(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】線維症の組み合わせたバイオマーカー測定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220624BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20220624BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220624BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
C07K16/18
C12N15/12
C07K7/06
(21)【出願番号】P 2018540058
(86)(22)【出願日】2017-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2017052271
(87)【国際公開番号】W WO2017134172
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-24
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508072822
【氏名又は名称】ノルディック バイオサイエンス エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェノヴェーゼ、フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、メッテ、ジュール
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、リサ
(72)【発明者】
【氏名】オールスネス - レーミング、ダイアン、ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル、モルテン
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/170312(WO,A1)
【文献】特表2013-539029(JP,A)
【文献】NIELSEN, M. J. et al.,The neo-epitope specific PRO-C3 ELISA measures true formation of type III collagen associated with liver and muscle parameters,Am J Transl Res,2013年,Vol.5, No.3,p.303-315
【文献】WANG, J. M. et al.,Quantitation of endothelial cell specific protein E-9 employing a single monoclonal antibody in an indirect sandwich ELISA,Journal of Immunological Methods,1994年,Vol.171,p.55-64
【文献】COX, T. R., et al.,LOX-mediated collagen crosslinking is responsible for fibrosis-enhanced metastasis,Cancer Res,2013年,Vol.73, No.6,p.1721-1732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/68
C07K 16/18
C07K 16/40
C07K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルにおいて
非架橋PIIINPを検出することなく架橋PIIINPを検出するためのサンドイッチイムノアッセイであって、前記架橋PIIINPが、鎖間架橋によって一緒に接続したPIIINPの少なくとも2つの鎖を含み、この方法が、
前記架橋PIIINPを含む前記生体サンプルと、ある表面に結合した第1のモノクローナル抗体とを接触させることであって、架橋PIIINPに含まれるそれぞれのPIIINP鎖が、インタクトなIII型プロコラーゲンのN-プロテアーゼ開裂によって生成するPIIINPのC末端ネオエピトープを有する、接触させることと、
第2のモノクローナル抗体を加えることと、
前記第2のモノクローナル抗体の結合量を決定することと
を含み、
前記第1のモノクローナル抗体および前記第2のモノクローナル抗体は、両方とも、PIIINPの前記C末端ネオエピトープに特異的に反応し、前記
C末端ネオエピトープは、C末端アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOHを含み、XはGlyまたはProである、サンドイッチイムノアッセイ。
【請求項2】
前記
第1のモノクローナル抗体および前記第2のモノクローナル抗体が、CPTGXQNYSPQZ-COOHである前記C末端アミノ
酸配列の伸長形態
を認識しないか、また
は結合せず、ここで、Zは、存在しないか、またはIII型コラーゲンの配列の1つ以上のアミノ酸である、請求項1に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項3】
前記サンドイッチイムノアッセイを使用し、前記生体サンプル中の架橋PIIINPの量を定量する、請求項1または2に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項4】
前記方法によって決定された架橋PIIINPの量と、既知の疾患重篤度の標準的な線維性疾患サンプルとを関連づけ
ることをさらに含む、線維性疾患の重篤度を評価する
ための、請求項3に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項5】
前記線維性疾患が肝疾患である、請求項4に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項6】
前記生体サンプルが、生体液である、請求項3~5のいずれか一項に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項7】
前記生体液が、血清、血漿、尿、羊水、組織上清または細胞上清である、請求項6に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項8】
前記サンドイッチイムノアッセイが、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着法である、請求項1~7のいずれか一項に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項9】
前記第2のモノクローナル抗体が、標識されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項10】
前記第2のモノクローナル抗体が、酵素結合抗体である、請求項9に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項11】
前記
酵素結合抗体の酵素が、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項10に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項12】
前記第2のモノクローナル抗体が、放射性標識されているか、またはフルオロフォアに結合している、請求項9に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項13】
