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特許7094226医薬品有効成分用のタンパク質をベースにした添加物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】医薬品有効成分用のタンパク質をベースにした添加物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20220624BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/4184
A61K31/405
A61K31/4166
A61K31/4422
A61K31/343
A61K31/192
A61K31/277
A61P33/00
A61P29/00
A61P31/04
A61P25/08
A61P9/12
A61P9/04
A61P31/10
A61K31/496
A61K31/437
A61K31/55
A61K31/495
A61K31/635
A61K31/5513
A61K31/216
A61P3/06
A61P25/22
A61P25/24
A61P31/12
A61P25/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018556473
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017060143
(87)【国際公開番号】W WO2017186889
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】2016/5302
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(31)【優先権主張番号】2016/5977
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518375775
【氏名又は名称】ルスロ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ヴェルグエン
(72)【発明者】
【氏名】ヒー・ファン・デ・ムーター
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-501219(JP,A)
【文献】特表2003-508482(JP,A)
【文献】 Enhanced Dispersibility and Bioactivity of Curcumin by Encapsulation in Casein Nanocapsules,J. Agric. Food Chem.,2013年,Vol.61(25),p.6036-6043
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも10アミノ酸の長さのタンパク質から成り、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、乳清タンパク質、ゼラチンから選択されるタンパク質組成物から得られた、タンパク質をベースにした添加物と、
- 生物医薬品分類システムに従っ、クラスII又はクラスIVの医薬品有効成分(API)と
を含む製剤であって、
前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが、X線粉末回折分光法(XRD)及び/又は示差走査熱量測定(DSC)によって検証して、不均質性及び結晶性を含有しない、完全に均質な非晶質の固体分散体を形成することを特徴とし、
APIの添加物に対する質量比(w/w)が、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%(5/95)から、APIが最大で50%及び添加物が少なくとも50%(50/50)の間にあり、100%がAPI及び添加物の合計質量と定義される、製剤。
【請求項2】
タンパク質をベースにした添加物が、変性せず、且つ/又はその生物活性の少なくとも一部を保持する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
APIが、下記のリスト:フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンから選択される、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記APIがフルベンダゾールであり、タンパク質組成物から得られる前記タンパク質をベースにした添加物が、血清アルブミン(HSA、BSA)及び/又はゼラチンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
APIの添加物に対する質量比(w/w)が、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%(5/95)から、APIが最大で40%及び添加物が少なくとも60%(40/60)の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%(5/95)から、APIが最大で30%及び添加物が少なくとも70%(30/70)の間にある、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%(5/95)から、APIが最大で20%及び添加物が少なくとも80%(20/80)の間にある、請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%(10/90)から、APIが最大で20%及び添加物が少なくとも80%(20/80)の間にある、請求項5に記載の製剤。
【請求項9】
請求項1から8いずれか一項に記載の医薬品製剤を生成するための方法であって、少なくとも、
- (a) 溶媒を使用して、クラスII又はクラスIVのAPIを溶解して溶液を得る工程と、
(b) 工程(a)の溶液を乾燥して前記APIを得る工程と
を通してAPIを調製する工程であって、
APIを調製するための溶媒が、有機酸若しくは有機硫黄化合物であり、又は有機酸及び/若しくは有機硫黄化合物を含む溶媒混合物であることを特徴とする工程と、
- (i) 溶媒を使用して、少なくとも10アミノ酸の長さのタンパク質から成り、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、乳清タンパク質、ゼラチンから選択されるタンパク質組成物を溶解して溶液を得る工程と、
(ii) 工程(i)の溶液を乾燥して、タンパク質をベースにした添加物を得る工程と
を通して前記タンパク質をベースにした添加物を調製する工程であって、
添加物を調製するための溶媒が、有機酸若しくは有機硫黄化合物であり、又は有機酸及び/若しくは有機硫黄化合物を含む溶媒混合物であることを特徴とする工程と
を含む方法。
【請求項10】
溶媒が、ギ酸、トリフルオロ酢酸、若しくは酢酸から選択される有機酸であるか、又は前記有機酸の混合物であるか、又はギ酸、及び/若しくはトリフルオロ酢酸、及び/若しくは酢酸から選択される1種若しくは複数の有機酸、並びにアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、有機硫黄化合物、DMSO、ポリエチレングリコールから選択される少なくとの1種のその他の溶媒を含む溶媒混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
溶媒混合物が、少なくとも5%の酢酸及び/又はギ酸から最大で90%の酢酸及び/又はギ酸(v/v)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、有機硫黄化合物である;又は少なくとも1種の有機硫黄化合物と、アルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種のその他の溶媒とを含む溶媒混合物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
乾燥が、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、フラッシュ乾燥、パドル乾燥、空気乾燥、凝縮乾燥、及び/又はこれらの組合せによって行れる、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
乾燥が、噴霧乾燥及び/又は凍結乾燥によって行われる、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
APIが、下記のリスト:フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンから選択される、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤中、タンパク質をベースにした添加物として少なくとも10アミノ酸の長さのタンパク質から成り、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、乳清タンパク質、ゼラチンから選択されるタンパク質組成物の使用であって、タンパク質をベースにした添加物が、変性せず、且つ/又はその生物活性の少なくとも一部を保持する、使用。
【請求項17】
医薬として使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、タンパク質をベースにした添加物を医薬品有効成分(API)と組み合わせて含む医薬品製剤であって、実質的に非晶質であり、実質的に均質な混合物を形成する前記製剤と;更に、前記医薬品製剤を生成するための方法と;医薬として使用するための前記医薬品製剤とが提供される。
【背景技術】
【0002】
それらの全潜在能力を発揮するために、「医薬品有効成分」(API)は、その(生物学的)目標に到達するのにいくつかの障害を克服しなければならない。不十分な溶解度及び長い溶解速度(即ち、崩壊時間)は、APIの送達速度を遅らせる可能性がある。特に可溶性が不十分なAPIは、そのバイオアベイラビリティ(即ち、体循環に到達する不変のAPIの投薬量)が酷く低下する可能性がある。
【0003】
それらの化学的性質により、ほとんどのAPI候補は、薬物開発中に溶解の問題に遭遇する。場合によっては、これらの溶解度の問題は研究センターで解決され、API候補は医薬の活性成分になり得る。しかし、配合し難いAPI候補の大きな群では、経口投与されたときの低吸収率が甚だしいので、API候補は最終的には、代替の摂取手段を必要とし、又は最悪の場合、商業市場でまとめて売り込むことが妨げられる。現在開発中のAPIのほぼ60~70%は、水への溶解が不十分で、ほぼ40%は実際に不溶であることが推定される。
【0004】
APIに関して一般に好ましい剤形は、錠剤又はカプセル等の固体剤形である。通常、固体剤形は、薬物自体であるAPIを含有するだけではなく、API以外の少なくとも1種の成分も含有する。伝統的に、前記追加の成分は医薬品として不活性であり、製剤を安定化させることを除いてAPI自体と生物学的には反応しない。これらの不活性な成分は、医薬品という文脈において添加物と一般に呼ばれる。このように、主にその活性により選択されたAPIとは対照的に、添加物は、主にその不活性により選択される。
【0005】
現在、添加物の役割を果たすために、及び可溶性製剤を創出するために、様々なデザイナーポリマー(例えば、ポリメチル-メタクリレート-ソルビトール)が開発されている。例えば、非晶質固体分散体に使用されるポリマーは、溶解度向上特性を呈することを示した。しかし、医薬品産業にポリマーを適用できることは、それらの開発、加工、及び製造工場に関連する新しい課題も創出した。
【0006】
ポリマーには、生物学的に関連した供給源に由来しないという明確な欠点がある。親水性ポリマーとAPIとの分子間相互作用及び錯体形成(例えば、H結合、イオン性、及び/又はvan der Waal's相互作用)の多くが、製剤の溶解度と安定性のバランスをとるように調節されると考えれば、ポリマーの存在が、医薬に対して追加の望ましくない影響を及ぼし得るのか否か、或いはある特定の所望の相互作用に欠けているのか又は失う可能性があるのかについて、しばしば予測不可能になる。まして前記デザイナーポリマー添加物を開発し、試験し、その後に製造するコストは、API自体の製造コストを更に超える可能性があり、特に在庫医薬品に関してはその可能性がある。
【0007】
また、ある特定のAPIでは、製剤の開発及び/又は製造段階で存在する物理的条件(例えば、温度、湿度、流動等)に起因して、それらの活性が低下し又は完全に失われる。過剰な温度及び湿度への曝露は、APIにおける構造劣化及び化学的挙動の変化を引き起こす。例えば、ある特定のAPIは、一般的なポリマー生成方法であるホットメルト押出しに不適合であることが示された。
【0008】
更に、ある特定のAPIは、ポリマー加工に一般に利用される残留溶媒との化学的相互作用も示し、又はある場合には、APIは、一緒になったときにポリマー自体と更に反応する可能性があり;特にC-O、C-N、及び二重結合に関してそのような可能性がある。例えば、C-O結合では、酸化、還元、開裂、付加、及び脱離が容易に生ずる可能性がある。これら全ての状況は、療法上の価値がなく潜在的に有害(即ち遺伝毒性)でもある不純物を、API製剤中にもたらす。例えば、ポリマー製造工場中で使用される一般的な溶媒である、メタノール又はエタノールのようなアルコールの適用は、ある特定のAPIで、遺伝毒性を示すスルホン酸エステルの形成を引き起こすことになる。
【0009】
製剤中に使用されるAPIの溶解度及び溶解レベルは、バイオアベイラビリティ及び過飽和状態に直接影響を及ぼす。したがって、APIの、特に低溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIに関して、溶解度及び溶解レベルを上昇させることが非常に重要である。過飽和の状態に達し、その後、前記過飽和状態を可能な限り維持することにより、APIの更により好ましい結果が得られる。更に、バイオアベイラビリティ及び維持された過飽和の改善は、APIの吸収速度を上昇させることになり、製剤中のAPIに必要とされる低下した全重量/体積(投与量)をもたらし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】「Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System Guidance for Industry」、米国保健省食品医薬品局医薬品評価研究センター発行(参照: CDER waiver on API classes)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、APIに関する溶解度及び溶解レベルが高まるように製剤に組合せ可能である、有効で安定な添加物を得る必要が生じている。更に、前記添加物は、好ましくは、前記APIのバイオアベイラビリティも高め、過飽和の状態を更に可能にし、維持する。具体的には、低溶解度及び溶解速度及び/又はレベルを示す、API用の添加物が求められている。現況技術の添加物は、本発明により達成されるような手法で、組み合わせた安全性及び生物学的関連性/相互作用、改善された過飽和及びバイオアベイラビリティ、及び加工規模、コスト、及び時間に到達していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、本明細書に記述される添加物、前記添加物を生成する方法、ひいては前記添加物をAPIと組み合わせて含む製剤に関する。
【0013】
多くのAPIが当技術分野では公知であるが、いくつかの種類のAPIは、それらの溶解度及び/又はバイオアベイラビリティに基づいて区別することができる。低溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIは、当技術分野で記述されており、当業者に公知である。本発明の特定の実施形態では、本発明による(タンパク質をベースにした)添加物を、APIと組み合わせる。特に、前記APIは、不十分な溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIであり、それによって、本発明による添加物の溶解度及びバイオアベイラビリティ向上特性から利益が得られる。特定の実施形態では、前記APIは、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセン;好ましくはフルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミル;最も好ましくはフルベンダゾールから選択される。
【0014】
したがって本発明は:
- 少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物と;
- 医薬品有効成分(API)と
を含む製剤であって;
前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、実質的に非晶質であり、
実質的に均質な混合物を形成することを特徴とする製剤に関する。
【0015】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、完全に非晶質であり、且つ/又は完全に均質な混合物を形成することを提供する。
【0016】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが、非晶質固体分散体を形成することを提供する。
【0017】
特に、本明細書に開示される製剤は、タンパク質をベースにした添加物が、実質的に変性せず、好ましくは完全に変性せず;且つ/又はその生物活性の少なくとも一部を保持し、好ましくはその生物活性を実質的に保持し;より好ましくは、その生物活性をほぼ完全に保持し、最も好ましくは、その生物活性を完全に保持することを提供する。
【0018】
特に、本明細書に開示される製剤は、タンパク質をベースにした添加物が、少なくとも20アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さ;より好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さ;最も好ましくは少なくとも250アミノ酸の長さ、例えば500アミノ酸又は700アミノ酸-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを提供する。
【0019】
特に、本明細書に開示される製剤は、タンパク質組成物又はその加水分解産物の少なくとも1つのタンパク質が、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、血液タンパク質、免疫グロブリン、乳タンパク質、ゼラチン、ケラチン、トウモロコシ、小麦、麻、ライ麦、オート麦、落花生、大麦、カゼイン、アルブミン、乳清タンパク質(ラクトアルブミン)、加水分解乳清タンパク質単離物(HWPI)、加水分解コラーゲン、血漿タンパク質、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、卵アルブミン、魚アルブミン、エラスチン、コラーゲン、組換え若しくは人工タンパク質、天然若しくは人工結合足場の組換えバージョン、又はこれらの組合せ;好ましくはHSA、BSA、ゼラチン、及び/又はこれらの組合せから選択されることを提供する。
【0020】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIが低い溶解度、溶解レベル、過飽和状態、及び/又はバイオアベイラビリティを示すことを提供する。
【0021】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIが、生物医薬品分類システムに従って、可溶性が不十分な若しくは可溶性ではない、透過性が不十分な若しくは全く透過性でない、及び/又はゆっくり溶解するとして分類されることを提供する。
【0022】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIが、生物医薬品分類システムに従って、クラスII、クラスIII、又はクラスIVのAPIであり;好ましくはクラスII又はクラスIVのAPIであり;最も好ましくはクラスIIのAPIであることを提供する。
【0023】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIが、下記のリスト:フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンから選択され;より詳細には、下記のリスト:フルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルから選択されることを提供する。
【0024】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記APIがフルベンダゾールであり、前記タンパク質をベースにした添加物が、血清アルブミン(HSA、BSA)及び/又はゼラチンを含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを提供する。
【0025】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記製剤が、1μmから1mmの間;好ましくは5μmから50μmの間;最も好ましくは10μmから20μmの間の粒径を有することによって特徴付けられることを提供する。
【0026】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIの添加物に対する質量比(w/w)が、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%から、APIが少なくとも95%及び添加物が最大で5%の間であり;100%は、API及び添加物の合計質量と定義されることを提供する。
【0027】
特に、本明細書に開示される製剤は、製剤が、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%から、APIが最大で60%及び添加物が少なくとも40%の間の、APIの添加物に対する質量比(w/w)を含み;100%は、API及び添加物の合計質量と定義されることを提供する。請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤では、前記製剤は、固体剤形で、好ましくは錠剤、丸薬、若しくはカプセルで、又は注射剤を再構成するための成分として、投薬される。
【0028】
特に、本明細書に開示される製剤は、固体剤形で、好ましくは錠剤、ロゼンジ、丸薬、若しくはカプセル等の経口投与に適合した形態で、又は注射剤を再構成するための成分として得られることを提供する。
【0029】
特に、本明細書に開示される製剤は、固体剤形が、前記APIの1回の定期的な適用又は使用に十分な所定量のAPIを含有する単位用量であり、単位用量は、ブリスターパック等の単位用量包装に適したものであることを提供する。
【0030】
他の態様によれば、本発明は:
- 少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物と;
- 医薬品有効成分(API)と
を含む医薬品製剤を生成するための方法であって;
前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、実質的に非晶質であり、実質的に均質な混合物を形成し;少なくとも:
(a) 溶媒を使用して前記APIを溶解して溶液を得る工程と;
(b) 工程(a)の溶液を乾燥して、実質的に非晶質である粉末を得る工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0031】
特に、本明細書に開示される方法は、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、完全に非晶質であり、乾燥する工程(b)の乾燥が、完全に非晶質である粉末を得るのに行われることを提供する。
【0032】
特に、本明細書に開示される方法は、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが、完全に均質な混合物を形成することを提供する。
【0033】
特に、本明細書に開示される方法は、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが、非晶質固体分散体を形成することを提供する。
【0034】
特に、添加物は:
(i) 溶媒を使用してタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解して溶液を得る工程;及び
(ii) 工程(i)の溶液を乾燥して、前記タンパク質をベースにした添加物を得る工程
を通して調製される。
【0035】
特に、工程(a)及び(i)の溶液は、共通の又は異なる溶媒を使用して溶解する。
【0036】
特に、本明細書に開示される方法は、API及びタンパク質をベースにした添加物が:
- 同じ溶媒中に一緒に溶解され、乾燥され、それによって前記医薬品製剤を形成するか;
- 同じ又は異なる溶媒中に別々に溶解され、その後、一緒に乾燥され、それによって前記医薬品製剤を形成するか;
- 同じ又は異なる溶媒中に溶解され、別々に乾燥され、その後、混合され、それによって前記医薬品製剤を形成するか
のいずれかであることを提供する。
【0037】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、有機酸、好ましくはギ酸、トリフルオロ酢酸、若しくは酢酸、前記酸の混合物、又は1種若しくは複数の有機酸、好ましくはギ酸、及び/又はトリフルオロ酢酸、及び/若しくは酢酸、並びに一般に使用される医薬品溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、有機硫黄化合物、DMSO、ポリエチレングリコールを含む混合物であることを提供する。
【0038】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、少なくとも5%の酢酸及び/又はギ酸から最大で90%の酢酸及び/又はギ酸(v/v);好ましくは10%から90%の酢酸及び/又はギ酸;より好ましくは15%から90%の酢酸及び/又はギ酸;最も好ましくは20%から90%の酢酸及び/又はギ酸を含む溶媒混合物であることを提供する。
【0039】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、又はポリエチレングリコールから選択される1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む2成分溶媒混合物であることを提供する。
【0040】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される、より好ましくは酢酸又はギ酸である少なくとも1種の有機酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む3成分溶媒混合物であることを提供する。
【0041】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、少なくとも5%から最大で90%(v/v)の量でジメチルスルホキシド(DMSO)を、好ましくは10%から90%のDMSOを、より好ましくは15%から90%のDMSOを、最も好ましくは20%から90%のDMSOを含む溶媒混合物であることを提供する。
【0042】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、1種の有機硫黄化合物、好ましくはDMSOと、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む2成分溶媒混合物であることを提供する。
【0043】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、少なくとも1種の有機硫黄化合物、好ましくはDMSOと、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む3成分溶媒混合物であることを提供する。
【0044】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される、好ましくは酢酸及びギ酸である少なくとも1種の有機酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む4成分溶媒混合物であることを提供する。
