(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】鉄道車両用ストッパ
(51)【国際特許分類】
B61F 5/02 20060101AFI20220624BHJP
B61F 5/24 20060101ALI20220624BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B61F5/02 Z
B61F5/24 F
F16F7/00 D
(21)【出願番号】P 2018062628
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 基博
(72)【発明者】
【氏名】玉木 健斗
(72)【発明者】
【氏名】池田 諭司
(72)【発明者】
【氏名】磯村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】東城 隆則
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051420(JP,A)
【文献】特開2016-125528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/02
B61F 5/24
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体と台車枠との間に介在される鉄道車両用ストッパであって、
環状の支持部と、前記支持部の外周側に位置して前記車体又は前記台車枠に固定される固定部とを有する第1剛性部材と、
前記台車枠又は前記車体に対して間隔をおいて対向配置される第2剛性部材と、
前記第1剛性部材の前記支持部と前記第2剛性部材とを弾性連結するゴム弾性体と、
前記第1剛性部材の前記支持部の内側に装着され、前記第2剛性部材との間に空気室を形成する第3剛性部材と、
前記第2剛性部材と前記第3剛性部材との互いの対向面の少なくとも一方に連結される当接部材と、
前記第3剛性部材に設けられ、前記空気室を外部に連通させる連通路と、を含
み、
前記連通路は、前記第3剛性部材を厚み方向に貫通する貫通孔と、前記第3剛性部材における前記車体又は前記台車枠との当接面に形成されて前記貫通孔に連続する連通溝とを含んでなることを特徴とする鉄道車両用ストッパ。
【請求項2】
鉄道車両の車体と台車枠との間に介在される鉄道車両用ストッパであって、
環状の支持部と、前記支持部の外周側に位置して前記車体又は前記台車枠に固定される固定部とを有する第1剛性部材と、
前記台車枠又は前記車体に対して間隔をおいて対向配置される第2剛性部材と、
前記第1剛性部材の前記支持部と前記第2剛性部材とを弾性連結するゴム弾性体と、
前記第1剛性部材の前記支持部の内側に装着され、前記第2剛性部材との間に空気室を形成する第3剛性部材と、
前記第2剛性部材と前記第3剛性部材との互いの対向面の少なくとも一方に連結される当接部材と、
前記第1剛性部材に設けられ、前記空気室を外部に連通させる連通路と、を含み、
前記支持部の内周面には、前記空気室と連通する第1の内径孔と、前記第1の内径孔よりも前記車体又は前記台車枠側に配置され、前記第1の内径孔よりも大径となって前記第3剛性部材が嵌合する第2の内径孔とが形成されて、
前記連通路は、前記第1の内径孔と、前記支持部を径方向に貫通して前記第1の内径孔と連通する貫通孔とを含んでなることを特徴とする鉄道車両用ストッパ。
【請求項3】
前記連通溝は、前記当接面の外周縁に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の鉄道車両用ストッパ。
【請求項4】
前記連通溝は、前記当接面の外周縁全体に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の鉄道車両用ストッパ。
【請求項5】
前記第3剛性部材には、前記第2剛性部材との対向面を含む第4剛性部材が装着されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の鉄道車両用ストッパ。
【請求項6】
前記当接部材が前記第2剛性部材に設けられ、前記第3剛性部材には、前記当接部材の側面に対して所定の間隔をおいて少なくとも一対のストッパが配置されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の鉄道車両用ストッパ。
【請求項7】
前記第2剛性部材における前記台車枠又は前記車体側には、摺動部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の鉄道車両用ストッパ。
【請求項8】
