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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】スタビライザブッシュ
(51)【国際特許分類】
   B60G 21/055 20060101AFI20220624BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220624BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B60G21/055
F16F15/08 G
F16F1/38 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018108982
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019209893
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】榊原 紫穂
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100483(JP,A)
【文献】特開平06-278432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0197343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 21/055
F16F 15/08
F16F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、
前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、
装着状態において該外周面が該保持面に対応する六角状の軸方向視形状とされていることを特徴とするスタビライザブッシュ。
【請求項2】
スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、
前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、
一対の対角部が角落とし形状とされることで、外周面が八角状の軸方向視形状とされていることを特徴とするスタビライザブッシュ。
【請求項3】
スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、
前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、
車体側部材と取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた突き合わせ面のうちで対向配置された各傾斜側面の対向方向において、底面の対向方向に比して、装着前の前記周壁部における径方向の厚さ寸法が大きくされており、装着状態において大きな圧縮力が及ぼされるようになっていることを特徴とするスタビライザブッシュ。
【請求項4】
前記車体側部材と前記取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた前記突き合わせ面のうちで対向配置された一方の前記各傾斜側面の対向方向が、装着状態において車両上下方向とされる請求項1~3の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項5】
前記車体側部材と前記取付ブラケットとの何れか一方において拡開溝形状とされた前記突き合わせ面の前記底面上に位置せしめられる部分において、軸方向の全長に亘って延びる切り割りが形成されており、該切り割りにおいて拡開されて前記スタビライザバーへ外挿されるようになっている請求項1~4の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項6】
前記周壁部における軸方向の中間部分が一定の厚さ寸法で軸方向に延びていると共に、軸方向の両側部分にはそれぞれ一定の高さ寸法で周方向の全周に亘って連続して延びる大径部が設けられており、該大径部が、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面に形成された嵌合凹溝に嵌め入れられることで軸方向に位置決めされるようになっている請求項1~5の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項7】
前記外周面が、前記対角部を除いて前記保持面によって隙間無く嵌合保持されるようになっている請求項1~6の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタビライザバーを車体へ防振支持せしめるスタビライザブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両では、旋回時などにおける車体の傾きを抑えて走行安定性を向上させるためのスタビライザバーが用いられている。スタビライザバーは、一般に左右のサスペンション部材の間に跨がって配設されていると共に、長さ方向の中間部分がスタビライザブッシュを介して車両ボデーに対して防振支持されている。
【0003】
かかるスタビライザブッシュは、スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材とそこに固定される取付ブラケットとの突き合わせ面間に形成される保持面により外周面を嵌合保持されて、径方向での圧縮状態で車両に装着されるようになっている。
【0004】
