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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20220624BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220624BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/26
C08L67/00
C08G63/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018113057
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019214677
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 聖五
(72)【発明者】
【氏名】木原 正博
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲也
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031394(JP,A)
【文献】特開2019-214678(JP,A)
【文献】特開2001-302853(JP,A)
【文献】特表平08-509020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、
結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー0.1~30質量部、および
官能基含有ポリオレフィン系樹脂1~30質量部を含有し、
液晶ポリマーが、式(I)~(IV)
【化1】
[式中、
Ar およびAr は、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、全芳香族液晶ポリエステル中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
0.5≦p/q≦2.5
2≦r≦15、および
2≦s≦15]
で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルである、ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
酸素ガス透過度(JIS K 7126-2)が30cm/m・24h・atm以下である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
曲げ弾性率(ISO-178)が1.5GPa以上である、請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
ArおよびArが、互いに独立して、式(1)~(4)
【化1】
で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン樹脂および/またはエポキシ基含有ポリエチレン樹脂である、請求項1~のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物から構成される成形品。
【請求項7】
成形品が容器である、請求項記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、機械強度および耐テープ剥離性に優れたポリプロピレン樹脂組成物、およびポリプロピレン樹脂組成物から構成される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、汎用樹脂のなかでは比較的耐熱性があり、成形加工性にも優れることから、各種の日用品や工業用品に使用されている。
【0003】
例えば、飲食品、化粧品、洗剤および各種薬品類を収納する容器として、ポリプロピレン樹脂製の容器が多用されている。ポリプロピレン樹脂製の容器は軽量で耐衝撃性にも優れており、また、リサイクルにより再利用することが容易であり、かつ電子レンジで使用できるなどの利点を有する(特許文献1)。
【0004】
一方、樹脂製の容器は、紙製よりも優れた保存機能を有しているが、金属製やガラス製に比べるとガスバリア性に劣り、長期保存には不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-137108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ポリプロピレン樹脂のガスバリア性を向上させるために検討を行い、ポリプロピレン樹脂に結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマーをブレンドすることによりガスバリア性に優れるポリプロピレン樹脂組成物が得られ、容器やボトル等の中空成形体の材料として好適に使用することができることを見出した。
【0007】
一方、さらなる本発明者らの検討によると、液晶ポリマーをブレンドしてなるポリプロピレン樹脂組成物から構成される成形品は、成形品表面の層状剥離(テープ剥離)が生じることがあり、このような成形品を飲食品用の容器とした場合、剥離した樹脂層が内容物に混入するおそれがあることが判明した。
【0008】
本発明の課題は、ガスバリア性および機械強度に優れ、かつ耐テープ剥離性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、ポリプロピレン樹脂組成物のガスバリア性と物性の改善について鋭意検討した結果、ポリプロピレン樹脂に結晶融解温度250℃以下の液晶ポリマーとともに所定量の官能基含有ポリオレフィン系樹脂を含有させることにより、ガスバリア性および機械強度に優れ、かつ耐テープ剥離性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー0.1~30質量部、および官能基含有ポリオレフィン系樹脂1~30質量部を含有するポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスバリア性および機械強度に優れ、かつ耐テープ剥離性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂、液晶ポリマーおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂を必須成分として含有する。
【0013】
本発明におけるポリプロピレン樹脂は、特に限定されないが、プロピレン単独重合体、プロピレン-オレフィン共重合体(例えばプロピレンとエチレンもしくは炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体)、ブロックポリプロピレンまたはこれらのブレンド樹脂などが挙げられる。炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0014】
これらのなかでは、エチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましい。これらのオレフィン(エチレンおよび炭素数が4~20のα-オレフィン)は、プロピレンとランダム共重合体を形成していてもよく、またブロック共重合体を形成していてもよい。これらのオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ポリプロピレン樹脂中に5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。即ち、ポリプロピレン樹脂中におけるプロピレン構成単位の含有量は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。
【0015】
本発明におけるポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.1~100g/10分であるのが好ましく、0.3~70g/10分であるのがより好ましい。
【0016】
ここで、MFRは、JIS K 6921-1に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
【0017】