前記第2のモノクローナル
抗体を認識するさらに標識された抗体を使用し、前記第2のモノクローナル抗体の結合量を決定する、請求項1~8のいずれか一項に記載のサンドイッチイムノアッセイ。
【請求項14】
リシルオキシダーゼ(LOX)を標的とするアンタゴニスト薬の効能を評価するための方法であって、請求項1に記載のサンドイッチイムノアッセイを用い、少なくとも2つの生体サンプル中の架橋PIIINPの量を定量することを含み、前記生体サンプルが、対象に対してアンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点と少なくとも1つのその後の時間点で対象から得られたものであり、アンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点から少なくとも1つのその後の時間点までに架橋PIIINPの量が減少することは、LOXを標的とする有効なアンタゴニスト薬の指標である、方法。
【請求項15】
前記方法が、LOXL2を標的とするアンタゴニスト薬の効能を評価する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サンドイッチアッセイで生体サンプルにおいて
非架橋PIIINPを検出することなく架橋PIIINPを検出するためのキットであって、
第1のモノクローナル抗体と、
前記第1のモノクローナル抗体に結合する固体支持体と、
場合によっては標識を含む第2のモノクローナル抗体とを含み、
前記第1のモノクローナル抗体および前記第2のモノクローナル抗体は、両方とも、PIIINPのC末端ネオエピトープに特異的に反応し、前記
C末端ネオエピトープは、C末端アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOHを含み、XはGlyまたはProである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体サンプルにおいて架橋PIIINPを検出するためのサンドイッチイムノアッセイ、およびリシルオキシダーゼ(LOX)を標的とする薬剤の効能を評価する際のその使用に関する。本発明は、サンドイッチイムノアッセイを実施するためのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
線維性疾患(表1に列挙されているものを含む)は、例えば硬変の罹患率および死亡率の主因であり、世界中で1年に80万人が死亡している(1)。
【0003】
【0004】
「線維性疾患」は、主症状または副症状のいずれかとして、線維症を引き起こす任意の疾患である。線維症は、持続的な感染、自己免疫反応、アレルギー反応、化学物質による傷害、放射線、および組織損傷を含む様々な刺激によって誘発される慢性炎症反応の最終的な結果である。線維症は、細胞外マトリックス(ECM)の蓄積および再編成によって特徴付けられる。明らかな病因の差異および臨床的な差異を有するにもかかわらず、ほとんどの慢性線維性障害には、成長因子、タンパク質分解酵素、血管新生因子および線維形成性サイトカインの産生を維持する共通の永続的な刺激物があり、これらが合わさって結合組織要素(特にコラーゲンおよびプロテオグリカン)の蓄積を刺激し、正常な組織構造を次第にリモデリングし、破壊してしまう(3、4)。ヒトの健康に大きな影響を与えているにもかかわらず、現時点で、線維症の機構を直接的に標的とする承認された治療法は存在しない(5)。
細胞外マトリックス(ECM)
【0005】
ECMは、タンパク質の凝集体を形成する能力を有する超分子構造であり、これにより、三次元網目構造で細胞を連結する動的な足場を形成する。この足場は、プロテアーゼのアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションによって、細胞-マトリックスの相互作用と、細胞の運命を制御する(6)。ECMは、種々の量および組み合わせでのコラーゲン、ラミニン、プロテオグリカンおよび他の糖タンパク質からなり、それによって個々の組織の必要性を満たす特定の機能を有する足場を生成するためにプロテアーゼによって改変することができる種々の生体構成要素を与える(7)。
【0006】
I型およびII型のコラーゲンは、人体における主要な構造タンパク質である。III型コラーゲンは、心血管系および他の器官におけるI型コラーゲンの原線維形成に必須である(8、9)。原線維集合の間、III型プロコラーゲンのN末端プロペプチド(3個の同一のα鎖からなり、全分子量が42kDa)が、ECMの成熟コラーゲンに組み込まれる前に、特異的なN-プロテアーゼによって開裂する。開裂したプロペプチドは、ECM中に保持されてもよく、または循環系へと放出されてもよい。しかし、プロペプチドの開裂は、不完全なときがあり、プロペプチドが分子に結合させたまま残ることがある。これにより、異常な架橋を有する細いフィブリルが生成し、その結果、異常な分子は迅速な代謝ターンオーバーを起こしやすくなる(10、11)。したがって、適切なサンプル中のIII型コラーゲンのN末端プロペプチド(PIIINP)のレベルは、III型コラーゲンの形成および/または分解のマーカーであり得る。
【0007】
ECMの改変された構成要素および非コード改変が、組織の剛直性と、インタクトなECMおよびそのフラグメントのシグナル電位の変化を引き起こすため、ECMのリモデリングは、種々の疾患の病因において、重要な役割を果たす。ECMのリモデリングは、組織の機能および修復にとって重要な前提条件であり、ECMの合成および分解を担う酵素によって厳密に制御されている。
【0008】
線維性疾患などの病的な事象の間、ECMの形成と分解のバランスが乱れ、ECMの組成が変化する。このような変化は、組織機能の変化を引き起こす(12、13)。PIIINPを、いくつかの線維性疾患のバイオマーカーとして使用可能であることが示唆されている(例えば、肺傷害(14)、ウイルス性および非ウイルス性の肝炎(15)、全身性強皮症(16)、血管リモデリング(17)および腎疾患(18))。
【0009】
骨格筋組織におけるECMリモデリングには、あまり注目されていなかった。ラットモデルでは、運動後の大腿四頭筋および前脛骨筋において、増加したコラーゲン遺伝子発現および生合成が実証されている(19、20)。さらに、運動後の臨床試験において、PIIINPの血清レベルの上昇が実証されている(21)。したがって、骨格筋タンパク質のリモデリングは、循環中のPIIINPの量を増加させ、初期の筋肉同化を検出するためのバイオマーカーとして役立ち得る。PIIINPの血清レベルは、テストステロン(22)、組換えヒト成長ホルモン(23)またはそれらの組み合わせ(24、25)に対する筋肉組織応答のバイオマーカーとして以前から示唆されている。
【0010】
肝線維症では、I型およびIII型の線維状コラーゲンが高度にアップレギュレーションされている(26、27)。III型コラーゲンは、線維症の初期で支配的であり、一方、I型コラーゲンのアップレギュレーションは、線維症の後期に関係がある。肝臓で起こる線維症によって、コラーゲンの沈着およびプロペプチド(主にPIIINP)の放出が起こる。結果として、PIIINPは、線維形成について最もよく研究されたマーカーの1つである(28、29、30)。何年にもわたり、PIIINPの定量化のために、いくつかのラジオイムノアッセイが開発されており、硬変の検出について、感度が94%まで、特異性が81%まで達している(31、32)。しかし、従来のアッセイはいずれもネオエピトープ特異性ではない。さらに、PIIINPを定量するための現在市販されているアッセイは、プロコラーゲンまたはプロペプチドの内部配列を標的とするポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を利用し、III型コラーゲンの形成および/または分解を特異的に区別するものではない(31、32)。
