IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ITコントロールシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-高速度放射線撮像装置および撮像方法 図1
  • 特許-高速度放射線撮像装置および撮像方法 図2
  • 特許-高速度放射線撮像装置および撮像方法 図3
  • 特許-高速度放射線撮像装置および撮像方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】高速度放射線撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220624BHJP
【FI】
G01N23/04 310
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018117646
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019219307
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】富澤 雅美
(72)【発明者】
【氏名】小湊 宏
(72)【発明者】
【氏名】小畠 光法
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第101221137(CN,B)
【文献】特開2010-206732(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136509(JP,U)
【文献】特開平08-171996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に対して放射線を投射する放射線発生器と、
前記被検査物を透過したX線を検出して可視光データとして出力する可視光変換器と、
前記可視光変換器から出力される可視光を画像表示に必要なフレームレートFR のn倍のフレームレートFRで撮影する撮像素子と、前記n倍としたフレームレートFR に見合うだけの絞り値にして前記撮像素子に達する光量を増加させるレンズと、を有する高速度カメラと、
前記高速度カメラが前記フレームレートFRで撮影した画像データを保存する記憶装置と、
前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレーム数よりも単位時間当たりのフレーム数が減少された画像データを生成する演算部と、
を備える高速度放射線撮像装置。
【請求項2】
前記演算部が、前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレームの画像データを加算平均化することで単位時間当たり1つのフレームの画像データを生成するものである請求項1に記載の高速度放射線撮像装置。
【請求項3】
前記演算部に、演算に必要なパラメータを設定するパラメータ設定部が設けられ、このパラメータ設定部からのパラメータにより、前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から選択するフレーム数、及び/または前記選択されたフレーム数よりも少ない単位時間当たりのフレーム数が指定され、これらパラメータの指定に基づいて演算処理が行われる請求項1または請求項2に記載の高速度放射線撮像装置。
【請求項4】
前記パラメータ設定部が、前記演算部が演算する加算平均するフレーム数nよりも、前記演算部から出力される加算平均するフレームの間隔nが小さいパラメータを設定する請求項3に記載の高速度放射線撮像装置。
【請求項5】
前記パラメータ設定部が、前記演算部が演算する加算平均するフレーム数nの画像データを、前記記憶装置に保存されている演算元のフレーム数の単位時間よりも短い時間を単位として出力するパラメータを設定する請求項3に記載の高速度放射線撮像装置。
【請求項6】
前記演算部によって生成された減少フレーム数の画像データに基づいて動画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって作成された動画像を出力する表示装置と、
を有する請求項1から請求項5のいずれかに記載の高速度放射線撮像装置。
【請求項7】
放射線発生器によって被検査物に対して放射線を投射し、
前記被検査物を透過したX線を可視光変換器で検出し、可視光データとして出力し、
前記可視光変換器から出力される可視光を高速度カメラにより画像表示に必要なフレームレートFR のn倍のフレームレートFR とした撮像素子で、且つ前記n倍としたフレームレートFR に見合うだけ小さな絞り値として前記撮像素子に達する光量を増加させたレンズで撮影し、
前記高速度カメラが前記フレームレートFR で撮影した画像データを記憶装置に保存し、
