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特許7094165シランベースの移動試薬を含むポリマー材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】シランベースの移動試薬を含むポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20220624BHJP
   C08G 77/28 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20220624BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C07F7/18 Q CSP
A61K6/887
C08G77/28
C08L83/08
C08K9/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018128024
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2019014887
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】17180115.2
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(73)【特許権者】
【識別番号】509213990
【氏名又は名称】テクニッシュ ユニべルシタット ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト モスツナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ アンゲルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウルス カール フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】イーリス ランパルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン カテル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト リスカ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0172855(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0369075(US,A1)
【文献】特開2020-083891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156993(US,A1)
【文献】米国特許第06569917(US,B1)
【文献】特開2000-212018(JP,A)
【文献】特表2017-523161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
A61K 6/887
C08G 77/28
C08L 83/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化28】

によるラジカル重合性シランであって、一般式Iにおいて、
は、直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C-アルキル、フェニルまたはアルキル化フェニルであり、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または アルキレン基であるか、または直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族 ~C20-アルキレンであり、該脂肪族 ~C20-アルキレンは、SまたはO原子によって分断され得、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-Cl、-O-CH、-O-C、-CHまたは-Cであり、 、R 、およびR のうちの少なくとも1つは、-Cl、-O-CH 、または-O-C であり、
Xは、CHまたはOであり、
Yは、存在しないか、またはOもしくはNR’であり、ここでR’は、HまたはC1~5-アルキルであり、そして
Zは、存在しないか、またはO、NR”、-CO-O-、-CO-NR”-、-O-CO-O-、-O-CO-NR”-、もしくは-NR”-CO-NR”-であり、ここでR”は、HまたはC1~5-アルキルであり、
そして該およびRは、同時に存在しない可能性がなく、そしてRまたはRが存在しない場合、Zは存在しない、
ラジカル重合性シラン。
【請求項2】
は、-CH、-C、フェニルまたはトリルであり、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または アルキレン基であるか、または直鎖脂肪族 ~C 20 -アルキレンであり、該直鎖脂肪族 ~C 20 -アルキレンは、O原子によって分断され得、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
Yは、存在しないか、またはOであり、そして
Zは、存在しないか、またはO、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-O-もしくは-O-CO-NH-である、
請求項1に記載のラジカル重合性シラン。
【請求項3】
は、-CH、-C、フェニルまたはトリルであり、
は、直鎖脂肪族C~C-アルキレンであり、該直鎖脂肪族C~C-アルキレンは、O原子によって分断され得、
は、存在しないか、または直鎖脂肪族C~C-アルキレンであり、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
YはOであり、そして
Zは、存在しないか、または-CO-NH-もしくは-O-CO-NH-である、
請求項1に記載のラジカル重合性シラン。
【請求項4】
ポリシロキサン縮合物の生成のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、請求項1~3のうちの1つに記載の少なくとも1つのシランが、化学量論量または過剰の水と混合され、次いで該混合物が反応させられる、プロセス。
【請求項5】
前記シランが有機溶媒に溶解させられ、次いで、該溶液が、水または水と有機溶媒との混合物と混合され、次いで、該混合物が、0℃~140℃の範囲内の温度で反応させられ、その後、該溶媒および揮発性成分が除去される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記混合物がさらに、触媒と混合される請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
表面修飾フィラーの生成のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、フィラーが、有機溶媒中に分散させられ、該分散物が、請求項1~3のうちの1つに記載の少なくとも1つのシラン、および混合されて撹拌され、その後、該フィラーが該溶媒から分離され、該分散物が、該シランおよび水と、触媒とともにまたは触媒なしで混合される、プロセス。
【請求項8】
無機粒子状フィラー、または繊維状フィラー、フィラーとして使用される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
酸化物ベースの非晶質球状フィラーが、前記無機フィラーとして使用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ヒュームドシリカおよび/または沈降シリカが、前記非晶質球状フィラーとして使用される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記混合物が、0~100℃の範囲内の温度で1~20時間撹拌される、請求項7~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
