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特許7094230寄生容量を相殺する整合電流を生成するための電流源が内蔵された変圧器を備える外科工具用動力コンソール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】寄生容量を相殺する整合電流を生成するための電流源が内蔵された変圧器を備える外科工具用動力コンソール
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20220624BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20220624BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61B17/32 510
H01F27/36 123
H01F30/10 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018562295
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2017034437
(87)【国際公開番号】W WO2017210076
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】62/343,433
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー,アダム
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03946738(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0318079(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
H01F 27/36
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号を外科工具の動力生成ユニットに供給するための制御コンソールであって、
AC電圧が印加される一次巻線と駆動信号が誘発される二次巻線とを備える変圧器であって、前記駆動信号は、前記外科工具の前記動力生成ユニットに印加可能になっている、変圧器と、
前記一次巻線に印加された前記AC電圧によって電圧を誘発する漏れ制御巻線と、前記漏れ制御巻線と前記二次巻線との間に接続されたコンデンサとを備える整合電流源であって、寄生容量の結果として前記駆動信号内に存在する漏れ電流を少なくとも部分的に相殺する電流を生成するように設計されている、整合電流源と、
を備える制御コンソールにおいて、
前記整合電流源の前記漏れ制御巻線及び前記コンデンサは、いずれも前記変圧器内にあり、前記コンデンサは、前記変圧器の前記一次巻線及び前記二次巻線の少なくとも1つの周りに巻装された導体材料層から形成された少なくとも1つのプレートを備える、制御コンソール。
【請求項2】
前記導体材料層は、前記コンデンサの第1の導体プレートとして機能し
前記変圧器の前記一次巻線及び前記二次巻線の少なくとも1つの一組の巻数分が、前記コンデンサの第2の導体プレートとして機能するようになっている、
請求項1に記載の制御コンソール。
【請求項3】
前記二次巻線の一組の巻数分が、前記コンデンサの前記第2の導体プレートとして機能するようになっている、請求項2に記載の制御コンソール。
【請求項4】
前記変圧器の少なくとも一つの前記一次巻線及び前記二次巻線の周りに巻装されている複数の導体材料層をさらに備えている、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項5】
前記複数の導体材料層は、第1の導体材料層及び第2の導体材料層を含み、
前記第1の導体材料層は、前記コンデンサの導体プレートとして機能し、
前記コンデンサの導体プレートとして機能する前記第1の導体材料層以外の前記第2の導体材料層は、前記二次巻線の低側に接続され、シールドとして機能するようになっている、
請求項4に記載の制御コンソール。
【請求項6】
前記複数の導体材料層は、第1の導体材料層及び第2の導体材料層を含み、
前記第1の導体材料層は、前記コンデンサの第1の導体プレートとして機能し、
前記第1の導体プレートとして機能する前記第1の導体材料層以外の前記第2の導体材料層は、前記二次巻線の低側に接続され、前記コンデンサの第2の導体プレートとして機能するようになっている、
請求項4に記載の制御コンソール。
【請求項7】
前記複数の前記導体材料層は、互いに接続され、前記コンデンサの単一導体プレートとして機能するようになっている、請求項4に記載の制御コンソール。
【請求項8】
検知巻線が、前記変圧器内に配置されている、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項9】
前記検知巻線は、前記一次巻線と前記二次巻線との間に位置している、請求項8に記載の制御コンソール。
