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▶ エスダブリューアイエムシー・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】塗料組成物用の不透明クラスター
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20220624BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20220624BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C09C3/10
C08J3/16 CER
C09C1/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018547464
(86)(22)【出願日】2017-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017022622
(87)【国際公開番号】W WO2017161066
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2018-11-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】62/308,910
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ジョセフ・ケイ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】バンヨッツ,チェイス
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540035(JP,A)
【文献】特開2010-90374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明度を増大させるためのラテックスペイント組成物に適した不透明クラスター粒子であって、
不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダー、クラスター成分、ポリマーラテックスバインダーの空隙を含んでなり、
ポリマーラテックスバインダーによってクラスター成分が合体させられて不透明クラスター粒子になっており、クラスター成分は、個別ポリマー粒子と複数のエキステンダー粒子を含んでなり、個別ポリマー粒子とエキステンダー粒子が不透明クラスター粒子中に均一に分散しており、
ここで、個別ポリマー粒子によって不透明クラスター粒子中の閉鎖ボイド容積が画定され、ポリマーラテックスバインダーの空隙によって不透明クラスター粒子中のバインダーボイド容積が画定される、上記不透明クラスター粒子。
【請求項2】
総ボイド容積が、不透明クラスター粒子の1~35容量%であり、ここで、総ボイド容積は、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の全閉鎖ボイド容積とポリマーラテックスバインダーによるバインダーボイド容積とを含むものである、請求項に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項3】
各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド直径が0.4~0.7μmである、請求項1に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項4】
不透明クラスター粒子の平均粒径が5~44μmである、請求項1に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項5】
不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって画定される外表面を有し、外表面が表面多孔性を有する、請求項1に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項6】
表面多孔性が、それぞれ大きさが0.050~0.150μmの1つ以上の隙間によって形成される、請求項に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項7】
個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、ポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高い、請求項1に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項8】
1~30容量%のポリマーラテックスバインダー、10~70容量%の個別ポリマー粒子、0~6容量%の無機顔料粒子を含み、残部がエキステンダー粒子である、請求項1に記載の不透明クラスター粒子。
【請求項9】
前記クラスター成分が、複数の無機顔料粒子を含む、請求項1~のいずれかに記載の不透明クラスター粒子。
【請求項10】
不透明クラスター粒子中の顔料容積濃度が、臨界顔料容積濃度以上である、請求項またはに記載の不透明クラスター粒子。
【請求項11】
無機顔料粒子が0.1~1.0μmの粒径を有し、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびこれらの混合物から選ばれる、請求項10のいずれかに記載の不透明クラスター粒子。
【請求項12】
エキステンダー粒子が0.1~1.0μmの粒径を有し、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、およびこれらの混合物から選ばれる、請求項1~11のいずれかに記載の不透明クラスター粒子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は、米国仮出願第62/308,910号(出願:2016年3月16日)に係る利益を請求し、当該仮出願の全体を参照により本明細書に含めるものとする。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般には、バインダー、不透明ポリマー、顔料、および小粒径エキステンダー(small-size extender)から製造される顔料クラスターに関する。顔料クラスターを含まないペイント製品から製造される皮膜と比較して、得られる皮膜の機械的完全性と平面性を保持しつつ、ペイント製品を使用して製造される皮膜の不透明性を改良するために、大粒径エキステンダー粒子(large-size extender particles)の少なくとも一部の代わりに、顔料クラスターをペイント製品もしくは塗料組成物中に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
[0003]建築用ペイントなどの表面塗料の専門家や住宅消費者は、塗布しようとする塗料の下の表面を被覆するのに、塗布回数ができるだけ少なくて済むような塗料製品を好む。
【0004】
[0004]専門家や住宅消費者は、低光沢や平面仕上げが得られるような特定の建築塗料を求めている。こうした低光沢や平面仕上げを達成するために、メーカーはしばしば、平均粒径が約5μm~約50μmの無機質(例えば炭酸カルシウム)に粉砕できる大粒径エキステンダーを加える。メーカーがこうした大粒径エキステンダーを好むのは、塗料の顔料容積濃度を増大させる上で比較的低コストで、しかも有効性が高いからである。しかしながら大粒径エキステンダーをペイント製品に加えると、TiO2(白色不透明顔料としてペイント中に極めて一般的に使用されている)や他の顔料の込み合いが引き起こされ、こうした込み合い(crowding)のために、ペイントを表面塗料として塗布したときにペイント中の光散乱の効率が低下する。大粒径エキステンダーはさらに、ペイントを表面塗料として塗布したときに、ペイント中に低光散乱の区域をつくり出すことによって不透明性自体の低下を引き起こすこともある。ペイント皮膜中に低光散乱の区域があると、その結果として、ペイント皮膜中に微視的不均質性が生じる。言い換えると、被覆された表面が、「スポット」や「ウインドウ」を有するように見える。
【0005】
[0005]艶消しペイントにおいて生じる透明ウインドウ(これらは大粒径エキステンダーの存在により引き起こされる)の出現という良くない印象を緩和するために、メーカーは、ペイント組成物中のTiO2の量を増やすことがある。しかしながらこの方法は、一つにはTiO2が高価格であるために、好ましい解決策とは言えない。
【0006】
[0006]さらに、高屈折率酸化物や高屈折率TiO2を機械的に付着させた粘土粒子が、ペイント製品中に大粒径エキステンダーの代替品として一般的に使用されている。例えば、Wildtによる米国特許第3,726,700号では、TiO2や他の物質を付着させた粘土粒子を含む複合顔料を、ペイント中に使用したときに高い隠蔽力を有する顔料として使用することが開示されている。Freemanらによる米国特許第5,551,975号は、粘土とコロイダルシリカとの反応により得られるペイント用顔料を開示している。こうした粘土をベースとする顔料は、表面塗料用の大粒径エキステンダーに代わるものとして重要な進歩ではあるけれども、このような粘土ベース顔料は、粘土表面の孔径が大きくて且つ多孔度が高いために、ペイント中の他の物質(例えば、溶媒やラテックス等)を取り込みやすく、したがって複合粒子がそれらのボイド容積(ペイント皮膜の不透明性を高めるための重要な要件である)を失いやすいので、ペイント皮膜の不透明性を効果的に高めない。
【0007】
[0007]小胞性ビーズ(vesiculated beads)を使用してペイントの光散乱(すなわち不透明性)を高めることが、米国特許第4,489,174号に開示されている。このような小胞性ビーズは、従来の仕方で大粒径エキステンダーだけと配合されたペイントと比較したときに、同様のTiO2濃度にて不透明性を最大15%まで高めることがある。このような小胞性ビーズは、表面塗膜の不透明性と光沢特性を改良するのに役立つ連続的ポリマーマトリックスである。このような小胞性ビーズの制約点は、一つにはビーズ中のポリマーの濃度が高いためにビーズがコスト高になりやすいこと、そして均一に合成しにくい〔このため、光散乱効率と色合い強さ(tint strength)との整合性がなくなる〕ことである。
【0008】
[0008]顔料に共有結合したポリマーを含むより大きな粒径の顔料粒子を使用することが、Bardmanらによる米国特許第7,081,488号に開示されている。これらのポリマー顔料粒子は、ペイント塗膜の光散乱特性を改良することを目指している。しかしながら、このような顔料粒子にはボイドスペースが全くなく、このような顔料粒子のコストが比較的高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3,726,700号