以下の式:
【化29】

のうちの1つに従い、可変物が請求項1~3のいずれか1項に記載の意味を有する、ポリシロキサン縮合物。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1つのシランで表面修飾されたフィラーである、表面修飾フィラー。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシラン、請求項12に記載のポリシロキサン縮合物、および/または請求項13に記載の表面修飾フィラーを含有することを特徴とする、歯科材料。
【請求項15】
請求項14に記載の歯科材料であって、各場合に該材料の全質量に基づいて、
(a) 1~50重量%、少なくとも1つの式Iのシラン;請求項12に記載の少なくとも1つのポリシロキサン縮合物、および/または請求項13に記載の少なくとも1つの表面修飾フィラー、
(b) 0.01~5重量%、少なくとも1つのラジカル重合用開始剤、ならびに
(c) 5~80重量%、少なくとも1つのラジカル重合性モノマー
を含有する、歯科材料。
【請求項16】
(d) 1~80重量%フィラー
をさらに含有する、請求項15に記載の歯科材料。
【請求項17】
歯科材料の製造のための、請求項1~3のうちの1項に記載のシラン、請求項12に記載のポリシロキサン縮合物、または請求項13に記載の表面修飾フィラーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独でか、ポリシロキサン縮合物の形態でか、またはフィラーに結合した形態で、ラジカル重合におけるネットワーク構造の監視および制御のための連鎖移動剤として適切な、ラジカル重合性シランに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカルポリマーは、1つのラジカル重合性モノマーのラジカル重合(ホモポリマー)または複数のラジカル重合性モノマーのラジカル重合(コポリマー)によって形成される。重合するモノマーの官能性に依存して、線状(単官能性モノマーの場合)または架橋(二官能性もしくは多官能性モノマーの場合)ポリマーが得られる。ラジカル重合の大きな利点は、一方では、技術的に関連する多くのモノマー(とりわけ、エチレン、ビニルモノマー(例えば、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリルおよび酢酸ビニル)、ジエン、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド)をラジカル重合させ得ることであり、そして他方では、このラジカル重合が、バルクで(バルク重合)、溶液中で、懸濁液中で、または乳濁液中で行われ得ることである。重合を開始させるためにラジカル形成開始剤が添加され、これが、熱分解、光分解またはレドックス反応によって、ラジカルを形成する。
【0003】
ラジカル重合は、連鎖成長機構に従って進行する。連鎖成長機構において、開始剤から形成された重合開始一次ラジカルが、モノマーの二重結合に付加される。この方法で形成された開始剤ラジカルは、ポリマーラジカルの成長が結合または不均化により停止されるまで、多数のさらなるモノマー分子を迅速な成長反応で付加して、完成した巨大分子が形成される。
【0004】
連鎖移動剤(いわゆる調節剤)の添加により、形成されるポリマーの数平均モル質量が、標的化された様式で調節され得る(H.G.Elias,Makromolekuele[Macromolecules],第1巻,第6版,Wiley-VCH,Weinheim etc.199,299-352を参照のこと)。公知の連鎖移動剤としては、例えば、チイルラジカルを形成するメルカプタンが挙げられ、これは次いで、水素原子の移動によって、新しい重合鎖を開始する。
【0005】
ラジカル付加-開裂連鎖移動(AFCT)機構に従って反応する、二重結合含有試薬は、連鎖移動剤として特に有用であることが示されている。AFCT試薬として、硫黄化合物(例えば、アリルスルフィド、アリルスルホン、ジチオエステル、ジチオカルバメート、キサンテートおよびトリチオカーボネート)は、特に有効であり、そして十分に調査されている(Moadら,Polymer 49,1079-1131(2008))。さらに、可逆的AFCT試薬(RAFT試薬)(例えば、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカーボネートまたはキサンテート)は、制御されたラジカル重合から公知である(例えば、Moadら,上記引用文献中を参照のこと)。
【0006】
米国特許第2,694,699号は、α-スルホニルオキシアクリレートの単独重合および共重合を記載する。アルキルメルカプタンが、連鎖調節剤として添加され得る。
【0007】
米国特許第5,932,675号は、ラジカル重合による低分子量のポリマーの生成のためのプロセスを開示し、このプロセスにおいて、分子量は、連鎖移動試薬としての、例えばα-(t-ブタンチオメチル)スチレンの添加によって、制御される。
【0008】
欧州特許出願公開第2 965 741号は、連鎖移動試薬としてアリルスルホンを含有する、ラジカル重合性歯科材料を開示する。これらの材料は、低い重合収縮応力によって特徴付けられる。
【0009】
欧州特許出願公開第3 090 722号は、AFCT試薬としてビニルスルホン酸エステルを含有する、ラジカル重合性歯科材料に関する。これらの材料は、狭いガラス転移範囲を有し、そして均質なポリマーネットワークを形成する。
【0010】
公知のAFCT試薬は、原則として、低分子量化合物であり、これらは、不完全な重合の場合に、硬化した材料から漏出し得る。具体的には、これらの試薬は、硬化した歯科材料から唾液によって洗い流され得、このことは、毒物学的観点から望ましくない。
【0011】
本発明の目的は、ラジカル反応のための連鎖移動試薬として適切であり、重合後に硬化した材料から漏出せず、そして特に、唾液によって洗い流されない、物質を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第2,694,699号明細書
【文献】米国特許第5,932,675号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2 965 741号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 090 722号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】H.G.Elias,Makromolekuele[Macromolecules],第1巻,第6版,Wiley-VCH,Weinheim etc.199,299-352
【文献】Moadら,Polymer 49,1079-1131(2008)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
一般式I
【化1】
によるラジカル重合性シランであって、一般式Iにおいて、
は、直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C-アルキルラジカル、フェニルまたはアルキル化フェニルラジカルであり、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C20-アルキレンラジカルであり、該脂肪族C~C20-アルキレンラジカルは、SまたはO原子によって分断され得、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-Cl、-O-CH、-O-C、-CHまたは-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