【請求項10】
前記漏れ制御巻線は、前記検知巻線の外方に位置し、前記二次巻線は、前記漏れ制御巻線の外方に位置している、請求項8又は請求項9に記載の制御コンソール。
【請求項11】
前記漏れ制御巻線は、前記一次巻線の外方に位置している、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項12】
前記漏れ制御巻線は、前記二次巻線の外方に位置している、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,又は11のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項13】
前記一次巻線は、DC電圧が印加される中心タップを有し、
前記一次巻線の両端は、前記AC電圧を前記一次巻線に生じさせるために、前記一次巻線の前記両端をグラウンドに選択的に繋ぐ回路に接続されている、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項14】
前記漏れ制御巻線は、複数の副次的巻線から成っており、
一組のスイッチが、前記漏れ制御巻線の前記複数の副次的巻線を選択的に一緒に接続し、前記一次巻線に印加される所定の電圧に対して、前記漏れ制御巻線に生じる電圧を設定するようになっている、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【請求項15】
前記コンデンサの少なくとも1つのプレートを形成する前記導体材料層は、前記変圧器の前記一次巻線及び二次巻線の少なくとも1つの周りに周方向に延在している、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の制御コンソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、電動式外科工具に駆動信号を供給する動力コンソールに関する。本発明の動力コンソールは、整合電流源が内蔵された変圧器を備えている。この電流源は、漏れ電流を最小限に抑えるために寄生電流に整合する電流を生成するものである。
【背景技術】
【0002】
電動式外科工具システムは、一般的に3つの基本的な構成要素を有すると考えることができる。制御アセンブリは、システムの第2の構成要素、すなわち、動力生成器を作動させるのに必要な特性を有する駆動信号を生成する。動力生成器は、典型的には、駆動信号の電気エネルギーを他の形態のエネルギーに変換させる。電気エネルギーが変換されるエネルギーの種類として、機械的エネルギー、熱エネルギー(熱)、及び光子エネルギー(光)が挙げられる。工具システムの第3の構成要素は、エネルギーアプリケータである。エネルギーアプリケータは、特定の治療処置を行うために、動力生成器によって出力されたエネルギーを受け、このエネルギーを目標組織に加えるようになっている。工具システムのなかには、目標組織に向けられる電気エネルギーを印加するように設計されているものがある。この種のシステムでは、動力生成器は、本質的に導体であり、この導体を通して駆動信号が露出した電極に印加され、該電極を通して電流が組織に供給される。従って、電極がエネルギーアプリケータとして機能することになる。
【0003】
しかし、外科工具システムの多くは、不可欠な部分としてハンドピースを有している。少なくとも、ハンドピースは、施術者によって保持されるように設計された物理的な構成要素であり、このハンドピースからエネルギーアプリケータが延在している。多くの場合、ハンドピース内に動力生成器が含まれている。このように設計された1つの外科工具システムとして、超音波外科工具システムが挙げられる。このシステムのハンドピースは、1つ又は複数のドライバからなる動力生成器を備えている。各ドライバは、AC信号の印加に応じて振動する。ホーンがドライバに機械的に緊密に連結されている。エネルギーアプリケータとして機能するチップが、ホーンから遠位側に延在している。ドライバの振動がホーン、従って、チップに増幅した同様の振動をもたらす。組織に対してチップが振動する結果、組織の電気焼灼、すなわち、除去が生じることになる。
【0004】
多くの電動式外科工具システムが他の電動式アセンブリと共有する固有の特性は、寄生容量がこれらのシステムの構成要素に生じることである。寄生容量は、不均等な電圧下にある2つの構成要素を横切って存在する容量である。この容量が存在する結果として、寄生電流がこれらの構成要素の1つを通って流れることになる。例えば、ハンドピースがAC駆動信号が印加される動力生成ユニットを備える時、ハンドピースの金属構造要素と電流が流れるハンドピース内の動力生成ユニットとの間の寄生容量に起因して、寄生電流が金属構造要素を通って流れることになる。この寄生電流は、漏れ電流として知られるものをもたらすことになる。漏れ電流は、システムの構成要素を通る(本来の目的に用いられない)意図されない電流の流れである。
【0005】
