IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アクスルケース構造 図1
  • 特許-アクスルケース構造 図2
  • 特許-アクスルケース構造 図3
  • 特許-アクスルケース構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】アクスルケース構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20220624BHJP
【FI】
F16H57/04 B
F16H57/04 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018073601
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019183922
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】喜多 智之
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-212101(JP,A)
【文献】特開2003-329110(JP,A)
【文献】実開昭52-079602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デファレンシャルギヤ機構を収容すべく上下方向に膨出されたバンジョー部の内部に、車幅方向に間隔を隔てて前記デファレンシャルギヤ機構を内包するように一対のセパレータ板を設け、これらセパレータ板の間に貯留されたデフギヤオイルの液面を前記デファレンシャルギヤ機構の下端よりも上方とするようにしたアクスルケース構造であって、
前記セパレータ板に、前記デフギヤオイルの液面を下げることなくオイル量を削減するため、前記デフギヤオイルの液面より下方のデフギヤオイルを押し退ける体積を有するオイル押退部材を設け
該オイル押退部材の形状が、前記デファレンシャルギヤ機構との干渉を避けつつ前記バンジョー部の底部に貯留されたデフギヤオイルを押し退けるべく、下広がりの形状となっており、
車重と路面反力によって下に凸状に曲げられる前記アクスルケースの中立軸近傍において前記セパレータ板を前記アクスルケースに溶接すべく、前記セパレート板が、前記バンジョー部の上下方向の中程の領域において前記バンジョー部の内面に溶接されている
ことを特徴とするアクスルケース構造。
【請求項2】
前記一対のセパレータ板が、前記デフギヤオイルを排出するため前記バンジョー部の下部に形成されたドレン孔を内包するように、前記バンジョー部の内部に車幅方向に間隔を隔てて配設された、ことを特徴とする請求項1に記載のアクスルケース構造。
【請求項3】
前記オイル押退部材が、前記セパレータ板の車幅方向内方の面に、前記デフギヤオイルを前記バンジョー部に注入するためのオイル注入孔より下方に位置して設けられた、ことを特徴とする請求項1または2に記載のアクスルケース構造。
【請求項4】
前記オイル押退部材が、前記セパレータ板の車幅方向内方の面に、前記セパレータ板の縁部と前記バンジョー部の内面との間に形成された隙間を塞がないように取り付けられた、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のアクスルケース構造。
【請求項5】
前記オイル押退部材が、中空構造または中実構造である、ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のアクスルケース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にデファレンシャル機構が収容され、デフギヤオイルが貯留されるアクスルケース構造に係り、特に、デファレンシャル機構の潤滑性を悪化させることなくデフギヤオイルの貯留量を削減できるアクスルケース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス、SUV、RV等の車両のアクスルケース構造として、図1(a)、図1(b)に示すように、デファレンシャルギヤ機構aを収容するために上下方向に膨出されたバンジョー部bの内部に、車幅方向に間隔を隔ててデファレンシャルギヤ機構aを内包するように一対のセパレータ板cを設け、これらセパレータ板cの間に貯留されたデフギヤオイルdにデファレンシャルギヤ機構aの下部を浸漬するようにしたアクスルケース構造eが開発されている。
【0003】
