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特許7094142プレス加工装置、プレス加工ライン、及びプレス加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】プレス加工装置、プレス加工ライン、及びプレス加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20220624BHJP
   B21D 43/02 20060101ALI20220624BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B21D43/00 A
B21D43/00 E
B21D43/02 C
B30B15/28 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018098717
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019202330
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 一志
(72)【発明者】
【氏名】矢島 正美
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0048283(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105710243(CN,A)
【文献】実開昭53-026944(JP,U)
【文献】実開昭60-160440(JP,U)
【文献】特公昭46-002906(JP,B1)
【文献】特開平07-239221(JP,A)
【文献】特開2004-337884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00-43/02
B30B 15/28
B21D 45/00-45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、
前記固定金型との間で被加工物を成形する可動金型と、
前記被加工物を前記固定金型から持ち上げるリフトと、
前記リフトに載置された前記被加工物の有無を検知する検知装置と、を備え
前記検知装置は、
光線が射出される発光部と、前記光線の検知する受光部と、を備え、
前記発光部は、前記固定金型と前記可動金型との間において前記光線が前記リフトの上方に位置するように配置され、
前記被加工物の成形後であって前記被加工物が前記リフトから搬出される前において、前記受光部が前記光線を検知したときに前記被加工物を成形する運転が停止され、前記受光部が前記光線を検知しないときに前記被加工物を成形する運転が続行される、プレス加工装置。
【請求項2】
前記検知装置は、
前記リフトが前記固定金型から前記被加工物を持ち上げた状態において前記リフトに載置された前記被加工物を検知する、請求項1に記載のプレス加工装置。
【請求項3】
前記検知装置は、
受光部を備え、
前記受光部は、
前記発光部から射出された前記光線の反射を受光可能な位置に配置される、請求項1又は2に記載のプレス加工装置。
【請求項4】
前記検知装置は、
前記発光部から射出された前記光線を反射する反射板を備え、
前記発光部、前記受光部、及び前記反射板は、
前記固定金型及び前記可動金型に対し側方に配置され、
前記反射板は、
前記固定金型及び前記可動金型を挟んで前記発光部及び前記受光部の反対側に配置される、請求項に記載のプレス加工装置。
【請求項5】
前記検知装置は、
回帰反射形のセンサであり、
前記反射板が回帰反射板であり、
前記受光部の前に前記反射板に反射した光線のみを透過させる偏光フィルタを備える、請求項4に記載のプレス加工装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のプレス加工装置と、
前記プレス加工装置に前記被加工物を供給する前側搬送装置と、
前記プレス加工装置の前記リフトに載置された前記被加工物を次の工程に搬出する後側搬送装置と、を備える、プレス加工ライン。
【請求項7】
プレス加工装置を含むプレス加工ラインにより行われるプレス加工方法であって、
前工程から前記プレス加工装置に被加工物を供給する供給工程と、
前記プレス加工装置において前記被加工物をプレス加工する加工工程と、
前記加工工程の後にリフトにより前記プレス加工装置の固定金型から前記被加工物を持ち上げるリフト上昇工程と、
リフトの上に前記被加工物が載置されているか否かを検知する検知工程と、
前記プレス加工装置から前記被加工物を搬出する搬出工程と、を備え
前記検知工程は、
前記加工工程が終了し前記搬出工程が開始されるまでの間に実行され、
前記リフト上に前記被加工物が載置されていることを検知した場合に前記搬出工程が実行され、
