(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】トナー用バインダー樹脂、トナー用樹脂組成物、トナーおよび現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20220624BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20220624BHJP
G03G 9/10 20060101ALI20220624BHJP
C08L 25/14 20060101ALI20220624BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/097 365
G03G9/10
C08L25/14
C08F212/08
(21)【出願番号】P 2018105074
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】椎名 浩一
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】井村 康朗
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-333358(JP,A)
【文献】特開平04-081863(JP,A)
【文献】特開平11-316475(JP,A)
【文献】特開2005-283701(JP,A)
【文献】特開平08-320595(JP,A)
【文献】特開平08-030029(JP,A)
【文献】特開昭60-230666(JP,A)
【文献】特開2015-143777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布曲線において、
分子量1×10
3以上
9×10
3
以下の領域にピーク(A)を有し、
分子量5×10
4以上
3×10
5
以下の領域にピーク(B)を有し、
前記ピーク(A)の微分分子量(a)と前記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、
分子量1×10
6以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であり、
150℃における貯蔵弾性率が、測定周波数6.28ラジアン/秒において、2000Pa以下であるトナー用バインダー樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載のトナー用バインダー樹脂において、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量1×10
3以上
9×10
3
以下の領域にピーク(A)を有する低分子量ビニル樹脂(L)と、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量5×10
4以上
3×10
5
以下の領域にピーク(B)を有する高分子量ビニル樹脂(H)と、
を含むトナー用バインダー樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトナー用バインダー樹脂において、
前記ビニル樹脂がスチレン系重合体を含むトナー用バインダー樹脂。
【請求項4】
請求項3に記載のトナー用バインダー樹脂において、
前記スチレン系重合体が、ポリスチレンおよびスチレン・(メタ)アクリル系共重合体から選択される少なくとも一種を含むトナー用バインダー樹脂。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂を含むトナー用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
【請求項7】
請求項6に記載のトナーにおいて、離型剤をさらに含むトナー。
【請求項8】
請求項7に記載のトナーおよびキャリアを含む現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用バインダー樹脂、トナー用樹脂組成物、トナーおよび現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、感光体上に形成したトナー画像を記録紙に転写するPPC(Plain Paper Copy)複写機やプリンターにおける電子写真法は、以下のような手順で行われる。まず、光感光体上に静電気的潜像を形成する。ついで該潜像をトナーを用いて現像し、紙等の被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールやフィルムで加熱定着する。この方法は、熱ロールやフィルムと被定着シート上のトナーが直接接触した状態で加熱下にて定着が行われるので、迅速でしかも熱効率が極めて良好である。したがって、定着効率が非常によい。
【0003】
このような電子写真法に使用されるトナーにはバインダー樹脂が使用されている。以下の特許文献1~3には、こうしたバインダー樹脂の例が記載されている。
【0004】
特許文献1には、ビニル系単量体と、ラジカル重合性の不飽和二重結合を有する基で片末端を修飾されたオレフィン系重合体とを共重合してなり、ガラス転移点が40~65℃、重量平均分子量が7000~15万であることを特徴とするカラートナー用樹脂が記載されている。
【0005】
特許文献2には、結晶性樹脂を一成分とするネットワーク構造を含むことを特徴とするトナー用バインダー樹脂が記載されている。
【0006】
特許文献3には、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、及びこれらの反応物、並びに脂肪酸金属塩(M)を含有し、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布において分子量2.5×104以上1.2×105以下の領域にピークを有する高分子量ビニル樹脂(H)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布において分子量2×103以上2×104以下の領域にピークを有する低分子量ビニル樹脂(L)とを含み、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応物が、脂肪酸金属塩(M)の存在下で形成されたものである、トナー用バインダー樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-100460号
【文献】国際公開第2005/111730号
【文献】国際公開第2013/176016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1及び2に記載されているような、高分子量樹脂成分と低分子量樹脂成分を含むバインダー樹脂は、耐久性と定着性を両立できるものの、より厳しい条件での耐オフセット性が求められるようになった。
これに対して、特許文献3に記載されているような、高分子量ビニル樹脂成分と低分子量ビニル樹脂成分を含み、さらに樹脂成分の架橋物を含むバインダー樹脂は耐久性と定着性を両立しながら、さらに耐オフセット性も良好であった。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献3に記載されているような、高分子量ビニル樹脂成分と低分子量ビニル樹脂成分を含み、さらに樹脂成分の架橋物を含むバインダー樹脂を用いたトナーは、印刷部分の光沢性の観点において改善の余地があった。特に、黒色トナーと異なり、カラートナーでは、より鮮やかな発色が求められるため、光沢性は重要である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できるトナー用バインダー樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、バインダー樹脂が樹脂成分の架橋物や、非常に分子量の大きい高分子量成分を含むと、トナーの弾性が強くなりすぎて、トナーが紙に定着した後に、定着したトナーの形状が変化して入射光が散乱してしまい、その結果、印刷部分の光沢が劣ってしまうことを知見した。
