(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】電解過程のための電極
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20220624BHJP
C25B 11/073 20210101ALN20220624BHJP
【FI】
C25C7/02 306
C25B11/073
(21)【出願番号】P 2017566651
(86)(22)【出願日】2016-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2016064404
(87)【国際公開番号】W WO2016207209
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】102015000026567
(32)【優先日】2015-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カルデラーラ, アリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】ティンパーノ, ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】古澤 崇
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】井上 猛
【審判官】境 周一
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを備えたバルブ金属基材を含む、電解過程における酸素発生に適した電極であって、前記コーティングが、触媒層、
前記バルブ金属基材と
前記触媒層との間に介在する保護層及び前記触媒層の外部の少なくとも一の保護層を含み、前記
触媒層の外部の前記少なくとも一の保護層が、89~97%のスズ、2~10%のビスマス、アンチモン及びタンタルから成る群より選択される少なくとも一のドーピング元素並びに1~9%のルテニウムを含有する重量組成を有する酸化物の混合物から成り、
前記バルブ金属基材と
前記触媒層との間に介在する
前記保護層が酸化チタン及び酸化タンタルに基づく保護層ではない、電極。
【請求項2】
前記触媒層の外部の前記少なくとも一の保護層が、89~97%のスズ、2~10%のビスマス及び1~9%のルテニウムを含有する重量組成を有する酸化物の混合物から成る、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記触媒層の外部の前記少なくとも一の保護層が1から5μmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記触媒層が前記触媒層の外部の前記少なくとも一の保護層と接触しており、前記触媒層が、40~46%の白金族金属、7~13%のビスマス、アンチモン、ニオブ及びタンタルから成る群より選択される少なくとも一の元素並びに47~53%のスズを含有する重量組成を有する酸化物の混合物を含み、前記触媒層が2.5から5μmの厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記触媒層が、40~46%のイリジウム、7~13%のビスマス及び47~53%のスズを含有する重量組成を有する酸化物の混合物を含み、前記触媒層が2.5から5μmの厚さを有する、請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記触媒層が、47~53%のスズ、7~13%のビスマス、40~46%のルテニウム及びイリジウムの合計を含有する重量組成を有する酸化物の混合物から成り、前記触媒層が2.5から5μmの厚さを有する、請求項4に記載の電極。
【請求項7】
前記イリジウム及びルテニウムの合計におけるイリジウム対ルテニウムの重量比が60:40から40:60の範囲である、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電極の表面上のアノード酸素発生を含む、水溶液からの金属のカソード電着の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学用途のための電極、特に、金属電解採取工程における酸素発生のための電極に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電解過程のための電極、特に、産業的電解過程における酸素発生に適したアノードに関する。酸素発生のためのアノードは、異なる電解用途において広く使用されており、その多くは、金属のカソード電着(電気冶金)の分野に関連し、非常に低い密度(例えば金属電解採取工程における場合の数百A/m2)から極めて高い密度(いくつかの電気めっき用途の場合のアノード表面に関連して10kA/m2超えて動作可能なもの)の広範囲の印加電流密度で作用し;酸素発生のためのアノードの用途の別の分野は印加電流によるカソード防食である。電気冶金の分野において、特に金属電解採取に関して、鉛系アノードは伝統的に使用されており、高めの酸素発生過電圧を表し、また、環境及び人間の健康に対するよく知られたリスクを必然的に伴うにもかかわらず、依然として特定の用途において有効である。より最近では、金属又はその酸化物に基づく触媒組成物でコーティングされた、バルブ金属、例えばチタン及びその合金の基材より得られるアノード酸素発生のための電極は、市場、特に、酸素発生電位の減少に関連するエネルギー節約の大部分に利益をもたらす高電流密度用途に導入された。アノード酸素発生反応に触媒作用を及ぼすのに適した典型的な組成物は、例えばイリジウム及びタンタルの酸化物の混合物から成り、イリジウムは触媒活性種であり、タンタルはバルブ金属基材が腐食するのを保護することができる、特に腐食性電解質における動作のためのコンパクトコーティングの形成を容易にする。アノード酸素発生反応に触媒作用を及ぼすのに非常に有効な別の配合組成は、イリジウム及びスズの酸化物と、酸化スズ相をより導電性があるようにするのに有用な、ビスマス、アンチモン、タンタル又はニオブのような少量のドーピング元素の混合物から成る。
【0003】
上記の組成を有する電極は、低電流密度及び高電流密度の両方で、十分に削減された作動電圧及び合理的な持続時間で、多くの工業用途の必要性を満たすことができる。それにもかかわらず、特に冶金学の領域(例えば銅又はスズ電解採取)における特定の製造プロセスの経済は、上記の組成よりも更に高い持続時間の電極を必要とする。この目的を達成するために、バルブ金属基材の腐食を更に防ぐことができるバルブ金属酸化物、例えばタンタル及びチタン酸化物の混合物に基づいて、保護中間層が知られている。それにもかかわらず、このように配合される中間層は、作動電圧における得られる増加が許容限度値内に含有されるように、低めの電気伝導度を特徴とし、0.5μmを超えない非常に減少した厚さでのみ使用することができる。言い換えれば、より高い厚さに好都合な適切な動作寿命と、より低い厚さに好都合な減少した過電圧の間の妥協が見つけられなければならない。
