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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】高内相W/O型乳化組成物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/37
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018089977
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019196318
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸岳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康之
(72)【発明者】
【氏名】曽根 俊郎
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第0722677(KR,B1)
【文献】特開2012-067049(JP,A)
【文献】特開2002-191387(JP,A)
【文献】特開2004-196664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0101501(US,A1)
【文献】特開2014-114230(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)乳化剤と、(B)液状油と、(C)油ゲル化剤と、(D)水とを含むW/O型乳化組成物であって、水相の占める割合が70質量%以上であり、前記(A)乳化剤は、ペンタエルカ酸スクロースを含み、前記(C)油ゲル化剤は、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、及び(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むものであることを特徴とする高内相W/O型乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)油ゲル化剤の含有量は、組成物全量中に0.1質量%以上である、請求項1記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項3】
前記(C)油ゲル化剤の含有量は、組成物全量中に0.05質量%以上である、請求項1又は2記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項4】
更に、乳酸菌発酵物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項5】
化粧料の形態である、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等への応用に適した乳化組成物に関し、より詳細には、油相に水相が分散してなるW/O型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乳化剤と液状油と水とを含む乳化組成物であって、分散相の割合が高いものは高内相乳化組成物と呼ばれている(特許文献1参照)。高内相乳化組成物のメリットとしては、油相に水相が分散してなるW/O型の乳化化粧料として、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立が得られる点が挙げられる。一方、そのデメリットとしては、乳化状態を維持するのが難しく、経時安定性が低いことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-81827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、乳化状態を安定に維持することができるようにした、高内相W/O型乳化組成物及びこれを利用した化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、(A)乳化剤と、(B)液状油と、(C)油ゲル化剤と、(D)水とを含むW/O型乳化組成物であって、水相の占める割合が70質量%以上であることを特徴とする高内相W/O型乳化組成物を提供するものである。
【0007】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物によれば、(A)乳化剤と(B)液状油と(C)油ゲル化剤と(D)水との配合があいまって、水相からなる分散相の占める割合が70質量%以上と高くなっても、その乳化状態が安定に維持される。
【0008】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(C)油ゲル化剤は、デキストリン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。これによれば、その乳化状態がより安定に維持される。
【0009】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(C)油ゲル化剤は、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ベヘン酸グリセリル、及び(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。これによれば、その乳化状態がより安定に維持される。
【0010】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(A)乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステルであることが好ましい。これによれば、その乳化状態がより安定に維持される。
【0011】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(C)油ゲル化剤の含有量は、組成物全量中に0.05質量%以上であることが好ましい。これによれば、その乳化状態がより安定に維持される。
【0012】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、更に、乳酸菌発酵物を含むことが好ましい。これによれば、乳酸菌発酵物に含まれるアミノ酸等の成分が、肌の状態を良好に保つのに寄与する。
【0013】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、該組成物は化粧料の形態であることが好ましい。これによれば、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料を提供することができる。
【0014】
一方、本発明の第2は、上記の高内相W/O型乳化組成物を含む化粧料を提供するものである。
【0015】
本発明に係る化粧料によれば、上記の高内相W/O型乳化組成物を含むので、これにより、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乳化状態を安定に維持することができるようにした、高内相W/O型乳化組成物を提供することができる。よって、これにより、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、
成分(A)として乳化剤を、
成分(B)として液状油を、
成分(C)として油ゲル化剤を、
成分(D)として水を含有し、水相からなる分散相の占める割合が70質量%以上である。
【0018】
ここで、一般に乳化組成物の乳化状態として、油相中に水相が分散してなるW/O型の乳化状態を形成しているかどうかは、当業者に周知の方法により、例えば、試験管に入れた水に乳化物を滴下し、分散しなければW/O型の乳化状態であると判定することができる(希釈法)。また、例えば、乳化物にテスターの電極部分を接触させ電気伝導度を測定することによりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(電気伝導度法)。更に、例えば、水溶性または油溶性色素を添加し、顕微鏡像によりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(色素法)。
【0019】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、水相からなる分散相の占める割合が70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、74質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、74質量%以上90質量%以下であることが最も好ましい。