かかるアクスルケース構造eによれば、カーブ走行時、遠心力を受けるデフギヤオイルdがバンジョー部bから車幅方向外方へ移動しようとする事態をセパレータ板cによって抑えることができる。これにより、カーブ走行時に、バンジョー部bにおけるデフギヤオイルdの液位を確保でき、デファレンシャルギヤ機構aをデフギヤオイルdによって適切に潤滑することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-315456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、デフギヤオイルdは、単価が高いため、貯留量をなるべく削減することが望まれている。デフギヤオイルdの貯留量を少なくするためには、図1(a)に示す左右のセパレータ板c同士の間隔を狭くする対策が考えられる。しかし、左右のセパレータ板cは、デフギヤオイルdを排出するためバンジョー部bに設けられたドレン孔fを内包するように配設する必要がある。このため、左右のセパレータ板cの間隔が或る程度広くならざるを得ず、デフギヤオイルdの貯留量を削減することが困難であった。
【0006】
詳述すると、図1(a)に示すように、ドレン孔fは、車両の最低地上高を確保すると共に不整路走行時の岩や障害物との接触などによる損傷を回避するため、バンジョー部bの下部の中央部ではなく、バンジョー部bの下部の傾斜立上部gに設けられている。すなわち、ドレン孔fには、オイル交換時に取り外されるドレンボルトhがネジ込まれるところ、そのドレンボルトhの頭部がアクスルケース(バンジョー部e)の最下点とならないように、ドレン孔fの位置がバンジョー部bの下部の傾斜立上部gに設定されている。従って、かかるドレン孔fを内包するように配置される左右のセパレータ板cの間隔が或る程度広くならざるを得ず、デフギヤオイルdの貯留量を削減することが困難となっていた。
【0007】
なお、デファレンシャルケース内のオイルの流れをコントロールする発明として特許文献1に開示された技術が知られているが、これはデファレンシャルギヤ機構のリングギヤで跳ね上げられたデフギヤオイルの流れに関する発明であり、本発明のようにセパレータ板に工夫を施したものとは技術的な前提が相違する。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、デファレンシャルギヤ機構の潤滑性を悪化させることなく、デフギヤオイルの貯留量を削減できるアクスルケース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成すべく創案された本発明によれば、デファレンシャルギヤ機構を収容すべく上下方向に膨出されたバンジョー部の内部に、車幅方向に間隔を隔ててデファレンシャルギヤ機構を内包するように一対のセパレータ板を設け、これらセパレータ板の間に貯留されたデフギヤオイルの液面をデファレンシャルギヤ機構の下端よりも上方とするようにしたアクスルケース構造であって、セパレータ板に、デフギヤオイルの液面を下げることなくオイル量を削減するため、デフギヤオイルの液面より下方のデフギヤオイルを押し退ける体積を有するオイル押退部材を設け、オイル押退部材の形状が、デファレンシャルギヤ機構との干渉を避けつつバンジョー部の底部に貯留されたデフギヤオイルを押し退けるべく、下広がりの形状となっており、車重と路面反力によって下に凸状に曲げられるアクスルケースの中立軸近傍においてセパレータ板をアクスルケースに溶接すべく、セパレート板が、バンジョー部の上下方向の中程の領域においてバンジョー部の内面に溶接されている、ことを特徴とするアクスルケース構造が提供される。
【0010】
本発明に係るアクスルケース構造においては、一対のセパレータ板が、デフギヤオイルを排出するためバンジョー部の下部に形成されたドレン孔を内包するように、バンジョー部の内部に車幅方向に間隔を隔てて配設されていてもよい。
【0011】
本発明に係るアクスルケース構造においては、オイル押退部材が、セパレータ板の車幅方向内方の面に、デフギヤオイルをバンジョー部に注入するためのオイル注入孔より下方に位置して設けられていてもよい。
【0012】
本発明に係るアクスルケース構造においては、オイル押退部材が、セパレータ板の車幅方向内方の面に、セパレータ板の縁部とバンジョー部の内面との間に形成された隙間を塞がないように取り付けられていてもよい。
【0013】