前記リフト上に前記被加工物が載置されていないことを検知した場合に前記プレス加工ラインを停止する、プレス加工方法。
【請求項8】
前記検知工程は、
前記リフトが上死点に至った状態において行われる、請求項7に記載のプレス加工方法。
【請求項9】
前記検知工程は、
検知装置の発光部から光線を射出する、請求項8に記載のプレス加工方法。
【請求項10】
前記検知工程は、
前記固定金型を挟んで前記発光部の反対側に位置する反射板により前記光線を反射させ、受光部が反射した前記光線を受光することにより前記リフトの上に前記被加工物が載置されていないことを検知する、請求項9に記載のプレス加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工装置、プレス加工ライン及びプレス加工方法に関し、特にプレス加工装置内に被加工物が残留しているか否かを検出する機構及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絞り成形用プレス工程、ブランク抜きプレス工程、及びトリミング工程等の複数の工程を備えるプレス加工ラインが知られている。プレス加工ラインは、複数の工程のそれぞれに被加工物が供給され、それぞれの被加工物を並行して加工する。これにより、プレス加工ラインは、単位時間当たりに生産する製品数を増加させている。
【0003】
特許文献1に開示されているところでは、プレス加工ラインは、絞り成形用プレス工程と、絞り成形用プレス工程のためのブランクを製作するブランク抜きプレス工程とが直列に並べられている。そして、ブランク抜きプレス工程と絞り成形用プレス工程との間には中間ステージが設置され、被加工物は、搬送ロボットによりブランク抜きプレス工程から中間ステージへ、中間ステージから絞り成形用プレス工程へと移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-337884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているプレス加工ラインにおいては、被加工物は、ブランク抜きプレス工程、中間ステージ、及び絞り成形用プレス工程のそれぞれに供給される。つまり、1つの被加工物がブランク抜きプレス工程で加工されている間に、別の被加工物は中間ステージに載置されており、また別の被加工物は絞り成形用プレス工程で加工されている。そして、被加工物は各工程の間を搬送ロボットにより移動される。しかし、例えば絞り成形用プレス工程において、絞り成形加工が終わった被加工物が所定の位置に無い場合、搬送用ロボットは、被加工物を持たないまま搬送動作を行ってしまう。絞り成形加工が終わった被加工物が所定の位置に無い場合とは、例えば絞り成形用金型を構成する上型に被加工物が付着したまま上型が上昇し、搬送ロボットが被加工物を搬送できない状態になっている場合である。
【0006】
上記の場合、絞り成形加工が終わった被加工物は、絞り成形用プレス工程内に残留しており、被加工物が残留したまま次の被加工物が絞り成形用プレス工程に入ると、2つの被加工物が金型内に入っている状態で絞り成形が行われることになる。すると、絞り成形用プレス工程において正常な加工が実施されず停止するだけでなく、プレス加工ライン全体の停止及び絞り成形用金型の破損が生じる、という課題があった。
【0007】
また、絞り成形用プレス工程内に被加工物が残留していることを検知するために、絞り成形用プレス工程が終了した被加工物が載置されるステージにセンサを設けることが考えられる。例えば、被加工物が載置されると検知信号を発生する近接センサをステージに設置する。この場合、少なくとも金型上から被加工物が移動されステージに載置されるまでの時間は、絞り成形用プレス工程を動作させることができない。そのため、絞り成形用プレス工程に掛かる時間が長くなり、プレス加工ライン全体の生産能力が低下してしまうという課題があった。
【0008】
特許文献1においては、絞り成形用プレス工程が記載されているが、絞り成形用プレス工程が、例えば断面が波形に成形された鋼板を所定の形状に曲げプレス加工を行う曲げプレス工程に置き換わったプレス加工ラインであっても、上記と同様な課題を有していた。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであって、プレス加工ラインの生産性を低下させることなく、金型内に被加工物が残留したまま次の被加工物の加工を行うのを防止するプレス加工装置、プレス加工ライン、及びプレス加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプレス加工装置は、固定金型と、前記固定金型との間で被加工物を成形する可動金型と、前記被加工物を前記固定金型から持ち上げるリフトと、前記リフトに載置された前記被加工物の有無を検知する検知装置と、を備え、前記検知装置は、光線が射出される発光部と、前記光線の検知する受光部と、を備え、前記発光部は、前記固定金型と前記可動金型との間において前記光線が前記リフトの上方に位置するように配置され、前記被加工物の成形後であって前記被加工物が前記リフトから搬出される前において、前記受光部が前記光線を検知したときに前記被加工物を成形する運転が停止され、前記受光部が前記光線を検知しないときに前記被加工物を成形する運転が続行されるものである