本発明者らは上記知見をもとにさらに鋭意検討した。その結果、高分子量樹脂成分と低分子量樹脂成分の分子量ピークの位置と比率を特定の範囲にすることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーが得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明によれば、以下に示すトナー用バインダー樹脂、トナー用樹脂組成物、トナーおよび現像剤が提供される。
【0012】
[1]
ビニル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布曲線において、
分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有し、
分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有し、
上記ピーク(A)の微分分子量(a)と上記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、
分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
[2]
上記[1]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
150℃における貯蔵弾性率が、測定周波数6.28ラジアン/秒において、2000Pa以下であるトナー用バインダー樹脂。
[3]
上記[1]または[2]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有する低分子量ビニル樹脂(L)と、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有する高分子量ビニル樹脂(H)と、
を含むトナー用バインダー樹脂。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂において、
上記ビニル樹脂がスチレン系重合体を含むトナー用バインダー樹脂。
[5]
上記[4]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
上記スチレン系重合体が、ポリスチレンおよびスチレン・(メタ)アクリル系共重合体から選択される少なくとも一種を含むトナー用バインダー樹脂。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂を含むトナー用樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
[8]
上記[7]に記載のトナーにおいて、離型剤をさらに含むトナー。
[9]
上記[8]に記載のトナーおよびキャリアを含む現像剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できるトナー用バインダー樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、重合という語を共重合の意味で使うことがあり、重合体という語を共重合体の意味で使うことがある。
【0015】
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、ビニル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布曲線において、分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有し、分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有し、上記ピーク(A)の微分分子量(a)と上記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下である。
ここで、上記分子量分布曲線において、横軸は分子量であり、縦軸は微分分子量(dW/dlogM)を意味する。
また、本実施形態において、分子量が特定の範囲の領域にピーク(A)またはピーク(B)を有するとは、それぞれ、分子量が特定の範囲の領域にピーク(A)のピークトップまたはピーク(B)のピークトップが位置していることを意味する。
また、本実施形態において、ピーク(A)の微分分子量(a)およびピーク(B)の微分分子量(b)は、それぞれ、ピーク(A)のピークトップにおける微分分子量およびピーク(B)のピークトップにおける微分分子量を意味する。
【0016】
前述したように、本発明者らの検討によれば、特許文献3に記載されているような、高分子量ビニル樹脂成分と低分子量ビニル樹脂成分を含み、さらに樹脂成分の架橋物を含むバインダー樹脂を用いたトナーは、印刷部分の光沢性の観点において改善の余地があった。特に、黒色トナーと異なり、カラートナーでは、より鮮やかな発色が求められるため、光沢性は重要である。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、バインダー樹脂が樹脂成分の架橋物や、非常に分子量の大きい高分子量成分を含むと、トナーの弾性が強くなりすぎて、トナーが紙に定着した後に、定着したトナーの形状が変化して入射光が散乱してしまい、その結果、印刷部分の光沢が劣ってしまうことを知見した。
本発明者らは上記知見をもとにさらに鋭意検討した。その結果、高分子量樹脂成分と低分子量樹脂成分の分子量ピークの位置と比率を特定の範囲にすることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーが得られることを見出した。
すなわち、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂によれば、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有し、上記ピーク(A)の微分分子量(a)と上記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できる。
【0017】
この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
まず、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)を有することによって、定着性に効果がある低分子量樹脂成分を含むことになり、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の定着性を良好にできる。
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有することによって、適度な弾性を得ることができ、耐オフセット性および光沢性のバランスを向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、ピーク(A)の微分分子量(a)とピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であることによって、低分子量樹脂成分と高分子量樹脂成分のバランスが適度となり、定着性、耐オフセット性および光沢性のバランスを良好にすることができる。
さらに、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることにより、トナーの弾性を過度に上げてしまう、非常に分子量の大きい高分子量成分の量を少なくすることができ、これにより定着したトナーの形状が変形して入射光が散乱してしまうことを抑制できるため、光沢性を向上させることができる。
すなわち、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂によれば、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有することによる効果と、ピーク(A)の微分分子量(a)とピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が1.0以上3.0以下であることによる効果と、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることの効果と、の相乗効果によって、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できる、と推察される。