【0045】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、少なくとも1種の有機硫黄化合物、好ましくはDMSOと、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む4成分溶媒混合物であることを提供する。
【0046】
特に、本明細書に開示される方法は、乾燥が、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、フラッシュ乾燥、パドル乾燥、空気乾燥、凝縮乾燥、及び/又はこれらの組合せによって;好ましくは噴霧乾燥及び/又は凍結乾燥によって行われることを提供する。
【0047】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、有機酸、好ましくは酢酸及び/又はギ酸を含み、乾燥が噴霧乾燥であることを提供する。
【0048】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が、有機硫黄化合物、好ましくはDMSOを含み、乾燥が凍結乾燥であることを提供する。
【0049】
特に、本明細書に開示される方法は、乾燥プロセスの後に、固体剤形形成プロセス、例えば圧縮又は成型が続くことを提供する。
【0050】
特に、本明細書に開示される方法は、方法が凍結乾燥であり、製剤を直接凍結乾燥して固体剤形にし、例えば直接凍結乾燥してブリスターにして錠剤又は丸薬を生成することを提供する。
【0051】
特に、本明細書に開示される方法は、タンパク質をベースにした添加物が、少なくとも10アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも20アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さ;より好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さ;最も好ましくは少なくとも250アミノ酸の長さ、例えば500アミノ酸又は700アミノ酸のタンパク質を含む-モノマー当たり-、タンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを提供する。
【0052】
特に、本明細書に開示される方法は、APIが、生物医薬品分類システムに従って、可溶性が不十分な若しくは可溶性ではない、透過性が不十分な若しくは透過性でない、及び/又はゆっくり溶解するとして分類されることを提供する。
【0053】
特に、本明細書に開示される方法は、APIが、生物医薬品分類システムに従って、クラスII、クラスIII、又はクラスIVのAPIであり;好ましくはクラスII又はクラスIVのAPIであり;最も好ましくはクラスIIのAPIであることを提供する。
【0054】
特に、本明細書に開示される方法は、APIが、下記のリスト:フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンから選択され;より詳細には、下記のリスト:フルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルから選択されることを提供する。
【0055】
他の態様によれば、本発明は、本明細書に開示される実施形態による製剤中、タンパク質をベースにした添加物として少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物の使用に関する。
【0056】
特に、本明細書に開示される方法は、タンパク質をベースにした添加物が、実質的に変性せず、好ましくは完全に変性せず;且つ/又はその生物活性の少なくとも一部を保持し、好ましくはその生物活性を実質的に保持し;より好ましくは、その生物活性をほぼ完全に保持し、最も好ましくは、その生物活性を完全に保持することを提供する。
【0057】
特に、本明細書に開示される方法は、タンパク質をベースにした添加物が、少なくとも10アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも20アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さ;より好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さ;最も好ましくは少なくとも250アミノ酸の長さ、例えば500アミノ酸又は700アミノ酸-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを提供する。
【0058】
特に、本明細書に開示される方法は、タンパク質組成物又はその加水分解産物の少なくとも1つのタンパク質が、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、血液タンパク質、免疫グロブリン、乳タンパク質、ゼラチン、ケラチン、トウモロコシ、小麦、麻、ライ麦、オート麦、落花生、大麦、カゼイン、アルブミン、乳清タンパク質(ラクトアルブミン)、加水分解乳清タンパク質単離物(HWPI)、加水分解コラーゲン、血漿タンパク質、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、卵アルブミン、魚アルブミン、エラスチン、コラーゲン、組換え若しくは人工タンパク質、天然若しくは人工結合足場の組換えバージョン、及び/又はこれらの組合せ;好ましくはHSA、BSA、ゼラチン、及び/又はこれらの組合せから選択されることを提供する。
【0059】
他の態様によれば、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に開示される実施形態による製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】溶解時間(分)及びpH値の関数として様々なタンパク質源の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例1に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-ゼラチン;円形-BSA(アルブミン);三角形-エンドウ豆;菱形-大豆;ストライプ-乳清;十字形-ゼイン(トウモロコシ)。
図2】溶出時間(分)の関数としてウシ血清アルブミン(BSA)の吸光度(AU)を示す、ゲル濾過クロマトグラムである。結果は、実施例2に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線-H2Oに溶かした5%(w/v)溶液から噴霧乾燥したBSA;破線-ギ酸に溶かした5%(w/v)溶液から噴霧乾燥したBSA;点線-DMSOに溶かした5%(w/v)溶液から凍結乾燥したBSA。
図3】様々な時間間隔でギ酸に溶かした溶液から試料採取した、時間(分)の関数としてのウシ血清アルブミン(BSA)の吸光度(AU)を示す、ゲル濾過クロマトグラムである。結果は、実施例2に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:黒色実線-0時間;黒色破線-4時間;灰色実線-8時間;黒色点線-24時間。
図4】フルベンダゾール(FLU)モル濃度(μM)の関数として、ギ酸に溶かした5%溶液から流延された、pH制御された再溶解被膜から誘導された、様々なpH値で設定されたウシ血清アルブミン(BSA)の、トリプトファン消光のレベル(相対Δ蛍光単位)を示す結合曲線である。結果は、実施例3に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形-pH7.0;四角形-pH4.0;三角形-pH1.0。
図5】溶解時間(分)の関数として、異なるゼラチンベースの添加物を含むそれぞれの系列に関してFaSSGF媒体への非晶質FLU(ギ酸に溶解したFLU原液)の225μg/mlスパイクに由来する、溶解したフルベンダゾール(FLU)(μg/ml)の平均濃度を示す、過飽和プロファイルのグラフである。結果は、実施例3に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形-pH7.0;四角形-pH4.0;三角形-pH1.0。
図6】溶解時間(分)の関数として、乳清タンパク質をベースにした添加物と混合された、フルベンダゾール(FLUB)の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例4に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-乳清タンパク質FLUB物理的混合物;円形-乳清タンパク質FLUB被膜。
図7】溶解時間(分)の関数として、タンパク質をベースにした(噴霧乾燥した)製剤の各系列に関する、(a)溶解したフルベンダゾール(FLU)濃度CFlub(μg/ml)又は(b)全FLU(%)の溶解パーセンテージを示す、溶解プロファイル(0.1N HCl中、pH 1.5)のグラフであり;示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。結果は、実施例7に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形でマークされた実線は、80%のブタの皮膚のゼラチン(Bloom=50g)及び20%のFLUを含む噴霧乾燥製剤に該当し;四角形でマークされた実線は、90%のブタの皮膚のゼラチン(Bloom=225g)及び10%のFLUを含む噴霧乾燥製剤に該当し;破線は、80%のブタの皮膚のゼラチン(Bloom=50g)及び20%のFLUの物理的混合物を含む製剤に該当する。
図8】溶解時間(分)の関数として、BSAをベースにした(噴霧乾燥した)製剤の各系列ごとの(a)溶解したフルベンダゾール(FLU)濃度CFlub(μg/ml)又は(b)全FLUの溶解パーセンテージ(%)を示す、溶解プロファイル(最初の90分を0.1N HCl中、pH 1.5で、次いで250分をPO4 2-緩衝液中、pH6.8で(Na3PO4添加))のグラフであり;表示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。結果は、実施例7に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形でマークされた実線は、90%のBSA及び10%のFLUを含む噴霧乾燥製剤に該当し;三角形でマークされた実線は、80%BSA及び20%FLUを含む噴霧乾燥製剤に該当し;四角形でマークされた実線は、70%BSA及び30%FLUを含む噴霧乾燥製剤に該当し;破線は、80%BSA及び20%FLUの物理的混合物を含む製剤に該当する。
図9】(1)80%のSoluplus(登録商標);20%のフルベンダゾール(FLU);(2)40%のポリマー:40%のゼラチン:20%のFLU;(3)10%のポリマー:70%のゼラチン:20%のFLU;(4)80%のゼラチン:20%のFLU(4)を含む製剤の、XRDパターンのグラフである。上段の線は、フルベンダゾール粉末のXRDパターンであり、参照としての役割を果たす。結果は、実施例8で更に論じられることがわかる。
図10】溶解時間(分)の関数として、20%のイブプロフェン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形-被膜として;三角形-粉末として。
図11】溶解時間(分)の関数として、20%のインドメタシン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図12】溶解時間(分)の関数として、20%のナプロキセン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図13】溶解時間(分)の関数として、20%のフェニトイン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図14】溶解時間(分)の関数として、20%のニフェジピン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図15】溶解時間(分)の関数として、20%のベラパミル及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図16】溶解時間(分)の関数として、20%のグリセオフルビン及び80%のBSA(w/w)を含む(噴霧乾燥)製剤の、平均溶解(%)を示す溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例9に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:実線の円形-被膜として;点線の三角形-粉末として。
図17】市販の製品と比較した、ベムラフェニブを含む製剤の溶解結果を示すグラフである。結果は、実施例11に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-(30%のイトラコナゾール及び70%のBSA);三角形-(40%のイトラコナゾール及び60%のBSA);菱形-参照(Sporanox)。
図18】市販の製品と比較した、リトラコナゾールを含む製剤の溶解結果を示すグラフである。結果は、実施例11に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-(10%のベムラフェニブ及び90%のBSA);三角形-(20%のベムラフェニブ及び80%のBSA);菱形-参照(Zelboraf)。
図19】溶解時間(分)の関数として、BSA:イトラコナゾール:PEG 10Kを含む製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフを示す。結果は、実施例12に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:円形-(80%のBSA及び20%のイトラコナゾール);菱形-(80%のBSA、20%のイトラコナゾール、及び10%のPEG10K);三角形-(60%のBSA、20%のイトラコナゾール、及び20%のPEG10K);四角形(50%のBSA、30%のイトラコナゾール、及び20%のPEG10K)。
図20】溶解時間の15分後(黒で塗潰し)及び120分後(下降斜線)の、BSA:イトラコナゾール:PEG 10Kを含む製剤の平均溶解(%)を示す、比較チャートを示す。棒の下の数値は、BSA:イトラコナゾール:PEG 10K比を表し、結果は、実施例12で更に論じられることがわかる。
図21】APIとしてインドメタシンを、及び添加物としてゼラチンを含む(凍結乾燥)製剤の、XRDパターンのグラフであり;下段の線は、試料1(純粋なインドメタシン)を表し、参照としての役割をし、次に、下から順に続く線は、それぞれ試料6(平均5%)、試料5(平均10%)、試料4(平均20%)、試料3(平均30%)、及び試料2(平均40%)を表す。結果は、実施例13で更に論じられることがわかる。
図22】APIとしてダルナビルを、及び添加物としてゼラチンを含む(凍結乾燥)製剤の、XRDパターンのグラフであり;下段の線は、試料1(純粋なダルナビル)を表し、参照としての役割をし、次に、下から順に続く線は、それぞれ試料6(平均5%)、試料5(平均10%)、試料4(平均20%)、試料2(平均40%)、及び試料3(平均30%)を表す。結果は、実施例13で更に論じられることがわかる。
図23】溶解時間(分)の関数として、カルバマゼピン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き) --平均40%。
図24】溶解時間(分)の関数として、シンナリジン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図25】溶解時間(分)の関数として、ダルナビル(エタノレート)及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図26】溶解時間(分)の関数として、ジアゼパム及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図27】溶解時間(分)の関数として、フェノフィブラート及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図28】溶解時間(分)の関数として、グリセオフルビン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図29】溶解時間(分)の関数として、インドメタシン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図30】溶解時間(分)の関数として、ケトコナゾール及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図31】溶解時間(分)の関数として、ナプロキセン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図32】溶解時間(分)の関数として、ニフェジピン及びゼラチンを含む(DMSO可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例14に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:四角形-純粋なカルバマゼピン;円形-平均5%;三角形(上向き)-平均10%;逆三角形(下向き)-平均20%;菱形--平均30%;切断された三角形(左向き)--平均40%。
図33】溶解時間(分)の関数として、イトラコナゾール及びBSAを含む(DMSO(pH2.3)可溶化供給原料から凍結乾燥した)製剤の平均溶解(%)を示す、溶解プロファイルのグラフである。結果は、実施例15に見られ更に論じられ、凡例は下記の通りである:下線(1)-凍結乾燥製剤(非晶質固体分散体Dとして);上線(2)-結晶質イトラコナゾール。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明のシステム及び本発明の方法が記述される前に、そのようなシステム及び方法及び組合せは当然ながら変化させてもよいので、本発明は、記述される特定のシステム及び方法又は組合せに限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用される専門用語は限定するものではないことも理解されたい。
【0062】
本明細書で使用される「a」、「an」、及び「the」という単数形には、文脈が他に明示しない限り、単数及び複数の両方の指示対象が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される「comprising(含んでいる)」、「comprises(含む)」、及び「comprised of(から構成される)」という用語は、「including(含んでいる)」、「includes(含む)」、又は「containing(含有している)」、「contains(含有する)」と同義であり、包括的又は非制限的であり、追加の列挙されていない部材、要素、又は方法の工程を排除しない。本明細書で使用される「comprising(含んでいる)」、「comprises(含む)」、及び「comprised of(から構成される)」という用語は、「consisting of(からなっている)」、「consists(構成する)」、及び「consists of(からなる)」という用語を含むことが理解されよう。
【0064】
端点による数値範囲の列挙には、それぞれの範囲内に包含される全ての数値及び少数部、並びに列挙される端点が含まれる。
【0065】
本明細書で使用される「about(約)」又は「approximately(凡そ)」という用語は、パラメーター、量、及び持続時間等の測定可能な値を指す場合、開示される発明で行うことが適切である限り、指定された値の又は指定された値から±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、更により好ましくは±0.1%以下のばらつきを包含するものとする。「about(約)」又は「approximately(凡そ)」という修飾語が指す値は、それ自体が特に且つ好ましく開示されることを理解されたい。
【0066】
一群の構成要素の1つ又は複数或いは少なくとも1つの構成要素等の、「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」という用語は、他の例示を用いてそれ自体が明らかであるが、用語は、前記構成要素のいずれか1つ又は前記構成要素のいずれか2つ以上、例えば前記構成要素のいずれか≧3、≧4、≧5、≧6、又は≧7等、及び最大で全ての前記構成要素への言及を、とりわけ包含する。
【0067】
本明細書に引用される全ての言及は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、特に言及される本明細書の全ての言及の教示は、参照により組み込まれる。
【0068】
他に定義しない限り、技術及び科学用語を含む、本発明を開示するのに使用される全ての用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味を有する。他の指針により、用語の定義は、本発明の教示をより良く理解するために含める。
【0069】
以下の節では、本発明の種々の態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、反対が明らかに示されない限り、任意のその他の1つ又は複数の態様と組み合わされてもよい。特に、好ましく又は有利であるように示された任意の形体は、好ましく又は有利であるように示された任意のその他の1つ又は複数の態様と組み合わされてもよい。
【0070】
本明細書の全体を通した「one embodiment(一実施形態)」又は「an embodiment(実施形態)」への言及は、実施形態に関連して記述される特定の形体、構造、又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる様々な場所での「in one embodiment(一実施形態において)」又は「in an embodiment(一実施形態において)」という文言の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すものではなく、そうであってもよいことを指す。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかにされるように任意の適切な手法で組み合わせてもよい。更に、本明細書に記述されるいくつかの実施形態は、その他の実施形態に含まれるいくつかの特徴であってその他の特徴ではないものを含むが、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者に理解されるように、本発明の範囲内にあるものとし、異なる実施形態を形成する。例えば、添付される特許請求の範囲では、請求項に記載される実施形態のいずれかを、任意の組合せで使用することができる。
【0071】
本発明の記述では、その一部を形成する添付図面を参照し、それらの図面では、本発明を実施し得る特定の実施形態を単に例示するために示される。それぞれの要素に添えられた括弧内の又はボールド体の参照符号は、例として要素を例示するだけであり、それによってそれぞれの要素を限定しようとするものではない。
【0072】
その他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱することなく構造的又は論理的な変更を行ってもよいことを、理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定を意味すると解釈するものではなく、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0073】
任意の薬物は、一般に、2種の成分又は態様から構成される。第1は、中心成分である実際のAPIである。第2は、添加物として公知である。この添加物は、薬物又は錠剤中の物質を指す。シロップ形態にある場合、添加物は、使用されて液体になる。
【0074】
本明細書で使用される「医薬品有効成分」(API)という用語は、一般に、生物学的に活性な医薬品製剤中の物質を指し、体内で所望の効果を発揮することを意味する。「活性物質」、「活性構成成分」、及び「活性成分」等のその他の用語は、共通の定義を指し、同義に使用され得る。
【0075】
APIは、それらの可溶性、(腸)透過性、及び溶解(率)に基づいてAPIを区別する、生物医薬品分類システムに従って、4つのクラスに分類される。このシステムは特に、経口投与されるAPIを分類するのに適しているが、一般分類システムとしての役割をすることもできる。更なる情報は、「Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System Guidance for Industry」、米国保健省食品医薬品局医薬品評価研究センター発行(参照: CDER waiver on API classes)に見出すことができる。
【0076】
溶解度クラスの境界値は、即時放出生成物の最高用量強度に基づく。APIは、最高用量強度が、1から7.5のpH範囲にわたって250ml(又はそれよりも多い)の溶媒(例えば、水性媒体)に完全に可溶である場合、「高度に可溶である」と見なされる。APIは、最高用量強度が1から7.5のpH範囲にわたって250ml(又はそれよりも少ない)の溶媒に完全には可溶でない場合、「可溶性が不十分である」と見なされ;用量が、溶媒100mL当たり0.1g未満に達する場合、「可溶性ではない」又は「不溶性である」と見なされる。250mlの体積評価は、コップ1杯の水で絶食したヒトボランティアに薬物生成物を投与することを処方する典型的な生物学的等価性研究プロトコールから導かれる。APIの溶解度クラスを決定することに関する詳細な技術情報(例えば、プロトコール及び設備)は、the CDER waiver on API classesに見出すことができる。
【0077】
透過率クラスの境界値は、ヒト腸管膜を横断する物質移動速度の測定に基づき、又は間接的に、ヒトにおけるAPIの吸収の程度に基づく。APIは、ヒトにおける吸収の程度が、物質収支の決定に基づいて又は静脈内用量と比較して、投薬量の90%以上、例えば95%又は100%であると決定された場合、「高度に透過性である」と見なされる。APIは、ヒトにおける吸収の程度が、物質収支の決定に基づいて又は静脈内用量と比較して、投薬量の50%以下、例えば30%又は40%であると決定された場合、「透過性が不十分である」と見なされ;ヒトにおける吸収の程度が10%以下、例えば5%又は0%であると決定された場合、「透過性ではない」と見なされる。或いは、ヒトにおけるAPI吸収を予測することが可能な非ヒト系(例えば、ブタ)を、使用することができる。APIの透過率クラスの決定に関する詳細な技術情報は、the CDER waiver on API classに見出すことができる。
【0078】
溶解(速度)クラスの境界値は、1から7.5のpH範囲にわたる溶媒(例えば、液体水性媒体)に浸漬した時に、設定された時間の長さで固体生成物が到達する、最高測定可能濃度レベルに基づく。即時放出生成物(APIを含む)は、標識された量のAPI物質の85%以上が、2種の異なるシミュレート媒体、その第1の媒体のpHが4.5であり(即ち、胃液)且つ第2が6.8である(即ち、腸液)媒体に900ml以下の体積で100RPMで撹拌する標準化溶解装置を使用して15分以内で溶解した場合、「迅速に溶解する」と見なされる。即時放出生成物(APIを含む)は、標識された量のAPI物質の50%未満が、pHが4.5及び6.8である2種の異なるシミュレート媒体に900ml以下の体積で100RPMで撹拌する標準化溶解装置を使用して15分以内で溶解する場合、「ゆっくり溶解する」と見なされる。API溶解(速度)クラスの決定に関する詳細な技術情報は、the CDER waiver on API classesに見出すことができる。
【0079】
クラスIのAPIは、高い透過率及び高い溶解度を示し、腸粘膜上に十分吸収させることが可能になる。クラスIのAPIの例は、メトプロロールである。クラスIIのAPIは、高い透過率であるが低い溶解度によって特徴付けられ、したがってこれらのAPIのバイオアベイラビリティは、それらの溶解速度によって制限される。クラスIIのAPIの例には、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセン等が含まれる。クラスIIIのAPIは、高い溶解度であるが低い透過率によって特徴付けられ、したがってそれらの吸収は透過率によって制限される。クラスIIIのAPIの例は、シメチジンである。最後に、クラスIVのAPIは、低い透過率及び低い溶解度を示し、それが低い吸収率を引き起こし、したがって不十分なバイオアベイラビリティが予測される。クラスIVのAPIの例には、リトナビル、サキナビル、及びビホナゾール等が含まれる。