前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレーム数よりも単位時間当たりのフレーム数が少ない画像データを生成することを特徴とする高速度放射線撮像方法。
【請求項8】
前記生成された少ないフレーム数の画像データに基づいて動画像を生成し、表示装置に出力する請求項7に記載の高速度放射線撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像された画像のSN比を向上させた高速度放射線撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度にX線を可視光の像に変換する二次元X線画像化センサであるX線イメージインテシファイア(X線I.I.)は医療と工業の両分野で使用されており、物体を透過する放射線を用いてその物体の内部の動きを高速に観察・検査することが行われている。物体を透過した放射線の画像は、一般にその放射線の粒子または光子の時間的・空間的な密度が低いために粒状性のノイズが目立つことがある。特に、毎秒30フレーム(30fps)を超えるフレームレートで放射線画像を撮像する高速度放射線撮像装置において、この傾向が顕著である。
【0003】
高速度放射線撮像装置では、物体を透過する放射線の時間的・空間的な密度が増すように撮像条件を工夫するが、フレームレートが高まるほど1フレームあたりの放射線の粒子または光子の密度が低下して粒状性のノイズが目立つことから、さらなるノイズの低減策、いいかえると放射線画像のSN比の改善策が求められている。
【0004】
以下、放射線画像のSN比の改善策を、放射線としてX線を例にとって説明する。
従来技術として、二次元のX線の像を可視光の像に変換し、それを高速度カメラで撮像する方式が知られている。この高速度カメラからは設定したフレームレート(単位はfps、frame per second)のフレーム数の画像を毎秒得られる。例えば、1000fpsで2秒間撮像すると、2000フレームの画像を得る。そのそれぞれの画像の1フレームの時間にある画素(x、y)に入射するX線のフォトン数
【数1】
は、1フレームごとにポアソン分布に従って変動し、画像上に粒状性のノイズとして現れる。
【0005】
ここで、(x、y)は画像の横方向x番目と縦方向y番目の画素を表す。この変動は、X線発生器によるX線フォトンの発生が真にランダムな過程であることに起因している。また、X線のフォトン数
【数2】
の複数のフレーム間における平均値
【数3】
が20以上である場合には、この変動はガウス分布(正規分布)とみなすことができ、通常のX線撮像はその範囲で行われる。その画素に含まれるノイズ成分は
【数4】
であり、また、SN比も同じく
【数5】
である。
【0006】
X線管から発生し、被検査物を透過したX線を可視光の像に変換してレンズを介して高速度カメラで撮像する高速度X線撮像では、このSN比を向上させるために発生するX線の線量率を増したり、X線焦点とX線を可視光に変換する部分との距離を短縮したりして、X線を可視光に変換する部分に入射するX線のフォトン数を増やすことが行われる。
【0007】
この場合、フォトン数を増すと変換される可視光の光量も増すので、高速度カメラの撮像素子が飽和しないようにあえてレンズの絞り値を大きく設定し、すなわち、レンズの開口または口径比を小さくして、さらには、減光フィルタを用いて、高速度カメラの撮像素子に入射する可視光の光量を減らすことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-276140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高速度カメラの撮像に必要なフレームレートFRは、主に、被検査物が動く速さとそれをどの程度のブレ量として捕えたいか、によって決まる。例えば、FRが1000fpsであるとき、従来は高速度カメラが撮像するフレームレートを1000fpsに設定し、X線発生器のターゲット許容電力、および、その電力が増すことによって増加するX線焦点寸法によるX線画像のボケ具合に制限される範囲で、レンズの絞りをできるだけ絞っていた。
【0010】
カメラの撮像素子に到達する可視光はX線から変換されたものであり、それをレンズの絞りなどによって故意に減少させることは、せっかく増やしたフォトン数を減少させることに相当し、フォトン数の増加に見合うだけの画像のSN比の向上につながらない。
【0011】
本実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本実施形態の目的は、フォトン数を増やしたときに高速度カメラの撮像素子が飽和することを防ぐためにレンズの絞りを絞るのではなく、高速度カメラのフレームレートを速くして撮像することによって、フォトン数の増加を無駄なく画像のSN比の向上に寄与させることができる高速度放射線撮像装置および撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態の高速度放射線撮像装置は、次のような構成を有する。