【0011】
本発明に係るプレス加工ラインは、プレス加工装置と、前記プレス加工装置に前記被加工物を供給する前側搬送装置と、前記プレス加工装置の前記リフトに載置された前記被加工物を次の工程に搬出する後側搬送装置と、を備える。
【0012】
本発明に係るプレス加工方法は、プレス加工装置を含むプレス加工ラインにより行われるプレス加工方法であって、前工程から前記プレス加工装置に被加工物を供給する供給工程と、前記プレス加工装置において前記被加工物をプレス加工する加工工程と、前記加工工程の後にリフトにより前記プレス加工装置の固定金型から前記被加工物を持ち上げるリフト上昇工程と、リフトの上に前記被加工物が載置されているか否かを検知する検知工程と、前記プレス加工装置から前記被加工物を搬出する搬出工程と、を備え、前記検知工程は、前記加工工程が終了し前記搬出工程が開始されるまでの間に実行され、前記リフト上に前記被加工物が載置されていることを検知した場合に前記搬出工程が実行され、前記リフト上に前記被加工物が載置されていないことを検知した場合に前記プレス加工ラインを停止するものである
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記の構成により、プレス加工工程において被加工物が搬送装置により搬送できる位置にあるか否かを判定できるため、金型内に被加工物が残留していることを確実に検知することができる。また、プレス加工終了後の被加工物が金型内に残留しているのを、金型内に次の被加工物が入る前に検知できる。そのため、金型内に次の被加工物が入った直後にプレス加工を実施できるため、プレス加工工程の稼働効率が向上し、プレス加工ライン全体の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係るプレス加工ラインの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係るプレス加工装置の構造及び加工の工程を説明するための模式図である。
図3】実施の形態1に係る検知装置の構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るプレス加工ラインのプレス加工装置及び搬送装置の制御フローチャートである。
図5】実施の形態1に係るプレス加工ラインの比較例としてのプレス加工ラインの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るプレス加工ライン100の構成を示す模式図である。プレス加工ライン100は、例えば、ブランク抜きプレス加工装置、絞り成形用プレス加工装置、曲げプレス加工、及びブランク加工装置等のプレス加工装置を含み、鋼板等の金属材料を成形加工するものである。ブランク抜きプレス加工、絞り成形用プレス加工、曲げプレス加工、及びブランク加工等を総称してプレス加工と呼び、プレス加工を行う装置をプレス加工装置10と呼ぶ。図1は、プレス加工ライン100の一部を示しており、プレス加工装置10と、その前後に配置されているステージ20、21とを示している。また、図1は、プレス加工ライン100が備える各装置の構成を説明するものであり、各装置の位置関係については、適宜見やすいように変更してある。
【0017】
実施の形態1に係るプレス加工ライン100において、プレス加工装置10及びステージ20、21にはそれぞれ被加工物1が載置されている。プレス加工装置10内にある被加工物1bは、曲げ成形加工された後に後側搬送装置23により、プレス加工装置10内から搬出され、ステージ21の上に移動される。また、後側搬送装置23は、被加工物1bの搬出と同時にステージ21の上にある被加工物1aを次の工程へ搬送する。被加工物1aの搬出に合わせて、プレス加工装置10の前側にある前側搬送装置22により、ステージ20の上の被加工物1cがプレス加工装置10内に供給される。また、前側搬送装置22は、被加工物1cの供給と同時に前工程から被加工物1をステージ20の上に移動させる。
【0018】
実施の形態1に係る搬送装置22、23は、ステージ20、21及びプレス加工装置10に載置されている被加工物1を持ち上げた後に水平に移動させ、次の工程の所定の位置に降ろすものである。搬送装置22、23は、プレス加工装置10の動作に同期して被加工物1を移動させるものであり、動作のタイミングを予め決められている。曲げ成形が完了した後に、搬送装置22、23が直ちに被加工物1の搬出及び供給を行うことにより、プレス加工装置10は次の被加工物1の加工開始までの時間が短縮される。これにより、プレス加工ライン100は、製品生産能力を向上させることができる。
