(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】弾性ボール拾集具
(51)【国際特許分類】
A63B 47/02 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A63B47/02 A
(21)【出願番号】P 2018199307
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518084534
【氏名又は名称】下原 千夏
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】下原 千夏
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3216387(JP,U)
【文献】実開昭49-13058(JP,U)
【文献】登録実用新案第3001277(JP,U)
【文献】実開昭52-158667(JP,U)
【文献】実開平2-126673(JP,U)
【文献】実開昭59-93466(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
A63B 69/00-69/40
A63B 71/00-71/16
A63B 49/00-51/16
A63B 55/00-60/64
A63B 61/00-65/12
A63B 67/00-67/22
A63G 1/00-33/00
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び該底部の外周縁部から上方に延びる側壁部を有し、内部に弾性ボールを収容可能な収容空間が設けられた上方に開口するボール収容部と、
該ボール収容部の開口部分を跨ぐように上記ボール収容部の開口周縁に取り付けられた把手部とを備え、
上記底部には、上記弾性ボールの外径よりも幅狭な間隔で並設された水平方向に直線状に延びる複数のロアフレームが設けられ、
拾集者が上記把手部を把持して上記底部を地面又はフロア上の上記弾性ボールに上方から押し付けて当該弾性ボールを弾性変形させながら隣り合う2つの上記ロアフレームの間を通過させるとともに、通過後の上記弾性ボールが元の形状に復元することにより上記弾性ボールを上記ボール収容部に拾集するよう構成された弾性ボール拾集具であって、
上記底部は、平面視で環状をなし、内方に上記各ロアフレームを有する第1環状フレームを備え、
上記側壁部は、上記ボール収容部の上方開口周縁に位置し、且つ、上記第1環状フレームの形状に対応する第2環状フレーム、及び、上記第1環状フレームと上記第2環状フレームとを橋絡する複数の橋絡フレームを有する金属製のサイドフレームと、当該サイドフレームの周方向に帯状に延びるとともに上端開口周縁が上記第2環状フレームに着脱可能に取り付けられる合成樹脂製の環状ネットとを備え、
上記サイドフレームにおける上記第1環状フレーム寄りで、且つ、当該第1環状フレームとの間の幅が上記弾性ボールの外径より狭くなる位置には、上記環状ネットの下端開口周縁が着脱可能に取り付けられる第3環状フレームが設けられていることを特徴とする弾性ボール拾集具。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性ボール拾集具において、
上記第3環状フレームは、上記第1環状フレームとの間の幅が上記弾性ボールの外径の半分より狭くなる位置に設けられていることを特徴とする弾性ボール拾集具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の弾性ボール拾集具において、
上記第1環状フレーム及び上記第2環状フレームは、平面視で円形状をなしていることを特徴とする弾性ボール拾集具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の弾性ボール拾集具において、
上記把手部は、上記ボール収容部の開口周縁から上方に真っすぐに延びる一対の支柱フレームと、該両支柱フレームの上端を橋絡する水平方向に延びる把持フレームとを備え、
該把持フレームは、上記各ロアフレームに対して直交する方向に延びていることを特徴とする弾性ボール拾集具。
【請求項5】
請求項4に記載の弾性ボール拾集具において、
上記各橋絡フレームは、上記サイドフレームの周方向に等間隔に配置されるとともに、上記第1、第2及び第3環状フレームより外側に位置しており、