Yは、存在しないか、またはOもしくはNR’であり、ここでR’は、HまたはC1~5-アルキルラジカルであり、そして
Zは、存在しないか、またはO、NR”、-CO-O-、-CO-NR”-、-O-CO-O-、-O-CO-NR”-、もしくは-NR”-CO-NR”-であり、ここでR”は、HまたはC1~5-アルキルラジカルであり、
そして該ラジカルRおよびRは、同時に存在しない可能性がなく、そしてRまたはRが存在しない場合、Zは存在しない、
ラジカル重合性シラン。
(項目2)
は、-CH、-C、フェニルまたはトリルであり、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または直鎖脂肪族C~C10-アルキレンラジカルであり、該直鎖脂肪族C~C10-アルキレンラジカルは、O原子によって分断され得、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
Yは、存在しないか、またはOであり、そして
Zは、存在しないか、またはO、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-O-もしくは-O-CO-NH-である、
上記項目に記載のラジカル重合性シラン。
(項目3)
は、-CH、-C、フェニルまたはトリルであり、
は、直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルであり、該直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルは、O原子によって分断され得、
は、存在しないか、または直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルであり、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
YはOであり、そして
Zは、存在しないか、または-CO-NH-もしくは-O-CO-NH-である、
上記項目のいずれかに記載のラジカル重合性シラン。
(項目4)
ポリシロキサン縮合物の生成のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのシランが、化学量論量または過剰の水と混合され、次いで該混合物が反応させられる、プロセス。
(項目5)
前記シランが有機溶媒に溶解させられ、次いで、該溶液が、水または水と有機溶媒との混合物と混合され、次いで、該混合物が、0℃~140℃の範囲内の温度で反応させられ、その後、該溶媒および揮発性成分が除去される、上記項目に記載のプロセス。
(項目6)
前記混合物がさらに、触媒と混合される、好ましくは、酸、例えば酢酸または塩酸と、あるいは塩基、例えばアンモニア、アミン、NaOH、メチルイミダゾール、またはフッ化アンモニウムと混合される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目7)
表面修飾フィラーの生成のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、フィラーが、有機溶媒中に分散させられ、該分散物が、上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのシラン、水、および好ましくは触媒と混合されて撹拌され、その後、該フィラーが該溶媒から分離される、プロセス。
(項目8)
無機粒子状フィラー、例えば、石英粉末、バリウムアルミニウムシリケートガラス粉末もしくはストロンチウムアルミニウムシリケートガラス粉末、X線不透過性フィラー、例えば三フッ化イッテルビウム、酸化物ベースの非晶質球状フィラー、例えば、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、ZrO、ZnO、TiO、またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOから作製される混合酸化物、粒子状酸化タンタル(V)、硫酸バリウム、またはSiOと酸化イッテルビウム(III)もしくは酸化タンタル(V)との混合酸化物、繊維状フィラー、例えば、ナノ繊維、ガラス繊維、ポリアミドまたは炭素繊維が、フィラーとして使用される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目9)
前記混合物が、0~100℃の範囲内の温度で1~20時間撹拌される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目10)
上記項目のいずれかに記載のプロセスに従って得られ得る、ポリシロキサン縮合物。
(項目11)
上記項目のいずれかに記載のプロセスに従って得られ得る、表面修飾フィラー。
(項目12)
上記項目のいずれかに記載のシラン、上記項目に記載のポリシロキサン縮合物、および/または上記項目に記載の表面修飾フィラーを含有することを特徴とする、歯科材料。
(項目13)
上記項目に記載の歯科材料であって、各場合に該材料の全質量に基づいて、
(a) 1~50重量%、好ましくは2~40重量%、そして特に好ましくは3~30重量%の、少なくとも1つの式Iのシラン;上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのポリシロキサン縮合物、および/または上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つの表面修飾フィラー、
(b) 0.01~5重量%、好ましくは0.1~5重量%、そして特に好ましくは1.0~3.0重量%の、少なくとも1つのラジカル重合用開始剤、ならびに
(c) 5~80重量%、好ましくは10~60重量%、そして特に好ましくは10~50重量%の、少なくとも1つのラジカル重合性モノマー
を含有する、歯科材料。
(項目14)
(d) 1~80重量%、好ましくは10~70重量%、または50~80重量%のフィラー
をさらに含有する、上記項目のいずれかに記載の歯科材料。
(項目15)
歯科材料の製造のための、上記項目のいずれかに記載のシラン、上記項目のいずれかに記載のポリシロキサン縮合物、または上記項目のいずれかに記載の表面修飾フィラーの使用。
摘要
一般式I
【化2】
によるラジカル重合性シラン(一般式Iにおいて、Rは、直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C-アルキルラジカル、フェニルまたはアルキル化フェニルラジカルであり、RおよびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C20-アルキレンラジカルであり、この脂肪族C~C20-アルキレンラジカルは、SまたはO原子によって分断され得、R、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-Cl、-O-CH、-O-C、-CHまたは-Cであり、Xは、CHまたはOであり、Yは、存在しないか、またはOもしくはNR’であり、ここでR’は、HまたはC1~5-アルキルラジカルであり、そしてZは、存在しないか、またはO、NR”、-CO-O-、-CO-NR”-、-O-CO-O-、-O-CO-NR”-、もしくは-NR”-CO-NR”-であり、ここでR”は、HまたはC1~5-アルキルラジカルであり、そしてラジカルRおよびRは、同時に存在しない可能性がなく、そしてRまたはRが存在しない場合、Zは存在しない)、このラジカル重合性シランをベースとする重縮合物、およびこのラジカル重合性シランで表面修飾されたフィラー。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記目的は、本発明によれば、一般式Iのシランによってか、これらのシランの加水分解縮合により得られ得るポリシロキサン縮合物によってか、または一般式Iのシランにより表面修飾されたフィラーによって、達成される:
【化3】
一般式Iにおいて、