ところで、従来のスタビライザブッシュの外周面形状は、例えば特開平11-108096号公報(特許文献1)に示されているように、一般に、円形外周上の一部が弦方向に平坦面とされた小鉤形状乃至はトンネル形状とされていた。このようなスタビライザブッシュは、平坦な車体側部材とU字状の取付ブラケットとの突き合わせ面間に形成される保持面によって外周面を嵌合保持されて車両に装着されることとなる。
【0005】
一方、車体側部材へのスタビライザブッシュの取付面の方向や、スタビライザバーに要求される各軸直角方向での支持ばね特性などによって、多角形などの異形状の外周面形状を有するスタビライザブッシュの採用も検討されている。具体的には、特開2017-100483号公報(特許文献2)には、略正六角形の外周面形状とされたスタビライザブッシュの採用が提案されている。
【0006】
ところが、特許文献2に示されているように、略正六角形の外周面形状とされたスタビライザブッシュでは、車体側部材と取付ブラケットの突き合わせ面で締め付けるようにして装着すると、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へ、スタビライザブッシュの外周部分が入り込んで噛み込まれ易いという、新たな課題が見出された。そして、装着時にスタビライザブッシュが部分的に車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面間へ噛み込んでしまうと、経時的に噛み込んだ部分が劣化等して取付ブラケットにガタツキが発生し、スタビライザバーの支持特性が低下してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-108096号公報
【文献】特開2017-100483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景としてなされたものであって、その解決課題とするところは、車体側部材と取付ブラケットの突き合わせ面間において略六角状の内周面形状をもって形成された保持面によって外周面を嵌合保持されて装着される、該保持面に対応した異形の外周面形状を有するスタビライザブッシュにおいて、装着時における車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間への噛み込みを防止することができ、所期のスタビライザバーの支持特性を安定して得ることが可能になる、新規な構造のスタビライザブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先ず、本発明者は、上述の如き異形状のスタビライザブッシュ、即ち略六角状の内周面形状の保持面によって外周面を嵌合保持されて装着される異形の外周面形状を有するスタビライザブッシュにおける、装着時の噛み込みという特定の現象が発生する原因を検討した。その結果、車体側部材と取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされており、それら拡開溝形状の突き合わせ面間でスタビライザブッシュを径方向に圧縮することから、圧縮変形したスタビライザブッシュが、車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面間へ積極的に押し込まれることを知得した。即ち、圧縮変形したスタビライザブッシュが、車体側部材と取付ブラケットのそれぞれにおいて拡開する各傾斜側面に沿って外周側に広がるように押し出されることとなり、更に、車体側部材と取付ブラケットの両方から押し出された部分が、車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上でぶつかることで、かかる重ね合わせ面間に向かって積極的に入り込むように変形する。このように、車体側部材と取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ拡開溝形状とされているが故に、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へスタビライザブッシュの外周部分が入り込んで噛み込まれ易いという知見を得た。
【0010】
以下、本発明者が新たに得た知見に基づいて為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
本発明の第一の態様は、スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、装着状態において該外周面が該保持面に対応する六角状の軸方向視形状とされていることを、特徴とする。
【0012】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、外周面において角落とし形状とされた一対の対角部により、六角状の保持面のうちで車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部でのクリアランスが大きく確保され得る。それ故、前述のように装着時に圧縮されたスタビライザブッシュの外周部分が、拡開溝形状とされた車体側部材と取付ブラケットのそれぞれの傾斜側面に沿って外周側に広がるようにして押し出されることに起因する、六角状の保持面に特有の車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間への噛み込みの問題が効果的に防止され得る。
【0013】