【0080】
伝統的に添加物という用語は、活性である物質の媒体としての役割をする、医薬品製剤に使用される生物学的に不活性な物質を指す。しかし本発明の目的で、タンパク質をベースにした添加物は、好ましくは生物学的に不活性ではなく、代わりにAPIと相互作用し、それによって溶液又は過飽和状態に保つ。したがって、概して添加物は、APIの溶解度向上剤としての役割をする。このように、タンパク質組成物又はその加水分解産物を含む、特にタンパク質をベースにした、天然物質から得られる本発明で使用される「タンパク質をベースにした添加物」と、一般に天然又は合成物質、例えばポリマーから誘導される「伝統的な添加物」との間では、明確な区別がなされる。伝統的な添加物は、定義を共有する「不活性物質」、「不活性構成成分」、及び「不活性成分」等のその他の用語によって示されてもよく、同義に使用されてもよい。本明細書で使用される「添加物」という用語は、他に述べない限り(例えば、ポリマー添加物)、一般に「タンパク質をベースにした添加物」を指す。
【0081】
(第1の)概略的態様では、本発明は、共に実質的に非晶質であるタンパク質をベースにした添加物とAPIとを含む、製剤に関する。
【0082】
詳細には、本発明は:
- 少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物と;
- 医薬品有効成分(API)と
を含む製剤であって;
前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、実質的に非晶質であり;好ましくは完全に非晶質であることを特徴とする製剤に関する。有利には、前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIは、実質的に均質な混合物を形成し、より好ましくは、完全に均質な混合物を非晶質固体分散体(ASD)として形成する。
【0083】
本明細書で使用される「製剤」という用語は、一般に、処方により調製された材料又は混合物を指す。本発明の目的で、製剤は、本発明による少なくとも1種の(タンパク質をベースにした)添加物と、少なくとも1種のAPI、特に低い溶解度、溶解速度、及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIとを含み、それによって「医薬品製剤」が形成される。「混合物」又は「組合せ」等のその他の用語は一般に、他に指示しない限り、共有された定義を示し、同義に使用され得る。製剤の特定の実施形態は、少なくとも2種の異なる成分を含む固体状態の系を指す「固体分散体」であり、第1の成分(例えばAPI)が、第2の成分(例えば、添加物)の母材中に非晶質相として有効に分散されている。(非晶質)固体分散体(ASD)は、実質的に均質な混合物であり;好ましくは完全に均質な混合物である。本明細書で使用される「均質な」又は「不均質ではない」という用語は、一般に、混合物の成分同士で明らかな構造上の区別がない、(固体)混合物の均一性のレベルに関する。成分の明らかな区別及び/又は分離を可能にする不均質混合物とは対照的に(例えば、カプセル化された材料、ビーズ、シェル等)、均質混合物は均一に混合され、成分は、容易に分離することができない。本発明の目的で、粉末又は固体分散体は、ほぼ完全に残らない不均質性、即ち10%未満、好ましくは7%未満を含有する場合、「実質的に均質である」と呼び;不均質性を完全に含有しない、即ち5%未満;より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満を含有する場合、「完全に均質である」と呼ぶ。均質性及び/又は不均質性は、ほとんどの粉末又は固体分散体に関し、実験により検証することができる(例えば、X線粉末回折分光法(XRD)、示差走査熱量測定(DSC))。
【0084】
本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、一般に、ペプチド(アミド)結合によって一緒に連結されたアミノ酸で作製したポリマー鎖又は多数のポリマー鎖を指す。当技術分野で公知のペプチドは、アミノ酸モノマーの、生物学的に生ずる短鎖であり、最も短いペプチドは、単一ペプチド結合によって接合された2つのアミノ酸からなるものであってもよい。タンパク質は通常、生物学的に機能的な手法で、アミノ酸の配置構成に基づいて、ペプチドとは区別される。本発明による添加物は、有利には、それらの生物活性の少なくとも部分を保持し;したがって添加物は、タンパク質をベースにする。
【0085】
本発明の目的で、タンパク質は、-モノマー当たり-少なくとも10アミノ酸をそれらの1次構造に組み込む。アミノ酸は、タンパク質(ポリペプチド)が形成されるようにリボソームで重合する、天然モノマーである。本発明の一部の実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、-モノマー当たり-少なくとも10アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも20アミノ酸の長さ;好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さ;より好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さ;最も好ましくは少なくとも250アミノ酸の長さ、例えば少なくとも250アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも750アミノ酸、少なくとも1000アミノ酸、又はそれよりも多くを含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを特徴とする。ペプチドをタンパク質と区別するための、サイズ、(アミノ酸の)長さ、又は重量の境界値の使用は、絶対的ではなく、研究中は任意に変わることに留意されたい。したがって、代わりにタンパク質の生物学的機能性が、区別する主要なポイントとして使用される。したがって、タンパク質の起源;即ち、生物源中に(例えば、ヒト、動物、植物等)天然に存在するものとして機能性を有する天然タンパク質;その機能性が改善された又は修正された組換えタンパク質(例えば、細胞培養物、酵母等);又は、タンパク質の機能性を模倣する人工タンパク質若しくは足場(例えば、アルファボディ、アフィマー等)に基づいて、区別はなされない。本明細書で使用される「非晶質」又は「非結晶質」という用語は一般に、代わりに(規則正しい)結晶質構造を特徴とすると考えられる明確な又は明らかな形状又は形に欠ける、固体の状態を指す。全方向に延びる(高)秩序の微視的構造を有し且つ結晶格子に配置構成することができる(例えば、塩、ダイヤモンド等)結晶質固体(混合物)とは対照的に、非晶質固体(混合物)は構造的長距離秩序に欠け、構成成分は、周期的構造に配置構成することができない。本発明の目的で、粉末又は固体分散体は、結晶性をほとんど含有しない場合、即ち10%未満、より好ましくは7%未満である場合、「実質的に非晶質である」と呼ばれ;結晶性を全く含有しない場合、即ち5%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満である場合、「完全に非晶質である」と呼ばれる。非晶質及び/又は結晶質状態
は、ほとんどの粉末又は固体分散体に関して実験により(例えば、X線粉末回折分光法(XRD)、示差走査熱量測定(DSC))検証することができる。
【0086】
現在、飽和を増大させる際の主な問題は、遊離API濃度が平衡溶解度よりも高くなった場合に薬物沈殿又は結晶化がもたらされることである。本発明者らは、実質的に非晶質であり、前記結晶化を防止する製剤を見出した。事実、この製剤は、より高いレベルのAPI過飽和を実証し、これらのより高い過飽和レベルを長期間にわたって維持した。現在の創薬パイプラインにおける多数の不十分な水溶性のAPIを考慮すると、過飽和の概念は、バイオアベイラビリティを強化するための有効な製剤アプローチとしての役割をする可能性がある。製剤は、過飽和の状態を実現し更に前記過飽和状態を長期間維持することによっても、APIの著しく高い胃腸濃度をもたらすことが意図される。このように、過飽和の状態は、APIの腸吸収を高めることができ、その後、前記APIの改善されたバイオアベイラビリティをもたらすことができる。この過飽和効果は、以下に記述されるように、カスタマイズされた(即ち、改善され又は選択された)溶解速度及び/又はレベルを通して更に誘導することができる。更に製剤は、薬物の注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、前記高API濃度を生理的媒体にもたらすことが意図される。事実、製剤は非アレルギー性タンパク質添加物及びAPIのみからなる可能性があるので、界面活性剤及びその他の潜在的にアレルギー性の及び/又は毒性の添加物は回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減された、より安全な製品がもたらされる。
【0087】
本明細書で使用される「過飽和」という用語は、一般に、通常の状況で溶媒により溶解可能であるよりも多くの溶解材料を含有する、溶液の状態を指す。特に本発明では、過飽和の状態は、製剤が、好ましくは胃腸領域で及び/又は注射剤として使用される生理的媒体中で、通常の状況下、即ち本発明により記述されるような添加物なしで、溶解可能であるよりも多くの吸収可能な材料、即ちAPIを溶解する状態を指す。本明細書で使用される「バイオアベイラビリティ」という用語は一般に、体循環に到達する変化しないAPIの投薬量を指し;一般に、胃腸領域で消化及び吸収に曝されるものである。したがって製剤に関し、バイオアベイラビリティは、APIの、全身で利用可能な画分を示す。定義によれば、APIが静脈内投与される場合、そのバイオアベイラビリティは100%である。しかし経口投与されたAPIに関するバイオアベイラビリティは、様々な生物学的及び化学的要因に依存し、最も顕著には溶解度及び摂取率に依存する。経口投与されたAPIに関するバイオアベイラビリティは、実験によって(例えば、in-vivoで)測定することができ、典型的には、APIのほとんどに関して当技術分野で公知である。APIは、変化のないAPIの投薬量の80%よりも多くが体循環に到達した場合、「高バイオアベイラビリティ」を有すると見なされ;変化のないAPIの投薬量の50%未満が体循環に到達した場合には「不十分なバイオアベイラビリティ」と見なされ;25%未満が体循環に到達した場合は「非常に不十分なバイオアベイラビリティ」と見なされる。APIのバイオアベイラビリティを決定する際の詳細な技術情報(例えば、プロトコール及び設備)は、the CDER waiver on API classesに見出し得る。
【0088】
一部の実施形態では、APIがクラスIのAPIである。いくつかの好ましい実施形態では、APIがクラスIIのAPIである。いくつかのその他の実施形態では、APIがクラスIIIのAPIである。いくつかのその他の好ましい実施形態では、APIがクラスIVのAPIである。元来十分に溶解するAPIクラス(例えば、クラスI及びクラスIII)では、それらを添加物等の溶解度向上剤と組み合わせることが通常は不要である。しかし、ある特定の十分溶解するAPIは、更により改善された溶解度から依然として利益を得られ、それはpHに依存する境界溶解度又は溶解度を示すAPI等、APIのバイオアベイラビリティを更に改善することができるからであることに、留意されたい。例えばイブプロフェンは、pH6.8で高溶解度を示すがpH4.5で低溶解度を示し;このことは、溶解度向上剤からこのように依然として利益を得ることができる剤形に依存するものである。しかし;添加物の溶解度向上効果から最も利益を得易くなるクラスは、元来低溶解度を示すもの(例えば、クラスII及びクラスIV)である。このことは、クラスIIのAPIに特に重要であるが、その理由は、それらの(in-vitro)溶媒和とその(in-vivo)バイオアベイラビリティとの間の直接相関が科学的に文書化されているからである。更に、溶解度及び/又はバイオアベイラビリティの改善の結果、その他の利益も予測することができる。例えば、腸粘膜による適正な摂取に必要な溶解レベルを実現するのに、必要とされるAPIは少なくてよいので、より低いAPI濃度を含有する剤形を生成することが可能となり得る。更に、経口投与可能ではないと以前考えられたある特定のAPIは、少なくとも商用の目的で再考され得る。更に、タンパク質添加物がヒト血清アルブミン(HSA)から作製される場合、溶解度の前記改善は、BCSクラスII又はIV薬物のいずれかの注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、生理的媒体中で高API濃度をもたらし得る。事実、前記製剤は非アレルギー性タンパク質添加物及びAPIのみからなるので、界面活性剤及びその他の潜在的にアレルギー性及び/又は毒性の添加物が回避されて、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減された、より安全な製品がもたらされる。
【0089】
最も好ましい実施形態では、製剤は:少なくとも20アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物;及びクラスIIの医薬品有効成分(API)を含み;前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIは共に実質的に非晶質であることを特徴とする。
【0090】
別の最も好ましい実施形態では、製剤は:少なくとも20アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物;及びクラスIVの医薬品有効成分(API)を含み;前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIは共に実質的に非晶質であることを特徴とする。有利には、タンパク質-モノマー当たり-は、少なくとも50アミノ酸の長さであり;より好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さであり;最も好ましくは少なくとも250アミノ酸の長さであり、例えば少なくとも300アミノ酸又は少なくとも500アミノ酸である。一般に、本発明による製剤は、APIを含み且つ本発明により記述されるタンパク質をベースにした添加物を含まない対照製剤に比べて、下記の測定可能な改善:(a)少なくとも約25%の、最大API濃度の増加;(b)少なくとも約25%の、溶解速度の増大;(c)少なくとも約25%の、過飽和状態が実現され維持される期間の増大;(d)少なくとも約25%の、APIのバイオアベイラビリティの増大の、少なくとも1つを示す。前記改善を裏付ける実験データを、実施例で提示する。
【0091】
本発明の特定の実施形態において、タンパク質をベースにした添加物は、溶媒へのタンパク質組成物又はその加水分解産物の溶解又は可溶化を通してタンパク質溶液を得、且つ前記タンパク質溶液を乾燥して添加物を得ることを通して、前記添加物が得られることを特徴とする。本質的に、本発明の特定の実施形態による添加物は、(生物学的)天然源;例えば動物、天然(即ち、野菜)及び/又は微生物起源からの天然に存在するタンパク質を含む、タンパク質をベースにした添加物である。本発明の別の特定の実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、改善された又は修飾された組換えタンパク質から誘導される。本発明の別の特定の実施形態では、タンパク質をベースにした添加物が、人工(模倣)タンパク質又は足場から誘導される。本発明の目的で、タンパク質をベースにした添加物という用語は、天然に存在する、組換えの、人工タンパク質、及び/又はこれらの組合せであってもよい。
【0092】
他の態様では、本発明は、実質的に非晶質のAPIであって、前記APIが、溶媒にAPIを溶解又は可溶化してAPI溶液を得、前記API溶液を乾燥して実質的に非晶質のAPIを得ることを通して、得られることを特徴とするAPIに関する。いくつかの特定の実施形態では、本発明によるAPIは、実質的に非晶質であり、より詳細には、ほぼ完全に非晶質であり、好ましくは特に完全に非晶質である。
【0093】
本発明者らは、APIと組み合わせた本発明による添加物が、前記添加物、API、及び溶媒を含む溶液を乾燥した後に、安定した非晶質製剤を形成することを観察した。この製剤は、伝統的な(例えば、親水性ポリマー)添加物を使用して実現されるものよりも高い(実験により確認された)、溶解度、溶解速度及びレベル、過飽和、及び/又はバイオアベイラビリティを実現する。
【0094】
特定の実施形態では、本発明による製剤は、本発明の実施形態により、タンパク質をベースにした添加物が、溶媒にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記API溶液を乾燥してタンパク質をベースにした添加物を得ることを通して得られることを特徴とし、更に、非晶質APIは、タンパク質溶液に使用される溶媒に類似した又は異なる溶媒にAPIを溶解又は可溶化してAPI溶液を得、前記API溶液を乾燥して実質的に非晶質の、好ましくは完全に非晶質のAPIを得、更に前記乾燥した添加物と前記乾燥したAPIとを組み合わせて実質的に非晶質の、好ましくは完全に非晶質の製剤を得ることを通して、得られることを特徴とする。
【0095】
或いは、いくつかのその他の実施形態では、本発明の実施形態によれば、製剤は、共溶媒中にAPIと一緒にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解又は可溶化し、前記タンパク質-API溶液を乾燥して実質的に非晶質の、好ましくは完全に非晶質の製剤を得ることを通して、製剤が得られることを特徴とする。
【0096】
或いは、いくつかのその他の実施形態では、本発明の実施形態によれば、製剤は、溶媒中にAPIを溶解又は可溶化し、前記API溶液を乾燥して実質的に非晶質のAPIを得、更に前記乾燥したAPIと、好ましくは実質的に変性していない、好ましくは完全に変性していない提供されたタンパク質をベースにした添加物とを組み合わせて、実質的に非晶質の、好ましくは完全に非晶質ではない製剤を得ることを通して、製剤が得られることを特徴とする。
【0097】
本明細書で使用される「タンパク質組成物」という用語は一般に、類似の供給源からの類似のタンパク質、異なる供給源からの類似のタンパク質、類似の供給源からの異なるタンパク質、又は異なる供給源からの異なるタンパク質を含む混合物を指す。本発明の目的で、タンパク質組成物は、異なるタンパク質又はその加水分解産物の混合物を指す。
【0098】
「溶媒」という用語は一般に、溶液が得られるように、溶質(即ち、溶媒とは化学的に異なる物質)を溶解する物質(液体、固体、又は気体)を指す。本発明の目的で、溶媒は通常、固体(例えば、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPI)が溶解された液体である。
【0099】
特定の実施形態では、溶媒は有機酸であり又は有機酸を含む混合物であり、好ましくは有機酸は、ギ酸、トリフルオロ酢酸、又は酢酸から選択される。この特定の実施形態は、本発明の実施形態による製剤を含む溶液の噴霧乾燥に、特に十分適している。
【0100】
別の特定の実施形態では、溶媒が有機硫黄化合物であり、又は有機硫黄化合物を含む混合物であり、好ましくは有機硫黄化合物がジメチルスルホキシド(DMSO)である。この特定の実施形態は、本発明の実施形態による製剤を含む溶液の凍結乾燥に、特に十分適している。
【0101】
更に、有機酸及び/又は有機硫黄化合物を含む上記混合物は、1種又は複数の(伝統的な)溶媒を更に含んでいてもよく;本発明に適した伝統的な溶媒の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、又はポリエチレングリコールが含まれる。
【0102】
生物源からの抽出後、ほとんどのタンパク質組成物は非晶質である。しかし加工中、タンパク質組成物は、一般にタンパク質を変性させる有機酸等の溶媒に曝され、即ち、タンパク質又は核酸が、その未変性の状態で存在する第4級構造、第3級構造、及び/又は第2級構造を失うプロセスに曝される。タンパク質の、それらの生物活性(即ち、API等の外来分子との相互作用)は、タンパク質分子の完全に折り畳まれた構造に依拠するので、一般にこの変性プロセスは、タンパク質を還元して生物学的に不活性な状態にすると仮定される。特に、本明細書に開示される製剤は、タンパク質をベースにした添加物が実質的に変性せず、且つ/又はその生物活性の少なくとも一部を保持することを提供する。
【0103】
本明細書で使用される「変性」という用語は一般に、ある程度のストレス(例えば、温度、照射等)又は化合物(例えば、強酸又は塩基、濃縮された無機塩、ある特定の有機溶媒等)を加えることによって、タンパク質又は核酸が、それらの未変性状態で存在する第4級、第3級、及び/又は第2級構造を失うプロセスを指す。しばしば、タンパク質が変性した場合、それらの生物活性の低減又は崩壊がもたらされる。本発明の目的で、タンパク質は、変性をほとんど含有しない場合、即ち10%未満、好ましくは5%未満である場合、「実質的に変性しない」と呼ばれ;変性を含有しない場合、即ち5%未満、好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満の場合、「完全に変性しない」と呼ばれる。変性状態は、ほとんどのタンパク質に関し、直接又は生物活性の関連ある損失を通して実験(例えば、二面偏波式干渉法、円偏光二色性、水晶振動子マイクロバランス)により検証することができる。
【0104】
本発明の一部の実施形態では、添加物は、実質的に変性しない。本発明のいくつかの実施形態では、添加物は、完全に変性しない。
【0105】
本発明のいくつかのその他の実施形態では、添加物は、その生物活性の少なくとも一部を保持する。本発明のいくつかのその他の実施形態では、添加物は、実質的にその生物活性を保持する。本発明のいくつかのその他の実施形態では、添加物は、その生物活性をほぼ完全に保持する。本発明のいくつかのその他の好ましい実施形態では、添加物は、その生物活性を完全に保持する。本発明の目的で、タンパク質の生物活性は、in vivoで測定されたその完全生物活性(=100%)の測定可能な技術効果を発揮する場合、即ち少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%である場合、「部分的に保持される」と呼ばれ;その完全生物活性(=100%)の有意に測定可能な技術効果を示す場合、即ち少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%の場合には、「実質的に保持される」と呼ばれ;その生物活性(=100%)のほぼ全てを示す場合、即ち少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、最も好ましくは少なくとも94%の場合には、「ほぼ完全に保持される」と言われ;その生物活性(=100%)の全てを示す場合、即ち、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の場合には、「完全に保持される」と呼ばれる。
【0106】
本発明者らは、タンパク質をベースにした添加物がAPIと生物学的に相互作用して、溶液及び/又は過飽和状態に保持され得ることを観察した。タンパク質の生物活性は、前記タンパク質の第2級、第3級、及び第4級構造に関連付けられ;したがって変性を、生物活性の低減又は損失に関連付けることができる。このように本発明者らは、タンパク質をベースにした添加物を含むタンパク質の生物活性を保持することによって、前記タンパク質をベースにした添加物を含む製剤が、現況技術による伝統的な(ポリマー)添加物に勝る様々な利益を示し得ることを見出した。利益には、高い溶解度、溶解速度及び/又はレベル、過飽和状態の実現、前記過飽和状態の長期間にわたる維持(実験により確認される)を含めてもよい。その結果、製剤は更に、APIの胃腸吸収を増大させることができ、その後、前記APIの改善されたバイオアベイラビリティをもたらすことができる。更に、タンパク質添加物がヒト血清アルブミン(HSA)から作製される場合、前記利益は、薬物の注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、生理的媒体中の高いAPI濃度をもたらし得る。事実、前記製剤は非アレルギータンパク質添加物及びAPIのみからなるので、界面活性剤及びその他の潜在的にアレルギー性及び/又は毒性の添加物が回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減した、より安全な製品がもたらされる。
【0107】
特に、本明細書に開示される製剤は、タンパク質組成物又はその加水分解産物の少なくとも1種のタンパク質が、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、血液タンパク質、免疫グロブリン、乳タンパク質、ゼラチン、ケラチン、トウモロコシ、小麦、麻、ライ麦、オート麦、落花生、大麦、カゼイン、アルブミン、乳清タンパク質(ラクトアルブミン)、加水分解乳清タンパク質単離物(HWPI)、加水分解コラーゲン、血漿タンパク質、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、卵アルブミン、魚アルブミン、エラスチン、コラーゲン、組換え若しくは人工タンパク質、天然若しくは人工結合足場の組換えバージョン、及び/又はこれらの組合せ;好ましくはHSA、BSA、ゼラチン、及び/又はこれらの組合せから選択されることを提供する。先のリストは、通常は「天然タンパク質」として公知の天然に生ずる供給源から、1つ又は複数の抽出方法を介して得られるタンパク質を含む。先のリストは、通常なら「組換えタンパク質」として公知の、組換え技術を使用して最適化された変種も含み;組換えタンパク質は、天然に存在する変種(例えば、抗体、ナノボディ等)に比べて、それらの物理的、生物学的、及び/又は化学的性質が変化し又は改善するように、異なる前処理又は後処理方法を使用して修飾されてもよい。先のリストは、タンパク質模倣体として公知の天然に存在する又は組換え変種の機能性を模倣するように生成された変種も含み;その例には、人工結合足場(Alphabodies(商標)、Affimers等)が含まれる。このように、本発明の目的で、タンパク質の起源に基づいて区別はされず;即ち「タンパク質」という用語は、他に指示しない限り、天然に存在する、組換えの、又は人工タンパク質を等しく指す。更に、タンパク質組成物又はその加水分解産物の組合せは、タンパク質のタイプ又は起源とは無関係の組合せであってもよく;例えば、天然タンパク質、組換えタンパク質、及び/又は人工タンパク質の組合せであり;例えば天然に存在するBSA又はゼラチンのみの組合せである。
【0108】
本発明の実施形態では、本発明による添加物は、動物源(即ち、天然に存在するタンパク質)から抽出されたタンパク質組成物又はその加水分解産物から調製され、特に、酸性ブタ(acid porcine)、アルカリ性ウシ(alkaline bovine)、ウシ皮(bovine hides)、石灰皮(soda hides)、酸性ブタ皮膚(acid pig skins)、酸性ブタ骨(acid pig bones)、石灰ウシ骨(lime bovine bones)、酸性ウシ骨(acid bovine bones)、酸性ウシ皮(acid bovine hides)、石灰ブタ骨(lime pig bones)、魚、又はこれらの組合せから選択される。抽出されたゼラチンの場合、タンパク質は更に、ゼラチンの剛性及び強度の尺度であるブルームによって、グレードが付けられる。値は、破壊することなくゲル4mmの表面を撓めるのにプローブが必要とする質量(単位 グラム)を表し、典型的には30から300grブルームの間にある。本発明の目的で、異なるブルーム値を使用してもよく;好ましくは200grよりも上のブルーム値が使用される。
【0109】
一般に、10アミノ酸よりも短い長さのタンパク質を含むタンパク質組成物は溶媒を必要とせず、水性媒体に容易に溶解することができる。更に本発明者らは、100アミノ酸よりも長い長さのタンパク質組成物又はその加水分解産物を含む(例えば、BSA及びゼラチン)タンパク質添加物が、ある特定のAPIと組み合わせて、追加の有益な生物活性を示し得ることを観察した。したがって、100アミノ酸よりも長い長さのタンパク質組成物又はその加水分解産物を含むタンパク質添加物を含む製剤は、更に高い溶解度、溶解速度及び/又はレベル、過飽和状態の実現、前記過飽和状態の長期間にわたる維持(実験によって確認される)を、有していてもよい。その結果、製剤は更に、APIの胃腸吸収を高めることができ、その後、前記APIの改善されたバイオアベイラビリティをもたらすことができ、又は薬物の注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、所望のレベルの過飽和を生理的媒体中に創出することができる。