【0020】
成分(A)の乳化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な乳化剤を適宜選択して使用すればよいが、特にエステルを構成する脂肪酸が不飽和である親油性の界面活性剤が好ましい。例えば不飽和脂肪酸としてオレイン酸やエルカ酸などが挙げられ、界面活性剤の親水部分としては、ショ糖、グリセリン、ソルビタン、オキシエチレンなどが挙げられる。なかでも、オレイン酸スクロースやエルカ酸スクロースを用いるのが好ましい。また、使用感、安定性および乳化組成物の粘性の観点より、エステルを構成する脂肪酸が飽和脂肪酸であるパルミチン酸やステアリン酸である界面活性剤を併用してもよい。なかでもパルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースを用いるのが好ましい。
【0021】
成分(A)は、乳化剤として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
成分(A)の含有量としては、成分(B)~(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる乳化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲を外れると、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態を安定化する効果に乏しくなる。
【0023】
成分(B)の液状油としては、一般に化粧料等に使用可能な液状油を適宜選択して使用すればよく、特に制限はない。例えば、低粘で肌に塗布しやすい乳化液体状の化粧料とする観点からは、常温(25℃)で液体状となる液状油を用いることが好ましい。
【0024】
具体的には、例えば、脂肪酸類とアルコール類とをエステル結合してなるエステル油である。エステル油としては、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸2-オクチルドデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-エチルヘキサン酸ジグリセリド等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニルやトリ2-エチルヘキサン酸グリセリルが好ましい。
【0025】
また、例えば、炭化水素系の非エステル油である。非エステル油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、スクワラン、スクワレン、セレシン等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、ミネラルオイルやスクワランが好ましい。
【0026】
また、例えば、シリコーン系のシリコーン油である。シリコーン油としては、例えば、ジフェニルシロキシトリメチコン、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン等が挙げられる。メイクなじみや、2種以上の液状油を使用する場合の他の油相成分との相溶性の観点からは、ジフェニルシロキシトリメチコンやシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0027】
また、例えば、植物油である。植物油としては、例えば、ホホバ油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ツバキ油、アボガド油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油等が挙げられる。安定性の観点からは、マカダミアナッツ油やメドウフォーム油が好ましい。
【0028】
成分(B)は、液状油として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
成分(B)の含有量としては、成分(A)、(C)、及び(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる液状油の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。上記範囲を超えると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる。また、上記範囲未満であると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる。
【0030】
成分(C)の油ゲル化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な油ゲル化剤を適宜選択して使用すればよく、特に制限はない。例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖と脂肪酸のエステル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、バチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコールや有機変性粘度鉱物等が挙げられる。なかでも、後述の実施例で示されるように、デキストリン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、より具体的には、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等を用いることが好ましい。
【0031】
成分(C)は、油ゲル化剤として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
成分(C)の含有量としては、成分(A)、(B)、及び(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる油ゲル化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中におよそ0.05質量%以上程度含有せしめれば、安定な高内相W/O型乳化組成物の形成に寄与し得る。好ましくは0.1質量%以上であり、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが更により好ましい。上記範囲未満であると、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態を安定化する効果に乏しくなる。また、上記範囲を超えて含有せしめても、その含有量に応じて乳化状態を安定化する効果に乏しく、かえって、安定な高内相W/O型乳化組成物の形成を妨げる場合がある。
【0033】
成分(D)の水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、RO水、滅菌処理水等、一般に化粧料等に使用可能なものを適宜用いればよく、特に制限はない。
【0034】
成分(D)の含有量としては、他の成分(A)~(C)の配合量との関係等によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、74質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。上記範囲未満であると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる。また、上記範囲を超えると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる。
【0035】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物には、上記成分(A)~(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に化粧料等に配合される成分、例えば、アルコール類、有機酸類、塩類、防腐剤、香料、色素、保湿剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗炎症剤、植物抽出物等を何れも配合することができる。また、増粘のための増粘剤を配合してもよい。
【0036】
アルコール類としては、肌にしっとり感を付与し、使用感を向上させるという観点からは、例えば、ソルビトール、キシリトール、マルチトールといった糖アルコールや、グリセリン、ジグリセリン等の3価以上の多価アルコールを適宜配合してもよい。また、防腐力等の観点から、例えば、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、1,2-へキシレングリコール等の2価のアルコールや、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノキシエタノール等の1価のアルコールを適宜配合してもよい。
【0037】
また、化粧料の使用感を調整するとの観点から、油剤としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等の半固形油、ステアリン酸バチル、ベヘニルアルコール、蜜蝋、コレステロール等の固形油、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ケイ酸(Al/Mg)、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル重合体等の水系増粘剤を適宜配合してもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様においては、その他の素材として、更に、乳酸菌発酵物を含む。乳酸菌発酵物とは、一般に化粧料等に配合される成分を乳酸菌(ビフィズス菌を含む)で発酵させたものを指し、例えば、特公平02-040643号公報記載の乳酸菌発酵液(牛乳)、特許第4512265号公報記載の乳酸菌発酵液(牛乳)、特許第3795011号記載の乳酸桿菌/アロエベラ発酵液、特許第3184114号公報記載の豆乳ビフィズス菌発酵液等が挙げられるが、これらに限らない。
【0039】
乳酸菌発酵物の含有量としては、成分(A)~(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる乳酸菌発酵物の種類や配合目的によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に乾燥固形分換算で0.001質量%以上0.4質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。上記範囲未満であると、当該乳酸菌発酵物を配合したことによる効果を得難くなる。また、上記範囲を超えると、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態を安定に維持し難くなる。
【0040】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、通常、当業者に周知の調製方法のとおり、成分(B)の液状油を主体とし、油によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させてなる油性原料と、成分(D)の水を主体とし、水によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させてなる水性原料とを調製しておき、必要とあらば、適当な温度条件下、例えば室温~80.0℃にて、それら油相に水相を少量ずつ添加しながら分散させることにより調製することができる。一旦乳化状態を形成した後は、例えば室温等に冷却してもよい。このような調製の際には、成分(C)の油ゲル化剤は、一般に油に親和性を有する場合が多いので、油性原料に混合もしくは分散させておくことが好ましい。
【0041】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、それをそのまま化粧料として用いてもよく、あるいは化粧料の原料として化粧料の製造工程で配合するようにして用いてもよい。具体的には、例えば、乳液、クリーム、クレンジング、マッサージ、サンスクリーン、化粧下地、クリームファンデーション等の化粧品の原料として、好適に用いられる。
【実施例
【0042】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
[試験例1]
表1に示す配合で、水相からなる分散相の占める割合が90質量%である高内相W/O型乳化組成物の調製を試みた。具体的には、油相及び水相の各原料を秤量後、それぞれ80℃にて溶解・混合させ、80℃にて油相に水相を少量ずつ添加しながらディスパーミキサー(商品名「スリーワンモータBlh600」(撹拌翼φ40mm)、新東科学株式会社製)により、撹拌翼回転速度600rpmで分散させた後、35℃まで冷却した。
【0044】
得られた調製物は、室温条件下でスイングローター式の遠心分離機に供して720×gで30分間の遠心分離処理を行い、調製物が油相と水相に分離せずに乳化状態を保つかどうか目視にて観察し、その安定性を評価した。
【0045】
また、調製1日後のバルク硬度として、レオメーター(商品名「CR-3000EX-S」、株式会社サン科学製、φ25mm、58mm/min)にて、直径25mmの円柱状のプローブを試料表面から58mm/minの進入速度で充填容器の底面まで進入させたときの平均応力(単位:g(グラム))を計測した。
【0046】
【表1】
【0047】
(安定性評価基準)
○:遠心分離処理後に油相と水相に分離していない。
△:遠心分離処理後に油相と水相に一部分離している。
×:遠心分離処理後に油相と水相に完全に分離している。
【0048】
その結果、油ゲル化剤として知られるパルミチン酸デキストリンを調製物の全体中に0.05質量%配合すると、一部安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなり、パルミチン酸デキストリンを調製物の全体中に0.1質量%以上配合すると、乳化状態が安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなった。また、調製物のバルク硬度は油ゲル化剤であるパルミチン酸デキストリンの配合量の増加とともに増大した。
【0049】
[試験例2]
表2に示す配合で、試験例1と同様の調製方法で、水相からなる分散相の占める割合が90質量%である高内相W/O型乳化組成物の調製を試み、試験例1と同様にして、乳化状態が安定な高内相W/O型乳化組成物が得られるかどうかを試験した。
【0050】
【表2】
【0051】
(安定性評価基準)
○:遠心分離処理後に油相と水相に分離していない。
△:遠心分離処理後に油相と水相に一部分離している。
×:遠心分離処理後に油相と水相に完全に分離している。
【0052】
その結果、油ゲル化剤として知られる(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを調製物の全体中に0.05質量%配合すると、一部安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなり、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを調製物の全体中に0.1質量%以上配合すると、乳化状態が安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなった。また、調製物のバルク硬度は油ゲル化剤である(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルの配合量の増加とともに増大した。
【0053】
[試験例3]
表3に示す配合で、試験例1と同様の調製方法で、水相からなる分散相の占める割合が90質量%である高内相W/O型乳化組成物の調製を試み、試験例1、2と同様にして、乳化状態が安定な高内相W/O型乳化組成物が得られるかどうかを試験した。
【0054】
【表3】
【0055】
(安定性評価基準)
○:遠心分離処理後に油相と水相に分離していない。
△:遠心分離処理後に油相と水相に一部分離している。
×:遠心分離処理後に油相と水相に完全に分離している。
【0056】
その結果、油ゲル化剤として知られるミリスチン酸デキストリンを調製物の全体中に0.05質量%配合すると、一部安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなり、油ゲル化剤として知られるミリスチン酸デキストリンを調製物の全体中に0.1質量%以上配合すると、乳化状態が安定な高内相W/O型乳化組成物が得られることが明らかとなった。また、調製物のバルク硬度は油ゲル化剤であるミリスチン酸デキストリンの配合量の増加とともに増大した。
【0057】
[試験例4]
表4に示す配合で化粧料を調製した。具体的には、油相及び水相の各原料を秤量後、それぞれ80℃にて溶解・混合させ、80℃にて油相に水相を少量ずつ添加しながらディスパーミキサー(商品名「スリーワンモータBlh600」(撹拌翼φ40mm)、新東科学株式会社製)により、撹拌翼回転速度600rpmで分散させた後、35℃まで冷却した。
【0058】
【表4】
【0059】
その結果、得られた化粧料は、水相からなる分散相の占める割合が75質量%である高内相W/O型乳化組成物であった。また、その乳化状態は、試験例1記載の遠心分離処理による安定性評価の結果、安定であった。