なお、前述の特許文献2に示されているように、スタビライザブッシュを周方向で複数の分割構造として変形容易な自由表面を大きく確保することで、装着時に圧縮されたスタビライザブッシュにおける車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へ入り込む膨出変形量を抑えることも考えられる。しかし、本態様に従えば、周方向での複数の分割構造により自由表面を増大させる場合に比して、構成部品点数の増加や、製造や装着などに際しての部材の取扱いの煩雑化、更に、圧縮状態で発現されるばね特性への悪影響などといった問題を軽減乃至は回避しつつ、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へのスタビライザブッシュの噛み込みを防止することが可能になる。尤も、スタビライザブッシュの周方向での複数の分割構造は、本態様とは基本的な技術思想が異なるものの、互いに組み合わせて採用することができる。
【0014】
本発明の第二の態様は、スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、該一対の対角部が角落とし形状とされることで、外周面が八角状の軸方向視形状とされていることを、特徴とする
【0015】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、六角状の保持面のうちで車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部に対峙するブッシュ外周面が、角落とし形状の略平坦面とされる。それ故、外方に膨らむ凸形状とされる場合に比して、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へのスタビライザブッシュの噛み込みがより効果的に防止され得る。一方、内方に窪んだ凹形状とされる場合に比して、装着時の圧縮変形状態での応力集中が軽減されて、スタビライザブッシュの支持特性への悪影響も回避され得る。
【0016】
本発明の第三の態様は、スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていると共に、該車体側部材と取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた突き合わせ面のうちで対向配置された各傾斜側面の対向方向において、底面の対向方向に比して、装着前の前記周壁部における径方向の厚さ寸法が大きくされており、装着状態において大きな圧縮力が及ぼされるようになっていることを、特徴とする
【0017】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、車体側部材と取付ブラケットにおいて略平行な平坦面をもって軸直角方向で対峙せしめられる傾斜側面間で、スタビライザブッシュに軸直角方向の圧縮力を及ぼすことで、例えば特定の軸直角方向でスタビライザバーの支持特性が異ならされる場合などにも有利に対応することが可能となる。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第一~三の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた前記突き合わせ面のうちで対向配置された一方の前記各傾斜側面の対向方向が、装着状態において車両上下方向とされるものである。
【0019】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、車体側部材と取付ブラケットにおいて略平行な平坦面をもって軸直角方向で対峙せしめられる傾斜側面間で、スタビライザバーに対する車両上下方向の支持力を効率的に及ぼすことが可能となる。これにより、例えば、装着状態下でスタビライザブッシュに対して車両上下方向の圧縮力を大きく作用させて、スタビライザバーの車両上下方向での支持ばねを大きく且つ安定して設定することも容易となる。
【0020】
本発明の第五の態様は、前記第一~四の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットとの何れか一方において拡開溝形状とされた前記突き合わせ面の前記底面上に位置せしめられる部分において、軸方向の全長に亘って延びる切り割りが形成されており、該切り割りにおいて拡開されて前記スタビライザバーへ外挿されるようになっているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、装着時における噛み込みが問題となる車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部を大きく外れた位置に切り割りを設定することで、切り割りによる噛み込みへの悪影響を軽減できる。また、本態様では、装着状態でのスタビライザブッシュの圧縮力について、拡開溝形状とされた車体側部材と取付ブラケットとの各底面の対向方向の圧縮力よりも、各傾斜側面の対向方向での圧縮力を大きくすることも可能であり、それによって、切り割りによる悪影響を回避しつつ、特定の軸直角方向での圧縮力を効率的に確保することができる。
【0022】
本発明の第六の態様は、前記第一~五の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記周壁部における軸方向の中間部分が一定の厚さ寸法で軸方向に延びていると共に、軸方向の両側部分にはそれぞれ一定の高さ寸法で周方向の全周に亘って連続して延びる大径部が設けられており、該大径部が、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面に形成された嵌合凹溝に嵌め入れられることで軸方向に位置決めされるようになっているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、略八角形をベースとした異形の外周面において全周に亘って一定の高さ寸法で突出して大径部が設けられていることから、特に周壁部外周面に対する大径部のボリュームを、各角部において効率的に確保することができて、軸方向の位置決め作用を有利に得ることも可能になる。