【0018】
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、定着性を良好にする観点から、ピーク(A)は分子量1×103以上5×104未満の領域に有するが、得られるトナーの耐久性をより向上させる観点から、ピーク(A)は分子量2×103以上の領域に有することが好ましく、分子量3×103以上の領域に有することがより好ましく、得られるトナーの定着性をより向上させる観点から、ピーク(A)は分子量2×104以下の領域に有することが好ましく、分子量9×103以下の領域に有することがより好ましい。分子量1×103以上5×104未満の領域に複数のピークを有する場合、最もピークの高さが高いものをピーク(A)とする。
【0019】
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、適度な弾性及び粘性を得る観点から、ピーク(B)は分子量5×104以上1×106未満の領域に有するが、得られるトナーの耐オフセット性をより向上させる観点から、ピーク(B)は分子量8×104以上の領域に有することが好ましく、分子量1×105以上の領域に有することがより好ましく、得られるトナーの光沢性をより向上させる観点から、ピーク(B)は分子量5×105以下の領域に有することが好ましく、分子量3×105以下の領域に有することがより好ましい。分子量5×104以上1×106未満の領域に複数のピークを有する場合、最もピークの高さが高いものをピーク(B)とする。
【0020】
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、ピーク(A)の微分分子量(a)とピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)は1.0以上3.0以下であるが、得られるトナーの定着性および光沢性をより一層向上させる観点から、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、得られるトナーの耐オフセット性を向上させる観点から、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
【0021】
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であるが、得られるトナーの弾性を適度な値としながら光沢性をより一層向上させる観点から、1.0質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
分子量1×106以上の領域の含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上である。
ここで、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して上記上限値以下または未満であることは、前述した樹脂成分の架橋物や、非常に分子量の大きい高分子量成分の含有量が少ないことを意味していると考えられる。
【0022】
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において、分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有する低分子量ビニル樹脂(L)と、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において、分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有する高分子量ビニル樹脂(H)と、を含むことが好ましい。
こうすることで、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有する本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を得ることが容易となる。
【0023】
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、150℃における貯蔵弾性率が、測定周波数6.28ラジアン/秒において、2000Pa以下であることが好ましく、1500Pa以下であることがより好ましく、1000Pa以下であることがさらに好ましい。
150℃における貯蔵弾性率が上記上限値以下であると、得られるトナーの弾性をより適度にすることができるため、定着したトナーの形状が変形して入射光が散乱してしまうことを抑制でき、その結果、トナーの光沢性をより一層向上させることができる。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、150℃における貯蔵弾性率の下限値は特に限定されないが、例えば、10Pa以上であり、好ましくは100Pa以上であり、さらに好ましくは200Pa以上である。
【0024】
(ビニル樹脂)
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂としては、トナーに要求される各種特性をバランスよく向上させることができ、さらに得られるトナーの粉砕性に優れ、トナーの生産性を向上できる点から、ビニル樹脂を含む。ここで、本実施形態におけるビニル樹脂とは、単量体として、ビニル化合物を重合して得られる樹脂をいう。
【0025】
本実施形態に係るビニル樹脂としては、トナーに要求される各種特性をバランスよく向上させる観点から、単量体としてスチレン系単量体を含むスチレン系重合体が好ましく、ポリスチレンおよびスチレン・(メタ)アクリル系共重合体から選択される少なくとも一種のスチレン系重合体がより好ましく、トナーの粉砕性、帯電環境での安定性、離型剤の分散性、保存性、感光体を汚染しづらいことから、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体がさらに好ましい。
【0026】
本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体は、構成単量体としてスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体を含む樹脂であり、少なくとも1種のスチレン系単量体と少なくとも1種の(メタ)アクリル系単量体とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。また、本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体は、構成単量体としてスチレン系単量体、(メタ)アクリル系単量体およびカルボキシル基含有単量体を含む樹脂であり、少なくとも1種のスチレン系単量体と、少なくとも1種の(メタ)アクリル系単量体と、少なくとも1種のカルボキシル基含有単量体とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる重合体であってもよい。
【0027】
本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体において、スチレン系単量体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体の全体を100質量%としたとき、50質量%以上100質量%未満が好ましく、55質量%以上99質量%以下がより好ましく、60質量%以上97質量%以下がさらに好ましい。
また、本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル系単量体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体の全体を100質量%としたとき、0質量%を超えて50質量%以下が好ましく、0.5質量%以上40質量%以下がより好ましく、2質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。