は、直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C-アルキルラジカル、フェニルまたはアルキル化フェニルラジカルであり、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族C~C20-アルキレンラジカルであり、この脂肪族C~C20-アルキレンラジカルは、SまたはO原子によって分断され得、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-Cl、-O-CH、-O-C、-CHまたは-Cであり、
Xは、CHまたはOであり、
Yは、存在しないか、またはOもしくはNR’であり、ここでR’は、HまたはC1~5-アルキルラジカルであり、そして
Zは、存在しないか、またはO、NR”、-CO-O-、-CO-NR”-、-O-CO-O-、-O-CO-NR”-、もしくは-NR”-CO-NR”-であり、ここでR”は、HまたはC1~5-アルキルラジカルである。
【0016】
ラジカルRおよびRは、同時に存在しない可能性がなく、そしてRまたはRが存在しない場合、Zもまた、好ましくは存在しない。
【0017】
アルキル化フェニルラジカルとは、1~5個のアルキル基、好ましくは1個のアルキル基によって置換されている、フェニルラジカルを意味する。C1~10-アルキル基が好ましく、特にC1~5-アルキル基が好ましい。
【0018】
可変物が以下の意味:
は、-CH、-C、フェニルまたはトリル(HC-Ph-)、特にp-トリルである、
およびRは、各場合において互いに独立して、存在しないか、または直鎖脂肪族C~C10-アルキレンラジカルであり、この直鎖脂肪族C~C10-アルキレンラジカルは、O原子によって分断され得る、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cである、
Xは、CHまたはOである、
Yは存在しないか、またはOである、ならびに
Zは、存在しないか、またはO、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-O-もしくは-O-CO-NH-である、
を有する式Iの化合物が好ましい。
【0019】
可変物が以下の意味:
は、-CH、-C、フェニルまたはトリル(HC-Ph-)、特にp-トリルである、
は、直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルであり、この直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルは、O原子によって分断され得る、
は、存在しないか、または直鎖脂肪族C~C-アルキレンラジカルである、
、R、およびRは、各場合において互いに独立して、-O-CHまたは-O-Cである、
Xは、CHまたはOである、
YはOである、ならびに
Zは、存在しないか、または-CO-NH-もしくは-O-CO-NH-である、
を有する式Iのシランが特に好ましい。
【0020】
ラジカルR、RおよびRは、好ましくは、全ての場合において同じ意味を有する。
【0021】
式Iは、化学原子価の理論と矛盾しない化合物のみに及ぶ。ラジカルが1個またはそれより多くのO原子またはS原子によって分断されるとの表示は、これらの原子が、各場合に、そのラジカルの炭素鎖に挿入されていることを意味すると理解されるべきである。従って、これらの原子は、両側がC原子と隣り合っているのであり、末端ではあり得ない。Cラジカルは、分断され得ない。
【0022】
式Iの化合物は、単独で、ラジカル重合において連鎖移動剤として活性であるので、連鎖調節剤としてのその使用は、同様に、本発明の主題である。これらの化合物は、好ましくは、重縮合物の形態で、またはフィラーに結合した形態で、使用される。従って、式Iの化合物が以下で言及される場合、これらのポリシロキサン縮合物、およびフィラーに結合したシランもまた、意図されている。
【0023】
式Iのいくつかの重合移動活性Si化合物は公知であり、そして公知の合成方法に従って容易に生成され得る。従って、アリルスルホン基含有誘導体(X=CH)は、ヨウ素化合物の不飽和誘導体への付加(A)、およびその後の、HI開裂(B)によって、生成され得る。その後、本発明による式Iの重合移動活性Si化合物が、適切なシランとの反応(C)によって得られ得、ここで保護基技術が必要に応じて、初期段階または中間段階において応用される(Z’=OまたはNR):
【化4】
【0024】
具体例は:
【化5】
である。
【0025】
ビニルスルホンエステル基含有誘導体(X=O)は、ピルビン酸誘導体をハロゲン化スルホニルと、塩基性条件下で反応させることによって、生成され得る。例えば保護された(G)OH基-OG(Gは例えばテトラヒドロ-2H-ピラン:THPである)を含むピルビン酸エステルから開始して(A)、ビニルスルホンエステル合成後に、保護基が開裂され得(B)、そして適切なシランとのさらなる反応(C)によって、本発明による式Iの重合移動活性Si化合物が得られる(Z’=OまたはNR):
【化6】
【0026】
具体例は:
【化7】
である。
【0027】
本発明による式Iの重合移動活性Si化合物の好ましい例は:
【化8】
【化9】
【化10】
である。
【0028】
本発明による式Iの重合移動活性Si化合物から、ポリシロキサン縮合物が、ゾル-ゲル化学から公知の方法に従って生成され得る(モノグラフ:Sol-Gel-Science,C.J.Brinker,G.W.Scherer,Academic Press Inc.,Boston etc.1990を参照のこと)。このポリシロキサン縮合物は事実上、水への溶解度を有さない。これらの縮合物は、好ましくは、加水分解縮合によって生成される。
【0029】
この加水分解縮合において、1つまたはそれより多くの式Iのシラン、好ましくは1つの式Iのシランが、バルクでか、または好ましくは有機溶媒中の溶液として、化学量論量または過剰の水(好ましくは、シランの加水分解可能な基1モルあたり1~10molより多い水)と混合され、そして反応させられる。好ましい溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチルエステル、メチルイソブチルケトン、DMF、THF、ジオキサンまたはこれらの混合物である。溶液中で、このシランは、好ましくは、0.1~5倍体積の溶媒で希釈される。水の添加は、一度にかまたは数回に分けて行われ、この水は好ましくは、添加前に、有機溶媒で希釈される。先に名称を挙げた溶媒が同様に、この目的に対して好ましい。
【0030】
この加水分解縮合は、好ましくは、0~30℃で、または使用される溶媒の沸点(好ましくは、30~140℃)で行われる。このプロセスの好ましい実施形態によれば、この反応は、2工程で行われる。この目的で、成分は最初に、0~30℃で、好ましくは室温(20℃)で混合され、次いで、より高い温度に、好ましくは30~140℃に温められて、この反応を完了する。次いで、この反応混合物は、好ましくは1~120時間、好ましくは20~140℃で、さらに撹拌される。アルコキシシランの場合、メトキシシランの反応は、エトキシシランの反応より早く起こる。
【0031】
この反応を加速するために、適切な触媒(例えば、酸(例えば酢酸もしくは塩酸)または塩基(例えばアンモニア、アミン、NaOH、メチルイミダゾール、もしくはフッ化アンモニウム)など)が、有利には添加され得る。この触媒は、好ましくは、シランの量に基づいて0.001~3.0重量%の量で使用される。
【0032】
この反応の完了後、溶媒および揮発性成分が、好ましくは減圧中でのエバポレーションによって、除去される。溶媒および揮発性成分は、好ましくは、最初に、水流による減圧中で大部分がエバポレートされ、次いでその残渣が、油ポンプによる減圧中でさらに乾燥させられる。
【0033】