患者に対する安全の理由から、電動式外科工具のハンドピースは、アース/グラウンドに接続されていると考えられる。もし漏れ電流が生じている可能性のあるハンドピースが患者に当てられたなら、漏れ電流は、理論的に患者を通ってこのグラウンドに流れる。この電流は、患者自身の器官及び組織の機能に悪影響を与える可能性がある。これは、一般的な患者への適用が意図されるハンドピースを有する外科工具システムは、典型的には、正常な漏れ電流流れが100μアンペア未満であることが確実になるように設計されているからである。心臓組織への適用が意図されたハンドピースを有する外科工具システムは、典型的には、正常な漏れ電流流れが10μアンペア未満であるように設計されていなければならない。これらの要件は、IEC60601医療設計規格に基づいている。IEC60601規格は、漏れ電流をこれらの最大値未満に抑えることを確実にするために電動式外科工具を試験するためのプロセスも記載している。
【0006】
さらなる要件は、安全上の理由から、患者に触れる工具は、グラウンドへの接続具として機能することができないことである。この要件によれば、もし他の源からいくらかの電圧が患者に印加されても、工具がグラウンドへの接続具として機能しないので、電流が患者を通って流れないことになる
【0007】
電動式外科用ハンドピースからの漏れ電流の流れを低減させるために多くの方法が用いられている。1つの方法は、寄生容量を低減させ、これによって、寄生電流流れを抑制することである。もし工具が超音波ハンドピースであるなら、寄生容量は、ハンドピースのドライバとドライバによって振動することが意図された機械的構成要素であるホーンとの間に電気的絶縁インピーダンスディスクを設けることによって、低減させることができる。これらのディスクの設置に付随する欠点は、該ディスクがドライバからホーン及びチップへの振動の伝達を減衰することにある。この機械的な減衰によって、ハンドピースの効率が低下することになる。
【0008】
漏れ電流の流れを低減させる第2の方法は、整合電流源を設けることである。整合電流源は、電流をハンドピース動力生成ユニットに関連する低側導体に印加するようになっている。この整合電流は、理想的には、高側導体に存在する寄生電流と方向が逆で大きさが等しい。整合電流は、寄生電流を相殺する。寄生電流の相殺によって、理想的には、漏れ電流への寄生電流の寄与が排除されることになる。漏れ電流は、主に寄生電流から成っている。従って、寄生電流の相殺は、ハンドピースから患者内を通る漏れ電流の流れを実質的に排除することになる。
【0009】
整合電流源は、2つの構成要素から形成されている。これらの構成要素の第1のものは、制御アセンブリの一部である変圧器に内蔵される補助巻線である。これらの構成要素の第2のものは、変圧器と異なるコンデンサである。
【0010】
上記の形式のアセンブリは、高側導体を通って流れる漏れ電流を相殺するための整合電流源をもたらすために合理的に機能する。しかし、この場合、実際上、電流源の第2の構成要素としてY式コンデンサが用いられる。Y式コンデンサに生じ得る最大電圧は、典型的には、250VAC未満である。超音波ハンドピースの導体に存在する電圧は、多くの場合、1000VACを超える。従って、漏れ電流の大きさを低下させるための整合電流源を有する超音波ドライバを備える外科工具システムを設けることは、困難であると見なされている。
【0011】
漏れ電流を低下させるための整合電流源を有する電動式外科器具システムを設けることに付随するさらなる困難さは、この電流源から流れる電流の調整が困難であることである。これによって、工具システムは、寄生電流及び整合電流が実質的に等しくない状態に陥ることがある。もしハンドピースがこの状態に陥いると、許容レベルを超える漏れ電流が患者に流れる可能性が生じることになる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、新規の有用な外科工具システム用動力コンソールに関する。動力コンソールは、駆動信号をシステムの動力生成ユニットに供給するシステムのアセンブリとして機能する。更に具体的には、本発明の外科工具システムの動力コンソールは、自立式整合電流源を有する変圧器を備えている。
【0013】
本発明の動力コンソールは、システムハンドピースの動力生成ユニットに印加される駆動信号を出力するコンソールの構成要素として機能する変圧器を備えている。入力信号は、変圧器の一次巻線に印加される。変圧器の二次巻線に生じる信号は、駆動信号である。
【0014】
変圧器は、整合電流源も備えている。この整合電流源は、駆動信号が工具システムの動力生成ユニットに印加される時に通る高側導体との間に生じる寄生容量と大きさが実質的に等しく且つ方向が逆の電流を生成する。この整合電流源は、巻線及びコンデンサを備えている。巻線は、漏れ制御巻線と呼ばれる。漏れ制御巻線の一端は、グラウンドに繋がれている。コンデンサは、漏れ制御巻線の自由端と低側導体との間に直列に接続されている。
【0015】
一般的に、整合電流源のコンデンサは、変圧器の巻線の周りに巻装された少なくとも1つの電気的導体薄片を備えている。この導体ラップは、コンデンサの1つのプレートとして機能する。
【0016】