また、本発明の第七の態様は、前記第一~六の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記外周面が、前記対角部を除いて前記保持面によって隙間無く嵌合保持されるようになっているものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従うスタビライザブッシュによれば、略六角状の内周面形状を有する保持面で嵌合保持されて装着される異形の外周面形状を有するスタビライザブッシュにおいて、装着時における車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間への噛み込みを抑えることができて、目的とするスタビライザバーの支持特性の安定化も図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態としてのスタビライザブッシュを車両への装着状態で示す正面図。
図2図1のII-II断面図。
図3図1の車体側部材を単体で示す斜視図。
図4図1のスタビライザブッシュを単体で示す斜視図。
図5図4に示すスタビライザブッシュの正面図。
図6図5に示すスタビライザブッシュの平面図。
図7図5のVII-VII断面図。
図8図7のVIII-VIII断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1,2には、本発明の一実施形態としてのスタビライザブッシュ10が、車両(自動車)への装着状態で示されている。スタビライザブッシュ10は、車両装着状態において、自動車のボデー(車体)側に設けられる車体側部材12と、車体側部材12に固定される取付ブラケット14との突き合わせ面間に配されていると共に、スタビライザバー18が挿通されており、スタビライザバー18を自動車のボデーに対して防振支持するようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、装着状態において車両の上下方向となる図1中の上下方向を言う。
【0028】
車体側部材12は、図3に示すように、第一の溝状部20を備えている。第一の溝状部20は、略平坦な底面22と、溝開口に向けて拡開する略平坦な両側の傾斜側面24,24とによって構成された、拡開溝形状の溝内面を有している。要するに、第一の溝状部20は、底面22から溝深さ方向で離れて溝開口側へ行くに従って、溝幅寸法が略一定の割合で大きくなる断面形状を有している。さらに、本実施形態の車体側部材12は、第一の溝状部20の溝内面に開口する嵌合凹溝26が、第一の溝状部20の溝長さ方向の両端部分にそれぞれ設けられている。この嵌合凹溝26は、開口側へ向けて軸方向で拡開する溝形状とされて、第一の溝状部20の底面22および両側の傾斜側面24,24に連続的に設けられている。
【0029】
更にまた、車体側部材12には、第一の溝状部20の溝開口端部から溝幅方向の外側へ向けて延び出す第一の取付片28,28が、第一の溝状部20と一体形成されている。第一の取付片28は、板状とされて、底面22と略平行に広がっており、厚さ方向に貫通するボルト孔30を備えている。
【0030】
取付ブラケット14は、図1,2に示すように、第二の溝状部32を備えている。第二の溝状部32は、略平坦な底面34と、溝開口に向けて拡開する略平坦な両側の傾斜側面36,36とによって構成された、拡開溝形状の溝内面を有している。要するに、第二の溝状部32は、底面34から溝深さ方向で離れて溝開口側へ行くに従って、溝幅寸法が略一定の割合で大きくなる断面形状を有している。さらに、本実施形態の取付ブラケット14は、第二の溝状部32の溝内面に開口する嵌合凹溝38が、第二の溝状部32の溝長さ方向の両端部分にそれぞれ設けられている。この嵌合凹溝38は、開口側へ向けて軸方向で拡開する溝形状とされて、第二の溝状部32の底面34および両側の傾斜側面36,36に連続的に設けられている。
【0031】
さらに、取付ブラケット14には、第二の溝状部32の溝開口端部から溝幅方向の外側へ向けて延び出す第二の取付片40,40が、第二の溝状部32と一体形成されている。第二の取付片40は、板状とされて、底面34と略平行に広がっており、厚さ方向に貫通するボルト孔42を備えている。なお、第二の取付片40,40のボルト孔42,42は、第二の取付片40,40が第一の取付片28,28と重ね合わされた状態において、第一の取付片28,28のボルト孔30,30と対応する位置に形成されている。
【0032】
更にまた、取付ブラケット14には、第二の溝状部32の溝長さ方向に対して略直交して広がる補強片43,43が、軸方向の両端部に設けられている。補強片43は、第二の溝状部32の開口方向(図1中の左下方向)と反対側に向けて、第二の溝状部32および第二の取付片40,40の略全体から突出しており、本実施形態では、それら第二の溝状部32および第二の取付片40,40と一体形成されている。この補強片43,43によって、第二の溝状部32の形状安定性の向上や、第二の溝状部32の側壁に対する第二の取付片40,40の傾動の防止などが図られて、取付ブラケット14の変形剛性が大きく確保されている。
【0033】
そして、車体側部材12と取付ブラケット14は、第一の溝状部20の開口縁部と第二の溝状部32の開口縁部とが相互に突き合わされており、相互に重ね合わされた第一の取付片28,28と第二の取付片40,40が、各ボルト孔30,42に挿通されるボルト44,44と、それに螺着されるナット45,45とによって、相互に固定されている。なお、車体側部材12の突き合わせ面46は、第一の溝状部20の溝内面とそれに連続する第一の取付片28,28の表面とによって、構成されている。同様に、取付ブラケット14の突き合わせ面48は、第二の溝状部32の溝内面とそれに連続する第二の取付片40,40の表面とによって、構成されている。