【0110】
第1の参照として、完全長BSA前駆体タンパク質は、607アミノ酸の長さであり、質量は69324ダルトン(Da)である。成熟BSAタンパク質の完全長は583アミノ酸であり、質量は66463Daである。いくつかの実施形態では、BSAタンパク質は、より短いアミノ酸の長さが得られるように切断されてもよく、BSAは、本発明の目的でその生物活性を依然として保持している。更にBSAは、そのアミノ酸配列を修正(例えば、組換え)して、例えば飽和値を更に改善することができ;したがって前記組換えBSAを使用する製剤は、天然BSAのみ使用する製剤に比べて、より高度の過飽和及びバイオアベイラビリティを更に得てもよい。
【0111】
第2の参照として、繊維状コラーゲンの螺旋部分、それらの天然状態にあるホモ又はヘテロトリマーは一般に、鎖当たり約1000アミノ酸を含有し、十分に折り畳まれた分子に合わせて約3000アミノ酸までになり、質量は300kDaよりも大きくなるが、それは有意な量の翻訳語修飾によるものである。ゼラチンの製造において、希酸(タイプAのプロセス)又はアルカリ(タイプBのプロセス)による動物原料の処理は、コラーゲン原繊維の熱耐性を定める鎖間架橋の部分切断をもたらす。構造は、「高水溶性コラーゲン」、即ちゼラチンが形成される程度まで破壊される。後続の抽出工程では、温水でコラーゲン原繊維がそれらの構成成分である個々の鎖に溶け出し、同時に溶媒としての役割をする。したがってゼラチンは、ポリペプチド鎖の化学的/熱的加水分解のレベル、及び鎖間架橋加水分解のレベルに応じて、15から400kDa超に及ぶ様々な分子質量のタンパク質断片の多分散性混合物である。ギ酸への乾燥ゼラチンの溶解は、日数を経てもその分子量プロファイルを変化させず、ギ酸溶媒が蒸発すると、ゼラチンは、当初の生成物のそのゲル化/融解特性を保持する。特に、本明細書に開示される製剤は、APIが低い溶解度、溶解速度若しくはレベル、過飽和状態、及び/又はバイオアベイラビリティを示すことを提供する。
【0112】
既に定義されたように、「溶解度」という用語は一般に、固体、液体、又は気状溶媒中に溶解するための、溶質と呼ばれる固体、液体、気状化学物質の性質に関する定量的用語を指す。溶解度は、「溶解レベル」の観点から表され、所与の量の溶媒に溶解することになる前記物質の量を表す。一般に、その物質の0.1g超が100mLの溶媒に溶解する場合、物質は可溶性であると言われ; 0.1g未満が100mLの溶媒に溶解する場合、物質は不溶性であると言われ、又はより厳密には難溶性と言われる。溶解度は、実験によって測定してもよく、当技術分野で公知である。本発明の溶解度がどのように決定されたかに関する説明を、この記述の実施例で更に提示する。関連ある用語は「溶解速度」であり、前記物質が所与の量の溶媒に溶解することになる、時間に対して測定された溶解度を表す。一般に、非常に可溶性のある物質は高い溶解速度も示すが、ある特定の物質中では、高い溶解レベルを示すことができ、それでも非常にゆっくりと溶解する。溶解レベル及び速度への選択的適応は、製剤の機能性及びその薬物動態特性に向けた2次的利益を有することができる。
【0113】
本発明者らは、本発明による添加物が、前記タンパク質組成物又はその加水分解産物及び溶媒、好ましくは有機酸を含む溶液の乾燥後に、安定な粉末であることを観察した。このタンパク質をベースにした添加物は、伝統的な(例えば、ポリマー)添加物によって実現されるよりも高い溶解度及び溶解速度を実現する(実験によって確認される)。したがって製剤は、前記溶解度及び溶解速度向上特性を利用するよう案出される。
【0114】
特に、本明細書に開示される製剤は、APIが、下記のリスト:フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンから;より詳細には、下記のリスト:フルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルから選択されることを提供する。
【0115】
本発明の目的で、APIは、任意のAPIカテゴリから選択され得る。しかし好ましくは、APIは、低い溶解度、溶解速度及び/又はバイオアベイラビリティを示し;したがって前記製剤の溶解度、溶解速度及びレベル、過飽和及び/又はバイオアベイラビリティ向上効果から十分に利益が得られ、その結果、前記APIの活性特性が可能になり又は向上する。本発明の特定の実施形態では、前記製剤は、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセン;好ましくはフルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミル;最も好ましくはフルベンダゾールから選択されるAPIを含む。
【0116】
本発明者らは、APIと組み合わせた本発明による添加物が、前記添加物、API、及び酸を含む溶液を乾燥した後に、安定な、非晶質製剤を形成することを観察した。このプロセスは、伝統的なポリマー添加物を使用して実現されたものよりも高い溶解度及び溶解速度を実現する製剤をもたらす(実験により確認される)。
【0117】
しばしば、そのような結晶質状態は、非常に不十分な溶解度及び溶解速度を示し、溶液に溶解するのに多数の溶媒又は高温の使用を必要とする。結晶質タンパク質組成物を酸溶媒(例えば、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸)に溶解することにより、タンパク質組成物は、実質的に非晶質状態に変換され;前記酸溶媒は、中性溶媒(例えば、H2O)を使用して破壊することができないタンパク質同士の相互作用を破壊することも可能である。一般に、そのような非晶質状態は、結晶質状態よりも改善された溶解度及び溶解速度を示す。ある特定の場合には、非晶質状態にあるタンパク質組成物は、低温であっても完全に溶解可能になる。
【0118】
好ましい実施形態では、製剤は、タンパク質をベースにした組成物又はその加水分解産物及びAPIを、下記のリスト:ギ酸、酢酸、DMSO、及び/又はグリセロールから選択される溶媒;或いは下記のリスト:ギ酸、酢酸、DMSO、及び/又はグリセロールから選択される少なくとも1種の溶媒と、任意選択で、下記のリスト:アルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の(伝統的な)溶媒とを含む溶媒混合物に、溶解することによって生成される。ギ酸及び酢酸は有機溶媒であり;タンパク質は、有機溶媒には典型的には(適正に)溶解せず、したがって伝統的な溶媒が代わりに使用された。伝統的な溶媒の例には:アルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、又はポリエチレングリコールが含まれる。
【0119】
しかし本発明者らは、ギ酸、酢酸、DMSO、又はグリセロールを使用してタンパク質を溶解することができることを見出し;類似の観察を、少なくともギ酸、酢酸、DMSO、及び/又はグリセロールを含む溶媒混合物に関して行った。ギ酸及び酢酸は、噴霧乾燥を介して製剤を生成するときに、溶媒として使用するのに特に適することがわかり:一方、DMSOは、凍結乾燥を介して製剤を生成するときに、溶媒として使用するのに特に適していることがわかる。更に、溶媒混合物を見出した。
【0120】
更に、APIとタンパク質組成物又はその加水分解産物とを含む製剤を、最初に成分をアルコール(例えば、メタノール、エタノール)やアセトン等の伝統的な溶媒で溶解し、その後、前記溶液を乾燥して乾燥製剤(例えば、固体分散体)を形成することにより生成する場合、タンパク質組成物又はその加水分解産物の高過ぎる濃度が、APIの加水分解を引き起こし得る。更に、ある特定のAPIは、伝統的な溶媒に全てが簡単に溶解できるわけではなく;例えばベムラフェニブはメタノールに溶解しない。その結果、低濃度(例えば、10%よりも低い添加物濃度)のタンパク質組成物又はその加水分解産物を含む製剤のみを、APIの性質に悪影響を及ぼすことなく、APIと首尾良く組み合わせることができる。しかし、APIを有機酸、特にギ酸、トリフルオロ酢酸、又は酢酸に溶解した場合、APIの加水分解が回避され得ることがわかった。更に有機酸は、ほとんどの(可溶性が不十分な)APIの完全溶液を可能にする。その結果、高濃度のタンパク質組成物又は加水分解産物(例えば、50よりも高い添加物濃度)を含む乾燥製剤の生成を可能にすることができ;特に、固体分散体の生成に関してはそのようである。
【0121】
更に又は或いは、伝統的な溶媒(例えば、メタノール又はエタノール等のアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、ポリエチレングリコール)及び有機酸(例えば、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸)を含む混合物を考えることもできるが、それは伝統的な溶媒の添加が蒸発特性(より低い沸点、より低い蒸発熱、より高い蒸気圧等)に影響を及ぼす可能性があり、有機酸中のAPIの溶解度も向上させ得るからである。
【0122】
純粋な有機酸のマイナス面は、典型的には高い沸点であり、例えばギ酸に関しては100.8℃であり、それに対してメタノールの場合は65℃である。したがって、より多くのエネルギー及び/又はより長い乾燥時間が、溶媒の完全蒸発を実現するのに必要とされる。溶媒として混合物を使用することにより、上記論じた有機酸の利益を少なくとも部分的に維持しながら沸点を低下させることができる。
【0123】
いくつかの特定の実施形態では、溶媒は、有機酸を少なくとも5%から有機酸を最大で100%(v/v);好ましくは10%から90%の有機酸;より好ましくは15%から90%の有機酸;最も好ましくは20%から90%の有機酸;最も好ましくは30%から70%の有機酸;最も好ましくは40%から60%の有機酸;最も好ましくは45%から55%の有機酸、例えば50%の有機酸を含む溶媒混合物である。
【0124】
いくつかの特定の好ましい実施形態では、溶媒は、酢酸及び/又はギ酸を、少なくとも5%から最大で90%(v/v);好ましくは酢酸及び/又はギ酸を10%から90%;より好ましくは酢酸及び/又はギ酸を15%から90%;最も好ましくは酢酸及び/又はギ酸を20%から90%;最も好ましくは酢酸及び/又はギ酸を30%から70%;最も好ましくは酢酸及び/又はギ酸を40%から60%;最も好ましくは酢酸及び/又はギ酸を45%から55%;例えば酢酸を50%;例えばギ酸を52%の量で含む溶媒混合物である。
【0125】
タンパク質の完全溶解(沈殿なし)は、溶媒混合物が、少なくとも5%(v/v)濃度の有機酸、特に少なくとも5%(v/v)のギ酸又は酢酸を含むとき;好ましくは少なくとも10%(v/v)濃度の有機酸、特に少なくとも10%(v/v)のギ酸又は酢酸を含むとき;より好ましくは少なくとも15%(v/v)濃度の有機酸、特に少なくとも15%(v/v)のギ酸又は酢酸を含むとき;最も好ましくは少なくとも20%(v/v)濃度の有機酸、例えば30%(v/v)のギ酸;例えば40%(v/v)の酢酸を含むときに実現される。厳密な最小量はタンパク質組成物に依存し、例えば一部のタンパク質は、少なくとも5%(v/v)のギ酸又は酢酸を必要とする可能性があり、一方、その他は15%(v/v)のギ酸又は酢酸を必要とする可能性がある。しかし本発明者らは、ギ酸又は酢酸が少なくとも20%(v/v)の量であることが、一般に使用されるタンパク質(本明細書に列挙される)に適することを見出し;特に、タンパク質はアルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0126】
いくつかの実施形態では、溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を、少なくとも5%から最大で90%(v/v);好ましくはDMSOを10%から90%;より好ましくはDMSOを15%から90%;最も好ましくはDMSOを20%から90%;最も好ましくはDMSOを30%から70%;最も好ましくはDMSOを40%から60%;最も好ましくはDMSOを45%から55%;例えばDMSOを50%の量で含む溶媒混合物である。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶媒は、少なくとも5%から最大で80%の間の量の、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される少なくとも1種の有機酸と、少なくとも20%から最大で95%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の伝統的な溶媒とを含む溶媒混合物であり、100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくは有機酸が10%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から90%;好ましくは有機酸が15%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から85%;好ましくは有機酸が20%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から80%;好ましくは有機酸が30%から70%、及び伝統的な溶媒が30%から70%;より好ましくは有機酸が40%から60%、及び伝統的な溶媒が40%から60%;最も好ましくは有機酸が45%から55%、及び伝統的な溶媒が45%から55%である。
【0128】
いくつかの実施形態では、溶媒は、少なくとも5%から最大で80%の間の量の、少なくとも1種の有機硫黄化合物、好ましくはジメチルスルホキシドと、少なくとも20%から最大で95%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の伝統的な溶媒とを含む溶媒混合物であり、100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくは有機硫黄化合物が10%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から90%;好ましくは有機硫黄化合物が15%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から85%;好ましくは有機硫黄化合物が20%から80%、及び伝統的な溶媒が20%から80%;好ましくは有機硫黄化合物が30%から70%、及び伝統的な溶媒が30%から70%;より好ましくは有機硫黄化合物が40%から60%、及び伝統的な溶媒が40%から60%;最も好ましくは有機硫黄化合物が45%から55%、及び伝統的な溶媒が45%から55%である。
【0129】
いくつかの実施形態では、溶媒は、少なくとも20%から最大で80%の間の量のギ酸と、少なくとも20%から最大で80%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の伝統的な溶媒とを含む溶媒混合物であり、100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸が30%から70%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が30%から70%;より好ましくはギ酸が40%から60%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が40%から60%;最も好ましくはギ酸が45%から55%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が45%から55%;例えばギ酸が50%及びアルコールが50%である。少なくとも1種の20%(v/v)濃度のギ酸を含む混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にする。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも20%から最大で80%の間の量の酢酸と、少なくとも20%から最大で80%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の伝統的な溶媒とを含む溶媒混合物であり、100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくは酢酸が30%から70%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が30%から70%;より好ましくは酢酸が40%から60%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が40%から60%;最も好ましくは酢酸が45%から55%、及び少なくとも1種の伝統的な溶媒が45%から55%;例えば酢酸が50%及びアルコールが50%である。少なくとも1種の20%(v/v)濃度の酢酸を含む混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にする。
【0131】
いくつかの特定の実施形態では、溶媒は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、アルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む2成分溶媒混合物である。少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%(v/v)濃度のギ酸又は酢酸を含む2成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0132】
いくつかの特に好ましい実施形態では、2成分混合物は、少なくとも5%から最大で90%の間の量の酢酸又はギ酸と、少なくとも10から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される1種の伝統的な溶媒とを含み;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸又は酢酸が20%から90%、及び1種の伝統的な溶媒が10%から80%;好ましくはギ酸又は酢酸が10%から80%、及び1種の伝統的な溶媒が30%から90%;より好ましくはギ酸又は酢酸が15%から60%、及び1種の伝統的な溶媒が40%から85%;例えば酢酸が40%、アルコールが30%、及びアセトンが30%;最も好ましくはギ酸又は酢酸が20%から50%、1種の伝統的な溶媒が50%から80%;例えば酢酸が40%及びアルコールが60%;例えばギ酸が50%及びアセトンが50%である。
【0133】
いくつかのその他の特に好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも20%から最大で80%の間の量の酢酸と、最大で80%から少なくとも20%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される伝統的な溶媒とを含む2成分溶媒混合物であり;100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくは酢酸が30%から70%、及びアルコール又はアセトンが70%から30%;より好ましくは酢酸が40%から60%、及びアルコール又はアセトンが60%から40%;最も好ましくは酢酸が45%から55%、及びアルコール又はアセトンが55%から45%;例えば酢酸が45%、及びアルコールが55%;例えば酢酸が50%、及びアセトンが50%である。少なくとも20%(v/v)濃度の酢酸を含む2成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0134】
いくつかのその他の特に好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも20%から最大で80%の間の量のギ酸と、最大で80%から少なくとも20%の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される伝統的な溶媒とを含む2成分溶媒混合物であり;100%(v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸が30%から70%、及びアルコール又はアセトンが70%から30%;より好ましくはギ酸が40%から60%、及びアルコール又はアセトンが60%から40%;最も好ましくはギ酸が45%から55%、及びアルコール又はアセトンが55%から45%である。少なくとも20%(v/v)濃度のギ酸を含む2成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0135】
いくつかの特定の実施形態では、溶媒は、1種の有機硫黄化合物、好ましくはDMSOと、1種のその他の(伝統的な)溶媒、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される溶媒とを含む2成分溶媒混合物である。少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%(v/v)濃度のDMSOを含む2成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0136】
いくつかの特に好ましい実施形態では、2成分混合物は、少なくとも5%から最大で80%の間の量のDMSOと、少なくとも20から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される1種の伝統的な溶媒とを含み;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはDMSOが10%から70%、及び1種の伝統的な溶媒が30%から90%;より好ましくはDMSOが15%から60%、及び1種の伝統的な溶媒が40%から85%;例えば酢酸が40%、アルコールが30%、及びアセトンが30%;最も好ましくはDMSOが20%から50%、及び1種の伝統的な溶媒が50%から80%;例えばDMSOが40%、及びアルコールが60%;例えばDMSOが50%、及びアセトンが50%である。
【0137】
いくつかの特定の実施形態では、溶媒が、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される2種のその他の(伝統的な溶媒)とを含む3成分溶媒混合物である。
【0138】
いくつかの特に好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも5%から最大で80%の間の量の、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、少なくとも20から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される2種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む3成分溶媒混合物であり;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸又は酢酸が10%から70%、及び2種の伝統的な溶媒が30%から90%;より好ましくはギ酸又は酢酸が15%から60%、及び2種の伝統的な溶媒が40%から85;例えば酢酸が40%、アルコールが30%、及びアセトンが30%;最も好ましくはギ酸又は酢酸が20%から50%、及び2種の伝統的な溶媒が50%から80%;例えば酢酸が40%、エタノールが30%、及びアセトンが30%;例えばギ酸が50%、メタノールが25%、及びDCMが30%である。いくつかのその他の特定の実施形態では、溶媒は、2種の有機酸、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される少なくとも1種、より好ましくは酢酸及びギ酸と、1種のその他の(伝統的な)溶媒、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及び/又はポリエチレングリコールから選択される溶媒を含む3成分溶媒混合物である。
【0139】
いくつかの特に好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも5%から最大で80%の間の量の、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される2種の有機酸、より好ましくは酢酸及びギ酸と、少なくとも20から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される1種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む3成分溶媒混合物であり;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸又は酢酸が10%から70%、及び2種の伝統的な溶媒が30%から90%;より好ましくはギ酸又は酢酸が15%から60%、及び2種の伝統的な溶媒が40%から85%;例えば酢酸が40%、アルコールが30%、及びアセトンが30%;最も好ましくはギ酸又は酢酸が20%から50%、及び2種の伝統的な溶媒が50%から80%;例えば酢酸が40%、エタノールが30%、及びアセトンが30%;例えばギ酸が50%、メタノールが25%、及びDCMが30%である。
【0140】
いくつかの特に好ましい実施形態では、3成分混合物は、少なくとも5%から最大で70%の間の量の酢酸と、少なくとも5%から最大で70%の間の量のギ酸と、少なくとも25%から最大で90%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及び/又はポリエチレングリコールから選択される2種のその他の(伝統的な)溶媒とを含み;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはギ酸が10%から60%、酢酸が10%から60%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が30%から80%;より好ましくはギ酸が15%から60%、酢酸が15%から60%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が25%から70%;最も好ましくはギ酸が20%から50%、酢酸が20%から50%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が30%から60%;例えばギ酸が25%、酢酸が25%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が50%;例えばギ酸が50%、酢酸が25%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が25%;例えばギ酸が25%、酢酸が50%、及び2種のその他の(伝統的な)溶媒が25%である。
【0141】
いくつかのその他の特定の実施形態では、溶媒は、少なくとも5%から最大で80%の間の量の、1種の有機硫黄化合物、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)と、少なくとも20から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される2種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む3成分溶媒混合物であり;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量である。
【0142】
いくつかのその他の実施形態では、3成分混合物は、少なくとも5%から最大で80%の間の量のDMSOと、少なくとも20から最大で95%の間の量の、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される2種の(伝統的な)溶媒とを含み;100%(v/v/v)は、混合物中の、列挙された溶媒の総量であり;好ましくはDMSOが10%から70%、及び2種の(伝統的な)溶媒が30%から90%;より好ましくはDMSOが15%から60%、及び2種の(伝統的な)溶媒が40%から85%;例えば酢酸が40%、アルコールが30%、及びアセトンが30%;最も好ましくはDMSOが20%から50%、及び2種の(伝統的な)溶媒が50%から80%;例えばDMSOが40%、エタノールが30%、及びアセトンが30%;例えばDMSOが50%、メタノールが25%、及びDCMが30%である.