【0019】
(プレス加工装置10)
図2は、実施の形態1に係るプレス加工装置10の構造及び加工の工程を説明するための模式図である。図2においては、プレス加工装置10を構成する固定金型12及び可動金型11の周辺を示している。固定金型12は、プレス加工装置10の下部に固定されており、可動金型11は固定金型12へ向かって下降して被加工物1に荷重を加える。被加工物1は、固定金型12と可動金型11との間で塑性変形し、所望の形状に成形される。
【0020】
実施の形態1に係る可動金型11及び固定金型12は、例えば図2に示される様に水平方向に平らな断面が波形に成形されている鋼材を円弧形状に曲げるためのものである(例えば、ライナープレート、コルゲートパイプ)。図2の紙面垂直方向が、図1のプレス加工ライン100において被加工物1が流れる方向である。なお、可動金型11及び固定金型12は、図2に示された形態のみに限定されるものではない。例えば、図2に示された可動金型11及び固定金型12とは円弧形状の半径寸法が異なる金型や、への字に曲げるための金型等、可動金型11及び固定金型12は適宜変更することができる。
【0021】
固定金型12は、リフト13を備える。図2(a)に示される様に、リフト13は、プレス加工装置10にて成形される前の被加工物1が載置されるものである。また、図2(d)に示される様に、被加工物1が成形された後は、リフト13は、被加工物1を上方に持ち上げ、固定金型12から取り出す。リフト13は、上下に移動自在に構成されており、被加工物1の加工前及び加工後には上死点まで移動し、加工中には、下死点に位置する。
【0022】
リフト13の先端部14は、加工前及び加工後には被加工物1を支持し、加工中には固定金型12の表面の一部を構成している。従って、先端部14の形状は、固定金型12の表面の形状に合わせて形成されている。
【0023】
図3は、実施の形態1に係る検知装置50の構成を示す模式図である。可動金型11及び固定金型12の側方には検知装置50が配置されている。実施の形態1においては、検知装置50は、光学式の回帰反射形のセンサであり、センサユニット51の内部に発光部53及び受光部54を備える。センサユニット51は、可動金型11及び固定金型12が配置されている領域の側方に配置されている。固定金型12を挟んでセンサユニット51の反対側には、反射板52が配置されている。反射板52は、センサユニット51の発光部53から射出された光線Lを受光部54に向かって反射できるように配置される。
【0024】
図3に示される様に、センサユニット51と反射板52との間に被加工物1が配置された場合は、光線Lは、被加工物1に遮られ、反射板52に到達せず被加工物1に当たり反射される。実施の形態1において、検知装置50は、回帰反射形のセンサである。発光部53から射出される光線Lは、偏光フィルタ55を通り、特定の方向にのみ振動するように偏光される。反射板52は、回帰反射板であり、光線Lの振動方向を変えて反射する。反射板52に反射された光線Lは、偏光フィルタ56を通り受光部54に至る。偏光フィルタ56は、発光部53の前に設置された偏光フィルタ55と異なる方向に振動する光を通過させるものであり、特に反射板52に反射された光線Lのみが通過する様に構成される。このように構成されることにより、センサユニット51と反射板52との間に被加工物1が配置された場合は、被加工物1に反射された光線Laは偏光フィルタ56に遮られ受光部54に至らない。つまり、実施の形態1に係る検知装置50は、被加工物1がセンサユニット51と反射板52との間に存在する場合には検知信号を発生しない。
【0025】
センサユニット51の発光部53の光線Lは、図2(d)に示される様にリフト13と可動金型11の間を通過する様に構成されている。更に、リフト13の上にプレス加工後の被加工物1が載置されている場合は、光線Lは被加工物1に当たるように構成されている。つまり、被加工物1がリフト13の上に載置されていない場合には、光線Lはリフト13の直ぐ上方を通過し、反射板52に当たるようになっている。また、光線Lは、可動金型11と固定金型12との間の空間を通過するため、被加工物1以外の物に当たって誤検出するのが抑制される。
【0026】
実施の形態1において、受光部54は、発光部53と同じセンサユニット51の内部に設置されているが、センサユニット51の内部に設置されていなくとも良い。受光部54は、発光部53から射出され反射板52で反射された光線Lを受光可能な位置であれば、その他の場所に設置することもできる。
【0027】
(プレス加工ライン100の動作)