【0004】
上記の触媒配合組成について観察される別の問題は、開始相及び動作の早い時間の間に感知できる量のイリジウムを電解質に浸出させるイリジウム含有触媒コーティングの傾向である。これは、コーティングのイリジウム酸化物のごく一部が、電気化学的に活性であるが、電解質により腐食にあまり耐性のない相に存在することを示唆するように思われる。ルテニウム等の他の貴金属触媒でもある程度生じるこの現象は、多孔性保護層を例えばタンタル又はスズ酸化物に基づく触媒コーティングに重ねることにより軽減されうる。しかしながら、このような外部保護層は、限定された有効性を有し、電極の作動電圧における増加をもたらす。
【0005】
このように、拡大された作動持続時間及び作動の初めの時間における貴金属の減少した放出により特徴づけられるが、酸素発生反応に対して非常に高い触媒活性を表す酸素発生のためのアノードを提供する必要性が証明された。
【発明の概要】
【0006】
本発明の様々な態様が、特許請求の範囲に記載される。
【0007】
一態様において、本発明は、89~97%のスズ、合計2~10%のビスマス、アンチモン及びタンタルより選択される一又は複数のドーピング元素並びに1~9%のルテニウムを含む金属と称される重量組成を有する酸化物の混合物から成る少なくとも一の保護層を含むコーティングを備えた、例えばチタン又はチタン合金でできている、バルブ金属基材を含む、電解過程における酸素発生に適した電極に関する。発明者により行われた実験は、ビスマスが他のドーピング元素と比較して最善の結果をもたらすことを示したが、発明は、アンチモン及びタンタルでも首尾よく実行することができる。記載のような保護層は、目立った触媒活性を有さず、代わりに、貴金属酸化物を含有する触媒層と組み合わされるのに適しており、後者は、酸素発生反応の過電圧を減少させる活性成分を構成する。一実施態様において、コーティングは、特に、基剤の腐食を防ぐのに有効な、基材と触媒層との間に介在する保護層を含んでもよい。一実施態様において、コーティングは、電極の動作の開始段階又は早い時間の間に触媒層から貴金属を放出するのを防ぐのに特に有効な、触媒層の外部の保護層を含んでもよい。更なる実施態様において、基材と触媒層との間に介在する保護層及び触媒層の外部の保護層の両方が存在してもよい。一実施態様において、コーティングの保護層のそれぞれは、1から5μmの厚さを有する。上記のような保護層の典型的な電気伝導性及び多孔性に関する特性が、電極電位に悪影響を及ぼすことなく、また動作寿命に関して実質的な利点を伴って、このような高い厚さで動作することをどのように可能にするかは、実際に実験的に検証することができた。
【0008】
一実施態様において、コーティングの触媒層は、40~46%の白金族金属、7~13%のビスマス、タンタル、ニオブ若しくはアンチモンより選択される一又は複数のドーピング元素及び47~53%のスズを含む金属と称される重量組成を有し、2.5から5μmの厚さを有する。特に、白金族の金属がイリジウム及びイリジウムとルテニウムとの混合物より選択され、選択されたドーピング元素がビスマスである場合、この触媒層の配合組成は、前述のような保護層の利点をかなり利用することを可能にすることが観察された。一実施態様において、選択された白金族金属は、60:40から40:60のIr:Ru重量比のイリジウム及びルテニウムの混合物である。
【0009】
一態様下では、本発明は、水溶液からの金属のカソード電着の方法、例えば、対応するアノード反応が本明細書の上記のように電極の表面上で行われる酸素発生である、銅電解採取工程法に関する。
【0010】
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様を実証するために含まれており、その実行可能性は主に主張された範囲の数値において証明されている。後に続く実施例において開示される組成物及び技術は、本発明の実施に際して十分に機能する、発明者により発見された組成物及び技術を表すことが当業者により理解されるべきであるが、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施態様において多くの変更がなされ、同様の又は類似の結果が得られることを理解すべきである。
【0011】
以下の実施例において引用されるすべての試料は、200mm×200mm×1mmのサイズのチタンメッシュグレード1から出発して製造され、初めに、超音波浴中アセトンで10分間脱脂され、25から35μmの表面粗度値Rzが得られるまで、コランダムを用いてグリッドブラスト処理を、次いで、570℃で2時間アニーリングを、最終的に22重量%のHCl中沸点で30分間エッチングを施され、そして、得られる重量損失が180から250g/m2の間であることを確認した。
【0012】
コーティングの全ての層はブラシで塗布された。
【実施例】
【0013】
実施例1
国際公開第2005014885号に記載された手順に従って、Snヒドロキシアセトクロリド錯体(SnHAC)の1.65Mの溶液を調製した。
【0014】
国際公開第2010055065号に記載された手順に従って、Ir及びRuのヒドロキシアセトクロリド錯体(IrHAC及びRuHAC)の0.9Mの二の明らかに異なる溶液を調製した。60mlの10重量%のHClを含有するビーカー内での撹拌下、室温で7.54gのBiCl3を溶解することにより、50g/lのビスマスを含有する溶液を調製し、次いで、透明な溶液が得られたのを観察した時点で、10重量%のHClを用いて容積を100mlにし、これは、溶解が完了したことを示した。
【0015】
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0016】
溶液を事前処理したチタンメッシュの試料にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0017】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、4μmの厚さ、約9g/m2の特有のSnローディングを有する内部保護層を得た。
【0018】
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第二のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0019】