【0143】
いくつかのその他の特定の実施形態では、溶媒は、好ましくは酢酸及びギ酸から選択される少なくとも1種の有機酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも2種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む4成分溶媒混合物である。少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%(v/v)濃度のギ酸及び/又は酢酸を含む4成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0144】
いくつかのその他の特定の実施形態では、溶媒は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される2種の有機酸、好ましくは酢酸及びギ酸と、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、又はポリエチレングリコールから選択される2種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む4成分溶媒混合物である。
【0145】
いくつかのその他の特定の実施形態では、溶媒は、少なくとも1種の有機硫黄化合物、好ましくはDMSOと、好ましくはアルコール、アセトン、DCM、THF、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMSO、及び/又はポリエチレングリコールから選択される少なくとも3種のその他の(伝統的な)溶媒とを含む4成分溶媒混合物である。少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%(v/v)濃度のDMSOを含む4成分混合物は、タンパク質の完全溶解(沈殿なし)を可能にし;特にタンパク質は、アルブミン(BSA、HAS)又はゼラチンである。
【0146】
製剤が噴霧乾燥を介して得られるいくつかの特定の好ましい実施形態では、溶媒が、好ましくは酢酸及びギ酸から選択される有機酸を含む。
【0147】
製剤が凍結乾燥を介して得られるいくつかの特定の好ましい実施形態では、溶媒が、有機硫黄化合物、好ましくはDMSOを含む。
【0148】
いくつかのその他の実施形態では、本発明による製剤は、APIが少なくとも約5%及び添加物が最大で約95%(w/w)から、APIが少なくとも95%及び添加物が最大で5%(w/w)の間にある、APIの添加物に対する比を含み、100%は、API及び添加物の合計質量と定義される。いくつかのその他の実施形態では、本発明による製剤は、APIが少なくとも約10%及び添加物が最大で約90%(w/w)から、APIが少なくとも90%及び添加物が最大で10%(w/w)の間にある、APIの添加物に対する比を含む。いくつかのその他の実施形態では、製剤は、APIが約50%及び添加物が約50%(w/w)の、APIの添加物に対する比を含んでいてもよい。
【0149】
本発明者らは、これらの比(及び濃度)が、添加物の性質(例えば、高い溶解度、溶解速度、及びアベイラビリティ)とAPIの投与量との間に最適なバランスをもたらすことを見出した。最も重要なことは、これらの比が、クラスII、クラスIII、及びクラスIVのAPIの、溶解度、透過率、及び/又は溶解(速度)を改善することがわかったことである。更に、提供された(API及びタンパク質)材料のこれらの濃度は、前述の性質と生産コストと製剤のタイミングとの間に最適なバランスをもたらす。
【0150】
いくつかの特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%から、APIが最大で60%及び添加物が少なくとも40%の間にある、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含み; 100%は、API及び添加物の合計質量と定義される。いくつかの特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で60%及び添加物が少なくとも40%の間にある、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で60%及び添加物が少なくとも40%の間にある、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で40%及び添加物が少なくとも60%の間にある、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。
【0151】
いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも5%及び添加物が最大で95%から、APIが最大で50%及び添加物が少なくとも50%の間にある、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含み; 100%は、API及び添加物の合計質量と定義される。いくつかの特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で50%及び添加物が少なくとも50%の、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で50%及び添加物が少なくとも50%の、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で40%及び添加物が少なくとも60%の、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。
【0152】
いくつかのその他の特定の実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で30%及び添加物が少なくとも70%の、APIの添加物(w/w)に対する質量比(w/w)を含む。いくつかのその他の好ましい実施形態では、製剤は、APIが少なくとも10%及び添加物が最大で90%から、APIが最大で20%及び添加物が少なくとも80%の、APIの添加物に対する比(w/w)を含む。
【0153】
いくつかのより特定の実施形態では、製剤は、APIが約50%及び添加物が約50%(w/w)の、APIの添加物に対する質量比(w/w)を含み; 100%は、API及び添加物の合計質量と定義される。いくつかのその他のより特定の実施形態では、製剤は、APIが約40%及び添加物が約60%(w/w)の、APIの添加物に対する質量比(w/w)を含んでいてもよい。いくつかのその他のより特定の実施形態では、製剤は、APIが約30%及び添加物が約70%(w/w)の、APIの添加物に対する質量比(w/w)を含んでいてもよい。いくつかのより好ましい実施形態では、製剤は、APIが約20%及び添加物が約80%(w/w)の、APIの添加物に対する比を含んでいてもよい。いくつかのその他のより好ましい実施形態では、製剤は、APIが約10%及び添加物が約90%(w/w)の、APIの添加物に対する比を含んでいてもよい。より高い量の添加物は、溶解度、溶解速度、透過率、及び/又はバイオアベイラビリティに関してより高い改善を引き起こすことができ;したがって一般に言えば、APIに対する添加物のより高い割合(又は質量比)は、より低い割合よりも好ましいと考えられる。本発明者らは、本発明による製剤が、水性ベースの溶媒に比べて且つ水性ベースの溶媒を用いることにより実現可能であるよりも、添加物のAPIに対するより高い比を可能にすることを見出した。特定の実施形態では、本発明による製剤は、5%のAPI、10%のAPI、15%のAPI、20%のAPI、25%のAPI、30%のAPI、35%のAPI、40%のAPI、45%のAPI、又は50%のAPIと、95%の添加物、90%の添加物、85%の添加物、80%の添加物、75%の添加物、70%の添加物、65%の添加物、60%の添加物、55%の添加物、又は50%の添加物を含む。
【0154】
本発明者らは、そのような好ましい比が、本発明による製剤の非晶質状態をもたらすことができ、それによって、好ましい比とは異なる比から構成される製剤に比べ、改善された溶解度、溶解速度及びレベル、過飽和状態の実現及び前記状態の維持、及び/又はバイオアベイラビリティを示し得ることを見出した。
【0155】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による製剤は、少なくとも1種の親水性担体(HC)を更に含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明による製剤は、5%のHC、10%のHC、15%のHC、20%のHC、25%のHC、30%のHC、35%のHC、40%のHC、45%のHC、又は50%のHC(w%)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、添加物とAPIとHCとが、80%対10%対10%(w/w/w); 70%対20%対10%; 60%対30%対10%; 50%対40%対10%; 40%対30%対10%; 30%対60%対10%; 20%対70%対10%; 10%対80%対10%である比を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、添加物とAPIとHCとが、70%対10%対20%(w/w/w); 60%対20%対20%; 50%対30%対20%; 40%対20%対20%; 30%対50%対20%; 20%対60%対20%; 10%対70%対20%である比を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、添加物とAPIとHCとが、60%対10%対30%; 50%対20%対30%; 40%対30%対30%; 30%対40%対30%; 20%対50%対30%; 10%対60%対30%である比を含む。
【0157】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記APIが、フルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、又はベラパミルであり、前記タンパク質をベースにした添加物は、BSA及び/又はゼラチンを含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られることを提供する。より詳細には、本明細書に開示される製剤は、前記APIがフルベンダゾールであり、前記タンパク質をベースにした添加物が、BSA及び/又はゼラチンを含むタンパク質組成物又は加水分解産物から得られることを提供する。
【0158】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記製剤が、固体剤形で、好ましくは錠剤、ロゼンジ、丸薬、又はカプセルで投薬されることを提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、製剤は更に、固体剤形を含み;好ましくは経口投与に適した固体剤形を含む。いくつかの好ましい実施形態では、製剤は更に、錠剤、ロゼンジ、丸薬、又はカプセルの形を含む。有利には、生成された固体剤形は、ブリスターパック等の単位用量包装に適しており;各単位用量は、1回の定期的な用量の適用又は使用に十分な、所定の量のAPIを含有する製剤である。
【0160】
単位用量は、(個々の)固体剤形として好ましくは生成され、包装され、投与される。典型的には、単位用量の寸法は、経口投与に適合される(例えば、嚥下のし易さ、並びに患者の受け入れ易さ、及び治療計画の遵守)。錠剤及びカプセルの例示的な寸法は、1×1×1mm3から20×20×20mm3にまでの範囲であってもよく;例えば5×5×5mm3;例えば10×10×10mm3;例えば15×15×15mm3である。典型的には、単位用量の形状は経口投与に適合され、即ち、より広い断面積を有する錠剤及びカプセル(例えば、より丸い錠剤)は、一般に、同じ体積であるが断面積がより小さい錠剤又はカプセルよりも、嚥下するのが難しくなる可能性がある。有利には、形状は、使用者を傷付けないように、丸みの付いた隅を有する。
【0161】
APIを、固体剤形中で実質的に非晶質にすることにより、即時過飽和を容易にすることができ、更に、この過飽和度を維持するのを助けることができる。その結果、製剤を固体剤形中で実質的に非晶質にすることにより、類似の利益を示すことができる。経口投与の場合、固体剤形は、産業及び市場により適用される好ましい形である。固体剤形を加工し生成するための全ての工程も、当技術分野で公知である。本発明により記述される添加物及び製剤は、そのような固体剤形で期待される構造的及び化学的性質の実現及び維持に対する適合性を示した。
【0162】
API又は製剤を、固体剤形中で実質的に非晶質にすることにより、伝統的な(ポリマー)添加物との有益な相互作用を容易にすることができる。例えば、相互作用ポリマー等の少なくとも1種の添加物の存在は、即時過飽和を容易にすることができ、且つ/又はこの過飽和度の維持を更に助けることができる。このプロセスは、容易に規模を拡大縮小することができ、商品を創出するのに直接用いることができる。伝統的な(ポリマー)添加物は、本発明により記述されるようなタンパク質添加物で観察される非晶質状態に到達しない。しかし、タンパク質添加物と伝統的な(ポリマー)添加物とを混合することにより、製剤の非晶質状態は、相応に改善され得る。特に、ゼラチン又は(血清)アルブミンの量は、製剤の非晶質状態を実質的に増大させ得る(実験により検証される)。特定の実施形態では、本発明による製剤は、少なくとも1種の安定化剤を更に含む。安定した固体投与量の送達は、固体剤形を生成するときにしばしば難題を提示する可能性がある。本明細書で使用される安定化剤には、抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、乳化剤、及び界面活性剤、UV吸収剤、消光剤、及びスカベンジャー等を含めてもよいが、これらに限定するものではない。安定化剤の選択は、APIの性質(例えば、感受性、活性)及び製剤の加工に主に依存する。
【0163】
特定の実施形態では、本発明による製剤は、本発明により記述されない少なくとも1種の追加の添加物を更に含む。異なる添加物を組み合わせることにより、改善された(相乗)効果を観察することができ、それが更に、別々に使用したときの添加物を凌いで、溶解度、溶解速度、及び/又はバイオアベイラビリティを改善する可能性がある。一般に非タンパク質添加物は、デザイナーポリマー添加物である。ポリマー添加物の使用は、当技術分野では公知であり、その例には、ポリビニルピロリドン(PVP) ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、メタクリレート、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLA/PGAのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、及びSoluplus(登録商標)等を含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0164】
API又は製剤を固体剤形中で実質的に非晶質にすることにより、伝統的な(ポリマー)添加物との有益な相互作用を容易にすることができる。例えば、相互作用ポリマー等の少なくとも1種の添加物の存在は、即時過飽和を容易にすることができ、且つ/又はこの過飽和度を維持するのを更に助けることができる。このプロセスは、容易に規模を拡大縮小することができ、商品を創出するのに直接用いることができる。伝統的な(ポリマー)添加物は、本発明により記述されるようなタンパク質添加物で観察される非晶質状態に、到達しない。しかし、タンパク質添加物と伝統的な(ポリマー)添加物とを混合することにより、製剤の非晶質状態を相応に改善することができる。特に、ゼラチン又は(血清)アルブミンの量は、製剤の非晶質状態を実質的に増大させ得る(実施例では実験により検証される)。
【0165】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による製剤は、少なくとも1種の矯味成分を更に含む。苦い味又は不快な臭いからの効果的な保護をもたらすことは、製剤を配合するときに難題をしばしば提示する可能性がある。本明細書に記述される製剤は、一旦投与されると(経口的に)APIの放出時間を損なうことなく効果的な矯味を確実にすることができる。典型的な矯味成分には、アスパルテーム、アセスルファームカリウム、スクラロース、クエン酸、硫酸亜鉛、シクロデキストリン(例えば、ベータ、ガンマ、ヒドロキシプロピル等)、及びフレーバー添加剤(例えば、レモン、ミント等)等を含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0166】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による製剤は更に、少なくとも1つのコーティング層を含む。外部の影響に対する効果的な保護をもたらすことは、製剤のための重要な要件である可能性がある。いくつかのコーティング層は;例えば溶解度に触媒効果をもたらすことによって;製剤の化学的性質を更に改善することができ;又は例えば胃液に対して腸製剤を保護することによって、製剤がその所望の標的に到達する前に溶解することを更に防止することができる。更に、いくつかのコーティング層は、水分保護成分としての役割をしてもよい。水分に曝露されると、固体剤形(例えば、錠剤)は膨潤する可能性があり、亀裂が生じ得る。水分保護性は、過剰な水分摂取を相殺し、したがって固体剤形の亀裂を防止することができる。コーティング層の使用は、当技術分野で公知であり、その例にはメタクリレート製剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製剤(HPMC)、ポリビニルアルコール製剤(PVA)、及びKollicoat(登録商標)等を含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0167】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による製剤は、少なくとも1種の界面活性剤を更に含む。界面活性剤は、製剤が溶解する液体の、表面張力を低減させるのに使用することができる。本明細書で使用される界面活性剤には、pH調節剤、充填剤、錯化剤、可溶化剤、顔料、潤滑剤、流動促進剤、着香剤、可塑剤、矯味剤、放出調節ポリマー等を含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0168】
特に、本明細書に開示される製剤は、前記製剤が、1μmから1mmの間;好ましくは5μmから50μmの間;最も好ましくは10μmから20μmの間、例えば15μmの粒径を有することによって特徴付けられることを提供する。
【0169】
本明細書で使用される「粒径」という用語は、粉末に含まれる個々の粒子のサイズを指す。前記粒子は、ナノメートルから数ミリメートルの間の範囲である直径を有する。本発明では、粒径は、好ましくはマイクロメートル程度である。流体に分散された粉末又は粒子の「粒径分布」(PSD)が関係し;サイズに応じて存在する粒子の典型的には質量による相対量を定める値又は数学関数のリストを含む。PSDは、化学反応に関与する固形分の反応性に影響を及ぼす可能性があり、医薬品生成物中で緊密に制御される必要がある。
【0170】
高速放出では、一般に、粒径が小さくなるほど、APIはより速く溶液に進入する。しかし、低い溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIの場合、それらがより速く溶液に進入するほど、局所的な一時的濃度はより高くなり、圧力がより高くなって、析出して結晶になる。このように本発明者らは、ある特定のAPIに関し、代わりにミリメートルまでのより大きい粒径を有することが、より良いことを見出した。乾燥方法等、ある特定の加工技法は、粒径を、プロセスパラメーターに合わせるように誘導させる。カスタマイズされた粒径の利益は、このように製剤の流動特性を、例えば添加剤を包含することにより操作することもできることである。
【0171】
いくつかの特定の実施形態では、本発明によるタンパク質をベースにした添加物は、少なくとも0.1μmから最大で1.0mm;又は少なくとも1μmから最大で50μm;又は少なくとも5μmから最大で40μm、例えば20μm又は30μmの粒径を有することによって特徴付けられる。特定の実施形態では、本発明によるタンパク質をベースにした添加物は、少なくとも5μmから最大で25μm;より好ましくは少なくとも7μmから最大で15μm;最も好ましくは約10μmの粒径を有することによって特徴付けられる。
【0172】
一般に、より低い粒径は、改善された溶解レベル及び速度に関連付けることができ、それが更に、過飽和状態の実現を改善し、前記過飽和状態の維持を助けることができる。明らかに、例えば溶媒、乾燥方法、又は混合方法を変えることによって粒径の低減を求める任意の加工工程は、本発明により開示される利益に更に関与してもよい。しかし、それらの天然の状態で存在する第4級、第3級、及び/又は第2級構造の損失、或いはタンパク質の生物活性の損失をもたらす、天然タンパク質に物理的にストレスを与える得る追加の後処理工程は、一般に、本発明の目的に有害になる。その例には、更に切断、ミリング、スライス、加圧、及び研削等を含めてもよい。
【0173】
特定の実施形態では、BSAをベースにした添加物は、少なくとも0.1μmから最大で1.0mm;又は少なくとも1μmから最大で50μm;又は少なくとも5μmから最大で40μm;好ましくは約10μmの粒径を有することによって特徴付けられる。
【0174】
特定の実施形態では、ゼラチンをベースにした添加物は、少なくとも0.1μmから最大で1.0mm;又は少なくとも1μmから最大で50μm;又は少なくとも5μmから最大で40μm;好ましくは約15μmの粒径を有することによって特徴付けられる。
【0175】
開示された粒径は、粉末形態の製剤の加工規模を制御するように誘導することができる。実質的に非晶質の十分低い粒度を得ることによって、より高い合計固体含量を、伝統的な(ポリマー)添加物に比べてより容易に加工することができる。特に、追加の費用効果の25%の増分及び時間短縮を、実現することができる。
【0176】
他の態様によれば、本発明は、タンパク質をベースにした添加物として、少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物の使用に関する。有利には、タンパク質-モノマー当たり-は、少なくとも20アミノ酸の長さであり;より好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さであり;最も好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さであり、例えば少なくとも250アミノ酸又は少なくとも500アミノ酸の長さである。
【0177】
いくつかの実施形態では、製剤は固体剤形で提供され、好ましくは、錠剤、ロゼンジ、丸薬、又はカプセル等の経口投与に適合させた形で、又は注射剤を再構成するための成分として、提供される。有利には、固体剤形は、前記APIの1回の定期的な適用又は使用に十分な、所定量のAPIを含有する単位用量であり、この単位用量は、ブリスターパック等の単位用量包装に適している。
【0178】
他の態様によれば、本発明は、
- 少なくとも10アミノ酸の長さ-モノマー当たり-のタンパク質を含むタンパク質組成物又はその加水分解産物から得られた、タンパク質をベースにした添加物と;
- 医薬品有効成分(API)と
を含む医薬品製剤を生成するための方法であって;
前記タンパク質をベースにした添加物及び前記APIが共に、実質的に非晶質であり;少なくとも:
(a) 溶媒を使用して前記APIを溶解して溶液を得る工程と;
(b) 工程(a)の溶液を乾燥して、実質的に非晶質である粉末を得る工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0179】
好ましくは、乾燥は、添加物としてのタンパク質をベースにした添加物と、APIとを含む、固体分散体を形成する役割をする。有利には、タンパク質は-モノマー当たり-、少なくとも20アミノ酸の長さであり;より好ましくは少なくとも50アミノ酸の長さであり;最も好ましくは少なくとも100アミノ酸の長さであり、例えば少なくとも250アミノ酸又は少なくとも500アミノ酸の長さである。
【0180】
本発明の特定の実施形態では、前記タンパク質組成物又はその加水分解産物は、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、血液タンパク質、免疫グロブリン、乳タンパク質、ゼラチン、ケラチン、トウモロコシ、小麦、麻、ライ麦、オート麦、落花生、大麦、カゼイン、アルブミン、乳清タンパク質(ラクトアルブミン)、加水分解乳清タンパク質単離物(HWPI)、加水分解コラーゲン、血漿タンパク質、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、卵アルブミン、魚アルブミン、エラスチン、コラーゲン、組換え若しくは人工タンパク質、天然若しくは人工結合足場の組換えバージョン、及び/又はこれらの組合せ;好ましくはHSA、BSA、ゼラチン、及び/又はこれらの組合せから選択される。
【0181】
いくつかの特定の実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、有機酸であり;好ましくは溶媒は、ギ酸又は酢酸である。有機酸溶媒は特に、噴霧乾燥用の(タンパク質及びAPI)溶液の調製に、十分適している。
【0182】
別の特定の実施形態では、溶媒が有機硫黄化合物であり、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)である。有機硫黄溶媒は特に、凍結乾燥用の(タンパク質及びAPI)溶液の調製に十分適している。
【0183】
いくつかの実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される有機酸を少なくとも2.5%から有機酸を最大で100%(v/v);好ましくは有機酸を5%から99%、好ましくは有機酸を10%から90%、好ましくは有機酸を15%から90%;好ましくは有機酸を20%から90%;好ましくは有機酸を10%から80%;好ましくは有機酸を15%から80%;好ましくは有機酸を20%から80%;好ましくは有機酸を10%から70%;好ましくは有機酸を15%から70%;好ましくは有機酸を20%から70%;より好ましくは有機酸を30%から70%;より好ましくは有機酸を30%から60%;より好ましくは有機酸を40%から70%;より好ましくは有機酸を40%から60%;最も好ましくは有機酸を45%から55%含む混合物である。
【0184】
いくつかの実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される少なくとも1種の有機酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の量で、且つ好ましくはアルコール又はアセトンから選択される別の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の量で含む混合物であり、ここで100%(v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは、有機酸を10%から80%、及び別の溶媒を20%から90%;好ましくは有機酸を15%から80%、及び別の溶媒を20%から85%;より好ましくは有機酸を20%から80%、及び別の溶媒を20%から80%;より好ましくは有機酸を20%から70%、及び別の溶媒を30%から80%;より好ましくは有機酸を30%から70%、及び別の溶媒を30%から70%;より好ましくは有機酸を30%から60%、及び別の溶媒を40%から70%;より好ましくは有機酸を40%から70%、及び別の溶媒を30%から60%;最も好ましくは有機酸を40%から60%、及び別の溶媒を40%から60%;最も好ましくは有機酸を45%から60%、及び別の溶媒を40%から55%;最も好ましくは有機酸を45%から55%、及び別の溶媒を45%から55%で含む。
【0185】