図4は、実施の形態1に係るプレス加工ライン100のプレス加工装置10及び搬送装置22、23の制御フローチャートである。プレス加工ライン100は、多数の被加工物1を順次プレス加工装置10に供給し、他の加工工程と同期してプレス加工を行い、次の工程に送り込むように構成されている。
【0028】
まず、後側搬送装置23が作動し、後側搬送装置23は、プレス加工装置10のリフト13の上に載置されているプレス加工後の被加工物1bを搬出する動作を行う(S1)。この工程を搬出工程と呼ぶ。また、前側搬送装置22が作動し、前側搬送装置22は、ステージ20の上の被加工物1cをプレス加工装置10に供給する動作を行う(S2)。この工程を供給工程と呼ぶ。供給工程と搬出工程とは、同時に行っても良いし、一方を先に開始してもよい。ただし、プレス加工装置10のリフト13の上に被加工物1cが供給される時点においては、プレス加工後の被加工物1bは、搬出されている必要がある。
【0029】
次に、プレス加工装置10に搬入された被加工物1bを固定金型12の上に載置させる(S3)。具体的には、被加工物1bが載置されたリフト13を上死点から下死点まで移動させる。この工程をリフト降下工程と呼ぶ。リフト降下工程は、リフト13の上に被加工物1bが載置され、前側搬送装置22が被加工物1bから退避した後に開始することができる。
【0030】
リフト降下工程の完了後または最中に、可動金型11は降下を開始する。可動金型11は、固定金型12に突き当てられ、被加工物1bを固定金型12との間で塑性変形させる(S4)。この工程を金型降下工程と呼ぶ。なお、リフト降下工程は、少なくとも被加工物1bが固定金型12に押し付けられる時には完了している必要がある。
【0031】
可動金型11が下死点に至ったら、可動金型11は上昇を開始する(S5)。この工程を金型上昇工程と呼ぶ。また、可動金型11が上昇を開始した後にリフト13も上昇を開始する(S6)。この工程をリフト上昇工程と呼ぶ。リフト上昇工程は、可動金型11が上昇を開始した直後に開始されても良いし、可動金型11が上死点に至った状態で開始されても良い。また、リフト13は、リフト13の可動域の上死点に至ったら停止する(S7)。
【0032】
リフト13が停止したら、検知装置50が作動し(S8)、リフト13上のプレス加工後の被加工物1bの有無を判断する(S9)。この工程を検知工程と呼ぶ。実施の形態1においては、検知装置50は、被加工物1bがリフト13の上に存在しない場合に検知信号を発する。検知装置50が検知信号を発した場合、プレス加工ライン100全体が停止する制御が行われる(S10)。検知装置50は、検知装置50が作動してから検知信号を発するか、所定時間が経過した場合に停止される。なお、被加工物1bがリフト13の上に存在しない場合とは、金型上昇工程において、可動金型11に被加工物1bが付着したままになっている状態を指す。プレス加工において金型には潤滑油が付着しており、潤滑油の表面張力により被加工物1bが可動金型11に密着したまま離れない状態が発生し得る。また、被加工物1bの成形後の形状によっては、被加工物1bが可動金型11を挟み込む状態になり、被加工物1bが可動金型11から離れない場合もある。このような場合、被加工物1bが搬出工程によりプレス加工装置10から搬出されずに可動金型11に残るため、そのままプレス加工が行われると、2つの被加工物1bをプレス加工することになり、金型が破損する可能性がある。検知工程は、このような不具合を回避するために設けられた工程である。
【0033】
検知工程において所定時間の間、検知装置50から検知信号が発されなかった場合は、プレス加工ライン100は、S1からの工程を繰り返すことになる。なお、検知工程の最中に供給工程及び搬出工程が開始されていても良い。搬出工程において、後側搬送装置23が作動を開始し、リフト13上からプレス加工後の被加工物1bを搬出するまでの間に検知装置50による検出信号が発生しなかったら、そのまま後側搬送装置23は、そのまま動作を継続すればよい。リフト13上からプレス加工後の被加工物1bを搬出するまでの間に検知装置50による検出信号が発生した場合は、その時点でプレス加工ライン100が停止する。このように制御すれば、可動金型11はまだ動作を開始していないため、プレス加工装置10内に2つの被加工物1bが存在する状態でプレス加工が行われるのを回避することができる。プレス加工ライン100が停止した場合は、可動金型11に付着したままの被加工物1bを手作業により取り外し、その被加工物1bをあるべき位置に戻した状態で、プレス加工ライン100を再度稼働させれば良い。
【0034】
(比較例のプレス加工ライン1100)
図5は、実施の形態1に係るプレス加工ライン100の比較例としてのプレス加工ライン1100の構成を示す模式図である。比較例に係るプレス加工ライン1100の各部については、各図面において同一の機能を有するものは実施の形態1の説明で使用した図面と同一の符号を付して表示するものとする。プレス加工ライン1100は、プレス加工装置110に検知装置50が設置されておらず、その代わりにステージ120、121に被加工物1を検出するセンサ124、125が設置されている。
