特に好ましくは190℃~260℃である。沸点が180℃以上であると反応初期段階でアルコール化合物が留去され難くなり、芳香族モノヒドロキシ化合物の留去効果が高くなり、また300℃以下であれば芳香族モノヒドロキシ化合物の留去効果が高く、物性や熱安定性にも悪影響を及ぼさないため好ましい。
本発明で使用されるアルコール化合物はその他原料と同時に仕込んでも良いし、反応中期段階、反応後期段階で仕込んでも良い。
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、炭素数7~13のアラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジオール成分の合計1モルに対して、好ましくは0.97~1.10モル、より好ましは1.00~1.06モルである。
(重合触媒)
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性リン化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
塩基性ホウ素化合物の、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等の、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
好ましくは、重合触媒は下記式(C)で表される陰イオンと金属からなる陽イオンで構成される金属化合物である。
(式中のRは炭素数1~22の直鎖状でも分岐状でも環状構造を含んでも良いアルキレン基、シクロアルキレン基またはアラルキル基である)
式中Rは炭素数1~22の直鎖状のアルキレン基が好ましい。また、炭素数4~22が好ましく、炭素数10~22が特に好ましい。炭素数が23以上になると入手が困難になるため好ましくない。
上記の金属化合物として、具体的にはプロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸セシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ストロンチウム、プロピオン酸バリウム、プロピオン酸マンガン、プロピオン酸亜鉛、プロピオン酸アルミニウム、酪酸リチウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム、酪酸セシウム、酪酸マグネシウム、酪酸カルシウム、酪酸ストロンチウム、酪酸バリウム、酪酸マンガン、酪酸亜鉛、酪酸アルミニウム、吉草酸リチウム、吉草酸ナトリウム、吉草酸カリウム、吉草酸セシウム、吉草酸マグネシウム、吉草酸カルシウム、吉草酸ストロンチウム、吉草酸バリウム、吉草酸マンガン、吉草酸亜鉛、吉草酸アルミニウム、カプロン酸リチウム、カプロン酸ナトリウム、カプロン酸カリウム、カプロン酸セシウム、カプロン酸マグネシウム、カプロン酸カルシウム、カプロン酸ストロンチウム、カプロン酸バリウム、カプロン酸マンガン、カプロン酸亜鉛、カプロン酸アルミニウム、エナント酸リチウム、エナント酸ナトリウム、エナント酸カリウム、エナント酸セシウム、エナント酸マグネシウム、エナント酸カルシウム、エナント酸ストロンチウム、エナント酸バリウム、エナント酸マンガン、エナント酸亜鉛、エナント酸アルミニウム、カプリル酸リチウム、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、カプリル酸セシウム、カプリル酸マグネシウム、カプリル酸カルシウム、カプリル酸ストロンチウム、カプリル酸バリウム、カプリル酸マンガン、カプリル酸亜鉛、カプリル酸アルミニウム、ペラルゴン酸リチウム、ペラルゴン酸ナトリウム、ペラルゴン酸カリウム、ペラルゴン酸セシウム、ペラルゴン酸マグネシウム、ペラルゴン酸カルシウム、ペラルゴン酸ストロンチウム、ペラルゴン酸バリウム、ペラルゴン酸マンガン、ペラルゴン酸亜鉛、ペラルゴン酸アルミニウム、カプリン酸リチウム、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸カリウム、カプリン酸セシウム、カプリン酸マグネシウム、カプリン酸カルシウム、カプリン酸ストロンチウム、カプリン酸バリウム、カプリン酸マンガン、カプリン酸亜鉛、カプリン酸アルミニウム、ウンデシル酸リチウム、ウンデシル酸ナトリウム、ウンデシル酸カリウム、ウンデシル酸セシウム、ウンデシル酸マグネシウム、ウンデシル酸カルシウム、ウンデシル酸ストロンチウム、ウンデシル酸バリウム、ウンデシル酸マンガン、ウンデシル酸亜鉛、ウンデシル酸アルミニウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸セシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸ストロンチウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸マンガン、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウムトリデシル酸リチウム、トリデシル酸ナトリウム、トリデシル酸カリウム、トリデシル酸セシウム、トリデシル酸マグネシウム、トリデシル酸カルシウム、トリデシル酸ストロンチウム、トリデシル酸バリウム、トリデシル酸マンガン、トリデシル酸亜鉛、トリデシル酸アルミニウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸セシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸ストロンチウム、ミリスチン酸バリウム、ミリスチン酸マンガン、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ペンタデシル酸リチウム、ペンタデシル酸ナトリウム、ペンタデシル酸カリウム、ペンタデシル酸セシウム、ペンタデシル酸マグネシウム、ペンタデシル酸カルシウム、ペンタデシル酸ストロンチウム、ペンタデシル酸バリウム、ペンタデシル酸マンガン、ペンタデシル酸亜鉛、ペンタデシル酸アルミニウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸セシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸ストロンチウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アルミニウム、マルガリン酸リチウム、マルガリン酸ナトリウム、マルガリン酸カリウム、マルガリン酸セシウム、マルガリン酸マグネシウム、マルガリン酸カルシウム、マルガリン酸ストロンチウム、マルガリン酸バリウム、マルガリン酸マンガン、マルガリン酸亜鉛、マルガリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ノナデシル酸リチウム、ノナデシル酸ナトリウム、ノナデシル酸カリウム、ノナデシル酸セシウム、ノナデシル酸マグネシウム、ノナデシル酸カルシウム、ノナデシル酸ストロンチウム、ノナデシル酸バリウム、ノナデシル酸マンガン、ノナデシル酸亜鉛、ノナデシル酸アルミニウム、アラキジン酸リチウム、アラキジン酸ナトリウム、アラキジン酸カリウム、アラキジン酸セシウム、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸ストロンチウム、アラキジン酸バリウム、アラキジン酸マンガン、アラキジン酸亜鉛、アラキジン酸アルミニウム、ヘンイコシル酸リチウム、ヘンイコシル酸ナトリウム、ヘンイコシル酸カリウム、ヘンイコシル酸セシウム、ヘンイコシル酸マグネシウム、ヘンイコシル酸カルシウム、ヘンイコシル酸ストロンチウム、ヘンイコシル酸バリウム、ヘンイコシル酸マンガン、ヘンイコシル酸亜鉛、ヘンイコシル酸アルミニウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カリウム、ベヘン酸セシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸ストロンチウム、ベヘン酸バリウム、ベヘン酸マンガン、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸アルミニウム、トリコシル酸リチウム、トリコシル酸ナトリウム、トリコシル酸カリウム、トリコシル酸セシウム、トリコシル酸マグネシウム、トリコシル酸カルシウム、トリコシル酸ストロンチウム、トリコシル酸バリウム、トリコシル酸マンガン、トリコシル酸亜鉛、トリコシル酸アルミニウム、リグノセリン酸リチウム、リグノセリン酸ナトリウム、リグノセリン酸カリウム、リグノセリン酸セシウム、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸ストロンチウム、リグノセリン酸バリウム、リグノセリン酸マンガン、リグノセリン酸亜鉛、リグノセリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは単独もしくは組み合わせで用いることができる。
また、塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10
-9~1×10
-2モル当量、好ましくは1×10
-8~1×10
-5モル当量、より好ましくは1×10
-7~1×10
-3モル当量の範囲で選ばれる。
(触媒失活剤)
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
これらの触媒失活剤の使用量は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5~50モルの割合で、より好ましくは0.5~10モルの割合で、更に好ましくは0.8~5モルの割合で使用することができる。
<添加剤等>
本発明のポリカーボネート樹脂は、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してもよい。
(熱安定剤)
本発明のポリカーボネート樹脂は、押出・成形時の分子量低下や色相の悪化を抑制するために、特に熱安定剤を含有することが好ましい。単位(A)のエーテルジオール残基が熱と酸素により劣化し、着色しやすいため、熱安定剤としてはリン系安定剤を含有することが好ましい。さらにリン系安定剤として、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、または、二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイト化合物を配合することがより好ましい。
上記のペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。中でも好適には、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
上記の二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイト化合物としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、6-tert-ブチル-4-[3-[(2,4,8,10)-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル]-2-メチルフェノールなどを挙げることができる。
他のリン系安定剤としては、前記以外の各種ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、およびホスフェート化合物が挙げられる。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、およびトリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができる。好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましい。テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
上記のリン系安定剤は、単独でまたは2種以上を併用して使用することができ、少なくともペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、または、環状構造を有するホスファイト化合物を有効量配合することが好ましい。リン系安定剤はポリカーボネート樹脂100重量部当たり、好ましくは0.001~1重量部、より好ましくは0.01~0.5重量部、さらに好ましくは0.01~0.3重量部配合される。
本発明のポリカーボネート樹脂は、押出・成形時の分子量低下や色相の悪化を抑制することを目的に、熱安定剤として、ヒンダードフェノール系熱安定剤を添加することもできる。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、酸化防止機能を有するものであれば特に限定されない。ヒンダードフェノール系安定剤として例えば、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス{メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルベンジル)マロネート、トリエチレグリコール-ビス{3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6-ヘキサンジオール-ビス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、ペンタエリスリチル-テトラキス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2-チオジエチレンビス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,4-ビス{(オクチルチオ)メチル}-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,5,7,8-テトラメチル-2(4’,8’,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール等が挙げられる。