本発明に係るアクスルケース構造においては、オイル押退部材が、中空構造または中実構造であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バンジョー部の内部に車幅方向に間隔を隔てて一対のセパレータ板を設け、これらセパレータ板の間に貯留されたデフギヤオイルの液面をデファレンシャルギヤ機構の下端よりも上方とするようにしたアクスルケース構造において、セパレータ板に、デフギヤオイルの液面より下方のデフギヤオイルを押し退ける体積を有するオイル押退部材を設けたので、デフギヤオイルの液面を下げることなく、即ちデファレンシャルギヤ機構の潤滑性を悪化させることなく、デフギヤオイルの貯留量を削減できる。
また、オイル押退部材は、形状が下広がりとなっているので、デファレンシャルギヤ機構との干渉を避けつつ、バンジョー部の底部に貯留されたデフギヤオイルを効率よく押し退けることができる。
また、セパレータ板が、バンジョー部の上下方向の中程の領域において、バンジョー部の内面に溶接されているので、車重と路面反力を受けて下に凸状に曲げられるアクスルケースの中立軸近傍においてセパレータ板がアクスルケースに溶接されることになり、溶接部に加わる応力が小さくなり、セパレータ板とバンジョー部との溶接部を起点とした損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来例を示すアクスルケース構造の説明図であり、(a)はアクスルケース構造の断面図、(b)はセパレータ板の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示すアクスルケース構造の説明図であり、(a)はアクスルケース構造の断面図、(b)はオイル押退部材が設けられたセパレータ板の斜視図である。
図3図2に示すアクスルケース構造の斜視図である。
図4】(a)はオイル押退部材が設けられたセパレータ板の斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(アクスルケース構造1の概要)
図2(a)、図2(b)に示すように、本発明の一実施形態に係るアクスルケース構造1は、デファレンシャルギヤ機構2を収容すべく上下方向に膨出されたバンジョー部3の内部に、車幅方向に間隔を隔ててデファレンシャルギヤ機構2を内包するように一対のセパレータ板4を設け、これらセパレータ板4の間に貯留されたデフギヤオイル5の液面をデファレンシャルギヤ機構2の下端よりも上方としたものにおいて、セパレータ板4に、デフギヤオイル5の液面を下げることなくオイル量を削減するため、デフギヤオイル5の液面より下方のデフギヤオイル5を押し退ける体積を有するオイル押退部材6を設けたものである。以下、各構成要素について説明する。
【0018】
(バンジョー部3)
図3に示すように、アクスルケース7の車幅方向の中央には、内部にデファレンシャルギヤ機構2を収容するため、上下方向に膨出されたバンジョー部3が形成されている。バンジョー部3の車体前後方向の前部には、デファレンシャルギヤ機構2を出し入れするための開口8が形成され、バンジョー部3の車体前後方向の後部には、そこに形成された開口を覆うカバー9が取り付けられている。
【0019】
なお、本実施形態に係るアクスルケース7は、下方が開放された溝型断面を有し車幅方向の中央に上方に膨出された上側膨出部を有する上側板7aと、上方が開口された溝型断面を有し車幅方向の中央に下方に膨出された下側膨出部を有する下側板7bとを最中状に突き合わせて溶接することで構成された所謂板金製のアクスルケース7であるが、鋳造製のアクスルケース7であっても構わない。
【0020】
(オイル注入孔10)
図3に示すカバー9には、図2(a)に示すように、アクスルケース7内にデフギヤオイル5を注入するためのオイル注入孔10が形成されている。新車出荷時または車検時に、アクスルケース7にはオイル注入孔10からデフギヤオイル5が注入され、デフギヤオイル5がオイル注入孔10から溢れるまで注入される。すなわち、オイル注入孔10は、アクスルケース7内のデフギヤオイル5の液面の高さを定めるゲージとしても機能する。なお、オイル注入孔10には、通常、プラグボルト11がネジ込まれており、オイル注入時に取り外される。
【0021】
(ドレン孔12)
図2(a)、図3に示すように、バンジョー部3の下部には、オイル交換時に、アクスルケース7内のデフギヤオイル5を排出するためのドレン孔12が形成されている。ドレン孔12は、車両の最低地上高を確保すると共に不整路走行時の岩や障害物との接触などによる損傷を回避するため、バンジョー部3の下部の中央部ではなく、バンジョー部3の下部の傾斜立上部13に設けられている。すなわち、ドレン孔12には、オイル交換時に取り外されるドレンボルト14がネジ込まれるところ、そのドレンボルト14の頭部がアクスルケース7(バンジョー部3)の最下点とならないように、ドレン孔12の位置がバンジョー部3の下部の傾斜立上部13に設定されている。ドレンボルト14の頭部の下端は、バンジョー部3の下部の最下点と同等或いはそれより高い位置となっている。