溶媒および揮発性成分の除去後に得られた有機官能性ポリシロキサンの縮合度は、29Si NMR分光法によって決定され得る。本発明によるシランの重合度および構造に依存して、液体または固体の重縮合物が得られる。ラジカルR~Rは、形成される縮合物の構造を決定する。従って、加水分解性ラジカル(-Cl、-O-CHおよび-O-C)と非加水分解性ラジカル(-CHおよび-C)との間は、はっきり区別されるべきである。ラジカルR~Rの全てが加水分解可能である場合、完全に変換されると、架橋した縮合物(ポリシロキサン)が得られ、これは、以下の式によって記載され得る:
【化11】
【0034】
2つのみのラジカル(例えばRおよびR)が加水分解可能である場合、以下の式:
【化12】
によって記載され得るポリシロキサンが得られる。
【0035】
これらは、線状縮合物である。
【0036】
1つのみのラジカル(例えばR)が加水分解可能である場合、以下の式:
【化13】
によるジシロキサンが得られる。
【0037】
ポリシロキサンの生成に加えて、少なくとも1つの加水分解可能な基R~Rを含む、本発明による式IのSi化合物はまた、フィラーの表面修飾に適切である。前記フィラーの修飾は、それ自体公知である方法で行われ得る(例えば、モノグラフ:Silane Coupling Agents,E.P.Pluedemann,第2版.Plenum Press,New York-London 1991を参照のこと)。
【0038】
フィラーとして、無機粒子状フィラー、例えば、石英および放射線不透過性のバリウムアルミニウムシリケートガラスもしくはストロンチウムアルミニウムシリケートガラスの粉末(好ましくは、0.01~15μmの平均粒子サイズを有するもの)、またはX線不透過性フィラー、例えば三フッ化イッテルビウムが、好ましくは適切である。好ましい無機粒子状フィラーはまた、酸化物ベースの非晶質球状ナノ粒子状フィラー(例えば、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、ZrO、ZnO、TiO、またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOから作製される混合酸化物であって、好ましくは10~1000nmの平均粒子サイズを有するもの)である。好ましいフィラーはさらに、粒子状、好ましくはナノ粒子状の、酸化タンタル(V)または硫酸バリウム、およびSiOと酸化イッテルビウム(III)または酸化タンタル(V)との混合酸化物である。さらに、繊維状フィラー(例えば、ナノ繊維、ガラス繊維、ポリアミドまたは炭素繊維)もまた使用され得る。特に好ましいフィラーは、バリウムアルミニウムシリケートガラスもしくはストロンチウムアルミニウムシリケートガラス、SiOとZrOとから作製される混合酸化物、フッ化イッテルビウムである。
【0039】
少なくとも1つの加水分解可能なラジカルR~Rを有する式Iのシランは、これらのシランラジカルを介して、酸化物のフィラー表面のOH基と反応し、従って、このフィラーと結合する。最適な表面修飾のために、このフィラーは、好ましくは、有機溶媒、特に好ましくは、エタノール、アセトン、イソプロパノール、メタノール、酢酸エチルエステル、THFまたはこれらの混合物中に分散させられ、1つまたはそれより多くの式Iのシラン、好ましくは1つの式Iのシラン、および水(好ましくは、使用されるシランの量に基づいて1~10mol)および好ましくはまた、触媒(好ましくは、使用されるシランの量に基づいて0.001~2mol%)と混合させられ、そして撹拌される。この反応は、好ましくは0℃~100℃、例えば0℃~室温(20℃)、または高温(30~100℃)の温度で行われる。縮合物の生成と同様に、この水は好ましくは、添加前に溶媒で希釈され、ここで上に名称を挙げた溶媒が、この目的に対して好ましい。好ましい触媒は、酸(例えば、酢酸または塩酸)、塩基(例えば、アンモニアまたはアミン)、あるいはフッ化アンモニウムである。この反応混合物は、この反応が完了するまで、好ましくは1~20時間、例えば一晩(およそ15時間)、撹拌される。その後、この表面修飾フィラーは分離され(好ましくは濾別され)、次いで好ましくは、純粋な溶媒で洗浄され、その後、一定重量になるまで乾燥させられる。表面修飾の程度は、その残渣から、点火または元素炭素分析で決定され得る。
【0040】
式Iのシラン、このシランから得られたポリシロキサン縮合物、およびこのシランで表面修飾されたフィラーは、重合移動活性なアリルスルホンまたはビニルスルホンエステル基を有するので、ラジカル重合性モノマーの重合において、特に、多官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレートの混合物、または多官能性(メタ)アクリレートとモノ(メタ)アクリレートとの混合物の重合において、ネットワーク構造の監視および制御のために、使用され得る。
【0041】
本発明によれば、式Iのシランが、フィラーに結合している場合でさえも、または縮合物として存在する場合でさえも、重合の効果的な制御を可能にすることが見出された。反応媒体中の分子を調節する流動性は、これらの分子をより大きい単位に結合させることによって大いに制限されるので、このことは驚くべきことである。
【0042】
式Iの化合物中の重合移動活性基は、より狭いガラス転移を有する(すなわち、ガラス転移がより狭い温度範囲で起こる)ポリマーをもたらす。さらに、より均質なポリマーネットワーク(すなわち、架橋点間のより狭いモル質量分布を有することにより特徴付けられるネットワーク)が得られる。このことは、鎖の張力が弛緩プロセスによってより良好に解放され得るという利点を有する。これに対応して、重合収縮応力もまた、この材料の硬化中に低下し得る。このことは、例えば充填材料としての歯科用途に対する大きな利点である。
【0043】
式Iのシランは、ラジカル重合性二重結合を有し、これらの結合を介して、前記シランはラジカル重合性モノマーと反応し得、その結果、前記シランは、硬化中にポリマーネットワーク内に結合する。さらに、縮合物および表面修飾フィラーは、事実上水に不溶性であり、その結果、例えば唾液によって、硬化した材料から洗い流されない。
【0044】
式Iのシランは、好ましくは、それらの縮合物の形態で、およびフィラーに結合した形態で使用される。しかし、前記シランはまた、ラジカル重合性材料の生成のためのそういうものとして使用され得る。この場合、シラン基は、結合してフィラーを提供することをインサイチュで可能にする。
【0045】
本発明によるシラン、縮合物およびフィラーは、例えば、技術用途のための、ポリマー、プラスチック、熱硬化性プラスチックおよび複合材料/コンポジットの製造に、医療デバイス(例えば外科手術用または眼科学用)の製造に、および特に、歯科材料の製造に、適切である。
【0046】
この目的で、式Iのシラン、および特に、このシランの縮合物またはこのシランで表面修飾されたフィラーは、異なる型のラジカル重合性モノマーと組み合わされ得る。特に好ましいものは、少なくとも1つの単官能性または多官能性(メタ)アクリレートをラジカル重合性モノマーとして含有する材料である。単官能性(メタ)アクリレートとは、1個のラジカル重合性基を有する化合物を意味し、ポリ官能性(メタ)アクリレートとは、2個またはそれより多く、好ましくは2~4個のラジカル重合性基を有する化合物を意味する。非常に特に好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1つのジメタクリレート、またはモノメタクリレートとジメタクリレートとの混合物を含有する。単官能性および多官能性(メタ)アクリレートをラジカル重合性モノマーとして含有する材料は、歯科材料として特に適しており、ここで口内で硬化する材料については、メタクリレートが好ましい。
【0047】