上記各支柱フレームは、上記サイドフレームの中心線を境に対称に位置する一対の上記橋絡フレームにそれぞれ一体に連結していることを特徴とする弾性ボール拾集具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面やフロアに散乱するテニスボールやビーチボール等の弾性ボールを迅速的に、且つ、効率的に拾集可能な弾性ボール拾集具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、テニス等の弾性を有するボールを用いるスポーツの練習時には、地面やフロアにおいて広い範囲に亘って多数のボールが散乱した状態になる場合がある。このような場合、各ボールを散乱したままの状態にしておくと、練習の邪魔になるばかりか練習者が踏み付けて怪我をするおそれがあるので、速やかに拾集して練習の妨げにならないようにする必要がある。
【0003】
地面やフロアに散乱する各ボールの拾集方法として、練習者等の拾集者が1つずつ手で拾い上げながらボール保管用の籠等に入れるのが一般的であるが、拾集作業が煩わしいばかりか、前屈みになる姿勢が繰り返されることによって拾集者に腰痛等が引き起こされてしまうおそれがある。
【0004】
これを回避するために、地面やフロアに散乱する各ボールを拾集可能な拾集具を用いることにより、拾集作業を容易にするだけでなく、拾集作業時において地面やフロアに手を伸ばすといった拾集者に負荷がかかる姿勢を少なくすることが考えられる。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている弾性ボール拾集具は、複数の金属フレームを組み合わせて形成されたものであり、底部及び該底部の外周縁部から上方に延びる側壁部を有する上方に開口するボール収容部を備え、該ボール収容部の内部には、多数の弾性ボールを収容可能な収容空間が設けられている。底部には、弾性ボールの外径よりも幅狭な間隔で並設された水平方向に延びる複数のロアフレームが設けられている。一方、側壁部は、金属フレームが格子状に延びるサイドフレームで構成されている。そして、底部を地面又はフロア上のボールに上方から押し付けて当該ボールを弾性変形させながら隣り合う2つのロアフレームの間を通過させるとともに、通過後のボールが元の形状に復元することによってボールをボール収容部に拾集するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の拾集具は、全て金属材で形成されており、重量が重く操作がし難くいので、拾集者が拾集作業時において疲れ易いという問題がある。また、サイドフレームが金属材で形成されているので、もし仮にサイドフレームが破損等すると、その補修作業に多くの時間が費やされてしまう。
【0008】
これらの問題に対応するために、拾集具の側壁部を、各金属フレームの間隔が広いサイドフレームと当該サイドフレームの全領域を覆う合成樹脂製の環状ネットとで構成し、環状ネットをサイドフレームに対して着脱可能にすることが考えられる。
【0009】
しかし、サイドフレームの全領域を合成樹脂製の環状ネットで着脱可能に取り付けた構成にすると、拾集作業を繰り返した際、環状ネットにおける底部への取付部分が繰り返し地面やフロアに接触することによって損傷してしまい、環状ネットが不意に拾集具から外れてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量で作業性に優れ、且つ、補修がし易く、しかも、壊れ難い弾性ボール拾集具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、金属製のサイドフレームと合成樹脂製の環状ネットとで側壁部を構成するとともに、環状ネットをサイドフレームに着脱可能とし、且つ、拾集作業の際、環状ネットの底部への取付部分が地面やフロアに接触しないよう工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0012】
具体的には、底部及び該底部の外周縁部から上方に延びる側壁部を有し、内部に弾性ボールを収容可能な収容空間が設けられた上方に開口するボール収容部と、該ボール収容部の開口部分を跨ぐように上記ボール収容部の開口周縁に取り付けられた把手部とを備え、上記底部には、上記弾性ボールの外径よりも幅狭な間隔で並設された水平方向に直線状に延びる複数のロアフレームが設けられ、拾集者が上記把手部を把持して上記底部を地面又はフロア上の上記弾性ボールに上方から押し付けて当該弾性ボールを弾性変形させながら隣り合う2つの上記ロアフレームの間を通過させるとともに、通過後の上記弾性ボールが元の形状に復元することにより上記弾性ボールを上記ボール収容部に拾集するよう構成された弾性ボール拾集具において、次のような解決手段を講じた。