前記第3剛性部材は、前記支持部の内側に圧入されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の鉄道車両用ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体と台車との間に配置され、台車に対する車体の揺れを抑制するための鉄道車両用ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車体と台車とは、車体側の牽引装置によって連結されており、牽引装置と台車との間には、台車に対する車体の過度の横揺れを防止するための鉄道車両用ストッパが固定されている。この鉄道車両用ストッパとして,例えば特許文献1には、台車枠と牽引枠との何れか一方側に、金属板からなるベースプレートを固定し、ベースプレートの表面に、所定量以上圧縮される場合のバネ定数が、所定量未満で圧縮される場合のバネ定数よりも高くなるように、例えばゴム部と金具とから構成されるストッパゴムを設けた横揺れ規制具の発明が開示されている。また、特許文献2には、牽引装置に固定されるブラケットと、ブラケットに固定され、非自己潤滑ゴム弾性体製の基部と自己潤滑ゴム弾性体製の摺動部とからなるストッパ本体とを備えたストッパ部材の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-51420号公報
【文献】特開2014-4983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の鉄道車両用ストッパにおいては、それぞれゴム部と金具、基部と摺動部とのバネ定数を調整することで、2段のバネ特性を得ることができる。
しかし、2段のバネ特性を変更する際には、各構成要素の形状を変えることになるため、金型の改造が必要となってコストアップに繋がってしまう。また、金型を改造すると改造前の製品を作成することができなくなるため、設計の自由度の制約にも繋がる。
【0005】
そこで、本発明は、2段バネ特性の調整を低コストで行うことができ、設計自由度も向上させることができる鉄道車両用ストッパを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、鉄道車両の車体と台車枠との間に介在される鉄道車両用ストッパであって、
環状の支持部と、支持部の外周側に位置して車体又は台車枠に固定される固定部とを有する第1剛性部材と、台車枠又は車体に対して間隔をおいて対向配置される第2剛性部材と、第1剛性部材の支持部と第2剛性部材とを弾性連結するゴム弾性体と、第1剛性部材の支持部の内側に装着され、第2剛性部材との間に空気室を形成する第3剛性部材と、第2剛性部材と第3剛性部材との互いの対向面の少なくとも一方に連結される当接部材と、第3剛性部材に設けられ、空気室を外部に連通させる連通路と、を含み、
連通路は、第3剛性部材を厚み方向に貫通する貫通孔と、第3剛性部材における車体又は台車枠との当接面に形成されて貫通孔に連続する連通溝とを含んでなることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、鉄道車両の車体と台車枠との間に介在される鉄道車両用ストッパであって、
環状の支持部と、支持部の外周側に位置して車体又は台車枠に固定される固定部とを有する第1剛性部材と、台車枠又は車体に対して間隔をおいて対向配置される第2剛性部材と、第1剛性部材の支持部と第2剛性部材とを弾性連結するゴム弾性体と、第1剛性部材の支持部の内側に装着され、第2剛性部材との間に空気室を形成する第3剛性部材と、第2剛性部材と第3剛性部材との互いの対向面の少なくとも一方に連結される当接部材と、第1剛性部材に設けられ、空気室を外部に連通させる連通路と、を含み、
支持部の内周面には、空気室と連通する第1の内径孔と、第1の内径孔よりも車体又は台車枠側に配置され、第1の内径孔よりも大径となって第3剛性部材が嵌合する第2の内径孔とが形成されて、
連通路は、第1の内径孔と、支持部を径方向に貫通して第1の内径孔と連通する貫通孔とを含んでなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成において、連通溝は、当接面の外周縁に形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1の構成において、連通溝は、当接面の外周縁全体に形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、第3剛性部材には、第2剛性部材との対向面を含む第4剛性部材が装着されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかの構成において、当接部材が第2剛性部材に設けられ、第3剛性部材には、当接部材の側面に対して所定の間隔をおいて少なくとも一対のストッパが配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、第2剛性部材における台車枠又は車体側には、摺動部材が設けられていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかの構成において、第3剛性部材は、支持部の内側に圧入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び2に記載の発明によれば、金型を改造する必要がなく、第3剛性部材のみの交換又は改造で2段バネ特性の調整が可能となる。よって、2段バネ特性の調整を低コストで行うことができる。また、第3剛性部材の交換で調整前の2段バネ特性にも容易に戻すことができるため、設計自由度も向上させることができる。