【0011】
したがって、III型コラーゲンの形成と分解を区別するために、本願発明者らは、形成過程でのみ産生されるネオエピトープフラグメント(すなわち、III型コラーゲンの形成において産生されるが、III型コラーゲンの分解において産生されないフラグメント)を決定し、検出することが必要であると考えている。
【0012】
国際公開第2014/170312号は、C末端アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOH(配列番号4)の末端アミノ酸に含まれるC末端PIIINPネオエピトープに特異的なモノクローナル抗体を開示し、ここで、Xは、GlyまたはProであってもよい。
【0013】
Brocks(31)は、改変されたウシC末端PIIINP配列IC*QSCPTGGENYSP-COOH(配列番号1)(C*=アセトアミド保護されたCys;GlnがGluで置き換えられている(E))を対象とするポリクローナル抗体を開示しているが、この抗体は、ウシPIIINPのC末端配列ICQSCPTGGQNYSP-COOH(配列番号2)の末端アミノ酸に対して非特異的であり、さらに、この抗体は、ヒトPIIINPを認識しない。
【0014】
Bayer(33)は、配列H2N-GSPGPPGICQSCPTGPQNYSP-COOH(配列番号3)に向けられた検出モノクローナル抗体を利用するサンドイッチELISAを開示しているが、結合エピトープは定義されていない。
【0015】
本出願人は、国際公開第2014/170312号に開示されるPIIINPのC末端ネオエピトープに向けられたネオエピトープに特異的な抗体を利用する特異的サンドイッチイムノアッセイが、リシルオキシダーゼ(LOX)を標的とする薬物、特に、LOXアンタゴニスト薬の効能を評価するのに有用であり得ることを発見した。LOXによる酵素的コラーゲン架橋およびプロコラーゲンの処理は、組織の成熟および安定性にとって重要である。臓器線維症の患者では、コラーゲンは高度に架橋されるようになるため、線維症の解消が起こりにくい。LOXL2は、特殊なLOXであり、線維性組織における病態生理学的なコラーゲン架橋の主要因であり、新規なLOXL2アンタゴニストは、現在臨床試験中である。したがって、LOXアンタゴニストなどのLOXを標的とする薬物の効能を評価するために使用可能なアッセイは、明らかに製薬産業にとって有用なツールであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【非特許文献】
【0017】
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【文献】Friedman SL.Mechanisms of disease:Mechanisms of hepatic fibrosis and therapeutic implications.Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol 2004;1:98-105。
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【文献】Nelson AE,Meinhardt U,Hansen JL,Walker IH,Stone G,Howe CJ,Leung KC,Seibel MJ,Baxter RC,Handelsman DJ,Kazlauskas RおよびHo KK.Pharmacodynamics of growth hormone abuse biomarkers and the influence of gender and testosterone:a randomized double-blind placebo-controlled study in young recreational athletes.J Clin Endocrinol Metab 2008;93(6):2213-2222。
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【文献】Jarcuska P,Janicko M,Veseliny E,Jarcuska PおよびSkladany L.Circulating markers of liver fibrosis progression.Clin Chim Acta 2010;411(15-16):1009-1017。
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【文献】Rohde H,Vargas L,Hahn E,Kalbfleisch H,Bruguera MおよびTimpl R.Radioimmunoassay for type III procollagen peptide and its application to human liver disease.Eur J Clin Invest 1979;9(6):451-459。
【文献】Bayer Aktiengesellschaft.(1999)Monoclonal antibody and assay for detecting PIIINP。特許協力条約出願WO99/61477号。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、生体サンプルにおいて架橋PIIINPを検出するためのサンドイッチイムノアッセイに関し、ここで、架橋PIIINPは、鎖間架橋によって一緒に接続したPIIINPの少なくとも2つの鎖を含む。この方法は、架橋PIIINPを含む生体サンプルと、ある表面に結合した第1のモノクローナル抗体とを接触させることであって、架橋PIIINPに含まれるそれぞれのPIIINP鎖が、インタクトなIII型プロコラーゲンのN-プロテアーゼ開裂によって生成するPIIINPのC末端ネオエピトープを有する、接触させることと、第2のモノクローナル抗体を加えることとを含む。両モノクローナル抗体は、PIIINPのC末端ネオエピトープと特異的に反応し、前記ネオエピトープは、C末端配列CPTGXQNYSP-COOHを含み、XはGlyまたはProである。この方法は、第2のモノクローナル抗体の結合量を決定することをさらに含む。
【0019】
本発明は、リシルオキシダーゼ(LOX)を標的とするアンタゴニスト薬の効能を評価するための方法にも関する。この方法は、本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイを用い、対象に対してアンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点と少なくとも1つのその後の時間点で対象から得られた少なくとも2つの生体サンプル中の架橋PIIINPの量を定量することを含む。アンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点から少なくとも1つのその後の時間点までに架橋PIIINPの量が減少することは、LOXを標的とする有効なアンタゴニスト薬の指標である。
【0020】