いくつかの特定の実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、好ましくはアルコール又はアセトンから選択される別の溶媒とを含む2成分溶媒混合物である。いくつかの好ましい実施形態では、2成分混合物は、好ましくはギ酸又は酢酸から選択される有機酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の量で、且つ好ましくはアルコール又はアセトンから選択される別の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の量で含む2成分溶媒混合物であり、ここで100%(v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは、有機酸を10%から80%、及び別の溶媒を20%から90%;好ましくは有機酸を15%から80%、及び別の溶媒を20%から85%;より好ましくは有機酸を20%から80%、及び別の溶媒を20%から80%;より好ましくは有機酸を20%から70%、及び別の溶媒を30%から80%;より好ましくは有機酸を30%から70%、及び別の溶媒を30%から70%;より好ましくは有機酸を30%から60%、及び別の溶媒を40%から70%;より好ましくは有機酸を40%から70%、及び別の溶媒を30%から60%;最も好ましくは有機酸を40%から60%、及び別の溶媒を40%から60%;最も好ましくは有機酸を45%から60%、及び別の溶媒を40%から55%;最も好ましくは有機酸を45%から55%、及び別の溶媒を45%から55%で含む。
【0186】
いくつかの特定の実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸と、好ましくはアルコール又はアセトンから選択される2種のその他の溶媒とを含む3成分溶媒混合物であり;例えば酢酸及びアルコール及び第3の列挙されていない溶媒である。或いは、3成分溶媒混合物は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される2種の有機酸(例えば、酢酸及びギ酸)と、好ましくはアルコール又はアセトンから選択される1種のその他の溶媒とを含む。
【0187】
いくつかの好ましい実施形態では、3成分溶媒混合物は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の量で、且つ好ましくはアルコール又はアセトンから選択される2種のその他の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の間の合わせた量で含み; 100%(v/v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは1種の有機酸を10%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から90%;好ましくは1種の有機酸を15%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から85%;より好ましくは1種の有機酸を20%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から80%;より好ましくは1種の有機酸を20%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から80%;より好ましくは1種の有機酸を30%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から70%;より好ましくは1種の有機酸を30%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から70%;より好ましくは1種の有機酸を40%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から60%;最も好ましくは1種の有機酸を40%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から60%;最も好ましくは、1種の有機酸を45%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から55%;最も好ましくは1種の有機酸を45%から55%、及び2種のその他の溶媒を45%から55%含む。例えば、3成分混合物は、ギ酸を20%、アルコールを40%、及びアセトンを40%含有し;例えば、3成分混合物は、酢酸を40%、アルコールを40%、及びアセトンを20%含有し;例えば3成分混合物は、ギ酸を50%、アルコールを25%、及びアセトンを25%含有する。
【0188】
いくつかのその他の好ましい実施形態では、3成分溶媒混合物は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される2種の有機酸、より好ましくは酢酸及びギ酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の合わせた量で、且つ好ましくはアルコール又はアセトンから選択される1種のその他の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の間の量で含み; 100%(v/v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは2種の有機酸を10%から80%、及び1種のその他の溶媒を20%から90%;好ましくは2種の有機酸を15%から80%、及び1種のその他の溶媒を20%から85%;より好ましくは2種の有機酸を20%から80%、及び1種のその他の溶媒を20%から80%;より好ましくは2種の有機酸を20%から70%、及び1種のその他の溶媒を30%から80%;より好ましくは2種の有機酸を30%から70%、及び1種のその他の溶媒を30%から70%;より好ましくは2種の有機酸を30%から60%、及び1種のその他の溶媒を40%から70%;より好ましくは2種の有機酸を40%から70%、及び1種のその他の溶媒を30%から60%;最も好ましくは2種の有機酸を40%から60%、及び1種のその他の溶媒を40%から60%;最も好ましくは、2種の有機酸を45%から60%、及び1種のその他の溶媒を40%から55%;最も好ましくは2種の有機酸を45%から55%、及び1種のその他の溶媒を45%から55%含む。例えば、3成分混合物は、ギ酸を20%、酢酸を20%、及びアルコールを60%含み;例えば3成分混合物は、ギ酸を25%、酢酸を25%、及びアセトンを50%含み;例えば3成分混合物は、ギ酸を20%、酢酸を50%、及びアセトンを30%含む。
【0189】
いくつかの特定の実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される少なくとも1種の有機酸と、好ましくはアルコール及び/又はアセトンから選択される少なくともその他の溶媒とを含む4成分溶媒混合物であって;合計で4種の溶媒を含むような、4成分溶媒混合物である。
【0190】
いくつかのより詳細な実施形態では、タンパク質組成物又はその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに使用される溶媒は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される2種の有機酸と、好ましくはアルコール及び/又はアセトンから選択される2種のその他の溶媒とを含む4成分溶媒混合物である。
【0191】
いくつかの好ましい実施形態では、4成分溶媒混合物は、好ましくは酢酸又はギ酸から選択される1種の有機酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の量で、且つ好ましくはアルコール及び/又はアセトンから選択される3種のその他の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の間の合わせた量で含み; 100%(v/v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは1種の有機酸を10%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から90%;好ましくは1種の有機酸を15%から80%、及び3種のその他の溶媒を20%から85%;より好ましくは1種の有機酸を20%から80%、及び3種のその他の溶媒を20%から80%;より好ましくは1種の有機酸を20%から70%、及び3種のその他の溶媒を30%から80%;より好ましくは1種の有機酸を30%から70%、及び3種のその他の溶媒を30%から70%;より好ましくは1種の有機酸を30%から60%、及び3種のその他の溶媒を40%から70%;より好ましくは1種の有機酸を40%から70%、及び3種のその他の溶媒を30%から60%;最も好ましくは1種の有機酸を40%から60%、及び3種のその他の溶媒を40%から60%;最も好ましくは、1種の有機酸を45%から60%、及び3種のその他の溶媒を40%から55%;最も好ましくは1種の有機酸を45%から55%、及び3種のその他の溶媒を45%から55%含む。例えば、4成分混合物は、ギ酸を20%、アルコールを30%、アセトンを30%、及びアセトニトリルを20%含有し;例えば酢酸を30%、アセトンを40%、及びアルコールを30%含有し、その15%はエタノールであり且つ15%はメタノールである。
【0192】
いくつかの好ましい実施形態では、4成分溶媒混合物は、好ましくは酢酸及び/又はギ酸から選択される2種の有機酸、より好ましくは酢酸及びギ酸を、少なくとも5%から最大で80%の間の合わせた量で、且つ好ましくはアルコール及び/又はアセトンから選択される2種のその他の溶媒を、少なくとも20%から最大で95%の間の合わせた量で含み; 100%(v/v/v)は、混合物中の溶媒の総量であり;好ましくは2種の有機酸を10%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から90%;好ましくは2種の有機酸を15%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から85%;より好ましくは2種の有機酸を20%から80%、及び2種のその他の溶媒を20%から80%;より好ましくは2種の有機酸を20%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から80%;より好ましくは2種の有機酸を30%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から70%;より好ましくは2種の有機酸を30%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から70%;より好ましくは2種の有機酸を40%から70%、及び2種のその他の溶媒を30%から60%;最も好ましくは2種の有機酸を40%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から60%;最も好ましくは、2種の有機酸を45%から60%、及び2種のその他の溶媒を40%から55%;最も好ましくは2種の有機酸を45%から55%、及び2種のその他の溶媒を45%から55%含む。例えば、4成分混合物は、ギ酸を20%、酢酸を20%、アセトンを30%、及びアルコールを30%含有し;例えばギ酸を30%、酢酸を30%、及びアルコールを40%含有し、その15%はエタノールであり且つ15%はメタノールである。
【0193】
本質的に、タンパク質構造に悪影響(即ち、変性、凝集、崩壊、燃焼等)を及ぼし過ぎることなくタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解するのに適した任意の酸は、本発明の方法に適していると考えられる。しかし本発明者らは、ギ酸、トリフルオロ酢酸、及び酢酸が、本発明の目的に非常に望ましい性質を示すことを見出した。前記酸は、前記タンパク質を実質的に変性させることなく(即ち、それらの生物活性を保持する)、タンパク質を所望のタンパク質溶液へと溶解し、それによって、本発明により記述されるタンパク質をベースにした添加物が得られるように乾燥することができる、タンパク質溶液が提供される。特に、ギ酸及び酢酸は、アルブミン(例えば、HAS、BSA)及びゼラチンを溶解するための非常に望ましい性質を示すことがわかった。
【0194】
APIの溶解には同様のことが考慮され;即ち、本質的に、APIの化学構造又は生物活性に悪影響を及ぼし過ぎることなくAPIを溶解するのに適した任意の酸は、本発明の目的に適していると考えられる。特定のギ酸及び酢酸は、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンを溶解するのに;より詳細には、フルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルを溶解するのに、望ましい性質を示すことがわかった。
【0195】
「乾燥する」という用語は、蒸発を通して、水又は別の溶媒等の液体媒体の物質移動を促進させる、任意の方法又は技法を指す。特に本発明の目的で、乾燥は、溶液(例えば、タンパク質溶液、API溶液、タンパク質-API溶液)の液体状態を、固体に、好ましくは粉末化状態(例えば、乾燥したタンパク質添加物、乾燥したAPI、乾燥した製剤)に変換する任意の方法を含む。乾燥方法は、過剰な熱等の物理的条件によって引き起こされ得る任意の望ましくないダメージを添加物又はAPIに与えないように、慎重に行う必要があると考えられる。好ましくは、乾燥方法は、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、フラッシュ乾燥、パドル乾燥、空気乾燥、及び凝縮乾燥等から選択される。
【0196】
本質的に、溶液の化学構造に悪影響を及ぼし過ぎることなくタンパク質溶液又はAPI溶液又はタンパク質-API溶液を乾燥するのに適した任意の乾燥方法は、本発明の目的に適していると考えられる。しかし本発明者らは、噴霧乾燥が、本発明の目的のために非常に望ましい性質を示すことを見出した。本発明者らは、凍結乾燥が、本発明の目的に望ましい性質を示すことも見出した。
【0197】
噴霧乾燥は、溶解したタンパク質を実質的に変性させることなく(即ち、それらの生物活性を保持する)、前記タンパク質溶液を乾燥し、それによって、本発明により記述される、乾燥したタンパク質をベースにした添加物が得られる。噴霧乾燥は、異なる供給原料(例えば、タンパク質、API)及び製品仕様(例えば、粒径)に容易に適合することができる、多目的な乾燥方法である。更に、噴霧乾燥は、(非常に)高い乾燥速度を有し、嵩密度及び残留溶媒レベルに関する高レベルの制御を可能にする。より重要なことは、容易で信頼性ある品質管理が可能になることであり、医薬品のような産業では非常に重要なことである。特に噴霧乾燥は、アルブミン(例えば、HAS、BSA)及びゼラチンの乾燥に関して非常に望ましい性質を示すことがわかった。
【0198】
同様に凍結乾燥も、溶解したタンパク質及び/又はAPIを実質的に変性させることなく前記タンパク質溶液を乾燥する。更に、凍結乾燥は、比較的それほど過酷ではない連続加工条件も可能にする。特に凍結乾燥は、アルブミン(例えば、HAS、BSA)及びゼラチンを乾燥するための非常に望ましい性質を示すことがわかった。
【0199】
噴霧乾燥は、APIの化学構造及び生物活性に悪影響を及ぼし過ぎることなく、前記API溶液も乾燥し、それによって、本発明により記述された実質的に非晶質の乾燥したAPIが得られる。特に噴霧乾燥は、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンを含む溶液を乾燥するのに;より詳細にはフルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルを含む溶液を乾燥するのに非常に望ましい性質を示すことがわかった。
【0200】
同様に凍結乾燥も、APIの化学構造及び生物活性に悪影響を及ぼし(過ぎる)ことなく前記API溶液を乾燥し、それによって、本発明により記述された実質的に非晶質の乾燥したAPIが得られる。特に凍結乾燥は、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、サキナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ビホナゾール、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセンを含む溶液を乾燥するのに;より詳細にはフルベンダゾール、イブプロフェン、インドメタシン、リトナビル、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、ベムラフェニブ、グリセオフルビン、イトラコナゾール、又はベラパミルを含む溶液を乾燥するのに非常に望ましい性質を示すことがわかった。
【0201】
本明細書で使用される「噴霧乾燥」という用語は、本発明のための、乾燥する好ましい方法を指し、乾燥粉末が、高温の気体により液体溶液(又は懸濁液若しくはスラリー)から生成される。噴霧乾燥を実施するための当業者向けの標準的な実験室用装置は、典型的には、(1)乾燥がなされる溶液又は懸濁液と、(2)乾燥に使用される気体と、(3)前記溶液又は懸濁液を噴霧するための噴霧ノズルと;(4)乾燥チャンバと、(5)サイクロンチャンバと、(6)乾燥チャンバとサイクロンとの間のコネクタ部品と、(7)収集槽とを含む。詳述されていないその他の構成要素又は部品を更に、生成パラメーター(即ち、溶液又は気体のタイプ、噴霧ノズルのタイプ、生成規模、及び時間等)に応じて含めてもよい。代替構成要素の例には、種々の噴霧ノズル、例えば単一流体高圧回転ノズル、超音波ノズル;又はその他の構成要素、例えば回転式ディスク、アトマイザホイールが含まれる。一般に噴霧乾燥装置は、当技術分野で一般に公知であり、当業者に認識される様々なモデル及び技法を含んでいてもよい。
【0202】
いくつかの実施形態では、噴霧乾燥は、少なくとも60℃から最高で240℃;又は少なくとも110℃から最高で160℃;好ましくは少なくとも130℃から最高で150℃の温度で行われる。最も好ましい実施形態では、噴霧乾燥は、約140℃の温度で行われる。本発明者らは、140℃の温度が、添加物に望ましくない化学的又は構造的変化を引き起こすことなく、タンパク質溶液を効果的に噴霧乾燥するのに最適な温度を提供することを見出した。
【0203】
本明細書で使用される「凍結乾燥」という用語は、本発明のための、乾燥する好ましい方法を指し、乾燥粉末は、溶液を凍結し次いで周囲圧力を低減して材料中の凍結溶媒を固相から気相に直接昇華することによって、液体溶液(懸濁液又はスラリー)から生成される。凍結乾燥は、時々、「lyophilisation(凍結乾燥)」、「lyophilization(凍結乾燥)」、又は「cryodesiccation(凍結乾燥)」とも呼ばれる。典型的には、凍結乾燥は:(1)前処理、(2)凍結、(3)1次乾燥(昇華による)、及び(4)2次乾燥(吸着による)を含む4工程プロセスである。凍結乾燥を行うための当業者向けの標準的な実験室装置は、典型的には、(1)乾燥がなされる溶液又は懸濁液と、(2)凍結乾燥設備(例えば、マニホールド凍結乾燥機、回転式凍結乾燥機、及び/又はトレイスタイル凍結乾燥機)とを含む。詳述されていないその他の構成要素又は部品を、生成パラメーター(即ち、溶液のタイプ、貯蔵設備及び容器、生成規模及び時間等)に応じて更に含めてもよい。一般に、凍結乾燥装置は、当技術分野で一般に公知であり、様々なモデル及び技法を含んでいてもよい。
【0204】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥は、少なくとも-110℃から最高で-50℃;好ましくは少なくとも-110℃から最高で-60℃;好ましくは少なくとも-110℃から最高で-70℃;好ましくは少なくとも-110℃から最高で-75℃;好ましくは少なくとも-110℃から最高で-80℃;より好ましくは少なくとも-100℃から最高で-60℃;より好ましくは少なくとも-100℃から最高で-70℃;より好ましくは少なくとも-100℃から最高で-75℃;より好ましくは少なくとも-100℃から最高で-80℃;最も好ましくは少なくとも-90℃から最高で-60℃;最も好ましくは少なくとも-90℃から最高で-70℃、最も好ましくは少なくとも-90℃から最高で-75℃;最も好ましくは少なくとも-90℃から最高で-80℃の温度で行われる。最も好ましい実施形態では、噴霧乾燥は、約-85℃;例えば-83℃;例えば-87℃;例えば-85℃の温度で行われる。本発明者らは、温度に関して列挙された好ましい値により、添加物に望ましくない化学的又は構造的変化を引き起こすことなく、タンパク質溶液を効果的に凍結乾燥させることを見出した。いくつかの実施形態では、凍結乾燥は、少なくとも0.001mbarから最大で0.030mbar;好ましくは少なくとも0.002mbarから最大で0.020mbar;好ましくは少なくとも0.004mbarから最大で0.015mbar;最も好ましくは少なくとも0.005mbarから最大で0.010mbarの圧力で行われる。最も好ましい実施形態では、噴霧乾燥は、約0.008mbar;例えば0.009mbar;例えば0.007mbar;例えば0.008mbarの圧力で行われる。本発明者らは、列挙された好ましい圧力の値により、添加物に望ましくない化学的又は構造的変化を引き起こすことなく、タンパク質溶液を効果的に凍結乾燥させることを見出した。
【0205】
更に凍結乾燥前に、溶液を凍結し、少なくとも12時間;好ましくは少なくとも24時間;より好ましくは少なくとも36時間;最も好ましくは少なくとも48時間;少なくとも-40から最高で-10℃;好ましくは少なくとも-35から最高で-15℃;より好ましくは少なくとも-30から最高で-20℃;最高で約-25℃;例えば-23℃;例えば-27℃;例えば-25℃の温度で貯蔵する。貯蔵工程は、溶液の表面積を最大限にするのを可能にする。
【0206】
いくつかの好ましい実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、有機溶媒中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記タンパク質溶液を噴霧乾燥してタンパク質をベースにした添加物を得ることを通して、添加物が得られることを特徴とする。いくつかのその他の好ましい実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、ギ酸中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記タンパク質溶液を噴霧乾燥してタンパク質をベースにした添加物を得ることを通して、添加物が得られることを特徴とする。いくつかのその他の好ましい実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、酢酸中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記タンパク質溶液を噴霧乾燥してタンパク質をベースにした添加物を得ることを通して、添加物が得られることを特徴とする。
【0207】
いくつかのその他の好ましい実施形態では、タンパク質をベースにした添加物は、DMSO中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記タンパク質溶液を凍結乾燥してタンパク質をベースにした添加物を得ることを通して、添加物が得られることを特徴とする。
【0208】
一般に、pH<1の有機酸へのタンパク質の溶解の後、乾燥を行うことにより、その3成分及び2成分構造が影響を受ける可能性があり、したがって変性タンパク質から構成される粉末が生成されると想定される。本発明者らは意外にも、タンパク質が、プロセス後にそれらの構造及び生物学的機能を保持することを観察し;特にゼラチン及び(血清)アルブミンでそうであることを観察した。それらの生物活性(即ち、API等の外来分子との相互作用、又は3次元網状構造を形成する能力)は、タンパク質分子の完全に折り畳まれた構造に依拠するので、有機酸及び/又はDMSOを含む溶液から乾燥させたタンパク質から得られた添加物は、少なくとも数時間にわたり影響を受けないままであることが観察された。ゲル透過分析を使用したこれらの発見は、実施例セクションで実証される。
【0209】
乾燥することにより、有機酸に溶解したタンパク質組成物の非晶質状態が保持され、それによって、実質的に非晶質の及び実質的に変性していない粉末が形成され;特に完全に非晶質の変性していない粉末が形成される。得られた粉末は、添加物として;特にタンパク質をベースにした添加物として使用するのに好ましい、多くの性質を保持する。同じ効果は、単一タンパク質源タンパク質(例えば、BSA又はゼラチン)から得られた粉末に関して観察されるが、タンパク質の多数の供給源(例えば、BSA及びゼラチン)を含むタンパク質組成物に関しても観察される。
【0210】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による製剤を作製するためのプロセスは更に、経口投与に適した寸法パラメーターを有利に有する、錠剤、丸薬、ロゼンジ、又はカプセル等の固体剤形を生成するための安定化プロセスを含む。安定化工程は、成型及び圧縮等を含む。
【0211】
製剤が噴霧乾燥される、いくつかの特定の実施形態では、噴霧乾燥プロセスは、固体剤形に形成することができる粉末を生成し;好ましくは噴霧乾燥プロセスの後に、圧縮又は成型等の固体剤形形成プロセスが続く。
【0212】
製剤が凍結乾燥される、いくつかの特定の実施形態では、凍結乾燥プロセスは、固体剤形に形成することができる粉末を生成する。或いは、凍結乾燥プロセスは、供給原料を直接乾燥して、丸薬又は錠剤等の固体剤形にする。好ましい実施形態では、タンパク質をベースにした添加物及びAPIを含む、DMSO溶解製剤(非晶質固体分散体として)を、直接凍結乾燥して固体剤形にし;例えば、直接凍結乾燥してブリスターにして、錠剤又は丸薬を生成する。いくつかの特定の実施形態では、工程(a)の方法は更に:前記APIを、溶液が得られるように溶媒を使用して、少なくとも1種の親水性担体(HC)と組み合わせて溶解する工程を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、親水性担体が、当技術分野で公知のポリマー添加物の下記のリスト、ポリビニルピロリドン(PVP) ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、メタクリレート、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLA/PGAのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、及びSoluplus(登録商標)等から選択されるが、これらに限定するものではない。
【0214】
特に、本明細書に開示される方法は、タンパク質をベースにした添加物が:
(i) 溶媒を使用して、タンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解して、溶液を得る工程;及び
(ii) 工程(i)の溶液を乾燥して、前記タンパク質をベースにした添加物を得る工程
を通して調製されることを提供する。
【0215】
特に、本明細書に開示される方法は、工程(a)及び(i)の溶液が、共通の又は異なる溶媒を使用して溶解されることを提供する。
【0216】
特に、本明細書に開示される方法は、API及びタンパク質をベースにした添加物が:
-同じ溶媒中に一緒に溶解され、乾燥され、それによって前記医薬品製剤を形成するか;
-同じ又は異なる溶媒中に別々に溶解され、その後、一緒に乾燥され、それによって前記医薬品製剤を形成するか;
- 同じ又は異なる溶媒中に溶解され、別々に乾燥され、その後、混合され、それによって前記医薬品製剤を形成するか
のいずれかであることを提供する。
【0217】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が有機酸であり;好ましくはギ酸、トリフルオロ酢酸、又は酢酸であることを提供する。
【0218】
特に、本明細書に開示される方法は、溶媒が有機硫黄化合物であり;好ましくはDMSOであることを提供する。
【0219】
特定の実施形態では、本発明による方法は、タンパク質をベースにした添加物が、溶媒中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、前記タンパク質溶液を乾燥して、タンパク質をベースにした添加物を得ることを通して得られることを特徴とし、更に、非晶質APIが、タンパク質溶液に使用される溶媒に類似した又は異なる溶媒中にAPIを溶解し又は可溶化してAPI溶液を得、前記API溶液を乾燥して実質的に非晶質のAPIを得、更に前記乾燥した添加物と前記乾燥したAPIとを組み合わせることを通して、本発明の実施形態による実質的に非晶質の製剤を得ることを特徴とする。
【0220】