また、本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体において、カルボキシル基含有単量体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体の全体を100質量%としたとき、0質量%以上15質量%以下が好ましく、0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0028】
ここで、本実施形態に係るスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルであり、より好ましくはアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0030】
本実施形態に係るカルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチルであり、特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
【0031】
本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体は上記単量体の他に、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等の不飽和二塩基酸のジエステル類も単量体として使用することができる。
【0032】
ビニル樹脂が高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)から構成される場合、その比率(H/L)は、トナーの定着性、耐オフセット性、耐久性等の総合バランスの観点から、10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましく、30/70~70/30であることがさらに好ましく、35/65~65/35であることが特に好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記下限値以上とすることで、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーを得ることができる。
【0033】
(高分子量ビニル樹脂(H))
本実施形態において高分子量ビニル樹脂(H)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量5×104以上1×106未満の領域にメインピークを有することが好ましく、分子量8×104以上5×105以下にメインピークを有することがより好ましく、分子量1×105以上3×105以下にメインピークを有することがさらに好ましい。これにより、定着性、耐オフセット性、耐久性のバランスをより一層向上させることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)のメインピークの分子量(以下、ピーク分子量という)を上記下限値以上とすることで、樹脂の強度が向上し、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下にすることで、得られるトナーの光沢性をより向上させることができる。
【0034】
高分子量ビニル樹脂(H)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上のビニル樹脂を使用してもよい。その場合、高分子量ビニル樹脂(H)全体として上記特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、スチレン系単量体や(メタ)アクリル系単量体等のビニル系単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
【0035】
(低分子量ビニル樹脂(L))
本実施形態において低分子量ビニル樹脂(L)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量1×103以上5×104未満にメインピークを有することが好ましく、分子量2×103以上2×104以下にメインピークを有することがより好ましく、分子量3×103以上9×103以下にメインピークを有することがさらに好ましい。ピーク分子量を上記下限値以上にすることで、耐久性により優れたトナーとすることができる。ピーク分子量が上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーとすることができる。
【0036】
低分子量ビニル樹脂(L)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上の低分子量ビニル樹脂を使用しても構わない。そのときには、低分子量ビニル樹脂(L)全体として、上述の特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、スチレン系単量体や(メタ)アクリル系単量体等のビニル系単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
【0037】
本実施形態において、ビニル樹脂の製造方法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法およびそれらの組み合わせが採用できる。分子量分布の調整や、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)の混合性から溶液重合が好適に採用される。
【0038】
本実施形態に係るビニル樹脂は、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)を、それぞれあらかじめ単独で重合し、それらを溶融状態もしくは溶液状態で混合して得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)もしくは低分子量ビニル樹脂(L)の一方を単独で重合した後、そのビニル樹脂の存在下に他方のビニル樹脂を重合して得ることもできる。
【0039】
溶液重合に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、キュメン等の芳香族炭化水素が挙げられ、これら単独またはこれらの混合物が使用され、好ましくはキシレンが好適である。
【0040】
重合は、重合開始剤を用いて行ってもよいし、重合開始剤を用いずに、いわゆる熱重合を行ってもよい。重合開始剤としては通常、ラジカル重合開始剤として使用可能なものを使用することができる。例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボニトリル)、2-(カーバモイルアゾ)-イソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチル-プロパン)等のアゾ系開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ-イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド等のスルホニルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエイト、クミルパーオキシネオデカノエイト、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシイソブロピルカーボネート、ジ-t-ブチルジパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル類等が例示できる。これらの開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
重合開始剤の種類や量は反応温度、単量体濃度等により適宜選んで使用でき、通常、用いる単量体100質量部に対して0.01~10質量部使用される。
【0042】