本発明は、さらに、本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイに使用するためのキットにも関する。キットは、上述の第1のモノクローナル抗体に結合する固体支持体と、本明細書に記載の標識された第2のモノクローナル抗体とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ヒト種の標的とされるPIIINPα1鎖配列(配列番号14)およびラット種の標的とされるPIIINPα1鎖配列(配列番号15)のアラインメント(四角によって強調される)。III型コラーゲンのN末端プロペプチドのα1鎖内の対応するヒト配列の位置(直線)およびラット配列の位置(波線)。アラインメントは、NLP CLUSTALWソフトウェアを用いて行われた。
【
図2】モノクローナル抗体NB61N62(レーン1および3)およびNB61N62+選択ペプチド(レーン2+4)によって認識される(a)ラットおよび(b)ヒトに由来する羊水中のIII型コラーゲンのN末端プロペプチド型コラーゲンのN末端プロペプチドの特異的なバンドを示すウェスタンブロット。ラットでは、52~60kDA付近の2つのバンドが観察されたが、ヒトでは1つのバンドが観察された。選択ペプチドを添加すると、ラットおよびヒトの両方についてバンド強度が弱くなった。
【
図3A】ヒト、げっ歯類およびマウスの材料に対する典型的な検量線および天然の反応性を示す、PRO-C3 ELISAの試行。健康なヒト血清、血漿および羊水(AF)を用いた、競合PRO-C3 ELISAの検量線および阻害。検量線は、76.31ng/mLから2倍に希釈され、一方、天然物質は、(--)で示されているように、1:2から1:16まで希釈された。
【
図3B】ヒト、げっ歯類およびマウスの材料に対する典型的な検量線および天然の反応性を示す、PRO-C3 ELISAの試行。健康なラット血清、血漿およびAFを用いた、競合PRO-C3 ELISAの較正曲線および阻害。検量線は、200ng/mLから2倍に希釈され、一方、天然物質は、(--)で示されているように、未希釈から1:8まで実施された。
【
図3C】ヒト、げっ歯類およびマウスの材料に対する典型的な検量線および天然の反応性を示す、PRO-C3 ELISAの試行。健康なマウス血清および血漿を用いた、競合PRO-C3 ELISAの検量線および阻害。検量線は、200ng/mLから2倍に希釈され、一方、天然物質は、(--)で示されているように、未希釈から1:4まで実施された。
【
図3D】ヒト、げっ歯類およびマウスの材料に対する典型的な検量線および天然の反応性を示す、PRO-C3 ELISAの試行。伸長されたペプチド(すなわち、C末端の1つのさらなるアミノ酸を用いた較正ペプチドのペプチド配列)を用いた、PIIINPネオエピトープ特異性抗体のネオエピトープ特異性。検量線、伸長されたペプチドおよびナンセンスペプチドを76.31ng/mLから2倍に希釈した。シグナルは、ペプチド濃度の関数として650nmでのバックグラウンドを差し引いた450nmでの光学密度として見られる。
【
図4】肺線維芽細胞のインビトロモデルの結果(「scar-in-a-jar」)。
【
図5】ケロイドからの抽出と、正常皮膚からの抽出におけるPro-C3Xレベルの比較。
【
図9】Scar-in-a-Jarモデルから10日目に採取した上清中のPro-C3Xレベル。有意性は、それぞれの条件をTGF-β単独と比較したダネットの多重比較試験を用い、one-way ANOVAによって評価した。データは、SDを伴う平均として示す。****p<0.0001。BAPN、β-アミノプロピオニトリル;TGF-β、トランスフォーミング増殖因子β。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中で使用される場合、「ネオエピトープ」という用語は、ポリペプチドの端(すなわち、ポリペプチドのN末端またはC末端)にあるN末端またはC末端のペプチド配列を指し、その一般的な方向を意味するものと解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「競合ELISA」という用語は用語は、競合酵素結合免疫吸着法を指し、当業者に公知の技術である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「サンドイッチイムノアッセイ」という用語は、サンプル中の抗原を検出するために少なくとも2つの抗体を使用することを指し、当業者に公知の技術である。
【0025】
本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体NB61N-62という用語は、PIIINPのC末端ネオエピトープに対する、ネオエピトープに特異的な抗体を指し、このネオエピトープは、C末端配列CPTGXQNYSP-COOH(配列番号4)を含み、Xは、GlyまたはProである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「PRO-C3」という用語は、本明細書に記載されるPIIINPアッセイを、PIIINPに由来するネオエピトープの特異的な結合に基づかない当該技術分野で公知のPIIINPアッセイと区別するために使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「PRO-C3X」アッセイという用語は、架橋PIIINPを検出し、定量するための本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイを指す。
【0028】
本発明の方法における使用に適したモノクローナル抗体は、国際公開第2014/170312号に開示されており、PIIINPのC末端ネオエピトープと特異的に反応し、このネオエピトープは、C末端アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOH(配列番号4)を含み、Xは、GlyまたはProであり、このモノクローナル抗体は、CPTGXQNYSPQZ-COOH(配列番号5)である前記C末端アミノ配列の伸長形態を実質的に認識しないか、または実質的に結合せず、ここで、Zは、存在しないか、またはIII型コラーゲンの配列の1つ以上のアミノ酸である。
【0029】
好ましくは、このモノクローナル抗体は、ヒトPIIINPにおけるネオエピトープのC末端配列CPTGPQNYSP-COOH(配列番号6)に特異的に反応し、この配列は、ヒトPIIINPのアミノ酸P153-Q154間のPro-Gln結合にあるインタクトなIII型プロコラーゲンからのPIIINPのN-プロテアーゼ開裂によって作られる。
【0030】
または、このモノクローナル抗体は、げっ歯類PIIINPにおけるネオエピトープのC末端配列CPTGGQNYSP-COOH(配列番号7)に特異的に反応してもよく、このネオエピトープは、げっ歯類PIIINPのアミノ酸P154-Q155間のPro-Gln結合にあるインタクトなIII型プロコラーゲンからのPIIINPのN-プロテアーゼ開裂によって作られる。
【0031】
好ましくは、アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOH(配列番号4)に対するモノクローナル抗体のアフィニティと、伸長されたアミノ酸配列CPTGXQNYSPQZ-COOH(配列番号5)に対する同じモノクローナル抗体のアフィニティの比率は、少なくとも10対1、好ましくは少なくとも100対1、より好ましくは少なくとも1,000対1、より好ましくは少なくとも10,000対1、より好ましくは少なくとも100,000対1、最も好ましくは少なくとも1,000,000対1である。
【0032】
好ましくは、モノクローナル抗体は、PIIINPのC末端ネオエピトープを認識しないか、またはこれに結合せず、この短くなったネオエピトープは、アミノ酸配列CPTGXQNYS(配列番号8)を有する。