【文献】米国特許第5,551,975号
【文献】米国特許第4,489,174号
【文献】米国特許第7,081,488号
【発明の概要】
【0010】
[0009]一態様によれば、不透明性の増大をもたらすために、ラテックスペイント組成物に適した不透明クラスター粒子が提供される。不透明クラスター粒子は、クラスター成分をほぼ均一な粒子に合体させるポリマーマトリックスバインダーを含む。クラスター成分は、閉鎖ボイド容積をそれぞれ限定する個別のポリマー粒子、複数種の任意の無機顔料粒子、および複数種の任意のエキステンダー顔料粒子を含む。ポリマーラテックスバインダーはさらに、クラスターのバインダーボイド容積を限定する細孔を含む。
【0011】
[0010]他の態様では、前段の不透明クラスター粒子を、1つ以上の任意の特徴と組み合わせることができる。例えば、不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の合計閉鎖ボイド容積と、ポリマーラテックスバインダーのバインダーボイド容積とを含む全ボイド容積を有してよい;全ボイド容積が、不透明クラスター粒子の約1容量%~約35容量%であってよい;各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積が、約0.4μm~約0.7μmの大きさであってよい;不透明クラスター粒子の平均粒径が、約5μm~約44μmであってよい;不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって限定される外表面を有してよく、ここで外表面が表面多孔性を有する;表面多孔性が、それぞれ約0.050μm~約0.150μmの大きさの1つ以上の隙間によって形成されてよい;個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、ポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高くてよい;不透明クラスターが、約1容量%~約30容量%のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子をさらに含んでよく、このとき残部は任意のエキステンダー顔料粒子である;不透明クラスター粒子中の顔料容積濃度が、臨界顔料容積濃度以上であってよい;エキステンダー顔料粒子が、約0.1μm~約1μmの大きさであってよく、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、およびこれらの混合物から選択することができる;および/または、無機顔料粒子が、約0.1μm~約1.0μmの大きさであってよく、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0012】
[0011]さらに他の態様では、ラテックスペイント組成物が開示される。幾つかの態様では、ラテックスペイント組成物は、溶媒(例えば水)、少なくとも1種の一次ポリマーバインダー、顔料粒子、および複数種の個別不透明クラスター粒子を含む。各個別不透明クラスター粒子は、クラスター成分を合体させてほぼ均一な粒子にする第2のポリマーラテックスバインダーを含んでよく、このとき第2のポリマーラテックスバインダーは、少なくとも1種の一次ポリマーバインダーと同じであるか、あるいは少なくとも1種の一次ポリマーバインダーとは異なる。クラスター成分は、閉鎖ボイド容積、複数種の任意の無機顔料粒子、および複数種の任意のエキステンダー顔料粒子をそれぞれ限定する個別ポリマー粒子を含む。クラスター中のポリマーラテックスバインダーは、バインダーのボイド容積を限定する細孔を有する。
【0013】
[0012]他の態様では、前段のラテックスペイント組成物を、1つ以上の任意の特徴と組み合わせることもできる。例えば、ラテックスペイント組成物中の個別クラスター粒子の顔料容積濃度が、臨界顔料容積濃度未満であってよい;各不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の合計閉鎖ボイド容積と、第2のポリマーラテックスバインダーのバインダーボイド容積を含む全ボイド容積を含んでよい;全ボイド容積が、不透明クラスター粒子の約1容量%~約35容量%であってよい;各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積が、約0.4μm~約0.7μmの大きさであってよい;顔料粒子が、無機顔料粒子の1種を含んでよい;ラテックスペイント組成物が、不透明クラスター粒子内で合体していない閉鎖ボイド容積をそれぞれ限定するさらなる個別ポリマー粒子、不透明クラスター粒子内で合体していないエキステンダー顔料粒子、およびこれらの混合物を含んでよい;ラテックスペイント組成物が、乾燥したときに、約50容量%~約85容量%の一次ポリマーバインダー(15-50OPVC)、不透明クラスター粒子内で合体していない、約0容量%~約45容量%のエキステンダー顔料粒子、それぞれが閉鎖ボイド容積を限定していて、不透明クラスター粒子内で合体していない、約0容量%~約20容量%の個別ポリマー粒子、約0容量%~約20容量%の無機顔料粒子(例えば二酸化チタン)、および約5容量%~約50容量%の不透明クラスター粒子を含んでよい;不透明クラスター粒子が、第2のポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって限定される外表面を有してよく、このとき外表面は表面多孔性を有する;表面多孔性が、平均するとそれぞれが約0.050μm~約0.150μmの大きさの隙間によって形成されてよい;不透明クラスター粒子中の個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、不透明クラスター粒子中の第2のポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高くてよい;それぞれの個別不透明クラスター粒子が、約5μm~約44μmの平均粒径を有する;それぞれの個別不透明クラスター粒子が、約1容量%~約30容量%の第2のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子を含み、残部がエキステンダー顔料粒子である;ならびに、個別不透明クラスター粒子中の顔料容積濃度が、臨界顔料容積濃度以上であってよい。
【0014】
[0013]さらに他の態様では、改良されたコントラスト比と不透明性を示すラテックスペイント組成物が開示される。幾つかの態様では、ラテックスペイント組成物は、少なくとも溶媒、ポリマーラテックスバインダー、任意の顔料粒子、および複数種の噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含む。それぞれの噴霧乾燥不透明クラスター粒子は、閉鎖ボイド容積をそれぞれ限定する、ほぼ均一な粒子に合体された個別ポリマー粒子、任意のポリマーバインダー、任意の無機顔料粒子、および任意のエキステンダー顔料粒子を含む。本発明のラテックスペイント組成物は、ペイント皮膜として乾燥させると、同レベルの顔料粒子を含むが、噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して、不透明度が約10%~約35%増大する。
【0015】
[0014]ラテックスペイント組成物のさらの他の態様では、前段のラテックスペイントを1つ以上の特徴と組み合わせることができる。例えば、ラテックスペイント組成物がさらに、同レベルの顔料粒子を含むが、噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して、100ユニットを基準として約1ユニット~約2ユニットのコントラスト比の増大、または1.0ユニットを基準として約0.01ユニット~約0.02ユニットのコントラスト比の増大を示してよい;約0~約30の光沢度と約0~約30の光輝度を有するフラット(艶消し) ペイント組成物、サテンペイント組成物、およびeg-shelラテックスペイント組成物を凌ぐ不透明性の改良を示すことができる;乾燥ラテックスペイント組成物が、ASTM D6736-08の手順に従って、25スクラブサイクルにて約20%未満の光沢度増大と約50%未満の光輝度増大を示してよい;ラテックスペイント組成物が、約10重量%未満のポリ塩化ビニル粒子を含んでよい(他のアプローチでは5重量%未満、他のアプローチでは1重量%未満、さらに他のアプローチではポリ塩化ビニル粒子を含まない);ラテックスペイント組成物がさらに、不透明度と艶消し仕上げペイント用に組み込む乾燥顔料(TiO2)との比に関して約1:60~約1:90の不透明因子(an opacity factor)を示してよい;噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の合計閉鎖ボイド容積と、ポリマーラテックスバインダーのバインダーボイド容積とを含む全ボイド容積を有してよい;全ボイド容積が、噴霧乾燥不透明クラスター粒子の約1容量%~約35容量%であってよい;各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積が、約0.4μm~約0.7μmの大きさであってよい;不透明クラスター粒子の平均粒径が、約5μm~約44μmであってよい;噴霧乾燥不透明クラスター粒子の平均粒径が、約5μm~約44μmであってよい;噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって限定される外表面を有してよく、ここで外表面が表面多孔性を有する;表面多孔性が、それぞれ約0.050μm~約0.150μmの大きさの1つ以上の隙間によって形成されてよい;個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、ポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高くてよい;ラテックスペイント組成物が、約1容量%~約30容量%のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子をさらに含んでよく、このとき残部がエキステンダー顔料粒子である;噴霧乾燥不透明クラスター粒子中の顔料容積濃度が、臨界顔料容積濃度以上である;任意のエキステンダー顔料粒子が、約0.1μm~約1μmの大きさであり、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、およびこれらの混合物から選ばれる;および/または、ラテックスペイント組成物がさらに、不透明度と組み込む乾燥顔料(TiO2)との比に関して、約1:60~約1:90の不透明因子を示してよい。
【0016】