【0013】
すなわち、第1の発明では、上記底部は、平面視で環状をなし、内方に上記各ロアフレームを有する第1環状フレームを備え、上記側壁部は、上記ボール収容部の上方開口周縁に位置し、且つ、上記第1環状フレームの形状に対応する第2環状フレーム、及び、上記第1環状フレームと上記第2環状フレームとを橋絡する複数の橋絡フレームを有する金属製のサイドフレームと、当該サイドフレームの周方向に帯状に延びるとともに上端開口周縁が上記第2環状フレームに着脱可能に取り付けられる合成樹脂製の環状ネットとを備え、上記サイドフレームにおける上記第1環状フレーム寄りで、且つ、当該第1環状フレームとの間の幅が上記弾性ボールの外径より狭くなる位置には、上記環状ネットの下端開口周縁が着脱可能に取り付けられる第3環状フレームが設けられていることを特徴とする。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、上記第3環状フレームは、上記第1環状フレームとの間の幅が上記弾性ボールの外径の半分より狭くなる位置に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記第1環状フレーム及び上記第2環状フレームは、平面視で円形状をなしていることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記把手部は、上記ボール収容部の開口周縁から上方に真っすぐに延びる一対の支柱フレームと、該両支柱フレームの上端を橋絡する水平方向に延びる把持フレームとを備え、該把持フレームは、上記各ロアフレームに対して直交する方向に延びていることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、第4の発明において、上記各橋絡フレームは、上記サイドフレームの周方向に等間隔に配置されるとともに、上記第1、第2及び第3環状フレームより外側に位置しており、上記各支柱フレームは、上記サイドフレームの中心線を境に対称に位置する一対の上記橋絡フレームにそれぞれ一体に連結していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、ボール収容部の側壁部が金属製のサイドフレームと合成樹脂製の環状ネットとで構成されるので、特許文献1の如き金属材のみで形成されてなるサイドフレームで構成された側壁部に比べて拾集具を所望の剛性に維持した状態で軽量にすることができる。したがって、拾集者は拾集具の操作が行い易くなり、作業性を向上させることができる。また、環状ネットをサイドフレームから取り外すことができるので、もし仮に環状ネットが破損等しても、交換による補修が可能になる。したがって、補修作業に多くの時間が費やされてしまうといったことを防ぐことができる。さらに、環状ネットのボール収容部への取付部分が底部の外周縁部に対応する第1環状フレームではなく、第1環状フレームの上方に位置する第3環状フレームになっているので、拾集作業を繰り返しても、環状ネットの下端縁部が地面やフロアに接触することがない。したがって、環状ネットが損傷して不意に拾集具から外れてしまうといったことを防ぐことができる。
【0019】
第2の発明では、拾集具を傾けた際にボール収容部の収容空間に位置する各弾性ボールが第1環状フレームと第3環状フレームとの間の隙間に嵌まり難くなる。したがって、拾集具に拾集した各弾性ボールをボール収容部の開口部分から取り出す際に拾集具を傾けると、各弾性ボールが第1環状フレームと第3環状フレームとの間に挟まったままの状態にならずにスムーズに転がってボール収容部の開口部分から取り出すことができる。
【0020】
第3の発明では、ボール収容部が平面視で矩形状をなす構造を製造する場合に比べて金属材の加工が容易になるので、製造コストを低減させることができる。
【0021】
第4の発明では、弾性ボールの拾集作業を行う際、拾集者が把持フレームを把持して弾性ボールに対して拾集具を上方から押し付けると、拾集者の加える力が弾性ボールを変形させる2つのロアフレームにバランス良く伝わるようになる。したがって、各弾性ボールをボール収容部の収容空間に拾集する際に拾集者に加わる負荷を極力少なくすることができる。
【0022】