スチレン・(メタ)アクリル系共重合体は、エチレン系炭化水素および/または共役ジエン系炭化水素由来の構成単位の連鎖からなるブロックと、スチレン由来の連鎖からなるブロックとからなるブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物である水素添加ブロック共重合体から選択される少なくとも一種をさらに含有してもよい。
【0043】
これらのブロック共重合体および水素添加ブロック共重合体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下である。
【0044】
これらのブロック共重合体を得るために、一般に、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ヘキセン、2,3-ジメチル-2-ブテン等のエチレン系炭化水素、およびブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系炭化水素から選択される1種以上を使用してよい。これらを用いて公知のリビングアニオン重合やリビングカチオン重合により生成させたブロック共重合体の反応性基を利用し、さらにこれにスチレンをブロックさせる等の方法で製造される。しかしながら、製造方法に制限を受けるものではなく、従来公知のその他の製造方法により製造されたものを使用してもよい。さらに、上記のブロック共重合体の中には不飽和二重結合を有するものもある。これらは公知の方法により不飽和二重結合と水素とを反応させ、水素添加物として使用してもよい。
【0045】
上記ブロック共重合体としては、市販のものとして、クレイトンポリマー社のクレイトン(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン系ブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系ブロック共重合体、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン系ブロック共重合体、スチレン-エチレン/プロピレン系ブロック共重合体)、株式会社クラレ製セプトン(スチレン-エチレン/プロピレン系ブロック共重合体、スチレン-イソプレン系ブロック共重合体の水添物)、旭化成株式会社製タフプレン(スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体)等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のビニル樹脂の含有量は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスにより一層優れたトナーが得られる。
【0047】
[トナー用樹脂組成物]
次に、本実施形態に係るトナー用樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るトナー用樹脂組成物は、必須成分として、前述した本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を含んでいる。
本実施形態に係るトナー用樹脂組成物中の本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の含有量は、本実施形態に係るトナー用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスにより一層優れたトナーが得られる。
【0048】
本実施形態に係るトナー用樹脂組成物は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂以外の成分として、後述する、着色剤以外のトナー部材を含んでもよい。本実施形態に係るトナー用樹脂組成物中のトナー部材の含有量は、公知の情報によって適宜決定することができる。
【0049】
[トナー]
次に、本実施形態に係るトナーについて説明する。
【0050】
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂以外のトナー部材として、着色剤を含む。本実施形態に係るトナーは、より良好な定着性能や耐オフセット性能を発現させるために離型剤をさらに含有してもよい。さらに、荷電制御剤、磁性体、本実施形態に係るバインダー樹脂以外の樹脂、および表面処理剤等から選択される一種または二種以上をさらに含んでもよい。
【0051】
トナー中の本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の含有量は特に限定されないが、トナー全体を100質量%としたとき、例えば50質量%以上99質量%以下であり、好ましくは70質量%以上97質量%以下、より好ましくは80質量%以上94質量%以下である。
【0052】
以下、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材を説明する。
【0053】
着色剤としては、従来公知の顔料および染料を使用することができる。
顔料としては、例えば、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17、C.I.アシッドブルー6、C.I.アシッドブルー45またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。黒色顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162等が挙げられる。
これらの着色剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
トナー中の着色剤の含有量は特に限定されないが、トナー全体を100質量%としたとき、例えば1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは2質量%以上15質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0055】
離型剤としては従来公知のものを使用することができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうのような植物系ワックス;蜜蝋、ラノリン、鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステル、カスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したワックス;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、又は更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類のような飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、又は更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールのような飽和アルコール;ソルビトールのような多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'-ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N'-ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレン系単量体やアクリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、グリシジル基含有単量体のようなビニル系単量体を用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪族と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することにより得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;メタロセン触媒によって合成されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリヘプテン、ポリオクテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体や、長鎖アルキルカルボン酸と多価アルコールを縮合したり長鎖アルキルカルボン酸のハロゲン化物と多価アルコールの反応にて得られるエステル基含有ワックスなどが挙げられる。さらには、水酸基やエステル基やカルボキシル基などの官能基を有するワックスがあげられる。これらのワックスは、エチレン重合法や石油系炭化水素の熱分解によるオレフィン化法で得られる二重結合を1個以上有する高級脂肪族炭化水素や、石油留分から得られるn-パラフィン混合物や、エチレン重合法により得られるポリエチレンワックスや、フィッシャートロプシュ合成法により得られる高級脂肪族炭化水素をホウ酸及び無水ホウ酸の存在下にて分子状酸素含有ガスで液相酸化することにより得られる。