【0035】
比較例に係るプレス加工ライン1100においては、プレス加工装置110にてプレス加工後の被加工物1bがステージ121に移動したことを検知することにより、プレス加工装置110内に被加工物1bが残留しているか否かを判定する。つまり、搬送装置23の動作が完了した後に、センサ125がステージ121の上に被加工物1aが載置されていることを検知してから金型降下工程が開始される。実施の形態1においては、搬送装置22が被加工物1cをリフト13の上に載置した直後に金型降下工程を開始できるが、比較例においては、搬送装置23の動作が完全に完了するまで金型降下工程を開始することができない。よって、比較例に係るプレス加工ライン1100は、実施の形態1に係るプレス加工ライン100と比較して、プレス加工の周期を短くするのが困難な構成になっている。
【0036】
(実施の形態1の効果)
実施の形態1に係るプレス加工装置10、プレス加工ライン100、及びプレス加工方法によれば、従来のプレス加工装置110に簡易な構成の検知装置50を追加した構成となっている。これにより、リフト13の上に正常に加工後の被加工物1bが載置されていないことを検知することができる。従って、プレス加工装置10内に被加工物1bが残留しているか否かの検知を精度良く行うことができ、前の被加工物1bが残留したまま次の被加工物1bを一度に加工する不具合を回避することできる。なお、検知装置50は、実施の形態1以外の方式のセンサを使用することもできる。例えば、反射形の光センサであっても良い。反射形の光センサの場合は、発光部53から射出された光線Lが被加工物1bに反射し、反射した光線Lを受光部54で検出し、リフト13上に被加工物1bがあることを検知する。被加工物1bに光線Lを反射させる場合は、被加工物1bは、受光部54に光線Lを確実に反射できるような反射面の形状及び精度を有する必要がある。また、検知装置50は、透過型の光センサであっても良い。透過形の光センサの場合は、例えば発光部53に対しプレス加工装置10を挟んだ反対側に受光部54を配置する。検知装置50を作動させて、発光部53からの光線Lを受光部54が検知した場合に、被加工物1bがリフト13上に無いと判断する。
【0037】
また、検知装置50は、リフト13が固定金型12から被加工物1bを持ち上げた状態においてリフト13に載置された被加工物1bを検知する。そのため、プレス加工装置10に次の被加工物1cが供給される前に、加工後の被加工物1bが正常な位置にあるか否かを判断することができる。被加工物1bがリフト13上になければ、被加工物1bが可動金型11に付着したままの状態になっている。この場合、次の被加工物1cがプレス加工装置10に供給されると、金型内に2つの被加工物1が存在したままプレス加工してしまうため、プレス加工装置10及びプレス加工ライン100を停止する。被加工物1bがリフト13上にある場合は、プレス加工ライン100は、動作を続行し、次の被加工物1cがリフト13の上に供給後直ぐにプレス加工を開始できる。そのため、プレス加工ライン100は、被加工物1bのプレス加工完了から次の被加工物1cのプレス加工開始までの時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0038】
検知装置50は、発光部53から光線Lを射出する方式のセンサを使用しているため、プレス加工を行う金型から離れた位置に設置することができる。よって、既存のプレス加工装置10に設置するのが容易で、プレス加工装置10の金型を交換する場合においても、検知装置50の調整が必要無く、作業を阻害することもない。
【0039】
検知装置50は、回帰反射形の光学式センサであり、反射板52に反射する光線Lを検知する方式であるため、検知精度が被加工物1の形状に左右されないという利点がある。従って、プレス加工装置10内に被加工物1bが残留しているか否かの検知精度を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 被加工物、1a 被加工物、1b 被加工物、1c 被加工物、10 プレス加工装置、11 可動金型、12 固定金型、13 リフト、14 先端部、20 ステージ、21 ステージ、22 (前側)搬送装置、23 (後側)搬送装置、50 検知装置、51 センサユニット、52 反射板、53 発光部、54 受光部、55 偏光フィルタ、56 偏光フィルタ、100 プレス加工ライン、110 プレス加工装置、120 ステージ、121 ステージ、124 センサ、125 センサ、1100 プレス加工ライン、L 光線、La 光線。
図1
図2
図3
図4
図5