第5の発明では、環状ネットを交換する際、環状ネットが第1、第2及び第3環状フレームに引っ掛からずに当該第1、第2及び第3環状フレームの外側に位置する各支柱フレーム及び各橋絡フレームに案内されながらスムーズに移動してサイドフレームから離れるか、或いは、取り付けられるようになる。したがって、環状ネットの交換作業が簡単になり、環状ネットの交換時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態における弾性ボール拾集具の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における弾性ボール拾集具の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態における弾性ボール拾集具の底部を上方から見た図である。
【
図6】
図3のVI-VI線における断面図であり、本発明の実施形態に係る弾性ボール拾集具にて弾性ボールを拾集し始めた状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図6の後、弾性ボール拾集具にて弾性ボールを拾集している途中の状態を示す部分断面図である。
【
図8】
図7の後、弾性ボール拾集具にて弾性ボールを拾集し終えた直後の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る弾性ボール拾集具1を示す。該拾集具1は、地面やフロアに散乱する多数の硬式テニスボール2(弾性ボール)を拾い集めるためのものであり、上方に開口する籠形状のボール収容部3を備えている。
【0026】
該ボール収容部3は、平面視で円形状をなす底部4と、該底部4の外周縁部から上方に真っ直ぐに延びる円筒状をなす側壁部5とを備え、底部4と側壁部5とに囲われてなる収容空間S1に多数のテニスボール2を収容可能になっている。
【0027】
底部4は、
図3に示すように、平面視で円環形状をなす金属線材からなる第1環状フレーム4aと、該第1環状フレーム4aの内方に配設され、水平方向に並設された3つの直線状の金属線材からなるロアフレーム4bとを備え、各ロアフレーム4bの両端部分が第1環状フレーム4aにそれぞれ溶接にて固定されている。
【0028】
各ロアフレーム4bは、断面円形状をなし、テニスボール2の外径dよりも僅かに幅狭な間隔hで互いに等間隔に配設されている。尚、3つのロアフレーム4bのうちの側方に位置する各ロアフレーム4bと第1環状フレーム4aとの間の寸法は、中央の広い領域の箇所が間隔hになっている。
【0029】
側壁部5は、
図1に示すように、金属製のサイドフレーム6と、合成樹脂製の環状ネット7とを備えている。
【0030】
サイドフレーム6は、
図2に示すように、第1環状フレーム4aの形状に対応する金属線材からなる第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bと、上下方向に直線状に延びる複数の橋絡フレーム6cとを備えている。
【0031】
第2環状フレーム6aは、ボール収容部3の開口周縁に位置しており、当該ボール収容部3の開口部分を構成している。
【0032】
第3環状フレーム6bは、サイドフレーム6における第1環状フレーム4a寄りの位置において当該第1環状フレーム4aに平行となるように配設されている。
【0033】
第3環状フレーム6bは、第1環状フレーム4aとの間の幅がテニスボール2の外径dより狭くなる位置となるように配設されている。本実施形態では、第3環状フレーム6bは、第1環状フレーム4aとの間の幅がテニスボール2の外径dの半分より狭くなる位置に配設されている。
【0034】
橋絡フレーム6cは、ボール収容部3の周方向に等間隔に8つ設けられ、第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bを橋絡している。
【0035】
各橋絡フレーム6cは、第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bの外側方に位置しており、溶接によって第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bにそれぞれ固定されている。
【0036】
ボール収容部3の上方には、拾集者が把持可能な正面視で略U字状をなす把手部8が設けられ、テニスボール2を拾集する拾集者は、把手部8を把持して拾集作業を行うようになっている。
【0037】
把手部8は、ボール収容部3の開口周縁から上方に真っすぐに延びる一対の支柱フレーム8aと、該両支柱フレーム8aの上部を橋絡する水平方向に延びる把持フレーム8bとを備え、該把持フレーム8bは、各ロアフレーム4bに対して直交する方向に延びている。
【0038】
把持フレーム8bは、各支柱フレーム8aの上端を繋ぐ直線状の水平フレーム8cと、中央部分が両端部分よりも上方に位置するように緩やかに湾曲して両端が各支柱フレーム8aの上端寄りの位置に繋がる円弧フレーム8dとを備え、水平フレーム8cの中央部分と円弧フレーム8dの中央部分とを跨ぐように商品名が表示された表示プレート8eが取り付けられている。