特に適切な単官能性または多官能性(メタ)アクリレートの例は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニル、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート(CMP-1E)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、Bis-G(M)A((メタ)アクリル酸とビスフェノールAジグリシジルエーテルとの付加生成物)、エトキシ化またはプロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、3個のエトキシ基を有するビスフェノールAジメタクリレートSR-348c(Sartomer)、または2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンなど)、UD(M)A((メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルと2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ならびにグリセロールジ(メタ)アクリレートおよびグリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート(DMA)または1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0048】
さらに、本発明による材料はまた、好ましくは、少なくとも1つのラジカル重合用開始剤を含有する。ラジカル光重合を開始させるために、ベンゾフェノン、ベンゾイン、およびこれらの誘導体、またはα-ジケトンまたはその誘導体(例えば、9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、ジアセチルまたは4,4’-ジクロロベンジル)が、好ましくは使用される。ショウノウキノン(CQ)および2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノンが、特に好ましく使用され、そして非常に特に好ましく使用されるものは、α-ジケトンを、還元剤としてのアミン(例えば、4-(ジメチルアミノ)-安息香酸エチルエステル(EDMAB)、メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチル-sym-キシリジンまたはトリエタノールアミンなど)と組み合わせたものである。Norrish I型光開始剤もまた適切であり、好ましくは、アシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシド、モノアシルトリアルキルゲルマニウム化合物またはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物(例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウムもしくはビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム(MBDEGe)など)である。異なる光開始剤の混合物もまた有利に使用され得、例えば、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウムを、ショウノウキノンおよび4-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルと組み合わせたものなどである。
【0049】
ラジカル重合を開始させるために、アゾ化合物(例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)またはアゾビス-(4-シアノ吉草酸))、あるいはペルオキシド(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert-ブチル、過安息香酸tert-ブチルまたは過酸化ジ-(tert-ブチル))が、特に適切である。ペルオキシドによって開始を加速するために、芳香族アミンとの組み合わせもまた使用され得る。好ましいレドックス系は、過酸化ベンゾイルと、アミン(例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルまたは構造的に関連する系)との組み合わせである。さらに、ペルオキシドと還元剤(例えば、アスコルビン酸、バルビツレートもしくはスルフィン酸など)とからなるレドックス系、またはヒドロペルオキシドと還元剤および触媒金属イオンとの組み合わせ(例えば、クメンヒドロペルオキシドと、チオ尿素誘導体と、銅(II)アセチルアセトネートとの混合物など)もまた、二重硬化に適切である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、本発明による材料は、有機粒子状フィラー、または好ましくは無機粒子状フィラー、特に好ましくは、1つまたはそれより多くの無機粒子状フィラーをさらに含有する。モノマーおよびフィラーを含有する混合物は、コンポジットと呼ばれる。
【0051】
酸化物をベースとする、0.010~15μmの粒子サイズを有するフィラー(例えば、SiO、ZrOおよびTiO、またはSiO、ZrO、ZnOおよび/またはTiOから作製される混合酸化物)、10~300nmの粒子サイズを有するナノ粒子状または微細フィラー(例えば、ヒュームドシリカまたは沈降シリカ)、ならびに0.01~15μm、好ましくは0.2~1.5μmの粒子サイズを有するガラス粉末(例えば、石英、ガラスセラミック、または例えばバリウムアルミニウムシリケートガラスもしくはストロンチウムアルミニウムシリケートガラスのX線不透過性ガラス粉末)、および0.2~5μmの粒子サイズを有するX線不透過性フィラー(例えば、三フッ化イッテルビウム、酸化タンタル(V)、硫酸バリウム、またはSiOと酸化イッテルビウム(III)もしくは酸化タンタル(V)との混合酸化物)は、特に適切である。ナノ繊維またはホイスカーなどの繊維状フィラーもまた使用され得る。
【0052】
他に記載されない限り、本明細書中の粒子サイズの全ては、重量平均粒子サイズである。
【0053】
これらのフィラーは、粒子サイズに従って、マクロフィラーとマイクロフィラーとに分けられる。マクロフィラーは、石英、X線不透過性ガラス、ボロシリケートまたはセラミックを粉砕することにより得られ、純粋に無機の性質であり、そして大部分が、破片の形状の粒子からなる。0.2~10μmの平均粒子サイズを有するマクロフィラーが好ましい。ヒュームドSiOまたは沈降シリカは、マイクロフィラーとして好ましく使用され、例えばSiO-ZrOなどの、金属アルコキシドの加水分解共縮合により得られ得る混合酸化物も同様である。マイクロフィラーは、好ましくは、およそ5~100nmの平均粒子サイズを有する。
【0054】
フィラー粒子と架橋した重合マトリックスとの間の結合を改善するために、SiOベースのフィラーは、(メタ)アクリレート官能基化シランで表面修飾され得る。このようなシランの一例は、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。非シリケートフィラー(例えば、ZrOまたはTiO)を表面修飾するために、官能基化酸性ホスフェート(例えば、リン酸二水素10-(メタ)アクリロイルオキシデシルなど)もまた使用され得る。
【0055】
必要に応じて、本発明により使用される組成物は、さらなる添加剤、とりわけ、安定剤、染料、抗微生物活性成分、フッ化物イオン放出添加剤、膨張剤、蛍光増白剤、可塑剤またはUV吸収剤を含有し得る。
【0056】
本発明による材料は、好ましくは、以下の成分:
(a) 1~50重量%、好ましくは2~40重量%、そして特に好ましくは3~30重量%の、少なくとも1つの式Iのシラン、好ましくは、1つまたはそれより多くの一般式(I)のシランの少なくとも1つの縮合物、および/あるいは少なくとも1つの式Iのシランで表面修飾された少なくとも1つのフィラー、
(b) 0.01~5重量%、好ましくは0.1~5重量%、そして特に好ましくは1.0~3.0重量%の、少なくとも1つのラジカル重合用開始剤、
(c) 5~80重量%、好ましくは10~60重量%、そして特に好ましくは10~50重量%の、少なくとも1つのラジカル重合性モノマー
を含有する。
【0057】