[0015]さらに他の態様では、ラテックスペイント組成物が、広範囲の光沢度に対して、そして場合によっては広範囲の顔料容積濃度に対して改良されたコントラスト比と不透明性を示す。幾つかのアプローチでは、ラテックスペイント組成物が、溶媒、ポリマーラテックスバインダー、および顔料粒子を含み;このとき該ラテックスペイント組成物は、ペイント皮膜として乾燥させると、同レベルの顔料粒子を含むが、噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して約10%~約35%の不透明度増大を示し;約0~約30の光沢度と約0~約30の光輝度を有するフラット(艶消し) ペイント組成物、サテンペイント組成物、およびeg-shelラテックスペイント組成物を凌ぐ不透明性の改良が示される。ラテックスペイント組成物はさらに、複数種の噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含んでよく、このとき各噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、閉鎖ボイド容積をそれぞれ限定し、ほぼ均一な粒子に合体される個別ポリマー粒子、任意のポリマーバインダー、任意の無機顔料粒子、および任意のエキステンダー顔料粒子を含んでよい。
【0017】
[0016]さらに他の態様では、塗料組成物用の添加剤が開示され、該添加剤は、第1の屈折率を有する第1の成分、および第2の屈折率を有する第2の成分を含む。第1の成分と第2の成分は、合体したラテックスバインダー物質によって連結される。
【0018】
[0017]前段の添加剤は、上記パラグラフのいずれかに記載の任意の特徴のいずれかと組み合わせることができ;例えば、約1~約1.5の第1の屈折率と約1.5~約3.0の第2の屈折率をさらに限定してよく;及び/又は、第1の成分と第2の成分の屈折率の差が少なくとも約0.5~約2.0である。
【0019】
[0018]本発明は、特定の部品および部品の配置において物理的な形をとってよく、その実施態様が、本明細書において詳細に説明され、本発明の一部を構成する添付図面にて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】[0019]図1は、大粒径エキステンダーだけを含むペイントによって被覆された表面の典型的な実施態様である領域(a)と、領域(a)において示されるペイント中に含まれる大粒径エキステンダーの少なくとも一部の代わりに 不透明クラスターを含むペイントによって被覆された表面の典型的な実施態様である領域(b)の上面図を示す。
図2a】[0020]図2(a)は、不透明クラスターの典型的な実施態様の概略的断面図を示す。
図2b】[0021]図2(b)は、不透明クラスターの別の典型的な実施態様の概略的断面図を示す。
図3】[0022]図3は、不透明クラスターを製造するのに使用できる装置の概略図を示す。
図4】[0023]図4は、不透明クラスターの別の典型的な実施態様の概略的断面図を示す。
図5】[0024]図5は、大粒径エキステンダーと比較したときの、不透明クラスターの粒径分布のグラフ表示を示す。
図6a】[0025]図6(a)は、大粒径エキステンダーを含むペイントによって被覆された表面の不透明性のグラフ表示と、不透明クラスターを含むペイントによって被覆された表面の不透明性のグラフ表示を示す。
図6b】[0026]図6(b)は、大粒径エキステンダーを含むペイントによって被覆された典型的表面の光輝性のグラフ表示と、不透明クラスターを含むペイントによって被覆された典型的表面の光輝性のグラフ表示を示す。
図7】[0027]図7は、従来の不透明ポリマーと同等の不透明性を得るためには、クラスターを使用すると可能であること、そしてこれと比較した形にて、不透明性を改良するためには、大粒径エキステンダーを使用すると不可能であることのグラフ表示を示す。
図8】[0028]図8は、他の大粒径エキステンダーと同等の光輝性を低下させるためには、不透明クラスターを使用すると可能であること、そしてこれと比較した形にて、このような結果を得るためには、従来の不透明ポリマーを使用すると不可能であることのグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0029]これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、概略図は、必ずしも実際の生成物や成分を表しているわけではない(しかしながら、種々の成分を大まかには示しているものとする)。
【0022】
[0030]本明細書では、便宜のためだけに特定の専門用語が使用されているが、これにより本発明の開示内容が限定されることはない。本明細書で使用している関連言語は、同じ数字を使用して同等もしくは類似の要素を識別している図面を参照すると最も理解しやすい。さらに、図面においては、特定の装備がやや概略的な形で示されている場合がある。
【0023】
[0031]さらに留意しておかねばならない点は、「~の少なくとも1つ」(at least of)というフレーズが使用され、これに複数の要素が後続する場合、このフレーズは、要素のうちの1つ、または1つより多い要素の組み合わせを意味する、という点である。例えば、「第1の小型装置と第2の小型装置の少なくとも1つ」というフレーズは、本明細書では、第1の小型装置、第2の小型装置、または第1の小型装置と第2の小型装置、を意味する。同様に、「第1の小型装置、第2の小型装置、および第3の小型装置の少なくとも1つ」というフレーズは、本明細書では、第1の小型装置、第2の小型装置、第3の小型装置、第1の小型装置と第2の小型装置、第1の小型装置と第3の小型装置、第2の小型装置と第3の小型装置、または第1の小型装置と第2の小型装置と第3の小型装置、を意味する。
【0024】
用語
[0032]本明細書で使用している「不透明性」は、皮膜がその厚さに基づいて光を散乱させる能力を表す。不透明性は、S/milとして表示されることが多く、J.E. McNultとH.L. Ramseyによる「American Paint and Coatings Journal, April 1988 p.46」に記載のASTM D2805-70の変法を使用して、重量ドローダウン法によって測定されるKubelka-Munk散乱係数の形式であってよい。
【0025】
[0033]本明細書で使用している「不透明ポリマー」は、限定された容積を封入もしくは実質的に封入するポリマーネットワークを表す。不透明ポリマーは、個別ポリマー粒子であってよく、このとき各ポリマー粒子が、閉鎖ボイド容積を限定する。幾つかの実施態様では、不透明ポリマーがポリスチレンを含む。不透明ポリマーは供給メーカーから市販されている。代表的な市販不透明ポリマーは、Ropaque Ultra EF及び/又はRopaque OP-96EF(どちらも、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から市販されている)である。特定の実施態様では、不透明ポリマーの限定容積が、光を散乱させるボイドを形成する空気を含む。他の特定の実施態様では、不透明ポリマーの限定容積が液体(例えば水)を含む。限定容積内に液体を含む実施態様の場合、最終的には液体が空気で置き換えられ、これにより光を散乱させるボイドがもたらされる。不透明ポリマーをペイントや他の塗料中のTiO2に代わる部分的置換物として使用して、ペイントや塗料における隠蔽度と白色度を高めることができる。
【0026】
[0034]本明細書で使用している「バインダーボイド容積」は、表面に塗料の一部として塗布し、乾燥したときの、空気を含む合体ポリマー構造物(例えば合体バインダー)の容積パーセントを表す。
【0027】
[0035]本明細書で使用している「不透明ポリマーボイド容積」は、不透明ポリマーによって封入もしくは実質的に封入されるボイドの容積を表す。
[0036]本明細書で使用している「ボイド容積」または全ボイド容積は、表面に塗料の一部として塗布し、乾燥したときの、空気を含む物質の容積パーセントを表す。ボイド容積または全ボイド容積は、一般には、不透明ポリマーボイド容積とバンダーボイド容積の合計である。
【0028】
[0037]本明細書で使用している「顔料クラスター」または不透明クラスターは一般に、バインダー、不透明ポリマー、顔料、エキステンダー、及び/又は、ペイント組成物の特性を高めるか又は変化させる他の物質、等の種々の成分を表し、このとき該成分は、前述のような粒子に合体させることができる。幾つかの実施態様では、顔料クラスターと不透明クラスターが、化学結合や共有結合によって一緒に保持されない。他の実施態様では、顔料クラスターと不透明クラスター(例えば顔料)が、水素結合や他のタイプの結合によって他の成分(例えばバインダー)に保持されない。
【0029】
[0038]本明細書で使用している「顔料容積濃度」または「PVC」は、全固体の容積と比較した顔料の容積を示す数を表す。ペイントや塗料の分野では、バインダーが全ての顔料と他の原材料とを結びつけてペイントにするための物質として作用するので、PVCは有用な尺度であり、PVC値により、ペイントの他のすべての成分を含めて、ペイントがどんなものに塗布されようとも、ペイントがそれに適切に付着するのを可能にするだけの十分な量のバインダーが存在する、ということが確実にわかる。ペイントが顔料を全く含有しなければ、ペイントは通常かなり光沢があり、PVCがゼロである。一例は透明光沢ペイントである。艶消しペイントは、顔料の組み込み量が極めて高く、PVCが高い(通常は約55%~約80%の範囲)。顔料を組み込むことができる別の代表的なPVC範囲は、約60%~約75%である。プライマーとアンダーコートは、半光沢ペイント、サテンペイント、および低光輝ペイントがそうであるように、PVCが30%~約50%の範囲である。光沢色ペイント(gloss colored paint)のPVCは、該ペイントの色に応じて3%~約20%の範囲であってよい。一般には、光沢ペイントの色が暗くなるほど、PVCが低くなる。さらに、ペイントのPVCが低くなるほど、その機械的特性(例えば、引張強度とその結果としての屋外耐久性)が良くなる、と考えられる。PVCはパーセント値として表示することができる。例えば、ある塗料のPVCが30である場合は、容積基準にて、バインダー/顔料ブレンド全体の30%が顔料であり、70%がバインダーソリッドである。
【0030】
[0039]本明細書で使用している「臨界顔料容積濃度」または「CPVC」は、顔料粒子を湿潤させる(完全に取り囲む)だけの十分なバインダーが存在するポイントである。PVCがCPVCに達し、次いでCPVCを超えると、ペイントの機械的特性が低下する。CPVCを超えると、顔料の表面を充足して隙間スペースを満たすためのバインダーが不十分となって、皮膜に空気が入り込み、その結果、皮膜の完全性が低下する。しかしながら、CPVCを超えると、空気と顔料との界面が増大する結果、顔料散乱効率が実質的に高まる。CPVC未満の皮膜は過剰の樹脂を含み、光を反射するか又は光沢があるように見える平滑な表面を示すことがある。皮膜のPVCがCPVCに近づくと、皮膜はより艶なしに見えるようになる。しかしながら、上記のような機械的特性の低下は、ペイントメーカーが、どの程度CPVCに近くPVCを提供したいか、という点で限定因子となる。