これらの中で、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、2,2-チオジエチレンビス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}等が好ましい。これらのヒンダードフェノール系安定剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても用いても良い。
ヒンダードフェノール系安定剤はポリカーボネート樹脂100重量部当たり、好ましくは0.001~1重量部、より好ましくは0.01~0.5重量部、さらに好ましくは0.01~0.3重量部配合される。
(離型剤)
本発明のポリカーボネート樹脂は、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1~20の一価または多価アルコールと炭素数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、炭素数10~30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01~5重量部が好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明のポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。なかでもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート-ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
かかる紫外線吸収剤の割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.03~2.5重量部、より好ましくは0.05~2.0重量部、さらに好ましくは0.1~1.0重量部である。
<フィルム>
本発明のフィルムは、上記ポリカーボネート樹脂から形成されるフィルムである。
(短波長透過率)
本発明のフィルムの260nmの透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、さらにより好ましくは60%以上であり、特に好ましくは70%以上である。
また、本発明のフィルムの280nmの透過率は、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上であり、特に好ましくは70%以上である。当該短波長透過率は実施例記載の分光光度計により測定できる。
260nmおよび280nmの透過率が上記下限数値以上であると、紫外線の透過率に優れ、農業ハウス用フィルム、防塵フィルム、食品包装用フィルムに適した有用なフィルムとなり好ましい。
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押し出し法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。本発明のフィルムの製造方法としては、溶融押し出し法が生産性の点から好ましい。
溶融押し出し法においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの温度は樹脂組成物の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、180~350℃の範囲が好ましく、200℃~320℃の範囲がより好ましい。180℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすくなる。また、350℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすくなる。
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト法も適用することが出来る。溶液キャスト法の場合は、溶媒としては塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。溶液キャスト法で用いられるフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%を超えると残留溶媒が多いとフィルムのガラス転移温度の低下が著しくなり耐熱性の点で好ましくない。
フィルムの厚みは、30~500μmの範囲が好ましく、より好ましくは40~400μm、さらに好ましくは50~200μmの範囲である。
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂および評価方法は以下のとおりである。
1.ポリマー末端比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリマー末端比(モル比)を算出した。
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート共重合体0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(η
SP)=(t-t
0)/t
0
[t
0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
3.残留フェノール量
ポリカーボネート共重合体1.5gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、アセトニトリル135mlを加え攪拌し、エバポレーターで濃縮した後、0.2μmフィルターでろ過し、この測定溶液10μlを野村化学製Develosil ODS-7のカラムにて溶離液アセトニトリル/0.2%酢酸水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度30℃、検出器277nmでグラジエントプログラムにてHPLC分析した。
4.熱安定性試験
ポリカーボネート共重合体5gを試験管に入れ、窒素下で280℃15分間加熱した後に比粘度を測定した。初期の比粘度から5%以内の低下であった場合を○、5%超から8%未満の低下であった場合を△、8%以上の低下であった場合を×とした。
5.色相(YI)
ポリカーボネート共重合体を100℃、6h乾燥後、射出成形機(日本製鋼所(株)製 JSWJ-75EIII)により、シリンダー温度240℃で金型温度80℃、2mm板の試験片を成形した。成形した2.0mm板を日本電色(株)製色差計Z-1001DP型を用いて透過光を測定したX,YおよびZ値からASTME1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X-1.06Z)]/Y
6.紫外領域の透過率
厚み100μmのフィルムを、日立(株)製分光光度計U-3310を用いて、260nmと280nmの透過率を測定した。
<実施例1>