さらに、これらの材料は、好ましくは、
(d) 成分(a)とは異なる、1~80重量%の、少なくとも1つのフィラー
もまた含有する。
【0058】
充填レベルは、材料の所望の意図される使用に合わせて調整される。充填コンポジットは、好ましくは、50~80重量%のフィラー含有量および10~70重量%のコンポジットセメントを有する。フィラーに結合した式(I)のシランが成分(a)として使用される場合、これらの量は、(a)と(d)との総量に関連する。
【0059】
さらに、これらの材料は、有利には、
(e) 0~5重量%、好ましくは0~3重量%、そして特に好ましくは0.2~3重量%の添加剤(単数または複数)
を含有し得る。
【0060】
他に記載されない限り、本明細書中の量の全ては、材料の全質量に対してである。好ましい量の範囲は、各場合に別々に選択され得る。
【0061】
材料は、名称を挙げた成分からなるものが特に好ましい。さらに、個々の成分が各場合において、上で名称を挙げた、好ましい物質および特に好ましい物質から選択される材料が、好ましい。さらに、式Iのシランに加えて、このシランをベースとする縮合物、またはこのシランで表面修飾されたフィラーが、他の連鎖調節剤を含まない材料が、特に好ましい。
【0062】
本発明による材料は、特に歯科材料として適しており、特に、歯科用セメント、充填用コンポジットおよび前装材料として、ならびにプロテーゼ、義歯、インレー、アンレー、クラウンおよびブリッジの製造のための材料として、適している。これらは、硬化後に、式Iのシランが、一方ではポリマーネットワーク内にラジカル重合性基を介して結合し、そして他方ではシラン基を介してフィラーに結合するか、または縮合物内に統合されることを特徴とし、その結果、これらのシランは、硬化した材料から漏出せず、そして特に、唾液との接触により洗い流されない。さらに、これらの材料は、低下した重合収縮応力(PSS)および改善された衝撃強さを有する。
【0063】
これらの歯科材料は、損傷を受けた歯の修復のための歯科医による口内での用途、すなわち、治療用途、例えば、歯科用セメント、充填用コンポジットおよび前装材料としての治療用途に、主に適している。しかし、これらはまた、口外で、例えば、歯科用修復物(例えば、プロテーゼ、義歯、インレー、アンレー、クラウンおよびブリッジ)の製造または修理において、使用され得る。
【0064】
本発明のさらなる目的は、本発明による歯科材料の重合によって得られ得る、ホモポリマーおよびコポリマーである。この型のポリマーは、例えば、切断プロセスを使用して加工されて、プロテーゼまたは義歯を形成し得る。これらは好ましくは、円柱形または円板形状のブランクの形態で利用可能である。
【0065】
本発明による材料はさらに、例えばキャスティング、圧縮成形または3Dプリンティングによって製造され得る、形作られた物体の製造に適している。改善された衝撃強さは特に、これらの材料が、一般的な熱可塑性物質と同じレベルになることを可能にする。さらに、硬化のわずかな遅延は、3Dプリンティングに有利である。従って、本発明による材料は、ステレオリソグラフィーまたは3Dプリンティングによって、非常にうまく加工され得る。
【0066】
さらに、本発明は、ラジカル重合における連鎖移動剤としての、または特に(メタ)アクリレートのラジカル重合におけるネットワーク構造の監視もしくは制御のための、式Iのシラン、このシランの縮合物、およびこのシランで表面修飾されたフィラーの使用に関する。
【0067】
本発明は、実施例を参照しながら、以下により詳細に説明される。
【実施例
【0068】
実施例1:
シラン2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-[N-(3-トリエトキシシリル)-プロピルカルバモイルオキシエチル]エステルの合成
第1段階:ピルビン酸2-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-エチルエステル
【化14】
【0069】
ピルビン酸(17.61g,0.20mol)、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)エタノール(29.24g,0.20mol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.60g,5.0mmol)のジクロロメタン(200ml)中の溶液を、-5℃で少しずつ、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(45.39g,0.22mol)と混合した。この懸濁物を-5℃で2時間撹拌し、次いで周囲温度で撹拌した。20時間後、この反応混合物をn-ヘプタン(200ml)で希釈し、そしてシリカゲルで濾過した。その濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、そしてその粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n-ヘプタン/酢酸エチル2:1)により精製した。32.78g(0.152mol;76%)の黄色がかった液体が得られた。
【0070】
【化15】
【0071】
1016についての分析計算値:C、55.55;H、7.46。実測値:C、55.89;H、7.25。
【0072】
第2段階:2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-エチルエステル
【化16】
【0073】
ピルビン酸2-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-エチルエステル(32.58g,0.151mol)、p-トルエンスルホニルクロリド(28.72g,0.151mol)およびN,N-ジメチル-アミノピリジン(0.90g,7.5mmol)のジクロロメタン(250ml)中の溶液に、トリエチルアミン(27.45g,0.271mol)を滴下により添加した。この反応混合物を周囲温度で20時間撹拌し、水(3×100ml)および飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そしてロータリーエバポレーターで濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n-ヘプタン/酢酸エチル4:1)により精製した。24.26g(65.5mmol;43%)の黄色がかった油状物が得られた。
【0074】
【化17】
【0075】
1722Sについての分析計算値:C、55.12;H、5.99;S、8.66。実測値:C、55.73;H、6.06;S、8.39。
【0076】
第3段階:2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル
【化18】
【0077】
2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-エチルエステル(24.16g,65.2mmol)のメタノール(250ml)中の溶液を、Amberlyst(登録商標)15 hydrogen form(10.0g)と混合し、そして周囲温度で撹拌した。20時間後、この反応混合物を濾過し、そしてその濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、ジクロロメタン/酢酸エチル4:1)により精製した。10.57g(36.9mmol;57%)の黄色がかった油状物が得られた。
【0078】
【化19】
【0079】
1214Sについての分析計算値:C、50.34;H、4.93;S、11.20。実測値:C、50.37;H、4.97;S、11.09。
【0080】
第4段階:2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-[N-(3-トリエトキシシリル)-プロピルカルバモイルオキシエチル]エステル
【化20】
【0081】