【0031】
[0040]本明細書で使用している「Yblack」は、塗料の反射率値を表し、塗料が黒のバックグラウンドに対して被覆する能力の目安となる。Yblackの測定は、コントラスト比の測定の一部として行うことができる。
【0032】
[0041]本明細書で使用している「Ywhite」は、塗料の反射率値を表し、塗料が白のバックグラウンドに対して光を反射する能力の目安となる。Ywhiteの測定は、コントラスト比の測定の一部として行うことができる。
【0033】
[0042]本明細書で使用している「コントラスト比」はYblack/Ywhiteとして算出され、黒色支持体上のある皮膜の反射率と、白色支持体上の同一皮膜の反射率との比である。
【0034】
[0043]本明細書で使用している「バインダー」は、種々の成分(例えば、顔料、小粒径エキステンダー、及び/又は不透明ポリマー)から、これら成分を合体させ、機械的に連結することによって、クラスターを形成させるのに使用することができる物質である。ラテックスポリマーは、分散剤を使用して水中に分散させることができるバインダーの一例(これに限定されない)であり、水分が蒸発するか、あるいは追い出されると、これらの固体粒子が結びつく(すなわち合体)ことによって皮膜の形成(または他のネットワーク形成)が起こる。本発明において使用することができる代表的なバインダーとしては、ポリビニルアセテート、ビニルアクリル系誘導体、スチレンブタジエン、スチレンアクリル系誘導体、およびエチレンビニルアクリル系誘導体などがあるが、これらに限定されない。他の代表的なバインダーとしては、溶媒を含むバインダーや水希釈性バインダーなどがあるが、これらに限定されない。
【0035】
[0044]本明細書で使用している「小粒径エキステンダー」は、鉱物粒子、粘土粒子、粉砕シリカ粒子、沈降シリカ粒子、あるいは顔料によって確実に得られるペイントの色に大幅に影響を及ぼすことなく、所望する隠蔽能力や光輝性などを達成するために必要とされる顔料の量を減らすのに使用できる他のフィラー粒子を表しており、約0.1μm~約1μmの粒径を有する。商業的に購入できる小粒径エキステンダーとしては、Omyacarb UF(Omya North America)があるが、これに限定されない。クラスター中に使用されるエキステンダー顔料粒子は、小粒径のエキステンダー粒子であってよい。塗料への応用に際して当業者が使用するいかなる適切な小粒径エキステンダーも、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の塗料製品やペイント製品に使用することができる。
【0036】
[0045]本明細書で使用している「大粒径エキステンダー」は、鉱物粒子、粘土粒子、あるいは顔料によって確実に得られるペイントの色に大幅に影響を及ぼすことなく、所望する隠蔽能力や光輝性などを達成するために必要とされる顔料の量を減らすのに使用できる他のフィラー粒子を表しており、5μmより大きい粒径を有する。幾つかの実施態様では、大粒径エキステンダーは、約5μm~約50μmの大きさを有する。他の実施態様では、大粒径エキステンダーは、約10μm~約15μmの大きさを有する。不透明クラスター中に使用されないか又は合体しないエキステンダー顔料粒子(しかしながら、別の方法でラテックスペイント組成物に加えられる)は、大粒径エキステンダー粒子であってよい。
【0037】
[0046]本明細書で使用している「細孔」は、構造物(例えば、ポリマー、ポリマークラスター、または不透明クラスター等)の表面における開口を表す。一実施態様では、細孔が不透明クラスターの外表面に生じ、不透明クラスターの外表面の成分は、バインダー、不透明ポリマー、小粒径エキステンダー、顔料、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる成分を含んでよい。
【0038】
[0047]本明細書で使用している「光輝性」は、時として「光沢」を表すこともある。ほとんどのエキステンダーは、ほとんどの塗料のバインダーの屈折率に近い屈折率を有するので、CPVC未満では、エキステンダー/ラテックス皮膜は、可視光線に対してほぼ透過性である、と思われる。コーティングにおいては、光沢仕上げとは、施された(すなわち「仕上げられた」)塗膜を有する表面が、光沢があってガラス様である、ということを示している。表面の光沢は、色とは無関係の、表面からの光の反射として説明されている。光輝性を測定するには、ASTM D523またはD532-14を使用することができる。光が表面から反射される規定角度は、変わってもよいが、85シーン(Sheen)に調整するという本発明の目的に適うよう、光を反射する表面に対して85°にて測定される。ASTM D523またはD532-14はさらに、光を反射する表面に対して60°にて測定される60グロス(Gloss)についての説明を得るのにも使用することができる。当業者であれば、各塗料の内容物における光沢の相対的なレベル(低対高)を決定することができる。
【0039】
[0048]本明細書で使用している「ペイント」は、種々のタイプの原材料(それぞれがそれ自体の機能を有する)を含み、最終的な生成物もしくは塗膜において所望の特性を達成するためにバランスをとらなければならない任意の混合物を表す。ペイントの2つの主要な機能は装飾と保護である。ペイントは、ペイントまたは最終塗膜に種々の機能を付与する、溶媒(溶媒ベースのペイント用の石油蒸留物から誘導される揮発性成分、低VOC、非VOC、または水ベースのペイント用の水、を含んでよい)、バインダー、顔料、フィラー(例えば、1種のエキステンダー、または異なる粒径の複数種のエキステンダー)、および添加剤を含有してよい。実施態様は、不透明クラスターを、必要に応じて溶媒、バインダー、顔料、フィラー、および添加剤の少なくとも1つと組み合わせて、一成分として含んでよい。
【0040】
[0049]本明細書で使用している「艶」は、機械力(例えば摩耗)にさらされた後の、塗膜が光沢度を保持する能力を表す。艶は、ASTM D6736-08に従って測定することができる。
【0041】
[0050]本明細書で使用している「屈折率」は、光が物質または媒体を介してどのように伝わるかを示す測定値を表す。必要であれば、屈折率は、ASTM D1218、D1747、またはD542の1つ以上に従って測定することができる。
【0042】
不透明クラスター粒子の成分
[0051]本発明は、とりわけ低光沢と高透明性の表面皮膜をもたらす表面塗料(例えばラテックスペイント)の成分を形成するのに適合した不透明クラスター粒子を含む組成物、該不透明クラスター粒子の使用方法、および該不透明クラスター粒子の製造方法に関する。本発明のユニークな不透明クラスターは不透明性を増大させ、PVCを、一般的に使用されている従来の不透明ポリマーと同程度にまで増大させる。しかしながら従来の不透明ポリマーとは異なって、本発明の不透明クラスターはさらに、(大粒径エキステンダー粒子と同等の)光沢と光輝性を低減して、艶消し仕上げもしくは卵殻仕上げを達成するのにも使用することができる。したがって、本発明のクラスターは、従来の不透明ポリマーの場合には得られなかったような広範囲の光沢度と光輝度にわたって使用することができる。
【0043】
[0052]本明細書についてさらに詳細に説明すると、図1は、領域(a)における白色裏材料11に対するペイントの塗布皮膜10の例示的な上面図を示している。図1は、わかりやすくするために、皮膜の最下境界を越えた形で示されており、塗布皮膜が、大粒径エキステンダーを含有し、塗布皮膜10中にウインドウ12(図1では、周囲の皮膜物質と比較して明色のスポットとして示されている)が出現している。ウインドウが形成されると、支持体を完全に隠蔽するためにペイントのさらなるコーティングが必要となるので、このようなウインドウ形成は、ユーザーにとって望ましくない。図1の領域(b)は、領域(a)における塗布皮膜と同様の、白色裏材料11に対する塗布皮膜10を含み、このとき領域(b)の塗布皮膜10は、本発明の不透明クラスターを含むペイントを使用して形成されている。不透明クラスターを含んで調製される表面コーティングにおいては、塗布皮膜10中のウインドウ12の出現が大幅に減少するが、ウインドウ12が完全になくなる必要はない。幾つかの実施態様では、バインダーポリマーが合体して、ネットワークまたはバックボーンを形成する。他の実施態様では、バインダーポリマーと他の成分とが共有結合していない。特定の実施態様では、不透明ポリマー粒子は個別ポリマー粒子である。他の特定の実施態様では、出口温度を十分に高い温度にして(例えば、不透明ポリマーのガラス転移温度(Tg)より高くして) 不透明ポリマーを処理する。これについては、「不透明クラスターの製造」に関して詳細に後述する。さらに他の実施態様では、不透明ポリマーと他の不透明ポリマーまたはバインダーとを合体させる。
【0044】
[0053]図2(a)は、不透明クラスター20の代表的な実施態様の断面図を示す。クラスター20は、外表面21を有するバインダー物質23の容積を含み、外表面はさらに、複数の隙間または細孔22を含む。複数の細孔22は、集団となって不透明クラスター20の多孔性を確実に形成する。一実施態様では、外表面21が、バインダー物質またはポリマーラテックスバインダーを含む。別の実施態様では、外表面が、バインダー、不透明ポリマー、顔料、大粒径エキステンダー、およびこれらの組み合わせからなる任意の数の成分を含む。幾つかの実施態様では、隙間または細孔22が、約0.050μm~約0.150μmの大きさの直径を有する。他の実施態様では、細孔が約0.1μmの大きさの直径を有する。特定の理論で拘束されるつもりはないが、細孔の直径または大きさが比較的小さいことと、不透明クラスター20の内部構造の相対的なねじれのために、ペイント液からのラテックスが、不透明クラスター20内でボイド(不透明クラスター20中のボイドと任意のバインダー中ボイド28との両方)中に入り込まず(すなわち、ラテックス物質が不透明クラスター20内のボイド内の空気に取って代わらず)、したがって不透明クラスター20の光散乱能力等の光学的特性が保持され、不透明クラスター20が、大粒径エキステンダーに代わる効果的な代替物質となり(例えば、粘土と異なって、ペイント液からのラテックス物質によって貫入される)、したがって粘土粒子からその光学的特性が失われる、と考えられる。
【0045】