本発明のいくつかの態様では、変圧器は、巻線の周りに配置された第2の導体ラップを備えている。この第2のラップは、本発明のいくつかの形態では、コンデンサの第2のプレートとして機能する。本発明のこの態様のいくつかの形態では、この第2の導体ラップは、この電気的導体材料層が巻装された1つ又は複数を覆うシールドとして機能する。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、巻線の1つの一部が整合電流源のコンデンサの第2のプレートとしても機能する。本発明のこの態様のいくつかの形態では、二次巻線の少なくとも一部が、コンデンサの第2のプレートとして機能する。本発明のこの態様の他の形態では、漏れ電流巻線が、コンデンサの第2のプレートとして機能する。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、漏れ電流巻線は、複数の副次的巻線から成っている。1つ又は複数のスイッチが、これらの副次的巻線を一緒に繋いでいる。本発明のこの特徴によって、整合電流源によって生じる電圧、従って、電流は、一次巻線に印加される所定の電圧に対して、選択的に設定されることになる。従って、整合電流源によって供給される電流のレベルを選択的に設定することができる。これによって、変圧器が一体化されたコンソールの製造中に整合電流源によって供給される電流レベルを寄生電流と実質的に等しくなるように正確に設定する能力を高めることができる。本発明のいくつかの構成では、整合電流源によって供給される電流のレベルを設定するこの能力によって、著しく異なる周波数の駆動信号を必要とするハンドピースに対して、単一のコンソールによって駆動信号を供給することが可能になる。
【0019】
本発明の多くの態様では、変圧器は、検知巻線も備えている。検知巻線に生じる信号は、駆動信号の電圧を表す信号として、システムの他の構成要素によって用いられる。検知巻線を含む本発明のいくつかの態様では、検知巻線は、漏れ制御巻線に接続されている。
【0020】
本発明のいくつかの電動式外科工具システムは、超音波工具システムである。超音波工具システムは、1つ又は複数のドライバを備えている。ドライバは、システムの動力生成ユニットとして機能する変換器である。AC信号がこれらのドライバに印加されると、該ドライバは、周期的に拡張及び収縮する。チップがこれらのドライバに機械的に接続されている。ドライバの拡張/収縮が、チップの振動を誘発させる。チップは、患者の組織に作用し、振動がこの組織に対して適切な治療效果を果たすことになる。
【0021】
本願に関連する発明は、請求項において詳細に指摘されている。本発明の前述の及びさらなる特徴及び利得は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことによって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の特徴部を含む電動式外科工具システムの基本的な構成要素を示す図である。
図2】システムの工具、すなわち、ハンドピースの機械的な構成要素の線図である。
図3】システムの制御コンソール及びハンドピースの両方の基本的な電気的構成要素のブロック図である。
図4】制御コンソール内の変圧器、ハンドピース、及びハンドピースが適用される患者の概略図である。
図5】本発明の第1の変圧器の断面図である。
図6図5の変圧器の概略図である。
図7】本発明の第2の変圧器の断面図である。
図8図7の変圧器の概略図である。
図9】本発明の第3の変圧器の断面図である。
図10図9の変圧器の概略図である。
図11】本発明の第4の変圧器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1,2を参照して、本発明の電動式外科工具システム40について概略的に説明する。システム40は、ハンドピース310を備えている。ハンドピース310は、超音波外科工具である。従って、本発明のこの態様では、システム40は、超音波外科工具システムとして説明される。ハンドピース310は、ハンドピースの近位端を形成する本体又はシェル312を備えている。(「近位側(proximal)」という用語は、ハンドピースが作用する部位からハンドピースを保持する施術者に向かう側を意味すると理解されたい。「遠位側(distal)」とい用語は、施術者からハンドピースが作用する部位に向かう側を意味すると理解されたい。)本体312は、医療施術者によって実際に保持されるハンドピース310の部分である。
【0024】