これらの離型剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
トナー中の離型剤の含有量は特に限定されないが、トナー全体を100質量%としたとき、例えば0.1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0057】
また、本実施形態に係るトナーは、必要に応じて本実施形態の効果を阻害しない範囲において、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ロジン、重合ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、芳香族石油樹脂、塩ビ樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、クロマン-インデン樹脂、メラミン樹脂等の樹脂を一部添加して使用してもよい。
【0058】
また、着色剤の分散向上を目的として、着色剤をバインダー樹脂もしくはそれら原料樹脂に予め分散して、いわゆるマスターバッチを製造しておき、それをトナーに添加する方法を行ってもよい。具体的には着色剤20~60質量%、樹脂成分80~40質量%を粉体状態で混合し、得られた混合物を二軸混練機、オープンロール混練機や、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等で混練し、それを粉砕したものをトナー製造時に使用してもよい。
【0059】
本実施形態に係るトナーは、正帯電性または負帯電性を保持させるために荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては従来公知のものを使用できる。
正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジシクロヘキシル錫オキサイドのようなジオルガノ錫オキサイド;ジブチル錫ボレート、ジオクチル錫ボレート、ジシクロヘキシル錫ボレートのようなジオルガノ錫ボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;イミダゾリウム塩類;さらにはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとスチレン系単量体と必要により(メタ)アクリル系単量体を共重合した後にパラトルエンスルホン酸アルキルエステルで四級化する等の手法によって得られる四級アンモニウム塩基含有共重合体が挙げられる。
【0060】
負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸金属錯体、芳香族ジカルボン酸金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族モノカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸およびその金属塩や無水物やエステル類、ビスフェノールのようなビスフェノール誘導体があり、さらには配位中心金属がSc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn、Feから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンから選択されるアゾ系金属化合物や、配位中心金属がCr、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、Zn、Si、B、Alから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムから選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体や芳香族ポリカルボン酸誘導体の金属化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体および芳香族ポリカルボン酸は置換基としてアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、カルバモイル基を有していてもよい)、スルホン酸基含有アクリルアミド系単量体とスチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体の共重合体のようなスルホン酸基含有単量体を構成成分とする重合体等が挙げられる。これらの荷電制御剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カラートナーにおいては、トナー画像の色調や透光性に影響の与えない無色や白色または淡色の荷電制御剤が好ましい。
負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸誘導体金属、カリックスアレーン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物等がある。
正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂等がある。
【0061】
荷電制御剤のトナーへの含有量は、帯電量とトナーの流動性のバランスから、バインダー樹脂100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.2~3質量部である。また、添加方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法やそれらを組み合わせたものが適用できる。
【0062】
本実施形態に係るトナーは、トナーの表面に対して表面処理剤を添加することによって、トナーとキャリア、あるいはトナー相互の間に該表面処理剤を存在させることが好ましい。表面処理剤を添加することにより、粉体流動性、保存性、帯電安定性、および環境安定性が向上され、かつさらに現像剤の寿命をも向上させることができる。
【0063】
表面処理剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、およびそれらの疎水化物等が挙げられる。シリカ微粉体は、湿式シリカ、乾式シリカ、乾式シリカと金属酸化物の複合体等が使用でき、さらに、これらを有機ケイ素化合物等で疎水化処理されたものが使用できる。疎水化処理は、例えば、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。疎水化処理に用いられるシラン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α―クロルエチルトリクロルシラン、β―クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1、3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。疎水化処理に用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル類が挙げられる。また、酸化チタン微粉末にオイル処理したものや、0.03μm~1μmのビニル樹脂の微粒子等も使用してもよい。
【0064】