【0034】
かかる車体側部材12と取付ブラケット14の固定状態において、それら車体側部材12の第一の溝状部20と取付ブラケット14の第二の溝状部32の間には、軸方向視(図1中の紙面直交方向視)で略六角形の収容空所50が形成されている。この収容空所50の周壁内面は、第一の溝状部20の底面22および両側の傾斜側面24,24と、第二の溝状部32の底面34および両側の傾斜側面36,36とによって構成されており、かかる周壁内面が本実施形態の保持面52とされている。保持面52は、六角状の軸方向視形状を有しており、車体側部材12の突き合わせ面46と、取付ブラケット14の突き合わせ面48とによって構成されている。
【0035】
なお、車体側部材12と取付ブラケット14は、対向配置された底面22,34の対向方向が車両の上下方向に対して傾斜しており、対向配置された一方の傾斜側面24,36の対向方向(図1中の上下方向)が車両の上下方向と略一致している。
【0036】
また、車体側部材12と取付ブラケット14の間に形成された収容空所50には、スタビライザブッシュ10が配されている。スタビライザブッシュ10は、ゴム弾性体で形成されて、図4~8に示すように、スタビライザバー18が挿通される中心孔54を有する筒形状とされている。
【0037】
より詳細には、スタビライザブッシュ10は、厚肉筒状の周壁部56を備えている。周壁部56は、中心孔54の内面(内周面)が軸方向視で略円形とされていると共に、図1に示すスタビライザブッシュ10が収容空所50に配された車両への装着状態において、外周面58が保持面52に対応する六角状の軸方向視形状とされて、外周面58が保持面52によって嵌合保持される。
【0038】
また、周壁部56の外周面58は、図5,8に示す車両装着前の単体状態において、略六角形の保持面52に対応する形状を有していると共に、一対の対角部60,60が、保持面52に略対応する六角状(図8中の二点鎖線)に対して、平面的に切除されたような角落とし形状とされていることで、軸方向視および軸直角方向の断面において略八角形とされている。これにより、周壁部56の外周面58は、一対の対角部60,60が配された対角方向において、他の対角方向よりも外周側への突出高さが小さくされている。
【0039】
さらに、周壁部56は、後述する車両装着状態で車体側部材12の傾斜側面24,24と取付ブラケット14の傾斜側面36,36に重ね合わされる部分における軸直角方向の厚さ寸法t1が、車体側部材12の底面22と取付ブラケット14の底面34に重ね合わされる部分における軸直角方向の厚さ寸法t2よりも大きくされている。なお、本実施形態の周壁部56では、車体側部材12の一方の傾斜側面24に重ね合わされる部分の厚さ寸法と、他方の傾斜側面24に重ね合わされる部分の厚さ寸法が、互いに略同じとされているが、それらの厚さ寸法は相互に異なっていてもよく、その場合には、より大きい方の厚さ寸法が、底面22,34が対向する方向での厚さ寸法よりも大きくされる。同様に、周壁部56において、取付ブラケット14の一方の傾斜側面36に重ね合わされる部分の厚さ寸法と、取付ブラケット14の他方の傾斜側面36に重ね合わされる部分の厚さ寸法は、互いに略同じとされているが、それらの厚さ寸法は相互に異なっていてもよい。さらに、周壁部56において、車体側部材12の傾斜側面24,24に重ね合わされる部分の厚さ寸法と、取付ブラケット14の傾斜側面36,36に重ね合わされる部分の厚さ寸法は、互いに異ならせることもできる。
【0040】
更にまた、周壁部56は、軸方向の両端部分において外周へ突出する大径部62を備えている。大径部62は、突出先端に向けて軸方向で狭幅となる先細形状を有しており、軸方向で相互に離れた一対が設けられている。なお、周壁部56の外周面58は、一対の大径部62,62の間に位置する中間部分が、略一定の厚さ寸法で軸方向へ直線的に延びており、軸方向に略一定の断面形状とされている。要するに、周壁部56は、軸方向の中間部分が一定の厚さ寸法で軸方向に延びていると共に、軸方向の両側部分には、軸方向の中間部分よりも外径寸法を大きくされた大径部62が、略一定の高さ寸法で全周に亘って連続して延びている。
【0041】
さらに、スタビライザブッシュ10は、周壁部56から軸方向片側へ突出する緩衝筒部64を備えている。緩衝筒部64は、周壁部56に比して薄肉の略円筒形状とされており、周壁部56と略同じ内周形状を有していると共に、外周面が軸方向視において周壁部56の外周面58よりも小径の円形とされている。そして、緩衝筒部64は、周壁部56の内周端部から軸方向一方へ突出するように、周壁部56と一体形成されている。
【0042】
さらに、スタビライザブッシュ10には、周方向の一部に切り割り66が形成されている。切り割り66は、図4~6や図8などに示すように、スタビライザブッシュ10を周方向の一部において分断する切断部分であって、スタビライザブッシュ10は、切り割り66において拡開するように弾性変形可能とされている。本実施形態の切り割り66は、スタビライザブッシュ10が車体側部材12と取付ブラケット14との間へ配設された状態において、周方向で取付ブラケット14の底面34と対応する位置に設けられており、スタビライザブッシュ10を周方向の一部で径方向に切断することで、スタビライザブッシュ10の軸方向全長に亘って延びるように形成されている。
【0043】
このような構造とされたスタビライザブッシュ10は、図1,2に示すように、中心孔54にスタビライザバー18が挿通されて、スタビライザバー18に外挿状態で取り付けられると共に、車体側部材12と取付ブラケット14の突き合わせ面46,48間に形成された収容空所50に配される。