或いは、いくつかのその他の実施形態では、本発明による方法は、製剤が、溶媒中にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化してタンパク質溶液を得、共通の又は異なる溶媒中にAPIを溶解し又は可溶化し、その後、タンパク質溶液とAPIとを混合し、前記混合物を乾燥して、本発明の実施形態による実質的に非晶質の製剤を得ることを通して、得られることを特徴とする。
【0221】
或いは、いくつかのその他の実施形態では、本発明による方法は、製剤が、共通の溶媒中にAPIと一緒にタンパク質組成物又はその加水分解産物を溶解し又は可溶化し、前記タンパク質-API溶液を乾燥して本発明の実施形態による実質的に非晶質の製剤を得ることを通して、得られることを特徴とする。
【0222】
或いは、いくつかのその他の実施形態では、本発明による方法は、製剤が、溶媒中にAPIを溶解し又は可溶化し、前記API溶液を乾燥して実質的に非晶質のAPIを得、更に前記乾燥したAPIと、好ましくは実質的に変性していない提供されたタンパク質をベースにした添加物とを組み合わせて、本発明の実施形態による実質的に非晶質の製剤を得ることを通して、得られることを特徴とする。更に、前記APIの溶解又は可溶化は、溶液に親水性担体を添加することによって更に改善される。
【0223】
いくつかの特定の実施形態では、製剤は更に、共可溶化剤を含む。ある特定のAPIは、酸又はタンパク質溶液への溶解が難しいことを証明することができる。共可溶化剤は、この溶解を容易にするのに使用してもよい。特に、前記共可溶化剤は、シクロデキストリン、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35、及びジメチルホルムアミド等から選択される。
【0224】
本発明による製剤に使用されるAPIの溶解度及び溶解速度は、APIのバイオアベイラビリティに直接影響する。したがって、APIの、特に低い溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを示すAPIの、溶解度及び溶解速度を増大させることが非常に重要である。過飽和の状態に到達し、その後、前記過飽和状態を可能な限り維持することにより、APIの更により好ましい結果が得られる。更に、バイオアベイラビリティ及び過飽和の改善は、APIの摂取速度を上昇させ;その結果、製剤中のAPIに必要とされる、低下した全質量/体積(投与量)が得られる。
【0225】
或いは、本明細書に記述される本発明による添加物は、少なくとも1種のデザイナーポリマー添加物と組み合わせて、溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを潜在的に更に凌ぐ製剤を得、両方の添加物のタイプの性質をそれぞれ高めてもよい。この添加物は、過飽和の状態への到達を更に容易にし、その後、更に、前記過飽和状態を可能な限り長く維持するのを助ける。このように製剤は、固体分散体を形成し得る。
【0226】
本発明は、製剤を得ることに関するいくつかの実施形態を包含し、当業者なら製剤の他の変形例を理解することができ、また本発明は、本明細書に記述される類似の効果を得る調製方法を得ることに関するいくつかの実施形態を包含する。製剤を開発するための例示的な変形例は、下記を含んでいてもよい:
(i) 少なくとも1種の追加の(タンパク質をベースにしない)添加物、安定化剤、矯味剤成分、コーティング層、水分防止成分、界面活性剤等、追加の成分を製剤に添加する工程;
(ii) 前記タンパク質をベースにした添加物の性質;例えば異なるタンパク質、異なるタンパク質源、異なるタンパク質組成物等の選択を、最適化することにより、製剤の過飽和の速度及び程度を制御する工程;
(iii) 例えば吸収(即ち、血液循環に進入するAPIの速度及び濃度の制御)、遊離(即ち、製剤からのAPI放出の瞬間及び場所の制御)、分布(即ち、身体の体液及び組織の全体にわたるAPIの分散の促進又は予防)、代謝化(即ち、身体の体液及び組織内でのAPIの消化の予防又は促進)、及び排泄(即ち、APIが不可逆的に体組織に蓄積され得るいくつかの場合に、吸収されていないAPIを身体から安全に除去すること)が制御されるよう、製材の薬物動態特性を誘導するためにタンパク質添加物に対して選択的調節を実施する工程;
(iv) 溶媒、溶液、及び乾燥方法を変化させる等、加工方法を最適化することにより、製剤の性質及び加工コスト、時間、及び/又は規模を調節する工程。
【0227】
他の態様によれば、本発明は、医薬として使用するための本明細書に開示される製剤に関する。詳細には、前記製剤は、胃腸管(消化器系)に関する問題、心血管系に関する問題、中枢神経系に関する問題、筋骨格系に関する問題、呼吸器系に関する問題、内分泌系に関する問題、生殖器系に関する問題、泌尿器系に関する問題、免疫系に関する問題、産科に関する問題、及び婦人科に関する問題(避妊)、及び/又は眼、耳、鼻、中咽頭、若しくは皮膚に関する問題の処理に使用される。本発明により記述される製剤は、感染及び寄生(抗生剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤)、疼痛及び意識(鎮痛薬)、アレルギー障害、栄養障害、及び/又は新生物障害を治療するための生成物であってもよい。本発明により記述される製剤は、診断使用のための生成物であってもよい。
【実施例
【0228】
(実施例1)
好ましいタンパク質源の決定
自然の全ての領域から(例えば、動物、野菜、及び微生物由来)の様々なタンパク質は、有機酸に溶解し易く、その後、(噴霧又は凍結)乾燥され、液体系に再溶解される。
【0229】
下記の実験で、様々なタンパク質の5%溶液をギ酸に溶解し、溶媒流延してタンパク質被膜にした。タンパク質は、ゼラチン、BSA(アルブミン)、エンドウ豆、大豆、乳清、及びゼイン(トウモロコシ)から選択した。次いでタンパク質被膜を、37℃で、pH 1.5の0.1N HClに90分間溶解し、その後、最長330分の期間にわたりpHを6.8に調節した。
【0230】
タンパク質被膜の溶解を、分光光度計(280nmで光吸収)を使用して評価し、時間の関数としてプロットした。
【0231】
溶解プロファイルを図1に示すが、この図は、溶解時間(分)及びpH値の関数として、様々なタンパク質源の平均溶解(%)を示している。凡例は下記の通りである:四角形-ゼラチン;円形-BSA(アルブミン);三角形-エンドウ豆;菱形-大豆;ストライプ-乳清;十字形-ゼイン(トウモロコシ)。
【0232】
結果をまとめると、ゼラチン及びBSAのタンパク質被膜は、低及び高pH値の両方で完全溶解(付近)に到達する。エンドウ豆、大豆、及び乳清タンパク質被膜は、40から60%の間の中間溶解レベルを示す。ゼインタンパク質被膜は、系列の最低溶解レベルを示し、約10%に達する。
【0233】
本明細書に提示されるデータに基づいて、ゼラチン及びBSAタンパク質被膜は、高速放出製剤用のタンパク質をベースにした添加物としての役割をするのに好ましい、タンパク質と見なすことができる。いくつかのその他のタンパク質源、例えばエンドウ豆及び大豆も、そのような目的に対する適合性を示したが、これらのタンパク質及び水溶性が非常に不十分な被膜、例えばゼインから得られるものを、持続又は制御放出プロファイルを狙った製剤に使用することができた。より低い溶解速度又はレベルの製剤が望ましいと考えられる、そのような特定の実施形態では、後者のタンパク質源が更に好ましくなる可能性がある。
【0234】
(実施例2)
タンパク質の構造に対する加工技術(噴霧乾燥及び凍結乾燥)の効果の決定
タンパク質をベースにした添加物を得るのに使用されるタンパク質の天然構造に対する、加工技術(即ち、溶媒及び乾燥方法)の効果について、検証した。
【0235】
本発明の目的のため、種々の溶媒は、タンパク質組成物若しくはその加水分解産物、及び/又はAPIを溶解するのに適すると考えられるが;ギ酸若しくは酢酸等の有機酸、又はDMSO等の有機硫黄化合物が好ましいと考えられる。同様に、種々の乾燥技法が、タンパク質溶液、API溶液、又はAPI-タンパク質溶液を乾燥するのに適すると考えられ;しかし、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の工業規格の技法が好ましいと考えられる。この実験の目的のため、BSAがタンパク質源であり;噴霧乾燥が乾燥方法として使用される場合、ギ酸が溶媒として働き;凍結乾燥が乾燥方法として使用される場合、DMSOが溶媒として働いた。
【0236】
BSAをベースにした添加物の天然構造は、ダイマー及びトリマー分子から主要なモノマー画分を分離することが可能な、ゲル透過クロマトグラフィを使用して評価した。後者の分子(即ち、ダイマー及びトリマー)のかなりの部分が、BSAの構造損失のインジケータとして働く。
【0237】
まず、溶媒としてのギ酸及びDMSOの効果を、天然溶媒、即ちH2Oと比較して調査した。BSAを、ギ酸又は水のいずれかを使用して溶解し、同一条件下で噴霧乾燥し、又はDMSOを使用して溶解し、凍結乾燥した。次に、得られたBSAをベースにした添加物粉末を、リン酸緩衝液に溶解し、HPLCをベースにしたゲル濾過クロマトグラフィを使用して分析した。
【0238】
結果を図2に示すが、この図は、時間(分)の関数としてBSA(アルブミン)の吸光度(AU)を示している。灰色の線は、H2Oに溶解したBSAを表し;黒色の破線は、ギ酸に溶解したBSAを表し、一方、点線は、DMSOに溶解したBSAを表す。2種の試料の間に著しい差はなく、ギ酸もDMSOも、H2Oに比べてBSAの変性を引き起こさないことを示している。類似の結果は、酢酸に関しても予測される。
【0239】
次に、ギ酸の効果を、種々のインキュベーション期間で;即ち、0、4、8、及び24時間で比較した。BSAを、ギ酸を使用して溶解し、一定分量を、指示された時間間隔でpHの中和をし、その後、HPLCをベースにしたゲル濾過クロマトグラフィを使用して分析した。
【0240】
結果を図3に示すが、この図は、時間(分)の関数としてギ酸に溶解したBSA(アルブミン)の吸光度(AU)を示している。黒色の線は0時間を表し、黒色の破線は4時間を表し、灰色の線は8時間を表し、黒色の点線は24時間を表す。ギ酸中での0、4、及び8時間のインキュベーションは、BSAの4成分構造に著しい影響を及ぼさないようであると推測できる。約24時間のインキュベーションは、より高い割合のより大きい凝集体によって示されるように、即ちモノマーの存在が少しであることによって、BSAの分解のいくらかの兆候を明らかにする。
【0241】
結論付けると、溶媒であるギ酸は、室温での最長で8時間のインキュベーション期間で、BSAの天然構造に影響を及ぼさない。類似の結果が酢酸に関して得られ、これらの結果は類似の有機酸から予測することができる。
【0242】
(実施例3)
タンパク質の生物活性に対する加工技術の影響の検証
実施例2は、ギ酸中での最長8時間のインキュベーションが、BSAの4成分構造に著しい影響を及ぼさないようであることを、既に明らかにした。しかし本発明の目的で、タンパク質をベースにした添加物がその生物活性を少なくとも部分的に保持する場合が好ましい。より好ましくは、その生物活性を少なくとも部分的に、胃腸系内に存在する低pH値条件で保持する場合である。この生物活性は、過飽和状態を実現し且つ前記過飽和状態を長期間にわたり維持するのに有益である可能性がある。
【0243】
下記の実験では、タンパク質をベースにした添加物の、モデルAPIに対する結合強度を、検証した。この実験の目的で、BSAはタンパク質源であり、フルベンダゾールをモデルAPIとして使用し、ギ酸は溶媒としての役割をし、噴霧乾燥を乾燥方法として選択した。BSAを、最初に様々な濃度のフルベンダゾール(FLU)と一緒にギ酸に溶解し、次いでBSA-API溶液を溶媒蒸発させ、乾燥した製剤を、pH7.0(中性)、pH4.0(酸性)、及びpH 1.0(強酸性)のいずれかのpH値の緩衝液に溶解した。FLU結合BSAの割合を、蛍光分光計を使用して、BSA-API製剤に関する平衡定数を測定する方法で、トリプトファン消光に基づいて決定した。
【0244】
結果を図4に示すが、この図において、FLU依存性トリプトファン消光のレベルは、FLUモル濃度(μM)の関数として示される。円形は、pH7.0で得られたデータを表し;四角形は、pH4.0を表し;三角形は、pH 1.0を表す。結合親和性は、結合強度、pH7で116μMの解離定数Kdを、pH 1で234μMのKdと比較することによって推論されるように、pH7.0からpH 1.0まで2分の1に減少することが観察され;それに対してpH4.0での解離定数Kdは、133μMの値との間にある。しかし全てのpH値で、BSAは、その生物活性(即ち、結合親和性)を保持し、したがってpH 1.0でその未変性コンフォーメーションを保持することに留意されたい。
【0245】
結論付けると、BSAをベースにした添加物の結合親和性は、胃の中の主流の状態(即ち、pH 1.0)に似ている強酸性環境で低減することがわかるが、その生物活性は任意の調査状態において保持される。類似の結果は、その他のタンパク質源(例えば、ゼラチン)、及びAPI(例えば、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、ナプロキセン)で観察され得る。
【0246】
(実施例4)
製剤の過飽和状態に対する、タンパク質をベースにした添加物の影響の決定
様々なタンパク質源からの種々のタンパク質又はタンパク質組成物を、様々な濃度で調製して、過飽和状態を実現し且つ前記過飽和状態を維持することに関し、製剤中に含まれるタンパク質をベースにした添加物の影響の程度を評価した。高度な過飽和の実現は、前記製剤中に含まれるAPIの、改善されたバイオアベイラビリティに関するインジケータと見なすことができる。
【0247】
タンパク質をベースにした添加物は全て、様々な供給源から抽出されたゼラチンをベースにし;ゼラチンタンパク質組成物の原材料は、ブタの皮膚又はウシの骨から抽出され、及び/又はこれらの組合せであり;全てはRousselot(登録商標)により生成されたものであった。フルベンダゾールを、モデルAPIとして再び選択した。
【0248】
溶解プロファイル及び過飽和状態(即ち、利用可能な濃度)は、食物を食べる前(即ち、絶食状態)のヒトの胃に存在する分泌液をシミュレートする溶解媒体;即ち、Bio-relevant(登録商標)から入手可能なFaSSGF(1.6pH)を使用して試験をした。濃度を決定するための適切な方法は、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)であり、カラムから流出するにつれ異なる保持時間を引き起こす、疎水性に基づいて分子を分離する。RP-HPLCの他の実用的原則は、当技術分野で公知である。RP-HPLC装置は、流量が1ml/分の、Eclipse Zorbax Agilent 5μm(4.6×150mm)カラムを使用した。注入体積は、ACN/TFA 0.1%(55:45)を含有する移動相で20μlであり、フルベンダゾールの溶出時間は約±1.9分であった。測定用の波長は、280nmに設定した。
【0249】
実験前、FaSSGF中のフルベンダゾールの溶解度を決定して、基線参照値としての役割を果たした。参照溶液は、過剰なフルベンダゾールを8mlのFaSSGF溶液に加えて調製した。この溶液を、72時間にわたり回転させ、1mlの試料を24時間ごとに採取した。これらの参照試料を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の0.45μmフィルタに通して濾過することにより、試験をしたRP-HPLC法によりフルベンダゾールの濃度を決定した。フルベンダゾール濃度が変化しないままであることが観察されたときに、平衡濃度に到達した。前記参照値は、FaSSGF媒体中でフルベンダゾールが11.2μg/mlであった。
【0250】
次に、製剤の過飽和状態に対する、ゼラチンをベースにした添加物の影響を、決定した。したがって、様々なゼラチン源からの、ゼラチンをベースにした添加物を添加して、0.1%タンパク質溶液(8mg w/v)を得た;即ち、ブルーム値が50、75、及び225gであることによって特徴付けられるブタの皮膚のゼラチン、ブルーム値が150及び225gであることによって特徴付けられるウシの骨のゼラチン、並びに平均分子量が5000Daであることによって特徴付けられるブタの皮膚又はウシの骨のいずれかから得られるゼラチンペプチド。平衡溶解度と比較すると、ギ酸溶解濃縮原液からの、20倍過剰なフルベンダゾール(225μg/mlの最終濃度)を各溶液に添加して、過飽和の時間窓をプローブした。全ての溶液を回転させ、1mlの試料を下記の時間間隔:5、15、30、60、及び120分で採取した。各試料を、PTFE 0.45μmのフィルタに通して濾過し、移動相で1:100で希釈し、RP-HPLCを使用して分析した。
【0251】
結果を図5に示すが、この図は、異なるゼラチンをベースにした添加物を含む各製剤ごとの、FaSSGF媒体中でのインキュベーション時間(分)の関数としての、フルベンダゾールの平均濃度(μg/ml)を示している。高濃度は、過飽和状態に到達したことを示し、平坦部分は、前記過飽和状態が長期間にわたり維持されることを示す。
【0252】
FaSSGF媒体中、過飽和度は、実験時間中に全ての添加物に関して維持され、時間依存性指数型減衰によって特徴付けられ、撹拌から2時間後、最高濃度のフルベンダゾールは、低(50及び75g)ブルームであるブタの皮膚のゼラチン、高(225g)ブルームであるウシの骨のゼラチンの存在下で維持され、それぞれ32μg/ml(3×Cmax)、29μg/ml(2.6×Cmax)、及び32μg/ml(3×Cmax)であった。
【0253】
一般に、結果は、可溶性が不十分なAPIフルベンダゾールの利用可能な濃度で、かなりの改善を示した。ゼラチンをベースにした添加物及びフルベンダゾールを含む全ての製剤は、フルベンダゾールのみを含む参照試料で観察された値よりも高いフルベンダゾール濃度に到達した。更に、ある特定のゼラチンをベースにした添加物は、更に著しく高いフルベンダゾール濃度に到達し、前記高濃度を長期間にわたり維持した。
【0254】
上記結果を、乳清タンパク質組成物から得られるタンパク質をベースにした添加物を使用して、検証した。下記の実験では、乳清をベースにしたタンパク質添加物及びフルベンダゾールを含む製剤の、2つの試料を、同一条件下で調製した。1つの試料は、物理的混合物として保持し、1つは固体被膜として流延した。その後、両方の試料を37℃の0.1N HCl中に放出して、フルベンダゾールの過飽和状態を検証し維持した。試料は、下記の時間間隔:2、5、10、20、30、60、及び120分で採取し、RP-HPLCを使用して分析した。
【0255】
結果を図6に示すが、この図は、溶解時間(分)の関数として、乳清タンパク質をベースにした添加物と混合されたフルベンダゾール(FLUB)の平均溶解(%)を、示している。凡例は、下記の通りである:四角形-乳清タンパク質フルベンダゾール物理的混合物;円形-乳清タンパク質フルベンダゾール被膜。
【0256】
これらの結果は、乳清タンパク質をベースにした添加物及びフルベンダゾールを含む製剤が、37℃の0.1N HCl中でフルベンダゾール過飽和を創出し維持することを、明確に実証する。更に、特に溶媒流延された製剤に関し、有益な効果が示される。
【0257】
一般的な結論として、結果は、タンパク質をベースにした添加物が、実際に胃腸環境で過飽和状態を促進可能にし、且つ前記過飽和状態を長期間にわたり維持するのを助けることができることを、明らかにする。これらの発見は、少なくとも1種のタンパク質をベースにした添加物(例えば、BSA、ゼラチン)を更に含む製剤に調製された、可溶性が不十分なAPI(例えば、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセン)のバイオアベイラビリティが、相応に増大し得ることを示唆する。更に、タンパク質添加物がヒト血清アルブミン(HSA)から作製される場合、前記利益は、薬物の注射製剤の効果的な臨床性能を実現するために、生理的媒体中に高いAPI濃度をもたらし得る。事実前記製剤は、非アレルギータンパク質添加物及びAPIからのみ構成されるので、界面活性剤及びその他の潜在的にアレルギー性の及び/又は毒性の添加物が回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減された、より安全な生成物をもたらす。
【0258】
(実施例5)
ゼラチンをベースにした添加物を含む製剤の構造特性
3種のゼラチンをベースにした添加物を、加工後に、前記添加物を含む製剤の構造特性(例えば、固体状態及び粉末粒径)を更に評価するために保持した;特に、ブルーム=50gであるブタの皮膚のゼラチン、ブルーム=75gであるブタの皮膚のゼラチン、ブルーム225gであるウシの骨のゼラチンであった。フルベンダゾールを、再びモデルAPIとして選択し、ギ酸は溶媒として働き、噴霧乾燥を乾燥方法として選択した。
【0259】
3種のゼラチン試料を全て、4つの異なる(%/%)比で;即ち、[90-10]、[80-20]、[70-30]、及び[60-40]である添加物/API(%)でフルベンダゾールと一緒にギ酸に溶解した。次に、タンパク質-API溶液を、同一条件下で噴霧乾燥して、粉末製剤を非常に高い収率で得た。標準較正パラメーターを設定する参照試料は、APIなしでギ酸に溶解したゼラチンから構成された。
【0260】
噴霧乾燥装置では、2流体及び超音波ノズルを共に用いる噴霧乾燥を試験し、類似の結果を得た。製剤の固体状態(即ち、結晶質又は非晶質)を、X線粉末回折(XPRD)技術を使用して評価した。この技法は、結晶学的配置構成とのX線の強め合う干渉を利用して、噴霧乾燥した粉末製剤の構造及び相の形成状態を明らかにする。XRD又はXRPDの実用的原則は、当技術分野で公知である。したがってXRD実験は、45kV及び40mAに設定された発電機を持つCu管(Kαλ=1.5418Å)を備えた自動化X'pert PRO回折計(PANalystical、オランダ)を使用して実施した。試料を、回転しているゼロバックグラウンド試料ホルダ上に適用した。測定を、連続走査モードで、4°から40°まで0.0167°のステップサイズで、且つステップ継続時間当たり400秒で行った。
【0261】
噴霧乾燥した粉末製剤の粒径分布(PSD)を決定するための適切な方法は、乾燥粉末レーザ回折技術である。粒径分布は、レーザ光が粉末試料を通過するときに散乱する光の強度における角度変動を測定することによって決定した。乾燥粉末レーザ回折の実用的原則は、当技術分野で公知である。したがって添加物の粉末は、測定範囲:0.9~175μmのHELOSレーザ回折センサ(Sympatec、オランダ)でサイジングする前に、RODOS乾燥分散機を通して、3barの圧縮空気により分散させた。角度散乱強度データを引き続き解析して、散乱パターンの創出に関与する粒子のサイズを計算した。粒径は、体積等価球径として報告される。
【0262】
ゼラチンをベースにした添加物(Exc. conc.)及びフルベンダゾール(API conc.)の様々な比を含む製剤に関する、固体状態分析及び粒径(PS)の決定の結果を、以下のtable 1(表1)に提示する。
【0263】
【表1】
【0264】
table 1(表1)をまとめると:50PS30をベースにした添加物及びフルベンダゾールを含む製剤の平均粒径(PS)は、約14.03μmであり;75PS18をベースにした添加物及びフルベンダゾールは約13.1μmであり;225LB30をベースにした添加物及びフルベンダゾールは約20.2μmであり;したがってゼラチンをベースにした添加物のタイプの全体平均PSは、約15.8μmである。
【0265】
相対添加物比が90%であるゼラチンを含む全ての製剤は、完全に非晶質であることがわかった。しかし、相対添加物比が70%以下に低下すると、粉末粒子の少なくとも一部が半結晶質になることがわかった。
【0266】
一般に、より低いPS及び実質的に非晶質の状態は、より良好な溶解度及び溶解速度に関連付けることができ、したがって、ひいては過飽和状態をより簡単に実現するのを助けることができる。このように、結論付けると、結果は、添加物のAPIに対するより高い比(%/%)を含む製剤が、本発明の目的に更に有益であることを証明し得ることを教示する。完全非晶質状態を示す製剤のみが、それらの溶解度及び溶解プロファイルを更に試験するために保持された。
【0267】
(実施例6)
BSAをベースにした添加物を含む(噴霧乾燥した)製剤の構造特性
実施例5と同様に、BSAをベースにした添加物を含む製剤の構造特性を、加工後に評価した。BSAタンパク質組成物用の原材料を、ウシ由来のものから抽出した。フルベンダゾールをモデルAPIとして再び選択し、ギ酸は溶媒として働き、噴霧乾燥を、乾燥方法として選択した。BSA試料は全て、4つの異なる(%/%)比;即ち、[90-10]、[80-20]、[70-30]、及び[60-40]の添加物/API(%)に関して、フルベンダゾールと一緒にギ酸に溶解した。次に、タンパク質-API溶液を、同一条件下で噴霧乾燥して、粉末製剤を非常に高い収率で得た。標準較正パラメーターを設定するための参照試料は、APIなしでギ酸に溶解したBSAから構成された。
【0268】
性質を、XPRD及び乾燥粉末レーザ回折技術を使用して;実施例5で述べたものと同じパラメーターを使用して、再び評価した。両方の測定の結果を、以下のTable 2(表2)に示す。
【0269】
【表2】
【0270】
Table 2(表2)をまとめると: BSAをベースにした添加物及びフルベンダゾールを含む製剤の平均粒径(PS)は、約9.1μmである。全ての製剤は、相対比とは関係なく、完全に非晶質になることがわかった。
【0271】
結論付けると、結果は、BSAをベースにした添加物及びAPIを含む製剤が、本発明の目的に特に有益であることが証明され得ることを、教示する。
【0272】
(実施例7)
BSA又はゼラチンをベースにした添加物を含む(噴霧乾燥した)製剤の溶解プロファイル
非晶質状態を示す、実施例5及び6から得た製剤を、それらの溶解度及び溶解速度に関して試験をし;即ち、ブタのゼラチンのブルームが50g又は225g: FLU(それぞれ80:20%又は90:10%の比)、及びBSA(70~90%): FLU(30~10%)であった。
【0273】
ゼラチンをベースにした製剤では、溶解は、400mlのHCl 0.1M中で、37℃で80分の期間にわたり行った。BSAをベースにした製剤では、溶解は、400mlのHCl 0.1M中で、37℃で90分間行い、その時点で媒体のpHを固体Na3PO4により6.8の値に適応させた。完全溶解には5時間30分を要した。全ての試験は二重に行い、試料は、5'; 15'; 30'; 60'; 80'(ゼラチンをベースにした製剤)又は5'; 15'; 30'; 60'; 80'; 120'; 180'; 240'及び330'(BSAをベースにした製剤)を要した。その後、試料を、0.45μmのPTFEフィルタで濾過した。原液は、350μg/mlのフルベンダゾールを含有していた。標準は、原液から調製し、ACN/TFA 0.1%(55:45)中に希釈し、1μg/mlから350μg/mlの間で線形性が観察された。
【0274】
全ての試験は、統計の目的で多重に行い;第1の系列は、合計すると、第1の、625mgの非晶質固体分散体であって、20%のフルベンダゾール及び80%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=50g)を含有するもの;第2の、625mgの非晶質固体分散体であって、20%のフルベンダゾール及び80%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=225g)を含有するもの;及び第3の、625mgの粉末であって、20%のフルベンダゾール及び80%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=50g)を含有するもの(即ち、物理的混合物)を含んでいた。第2の系列は、合計すると、第1の、1250mgの非晶質固体分散体であって、10%のフルベンダゾール及び90%のBSAを含有するもの;第2の、625mgの非晶質固体分散体であって、20%のフルベンダゾール及び80%のBSAを含有するもの;第3の、416mgの粉末であって、30%のフルベンダゾール及び70%のBSAを含有するもの;及び第4の、625mgの粉末であって、20%のフルベンダゾール及び80%のBSAを含有するもの(即ち、物理的混合物)を含んでいた。
【0275】
溶解プロファイルは、実施例4と同様にRP-HPLCを使用して決定した。RP-HPLC装置は、流量が1ml/分のEclipse Zorbax Agilent 5μm(4.6×150mm)カラムを使用した。注入体積は、ACN/TFA 0.1%(55:45)を含有する移動相で20μlであり、フルベンダゾールの溶出時間は約±1.9分であった。測定用の波長は、280nmに設定した。