【0033】
好ましくは、アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOH(配列番号4)に対するモノクローナル抗体のアフィニティと、短くなったアミノ酸配列CPTGXQNYS(配列番号8)に対する同じモノクローナル抗体のアフィニティの比率は、少なくとも10対1、好ましくは少なくとも100対1、より好ましくは少なくとも1,000対1、より好ましくは少なくとも10,000対1、より好ましくは少なくとも100,000対1、最も好ましくは少なくとも1,000,000対1である。
【0034】
本発明は、生体サンプルにおいて架橋PIIINPを検出するためのサンドイッチイムノアッセイであって、前記架橋PIIINPが、鎖間架橋によって一緒に接続したPIIINPの少なくとも2つの鎖を含み、この方法が、
前記架橋PIIINPを含む前記生体サンプルと、ある表面に結合した第1のモノクローナル抗体とを接触させることであって、架橋PIIINPに含まれるそれぞれのPIIINP鎖が、インタクトなIII型プロコラーゲンのN-プロテアーゼ開裂によって生成するPIIINPのC末端ネオエピトープを有する、接触させることと、
第2のモノクローナル抗体を加えることと、
前記第2のモノクローナル抗体の結合量を決定することとを含み、
前記第1のモノクローナル抗体および前記第2のモノクローナル抗体は、両方とも、PIIINPの前記C末端ネオエピトープに特異的に反応し、前記ネオエピトープは、C末端アミノ酸配列CPTGXQNYSP-COOHを含み、XはGlyまたはProである、サンドイッチイムノアッセイに関する。
【0035】
好ましくは、モノクローナル抗体は、CPTGXQNYSPQZ-COOHである前記C末端アミノ配列の伸長形態を実質的に認識しないか、または実質的に結合せず、ここで、Zは、存在しないか、またはIII型コラーゲンの配列の1つ以上のアミノ酸である。
【0036】
本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイは、捕捉抗体および検出抗体といった両抗体と同じ抗体を使用するため、二本鎖ペプチド(すなわち、架橋したもの)を、このアッセイによって認識することができる。
【0037】
好ましくは、サンドイッチイムノアッセイを用い、生体液中の架橋PIIINPの量を定量し、前記生体液は、限定されないが、血清、血漿、尿、羊水、組織上清または細胞上清であってもよい。
【0038】
サンドイッチイムノアッセイは、限定されないが、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着法であってもよい。
【0039】
好ましい実施形態では、第2のモノクローナル抗体の結合量を決定するために、第2のモノクローナル抗体が標識されてもよい。
【0040】
好ましくは、第2のモノクローナル抗体は、酵素結合抗体であってもよい。酵素は、限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であってもよい。
【0041】
好ましくは、第2のモノクローナル抗体は、放射性標識されていてもよく、フルオロフォアに結合していてもよい。
【0042】
これらは、本発明と共に使用される好ましい標識であるが、限定されないが、DNAレポーターまたは電気化学発光タグなどの任意の適切な標識システムを使用してもよいことが想定される。
【0043】
または、第2のモノクローナルを認識するさらに標識された抗体を使用し、第2のモノクローナル抗体の結合量を決定してもよい。さらに標識された抗体は、上述のような標識を用いて標識されてもよい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、サンドイッチイムノアッセイは、前記方法によって決定された架橋PIIINPの量と、線維性疾患の重篤度を評価するための既知の疾患重篤度の標準的な線維性疾患サンプルとを関連づけることをさらに含んでいてもよい。このような線維性疾患は、限定されないが、肝疾患であってもよい。
【0045】
さらなる態様では、本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイを、リシルオキシダーゼ(LOX)を標的とする薬剤(例えば、LOXを標的とするアンタゴニスト薬)の効能を評価するための方法に使用してもよい。
【0046】
したがって、本発明は、リシルオキシダーゼ(LOX)を標的とするアンタゴニスト薬の効能を評価するための方法であって、この方法が、本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイを用い、少なくとも2つの生体サンプル中の架橋PIIINPの量を定量することを含み、前記生体サンプルが、対象に対してアンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点と少なくとも1つのその後の時間点で対象から得られたものであり、アンタゴニスト薬を投与する期間中、第1の時間点から少なくとも1つのその後の時間点までに架橋PIIINPの量が減少することは、LOXを標的とする有効なアンタゴニスト薬の指標である、方法にも関する。
【0047】
好ましくは、この方法は、アンタゴニスト薬の有効性を定量する。
【0048】
好ましくは、この方法は、LOXL2を標的とするアンタゴニスト薬の効能を評価する。
【0049】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のサンドイッチイムノアッセイに使用するためのキットであって、このキットが、上述の第1のモノクローナル抗体に結合する固体支持体と、上述の標識された第2のモノクローナル抗体とを含む、キットに関する。
【実施例】
【0050】
材料と一般的な考慮事項
実験で使用した全ての試薬は、Merck(ホワイトハウスステーション、NJ、USA)製およびSigma Aldrich(セントルイス、MO、USA)製の高級化学品であった。モノクローナル抗体製造およびバリデーションに使用される合成ペプチドは、(1)免疫原性ペプチド:オボアルブミン(OVA)-CGG-CPTGPQNYSP(配列番号10)、(2)スクリーニングペプチド:ビオチン-CGG-CPTGPQNYSP(配列番号11)および(3)選択ペプチド:CPTGPQNYSP(配列番号6)であった。全ての合成ペプチドは、中国北京のChinese Peptide Companyから購入した。
実施例1-モノクローナル抗体NB61-N62
モノクローナル抗体の生成
【0051】
III型コラーゲンのN末端プロペプチドの配列は、ヒト、ラットおよびマウスの種間でアライメントされ、種間の相同性と、タンパク質ブラスティングによる他のECMタンパク質の中の固有性から選択された。α1鎖PIIINP中のアミノ酸配列145’-CPTGPQNYSP-’153(配列番号6)は、ヒトとラットの間で100%相同性である(
図1)。モノクローナル抗体の生成は、フロイントの不完全アジュバントを用い、200μlの乳化した抗原と50μgのPIIINPネオエピトープC末端配列(OVA-CGG-CPTGPQNYSP(配列番号10))を用いた4~5週齢のBalb/Cマウスの皮下免疫化によって開始した。安定した血清力価レベルに達するまで、2週間ごとに免疫化を繰り返した。最も高い血清力価を有するマウスを、融合のために選択した。マウスを1ヶ月間休憩させ、次いで、100μlの0.9%NaCl溶液中50μgのPIIINPネオエピトープネオエピトープC末端配列のを3日間静脈内投与して免疫性を高めた後、脾臓を単離した。脾臓細胞をSP2/0ミエローマ細胞と融合させ、(34)に記載されるようにハイブリドーマを作成し、半媒体方法を用いて培養皿内でクローニングした。このクローンを、確実にモノクローナルを増殖させるために限定希釈方法を用いてさらに増殖させるために、96ウェルマイクロタイタープレートに蒔いた。上清を、ストレプトアビジンコーティングしたプレートを用いた間接ELISAにおいて、較正ペプチドおよび天然物質に対する反応性についてスクリーニングした。ビオチン-CGG-CPTGPQNYSP(配列番号11)をスクリーニングペプチドとして使用し、一方、遊離ペプチドCPTGPQNYSP(配列番号6)をキャリブレーターとして使用し、クローンのさらなる特異性を試験した。