イソソルビド(以下ISSと略す)432部、1,9-ノナンジオール(以下NDと略す)84部、フェノキシエタノール9.5部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)750部、および触媒としてステアリン酸バリウム0.0025部を窒素雰囲気下120℃に加熱し溶融させた。その後、反応槽に送液し、コンデンサーの熱媒温度を40℃、樹脂内温を170℃に調整し、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。
(A工程)
その後、20分かけて減圧度を3.4kPaに調整し、樹脂温度を170℃に調整し、10分間その温度で保持した後サンプリングした。得られたサンプルの比粘度は0.023であった。
(B工程)
さらに30分かけて減圧度を0.9kPaとし、樹脂内温を180℃に調整し、10分間その温度で保持した後サンプリングした。得られたサンプルの比粘度は0.081であった。
(C工程)
さらに真空度0.2kPaとし、樹脂温度を180℃から225℃へ30分かけて上昇し、規定の粘度に達した後に反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度および残留フェノール量を測定した結果、比粘度は0.375、残留フェノール量は164ppmであった。
得られたポリカーボネート樹脂1000部とトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト0.3部を、ベント付きΦ30mm二軸押出機を用いてストランドを押出し、40℃の温水にて冷却し、カットしてポリカーボネート樹脂組成物の樹脂ペレットを得た。その後、110℃で3時間熱風循環式乾燥機により乾燥し、射出成形機(日本製鋼所(株)製 JSWJ-75EIII)により、シリンダー温度230℃、金型温度80℃、2mm板の試験片を成形した。評価結果を表1に記載した。
<実施例2>
フェノキシエタノールを14.2部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.021、B工程サンプルの比粘度は0.082、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.317、残留フェノール量は121ppmであった。
<実施例3>
フェノキシエタノールを2.4部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.025、B工程サンプルの比粘度は0.087、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.367、残留フェノール量は463ppmであった。
<実施例4>
フェノキシエタノール9.5部をトリデカノール13.8部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.026、B工程サンプルの比粘度は0.086、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.358、残留フェノール量は231ppmであった。
<実施例5>
フェノキシエタノール9.5部をデカノール10.8部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.019、B工程サンプルの比粘度は0.078、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.387、残留フェノール量は98ppmであった。
<実施例6>
ISS356部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略す)151部、フェノキシエタノール9.5部、DPC750部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.021、B工程サンプルの比粘度は0.083、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.352、残留フェノール量は153ppmであった。
<実施例7>
ISS254部、CHDM251部、フェノキシエタノール9.5部、DPC750部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.029、B工程サンプルの比粘度は0.091、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.423、残留フェノール量は168ppmであった。
<比較例1>
フェノキシエタノールを用いなかった他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.024、B工程サンプルの比粘度は0.092、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.359、残留フェノール量は2983ppmであった。
<比較例2>
フェノキシエタノールを0.96部用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.021、B工程サンプルの比粘度は0.089、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.360、残留フェノール量は2550ppmであった。
<比較例3>
フェノキシエタノール9.5部の代わりにヘキサノール7.0部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.023、B工程サンプルの比粘度は0.093、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.385、残留フェノール量は2855ppmであった。
<比較例4>
フェノキシエタノール9.5部の代わりにステアリルアルコール18.5部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.025、B工程サンプルの比粘度は0.087、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.276、残留フェノール量は2582ppmであった。
<比較例5>
フェノキシエタノール9.5部の代わりにペンタデシルフェノール21.1部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.022、B工程サンプルの比粘度は0.074、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.246、残留フェノール量は2897ppmであった。
【表1】
<実施例8>
イソソルビド(ISS)432部、1,9-ノナンジオール(以下NDと略す)84部、トリデカノール20.9部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)750部、および触媒としてステアリン酸バリウム0.0025部を窒素雰囲気下120℃に加熱し溶融させた。その後、反応槽に送液し、コンデンサーの熱媒温度を40℃、樹脂内温を170℃に調整し、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。