[0054]不透明クラスター20は、不透明クラスター20の種々の成分を機械的に合体させるか又は結びつけて、不透明ポリマー24、小粒径エキステンダー25(またはエキステンダー顔料粒子)、及び/又は顔料26(または無機顔料粒子)を含む混合物を形成させるバインダー物質またはポリマーラテックスバインダー23をさらに含む。不透明ポリマー24は、不透明ポリマーボイド容積27を封入もしくは実質的に封入するポリマーを含んでよい。不透明ポリマー24は、閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定する個別ポリマー粒子を含んでよい。幾つかの実施態様では、不透明ポリマーのポリマーはポリスチレンである。適切な不透明ポリマーは、Ropaque Ultra EFまたはRopaque OP-96 EF等の供給業者から入手することができる(どちらもミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から市販)。幾つかの実施態様では、不透明ポリマーボイド容積27は約0.3μm~約0.8μmの直径または大きさを有する。他の実施態様では、不透明ポリマーボイド容積27は約0.4μm~約0.7μmの直径を有する。さらに他の実施態様では、不透明ポリマーボイド容積27は約0.5μm~約0.6μmの直径を有する。幾つかの実施態様では、不透明ポリマー24は約0.075μm~約0.150μmのポリマー厚さを有する。他の実施態様では、不透明ポリマーは約0.100μm~約0.120μmのポリマー厚さを有する。不透明クラスター20はさらに、クラスターの形成中時に(例えば噴霧乾燥時に)不透明クラスター20内に生じる空きスペースの結果であるバインダーボイド容積28を含む。
【0046】
[0055]図2(b)は、本発明の不透明クラスター20の別の実施態様を示す。図2(b)に示す実施態様では、外表面21は、バインダー物質23、不透明ポリマー24、顔料26、および小粒径エキステンダー25を含んでよい。本明細書に詳細に説明されているように、ポリマー24、顔料26、および小粒径エキステンダー25の量は、不透明クラスターに応じて変わってよく、不透明クラスターの製造時における供給量によって決まる。驚くべきことに、機能性不透明クラスターを得るのに全ての成分が必要というわけではない、ということが見いだされた。例えば、図4は、本発明の不透明クラスターのさらに他の実施態様を示す。図4の実施態様では、不透明クラスターは、不透明ポリマー24のTgよりかなり高い温度で処理された不透明ポリマー24だけを含む。
【0047】
[0056]バインダー物質またはポリマーラテックスバインダー23は比較的低いガラス転移温度(Tg)を有してよく、幾つかの実施態様では、バインダー物質23のTgが約0℃~約60℃である。他の実施態様では、バインダー物質23のTgは約5℃~約60℃である。さらに他の実施態様では、バインダー物質23のTgが約15℃~約50℃である。
【0048】
[0057]不透明ポリマー24または閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定している個別ポリマー粒子のポリマーは比較的高いガラス転移温度(Tg)を有してよく、幾つかの実施態様では、不透明ポリマーのTgが約100℃~約120℃である。他の実施態様では、不透明ポリマーのTgが約100℃~約110℃である。
【0049】
[0058]いくつかの実施態様では、バインダー23のTgと不透明ポリマーのTgとの差が80℃超である。他の実施態様では、バインダー23のTgと不透明ポリマーのTgとの差が40℃超である。さらに他の実施態様では、バインダー23のTgと不透明ポリマーのTgとの差が10℃超である。
【0050】
[0059]幾つかの実施態様では、バインダーがラテックス物質である。本発明において使用できる代表的なバインダーとしては、ポリビニルアセテート、ビニルアクリル系誘導体、スチレンブタジエン、スチレン、スチレンアクリル系誘導体、およびエチレンビニルアクリル系誘導体などがあるが、これらに限定されない。他の代表的なバインダーは、溶媒含有バインダーと水希釈性バインダーである。
【0051】
[0060]顔料または無機顔料粒子26として使用するための物質の1つの適切な例はTiO2であるが、これに限定されない。他の実施態様では、顔料26は酸化亜鉛を含む。しかしながら理解しておかねばならないことは、本発明の範囲は、顔料として二酸化チタンまたは酸化亜鉛に限定されないという点、そして任意の適切な物質を使用することができる、という点である。幾つかの実施態様では、顔料26が約0.1μm~約1.0μmの直径を有する。他の実施態様では、顔料26が約0.3μm~約0.5μmの直径を有する。
【0052】
[0061]一実施態様では、本発明の小粒径エキステンダー25(またはクラスター内のエキステンダー顔料粒子)がCaCO3であってよい。小粒径エキステンダーとして使用できる物質の他の例としては、粘土、シリカ(粉砕シリカと沈降シリカ)、微細タルクもしくは当業界において使用できる他の任意の小粒径エキステンダー、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。幾つかの実施態様では、小粒径エキステンダー25の粒径が約0.1μm~約1.0μmである。他の実施態様では、小粒径エキステンダー25の粒径が約0.3μm~約0.8μmである。さらに他の実施態様では、小粒径エキステンダー25の粒径が約0.5μm~約0.7μmである。幾つかの実施態様では、不透明クラスター20がいかなる小粒径エキステンダー25も含まない。
【0053】
[0062]不透明クラスター20は、バインダーと成分との機械的な絡み合い又は合体により形成される。幾つかのアプローチでは、クラスター内に共有結合や化学結合が存在しない。温度上昇によって(噴霧乾燥等の方法を使用して)不透明クラスター20を形成させると、比較的均一な不透明クラスター20が得られる。不透明クラスター20はさらに、不透明ポリマーボイド容積27と不透明クラスター20中のバインダーから追い出される水によるバインダーボイド容積28とを含むボイド容積を有する。特定の実施態様では(これらに限定されない)、ボイド容積は、不透明クラスター20を基準として約1容量%~約35容量%である。他の実施態様では(これらに限定されない)、ボイド容積は不透明クラスターを基準として約15容量%~約30容量%である。さらに他の実施態様では(これらに限定されない)、
ボイド容積は、不透明クラスターを基準として約25量%~約30容量%である。
【0054】
[0063]幾つかの代表的な不透明クラスター20では、不透明クラスター20中の顔料26のソリッドの容量%は0~約6%である。他の代表的な実施態様では、不透明クラスター20中の顔料26のソリッドの容量%はCPVC以上である。さらに他の実施態様では、不透明クラスター中の顔料26のソリッドの容量%は約1%~約6%であり、他のアプローチでは約2%~約4%であり、さらに他のアプローチでは約2.5%である。
【0055】
[0064]他の代表的な実施態様では、不透明クラスター20中のバインダーのソリッドの容量%は約1%~約30%である。他の代表的な実施態様では、不透明クラスター中のバインダーのソリッドの容量%は約5%~約30%である。
【0056】
[0065]本発明の不透明クラスター20の幾つかの実施態様では、不透明ポリマー24のソリッドの容量%が約0%~約90%である。他の代表的な実施態様では、不透明クラスター20中の不透明ポリマー24のソリッドの容量%が約10%~約70%である。さらに他の代表的な実施態様では、不透明クラスター20中の不透明ポリマー24のソリッドの容量%が約30%~約50%である。
【0057】
[0066]幾つかの代表的な実施態様では、小粒径エキステンダー25のソリッドの容量%が約0%~約90%である。多くの実施態様では、小粒径エキステンダー25のソリッドの容量%が不透明クラスターの残部を含む。
【0058】
[0067]幾つかの代表的なアプローチでは、不透明クラスターが約7ポンド/ガロン~約20ポンド/ガロンの密度を示してよい。他のアプローチでは、不透明クラスターが約7ポンド/ガロン~約15ポンド/ガロンの、そしてさらに他のアプローチでは約10ポンド/ガロン~約12ポンド/ガロンの密度を示してよい。このような代表的な密度は、本明細書に記載の不透明クラスターの種々のアプローチ全てに当てはまることは言うまでもない。
【0059】
[0068]幾つかの態様では、本明細書に記載の不透明クラスターは、本明細書全体を通して記載の種々の粒子成分を含む構造化された又は設計された複合粒子である。成分もしくは粒子成分は、複合粒子の全体にわたってむらなく、ほぼ均一または均質に分散もしくは分配されている。幾つかのアプローチでは、クラスター粒子は噴霧乾燥粒子である。言い換えると、そして幾つかのアプローチでは、本発明の複合粒子はコア/シェル型構造をとっておらず、いかなる塗膜もしくは表面層も有していない。
【0060】
不透明クラスターの製造
[0069]図3は、本発明の不透明クラスターを製造するのに使用できる噴霧乾燥機30を示す。図3に示す実施態様によれば、噴霧乾燥機30は、不透明クラスター20中に組み込もうとする成分(例えば、顔料26、不透明ポリマー24、およびラテックス等)を含むスラリーを霧化するためのチャンバー36中に流入空気を供給する給気ブロアー31を含む。給気ブロアー31は、容積式回転送風機、タービン、あるいはチャンバー36中に容積流量を供給して本明細書に記載の霧化を達成することができる他の任意の適切なエアフロー装置であってよい。電気エアーヒーター34(例えば、放射エレメント、蒸気導管、あるいは給気ブロアー31によって供給される空気と熱連通状態にある他の適切な熱源)は、ノズル38を介してチャンバー36中に導入される流入空気の所望の温度が確実に得られるように操作可能である。霧化スラリーが、排気ブロアー32(給気ブロアー31と同様に、容積式回転送風機、タービン、あるいは本明細書に記載の排気容積流量を確実に得ることができる他の任意の適切なエアフロー装置であってよい)により確実に得られる負圧によってチャンバー36からサイクロン乾燥機33中に吸引される。チャンバー36を通過すると、乾燥粉末の形態の連行不透明クラスター20が、フィルター33によってエアフローから取り出される。フィルター33は、連行粉末の実質的な部分をエアフローから取り出す任意の適切な分離装置(例えば、遠心力を使用して、連行物質を、フィルター材料を取り付けた有孔周壁に向かって半径方向外向きに追い出すサイクロン分離機)であってよい。エアフローは、場合によっては、粒状不透明クラスター20が捕集容器37(大形ボール弁または他の適切な流量制御装置でシステムから隔離していてよい)中に堆積するのを妨げられることがある。
【0061】
[0070]噴霧乾燥機30の種々の成分の操作を、不透明クラスター20の製造方法に従って制御するために制御装置39が設けられる。制御装置39の一実施態様は一般に、コンピュータープロセッサ42によって実行すると、制御装置39を噴霧乾燥機30の種々の操作可能成分を連通させて、本明細書に記載の条件下で不透明クラスター20を製造するコンピューター実行可能機器、を格納する非一過性のコンピューター可読媒体41を含む。
【0062】
[0071]使用時には、給気ブロアー31と排気ブロアー32を制御装置39によって開始して適切な量のノズルエアーを導入し、これにより透明クラスタースラリーの霧化を起こしやすくする。噴霧乾燥機30のフィルター33には、粉末をフィルター33から時々放出するためのエアパルス装置44が取り付けられている。次いで、入口35にて所望の温度をもたらすために電気エアーヒーター34が設けられている。