(1)被検査物に対して放射線を投射する放射線発生器。
(2)前記被検査物を透過したX線を検出して可視光データとして出力する可視光変換器。
(3)前記可視光変換器から出力される可視光を画像表示に必要なフレームレートFR のn倍のフレームレートFRで撮影する撮像素子と、前記n倍としたフレームレートFR に見合うだけの絞り値にして前記撮像素子に達する光量を増加させるレンズと、を有する高速度カメラ。
(4)前記高速度カメラが前記フレームレートFR で撮影した画像データを保存する記憶装置。
(5)前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレーム数よりも単位時間当たりのフレーム数が減少された画像データを生成する演算部。
【0013】
本発明の実施形態の高速度放射線撮像方法は、次のようなステップを有する。
(1)放射線発生器によって被検査物に対して放射線を投射する。
(2)前記被検査物を透過したX線を可視光変換器で検出し、可視光データとして出力する。
(3)前記可視光変換器から出力される可視光を高速度カメラにより画像表示に必要なフレームレートFR のn倍のフレームレートFR とした撮像素子で、且つ前記n倍としたフレームレートFR に見合うだけ小さな絞り値として前記撮像素子に達する光量を増加させたレンズで撮影する。
(4)前記高速度カメラが前記フレームレートFRで撮影した画像データを記憶装置に保存する。
(5)前記記憶装置に保存されている画像表示に必要なフレームレートFRの1フレーム分の時間(以下、特許請求の範囲を含めて単位時間と呼ぶ)当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレーム数よりも単位時間当たりのフレーム数が減少された画像データを生成する。
【0014】
第1実施形態及び第2実施形態において、次のような構成を有することができる。
(1)前記演算部が、前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から所定数のフレームを選択し、前記選択したフレームの画像データを加算平均化することで単位時間当たり1つのフレームの画像データを生成する。
(2)前記演算部に、演算に必要なパラメータを設定するパラメータ設定部が設けられ、このパラメータ設定部からのパラメータにより、前記記憶装置に保存されている単位時間当たりの画像データ中から選択するフレーム数、及び/または前記選択されたフレーム数よりも少ない単位時間当たりのフレーム数が指定され、これらパラメータの指定に基づいて演算処理が行われる。
(3)前記パラメータ設定部が、前記演算部が演算する加算平均するフレーム数nよりも、前記演算部から出力される加算平均するフレームの間隔nが小さいパラメータを設定する。
(4)前記パラメータ設定部が、前記演算部が演算する加算平均するフレーム数nの画像データを、前記記憶装置に保存されている演算元のフレーム数の単位時間よりも短い時間を単位として出力するパラメータを設定する。
(5)前記演算部によって生成された減少フレーム数の画像データに基づいて動画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部によって作成された動画像を出力する表示装置を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の高速度放射線撮像装置のブロック図。
図2】第1実施形態における演算前後のフレームレートの関係を示す図。
図3】第2実施形態の高速度放射線撮像装置のブロック図。
図4】第2実施形態における演算前後のフレームレートの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
第1実施形態の高速度放射線撮像装置および撮像方法では、図1のブロック図に示すように、放射線源であるX線発生器1と、被検査物2と、X線発生器1のX線焦点11から放射されたX線ビーム12を受光して可視光に変換する可視光変換器3が、X線の光軸13に沿って所定の間隔を保って配置される。
【0017】
X線発生器1は、円錐状のX線ビーム12を発するもので、X線ビーム12は被検査物2を透過して、可視光変換器3に達する。可視光変換器3は被検査物2を透過したX線を検出して可視光データとして出力するものであり、例えば、X線像蛍光増倍管(イメージインテンシファイア)やMCP(マイクロチャンネルプレート)が使用される。
【0018】
可視光変換器3の出力側には、可視光変換器3に表示された画像データを撮影する高速度カメラ4が設けられる。高速度カメラ4は、絞りを備えたレンズ41とCCDなどの撮像素子42を備える。
【0019】