ポリプロピレン樹脂のMFRが0.1g/10分未満であると、得られる樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向にあり、100g/10分を超えると、得られる樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する傾向にある。
【0018】
ポリプロピレン樹脂を製造する方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒またはメタロセン触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法、またはプロピレン以外のオレフィン(好適にはエチレンおよび炭素数が4以上のα-オレフィン)から選ばれる1種以上のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族~第6族の遷移金属化合物および助触媒成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
【0019】
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法や溶液重合法、溶媒の不存在下に行われる液相重合法や気相重合法、およびそれらを連続的に行う気相-気相重合法や液相-気相重合法が挙げられる。これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリプロピレン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。これら重合方法は、プロピレンの単独重合、およびプロピレンとオレフィンの共重合のいずれにも適用することができる。
【0020】
本発明における液晶ポリマーとは、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる、異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステルアミドである。
【0021】
異方性溶融相の性質は、直交偏向子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、すなわち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0022】
本発明における液晶ポリマーの示差走査熱量計により測定される結晶融解温度は250℃以下であり、好ましくは160~240℃、より好ましくは163~230℃、さらに好ましくは165~225℃、特に好ましくは170~220℃である。
【0023】
液晶ポリマーの結晶融解温度が250℃以下であることによって、マトリクスであるポリプロピレン樹脂に液晶ポリマーが均一に分散し、優れたガスバリア性および機械物性が得やすくなる。また、後述する官能基含有ポリオレフィン系樹脂を配合することにより、成形品において、本発明の目的である耐テープ剥離性が著しく改善される。
【0024】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000等を使用することができる。
【0025】
本発明における液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位およびこれらの組合せなどが挙げられる。
【0026】
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸である、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0027】
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸が、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0028】
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’-ジヒドロキシビフェニルが、重合時の反応性、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0029】
芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0030】
これらの繰り返し単位を組み合わせた共重合体には、単量体の構成や組成比、共重合体中での各繰り返し単位のシークエンス分布によっては、異方性溶融相を形成するものとしないものが存在するが、本発明における液晶ポリマーは異方性溶融相を形成する共重合体に限られる。
【0031】
本発明における液晶ポリマーは、2種以上の液晶ポリマーをブレンドしたものであってもよい。
【0032】
本発明における結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマーとしては、式(I)~(IV)で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルが好適である。
【化1】
【0033】
[式中、
ArおよびArは、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、全芳香族液晶ポリエステル中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
0.5≦p/q≦2.5
2≦r≦15、および
2≦s≦15。]
【0034】
式(I)に係る組成比p(モル%)と式(II)に係る組成比q(モル%)のモル比(p/q)は、0.6~1.8がより好ましく、0.8~1.6がさらに好ましい。pとqの合計の組成比は、70~96モル%が好ましく、76~90モル%がより好ましい。
【0035】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルにおいて、式(I)に係る組成比pと式(II)に係る組成比qは、それぞれ、32~54モル%が好ましく、36~52モル%がより好ましい。
【0036】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、式(I)および式(II)で表される繰り返し単位を、少なくとも上記のモル比(p/q)、および場合により上記のpとqの合計の組成比および/またはpとqのそれぞれの組成比(モル%)で含むことにより、250℃以下という低い結晶融解温度を示す。
【0037】
また、本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルについて、式(III)に係る組成比rと式(IV)に係る組成比sは、それぞれ、2~15モル%が好ましく、5~12モル%がより好ましい。rとsは、等モル量であることが好ましい。
【0038】
上記の繰返し単位において、例えばAr(またはAr)が2種以上の2価の芳香族基を表すとは、式(III)(または(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(または式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
【0039】
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0040】
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0041】
式(III)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0042】
式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0043】
また、本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルのなかでも、式(III)および式(IV)で表される繰返し単位に係るArおよびArが、互いに独立して、式(1)~(4)で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含む全芳香族液晶ポリエステルが、さらに好ましい。
【化2】
【0044】