【0063】
[0072]チャンバー36の出口の温度が約85℃に達すると、一定の出口温度が保持されるよう、水をある割合にて噴霧器にポンプ送りする。噴霧乾燥機30が、水と噴霧空気だけを含む状態で所望の出口温度を有する定常状態に達したら、水の供給を、不透明クラスター20中に組み込もうとする成分を含むスラリーに切り替える。チャンバー36をいったん通過したら、得られる乾燥粉末をサイクロンにて分離し、ボール弁40またはこのような用途に適切な他の任意の弁を使用して容器37中に捕集する。
【0064】
[0073]図4は、かなり高い出口温度(不透明ポリマー24のTg超)にて処理して合体させた状態の不透明ポリマー24だけを含む、本発明の代表的な不透明クラスター20の断面図を示す。東京図4に示す不透明クラスター20では、不透明ポリマー24が、不透明クラスター20の外表面21に向かって、不透明クラスター20の中央領域内よりも多い量にて分配されている。特定の理論で拘束されるつもりはないが、
製造プロセス時において、噴霧乾燥機中への成分のキャリヤーとして作用する水が、噴霧乾燥プロセス中に蒸発すると、より軽質及び/又はより低密度の成分(例えば不透明クラスター)が外表面に向かって移動される、と考えられる。他の実施態様では、バインダー物質はさらに、同じ提唱原理に従って外表面にて合体してもよい。
【0065】
不透明クラスターの粒径分布
[0074]ペイント組成物の一実施態様に含まれる不透明クラスター20の容量パーセントは約50%~約60%である。特定の実施態様では、ペイント組成物中の不透明クラスターの容量パーセントはCPVC以下である。
【0066】
[0075]図5は、本発明の不透明クラスターの粒径分布、ならびに商業的に利用する上で入手可能な典型的な大粒径エキステンダー(Duramite、ジョージア州ロズウェルのImerys Performance Materials社から市販)の粒径分布を示す。驚くべきことに、本発明に従って製造された不透明クラスターは、典型的な大粒径エキステンダーと比較すると、粒径が実質的に同等である(すなわち、比較的均一な粒径分布を有する)、ということが見いだされる。図5から、本発明の不透明クラスターは、粒径分布が、市販の大粒径エキステンダーと実質的に同等である、ということが明らかである。一実施態様では、不透明クラスターは約5μm~約44μmの平均粒径を有する。他の実施態様では、不透明クラスターは約7μm~約30μmの平均粒径を有する。さらに他の実施態様では、不透明クラスターは約10μm~約20μmの平均粒径を有する。さらに他の実施態様では、不透明クラスターは約10μm~約15μmの平均粒径を有する。不透明クラスターをペイントコーティングに使用したときに均一で粒子の粗くない組成物が得られるよう、粒径が均一で比較的小さい(粒径が325メッシュ超)エキステンダーを得るのが非常に望ましい。
【0067】
組成物の特性
[0076]本発明の不透明クラスターを、大粒径エキステンダーの少なくとも一部(必要に応じて全部未満であっても、あるいは必要に応じて全部であってもよい)に代わりにペイント組成物に加えると、本発明の不透明クラスターは、大粒径エキステンダーを使用する、不透明クラスター非含有の対照標準ペイント組成物と比較して、改良された光学的特性をもたらす。表1は、不透明クラスターを含む代表的なペイント組成物と、不透明クラスターを全く含まない対照標準のペイント組成物との比較を示す。
【0068】
[0077]表1からわかるように、本発明のペイントクラスターにより組成物のコントラスト比(C/R)と不透明度(S)が改良されている。表1において、NVVは容積ソリッドであり、PVCは顔料容積濃度であり、エキステンダーとTiO2の量はポンド/100ガロンとして、あるいはより簡単には100で割ってポンド/ガロンとして表示される。TiO2は、実際には75%スラリーである(すなわち、TiO2の実際の量は、表記の量に0.75を掛けることによって算出できる)。Yはそれぞれ白と黒に対する反射率であり、C/Rはコントラスト比である。
【0069】
【表1】
【0070】
[0079]サンプルAのコントラスト比は、不透明クラスターを含まない対照標準のコントラスト比(C/R)より高い。サンプルAの不透明度(S/mil)は、対照標準の不透明度より約32%高い。
【0071】
[0080]図6(A)は、42.5PVCの不透明ポリマー、42.5PVCのCaCO3、5PVCのTiO2、および不透明クラスターの残部であるラテックスを含有する典型的な不透明クラスターを含むペイント組成物と、不透明クラスターの残部がラテックスと等量の粉砕炭酸カルシウム(大粒径エキステンダーとして使用)である場合のペイント組成物を使用して得られる塗膜の不透明度測定値のグラフ表示である。使用するペイントは、約38%のバインダー、10%の水、13%の大粒径エキステンダー、20%の顔料スラリー、および残部である他の添加剤を含む。x軸はペイントのエキステンダーPVCである。グラフのクラスター組成物は、クラスターと大粒径エキステンダーの両方を含む。ペイント配合物という観点から、PVCを高めれば、ラテックスをエキステンダーもしくは不透明クラスターに置き替えることができる。大粒径エキステンダーと不透明クラスターのどちらも、得られる塗膜の不透明度を向上させる。
【0072】
[0081]図6(b)は、図6(a)に記載の組成物の光輝度測定値のグラフ表示である。大粒径エキステンダーと不透明クラスターを含有する組成物(すなわちクラスター組成物)は光輝度が比較的高いが、不透明クラスターを含有する組成物は光輝度が比較的低い。
【0073】
[0082]本発明のペイントの代表的な実施態様は、少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の顔料、およびあるPVCの不透明クラスターを含むペイント製品であり、このときペイント中の不透明クラスターのPVCがCPVC未満である。しかしながら、不透明クラスターの実施態様は、CPVCに近いあるPVCの顔料を不透明クラスター中に含む。
【0074】
[0083]さらに他の態様では、不透明クラスターは、塗料(例えばペイント組成物)に使用するための構造化された、または噴霧乾燥された粒状の光学的粒子であってよい。不透明クラスターは、1~3.0の屈折率を有する1種以上の個別成分を含むよう、粒子内で合体される、選定された屈折率を有する種々の光学活性成分を含んでよい。第1の成分と第2の成分の屈折率の差は約0.5~約2.0であってよい。
【0075】
[0084]例えば、そして1つのアプローチでは、本発明の不透明クラスターは、第1の屈折率を有する第1の成分または粒子を含んでよい。第1の成分または粒子は、約1.5~約3.0の、他のアプローチでは約1.5~約2.7の、さらに他のアプローチでは約2.0~約3.0の屈折率を有してよい。幾つかのアプローチでは、第1の成分は、無機顔料粒子(例えば二酸化チタン)、ラテックスバインダー、または炭酸カルシウム等、あるいはこれらの組み合わせであってよい。
【0076】
[0085]不透明クラスターは、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の成分または粒子をさらに含んでよい。第2の成分または粒子は、約1.0~約2.0の、他のアプローチでは約1.0~約1.5の、他のアプローチでは約1.2~約2.0の、さらに他のアプローチでは約1.0~約1.2の屈折率を有してよい。幾つかのアプローチでは、第2の成分は、空気または水の内部ボイドを画定する個別ポリマー粒子であってよい。他のアプローチでは、第2の成分は不透明ポリマーであってよい。第2の成分の内部ボイドの粒径は、約0.3μm~約0.8μmであってよい。
【0077】
[0086]幾つかのアプローチでは、クラスターは、第1または第2の屈折率と同じでも異なっていてもよい第3の屈折率を有する、さらに別の、すなわち第3の成分または粒子を含んでよい。第3の成分は約1.4~約2.0の屈折率を有してよい。第3の成分は小粒径エキステンダー粒子であってよい。第1、第2、および第3の成分または粒子は、ラテックスバインダーによって複合粒子に合体されてよい。
【実施例
【0078】
[0087]不透明クラスターとこのようなクラスターを含むラテックスペイント組成物の使い方と利点を以下の実施例によって説明するが、下記の実施例は例示のためのものであって、これにより限定されることはない。特に明記しない限り、量、パーセント値、および比率はすべて重量基準である。
【0079】
[0088]実施例1
[0089]Omyacarb UF、OP-96、TiO2、およびラテックスの50%ソリッドスラリーを噴霧乾燥することによって典型的な不透明クラスターを作製した。最終的なクラスターは、容量基準にて、42.5%のOmyacarb UF、42.5%のOP-96、5%のTiO2、および10%のラテックスバインダーを含む。Malvern Mastersizer(Malvern Instruments, Malvern, UK)を使用して測定した不透明クラスターの平均粒径は12μmであった。
【0080】
[0090]実施例2
[0091]ハイドライトクレー(hydrite clay)、OP-96、TiO2、およびラテックスの44%ソリッドスラリーを噴霧乾燥することによって他の典型的な不透明クラスターを作製した。最終的なクラスターは、ソリッドの容量%基準にて、37.5%のクレー、37.5%のOP-96、5%のTiO2、および20%のラテックスバインダーを含む。不透明クラスターの平均粒径は12.7μmであった。
【0081】
[0092]実施例3
[0093]Omyacarb UF、OP-96、およびラテックスの50%ソリッドスラリーを噴霧乾燥することによって他の典型的な不透明クラスターを作製した。最終的なクラスターは、ソリッドの容量%基準にて、30%のOmyacarb UF、60%のOP-96、および10%のラテックスバインダーを含む。不透明クラスターの平均粒径は14.6μmであった。
【0082】
[0094]実施例4
[0095]OP-96とラテックスの31%ソリッドスラリーを噴霧乾燥することによって他の典型的な不透明クラスターを作製した。最終的なクラスターは、ソリッドの容量%基準にて、90%のOP-96と10%のラテックスバインダーを含む。不透明クラスターの平均粒径は13.2μmであった。
【0083】
[0096]実施例5
[0097]Omyacarb UF、TiO2、およびラテックスの60%ソリッドスラリーを噴霧乾燥することによって他の典型的な不透明クラスターを作製した。最終的なクラスターは、ソリッドの容量%基準にて、85%のOmyacarb UF、5%のTiO2、および10%のラテックスバインダーを含む。不透明クラスターの平均粒径は12.7μmであった。
【0084】
[0098]実施例6~17