クローンのキャラクタライゼーション
【0052】
ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート上、2ng/mlのビオチン化ペプチドを用い、増殖させたモノクローナルハイブリドーマ細胞からの上清を用いた予備的ELISAにおいて、ヒトおよびラット両方からの尿、血清および羊水(AF)などの異なる生体材料を用い、ペプチドの天然の反応性およびアフィニティを評価した。ヒトAFは、Beijing Obstetrics Gynecology Hospitalで2ヶ月間にわたって選択的な下部帝王切開を受けた30人の女性から得られた。切開直後に100~200mlのAFを採取し、使用するまで、この液体を-20℃で保存した。地元の倫理委員会は、この試験を承認し、全ての女性には、採取前に書面による同意を得た。妊娠したWistarラットの子宮から、予想出産日の2日前にラットAFを採取した。抗体特異性を、除外ペプチドおよび伸長されたペプチド(すなわち、それぞれ、10個のアミノ酸置換を有する較正ペプチドと、開裂部位に1個のさらなるアミノ酸を含む較正ペプチド)を用いた予備アッセイで試験した。モノクローナル抗体のアイソタイプを、Clonotyping System-HRPキット、カタログ番号5300-05(Southern Biotech、バーミングハム、AL、USA)を用いて決定した。
抗体のキャラクタライゼーション
【0053】
ウェスタンブロッティングの前に、ヒトおよびラットのAFの総タンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイを製造者の指示に従って使用して測定した。簡単に言うと、BCAを2mg/mlからPBSで2倍に希釈し、サンプルの計算のための標準的な列を作成した。サンプルを1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1:4に希釈し、25μlのサンプルを200μlの作業試薬(試薬AおよびBを50:1の比率で混合したもの)と共にマイクロタイタープレートに添加した。内容物をプレートシェーカー上で30秒間混合し、続いて37℃で30分間インキュベートした。インキュベート終了後、プレートを室温まで冷却し、ELISAリーダーで、562nmで吸光度を測定した(Molecular Devices、SpectraMax M、CA、USA)。その後、ラットまたはヒトのAFをサンプルバッファー(2倍)および還元剤(10倍)と混合し、70℃で10分間加熱し、4~20%のトリス-グリセリンドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)にかけ、180Vで1時間実施した。製造業者の指示に従ってInvitrogen i-Blotゲル転移システムを用いてタンパク質バンドをニトロセルロース膜上にブロッティングした。膜をブロッキングバッファー(Tweenを含むTris緩衝化生理食塩水中の5%スキムミルク(TBST))中、4℃で一晩かけてブロッキングし、1μg/mlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が接合したPIIINPのネオエピトープに特異的なモノクローナル抗体NB61N-62と共に2時間インキュベートした。PIIINPのネオエピトープに特異的なモノクローナル抗体の特異性を、過剰なPIIINPネオエピトープ較正ペプチドと抗体を10:1の比率で加え、1時間プレインキュベートした後、一晩インキュベートするために膜に添加することによって観察した。インキュベートの後、膜をTBSTで4×10分間洗浄し、4mlの化学発光検出キット(ECL)と共にインキュベートし、Amersham Hyperfilmを用いて現像した。
クローンの選択とキャラクタライゼーション
【0054】
サブタイプは、IgG1サブタイプであると判定された。ウェスタンブロット分析から、PIIINPのネオエピトープに特異的なモノクローナル抗体NB61N-62は、ラット羊水中で約52~60kDaの分子量を有する2つのバンドを認識したが、ヒト羊水中では52kDa前後のバンドは1つしか検出されなかったことがわかった。さらに、シグナルはラットの選択ペプチドによって部分的に阻害され、ヒトにおいて阻害された(
図2)。天然の反応性は、ELISAにおいてNB61N-62抗体を用いて観察された。天然の反応性は、ヒト血清、血漿およびAF、げっ歯類の血清、血漿およびAFに対して見られた(
図3A~
図3C)。このシグナルは、マウス血清および血漿に対してわずかに阻害された。競合ELISAのシグナルは、ヒト、げっ歯類およびマウスの天然物質においてそれぞれ1:2から1:16、未希釈から1:8まで、または未希釈から1:4までを用いて阻害された。天然物質の希釈は、3種全てについて、ほぼ検量線と同じ希釈パターンに従った。ヒトAFは、シグナルを100%まで阻害し、ラットAFでは80%、ヒト血清および血漿、ラット血清では70%、ラット血漿では44%、マウス血清および血漿では35%まで阻害した。伸長されたペプチド(CPTGPQNYSPQ(配列番号6))およびナンセンスペプチド(GSPGKDGVRG(配列番号12))を用い、ゼロ阻害を観察した(
図3D)。
実施例2-NB61N-62を用いたPRO-C3 ELISA
【0055】
抗体を産生するハイブリドーマからの上清を回収し、HiTrapアフィニティカラム(GE Healthcare Life Science、リトルチャルフォント、バッキンガムシャー、UK)を用いてモノクローナル抗体を精製し、Lightning-Link(商標)HRP Conjugation Kit(Innova Biosciences、バブラハム、ケンブリッジ、UK)を用い、製造業者の指示に従って、HRPで標識した。
【0056】
PRO-C3競合ELISAの手順は、以下の通りであった。Roche製の96ウェルストレプトアビジンコーティングされたELISAプレート(カタログ番号11940279)を、コーターバッファー(50mM PBS-BTE+10%ソルビトール、pH7.4)中に溶解させたビオチン化ペプチドBiotin-CGG-CPTGPQNYSP(配列番号11)でコーティングし、暗所で、20℃で30分間インキュベートし、その後、洗浄バッファー(20mM Tris、50mM NaCl、pH7.2)で洗浄した。その後、20μlのペプチドキャリブレーターまたはサンプルを適切なウェルに加え、その後、100μlのHRPが接合したモノクローナル抗体NB61N-62をインキュベーションバッファー(50mM PBS-BTB+10%LiquidII(Roche)、pH7.4)に溶解し、プレートを4℃で20時間インキュベートし、洗浄した。最後に、100μlのテトラメチルベンジニジン(TMB)(Kem-En-Tecカタログ番号:438OH)を加え、暗所で、プレートを20℃で15分間インキュベートし、反応を止めるために、100μlの停止溶液(1%H2SO4)を加え、プレートをELISAリーダーで、650nmをリファレンスとして450nmで分析した(Molecular Devices、SpectraMax M、CA、USA)。検量線は、4パラメータ数学フィッティングモデルを用いてプロットされた。