特に、請求項1に記載の発明によれば、上記効果に加えて、第3剛性部材を利用して連通路を簡単に形成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、第3剛性部材の外周縁を利用して連通溝を簡単に形成することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、第3剛性部材の外周縁を利用して連通溝を簡単に形成することができると共に、外周縁全体に連通溝があることで貫通孔と容易に連続させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかの効果に加えて、第4剛性部材の採用により、第3剛性部材によるバネ特性の調整をより細かく行うことができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れかの効果に加えて、ストッパの採用により、滑り方向でのバネ特性の調整も可能となる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の何れかの効果に加えて、摺動部材の採用により、車体又は台車枠とスムーズに当接できる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の何れかの効果に加えて、圧入によって第3剛性部材を簡単に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】鉄道車両用ストッパの説明図で、(A)は平面、(B)はA-A線断面をそれぞれ示す。
【
図2】下金具の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)はB-B線断面をそれぞれ示す。
【
図3】圧入金具の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)はC-C線断面をそれぞれ示す。
【
図5】圧入金具の変更例の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)はD-D線断面をそれぞれ示す。
【
図6】圧入金具の変更例の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)はE-E線断面をそれぞれ示す。
【
図7】圧入金具の変更例の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)はF-F線断面をそれぞれ示す。
【
図8】連通路の変更例を示す鉄道車両用ストッパの中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、鉄道車両用ストッパの一例を示す説明図で、(A)が平面、(B)がA-A線断面となっている。この鉄道車両用ストッパ1は、第1剛性部材としての下金具2と、下金具2より上方へ離れた位置に配置される第2剛性部材としての上金具3と、下金具2と上金具3との間で両金具2,3を弾性連結するゴム弾性体4と、下金具2に圧入装着される第3剛性部材としての圧入金具5とを含んでなる。
【0010】
まず下金具2は、
図2にも示すように、中央に環状の支持部6と、その支持部6の左右両側に連設される板状の固定部7,7とを備えたプレート状で、支持部6の上面には、上方へ横断面山形状に突出する突条8が、全周に亘って形成されている。この突条8の上面は、山形状の頂点が外周寄りに位置して、頂点の内側に形成される内テーパ面9が、頂点の外側に形成される外テーパ面10よりも径方向に幅広な緩斜面となっている。
また、支持部6の内周面には、突条8の内径から底面側へ行くに従って段階的に大径となる中径孔11と大径孔12とが形成されて、大径孔12が底面側へ開放している。支持部6の底面には、大径孔12を支持部6の外周側外部と連通させる半径方向の溝13が形成されている。
さらに、各固定部7には、ボルトで固定するための取付孔15を底部に貫通形成した凹部14がそれぞれ形成されている。
【0011】