溶液を事前に得た内部保護層にブラシで13回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0020】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、4.5μmの厚さ、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0021】
電極を「EX1」とラベル付けした。
【0022】
比較実施例1
金属に関して1.3~1.6g/m2の全体的なローディングを有する(酸化物に関して1.88~2.32g/m2に相当する)80:20のモル比の酸化チタン及び酸化タンタルに基づく保護層をチタンメッシュ試料に塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5の水溶液をTiCl4の水溶液に添加することにより得られた前駆体溶液を4回塗布し、続いて515℃で熱分解することにより行った。
【0023】
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0024】
溶液を事前に得た保護層にブラシで14回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0025】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、4.5μmの厚さが、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0026】
電極を「CE1」とラベル付けした。
【0027】
比較実施例2
金属に関して7g/m2の全体的なローディング(酸化物に関して10.15g/m2)を有する80:20のモル比の酸化チタン及び酸化タンタルに基づく保護層をチタンメッシュ試料に塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5の水溶液をTiCl4の水溶液に添加することにより得られた前駆体溶液を4回塗布し、続いて515℃で熱分解することにより行った。
【0028】
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0029】
溶液を事前に得た保護層にブラシで14回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0030】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、4.5μmの厚さ、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0031】
電極を「CE2」とラベル付けした。
【0032】
実施例2
当該技術分野で知られるルギン管及び白金プローブを用いて測定される、50℃の150g/lのH2SO4水溶液における酸素発生下でアノード電位の検出に供される上記の実施例及び比較実施例の電極から20mm×50mmの面積のいくつかの試験片を切り取った。表1に報告されるデータ(CISEP)は、500A/m2の電流密度で検出された電位の値を表す。表1はまた、30kA/m2の電流密度及び60℃の温度で、150g/lのH2SO4水溶液中での加速寿命試験(ALT)において示される寿命を示す。
【0033】
これらの試験の結果は、本発明に従って内部保護層を提供することが、チタン及びタンタルの酸化物の混合物から成る先行技術による内部保護層と比較して、酸素発生電位の改善によりもたらされる持続時間における著しい増加を得ることをどのように可能にするかを示す。
【0034】
ドーピング元素の性質及び添付の特許請求の範囲に記載される保護層の構成要素の濃度を変更することにより同様の結果を得た。
【0035】
実施例3
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
溶液を事前処理したチタンメッシュの試料にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0036】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、4μmの厚さ、約9g/m2の特有のSnローディングを有する内部保護層を得た。
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第二のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0037】
溶液を事前に得た内部保護層にブラシで13回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0038】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、4.5μmの厚さ、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0039】
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第三のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0040】
溶液を事前に得た層にブラシで4回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0041】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、3μmの厚さ、約6g/m2の特有のSnローディングを有する外部保護層を得た。
電極を「EX3」とラベル付けした。
【0042】
実施例4
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0043】
溶液を事前処理したチタンメッシュの試料にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0044】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、4μmの厚さ、約9g/m2の特有のSnローディングを有する内部保護層を得た。
【0045】
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第二のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0046】
溶液を事前に得た内部保護層にブラシで13回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0047】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0048】