1つ又は複数の振動圧電ドライバ324が、シェル312内に配置されている(4つのドライバが示されている)。図2において、ハンドピースシェル312は、ハンドピース310の内部の構成要素が露出するように示されていない。各ドライバ324は、AC電圧が該ドライバに印加された時に瞬間的な拡張又は収縮を生じる材料から形成されている。これらの拡張/収縮は、ドライバ324の長軸、すなわち、ドライバの近位面と遠位面との間に延在する軸に沿って生じる。1対のリード線328が、各ドライバ324から延在している(図2では、2つのリード線しか示されていない)。リード線328は、ドライバ324の互いに反対の側の近位面及び遠位面に取り付けられている。必ずしもハンドピース310の全てではないが、多くのハンドピース310は、ディスク状の圧電ドライバ324を備えている。これらのドライバ324は、互いに端と端とが重なった積層体として配置されている。リード線328は、駆動信号の形態にある電圧をドライバ324に印加するためのシステム40の構成要素である。図2において、ドライバ324は、互いに離間したものとして示されている。これは、これらの構成要素の説明を容易にするためである。実際には、ドライバ324は、互いに緊密に当接している。
【0025】
ドライバ324は、該ドライバに印加された電気エネルギーを機械的動力に変換するものとして理解されたい。従って、ドライバ324は、協働して、システム40の(機械的な)動力生成器として機能することになる。
【0026】
ポスト330が、ドライバ324を長手方向に貫通している。ポスト330は、ドライバの長軸と同一の軸に沿ってドライバ324を貫通している。ポスト330が通る(図示されない)貫通孔が、ドライバ324内に設けられている。ポスト330は、最近位側に位置するドライバ324及び最遠位側に位置するドライバ324の両方から外方に突出している。
【0027】
近位端質量体320が、最近位側に位置するドライバ324の近位面に隣接して配置されている。ポスト330の露出した近位端区域が、質量体320に固定して取り付けられている。もしポスト330がネジ山を有しているなら、質量体320は、ナットであるとよい。
【0028】
ホーン334が、最遠位側に位置するドライバ324の遠位面から前方に延在している。図示されないが、絶縁ディスクが遠位側ドライバ324とホーン334との間に配置されているとよい。ホーン334は、ドライバ324の直径と略等しい直径を有する近位端基部を有している。ドライバ324から遠位側前方に向かって、ホーン334の直径が減少している。ポスト330の露出した遠位端区域は、ホーン334に取り付けられている。もしポスト330がネジ山を有しているなら、ホーン基部は、ポスト330を受け入れるための(図示されない)ネジ山付き孔を有しているとよい。ハンドピース310は、ドライバ324の積層体が近位端質量体320とホーン334との間で圧縮されるように構成されている。
【0029】
チップ430が、ホーン334の遠位端から前方に延在している。円筒体336によって表される連結アセンブリが、ホーン334から前方に延在している。連結アセンブリは、チップ340をホーン340、従って、ハンドピース310の残りに取外し可能に保持するものである。連結アセンブリの構造は、本発明の一部を成すものではない。チップ340は、細長のステム342を備えている。ステム342は、連結アセンブリを通してホーン334に取り付けられるチップの部分である。ステム342は、ハンドピースシェル312の前方に延在している。チップ340は、ステム342の遠位端にヘッド344を有するように形成されている。チップヘッド344のなかには、滑らかな表面を有するものがある。歯346が形成されたヘッド344もある。ヘッド344の幾何学的形状は、本発明の一部を成すものではない。チップヘッド344は、処置が行われる患者の部位に作用するハンドピース310の部分である。図1において、チップヘッド344は、組織380の区域に作用するものとして示されている。
【0030】
チップヘッド344のなかには、硬質組織、例えば、骨に直接作用するように設計された歯を備えるものがある。この種のチップが往復運動されると、この歯は、従来の鋸ブレードが組織を切断するのと同じように組織を切断することになる。
【0031】
スリーブ350が、典型的には、チップステム342を覆って配置されている。スリーブ350は、典型的には、ステム342がホーン334に取り付けられる箇所からヘッド344の略0.5cm近位側の箇所まで延在している。ハンドピース310、チップ340、及びスリーブ350は、協働して、スリーブがチップの外面とスリーブの包囲内面との間に延在する流体導管を画定するように、構成されている。スリーブ350は、この導管に延在するスリーブの近位端に隣接する箇所に取付具352を有している。導管は、スリーブ350の遠位端で開いている。ハンドピース310が用いられる時、灌注溶液がスリーブ取付具からスリーブ内を下流側に流れ、チップヘッド344に隣接する箇所で放出されるようになっている。システムのいくつかの態様では、流体は、チップヘッドの機械的信号を組織に伝達させる媒体として機能する。この灌注溶液は、チップヘッド344の振動の結果として該チップヘッドによって生じる熱エネルギーに対する放熱材としても機能する。
【0032】