これらの中でも、式(III)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(4)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体としては、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸ならびにこれらのエステル形成性誘導体が、得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
【0045】
また、式(IV)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(3)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体としては、ハイドロキノンおよび4,4’-ジヒドロキシビフェニルならびにこれらのエステル形成性誘導体が、重合時の反応性および得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
【0046】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルにおいて、繰返し単位の組成比の合計[p+q+r+s]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲において、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
【0047】
他の繰返し単位を与える単量体としては、他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール、芳香族メルカプトフェノールおよびこれらの組合せなどが挙げられる。
【0048】
他の芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0049】
これらの他の単量体成分から与えられる繰返し単位の組成比の合計は、繰返し単位全体において、10モル%以下であることが好ましい。
【0050】
本発明に用いられる液晶ポリマーの製造方法には特に限定はなく、上記単量体成分間にエステル結合やアミド結合を形成させる公知の重縮合法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを用いることができる。
【0051】
溶融アシドリシス法とは、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、続いて反応を続けて溶融ポリマーを得る方法である。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。この方法は、本発明において特に好適に用いられる。
【0052】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0053】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、ヒドロキシル基をエステル化した変性形態、すなわち低級アシルエステルとして反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは、前記単量体成分の酢酸エステルを反応に用いる方法が挙げられる。
【0054】
単量体の低級アシルエステルは、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時にモノマーに無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成させることもできる。
【0055】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれにおいても、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0056】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);無機酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば硫酸カリウム);ルイス酸(たとえばBF)、ハロゲン化水素(たとえばHCl)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0057】
触媒の使用割合は、通常モノマー全量に対し10~1000ppm、好ましくは20~200ppmである。
【0058】
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、ポリプロピレン樹脂および官能基含有ポリオレフィン系樹脂とのブレンドに供される。
【0059】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における、液晶ポリマーの含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、液晶ポリマー0.1~30質量部、好ましくは、0.5~27質量部、より好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは2~20質量部、特に好ましくは3~14質量部である。
【0060】
液晶ポリマーの含有量が0.1質量部未満であると、ガスバリア性および機械強度の改善効果が十分に得られず、30質量部を超えると耐テープ剥離性が損なわれる傾向がある。
【0061】
本発明における官能基含有ポリオレフィン系樹脂は、官能基含有モノマーによって変性されたポリオレフィン系樹脂であって、本発明のポリプロピレン樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂とは異なる樹脂である。
【0062】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するポリプロピレン樹脂相と液晶ポリマー相との界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させ、相溶性を向上させて液晶ポリマーの均一分散を促進する相溶化剤として機能する。
【0063】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂を得る方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で官能基含有モノマーをポリオレフィン系樹脂と溶融混練する等のグラフト変性による方法や、官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合による方法などが挙げられる。
【0064】
官能基含有モノマーによって変性させるべきポリオレフィン系樹脂の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル-1-ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体、およびこれらオレフィン類の2種類以上からなる共重合体を挙げることができる。
【0065】
官能基含有モノマーとしては、エチレン性二重結合と、反応性の官能基とを、同一分子内に持つ化合物であり、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0066】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂は、官能基含有モノマーを単独で使用して得たものであってもよく、または2種以上を併用して得たものであってもよい。
【0067】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物に含有される官能基含有ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリプロピレン樹脂および/またはエポキシ基含有ポリエチレン樹脂が好ましく、耐テープ剥離性の改善効果に優れることから、特に酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0068】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を単独で、または2種以上を併用して含有してもよい。
【0069】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物において、官能基含有ポリオレフィン系樹脂の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、1~30質量部、好ましくは1.5~15質量部、より好ましくは2.5~10質量部である。