[0099]不透明クラスターと市販の大粒径エキステンダーCaCO3(Duramite)の特性比較を表に示す。典型的な不透明クラスターの組成を表に示す。不透明クラスター中に使用されているCaCO3はOmyacarb UFである。ダウ社から市販されている不透明ポリマーを各サンプル中に使用した。各サンプルの組成の残部はラテックスバインダーである。使用したペイントは、約38%のバインダー、10%の水、13%の大粒径エキステンダー(または下記の表2に示す、6.2ガロンとなる等価の不透明クラスター)、20%の顔料スラリー、および残部の他の添加剤を含む。
【0085】
【表2】
【0086】
[00101]実施例18
[00102]ラテックスペイント組成物中の本発明の不透明クラスターと、従来の不透明ポリマー(Ropaque)および従来の大粒径エキステンダー(Duramite)との比較を行った。図7図8は、ラテックスペイント組成物においてPVCを増大させることに対する、コントラスト比と光輝性の観点からの不透明性を示す。図7は、従来の不透明ポリマーと本発明の不透明クラスターが、PVCを増大させたときに不透明性を維持もしくはアップできるが、大粒径エキステンダーの量を増やすと、不透明性が急激に低下する、ということを示している。大粒径エキステンダーの容積を増大させると不透明性が低下するのは、このようなエキステンダーがペイント中に形成する大きなウインドウによるものと考えられる。図8は、本発明の不透明クラスターが、大粒径エキステンダーと同様に光輝性を低下させることができる、ということを示している。図8に示すように、従来の不透明ポリマーは、本発明の不透明クラスターと従来の大粒径エキステンダーのようには光輝性を低下させることができない。図7図8に対して使用した不透明クラスターの組成は、2.5%のTiO2、58.3%の不透明ポリマー、29.2%の炭酸カルシウム、および10%のバインダーを含んでなる。
【0087】
[00103]実施例19
[00104]本発明の不透明クラスターはさらに、所望の艶レベルを保持した状態で、同時に不透明性のアップを達成する。このような艶レベルはさらに、一般的に使用される耐久性増大粒子〔例えばポリ塩化ビニル粒子(PVC粒子、Geon 215、PolyOne Corporation、平均粒径約22μm)〕の量を減らすか又は完全に取り除いて、改良された艶をもたらすことで達成することができる。
【0088】
[00105]本実施例では、約29容量%の小粒径エキステンダー(炭酸カルシウム)、約58.4容量%の不透明ポリマー(Ropaque 96)、約2.5容量%の二酸化チタン、および約10容量%のラテックスを使用して、本発明に従って噴霧乾燥不透明クラスター(SDクラスター)を作製した。本実施例のSDクラスターの平均粒径は約22μmであり、これはGeon粒子と同等である。ラテックスペイント組成物にクラスターを加えた。ラテックスペイント組成物はさらに、大粒径エキステンダー(Minspar 4,Quartz Corporation,平均粒径約7μm)と不透明ポリマー(Ropaque 96)を含んだ。表3~6は、評価したラテックスペイントの組成、不透明度、および代表的なクラスターの艶試験結果を、Geonポリ塩化ビニル粒子を使用する対照標準ペイントと比較して示している。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
[00110]表からわかるように、サンプル18は、コントラスト比(C/R)に関して、その対照標準(同じペイント組成ではあるが、クラスターを使用しないで、その代わりにGeonを使用)より良好な不透明度を達成した。対照標準およびサンプル18と比較してTiO2の量を減らしたサンプル19も、その対照標準より良好な不透明度を達成した。サンプル20、21、および22とその対照標準に関しても、同様の不透明度結果が示されている。本発明のサンプルはいずれも、ポリ塩化ビル耐久性粒子を使用せずに、受け入れ可能な艶レベルを保持しつつ所望の不透明度を達成した。サンプルIDのA~Eは艶消し仕上げであり、F~Iはサテン仕上げである。
【0094】
[00111]実施例20
[00112]本発明の不透明クラスターと、実施例19に類似のポリ塩化ビニル粒子を含むか又は含有しないラテックスペイント組成物との比較を行った。本実施例では、不透明クラスターは、実施例19と組成は同じであるが、約17μmの平均粒径を有する。表7~10にその結果を示す。
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
[00117]実施例19と20では、Y値(白)はASTM E1331-15によって測定し、Y値(黒)はASTM E1331-15によって測定し、コントラスト比(C/R)はASTM D2805によって測定し、60グロスはASTM D523-14によって測定し、85シーンはASTM D523-14によって測定し、艶はASTM D6736-08によって測定した。全実施例において、そして本明細書全体を通して、特に明記しない限り、測定は約23±1℃および約50%相対湿度にて行った。
【0100】
[00118]本明細書に記載の全ての出版物、特許出願、および取得特許の全体を、参照により本明細書に含める。参考文献が引用されていても、本発明への従来技術の利用可能性に関しての確定が容認されてはいるわけではない。
【0101】
[00119]本明細書に記載の寸法と値は、列挙されている正確な数値に厳しく限定されると理解すべきではない。特に明記しない限り、このような寸法は、列挙した値と、その値近辺の機能的に同等の範囲との両方を意味するよう意図されている。例えば、「40mm」として記載されている寸法は、「約40mm」を意味するよう意図されている。
【0102】
[00120]本発明の特定の実施態様について説明してきたが、当業者には明らかなように、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更や改良を行うことができる。したがって、本発明の範囲内であるこうした変更や改良の全てが添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0103】
[00121]ラテックスペイント組成物が、
[00122]溶媒、少なくとも1種の第1のポリマーバインダー、任意の顔料粒子、および複数種の個別不透明クラスター粒子を含み;
[00123]各個別不透明クラスター粒子が、クラスター成分をほぼ均一な粒子に合体させる第2のポリマーラテックスバインダーを含み、このとき第2のポリマーラテックスバインダーは、少なくとも1種の第1のポリマーバインダーと同じであるか又は異なっており;
[00124]クラスター成分が、閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定する個別ポリマー粒子、複数種の任意の無機顔料粒子、および複数種のエキステンダー顔料粒子を含み;
[00125]そしてラテックスペイント組成物が、バインダーボイド容積を画定するある多孔度のポリマーラテックスバインダーを含む。
【0104】
[00126]ラテックスペイント組成物中の個別不透明クラスター粒子の顔料容積濃度が臨界顔料容積濃度未満である、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
[00127]各不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の全閉鎖ボイド容積と、第2のポリマーラテックスのバインダーボイド容積とを含む総ボイド容積を含む、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0105】
[00128]総ボイド容積が、不透明クラスターを基準として約1容量%~約35容量%である、請求項15に記載のラテックスペイント組成物。
[00129]各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積の大きさが約0.4μm~約0.7μmである、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0106】
[00130]任意の顔料粒子が、無機顔料粒子、それぞれが閉鎖ボイド容積を画定し、不透明クラスター粒子内で合体しないさらなる個別ポリマー粒子、不透明クラスター粒子内で合体しないエキステンダー顔料粒子、およびこれらの混合物のうちの1つを含む、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0107】
[00131]ラテックスペイント組成物が、乾燥すると、約50容量%~約85容量%の第1のポリマーバインダー;不透明クラスター粒子内で合体しない、約0容量%~約45容量%のエキステンダー顔料粒子;閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定し、不透明クラスター粒子内で合体しない、約0容量%~約20容量%の個別ポリマー粒子;約0容量%~約20容量%の無機顔料粒子:および約5容量%~約50容量%の不透明クラスター粒子;を含む、請求項18に記載のラテックスペイント組成物。
【0108】
[00132]不透明クラスター粒子が、第2のポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって画定される外表面を有し、該外表面が表面多孔性を有する、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0109】
[00133]表面多孔性が、それぞれ平均大きさが約0.050μm~0.150μmである隙間によって形成される、請求項20に記載のラテックスペイント組成物。
[00134]不透明クラスター粒子中の個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、不透明クラスター粒子中の第2のポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高い、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0110】
[00135]各不透明クラスター粒子が約5μm~約44μmの平均粒径を有する、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
[00136]各不透明クラスター粒子が、約1容量%~約30容量%の第2のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子を含み、残部がエキステンダー顔料粒子である、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
【0111】
[00137]不透明クラスター中の顔料容積濃度が臨界顔料容積濃度以上である、請求項13に記載のラテックスペイント組成物。
[00138]改良されたコントラスト比と不透明性を示すラテックスペイント組成物であって、該ラテックスペイント組成物が