【0039】
該表示プレート8eは、水平フレーム8cと円弧フレーム8dとを接続しているので、把持フレーム8bにおける補強部材の役割をもなしており、拾集者が把持フレーム8bを把持した際、水平フレーム8cと円弧フレーム8dとの間の間隔を当初の設定状態に維持することができる。
【0040】
また、円弧フレーム8dは、中央部分が両端部分よりも上側に位置するように緩やかに湾曲しているので、拾集者が把持フレーム8bを把持した際に拾集者の指を円弧フレーム8dに添わせやすい。したがって、拾集者は、把持フレーム8bが持ち易くなり、把持状態を維持し易くなっている。
【0041】
さらに、各支柱フレーム8aの長さは、拾集者が把持フレーム8bを起立姿勢で把持できる高さとなるように設定されている。尚、拾集者が起立姿勢で把持できる高さとは、拾集者が深く膝や腰を曲げずに立った姿勢で把持できる高さをいうものとし、軽く膝を曲げた姿勢や、少し身体を傾けた姿勢で把持できる高さを含むものとする。特に、肘を伸ばした状態で持ち運ぶ方が拾集者に負荷が掛からないので、肘を伸ばした直立状態で把持フレーム8bを把持すると底部4が地面又はフロアから少し浮く状態となるような把手部8の寸法であることが好ましい。すなわち、拾集具1を地面又はフロアに載置した状態にした際、僅かに身体を傾けた状態で把持できる高さに把持フレーム8bが設定されていることが好ましい。
【0042】
各支柱フレーム8aは、サイドフレーム6の中心線を境に対称に位置する一対の橋絡フレーム6cにそれぞれ一体に連結している。つまり、把手部8は、ボール収容部3の開口部分を跨ぐようにボール収容部3の開口周縁に取り付けられている。
【0043】
尚、本発明の実施形態では、水平フレーム8c、該水平フレーム8cに繋がる各支柱フレーム8a、及び、該各支柱フレーム8aに繋がる各橋絡フレーム6cは、一本の金属線材を略U字状に折り曲げて形成された一体加工物である。
【0044】
環状ネット7は、例えば、ポリエチレン材により形成され、メッシュ部分により柔軟性を有している。
【0045】
環状ネット7は、
図1及び
図2に示すように、サイドフレーム6の周方向に帯状に延びる環状をなし、当該サイドフレーム6の側面を覆うように当該サイドフレーム6に着脱可能になっている。
【0046】
環状ネット7の内径は、当該環状ネット7をサイドフレーム6に取り付けた際に各橋絡フレーム6cが環状ネット7の内周面に接触して環状ネット7がしっかりと張った状態となる値に設定されている。
【0047】
環状ネット7をサイドフレーム6に取り付けた際、環状ネット7の上端開口周縁7aは、第2環状フレーム6aに対応する位置になり、
図4に示すように、樹脂製又は金属製の複数の結束バンド9を用いて第2環状フレーム6aに着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0048】
一方、環状ネット7をサイドフレーム6に取り付けた際、環状ネット7の下端開口周縁7bは、第3環状フレーム6bに対応する位置になり、
図5に示すように、樹脂製又は金属製の複数の結束バンド9を用いて第3環状フレーム6bに着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0049】
環状ネット7の上端開口周縁7a及び下端開口周縁7bは、環状ネット7におけるその他のメッシュ部分を構成する線状部分と比較して太く形成されているので、環状ネット7の上端開口周縁7aと下端開口周縁7bとを各結束バンド9にて第2環状フレーム6aと第3環状フレーム6bとにそれぞれ取り付けた際に環状ネット7のサイドフレーム6に対する固定状態が安定するようになっている。
【0050】
隣り合う各橋絡フレーム6cの間隔は、硬式テニスボール2の外径dである約6.5cmよりも広い約8cmに設定される一方、環状ネット7におけるメッシュ部分を構成する隣り合う各線状部分の間隔が、テニスボール2の外径dである約6.5cmよりも狭い約2cmに設定されているので、ボール収容部3の収容空間S1に位置するテニスボール2がボール収容部3の側壁部5の外側に飛び出てしまうことはなく、金属部分である橋絡フレーム6cを少なくして軽量な構造にしながら確実にボール収容部3に各テニスボール2を収容できる構造になっている。
【0051】
そして、拾集者が把手部8を把持して拾集具1の底部4を地面又はフロア上のテニスボール2に上方から押し付けると、
図6乃至