【0070】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂の含有量が1.0質量部未満であると、機械強度が不足するとともに耐テープ剥離性の改善効果が十分に得られず、30質量部を超えるとポリプロピレン樹脂組成物の溶融粘度が高くなり成形加工性が低下する傾向がある。
【0071】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、任意の成分として、さらに繊維状、板状、粉状などの充填材を含有してもよい。
【0072】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物が含有してもよい充填材としては、たとえばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および酸化チタンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0073】
これらの充填材は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0074】
これらのなかでは、ガラス繊維およびタルクが物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
【0075】
繊維状、板状、粉状などの充填材を用いる場合、その合計の含有量は、ポリプロピレン樹脂、液晶ポリマーおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~150質量部であり、より好ましくは1~100質量である。
【0076】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂、液晶ポリマーおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の添加剤や樹脂成分を含有してもよい。
【0077】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物が含有してもよい他の添加剤の具体例としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10~25のものをいう)などの滑剤、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型剤、染料、顔料、カーボンブラックなどの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、中和剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0078】
これらの添加剤の含有量は、ポリプロピレン樹脂、液晶ポリマーおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂の合計量100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0079】
添加剤の含有量が0.01質量部未満であると、添加剤の機能が実現しにくくなる傾向があり、10質量部を超えると、ポリプロピレン樹脂組成物の成形加工時の熱安定性が悪くなる傾向がある。
【0080】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物が含有してもよい他の樹脂成分の具体例としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記他の樹脂成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂と液晶ポリマーの合計量100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、0.5~80質量部がより好ましい。
【0082】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、上記のポリプロピレン樹脂、液晶ポリマーおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂を、必要により上記の充填材、他の樹脂成分、添加剤と共に、混練機で溶融混練することにより製造することができる。上記の充填材、他の樹脂成分および添加剤は、予めポリプロピレン樹脂または液晶ポリマーのいずれかに配合してもよく、また、ポリプロピレン樹脂および液晶ポリマー、および所望により相溶化剤を配合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を成形加工する際に配合してもよい。
【0083】
混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などが使用される。例えば、二軸押出機を用いた場合などは、比エネルギー(吐出量あたりの押出機仕事量(kW・h/kg))0.1~0.25で、ベントポートを真空にしながら混練を行うのがよいが、これに限らず、不活性ガス雰囲気下で混練を行ってもよい。
【0084】
このようにして得られた本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、JIS K 7126-2に準拠した酸素ガス透過度(20℃、湿度65%、サンプル厚み4mm)が、好ましくは30cm/m・24h・atm以下、より好ましくは28cm/m・24h・atm以下、さらに好ましくは25cm/m・24h・atm以下という優れたガスバリア性を示す。酸素ガス透過度は、通常1cm/m・24h・atm以上である。
【0085】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、後述する方法により測定される剥離面積率(%)が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは0%という優れた耐テープ剥離性を示す。
【0086】
さらに、本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、ISO-178に準拠した23℃における曲げ弾性率が、好ましくは1.5GPa以上、より好ましくは1.6GPa以上、さらに好ましくは1.7GPa以上という優れた機械強度を示す。曲げ弾性率は、通常10GPa以下である。
【0087】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、射出成形機、押出機などを用いる公知の成形方法によって溶融加工され、成形品、フィルムやシート、繊維などの製品とすることができる。
【0088】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物から構成される成形品としては、例えば、機械部品、電気・電子部品、建築・土木部材、家庭・事務用品、家具用部品および日用品などが挙げられるが、特に容器としての成形品が有用である。
【0089】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物から構成される容器は、米製品、加工食品、惣菜、漬物類、和菓子、洋菓子、ジュース、酒類、調味料などの飲食品、整髪料、ファンデーション、香水などの化粧品、手洗い用洗剤、洗顔用洗剤、台所用洗剤、洗濯用洗剤、シャンプー、リンスなどの各種洗剤など、様々な内容物を保存する容器として使用可能である。これらの中でも、特に飲食品を保存する容器として有用である。
【0090】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0091】
実施例中の結晶融解温度、ガスバリア性、曲げ弾性率および剥離面積率は、以下に記載の方法で測定した。
【0092】
〈結晶融解温度〉
セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計(DSC)Exstar6000を用いて測定を行った。液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件下で測定し、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持する。次いで20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。