[00139]溶媒、ポリマーラテックスバインダー、顔料粒子、および複数種の噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含み、
[00140]各噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定していて、ほぼ均一な粒子に合体する個別ポリマー粒子、任意のポリマーバインダー、任意の無機顔料粒子、および任意のエキステンダー顔料粒子を含み、
[00141]該ラテックスペイント組成物が、ペイント皮膜として乾燥させると、同レベルの顔料粒子を含むが噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して、約10%~約35%の不透明度増大を示す。
【0112】
[00142]同レベルの顔料粒子を含むが噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して、約0.01ユニット~約0.02ユニットのコントラスト比増大を示す、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0113】
[00143]約0~約30の光沢度と約0~約30の光輝度を有するラテックスペイント組成物を凌ぐ不透明性改良が示される、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00144]乾燥ラテックスペイント組成物が、ASTM D6736-01に記載の手順に従って25スクラブサイクルに付されると、約20%未満の光沢度増大と、約50%未満の光輝度増大を示す、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0114】
[00145]ラテックスペイント組成物が約10重量%未満のポリ塩化ビニル粒子を含む、請求項29に記載のラテックスペイント組成物。
[00146]不透明度と乾燥顔料組み込み量との比に関して約1:60~約1:90の不透明因子をさらに含む、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0115】
[00147]噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の全閉鎖ボイド容積と、ポリマーラテックスバインダーのバインダーボイド容積とを含む総ボイド容積を有する、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0116】
[00148]総ボイド容積が、噴霧乾燥不透明クラスター粒子の約1容量%~約35容量%である、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00149]各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積の大きさが約0.4μm~約0.7μmである、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0117】
[00150]噴霧乾燥不透明クラスター粒子の平均粒径が約5μm~約44μmである、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00151]噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって画定される外表面を有し、前記外表面が表面多孔性を有する、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0118】
[00152]表面多孔性が、それぞれが約0.050μm~約0150μmの大きさの1つ以上の隙間によって形成される、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00153]個別ポリマー粒子のガラス転移温度がポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高い、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0119】
[00154]不透明クラスターが、約1容量%~約30容量%のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子を含み、残部がエキステンダー顔料粒子である、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0120】
[00155]噴霧乾燥不透明クラスター中の顔料容積濃度が臨界顔料容積濃度以上である、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00156]任意のエキステンダー顔料粒子が、約0.1μm~約1μmの粒径を有し、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、およびこれらの組み合わせから選ばれる、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
【0121】
[00157]不透明度と乾燥顔料の組み込み量との比に関して約1:60~約1:90の不透明因子をさらに含む、請求項26に記載のラテックスペイント組成物。
[00158]ある範囲の光沢度にわたって改良されたコントラスト比と不透明度を示すラテックスペイント組成物であって、該ラテックスペイント組成物が、
[00159]溶媒、ポリマーラテックスバインダー、および顔料粒子を含み、
[00160]該ラテックスペイント組成物は、ペイント皮膜として乾燥させると、同レベルの顔料粒子を含むが噴霧乾燥不透明クラスター粒子を含まないラテックスペイント組成物と比較して、約10%~約35%の不透明度増大を示し、
[00161]約0~約30の光沢度と約0~約30の光輝度を有するラテックスペイント組成物は不透明度の改良を示す。
[00162]複数種の噴霧乾燥不透明クラスター粒子をさらに含み、各噴霧乾燥不透明クラスター粒子が、閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定していて、ほぼ均一な粒子に合体する個別ポリマー粒子、任意のポリマーバインダー、任意の無機顔料粒子、および任意のエキステンダー顔料粒子を含む、請求項43に記載のラテックスペイント組成物。
【0122】
[00163]塗料組成物用の粒状クラスターであって、該粒状クラスターが、(a)第1の屈折率を有する第1の成分と(b)第2の屈折率を有する第2の成分を含み、第1の成分と第2の成分が、合体したラテックスバインダー物質によって連結される。
[00164]第1の成分の第1の屈折率が約1~約1.5であり、第2の成分の第2の屈折率が約1.5~約3である、請求項45に記載の粒状クラスター。
[00165]第1の成分と第2の成分の屈折率の差が約0.5~約2.0である、請求項45に記載の粒状クラスター。
【0123】
[1] 不透明度を増大させるためのラテックスペイント組成物に適した不透明クラスター粒子であって、
不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダー、クラスター成分、ポリマーラテックスバインダーの空隙を含んでなり、
ポリマーラテックスバインダーによってクラスター成分がほぼ均一な粒子に合体させられ;クラスター成分は、閉鎖ボイド容積をそれぞれ画定する個別ポリマー粒子と、複数種の任意の無機顔料粒子と、複数種のエキステンダー顔料粒子と、を含み;ポリマーラテックスバインダーの空隙によってバインダーボイド容積が画定される、上記粒子。
[2] 不透明クラスター粒子が、全個別ポリマー粒子の閉鎖ボイド容積の全閉鎖ボイド容積とポリマーラテックスバインダーのバインダーボイド容積とを含む総ボイド容積を有する、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[3] 総ボイド容積が、不透明クラスター粒子の約1容量%~約35容量%である、[2]に記載の不透明クラスター粒子。
[4] 各個別ポリマー粒子の平均閉鎖ボイド容積の大きさが約0.4μm~約0.7μmである、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[5] 不透明クラスター粒子の平均粒径が約5μm~約44μmである、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[6] 不透明クラスター粒子が、ポリマーラテックスバインダーの少なくとも一部によって画定される外表面を有し、外表面が表面多孔性を有する、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[7] 表面多孔性が、それぞれ大きさが約0.050μm~約0.150μmの1つ以上の隙間によって形成される、[6]に記載の不透明クラスター粒子。
[8] 個別ポリマー粒子のガラス転移温度が、ポリマーラテックスバインダーのガラス転移温度より高い、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[9] 約1容量%~約30容量%のポリマーラテックスバインダー、約10容量%~約70容量%の個別ポリマー粒子、および約0容量%~約6容量%の無機顔料粒子をさらに含み、残部がエキステンダー顔料粒子である、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[10] 不透明クラスター粒子中の顔料容積濃度が臨界顔料容積濃度以上である、[9]に記載の不透明クラスター粒子。
[11] エキステンダー顔料粒子が約0.1μm~約1μmの粒径を有し、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、およびこれらの混合物から選ばれる、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
[12] 無機顔料粒子が約0.1μm~約1.0μmの粒径を有し、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびこれらの混合物から選ばれる、[1]に記載の不透明クラスター粒子。
【符号の説明】
【0124】
10 塗布皮膜
11 白色裏材料
12 ウインドウ
20 不透明クラスター
21 外表面
22 隙間または細孔
23 バインダー物質
24 不透明ポリマー
25 小粒径エキステンダー
26 顔料
27 不透明ポリマーボイド容積
28 バインダーボイド容積
30 噴霧乾燥機
31 給気ブロアー
32 排気ブロアー
33 サイクロン乾燥機
34 電気エアーヒーター
35 入口
36 チャンバー
37 捕集容器
38 ノズル
39 制御装置
40 ボール弁
41 非一過性のコンピューター可読媒体
42 コンピュータープロセッサ
44 エアパルス装置
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8