図8に示すように、テニスボール2を弾性変形させながら隣り合う2つのロアフレーム4bの間を通過させるとともに、通過後のテニスボール2が元の形状に復元することによりテニスボール2をボール収容部3に拾集するようになっている。
【0052】
次に、拾集具1による拾集作業について詳述する。尚、ここでは、
図6乃至
図8に示すように、地面又はフロアに並ぶ2つのテニスボール2を同時に拾集する場合について説明する。
【0053】
まず、拾集者は、把持フレーム8bを把持して地面又はフロアに散乱する2つのテニスボール2の上方まで拾集具1を移動させる。
【0054】
次に、拾集者は、拾集具1を下ろして2つのテニスボール2にボール収容部3における底部4を押し付ける。すると、各ロアフレーム4bの間がテニスボール2の外径dよりも幅狭になっているので、
図6に示すように、各テニスボール2が弾性変形しながら隣り合う2つのロアフレーム4bの間に進入し始める。このとき、把手部8における把持フレーム8bが底部4における各ロアフレーム4bに対して直交する方向に延びているので、拾集者の加える力がテニスボール2を変形させる2つのロアフレーム4bにバランス良く伝わる。したがって、地面又はフロアに散乱する各テニスボール2をボール収容部3の収容空間S1に拾集する際に拾集者に加わる負荷を極力少なくすることができる。
【0055】
その後、拾集者は、拾集具1に対して下方に向く力をさらに加える。すると、各テニスボール2は、
図7及び
図8に示すように、弾性変形しながら隣り合う2つのロアフレーム4bの間を通過し、その後、復元して元の形状に戻る。各テニスボール2の外径dは、各ロアフレーム4bの間隔hよりも大きいので、底部4から落下せずにボール収容部3の収容空間S1に収容された状態で維持される。このように、拾集者は、拾集具1を用いて地面やフロアに散乱する各テニスボール2を簡単に拾い集めることができる。
【0056】
次に、拾集具1に拾集した各テニスボール2を他のボール保管用の籠等に移し替える場合について詳述する。
【0057】
拾集者は、ボール保管用の籠等の上方に拾集具1を持ち上げるとともに、当該拾集具1をボール収容部3の開口部分が斜め下方に向くように傾ける。すると、第2環状フレーム6aは円形状をなしているので、収容空間S1に収容されている各テニスボール2は、ボール収容部3の開口部分において水平方向中央に寄るように移動しながら飛び出す。その際、環状ネット7のメッシュ部分における隣り合う各線状部分の間隔がテニスボール2の外径dよりも小さいので、各テニスボール2は、環状ネット7にスムーズに案内されながらボール収容部3の開口部分まで移動する。また、第3環状フレーム6bは、第1環状フレーム4aとの間の幅がテニスボール2の外径dの半分より狭くなる位置に設けられているので、各テニスボール2が第1環状フレーム4aと第3環状フレーム6bとの間の隙間wに嵌まり難くい。したがって、各テニスボール2が第1環状フレーム4aと第3環状フレーム6bとの間に挟まったままの状態にならずにスムーズに転がってボール収容部3の開口部分から取り出すことができる。
【0058】
次に、拾集具1における環状ネット7の交換作業について詳述する。
【0059】
まず、拾集者は、拾集具1を地面又はフロアに載置するとともに、各結束バンド9を環状ネット7の上端開口周縁7a及び下端開口周縁7bから取り外す。
【0060】
次に、環状ネット7を上方に引き上げる。すると、環状ネット7は、各支柱フレーム8aに案内されながら上方に移動し、その後、把手部8から外れる。
【0061】
次いで、新しい環状ネット7を用意し、当該環状ネット7の内方に把手部8が入り込むように環状ネット7を下ろす。すると、環状ネット7が各支柱フレーム8a及び各橋絡フレーム6cに案内されながら下方に移動し、その後、各橋絡フレーム6cに案内されながらサイドフレーム6を覆う位置まで移動する。
【0062】
しかる後、環状ネット7の上端開口周縁7aを結束バンド9にて第2環状フレーム6aに固定するとともに、環状ネット7の下端開口周縁7bを結束バンド9にて第3環状フレーム6bに固定して環状ネット7の交換作業を終了する。
【0063】
このように、環状ネット7を交換する際、各支柱フレーム8a及び各橋絡フレーム6cが、第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bより外側の位置で、且つ、上下方向に真っすぐに延びているので、環状ネット7は第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bに引っ掛からずに各支柱フレーム8a及び各橋絡フレーム6cに案内されながらスムーズに移動してサイドフレーム6から離れるか、或いは、サイドフレーム6に取り付けられるようになる。したがって、環状ネット7の交換作業が簡単になり、環状ネット7の交換時の作業性を向上させることができる。