【0093】
〈酸素ガス透過度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製FE80S 12ASE型)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度40℃で、厚さ4.0mmの100mm角試験片を成形し、これを用いてJIS K 7126-2に準拠し、温度20℃、湿度65%における酸素ガス透過度試験を行った。酸素ガス透過度が小さいほどガスバリア性に優れる。
【0094】
〈曲げ弾性率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、シリンダー設定温度を250℃(比較例4については320℃)、金型温度40℃で、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを用いてISO-178に準拠して測定した。曲げ弾性率が大きいほど機械強度に優れる。
【0095】
〈剥離面積率〉
曲げ弾性率の測定に用いたものと同様の短冊状試験片にセロハンテープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標)CT-24)を貼付面積が500mm(50mm×10mm)となるように指で押し付けて密着させた後に、長手方向で、180°の方向に100mm/秒の速度で引き剥がした。試験片表面の剥離した部分をスキャナーで読み取り、キーエンス製VHX-900F通信ソフトにて解析し剥離面積を算出した。上記剥離面積を上記貼付面積で除した値を剥離面積率(%)とした。 剥離面積率(%)が小さいほど、耐テープ剥離性に優れる。
【0096】
実施例において、下記の略号は以下の化合物を表す。
PP:ポリプロピレン樹脂
LCP:液晶ポリマー
POB:4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
【0097】
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂として以下のものを使用した。
プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)J105G(ホモポリマータイプ、MFR 9.0g/10分)
【0098】
(官能基含有ポリオレフィン系樹脂)
官能基含有ポリオレフィン系樹脂、以下のものを使用した。
酸変性PP:三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1010(酸変性ポリプロピレン樹脂)
BF:住友化学(株)製ボンドファースト(登録商標)BF-2C(エポキシキ含有ポリエチレン樹脂)
【0099】
(液晶ポリマーの合成)
[合成例1(LCP-1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:276.2g(40モル%)、BON6:376.4g(40モル%)、HQ:55.1g(10モル%)およびTPA:83.1g(10モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0100】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間かけて昇温し、同温にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温にて30分間保持した。その後、3時間かけて335℃まで昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は218℃であった。
【0101】
[合成例2(LCP-2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:172.7g(25モル%)、BON6:517.5g(55モル%)、HQ:55.1g(10モル%)およびTPA:83.1g(10モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0102】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間かけて昇温し、同温にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温にて30分間保持した。その後、3時間かけて335℃まで昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は253℃であった。
【0103】
[実施例1~6、参考例1および比較例1~3]
PP、LCP-1~2、PPおよび官能基含有ポリオレフィン系樹脂を、表1に示す含有量となるように配合して、2軸押出機((株)池貝製PCM-30)を用いて、シリンダー温度をLCPのTm+10~+50℃となるようにして溶融混練して、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
【0104】
得られたペレットを用いて上記の方法により酸素ガス透過度、曲げ弾性率および剥離面積率を測定した。結果を表1に示す。
【0105】
実施例1~6のポリプロピレン樹脂組成物は、いずれも酸素ガス透過度が30cm/m・24h・atm以下、曲げ弾性率が1.5GPa以、剥離面積率が5%以下であり、ガスバリア性、曲げ弾性率および耐テープ剥離性に優れるものであった。
【0106】
これに対して、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を含有しないポリプロピレン樹脂組成物(比較例1)、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を過剰に含有するポリプロピレン樹脂組成物(比較例2)、結晶融解温度の高いLCP-2(Tm:253℃)を使用したポリプロピレン樹脂組成物(比較例3)は、いずれも耐テープ剥離性に劣るものであった。また、液晶ポリマーを含有しないポリプロピレン樹脂(参考例1)は、耐テープ剥離性は優れるものの、ガスバリア性および曲げ弾性率に劣るものであった。
【0107】
【表1】
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、
結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー0.1~30質量部、および
官能基含有ポリオレフィン系樹脂1~30質量部を含有するポリプロピレン樹脂組成物。
〔2〕酸素ガス透過度(JIS K 7126-2)が30cm /m ・24h・atm以下である、〔1〕に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔3〕曲げ弾性率(ISO-178)が1.5GPa以上である、〔1〕または〔2〕に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔4〕液晶ポリマーが、式(I)~(IV)
[化1]
[式中、
Ar およびAr は、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、全芳香族液晶ポリエステル中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
0.5≦p/q≦2.5
2≦r≦15、および
2≦s≦15]
で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔5〕Ar およびAr が、互いに独立して、式(1)~(4)
[化2]
で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含む、〔4〕に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔6〕官能基含有ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン樹脂および/またはエポキシ基含有ポリエチレン樹脂である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物から構成される成形品。
〔8〕成形品が容器である、〔7〕記載の成形品。