次に、上金具3は、下金具2の支持部6よりも一回り小さい円盤状で、下面には、下方へ行くに従って先細りとなり、支持部6の突条8の内テーパ面9に対向する下テーパ面16と、下テーパ面16の中央に位置して下金具2の底面と平行な円形底面17とが形成されている。また、上金具3の上面には、外周を除いて下方へ凹む円形凹部18が形成されて、この円形凹部18内に、円盤状で樹脂製の摺動部材としての摺動板19が嵌合されて、上面のザグリ孔から螺合させた一対のネジ20,20によって上金具3に連結されている。この摺動板19の上面は連結状態で上金具3の上面よりも上方へ突出している。
【0012】
次に、ゴム弾性体4は、下金具2の突条8と上金具3の下テーパ面16との間でテーパ状に形成される連結筒21と、連結筒21の内側に一体形成されて上金具3の円形底面17から下向きに突設される当接部材としての平面視円形の当接部22とを備えて、下金具2と上金具3との間に加硫接着されている。この状態で下金具2と上金具3とは、ゴム弾性体4の連結筒21を介して互いに弾性的に連結される。また、当接部22の下面は、上下方向で下金具2の突条8の頂点と略同じ高さに位置している。
【0013】
そして、圧入金具5は、
図3にも示すように、下金具2の支持部6の大径孔12と略同径となる円盤状の下段部23と、下段部23の上側に同軸で一体形成され、中径孔11及び突条8よりも小径となる円盤状の上段部24とを備えている。下段部23は、大径孔12の軸方向長さと同じ厚みを有し、底面外周縁には、下方へ行くに従って小径となるテーパ状の連通溝25が、全周に亘って形成されている。また、下段部23には、連通溝25と上下方向に重なる位置で軸方向に貫通孔26が形成されている。
さらに、上段部24の上部は、上方へ行くに従って小径となるテーパ状に形成されて、上面には、上金具3の円形底面17と略同径の円形頂面27が形成されている。
【0014】
この圧入金具5を、支持部6の底面側から、下段部23が大径孔12に嵌合するように圧入すると、支持部6が閉塞されて、下金具2と上金具3との間に、ゴム弾性体4の連結筒21と当接部22と圧入金具5とで囲まれる空気室30が形成される。この状態で圧入金具5の円形頂面27は、当接部22の下面から上下方向に所定の間隔Sをおいて下方に位置している。
また、圧入金具5を圧入した状態では、下段部23の連通溝25は、下金具2の溝13と連通し、貫通孔26は、支持部6の中径孔11の内側に開口して空気室30と連通する。よってここには、空気室30の空気を、中径孔11の内側から貫通孔26を通り、連通溝25から溝13を介して支持部6の外側へ排出可能な連通路31が形成されることになる。
【0015】
以上の如く構成された鉄道車両用ストッパ1は、例えば
図4に示すような鉄道車両40に設けられる。鉄道車両40では、車体41の下部に中心ピン42が下向きに設けられており、この中心ピン42の下端と、車体41の下方に設けられて中心ピン42が貫通する台車43とを牽引リンク46によって連結することで牽引装置45が構成されている。鉄道車両用ストッパ1,1は、台車43の台車枠44の左右の内面で中心ピン42に対向させて、それぞれ下金具2,2の固定部7,7を台車枠44に図示しないボルトで固定することで、上金具3の摺動板19を中心ピン42の側面に所定間隔をおいて対向配置している。但し、鉄道車両用ストッパ1の取付側は台車枠44に限らず、車体41側である中心ピン42に下金具2を取り付けて、摺動板19を台車枠44に対向配置することもできる。
【0016】
よって、カーブの走行等によって車体41と台車43とが相対的に横移動し、中心ピン42に上金具3の摺動板19が当接する状態となると、ゴム弾性体4の連結筒21が軸方向に圧縮され、連結筒21のバネ定数に基づいて荷重に対する弾性変形がなされる。さらに車体41と台車43との相対的な横移動が進み、ゴム弾性体4の当接部22が圧入金具5の円形頂面27に当接すると、当接部22が軸方向に圧縮され、今度は当接部22のバネ定数に基づいて荷重に対する弾性変形がなされる。この2段バネ特性によって横揺れの抑制が行われることになる。
この連結筒21及び当接部22の弾性変形によって空気室30が圧縮されても、内部の空気は連通路31を通って下金具2の外部に排出されるため、連結筒21及び当接部22の弾性変形に影響を与えることはない。
【0017】
そして、2段バネ特性を調整する際には、圧入金具5の円形頂面27の高さ(当接部22との間隔S)や形状、材質等を変えることで、任意のバネ特性を得ることができる。この場合、下金具2及び上金具3、ゴム弾性体4はそのままで、圧入金具5のみを交換或いは改造(切削等)すれば足りるため、金型の改造は必要なくなる。圧入金具5を新しく交換しても先の圧入金具5を残しておけば、変更前のバネ特性にも簡単に復帰させることができる。
図5は、圧入金具の変更例を示すもので、この圧入金具5Aにおいては、上段部24aを、下段部23の上面中央から上方へ半球状に膨出させて、上段部24aの上面に当接部22が当接して弾性変形することでバネ特性の調整を行っている。