【0276】
溶解プロファイルを図7及び図8に示す。図7のパネル(a)は、溶解時間(分)の関数として、ゼラチンをベースにした製剤の各系列ごとのフルベンダゾール濃度CFlub(μg/ml)を示す、溶解プロファイルのグラフであり;表示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。図7、パネル(b)は、溶解時間(分)の関数として、ゼラチンをベースにした製剤の各系列ごとのフルベンダゾール放出の平均パーセンテージ(%)を示す溶解プロファイルのグラフであり;表示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。図8、パネル(a)は、溶解時間(分)の関数として、BSAをベースにした製剤の各系列ごとのフルベンダゾール濃度CFlub(μg/ml)を示す、溶解プロファイルのグラフであり;表示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。図8、パネル(b)は、溶解時間(分)の関数として、BSAをベースにした製剤の各系列ごとのフルベンダゾール放出の平均パーセンテージ(%)を示す、溶解プロファイルのグラフであり;表示される値は、各実験ごとに計算された平均を表す。
【0277】
図7の凡例は下記の通りである:円形が付された実線は、80%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=50g)及び20%のFLUを含む、噴霧乾燥した製剤に該当し;四角形が付された実線は、90%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=225g)及び10%のFLUを含む、噴霧乾燥した製剤に該当し;破線は、80%のブタの皮膚のゼラチン(ブルーム=50g)及び20%のFLUの物理的混合物を含む製剤に該当する。図8の凡例は下記の通りである:円形が付された実線は、90%のBSA及び10%のFLUを含む、噴霧乾燥した製剤に該当し;三角形が付された実線は、80%のBSA及び20%のFLUを含む、噴霧乾燥した製剤に該当し;四角形が付された実線は、70%のBSA及び30%のFLUを含む、噴霧乾燥した製剤に該当し;破線は、80%のBSA及び20%のFLUの物理的混合物を含む製剤に該当する。
【0278】
一般に、全てのタンパク質をベースにした添加物では、溶解試験から得た結果は、可溶性が不十分なAPIフルベンダゾールの、噴霧乾燥した非晶質溶液への溶解に関してかなりの改善を示した。平坦部分は、長期間にわたって実現され維持された過飽和状態を示す。このように、改善されたフルベンダゾール溶解度は、初期勾配によって示されるような、より速い溶解速度と、より高い最大フルベンダゾール濃度で示されるような、より高い溶解レベルとによって特徴付けられることが観察された。
【0279】
BSA依存性製剤の系列で試験がなされた3つの比(90-80-70%)の全てに関し、Cmax(即ち、最大フルベンダゾール濃度)値は全て、低pH値でピークまで増大し且つより高いpHで低下することが観察されたが、それでも依然として高いままであった。
【0280】
より詳細には、BSAをベースにした添加物を高い比で、即ち90及び80%で含む製剤は、凡そ80%の非常に高い放出速度及び240μg/mlのCmaxに到達することがわかった。BSAをベースにした添加物を、より低い、70%の比で含む製剤は、ピーク放出速度が約70%でありCmaxが220μg/mlの、僅かに低減した結果を示し;しかし後者の結果は依然として、任意の同等の参照値よりもそれぞれ、ほぼ20倍高い。
【0281】
相対的改善の原因は、BSAが、pH値1で約234μM、pH値4で約133μM、及びpH値7で約116μMの結合強度Kdで、フルベンダゾールと結合することがわかり、これらの値は一般に、GIT内を経口剤形が通過することに関連したpHプロファイルに該当する。このことは、BSAが胃及び小腸内の両方でフルベンダゾールと相互作用することになり、それによってフルベンダゾールが参照値よりもほぼ20倍溶解することを、強く示す。
【0282】
したがって結論付けると、タンパク質をベースにした添加物は実際に、胃腸環境で過飽和状態を促進可能であり、前記過飽和状態を長期間維持するのを更に助けることができることが、明らかにされる。これらの発見は、少なくとも1種のタンパク質をベースにした添加物を更に含む製剤に調製された、可溶性が不十分なAPI(例えば、フルベンダゾール、カルバマゼピン、グリセオフルビン、フェニトイン、ニフェジピン、ベラパミル、アジスロマイシン、ニトロフラントイン、イオパノ酸、イトラコナゾール、イブプロフェン、インドメタシン、グリベンクラミド、ビカルタミド、エゼチミブ、アセクロフェナク、ケトコナゾール、オクスフェンダゾール、リトナビル、フェノフィブラート、シンナリジン、ダルナビル、ジアゼパム、ウンデカン酸テストステロン、又はナプロキセン)のバイオアベイラビリティが、相応に増大し得ることを示唆する。更に、タンパク質添加物がヒト血清アルブミン(HSA)から作製される場合、前記利益は、薬物の注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、生理的媒体中に高いAPI濃度をもたらし得る。事実、前記製剤は非アレルギー性タンパク質添加物及びAPIのみから構成されるので、界面活性剤及びその他の可能性のあるアレルギー性及び/又は毒性添加物が回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減されたより安全な生成物が得られる。
【0283】
(実施例8)
タンパク質をベースにした添加物とポリマーをベースにした添加物との組合せ、及び前記組合せを含む噴霧乾燥した製剤の構造特性
第1のAPI、及び第2のポリマーをベースにした添加物又はタンパク質をベースにした添加物、或いはタンパク質とポリマーをベースにした添加物との組合せを含む、種々の製剤の構造特性を分析し比較した。
【0284】
選択された、ポリマーをベースにした添加物は、Soluplus(登録商標); Badische Anilin und Soda Fabrik (BASF)製であった。タンパク質をベースにした添加物は全て、様々な供給源から抽出されたゼラチンをベースにし;ゼラチンタンパク質組成物用の原材料は、ブタの皮膚若しくはウシの骨及び/又はこれらの組合せから抽出され、全てはRousselot(登録商標)により生成された。フルベンダゾールを再びモデルAPIとして選択した。
【0285】
種々の固体分散体を、先に開示した方法(例えば、噴霧乾燥)を使用して生成した。その後、それらの性質を、実施例5で述べたものと同じパラメーターを使用して、XRDを使用して再び評価した。
【0286】
結果を図9に示すが、この図は、(1)80%のSoluplus(登録商標): 20%のフルベンダゾール(FLU); (2) 40%のポリマー: 40%のゼラチン: 20%のFLU; (3) 10%のポリマー: 70%のゼラチン: 20%のFLU; (4) 80%のゼラチン: 20%のFLUを含む製剤の、XRDパターンのグラフを示す。
【0287】
ポリマーをベースにした添加物(参照符号1)のみを含む製剤は、完全に非晶質のタンパク質をベースにした添加物(参照符号4)のみ含む製剤とは異なって、実際に完全には非晶質でないことが明らかである。しかし、ポリマーをベースにした添加物とタンパク質をベースにした添加物とを共通の製剤中で組み合わせることにより、非晶質状態の程度が増大する可能性があり、タンパク質をベースにした添加物の、ポリマーをベースにした添加物に対する相対比を増大させることで、改善することも観察される。
【0288】
したがって結論付けると、タンパク質をベースにした添加物は、API、及びポリマーをベースにした添加物と組み合わせて、実際に非晶質状態を更に促進させることが可能であることが、明らかにされる。BSAをベースにした添加物、ポリマーをベースにした添加物、及びAPIを含む、組合せ製剤は、本発明の目的に特に有益であることを証明し得る。
【0289】
(実施例9)
可溶性が不十分なAPIに対する適合性の検証
種々の可溶性が不十分なAPIを、溶解度向上剤としてのタンパク質をベースにした添加物の効果を評価するために選択した。最初に、クラスII(即ち、可溶性が不十分であり、透過性が高い)を最も代表すると見なされる、クラスIIに属する様々なAPIの選択を行った。APIのそれぞれに関し、添加物と組み合わせて製剤を生成し、その後、試験用に被膜流延した。最適なAPI/添加物濃度を、実施例4の結果に基づいて選択し、即ち、各製剤は、20%のAPI及び80%のBSA(w/w)を含んでいた。下記のAPIを選択した:イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニトイン、ニフェジピン、グリセオフルビン、及びベラパミル。
【0290】
更に、各製剤に関し、製剤の混合、乾燥、及び流延に最適な溶解が実現されるよう、溶媒系を調節した。選択されたAPIのそれぞれのより速い溶液を、それらの機能性に悪影響を及ぼすリスクを全く与えずに実現するのに、特別の注意を払った。インドメタシンの場合、好ましい溶媒系は、25%のギ酸(FA)、50%の酢酸(AA)、及び25%のジクロロメタン(DCM)の混合物;ナプロキセンの場合、100%のFA;フェニトインの場合、25%のFA、25%のAA、及び50%のアセトン;ニフェジピンの場合、100%のFA;ベラパミルの場合、100%のFA;グリセオフルビンの場合、100%のFA;及びイブプロフェンの場合、15%のFA及び85%のAAの混合物であることがわかった。
【0291】
各製剤ごとの溶解度試験の結果を図10図16に示し;特に、イブプロフェン(図10);インドメタシン(図11);ナプロキセン(図12);フェニトイン(図13)、ニフェジピン(図14);ベラパミル(図15)、及びグリセオフルビン(図16)である。溶解を、2つのpH媒体中で再び試験をした: 0分から開始して90分までの第1の期間は、pH 1.5で行われた測定を表し、90分から先へと実行される第2の期間は、pH7.2で行われた測定を表し;pHは、各期間の最中に実証された。図のそれぞれにおいて、点線は、pHの遷移を視覚的に表す。
【0292】
結果は、APIの粉末形態と比較すると、被膜として流延された場合に全ての製剤に関して、改善された溶解から大幅に改善された溶解を示す。総体的な結論として、結果は、タンパク質をベースにした添加物が、実際に胃腸環境でクラスIIのAPIの溶解度を高めることが可能であることを明らかにし、このことは更に、過飽和状態を長期間にわたって維持するのを助けることができる。更に、クラスIIのAPIの場合に(in-vitro)溶媒和と(in-vivo)バイオアベイラビリティとの間の直接相関が科学的に文書化されていることを考慮した場合、添加物の溶解度向上効果は、クラスIIのAPIに対してバイオアベイラビリティ向上効果も提供し得るようになることが予測される。更に、タンパク質添加物がヒト血清アルブミン(HSA)から作製される場合、前記利益は、BCSクラスII又はIV薬物のいずれかの注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、生理的媒体中に高いAPI濃度をもたらし得る。事実、前記製剤は非アレルギー性タンパク質添加物及びAPIのみから構成されるので、界面活性剤及びその他の潜在的にアレルギー性の及び/又は毒性の添加物が回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減された、より安全な生成物がもたらされる。
【0293】
(実施例10)
固体分散体に最適な生成パラメーターの決定
添加物としての、BSAによるAPIの非晶質固体分散体の開発は、様々な生成パラメーターを用いた噴霧乾燥を介して試料を生成することにより試験をした。2種のAPIをクラスIIのAPI群から選択して、モデルAPIとして働かせ;即ち、ベムラフェニブ及びイトラコナゾールである。各製剤ごとに、6種の試料を生成し、したがって合計で12種の試料が得られた。
【0294】
様々な生成パラメーターがTable 3(表3)に見出され、種々のAPI/添加物濃度(w/w)を含有し、特に製剤は、APIを少なくとも30%、それに対してBSAを70%、最大でAPIを50%、それに対してBSAを50%含み;種々の溶媒系、特にギ酸(FA)、又はギ酸(FA)及びメタノール(meth)を含む混合物を含み;且つ種々の噴霧乾燥温度であって、溶媒系を蒸発させるよう調節された温度を含む。しかし動作パラメーターは、以下の噴霧乾燥設定による比較のため、一定に保持された:空気流0.3m3/分、ポンプ速度60%、液体の周りのノズル空気供給8.0 l/分、及び2流体ノズルサイズ0.4mm。
【0295】
【表3】
【0296】
試料の噴霧乾燥中、加工に関する課題には遭遇せず、良好な加工収率(ベムラフェニブに関して>83%、イトラコナゾールに関して>95%)を反映した。しかしイトラコナゾールは、ベムラフェニブに比べ、100%の溶解を実現するためにより高いレベルの撹拌を必要とすることがわかった。固体分散としての製剤の生成後、いくつかの試験を行って、各試料の物理的性質を評価し、その結果を以下にまとめたことがわかる。
【0297】
第1に、ベムラフェニブを含む試料に関し:
・ 示差走査熱量測定(DSC)法を、被膜の非晶質性の決定のために使用した。試料10%及び20%のAPI(参照試料1、2、4、及び5)を含む試料は、最も将来性あるDSC結果を実証し、結晶融解ピークは存在しない。
・ アッセイ値は、HPLCを使用して決定した。全ての6種の試料に関し、89~103%の間の良好なアッセイ値が観察された。試料調製手順を検証するために、スパイクされたプラセボ試料を、10/90%w/wのAPI/BSAを含有させて調製した。APIのスパイク量は検索することができ、したがって試料調製は適切と見なした。
・ 加速スクリーニング安定性試験は、全ての試料が、25℃及び60%の部屋の湿度(RH)で1カ月間保存されたときに良いテクスチャ及び良好な流動を実証することを示したが、いくらかの凝集が、40℃及び75%のRHで観察された。
【0298】
第2に、イトラコナゾールを含む試料に関し:
・ 6種の試料の全ては将来性あるDSC結果を実証し、融解ピークは存在しなかった。
・ 6種の試料の全てに関し、88~91%の間のアッセイの値が測定された。
・ 全ての試料は、25℃及び60%RHで1カ月間保存したときに、良いテクスチャ及び良好な流動を実証したが、いくらかの凝集が、40℃及び75%RHで観察された。
【0299】
(実施例11)
比較溶解試験
添加物としてのBSAの存在下、APIの噴霧乾燥した粉末のバイオアベイラビリティを、実施例9から選択された最適なパラメーターを使用して試験した。4種の試料を、2種の異なるAPIで、即ちベムラフェニブ及びイトラコナゾールで製造し、API/添加物濃度(w/w%)を変化させた。
【0300】
ベムラフェニブ/BSA製剤の場合: 10%のベムラフェニブ(噴霧乾燥粉末)及び90%のBSA(±8000mg)を含有する試料1は、実施例10からの試料1の、対応する動作パラメーターを使用して生成し、20%のベムラフェニブ及び80%のBSA(±4000mg)を含有する試料2は、実施例10からの試料2の、対応する動作パラメーターを使用して生成した。更に結果を、同じ試験条件に曝露され且つ比較参照として働くベムラフェニブ(商標名: Zelboraf 240mgフィルムコート錠)を含有する、市販の製品の場合と比較した。
【0301】
イトラコナゾール/BSA製剤の場合: 30%のイトラコナゾール(噴霧乾燥粉末)及び70%のBSA(±1111mg)を含有する試料1は、実施例10からの試料2の、対応する動作パラメーターを使用して生成し、40%のイトラコナゾール及び60%のBSA(±833mg)を含有する試料2は、実施例10からの試料4の、対応する動作パラメーターを使用して生成した。同様に結果を、同じ試験条件に曝露され且つ参照として働く、イトラコナゾール(商標名: Sporanox 100mgカプセル)を含有する市販の製品の場合と比較した。
【0302】
比較溶解試験は、下記の動作条件: Kromasil 100-5C18-250×4.6mm; 30℃の温度; 1mL/分の流量; 10μLの注入体積による、UV検出(302nm)を用いたHPLC法を使用する、2段階溶解法で実行した。最も期待される溶液環境をシミュレートするために、溶解試験を生理的に最も関連あるpH 1.2(HCl緩衝液)及び7.2(USPリン酸緩衝液)で実行した。5分から開始して90分までの第1の期間は、pH 1.2で行われた測定を表し、95分から150分まで実行される第2の期間は、pH7.2で行われた測定を表し; pHは、各期間中に検証された。
【0303】
ベムラフェニブに関する溶解結果を図17に示す。一般に、2種の異なる噴霧乾燥粉末は、非常に類似した溶解プロファイルを有する。四角形は、試料1(10%のベムラフェニブ、及び90%のBSA)の結果を表し;三角形は試料2(20%のベムラフェニブ及び80%のBSA)を表し;菱形はゼルボラフ参照試料を表す。溶解プロファイルは、参照試料(参照 ゼルボラフ)に比べ、pH 1.2及び7.2の両方で優れた溶解挙動を示す。
【0304】
イトラコナゾールに関する溶解結果を図18に示す。四角形は、試料1(30%のイトラコナゾール及び70%のBSA)に関する結果を表し;三角形は試料2(40%のイトラコナゾール及び60%のBSA)を表し;菱形は、ベムラフェニブに類似したスポラノックス参照試料を表し、溶解プロファイルは、参照試料(参照 スポラノックス)に比べ、pH 1.2及び7.2の両方で優れた溶解挙動を示す。
【0305】
(実施例12)
噴霧乾燥した製剤の濡れ性の改善
実施例10及び実施例11を行うとき、イトラコナゾール等の濡れ性が不十分なある特定のAPIは、(非晶質)固体分散体に加工するための溶媒としてギ酸を使用するときに100%の溶解を実現するのに高レベルの撹拌(agitation)(例えば、撹拌(stirring))を必要とすることが観察された。親水性担体の、製剤への添加は、この問題を解決した。
【0306】
最適な量を決定するために、ギ酸を溶媒として使用して種々の製剤を噴霧乾燥した。PEG 10Kを、親水性担体として働くように選択し、BSAを添加物として選択し、イトラコナゾールをモデルAPIとして選択した。ギ酸約5mlを、様々な程度のPEG 10Kと一緒に溶液ごとに計量して、合計で8種の試料を形成した。試料1は、80%のBSA及び20%のイトラコナゾールを含有し;試料2は、70%のBSA、20%のイトラコナゾール、及び10%のPEG 10Kを含有し;試料3は、60%のBSA、20%のイトラコナゾール、及び20%のPEG 10Kを含有し;試料4は、50%のBSA、20%のイトラコナゾール、及び30%のPEG 10Kを含有し;試料5は、60%のBSA、30%のイトラコナゾール、及び10%のPEG 10Kを含有し;試料6は、50%のBSA、30%のイトラコナゾール、及び20%のPEG 10Kを含有し;試料7は、40%のBSA、30%のイトラコナゾール、及び30%のPEG 10Kを含有し;試料8は、40%のBSA、40%のイトラコナゾール、及び20%のPEG 10Kを含有した。
【0307】
図19は、溶解時間(分)の関数として、いかなる撹拌(agitation又はstirring)も行わないときの、列挙された製剤の平均溶解(%)を表示する溶解プロファイルのグラフを示す。15分及び120分での平均溶解(%)を測定し、これらを更に、比較を容易にするために図20でブロック図として提示した。
【0308】
全般的な結論として、親水性担体の添加は、噴霧乾燥した製剤の濡れ性を大幅に改善する。しかし、多過ぎるBSAをHCの代わりに用いると、過飽和の実現可能なレベルが損なわれ始める。
【0309】
(実施例13)
ゼラチンをベースにした添加物を含む(凍結乾燥した)製剤の構造特性
添加物としてゼラチンを用いたAPI用の非晶質固体分散体の開発は、様々な生成パラメーターで凍結乾燥を介して試料を生成することにより、試験をした。10種の可溶性が不十分なAPIを、クラスIIのAPI群から選択して、モデルAPIとして働かせた;即ち、カルバマゼピン、シンナリジン、ダルナビル(エタノレート)、ジアゼパム、フェノフィブラート、グリセオフルビン、インドメタシン、カテコナゾール、ナプロキセン、及びニフェジピンである。タンパク質をベースにした添加物は全て、ブタの皮膚から抽出されたゼラチン(ブルーム=50g)をベースにし;全てはRousselot(登録商標)製であった。
【0310】
種々の固体分散体を、凍結乾燥を使用して生成した。各モデルAPIごとに、6種でひと組の試料を創出し、即ち試料1(参照:純粋)であって、参照として働く純粋なAPI試料を含有するものであり、次いでAPI及びゼラチンを含む5種の製剤:40%のAPI及び60%のゼラチンを含有する試料2(参照:平均40%);30%のAPI及び70%のゼラチンを含有する試料3(参照:平均30%);20%のAPI及び80%のゼラチンを含有する試料4(参照:平均20%);10%のAPI及び90%のゼラチンを含有する試料5(参照:平均10%);及び5%のAPI及び90%のゼラチンを含有する試料6(参照:平均5%)を創出した。
【0311】
溶液を、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を使用して調製した。APIのそれぞれに関し(図1及び実施例1も参照)、種々の薬物負荷(5%、10%、20%、30%、及び40%-(質量API/質量ゼラチン50PS)×100として計算された)の非晶質固体分散体を、調製した。これを実現するために、ゼラチン50PSに対して種々の比のAPIを、全てのAPIに関してDMSOに溶解した。DMSO 1mLを、存在するゼラチン50PS 100mgごとに使用したが、例外として、シンナリジンは10%(2mL)、20%(3mL)、30%(4mL)、40%(4mL)であり、イトラコナゾールは10%(2mL)、20%(3mL)、30%(4mL)、40%(4mL)、及びケトラコナゾールは20%(2mL)、30%(2mL)、及び40%(2mL)であった。これら特定のAPIに関し、溶解度を改善するのにより多くのDMSOが必要であった。
【0312】
次に、凍結乾燥を使用して、(非晶質)固体分散体を生成した。溶液のそれぞれを、最初に密閉プラスチック受容器内で-26℃に凍結し、溶液の表面積を最大限にし、その後、フリーザ内で、約-26℃の温度で少なくとも24時間保持した。この手順の最中に、シンナリジン、ケトコナゾール、及びニフェジピン等の感光性化合物は、アルミニウム紙を使用して光から保護した。次の工程で、各凍結試料をALPHA 1-4 LSC、CHRIST.凍結乾燥機(Martin Christ Gefriertrocknungsanlagen GmbH社製(Osterode am Harz、ドイツ))に移した。そこで、プラスチック受容機を開き、自己穿孔(針)されたパラフィルムで覆い、凍結乾燥棚上に配置した。次いで凍結乾燥機を閉鎖し、下記の動作条件を連続7日間: -85℃、0.008mbarで維持した。7日後、製剤を凍結乾燥機から集め、実験分析を準備した。
【0313】
集めたら、製剤の構造特性を、実施例5で述べたものと同じパラメーターを使用するXRDを使用して評価した。
【0314】
2つの例示的な結果を選択し、図21及び図22に提示するが、これらの図は、インドメタシン及びダルナビル(エタノレート)をそれぞれ含む製剤のXRDパターンのグラフを示す。図21では特に、底部の線が試料1(純粋なインドメタシン)を表し且つ参照として働き、次に底部から上方に順に続く線は、試料6(平均5%)、試料5(平均10%)、試料4(平均20%)、試料3(平均30%)、及び試料2(平均40%)をそれぞれ表す。同様に図22では、底部の線は試料1(純粋なダルナビル)を表し、次に底部から上方に順に続く線は、試料6(平均5%)、試料5(平均10%)、試料4(平均20%)、試料2(平均40%)、及び試料3(平均30%)をそれぞれ表す。残りの8種のモデルAPIも評価し、類似の結果を示した。
【0315】
タンパク質をベースにした添加物としてゼラチンと一緒にAPIを含む全ての製剤は、結晶性の非常に数多くの痕跡を示すAPIのみ含む参照試料(cfr. 4)とは異なって、実質的に完全に非晶質になることが明らかにされる。
【0316】
したがって結論付けると、タンパク質をベースにした添加物は、実際に、APIと組み合わせて非晶質状態を更に促進可能であることが明らかにされる。凍結乾燥は、前者に関して非晶質固体分散体を生成するのに適切な方法であり、DMSOは凍結乾燥に特に十分適した溶媒であることも明らかにされる。
【0317】
(実施例14)
ゼラチンをベースにした添加物を含む(凍結乾燥した)製剤の溶解プロファイル
種々の可溶性が不十分なAPIを、クラスIIのAPI群から選択して、溶解度を高めるための、タンパク質をベースにした添加物としてのゼラチンの効果を評価した。実施例13で詳述した方法により生成された10種の試料を、更に試験するために選択し;即ち、カルバマゼピン、シンナリジン、ダルナビル(エタノレート)、ジアゼパム、フェノフィブラート、グリセオフルビン、インドメタシン、ケトコナゾール、ナプロキセン、及びニフェジピンを選択した。タンパク質をベースにした添加物は全て、ブタの皮膚(ブルーム=50g)から抽出されたゼラチンであり;その全てはRousselot(登録商標)製であった。
【0318】
溶解について、pH7.0に設定した再蒸留水で試験をした。各製剤ごとの溶解試験の結果は、図23図32に示されることがわかり;特にカルバマゼピン(図23);シンナリジン(図24);ダルナビル(図25);ジアゼパム(図26)、フェノフィブラート(図27);グリセオフルビン(図28);インドメタシン(図29);ケトコナゾール(図30);ナプロキセン(図1)、及びニフェジピン(図32)であった。
【0319】
結果は、APIの純粋な(粉末)形体と比較して、凍結乾燥されたときに全ての製剤に関して大幅に改善された溶解にまで改善されたことを示す。全般的な結論として、結果は、タンパク質をベースにした添加物が実際にクラスIIのAPIの溶解度を高めることが可能になり、それが更に、過飽和状態を長期間にわたって維持するのを助けることができることを明らかにする。更に、クラスIIのAPIに関して(in-vitro)溶媒和と(in-vivo)バイオアベイラビリティとの間の直接相関が科学的に文書化されていることを考慮した場合、添加物の溶解度向上効果は、バイオアベイラビリティ向上効果をクラスIIのAPIにもたらす可能性があることが予測される。更に、タンパク質添加物がゼラチンで作製される場合、更なる利益は、BCSクラスII又はIV薬物のいずれかの注射製剤の有効な臨床性能を実現するために、生理的媒体に高いAPI濃度をもたらすことができる。事実、前記製剤は非アレルギー性タンパク質添加物及びAPIのみから構成されるので、界面活性剤及びその他の潜在的なアレルギー性及び/又は毒性の添加物が回避され、アレルギーの可能性及びその他の副作用が低減された、より安全な生成物がもたらされる。
【0320】
(実施例15)
BSAをベースにした添加物を含む(凍結乾燥された)製剤の溶解プロファイル
添加物としてBSAを含む、API用の非晶質固体分散体の開発は、凍結乾燥を介して試料を生成することにより試験をした。イトラコナゾールはモデルAPIとして働いた。
【0321】
20%のAPI及び80%のBSAを含有する、API及びBSAを含む製剤を、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を使用して調製した。次に、溶液を凍結乾燥して、固体分散体を生成した。凍結乾燥装置では、同一の条件を、実施例13で説明したように適用した。乾燥工程の後、製剤の構造特性を、実施例5で述べたものと同じパラメーターを使用するXRDを使用して再び評価した。凍結乾燥は、イトラコナゾール及びBSAを含む非晶質固体分散体を生成するのに適した方法であることが明らかにされる。
【0322】
凍結乾燥したイトラコナゾールに関する溶解度試験の結果: BSA固体分散体を図33に示す。溶解を、2つのpH媒体で再び試験をした:0分から開始して90分までの第1の期間は、pH 1.5で行われた測定を表し、90分から先へと実行される第2の期間は、pH6.8で行われた測定を表し; pHは、各期間中に検証された(pH遷移は破線によって示される)。
【0323】
結果は、APIの粉末形態に比べ、凍結乾燥した固体分散体の中からイトラコナゾールに関して大幅に改善された溶解を示す。
【0324】
全般的な結論として、結果は、タンパク質をベースにした添加物が、実際に胃腸環境でのクラスIIのAPIの溶解度を高めることを可能にし、そのことが更に、過飽和状態を長期間にわたって維持するのを助けることができることを明らかにする。
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