5mlの1.65MのSnHAC溶液及び15mlの10重量%の酢酸を次いで撹拌下の第三のビーカーに添加した。
【0049】
溶液を事前に得た層にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0050】
この方法において、約9g/m2の特有のSnローディングの外部保護層を得た。
【0051】
電極を「EX4」とラベル付けした。
【0052】
実施例5
金属に関して1.3~1.6g/m2の全体的なローディングを有する(酸化物に関して1.88~2.32g/m2に相当する)80:20のモル比の酸化チタン及び酸化タンタルに基づく保護層をチタンメッシュ試料に塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5の水溶液をTiCl4の水溶液に添加することにより得られた前駆体溶液を4回塗布し、続いて515℃で熱分解することにより行った。
【0053】
10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液及び7.44mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。20mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0054】
溶液を事前に得た保護層にブラシで14回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0055】
この方法において、42:49:9のIr:Sn:Bi重量比、約10g/m2の特有のInローディングを有する触媒層を得た。
【0056】
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第二のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0057】
溶液を事前に得た触媒層にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0058】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、4μmの厚さ、約9g/m2の特有のSnローディングを有する外部保護層を得た。
【0059】
電極を「EX5」とラベル付けした。
【0060】
実施例6
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0061】
溶液を事前処理したチタンメッシュの試料にブラシで6回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0062】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、4μmの厚さ、約9g/m2の特有のSnローディングを有する内部保護層を得た。
【0063】
5.15mlの1.65MのSnHAC溶液、2.5mlの0.9MのIrHAC溶液、4.75mlの0.9MのRuHAC溶液及び3.71mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第二のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。21.7mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0064】
溶液を事前に得た内部保護層にブラシで9回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0065】
この方法において、21:21:49:9のIr:Ru:Sn:Bi重量比、3.5μmの厚さ、約7g/m2の特有のIn+Ruローディングを有する触媒層を得た。
【0066】
5.11mlの1.65MのSnHAC溶液、0.23mlの9MのRuHAC溶液及び0.85mlの50g/lのBi溶液を撹拌下の第三のビーカーに添加した。撹拌を5分間延長した。18.57mlの10重量%の酢酸を次いで添加した。
【0067】
溶液を事前に得た層にブラシで4回塗布することによりコーティングし、各コーティングの後に60℃で10分間の乾燥工程とそれに続く520℃で10分間の熱分解工程を行った。
【0068】
この方法において、94:4:2のSn:Bi:Ru重量比、3μmの厚さ、約6g/m2の特有のSnローディングを有する外部層を得た。
【0069】
電極を「EX6」とラベル付けした。
【0070】
実施例7
当該技術分野で知られるルギン管及び白金プローブを用いて測定される、50℃の150g/lのH
2SO
4水溶液における酸素発生下でアノード電位の検出に供される上記の実施例の電極から20mm×50mmの面積のいくつかの試験片を切り取った。表2に報告されるデータ(CISEP)は、500A/m
2の電流密度で検出された電位の値を表す。表2はまた、30kA/m
2の電流密度及び60℃の温度で、150g/lのH
2SO
4水溶液中での加速寿命試験(ALT)において示される寿命を示す。
【0071】
結果は、スズ酸化物を含有する外部保護層が、そのアノード過電圧における増加を犠牲にして、どのように電極の動作寿命を増加させることを可能にするかを示す。しかしながら、スズ酸化物を含有する保護外部層が本発明による保護層である場合、恐らく、動作の開始時及び初めの時間のイリジウムの安定化による、動作寿命における増加は更に拡大するが、アノード電位は低いままである。
【0072】
ドーピング元素の性質及び添付の特許請求の範囲に記載される保護層の構成要素の濃度を変更することにより同様の結果を得た。
【0073】
前述の説明は本発明を限定するものと意図されるべきではなく、本発明の範囲を逸脱することなく異なる実施態様に従って使用されてもよく、その範囲は添付の特許請求の範囲よってのみ規定される。
【0074】
本出願の明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、用語「含む(comprise)」並びに「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」のようなその変化形は、他の要素、構成成分又は追加のプロセス工程の存在を除外すると意図されない。
【0075】
文書、行為、材料、装置、物品等の議論は、本発明の文脈を提供する目的のためのみに本明細書に含まれる。これらの事項の一部若しくは全部が先行技術の一部を形成しているか、又は本願の各請求項の優先日以前に本発明に関連する分野において一般知識であることは、示唆又は表現されていない。