また、
図6に示す変更例の圧入金具5Bでは、上段部24の形状は先の形態と同じであるが、当接部22との対向面を含む上側部分を金具とは別体にして樹脂で成形し、第4剛性部材としてのプレート35として金具に固着することでバネ特性の調整を行っている。
【0018】
このように、上記形態の鉄道車両用ストッパ1によれば、環状の支持部6と、支持部6の外周側に位置して台車枠44に固定される固定部7とを有する下金具2と、車体41に対して間隔をおいて対向配置される上金具3と、下金具2の支持部6と上金具3とを弾性連結するゴム弾性体4と、下金具2の支持部6の内側に装着され、上金具3との間に空気室30を形成する圧入金具5と、上金具3に連結される当接部22と、圧入金具5に設けられ、空気室30を外部に連通させる連通路31と、を含んでなる構成としたことで、金型を改造する必要がなく、圧入金具5,5A,5Bのみの交換又は改造で2段バネ特性の調整が可能となる。よって、2段バネ特性の調整を低コストで行うことができる。また、圧入金具5,5A,5Bの交換で調整前の2段バネ特性にも容易に戻すことができるため、設計自由度も向上させることができる。
【0019】
特にここでは、連通路31を、圧入金具5に形成されて圧入金具5を厚み方向に貫通する貫通孔26と、圧入金具5における台車枠44との当接面となる底面に形成されて貫通孔26に連続する連通溝25とを含んでなる構成としたことで、圧入金具5を利用して連通路31を簡単に形成することができる。
また、連通溝25を、圧入金具5の底面の外周縁に形成しているので、圧入金具5の外周縁を利用して連通溝25を簡単に形成することができる。特に、外周縁全体に連通溝25を設けているので、貫通孔26と容易に連続させることができる。
さらに、上金具3における車体41又は台車枠44側に摺動板19を設けたことで、車体41又は台車枠44とスムーズに当接できる。
【0020】
そして、支持部6の内側に圧入する圧入金具5の採用により、圧入金具5を簡単に装着することができる。
特に、圧入金具5Bには、上金具3との対向面を含む樹脂製のプレート35を装着しているので、圧入金具5Bによるバネ特性の調整をより細かく行うことができる。
【0021】
一方、圧入金具としては、例えば
図7に示す圧入金具5Cのように、上段部24を、円形頂面27が上金具3側の当接部22の下面より高くなるように形成すると共に、円形頂面27に、当接部22の下端が遊挿する平面視円形の凹部36を形成することで、当接部22の周囲に、当接部22の側面(周面)を非接触で覆うリング状のストッパ37を形成することもできる。
このように圧入金具5Cに、当接部22の側面に対して所定の間隔をおいて配置されるストッパ37を設ければ、滑り方向(上下方向等)で相対移動した当接部22がストッパ37と干渉することで弾性変形するため、滑り方向でのバネ特性の調整も可能となる。
但し、このストッパは、当接部の全周に亘って設ける必要はなく、滑り方向で当接部を挟んで前後に位置する一対のストッパを部分的に立設させても差し支えない。
【0022】
また、上記形態では、当接部材となる当接部を上金具に設けているが、下金具に設けてもよいし、上金具と下金具との双方にそれぞれ設けてもよい。勿論別体の当接部材を用いて一方又は双方の金具に装着することもできる。
さらに、連通路の形態も、上記形態では圧入金具の底面の外周縁全体に形成しているが、部分的に設けてもよいし、圧入金具の貫通孔と連通路のみで空気室を外部と連通可能であれば、下金具側の溝は省略してもよい。
そして、連通路は圧入金具に設ける場合に限らず、例えば
図8に示すように、下金具2の支持部6に、中径孔11と連通する径方向の貫通孔38を貫通形成することも可能である。また、圧入金具の外周と支持部の内周とにそれぞれ凹溝を設ける等して両者に跨がる連通路を形成することも可能である。
【0023】
その他、第3剛性部材としては圧入金具に限らず、外周に雄ネジ部を有して支持部の内側に形成した雌ネジ部に螺合される金具や、ネジやボルトによって下金具に固定される金具であってもよい。下金具の形状や上金具の平面視形状等も上記形態に限らず、例えば上金具を円形以外の正方形や長方形とする等、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・鉄道車両用ストッパ、2・・下金具、3・・上金具、4・・ゴム弾性体、5,5A,5B・・圧入金具、6・・支持部、7・・固定部、8・・突条、9・・内テーパ面、11・・中径孔、12・・大径孔、19・・摺動板、21・・連結筒、22・・当接部、23・・下段部、24・・上段部、25・・連通溝、26・・貫通孔、30・・空気室、31・・連通路、35・・プレート、37・・ストッパ、40・・鉄道車両、41・・車体、42・・中心ピン、43・・台車、44・・台車枠、45・・牽引装置。