【0044】
すなわち、スタビライザブッシュ10は、切り割り66において拡開せしめられることで、スタビライザバー18が切り割り66を通じて中心孔54に差し入れられて、スタビライザバー18に対して外挿状態で装着される。さらに、スタビライザバー18に外装されたスタビライザブッシュ10は、車体側部材12の第一の溝状部20に嵌め入れられた後、取付ブラケット14の第二の溝状部32が被せ付けられて、それら車体側部材12と取付ブラケット14が相互に固定されることにより、車両側へ装着される。これにより、スタビライザバー18が、スタビライザブッシュ10を介して、車体側に防振支持されている。
【0045】
本実施形態において、車両装着状態のスタビライザブッシュ10は、車体側部材12の両側の傾斜側面24,24と、取付ブラケット14の両側の傾斜側面36,36との対向方向において、車体側部材12の底面22と取付ブラケット14の底面34との対向方向よりも大きく圧縮される。また、スタビライザブッシュ10の内周面は、スタビライザバー18の外周面に対して、非接着で重ね合わされていてもよいし、予め塗布された接着剤によって接着されていてもよい。
【0046】
本実施形態では、車体側部材12の第一の溝状部20と取付ブラケット14の第二の溝状部32が、開口側に向けて拡開する溝形状とされていることから、スタビライザブッシュ10を収容空所50に配設し易くなっている。即ち、スタビライザバー18に外挿されたスタビライザブッシュ10を第一の溝状部20の内側へ容易に差し入れることができると共に、第二の溝状部32をスタビライザブッシュ10の外周面58に容易に被せ付けることができる。
【0047】
さらに、周壁部56の軸方向の両側部分には、軸方向の中間部分よりも大径とされた大径部62が、一定の高さ寸法で周方向の全周に亘って連続して設けられており、大径部62が、車体側部材12と取付ブラケット14に形成された嵌合凹溝26,38に嵌め入れられることで、スタビライザブッシュ10が、車体側部材12および取付ブラケット14に対して、軸方向に位置決めされるようになっている。これにより、略八角形とされた周壁部56の外周面58において、特に周壁部56の外周面58に対する大径部62のボリュームを、各角部において効率的に確保することができて、軸方向の位置決め作用を有利に得ることも可能になる。
【0048】
加えて、図2に示すように、スタビライザバー18にリング68が外嵌固定されており、リング68の装着によってスタビライザバー18が部分的に大径とされている。そして、スタビライザバー18のリング68に対して、スタビライザブッシュ10の緩衝筒部64が当接することで、スタビライザブッシュ10がスタビライザバー18に対して軸方向で位置決めされていると共に、車体側部材12および取付ブラケット14とリング68の接触が回避されている。なお、本実施形態では、スタビライザブッシュ10を軸方向で位置決めするためのスタビライザバー18の大径部分が、別体のリング68をスタビライザバー18に取り付けることで設けられているが、例えば、スタビライザバー18自体を部分的に大径化することで、位置決めのための大径部分をスタビライザバー18に一体的に設けることもできる。
【0049】
また、スタビライザブッシュ10は、周壁部56の内周面(スタビライザブッシュ10の中心孔54)が、スタビライザバー18の外周面に押し付けられていると共に、周壁部56の外周面58が、収容空所50の内周壁面である保持面52に押し付けられており、周壁部56がスタビライザバー18の外周面と保持面52との間で圧縮された状態で収容空所50に配されている。
【0050】
ここにおいて、スタビライザブッシュ10は、一対の対角部60,60が、車体側部材12の第一の取付片28,28と、取付ブラケット14の第二の取付片40,40との重ね合わせ面(図1中の二点鎖線)上に位置する向きで、収容空所50に配されている。そして、図8に二点鎖線で示された六角状の保持面対応形状における一対の対角部60,60は、切り落とし形状とされて、外周側への突出高さが他の角部よりも小さくされている。これにより、スタビライザブッシュ10が収容空所50の保持面52によって圧縮される際に、スタビライザブッシュ10の一対の対角部60,60が、車体側部材12の傾斜側面24,24と取付ブラケット14の傾斜側面36,36に沿って外周側に広がるようにして押し出されたとしても、車体側部材12の第一の取付片28,28と、取付ブラケット14の第二の取付片40,40との重ね合わせ面間に入り込み難くなっている。従って、スタビライザブッシュ10が、車体側部材12の第一の取付片28,28と取付ブラケット14の第二の取付片40,40との重ね合わせ面間で挟まれることに起因する、車体側部材12と取付ブラケット14の締結不良や、スタビライザブッシュ10の損傷などが回避される。しかも、スタビライザブッシュ10の第一の取付片28,28と第二の取付片40,40との重ね合わせ面間への噛み込みを防止しながら、径方向の圧縮量を十分に大きく確保することができて、スタビライザブッシュ10の経時的なへたりなどが生じたとしても、スタビライザバー18からの入力時に異音などが発生し難い。
【0051】
さらに、スタビライザブッシュ10では、六角状の保持面52における車体側部材12と取付ブラケット14の重ね合わせ面上に位置する一対の対角部60,60の外面が、角落とし形状の略平坦面とされている。それ故、車体側部材12と取付ブラケット14との重ね合わせ面間へのスタビライザブッシュ10の噛み込みがより効果的に防止され得ると共に、装着時の圧縮変形状態での応力集中が軽減されて、スタビライザブッシュ10の支持特性への悪影響も回避され得る。