【0064】
尚、本実施形態では、環状ネット7をサイドフレーム6に対して上方に引き上げるとともに上方からサイドフレーム6に対して取り付けるようにしたが、サイドフレーム6に対して下方に引き下げるとともに下方からサイドフレーム6に対して取り付けるようにしてもよい。
【0065】
以上より、本発明の実施形態によると、ボール収容部3の側壁部5が金属製のサイドフレーム6と合成樹脂製の環状ネット7とで構成されるので、特許文献1の如き金属材のみで形成されてなるサイドフレームで構成された側壁部に比べて拾集具1を所望の剛性に維持した状態で軽量にすることができる。したがって、拾集者は拾集具1の操作が行い易くなり、作業性を向上させることができる。
【0066】
また、環状ネット7をサイドフレーム6から取り外すことができるので、もし仮に環状ネット7が破損等しても、交換による補修が可能になる。したがって、補修作業に多くの時間が費やされてしまうといったことを防ぐことができる。
【0067】
さらに、環状ネット7のボール収容部3への取付部分が底部4の外周縁部に対応する第1環状フレーム4aではなく、第1環状フレーム4aの上方に位置する第3環状フレーム6bになっているので、拾集作業を繰り返しても、環状ネット7の下端縁部が地面やフロアに接触することがない。したがって、環状ネット7が損傷して不意に拾集具1から外れてしまうといったことを防ぐことができる。
【0068】
また、第1環状フレーム4a及び第2環状フレーム6aは、平面視で円形状をなしているので、ボール収容部3が平面視で矩形状をなす構造を製造する場合に比べて金属材の加工が容易になり、製造コストを低減させることができる。
【0069】
また、各ロアフレーム4bは、断面円形状をなしているので、隣り合うロアフレーム4bの間をテニスボール2がスムーズに通過するとともに、テニスボール2の外周面が傷付き難い。
【0070】
尚、本発明の実施形態では、複数の結束バンド9を用いて環状ネット7をサイドフレーム6に取り付けたり、或いは、取り外したりしているが、これに限らず、例えば、環状ネット7に係合部を設ける一方、サイドフレーム6に係合部が係合する被係合部を設けることにより、環状ネット7をサイドフレーム6に着脱するような構成にしてもよい。
【0071】
また、本発明の実施形態では、底部4においてロアフレーム4bを3つ設けているが、2つでもよく、4つ以上設けてもよい。
【0072】
また、本発明の実施形態では、環状ネット7をポリエチレン材で形成しているが、ポリエステル材、ポリプロピレン材、ビニロン材、アクリル材等で形成してもよい。
【0073】
また、本発明の実施形態では、支柱フレーム8aが2本であるが、3本以上設けられた構造であってもよい。
【0074】
また、把持フレーム8bの形状は、本発明の実施形態に限られたものでなくてもよく、拾集者が持ち易く、力を加え易い形状であればよい。
【0075】
また、本発明の実施形態では、第1環状フレーム4a、第2環状フレーム6a及び第3環状フレーム6bを平面視で円形状にしているが、これに限らず、矩形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。
【0076】
また、本発明の実施形態では、各支柱フレーム8aが伸縮不能で、且つ、折畳不能の構造であるが、各支柱フレーム8aを伸縮可能な構造や、或いは、折畳可能な構造にしてもよい。さらに、把手部8をボール収容部3から取り外すことができる構造にしてもよい。
【0077】
尚、本発明の実施形態の構造は、硬式テニスボール2の拾集だけでなく、弾性を有するボールの拾集であれば適用させることができ、例えば、軟式テニスボール、ビーチボール、軟式野球用のボール等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、地面やフロアに散乱するテニスボールやビーチボール等の弾性ボールを迅速的に、且つ、効率的に拾集可能な弾性ボール拾集具に適している。
【符号の説明】
【0079】
1 弾性ボール拾集具
2 テニスボール(弾性ボール)
3 ボール収容部
4 底部
4a 第1環状フレーム
4b ロアフレーム
5 側壁部
6 サイドフレーム
6a 第2環状フレーム
6b 第3環状フレーム
6c 橋絡フレーム
7 環状ネット
7a 上端開口周縁
7b 下端開口周縁
8 把手部
8a 支柱フレーム
8b 把持フレーム
d テニスボールの外径
w 第1環状フレームと第3環状フレームとの間の隙間
S1 収容空間