高速度カメラ4のレンズ41の絞り値及びフレームレートと、X線発生器1から放射するX線の強度との間には、次のような関係がある。すなわち、撮像に伴うS/N比を向上させるためには、X線の強度が高く、可視光変換器3からの発光強度が極力大きい方が良いが、絞り値を小さくすると撮像素子42に達する光量が増加し、撮像素子42の1画素ごとに発生する電子数が飽和する可能性がある。本実施形態では、X線の強度を高めると共に絞り値を小さくして撮像素子42に達する光量を増加させる一方で、撮像素子42の飽和を避けるため、フレームレート数を増加する。
【0020】
例えば、画像表示に必要なフレームレートFRを1000fpsとすると、本実施形態の高速度カメラ4は、FRの8倍の8000fpsのフレームレートFRで可視光変換器3からの可視光を撮影する。レンズ41の絞り値は、8倍としたフレームレートFRに見合うだけ小さな値とする。すなわち、従来では撮像素子42が飽和するおそれがないように、レンズの絞り値をF8で撮像していたとすると、それを3段分だけ開いてF2.8とする。その結果、高速度カメラ4の撮像素子42に到達する単位時間あたりの光量は、従来の絞り値F8の場合に比較して8倍になるが、フレームレートFRが8倍になっているので、撮像素子42が飽和することはない。
【0021】
高速度カメラ4には画像処理装置5が接続される。画像処理装置5は、高速度カメラ4によって撮影された撮像データをフレーム単位で保存する記憶装置51が設けられる。図2に示すように、記憶装置51内には、各単位時間内に、高速化したフレームレートFRの8フレーム分のデータが保存される。
【0022】
記憶装置51の出力側には、記憶装置51から単位時間ごとにフレームレートFRの8フレーム分のデータを読み出して加算平均する演算部52が設けられる。すなわち、演算部52は、FRより速いフレームレートFRで撮像したフレームをFR/FRずつ時間平均して、元のフレームレートFRの画像生成用のデータを作成する。演算部52の出力側には画像生成部53が設けられる。この画像生成部53は、演算部52によって得られた画像生成用データに基づいて元のフレームレートFRの動画像を生成する。画像生成部53の出力側には表示装置54が接続され、この表示装置54に画像生成部53で生成された動画像が表示される。
【0023】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態では、高速度カメラ4が撮像するフレームレートをFRの8倍である8000fpsに設定し、レンズの絞り値はそれに見合うだけ小さな値である。一般には、従来、レンズの絞り値をF8で撮像していたとすると、それを3段分だけ開いてF2.8とする。これで、高速度カメラ4の撮像素子42に到達する単位時間あたりの光量は8倍になるが、高速度カメラ4が撮像するフレームレートを8倍、すなわち、1フレームの時間を1/8としているので、高速度カメラ4から出力されるある画素の画素値
【数6】
の複数のフレーム間における平均値
【数7】
は、従来と変わらない。
【0024】
しかし、本実施形態では、従来はレンズ41の絞りを絞ることによって減少していた高速度カメラ4の撮像素子42に到達する光量を減少させることなく、8000fpsで得られた画像を8フレームごとに加算平均して1000fpsに相当する画像を得る。その結果、本実施形態によれば、レンズ41の絞りによる輝度の低下を緩和し、可視光変換器3が発する可視光の補足効率を向上してSN比の良い画像を得られる。
【0025】
[1-3.実施形態の効果]
本実施形態は、次のような効果を有する。
(1)絞り値の小さなレンズ41を有し、高いフレームレートFRで撮影可能な高速度カメラ4を使用すると共に、単位時間当たりに含まれる複数のフレームの画像データを加算平均化するという簡単な構成を採用しつつ、高速度カメラ4の撮像素子42の飽和のおそれがなく、SN比の良い画像を得ることができる。
【0026】
(2)高速度カメラは一般にあるフレームレートより低いフレームレートで撮像すると主に撮像素子42の暗電流に起因するノイズが増すという特性がある。従来、透視画像のSN比を向上させるためにできるだけ低いフレームレートでの撮影が行われていたが、その際、透視画像のノイズがかえって増すおそれがあった。本実施形態によると、高いフレームレートで撮像することができるので、そうしたノイズが増すおそれを回避することができる。
【0027】
(3)複数の画像データから、単位時間当たりの1フレーム分の画像データを演算する処理が加算平均という簡単な演算で良いので、フレームレートFRが8000fps以上の高速度カメラ4であっても、演算処理を迅速に行うことができ、円滑な動きの動画像を得ることができる。