【0052】
加えて、圧縮された状態のスタビライザブッシュ10の周壁部56の外周面58は、保持面52に対応する六角状の軸方向視形状とされており、一対の対角部60,60を角落とし形状としても、保持面52との間に大きな隙間が形成され難く、スタビライザブッシュ10が保持面52によって大きな嵌合力で保持される。
【0053】
さらに、スタビライザブッシュ10は、車両装着前の単体状態において、車体側部材12の傾斜側面24,24と取付ブラケット14の傾斜側面36,36との各対向方向の厚さ寸法t1が、車体側部材12の底面22と取付ブラケット14の底面34との対向方向の厚さ寸法t2よりも大きくされている。これにより、スタビライザブッシュ10は、傾斜側面24,24と傾斜側面36,36の各対向面間距離と、傾斜側面24,24と傾斜側面36,36の各対向方向におけるスタビライザブッシュ10の外径寸法との差が、底面22と底面34の対向面間距離と、底面22と底面34の対向方向におけるスタビライザブッシュ10の外径寸法との差に比して、大きくされている。その結果、スタビライザブッシュ10は、車両への装着状態において、傾斜側面24,24と傾斜側面36,36との対向方向で大きな圧縮力が及ぼされるようになっており、例えばスタビライザバー18の支持特性が特定の軸直角方向で異ならされる場合などにも、有利に対応することができる。
【0054】
しかも、車両への装着状態において、車体側部材12の底面22と取付ブラケット14の底面34との対向方向の圧縮力よりも、各傾斜側面24,36の対向方向での圧縮力が大きくされていることにより、切り割り66が位置する部分に作用する圧縮力を抑えて、切り割り66が開くことによる悪影響などを回避しつつ、各傾斜側面24,36の対向方向において圧縮力を効率的に確保することができる。
【0055】
更にまた、本実施形態では、車体側部材12の一方の傾斜側面24と取付ブラケット14の一方の傾斜側面36との対向方向が、装着状態において車両上下方向とされる。これにより、例えば、車両への装着状態下において、スタビライザブッシュ10に対して車両上下方向の圧縮力を大きく作用させて、スタビライザバー18の車両上下方向での支持ばねを大きく且つ安定して設定することも容易となる。
【0056】
本実施形態では、スタビライザブッシュ10は、切り割り66が第一の溝状部20の開口側に位置するように設定することで、周方向に適切な向きで配されて、一対の対角部60,60が第一,第二の取付片28,40の重ね合わせ面上に位置せしめられる。さらに、切り割り66は、車両への装着時に噛み込みが問題となる車体側部材12と取付ブラケット14の重ね合わせ面上に位置する角部に対して、周方向で大きく外れた位置に設定されており、切り割り66による噛み込みへの悪影響を軽減できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、一対の対角部60,60に設定される角落とし形状は、必ずしも平坦である必要はなく、凹面又は凸面をなすように湾曲していてもよいことから、外周面58は、必ずしも八角状の軸方向視形状に限定されない。さらに、スタビライザブッシュ10において、大径部62や緩衝筒部64は、必須ではない。
【0058】
更にまた、車両への装着状態における周壁部56の圧縮方向は、あくまでも例示であって、例えば、車体側部材12の底面22と取付ブラケット14の底面34との対向方向の圧縮力が、各傾斜側面24,36の対向方向での圧縮力よりも大きくされる場合もある。
【0059】
また、保持面52の軸方向視形状は、正六角形に限定されず、六角状であれば良い。具体的には、例えば、車体側部材12の一方の傾斜側面24の長さと他方の傾斜側面24の長さが異なっていると共に、取付ブラケット14の一方の傾斜側面36の長さと他方の傾斜側面36の長さが異なっていることによって、保持面52が軸方向視において正六角形ではない六角状とされ得る。
また、本発明は、もともと以下(i)~(vi)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) スタビライザバーが挿通される中心孔を有する筒形状とされており、車体側部材と取付ブラケットとの突き合わせ面間によって構成される保持面により周壁部の外周面を嵌合保持されて車両に装着されるスタビライザブッシュであって、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面がそれぞれ平坦な底面と拡開する両側の傾斜側面とを有する拡開溝形状とされて、かかる突き合わせ面で構成された前記保持面が六角状の軸方向視形状とされる一方、該保持面によって嵌合保持される前記外周面が、該保持面に対応した軸方向視形状であって且つ一対の対角部が他の角部に比して外周側への突出高さを小さくした角落とし形状とされており、該一対の対角部が該車体側部材と該取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置せしめられるようになっていることを特徴とするスタビライザブッシュ、
(ii) 前記一対の対角部が角落とし形状とされることで、前記外周面が八角状の軸方向視形状とされている(i)に記載のスタビライザブッシュ、
(iii) 前記車体側部材と前記取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた前記突き合わせ面のうちで対向配置された前記各傾斜側面の対向方向において、前記底面の対向方向に比して、装着前の前記周壁部における径方向の厚さ寸法が大きくされており、装着状態において大きな圧縮力が及ぼされるようになっている(i)又は(ii)に記載のスタビライザブッシュ、