2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル(10.47g,36.6mmol)およびジラウリン酸ジブチルスズ(0.13g,0.2mmol)のアセトン(20ml)中の溶液に、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル(9.04g,36.6mmol)を滴下により添加した。この反応溶液を周囲温度で撹拌し、そして24時間後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n-ヘプタン/酢酸エチル1:1)により精製した。11.56g(21.1mmol;58%)の黄色がかった油状物が得られた。
【0082】
【化21】
【0083】
2235NO10SSiについての分析計算値:C、49.51;H、6.61;N、2.62;S、6.01。実測値:C、50.44;H、6.72;N、2.95;S、5.80。
【0084】
実施例2:
2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-[N-(3-トリエトキシシリル)-プロピルカルバモイルオキシエチル]エステルの加水分解縮合
【化22】
【0085】
2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)-アクリル酸2-[N-(3-トリエトキシシリル)-プロピルカルバモイルオキシエチル]エステル(5.34g,10.0mmol)のエタノール(48.0g)中の溶液を、塩酸(0.5M,0.54g,55.8mmol)と混合し、そして室温で72時間撹拌した。その溶媒を除去し、そしてその残渣を60℃で高真空中で乾燥させた。4.09g(9.6mmol;96%)の、水に不溶性で高粘性の黄色がかった油状物が得られた。
【0086】
【化23】
【0087】
実施例3:
シラン3-(トリエトキシシリル)-プロピル-2-(トシルメチル)アクリレートの合成
【化24】
【0088】
窒素下で、ジイソプロピルエチルアミン(23.4ml,0.134mol)を、2-(トシルメチル)アクリル酸(29.36g,0.122mol)および(3-ヨードプロピル)トリエトキシシラン(40.60g,0.122mol)の乾燥アセトニトリル(200ml)中の溶液に滴下により添加した。この反応混合物を80℃で24時間撹拌し、次いで減圧中で濃縮した。ジエチルエーテル(200ml)の添加後、塩が沈殿し、これを濾別する。残りの濾液を減圧下で濃縮し、そしてその残渣をカラムクロマトグラフィー(溶出液=酢酸エチル/ヘプタン:1/1)により精製する。34.04g(収率63%)の無色油状物が得られる。
【0089】
【化25】
【0090】
実施例4:
アクリル酸3-(トリエトキシシリル)-プロピル-2-(トシルメチル)の加水分解縮合
【化26】
【0091】
アクリル酸3-(トリエトキシシリル)-プロピル-2-(トシルメチル)(8.91g,20.0mmol)のエタノール(110ml)中の溶液を、塩酸(0.55M,1.07g,60mmol)と混合し、そして周囲温度で72時間撹拌した。その溶媒を除去し、そしてその残渣を60℃で高真空中で乾燥させた。6.35g(収率95%)の、水に不溶性で高粘性の黄色がかった油状物が得られた。
【0092】
【化27】
実施例5:
実施例3からのシラン3-(トリエトキシシリル)-プロピル-2-(トシルメチル)アクリレートでのヒュームドシリカのシラン化
【0093】
10.0gのヒュームドシリカ(比表面積35~65m/g,Aerosil(登録商標)OX50,Evonik)の、100mlのシクロヘキサン中の懸濁物に、2.31g(5.20mmol)のアクリル酸3-(トリエトキシシリル)-プロピル-2-(トシルメチル)をゆっくりと滴下により添加し、次いで0.332g(5.61mmol)のn-プロピルアミンをゆっくりと滴下により添加した。この懸濁物を20℃で24時間撹拌し、次いで3000rpmで遠心分離した。シクロヘキサンをデカンテーションにより除去した後に、その沈殿物をシクロヘキサンで2回洗浄し、各場合に遠心分離した。得られた固体をRotavapor内で40℃/0.1mbarで48時間乾燥させ、次いでふるい分けした(90μm)。水に不溶性である7.08gの白色粉末が得られた(点火後の残渣:90.6%、ブランク値OX50:99.1%)。
【0094】
実施例6:
実施例2からの縮合物を用いるメタクリレート樹脂の生成および光重合
【0095】
ウレタンジメタクリレートRM-3(2molのメタクリル酸2-ヒドロキシエチルと1molの2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)とトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)との、重量比1:2の混合物を生成した。これに0.3重量%のIvocerin(登録商標)(ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム、Ivoclar Vivadent AG)および5.0重量%のAFCT試薬を光開始剤として添加した。実施例2からの縮合物をAFCT試薬として使用し、そして2-(トルエン-4-スルホニルオキシ)アクリル酸エチルエステルTSAEEを参照ビニルスルホンエステルとして使用した。対応する試験片を光重合樹脂から調製し、これらを歯科用光源(Spectramat(登録商標)、Ivoclar Vivadent AG)で3分間、2回照射し、これにより硬化させた。曲げ強さおよび曲げ弾性率の決定を、ISO規格ISO-4049(Dentistry - Polymer-based filling, restorative and luting materials)に従って、試験片を水中で24時間貯蔵した後に行った。AFCT試薬を縮合物として使用した場合に、機械特性の改善が示された(表1を参照のこと)。
【0096】
【表1】
比較例
【0097】
さらに、これらの試験片を乳鉢で粉砕し、そして粉末形態のポリマーを水性エタノール(50体積%のエタノール)中に分散させた。72時間の撹拌後、固体部分を分離して除去し、そして液体残留物についてHPLCにより試験した。AFCT試薬であるTSAEEの一部は、参照ポリマーCから洗い流され得るが、サンプルBの溶出液中にAFCT試薬は検出され得ないことが示された。
【0098】
実施例7:
実施例4からの縮合物を用いるメタクリレート樹脂の生成および光重合
【0099】
ウレタンジメタクリレートRM-3とTEGDMAとの、重量比1:2の混合物を生成した。これに0.3重量%のIvocerin(登録商標)および5重量%のAFCT試薬を光開始剤として添加した。実施例4からの縮合物をAFCT試薬として使用し、そして2-(トルエン-4-スルホニルメチル)アクリル酸エチルエステルTSMAEEを参照アリルスルホンとして使用した。対応する試験片を光重合樹脂から調製し、これらを歯科用光源(Spectramat(登録商標)、Ivoclar Vivadent AG)で3分間、2回照射し、これにより硬化させた。曲げ強さおよび曲げ弾性率の決定を、ISO規格ISO-4049(Dentistry - Polymer-based filling, restorative and luting materials)に従って、試験片を水中で24時間貯蔵した後に行った。
【0100】
【表2】
比較例
【0101】
ここでまた、AFCT試薬を縮合物として使用した場合に、機械特性の改善が示された(表2を参照のこと)。
【0102】
さらに、これらの試験片を乳鉢で粉砕し、そして粉末形態のポリマーを水性エタノール(50体積%のエタノール)中に分散させた。72時間の撹拌後、固体部分を分離して除去し、そして液体残留物についてHPLCにより試験した。AFCT試薬であるTSAEEの一部は、参照ポリマーFから洗い流され得るが、サンプルEの溶出液中にAFCT試薬は検出され得ないことが示された。