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、高速度カメラ4によってフレームレートFRで撮像された画像データを、元のフレームレートFRの画像データに変換する際のパラメータを、ユーザが設定するものである。そのため、画像処理装置5にはパラメータ設定部55が設けられ、このパラメータ設定部55で設定されたパラメータが演算部52に入力される。第2実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様な構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0028】
第2実施形態においては、前記パラメータ設定部55において、演算部52がフレーム減少画像を生成するとき、加算平均するフレーム数nと加算平均するフレームの間隔nをそれぞれ任意の自然数のパラメータで設定する。例えば、加算平均するフレーム数nをFR/FRとし、加算平均するフレームの間隔nを加算平均するフレーム数nと等しくすると、第1実施形態と同じ処理である。一方、例えば、パラメータ設定部55の設定により、加算平均するフレーム数nをFR/FRとし、加算平均するフレームの間隔nをFR/FRより小さくすると元のフレームレートFRより高速に、いいかえると、元より短い時間間隔でSN比を向上させた画像を得ることができる。すなわち、パラメータ設定部55が、演算する減少フレーム数nよりも、演算部52から出力される各減少フレームの間隔nが小さいパラメータを設定することで、元のフレームレートの画像より高い時間分解能で観察・検査を行うことができる。
【0029】
また、第2実施形態のパラメータ設定部55において、演算部52が演算する加算平均するフレーム数nの画像データを、記憶装置51に保存されている演算元のフレーム数の単位時間よりも短い時間を単位として出力するパラメータを設定することもできる。すなわち、パラメータ設定部55により加算平均するフレーム数nをFR/FRより小さく設定してSN比を向上させた画像を表示装置54で確認し、もし、それが被検査物2の観察及び/または検査に足りると判断されるときは、予め想定していた元のフレームの単位時間より短い時間の画像、いいかえると、元より被検査物2の動きによるブレ量が少ない画像を得ることができ、加算平均するフレーム数nをFR/FRとした画像より被検査物2の位置及び輪郭を正確に観察・検査を行うことができる。
【0030】
パラメータ設定部55により加算平均するフレーム数nをFR/FRより小さく設定し、さらに、加算平均するフレームの間隔nを加算平均するフレーム数nと等しく設定すると、元より短い時間間隔でSN比を向上させた画像を得ることができ、被検査物2の位置及び輪郭を正確に、かつ、元のフレームレートFRの画像より高い時間分解能で観察・検査を行うことができる。
【0031】
[3.他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0032】
(1)前記各実施形態は、演算部52において、記憶装置51から単位時間ごとにフレームレートFRの8フレーム分のデータを読み出して加算平均したが、単に加算平均する以外に、特許第5809920号、特許第5903305号、特許第5982245号、特開2013-157808に記載された下記の様な画質改善処理を行うことも採用できる。
【0033】
(a) 動きのある被写体を撮影した画像に対してフレーム間の画素の対応関係を考慮して平均化する。
【0034】
(b) 注目フレーム内の各画素に関して時空間ブロック内の自己相関関数に基づいて重み係数を算出し、その重み係数に基づいて注目フレーム及び参照フレームを重み付き平均化する。
【0035】
(c) 注目被写体を含む1フレーム以上の画像と、注目被写体を含まない複数フレームの画像とを含む複数フレームの入力画像から、注目被写体を含まない複数フレームの画像のうち2フレーム以上を選択することによって、複数の平均化対象画像を得る。
【0036】
(d) 注目フレーム内の各画素に対して時空間ブロック内の自己相関関数に基づいて抽出係数を算出し、当該抽出係数に基づいて注目フレームから信号成分を効果的に抽出し、この信号成分を平均化する。
【0037】
(2)高速度カメラ4によってフレームレートFRで撮像された画像データを、元のフレームレートFRの画像データに変換する方法としては、単位時間当たりに含まれる全てのフレームの画像データを加算平均する以外に、単位時間当たりに含まれるフレーム中から適当な基準で複数のフレームを選択し、選択した複数のフレームの画像データを加算平均しても良い。また、複数のフレームの中から特定の一つを選択して、それを元のフレームレートFRのデータとすることもできる。これらの選択の基準としては、単位時間におけるフレームの位置、各フレームの全光量、コントラスト、光量の変化率などが使用できる。
【符号の説明】
【0038】
1…X線発生器
2…被検査物
3…可視光変換器
4…高速度カメラ
41…レンズ
42…撮像素子
5…画像処理装置
51…記憶装置
52…演算部
53…画像生成部
54…表示装置
55…パラメータ設定部
図1
図2
図3
図4