(A工程)
その後、20分かけて減圧度を3.4kPaに調整し、樹脂温度を170℃に調整し10分間その温度で保持した後サンプリングした。得られたサンプルの比粘度は0.021であった。
(B工程)
さらに30分かけて減圧度を0.9kPaとし、樹脂温度を180℃に調整し、10分間その温度で保持した後サンプリングした。得られたサンプルの比粘度は0.080であった。
(C工程)
さらに真空度0.2kPaとし、樹脂温度を180℃から225℃へ30分かけて上昇させ、規定の粘度に達した後に反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度および残留フェノール量を測定した結果、比粘度は0.358、残留フェノール量は120ppmであった。
(製膜)
次いで、40mmφの単軸押出機に真空度を1kPa以下に調整した真空ホッパーと幅650mmのTダイを取り付け、得られたポリカーボネート樹脂ペレットを240℃でフィルム製膜することにより透明な厚さ100μmの押出フィルムを得た。得られたフィルムの透過率を測定した。
<実施例9>
トリデカノール20.9部をデカノール22.1部に変更した他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.022、B工程サンプルの比粘度は0.084、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.387、残留フェノール量は132ppmであった。その結果を表2に記載した。
<実施例10>
トリデカノール20.9部をデカノール27.6部に変更した他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.018、B工程サンプルの比粘度は0.077、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.387、残留フェノール量は86ppmであった。その結果を表2に記載した。
<実施例11>
ISS356部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略す)151部、デカノール22.1部、DPC750部を原料として用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.023、B工程サンプルの比粘度は0.082、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.352、残留フェノール量は125ppmであった。その結果を表2に記載した。
<実施例12>
ISS254部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略す)251部、デカノール22.1部、DPC750部を原料として用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.025、B工程サンプルの比粘度は0.092、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.423、残留フェノール量は106ppmであった。その結果を表2に記載した。
<実施例13>
ISS254部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略す)251部、デカノール11.1部、DPC750部を原料として用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.027、B工程サンプルの比粘度は0.095、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.432、残留フェノール量は248ppmであった。その結果を表2に記載した。
<比較例6>
トリデカノールを用いなかった他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。A工程サンプルの比粘度は0.024、B工程サンプルの比粘度は0.092、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.359、残留フェノール量は2983ppmであった。その結果を表2に記載した。
<比較例7>
比較例6で得られたポリカーボネートを30mmφの二軸押出機で注水脱揮によりベント部より低分子量物を脱揮した後に、実施例8と全く同様の操作を行い、その結果を表2に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.024、B工程サンプルの比粘度は0.092、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.354、残留フェノール量は581ppmであった。
<比較例8>
トリデカノール20.9部の代わりにヘキサノール7.0部を用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表2に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.023、B工程サンプルの比粘度は0.093、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.385、残留フェノール量は2855ppmであった。
<比較例9>
トリデカノール20.9部の代わりにステアリルアルコール18.5部を用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表2に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.025、B工程サンプルの比粘度は0.087、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.276、残留フェノール量は2582ppmであった。
<比較例10>
トリデカノール20.9部の代わりにペンタデシルフェノール21.1部を用いた他は、実施例8と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表2に記載した。A工程サンプルの比粘度は0.022、B工程サンプルの比粘度は0.074、C工程後に得られたペレットの比粘度は0.246、残留フェノール量は2897ppmであった。
【表2】
本発明のポリカーボネート樹脂は、色相および熱安定性に優れることから、光学用途、ディスク用途、ディスプレイ用途、自動車用途、電気電子用途、加飾用途等種々の用途に使用することができる。本発明のフィルムは、特定の波長(紫外線)の透過率に優れ、農業ハウス用フィルム、防塵フィルム、食品包装用フィルム、照明カバー(特に紫外線ランプ用カバー)等に使用することができる。