これら以外の表面処理剤として、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、磁性粉、アルミナ等の研磨剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫等の導電性付与剤等も使用してもよい。さらには、表面処理剤の形状として、粒径が100nm以下の小粒径の粒子、粒径が100nm以上の大粒径の粒子、八面体状、六面体状、針状、繊維状等様々な形状のものを使用してもよい。表面処理剤は単独または2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0065】
該表面処理剤の添加量は、トナー100質量%中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0066】
本実施形態に係るトナーは、公知の種々の現像プロセスに用いることができる。例えば、特に限定されないが、カスケード現像法、磁気ブラシ法、パウダー・クラウド法、タッチダウン現像法、キャリアとして粉砕法によって製造された磁性トナーを用いる所謂マイクロトーニング法、磁性トナー同士の摩擦帯電によって必要なトナー電荷を得る所謂バイポーラー・マグネチックトナー法等が挙げられる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知のファーブラシ法、ブレード法等の種々のクリーニング方法にも用いることができる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知の種々の定着方法に用いることができる。具体的には、オイルレスヒートロール法、オイル塗布ヒートロール法、熱ベルト定着法、フラッシュ法、オーブン法、圧力定着法等が例示される。また、電磁誘導加熱方式を採用した定着装置に使用してもよい。さらには中間転写工程を有する画像形成方法に用いてもよい。
【0067】
[トナーの製造方法]
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程を含む。トナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程において、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材も混合してもよい。
【0068】
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を用いて、トナー用バインダー樹脂と着色剤を混合して製造される。混合する方法は、従来公知の方法でよい。例えば、バインダー樹脂、着色剤と、必要に応じて荷電制御剤等のトナー部材とをヘンシェルミキサー等の粉体混合機により充分に混合した後、2軸混練機、オープンロール混練機等の混練機を用いて溶融混練して各構成成分を充分に混合する。これを冷却後、粉砕、分級を行って、通常4~15μmの範囲の粒子を集め、粉体混合法により表面処理剤をまぶしてトナーを得る方法が挙げられる。
また、表面処理装置等により、トナーを球形化処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法や機械的な衝撃によりトナーの角を取る方法が挙げられる。画質の向上等を目的として、これらの表面処理を行って、フロー式粒子像測定装置(例えばシスメックス社製 FIPA-3000)によって測定される平均円形度を0.960以上に調整してもよい。
また、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法では、粒子状のトナーを熱風で加熱処理する。このときの温度は200℃以上400℃以下であることが好ましい。
【0069】
本実施形態に係るトナーは、電子写真、静電記録、静電印刷等における、静電荷像を現像するための電子写真用トナーに好適に用いることができる。
【0070】
[現像剤]
本実施形態に係る現像剤は、本実施形態に係るトナーおよびキャリアを含む。
キャリアとして従来公知のものを使用できる。例えば、表面酸化又は未酸化の鉄、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、リチウム、希土類のような金属及びそれらの合金又は酸化物からなる個数平均粒径15~300μmの粒子が使用できる。これらのキャリアはスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などにより表面コートされているものを使用してもよい。さらには、樹脂に磁性微粒子が分散されてなる磁性微粒子分散型コアと該磁性微粒子分散型コアの表面を被覆する被覆樹脂を含有する被覆層を有する磁性キャリアを使用してもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。また、データの測定法および判定法は次の通りである。さらに、表中、Stはスチレン、Macはメタクリル酸、BAはアクリル酸n-ブチル、BMAはメタクリル酸n-ブチルを表す。
【0073】
<ピーク分子量>
本実施例および比較例におけるピーク分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めたものであり、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通りである。
GPC装置:SHODEX(登録商標)GPC-101(昭和電工株式会社製)
検出器:SHODEX(登録商標)RI-71S(昭和電工株式会社製)
カラム:SHODEX(登録商標)GPC KF-Gを1本、GPC KF-807Lを3本、およびGPC KF-800Dを1本(昭和電工株式会社製)、をこの順番に直列に連結して用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.2ml/分
サンプル濃度:0.002g-resin/ml-THF
注入量:100μL
サンプル溶液は、測定直前にフィルターを用い、THFに不溶な成分を除去した。
【0074】
<粘弾性測定>
本実施例および比較例における粘弾性測定は以下の測定によって求めた。
粘弾性装置:モジュラー・コンパクト・レオメーターMCR302(株式会社アントンパールジャパン社製)
測定温度範囲:50~200℃
昇温速度:2℃/分
周波数:1Hz(6.28ラジアン/秒)
ギャップ:1mm
プレート:パラレルプレート
応力歪み:1%
サンプル形状:厚さ1mm、直径約20mmの円柱状
【0075】
<トナーの評価>
次に、以下に本実施例および比較例で行ったトナーの評価方法を記載する。
1.光沢性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ベルト定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を125mm/秒とし、150℃の温度で定着させた。このとき定着画像の画像濃度は、マクベス式反射濃度計で測定し、1.4となるように調整した。得られた定着画像を、変角光沢計GM‐3D(村上色彩技術研究所製)を用い、入射角75°で光沢度を測定した。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 25%≦光沢度
△ : 20%≦光沢度<25%
× : 光沢度<20%
【0076】
2.定着評価
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を190mm/秒とし、それぞれ150℃、160℃および170℃の温度で定着させた。得られた定着画像を砂消しゴム(株式会社トンボ鉛筆製)により、1.0kgfの荷重をかけ、6回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。摩擦後の画像濃度÷摩擦前の画像濃度×100をその温度での変化率とした。150℃、160℃、および170℃でのそれぞれの変化率の平均値を定着率として算出し、下記評価基準で判定した。なお、ここで用いた熱ローラー定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものであった。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃、相対湿度55%)とした。
(評価基準)
○ : 67%≦定着率
△ : 63%<定着率<67%
× : 定着率≦63%