技術的評価
【0057】
ヒトおよびラットからの健康な血清および血漿サンプルの2倍希釈を用いて直線性を決定し、100%サンプルの回収率%として計算した。抗体特異性は、100%の較正ペプチド(CPTGPQNYSP(配列番号:6))、伸長されたペプチド(CPTGPQNYSPQ(配列番号13))、ナンセンスペプチド(GSPGKDGVRG(配列番号12))の回収率%として計算された。検出下限(LLOD)は、標準K(すなわち、バッファー)の21回の測定値からのブランクの平均+3×標準偏差(SD)として計算された。検出上限(ULOD)は、標準Aの10回の測定値の平均-3xSDとして決定された。定量下限(LLOQ)は、30%未満の精度で再現可能に測定された最低濃度として測定された。アッセイ内変動およびアッセイ間変動は、8QCサンプルの10回の独立した試行によって決定され、各試行は、サンプルの2回ずつの決定からなっていた。サンプルの正確さを、標準曲線またはヒト羊水を有意な濃度で添加した健康なヒト血清サンプルで測定し、理論血清量の回収率%として計算した。干渉を、ヘモグロビン、脂肪血およびビオチンを有意な濃度で添加した健康なヒト血清中で測定し、理論血清量の回収率%として計算した。
結果
【0058】
ヒトPRO-C3 ELISAの測定範囲は、ULODおよびLLOQを計算することによって決定され、0.867~60.1ng/mlの範囲が与えられ、LLODは0.606ng/mlであった。PRO-C3 ELISAの技術的性能は、アッセイ間変動およびアッセイ内変動が平均でそれぞれ11.03%および4.11%であり(表1)、許容範囲はそれぞれ15%未満および10%未満であった。
【0059】
【0060】
ヒト、ラットおよびマウスに由来する健康な血清サンプルおよび血漿サンプルを用い、希釈回収率を実施した。希釈回収率は、許容可能な100±20%の回収率の範囲内であった(表2)。さらに希釈すると、LLOQよりも低い測定値が得られた。
【0061】
【0062】
血清中または血漿中の較正ペプチドの添加によって、それぞれ56%および55%の平均回収率を得た(表3)。
【0063】
【0064】
しかし、1:2から出発して2倍希釈したヒトAFを健康なヒト血清または血漿に添加すると、平均回収率はそれぞれ100%および111%であった。異なる濃度のヘモグロビン、ビオチンおよび脂肪血を添加した血清では、干渉は観察されなかった(表4)。
【0065】
【0066】
検体の安定性は、1回の凍結/解凍サイクルと比較して、100±20%の回収率で4回までの凍結/解凍サイクルが許容範囲であった(表5)。
【0067】
【0068】
標的配列に対するモノクローナル抗体の結合アフィニティと、伸長された配列または短くなった配列に対するモノクローナル抗体の結合アフィニティとの比を決定するために、それぞれの配列を合成し、実施例2に記載されるPRO-C3 ELISAにおける較正ペプチドとして使用した。得られた検量線を用いて、各配列/抗体の組み合わせのIC50値を決定する。IC50[標的]/IC50[伸長したもの、または短くなったもの]の比は、結合アフィニティの比を規定する。
実施例4-PRO-C3Xアッセイ
【0069】
上述のように、リシルオキシダーゼ(LOX)による酵素的コラーゲン架橋およびプロコラーゲンの処理は、組織の成熟および安定性にとって重要である。したがって、酵素処理の前にIII型プロコラーゲンの鎖間架橋を監視することは、LOXのインビボ活性を監視するために有用であると考えられる。これは、架橋PIIINP(すなわち、酵素によるプロコラーゲン処理の前に、III型プロコラーゲンのLOXによって作られる鎖間架橋によって一緒に結合したPIIINPの2つ以上の鎖)を検出し、定量することによって達成することができる。循環系で検出されたより高いレベルの架橋PIIINPは、より大きなLOX活性の指標となるだろう。したがって、LOXアンタゴニストなどのLOXを標的とする薬物の薬物試験中に架橋PIIINPのレベルを監視することで、前記薬物の有用な効能データを提供することができる。
ELISA
【0070】
ストレプトアビジンコーティングされたプレートを1μg/mlのビオチン化捕捉抗体(ビオチン結合したNB61-N62)を用い、100μl/ウェルでコーティングし、20℃、300rpmで30分間振盪しつつインキュベートした。プレートを洗浄バッファー(20nM TRIS、50mM NaCl、pH7.2)で5回洗浄した。サンプル、標準またはコントロール(20μl)を添加し、すぐに100μlのアッセイバッファーを添加し、4℃、300rpmで20時間振盪しつつインキュベートした。インキュベートの後、プレートを洗浄バッファーで5回洗浄した。1μg/ml HRP標識された検出抗体(HRP結合したNB61-N62)を100μl/ウェルで加え、20℃、300rpmで1時間振盪しながらインキュベートした。インキュベートの後、プレートを洗浄バッファーで5回洗浄した。容積100μlの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を加え、暗所で、20℃で15分間インキュベートした。TMBの酵素反応を停止させるために、100μlの0.1%硫酸を添加した。次いで、酵素反応を、二次曲線フィッティングを用い、ELISAリーダーで読み取った。各ELISAプレートには、アッセイ間変動を監視するためのキットコントロールおよび社内品質コントロールサンプルの両方が含まれていた。全てのサンプルを、特異的アッセイの範囲内で測定した。下限定量化レベル(LLOQ)未満の全てのサンプルに、LLOQの値を割り当てた。
【0071】
【0072】
肺線維芽細胞のインビトロモデル(「scar-in-a-jar」)を用いた予備試験は、LOXファミリーの酵素が、PIIINPの架橋を担っていることを強く示唆している(TGF-βは、リシルオキシダーゼ(LOX)酵素活性を高めることが当該技術分野で知られている)。簡単に言うと、混み合った状態で、TGF-β刺激下、肺線維芽細胞を5日間培養することによって、Pro-C3X(すなわち、架橋PIIINP)を作成した。Pro-C3Xは、TGF-βと共に培養して12日後に有意に上昇したが、TGF-β非存在下では、観察されたPro-C3Xは、無視できる量であった(
図4)。同様に、Pro-C3Xは、正常な皮膚に由来する抽出物と比較した場合、ケロイドからの抽出物では上昇した(
図5)。
肝線維症
【0073】
肝線維症の患者の試験を、「Pro-C3X」アッセイを用いて行い、本明細書に記載の「Pro-C3」競合ELISAと比較した。Pro-C3Xは、線維症がより重篤な場合には、疾患の後期で有意に増加し、疾患の初期には健康なコントロールと同様のレベルであることがわかった(
図6A)。これと比較して、Pro-C3レベルは、疾患の全段階で異なっていた(
図6B)。
【0074】
Pro-C3XアッセイとPro-C3Xアッセイとの選択性の違いは、Pro-C3Xが架橋PIIINPのみを認識し、一方、Pro-C3Xアッセイは、架橋PIIINPと架橋していないPIIINPの両方を認識することに起因する。
図7は、Pro-C3Xアッセイを示し、この結論の背後にある理由のための図による説明を示す。
【0075】