(iv) 前記車体側部材と前記取付ブラケットにおいて拡開溝形状とされた前記突き合わせ面のうちで対向配置された一方の前記各傾斜側面の対向方向が、装着状態において車両上下方向とされる(i)~(iii)の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ、
(v) 前記車体側部材と前記取付ブラケットとの何れか一方において拡開溝形状とされた前記突き合わせ面の前記底面上に位置せしめられる部分において、軸方向の全長に亘って延びる切り割りが形成されており、該切り割りにおいて拡開されて前記スタビライザバーへ外挿されるようになっている(i)~(iv)の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ
(vi) 前記周壁部における軸方向の中間部分が一定の厚さ寸法で軸方向に延びていると共に、軸方向の両側部分にはそれぞれ一定の高さ寸法で周方向の全周に亘って連続して延びる大径部が設けられており、該大径部が、前記車体側部材と前記取付ブラケットにおける突き合わせ面に形成された嵌合凹溝に嵌め入れられることで軸方向に位置決めされるようになっている(i)~(v)の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、外周面において角落とし形状とされた一対の対角部により、六角状の保持面のうちで車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部でのクリアランスが大きく確保され得る。それ故、前述のように装着時に圧縮されたスタビライザブッシュの外周部分が、拡開溝形状とされた車体側部材と取付ブラケットのそれぞれの傾斜側面に沿って外周側に広がるようにして押し出されることに起因する、六角状の保持面に特有の車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間への噛み込みの問題が効果的に防止され得る。なお、前述の特許文献2に示されているように、スタビライザブッシュを周方向で複数の分割構造として変形容易な自由表面を大きく確保することで、装着時に圧縮されたスタビライザブッシュにおける車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へ入り込む膨出変形量を抑えることも考えられる。しかし、本態様に従えば、周方向での複数の分割構造により自由表面を増大させる場合に比して、構成部品点数の増加や、製造や装着などに際しての部材の取扱いの煩雑化、更に、圧縮状態で発現されるばね特性への悪影響などといった問題を軽減乃至は回避しつつ、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へのスタビライザブッシュの噛み込みを防止することが可能になる。尤も、スタビライザブッシュの周方向での複数の分割構造は、本態様とは基本的な技術思想が異なるものの、互いに組み合わせて採用することができる。
上記(ii)に記載の発明では、六角状の保持面のうちで車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部に対峙するブッシュ外周面が、角落とし形状の略平坦面とされる。それ故、外方に膨らむ凸形状とされる場合に比して、車体側部材と取付ブラケットとの重ね合わせ面間へのスタビライザブッシュの噛み込みがより効果的に防止され得る。一方、内方に窪んだ凹形状とされる場合に比して、装着時の圧縮変形状態での応力集中が軽減されて、スタビライザブッシュの支持特性への悪影響も回避され得る。
上記(iii)に記載の発明では、車体側部材と取付ブラケットにおいて略平行な平坦面をもって軸直角方向で対峙せしめられる傾斜側面間で、スタビライザブッシュに軸直角方向の圧縮力を及ぼすことで、例えば特定の軸直角方向でスタビライザバーの支持特性が異ならされる場合などにも有利に対応することが可能となる。
上記(iv)に記載の発明では、車体側部材と取付ブラケットにおいて略平行な平坦面をもって軸直角方向で対峙せしめられる傾斜側面間で、スタビライザバーに対する車両上下方向の支持力を効率的に及ぼすことが可能となる。これにより、例えば、装着状態下でスタビライザブッシュに対して車両上下方向の圧縮力を大きく作用させて、スタビライザバーの車両上下方向での支持ばねを大きく且つ安定して設定することも容易となる。
上記(v)に記載の発明では、装着時における噛み込みが問題となる車体側部材と取付ブラケットの重ね合わせ面上に位置する角部を大きく外れた位置に切り割りを設定することで、切り割りによる噛み込みへの悪影響を軽減できる。また、本態様では、装着状態でのスタビライザブッシュの圧縮力について、拡開溝形状とされた車体側部材と取付ブラケットとの各底面の対向方向の圧縮力よりも、各傾斜側面の対向方向での圧縮力を大きくすることも可能であり、それによって、切り割りによる悪影響を回避しつつ、特定の軸直角方向での圧縮力を効率的に確保することができる。
上記(vi)に記載の発明では、略八角形をベースとした異形の外周面において全周に亘って一定の高さ寸法で突出して大径部が設けられていることから、特に周壁部外周面に対する大径部のボリュームを、各角部において効率的に確保することができて、軸方向の位置決め作用を有利に得ることも可能になる。
【符号の説明】
【0060】
10:スタビライザブッシュ、12:車体側部材、14:取付ブラケット、18:スタビライザバー、22:底面、24:傾斜側面、34:底面、36:傾斜側面、46:突き合わせ面、48:突き合わせ面、52:保持面、54:中心孔、56:周壁部、58:外周面、60:対角部、62:大径部、66:切り割り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8