【0022】
(セパレータ板4)
図2(a)に示すように、アクスルケース7のバンジョー部の内部には、車幅方向に間隔を隔てて、デファレンシャルギヤ機構2を内包するように、一対のセパレータ板4が設けられている。これらセパレータ板4の間に貯留されたデフギヤオイル5の液面は、デファレンシャルギヤ機構2の下端よりも上方となっている。セパレータ板4は、それらの間に貯留されたデフギヤオイル5がカーブ走行時に遠心力によって車幅方向外方に移動することを抑え、デファレンシャルギヤ機構2の良好な潤滑を保持する機能を発揮する。
【0023】
図2(b)に示すように、セパレータ板4には、アクスルシャフト15が回転自在に挿通される孔16が形成されている。このため、バンジョー部3に貯留されたデフギヤオイル5は、カーブ走行時に遠心力によってセパレータ板4の孔16とアクスルシャフト15との隙間を通ってセパレータ板4よりも車幅方向外方に移動する。このデフギヤオイル5をその後のストレート走行時に重力によってセパレータ板4よりも車幅方向内方に戻すため、セパレータ板4とバンジョー部3の内面との間には、僅かな隙間(0.5~0.8mm程度)が形成されており、その隙間をデフギヤオイル5が流れるようになっている。
【0024】
詳しくは、セパレータ板4は、アクスルケース7(バンジョー部3)の内部を車幅方向に仕切る形状に形成されており、図3に示すように、バンジョー部3の上下方向の中程の領域において、バンジョー部3の内面に間隔を隔てて溶接(隅肉溶接、点溶接)によって固定されている。17は溶接部である。セパレータ板4の縁部とバンジョー部3の内面との間には、溶接によって固定された部分(溶接部17)を除き、僅かな隙間(0.5~0.8mm)が形成されており、その隙間をデフギヤオイル5が流れるようになっている。なお、セパレータ板4は、バンジョー部3内の下部を仕切る形状であればよく、アクスルシャフト15よりも上方の部分4a(図2参照)が省略された形状であっても構わない。
【0025】
図2(a)に示すように、セパレータ板4は、デフギヤオイル5を排出するためバンジョー部3の下部に形成されたドレン孔12を内包するように、バンジョー部3の内部に車幅方向に間隔を隔てて配設されている。これにより、デフギヤオイル5を交換する際、セパレート板4がドレン孔12から排出されるデフギヤオイル5の流れの抵抗になることはなく、デフギヤオイル5をドレン孔12から速やかに排出できる。
【0026】
(オイル押退部材6)
図2(a)、図2(b)に示すように、セパレータ板4には、バンジョー部3に貯留されるデフギヤオイル5の液面を下げることなくオイル量を削減するため、バンジョー部3におけるデフギヤオイル5の液面より下方のデフギヤオイル5を押し退ける体積を有するオイル押退部材6が設けられている。かかるオイル押退部材6により、デフギヤオイル5の液面を下げることなく、即ちデファレンシャルギヤ機構2の潤滑性を悪化させることなく、デフギヤオイル5の貯留量を削減できる。
【0027】
図4(a)、図4(b)に示すように、オイル押退部材6は、側板6aおよび底板6bを構成する断面コ字状の板体からなる第1部材6xと、蓋板6cを構成する第2部材6yとから構成され、第1部材6xがセパレータ板4に液密に溶接され、第2部材6yが第1部材6xおよびセパレータ板4に液密に溶接されることによって、中空構造(空気室構造)となっている。これにより、オイル5を押し退けるための適切な体積を確保すると共に、重量増加を抑制している。
【0028】
図2(a)に示すように、オイル押退部材6は、セパレータ板4の車幅方向内方の面に、デフギヤオイル5をバンジョー部3に注入するためのオイル注入孔10(オイル注入時にオイル液面を規定する)より下方に位置して設けられている。これにより、バンジョー部3の内部に貯留されたデフギヤオイル5をオイル押退部材6によって確実に押し退けることができる。換言すれば、オイル注入孔11より上方にはオイル5が貯留されないため、そこにオイル押退部材6を配設しても意味は無い。
【0029】