Pro-C3Xアッセイ:架橋PIIINPが存在する場合、第1の抗体は、PIIINPの第1の鎖上の遊離エピトープに結合し、続いて第2の抗体は、PIIINPの第2の鎖上の遊離エピトープに結合する。しかし、架橋していないPIIINPが存在する場合、表面結合抗体は、架橋していないIII型コラーゲンの遊離エピトープに結合するが、第2の抗体は、結合エピトープが既に占有されているので結合することができず、そのため、第2の抗体を添加しても、シグナルを生成することができない。したがって、Pro-C3Xアッセイからのシグナルは、もっぱら架橋PIIINPの検出に起因するものである。
【0076】
これとは逆に、Pro-C3アッセイの実質的に全ての抗体は、PIIINPが架橋しているかどうかにかかわらず、遊離結合エピトープを含むPIIINPの鎖に結合する。したがって、Pro-C3アッセイから得られたシグナルは、架橋PIIINPと架橋していないPIIINPの凝集物のシグナルである。
【0077】
したがって、LOXを標的とする薬物の効能を評価するためのPro-C3Xアッセイの使用を促すのはこの選択性である。上述のように、対象への薬物投与の期間中のLOX活性の結果であると示唆されているPIIINP架橋のレベルを監視することは、薬物活性、したがって該薬物の効能を監視するために使用され得る。
アルコール性脂肪性肝炎
【0078】
アルコール性脂肪性肝炎患者の試験を、「Pro-C3X」アッセイを用いて実施し、本明細書に記載の「Pro-C3」アッセイと比較した。アルコール性脂肪性肝炎では、Pro-C3およびPro-C3Xの両方が、この疾患の後期に上昇した(Metavir 2-4)。しかし、硬変患者について、Pro-C3は、MELD(末期肝疾患モデル)スコアと相関がなく(P=0.527)、一方、Pro-C3Xは、強く相関関係があった(corr係数3.34、P<0.001)。さらに、ProC3のみがアルブミンと負の相関があり、ProC3Xは、アルブミン、ビリルビンおよびガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)と相関関係にあった(
図8)。Pro-C3Xが後期に増加するのは、PIIINPの架橋の増加を示唆し、これは、肝臓の瘢痕の増加(すなわち、増加したLOX活性)に一致するだろう。
実施例5 Scar-in-a-JarモデルにおけるPro-C3Xの評価
【0079】
背景:線維症は罹患組織内の細胞外マトリックス(ECM)の蓄積であり、臓器不全および最終的に死に至る可能性がある。例えばトランスフォーミング成長因子(TGF)-βによる刺激の後、線維芽細胞は、ECMタンパク質、特にコラーゲンの過剰な蓄積の原因となる主な細胞型である。ここでは、Pro-C3X ELISAと組み合わせて、線維形成中のコラーゲン形成および架橋を調べるために、ECMおよび架橋を生成することが知られているインビトロモデル「Scar-in-a-Jar」の使用について説明する。このツールは、これらの線維化プロセスの調節を評価することによって新規な抗線維性化合物の研究に使用することができる。
【0080】
方法:健康なヒト肺線維芽細胞(L248)をコンフルエント状態になるまで増殖させた後、30,000細胞/ウェルの密度で接種した。0.4%のFCS、225mg/mLのフィコール70、150mg/mLのフィコール400、1%のアスコルビン酸を含むDMEM培地中で細胞を18日間増殖させた。細胞は、クロスリンクの形成を阻害するために、リシルオキシダーゼ(LOX)阻害剤β-アミノプロピオニトリル(BAPN;0.02mMまたは0.2mM)を含むか、または含まない1ng/mLのTGF-βで刺激された。刺激を与えなかった細胞またはフィコールを含有しない培地中で増殖させた細胞をコントロールとして使用した。3日目、6日目、10日目および14日目に培地を交換した。線維芽細胞生存率を、AlamarBlueアッセイを用いて評価した。上述のPro-C3XサンドイッチELISAを用い、採取した上清中のPro-C3Xレベルを評価した。
【0081】
結果:TGF-β刺激は、3日目からPro-C3Xの放出を誘発し、10日目のPro-C3Xレベルのピークは刺激を受けていない細胞と比較して14倍の増加を示した(p<0.0001;
図9)。0.02mM BAPNを用いた治療は有意な効果がなかったが、0.2mM BAPNは、TGF-β刺激のみの場合と比較してPro-C3Xレベルの有意な減少を誘発した(0.59倍の変化、p<0.0001;
図9)。
【0082】
結論:LOX阻害剤であるBAPNは、0.2mMの濃度でPro-C3Xレベルを有意に減少させ、このことは、Pro-C3X ELISAが架橋エピトープを評価していることを示した。したがって、Pro-C3X ELISAを用いて線維芽細胞の活性を評価し、潜在的な抗線維性化合物をスクリーニングするために使用することができる。TGF-β刺激は、架橋されたIII型コラーゲンプロペプチドのマーカーであるPro-C3Xの放出を誘発した。
【0083】
結論として、Pro-C3Xアッセイは、III型コラーゲンプロペプチドの開裂ネオエピトープと分子内架橋の存在とを組み合わせた第2世代のアッセイである。したがって、このアッセイは、線維症のタイムラインにおける異なる過程を記述するため、Pro-C3の測定にさらなる情報(すなわち、瘢痕内のコラーゲン分子の架橋結合)を提供する。したがって、LOX阻害剤の使用が架橋PIIINPバイオマーカーの存在を減少させることが示されているので、Pro-C3Xアッセイは、LOXを標的とする薬剤、特にLOXアンタゴニスト/阻害剤の効能を試験するために使用することができる。
【0084】
本明細書では、明示的に別段の指示がない限り、「または」との単語は、条件の1つだけが満たされることが必要な「排他的なまたは」との演算子とは対照的に、述べられている条件の一方または両方が満たされたときに真の値を返す演算子の意味で使用される。「~を含む(comprising)」との用語は、「~からなる(consisting of)」を意味するのではなく、「~を含む(including)」の意味で使用される。上で認められた全ての従来の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ここで既に公開された文書が、その日時に、その教示がオーストラリアまたは他の場所での共通する一般的な知識であったことを認めるものである、または表すものであることを承認するものではない。
【配列表フリーテキスト】
【0085】
配列表1
<223>従来技術のペプチド
<223>アセトアミド保護されたCys
配列表2 <223>ウシPIIINPのC末端配列
配列表3 <223>C末端PIIINP配列
配列表4
<223>抗体エピトープ
<223>XaaはProまたはGlyであってもよい
配列表5
<223>伸長されたエピトープペプチド
<223>XaaはProまたはGlyであってもよい
<223>Xaaは存在しなくてもよく、またはIII型コラーゲンの配列の1つ以上のアミノ酸であってもよい
配列表6 <223>ヒトPIIINPネオエピトープC末端配列
配列表7 <223>げっ歯類PIIINPネオエピトープC末端配列
配列表8
<223>短くなったエピトープペプチド
<223>XaaはProまたはGlyであってもよい
配列表9
<223>Xaaは存在しないか、またはビオチン化-Cys Gly Glyである
<223>ビオチン化ペプチド
<223>Xaaが存在しない場合、Cysはビオチン化されている
配列表10
<223>CysはN末端に結合したオボアルブミンを含む
<223>結合したオボアルブミン
配列表11
<223>CysはN末端がビオチン化されている
<223>ビオチン化ペプチド
配列表12 <223>ナンセンスペプチド
配列表13 <223>伸長されたペプチド
【0086】
以下の参考文献を本明細書で引用する。
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【配列表】