【0077】
3.耐オフセット性
上記定着評価の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した。その後、上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。上記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 180℃≦オフセット発生温度
△ : 160℃≦オフセット発生温度<180℃
× : オフセット発生温度<160℃
【0078】
[低分子量ビニル樹脂(L)の製造例]
(製造例L-1)
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続した。その後、内温98℃に保ち、更にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、更にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L-1の重合液を得た。物性値を表1に示す。
【0079】
(製造例L-2)
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続した。その後、内温98℃に保ち、更にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、更にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L-2の重合液を得た。物性値を表1に示す。
【0080】
【0081】
[高分子量ビニル樹脂(H)の製造例]
(製造例H-1)
スチレン67.5質量部、アクリル酸n-ブチル23.5質量部、キシレン15質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温110℃に昇温した。そこに、スチレン5質量部、メタクリル酸4質量部、キシレン85質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部を混合溶解しておいた混合液を7時間かけて連続添加し、さらに1時間反応を継続した。その後、130℃に昇温し、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて2時間反応を継続し、更にジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて2時間反応を継続して重合を完結し、H-1の重合液を得た。物性値を表2に示す。
【0082】
(製造例H-2)
表2記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を6時間行った。ついで、キシレン40質量部を加え、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.23質量部を加えた後、130℃に昇温した。予め混合溶解しておいたジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部、キシレン60質量部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続し、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え2時間反応を継続し、更にジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、H-2の重合液を得た。物性値を表2に示す。
【0083】
(製造例H-3)
表2記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を6時間行った。ついで、キシレン50質量部を加えた後、110℃に昇温した。予め混合溶解しておいた1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部、キシレン50質量部を110℃に保ちながら3時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続し、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.206質量部を加え1.5時間反応を継続し、更に1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部を加え2時間反応を継続し、更に1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、H-3の重合液を得た。物性値を表2に示す。
【0084】
(製造例H-4)
スチレン71質量部、アクリル酸n-ブチル24質量部、キシレン15質量部、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.19質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温109℃に昇温した。そこに、スチレン5質量部、キシレン85質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.1質量部を混合溶解しておいた混合液を7時間かけて連続添加し、さらに2時間反応を継続した。その後、130℃に昇温し、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて1時間反応を継続し、更にジ-t-ブチルパーオキサイド0.2質量部を加えて3時間反応を継続して重合を完結し、H-4の重合液を得た。物性値を表2に示す。
【0085】
【0086】
[バインダー樹脂(C)の製造例]
(製造例C-1)
高分子量ビニル樹脂(H)および低分子量ビニル樹脂(L)を表3に示す仕込み組成となるように混合した後、その後、これを190℃、1.33kPaのベッセル(容器)中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂C-1を得た。物性値を表4に示す。
【0087】
(製造例C-2~C-7)
表3に示す仕込み組成で、製造例C-1と同様の方法で、樹脂C-2~C-7を得た。物性値を表4に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
[電子写真トナー(T)の製造例]
(製造例T-1~T-7)
表3に記載のバインダー樹脂(C)100質量部に対し、ワックス(SX105;Shell社製)3質量部、着色剤としてカーボンブラック(REGAL 330R;キャボット社製)6質量部、荷電制御剤(T-77;保土谷化学工業社製)0.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合した。その後、2軸混練機(PCM-30型、池貝機械製)にて、2軸混錬機吐出部樹脂温度100℃、滞留時間30秒で混練させた。次いで、この溶融混練物を冷却後、ジェット式粉砕機(IDS-2UR型、日本ニューマチック工業社製)で体積中位径D50が7.6μmに粉砕した。続いて、上記粉砕物を分級機(DSX-2型、日本ニューマチック工業社製)で微粉をカットし、体積中位径D50が8.4μmのトナー粒子を得た。次に上記トナー粒子100質量部に対して疎水性シリカ微粉体(AEROSIL R972、日本エアロジル株式会社製)0.5質量部添加し、コールターカウンターにて測定した体積中位径D50が約8.5μmのトナーT-1~T-7を得た。
【0091】
(実施例1~2および比較例1~5)
上記のトナー3質量%に対し、キャリア(パウダーテック株式会社製、F-150)97質量%を混合して現像剤とした。得られた現像剤について各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0092】
【0093】
表5の結果から明らかなように、本実施例により製造されたバインダー樹脂C-1およびC-2並びにこれらの樹脂を用いたカラートナーT-1およびT-2は、いずれも光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れたものであった。