図2(a)に示すオイル押退部材6は、セパレータ板4の車幅方向内方の面に、図3に示すように、セパレータ板4の縁部とバンジョー部3の内面との間に形成された隙間を塞がないように、セパレータ板4の車体前後方向の中央に取り付けられている。これにより、カーブ走行時に図2(a)に示すセパレータ板の孔16とドライブシャフト15との隙間を通ってセパレータ板4の車幅方向外方に移動したデフギヤオイル5は、その後のストレート走行時に、オイル押退部材6が邪魔になることなく、重力によってセパレータ板4の縁部とバンジョー部3の内面との隙間を通ってセパレータ板4の車幅方向内方に戻る。
【0030】
(作用・効果)
図2(a)に示すように、本実施形態に係るアクスルケース構造1によれば、バンジョー部3の内部に車幅方向に間隔を隔てて一対のセパレータ板4を設け、これらセパレータ板4の間に貯留されたデフギヤオイル5の液面をデファレンシャルギヤ機構2の下端よりも上方とするようにしたアクスルケース構造1において、セパレータ板4に、デフギヤオイル5の液面より下方のデフギヤオイル5を押し退ける体積を有するオイル押退部材6を設けたので、デフギヤオイル5の液面を下げることなく、即ちデファレンシャルギヤ機構2の潤滑性を悪化させることなく、デフギヤオイル5の貯留量を削減できる。
【0031】
デフギヤオイル5は単価が高いため、デフギヤオイル5の貯留量を削減することで、油脂類を含めたアクスルケース構造1全体(アクスルユニット)のコストを削減できる。また、車検時にデフギヤオイル5を交換する度にオイル量を削減でき、ランニングコストを低減できる。また、セパレータ板4にオイル押退部材6を付設しているため、既存のセパレータ板4の形状を変更する必要はなく、セパレータ板4の設計変更に伴うコストアップは生じない。
【0032】
図2(a)に示すように、一対のセパレータ板4がデフギヤオイル5のドレン孔12を内包するように車幅方向に間隔を隔てて配設されているので、デフギヤオイル5を交換する際、セパレート板4がドレン孔12から排出されるデフギヤオイル5の流れの抵抗になることはなく、デフギヤオイル5をドレン孔12から速やかに排出できる。
【0033】
図2(a)に示すように、オイル押退部材6がオイル注入孔10(オイル注入時にオイル液面を規定する)より下方に位置して設けられているので、バンジョー部3の内部に貯留されたデフギヤオイル5をオイル押退部材6によって確実に押し退けることができる。
【0034】
図2(a)に示すように、オイル押退部材6は、形状が下広がりとなっているので、デファレンシャルギヤ機構2との干渉を避けつつ、バンジョー部3の底部に貯留されたデフギヤオイル5を効率よく押し退けることができる。
【0035】
図4(a)、図4(b)に示すように、オイル押退部材6が中空構造(空気室構造)となっているので、アクスルケース構造1全体(アクスルユニット)の重量増加を抑制できる。なお、オイル押退部材6を中実構造としてもよい。この場合、重量は増加するものの、オイル押退部材6の内部にデフギヤオイル5が浸入しないので信頼性・耐久性が高まり、デフギヤオイル5を確実に押し退けることができる。
【0036】
図3に示すように、オイル押退部材6がセパレータ板4の縁部とバンジョー部3の内面との隙間(0.5~0.8mm程度)を塞がないように、セパレータ板4の車体前後方向の中央に取り付けられている。これにより、カーブ走行時に、図2(a)に示すセパレータ板の孔16とドライブシャフト15との隙間を通ってセパレータ板4の車幅方向外方に移動したデフギヤオイル5を、その後のストレート走行時に、オイル押退部材6が邪魔になることなく、重力によってセパレータ板4の縁部とバンジョー部3の内面との隙間を通ってセパレータ板4の車幅方向内方に適切に戻すことができる。
【0037】
セパレータ板4が、バンジョー部3の上下方向の中程の領域において、バンジョー部3の内面に溶接(17は溶接部)されている。これにより、車両重量がアクスルケース7に加わりタイヤからの反力を受けて下に凸状に曲げられるアクスルケース7の中立軸近傍においてセパレータ板4がアクスルケースに溶接されることになるため、溶接部17に加わる応力が小さくなり、セパレータ板4とバンジョー部3との溶接部17を起点とした損傷を抑制できる。
【0038】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、デファレンシャル機構の潤滑性を悪化させることなくデフギヤオイルの貯留量を削減できるアクスルケース構造に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 アクスルケース構造
2 デファレンシャルギヤ機構
3 バンジョー部
4 セパレータ板
5 デフギヤオイル
6 オイル押退部材
10 オイル注入孔
12 ドレン孔
図1
図2
図3
図4