図示されないが、ハンドピースポスト330、ホーン334、及びチップ340は、多くの場合、導管を有するように形成されている。これらの導管は、協働して、チップヘッド344からハンドピース310の近位端への流体経路を画定している。ハンドピースの作動時に、吸引がこれらの導管内に加えられる。この吸引によって、灌注流体がチップが作用する部位から離れる方にスリーブ350を通って放出される。この灌注流体に捕捉されるのは、チップ340の作動の結果として生じる破片である。吸引によって、組織もチップヘッド344に向かう方に引き込まれる。チップヘッドと組織との間の距離を短縮することによって、チップヘッドから組織に至る機械的振動の伝達が改良される。
【0033】
吸引を引き起こすことができるシステム40のハンドピース310は、アスピレータ又は超音波アスピレータと呼ばれることもある。
【0034】
ハンドピース310は、図3においてブロックとして示されるメモリ338も備えている。メモリ338は、ハンドピースの特性を記述するデータを含んでいる。メモリ338は、EPROM、EEPROM、又はRFIDタグの形態にあるとよい。メモリの構造は、本発明の一部を成すものではない。メモリ338は、ハンドピース310を識別するデータを含んでいる。メモリ338は、ハンドピースドライバ324に印加される駆動信号の特性を記述するデータも含んでいる。本発明の殆どのハンドピース310は、読取可能なデータを含むと共に、ハンドピース310の製造後にメモリに書き込まれたデータを貯蔵することができるメモリを備えている。メモリからのデータの読取り及びメモリへのデータの書込みを容易にするために、図示されない付属的な構成要素がハンドピースに取り付けられている。これらも構成要素は、導体、露出した接点/接点ピン、コイル/アンテナ、又は隔離回路の1つ又は複数から成っている。
【0035】
以下、図1,3を参照して、本発明のシステム40の一部でもある制御コンソール50について説明する。制御コンソール50は、ハンドピース310が接続されたケーブル304を通して駆動信号を供給するようになっている。ハンドピース310が超音波ハンドピースである本発明の態様では、必ずしも必要ではないが、一般的にケーブル304及びハンドピース310は、単一ユニットとして組み合わされている。駆動信号が、ドライバ324に印加される。任意の瞬間において、同一の駆動信号が各ドライバ324に印加される。駆動信号の印加によって、これらのドライバは、同時に且つ周期的に拡張及び収縮することになる。ドライバ324の積層体は、多くの場合、1cmから5cmの長さを有している。ドライバの単一の拡張/収縮サイクルの移動の距離、すなわち、振幅は、1μmから10μmの間であるとよい。ホーン334がこの移動を増幅する。その結果、ホーン334の遠位端、従って、チップヘッド344は、十分に収縮した位置から十分に拡張した位置まで移動した時、典型的には、最大1000μm、多くの場合、500μm以下移動することになる。チップ340のなかには、チップステム342の長手方向拡張/後退がヘッド344の回転運動も引き起こすようにさらに設計されているものもある。この回転運動は、捻じれ運動と呼ばれることもある。ハンドピース310がチップの周期運動を引き起こすように作動された時、ヘッド344は、振動していると見なされる。
【0036】
図3に概略的に示される制御コンソール50内の構成要素は、電源52を備えている。電源52は、DC電圧を出力し、そのDC電圧の大きさは、設定可能になっている。この電圧は、典型的には、25VDCから250VDCの間である。電源52からの信号としての電圧は、電源に印加されるPOWER_SUPPLY_CONTROL (PS_CNTRL) 信号に基づいて設定される。電源52によって出力された信号は、変圧器250の一次巻線252の中心タップに印加される。変圧器一次巻線252の両端は、線形増幅器58に繋がれている。増幅器58は、電位及び周波数の両方が変化するAC信号を変圧器一次巻線252の端に印加する。制御信号として増幅器58に印加されるBASE信号が、増幅器58によって出力される信号の周波数及び電位を調整する。システム40が超音波ハンドピース310を備える本発明の態様では、一次巻線に加えられるAC信号は、10kHzから100kHzの間の周波数を有している。この信号は、少なくとも200Vのピーク/ピーク電圧、さらに好ましくは、少なくとも300Vのピーク/ピーク電圧を有している。
【0037】
電源52及び線形増幅器58の構造は、本発明の一部を成すものではない。これらのサブアセンブリの更なる理解は、国際特許出願第PCT/US2016/031651号(国際特許出願公開第2016/183084A1号/米国特許出願公開第
号)において得られるだろう。これらの文献は、参照することによって、ここに明示的に含まれるものとする。
【0038】
変圧器250の一次巻線252に加えられたAC信号が、変圧器250の二次巻線にAC信号を誘発する。変圧器250の二次巻線に生じるこの信号は、ケーブル304を通してハンドピースドライバ324に印加される駆動信号である。駆動信号が超音波ドライバを作動させるために用いられる本発明の態様では、この駆動信号は、典型的には、少なくとも500VAC電圧、多くの場合、少なくとも1000VACの電圧を有している。
【0039】
変圧器250は、検知巻線256を備えている。検知巻線256は、再生コイルと呼ばれることもある。検知巻線256に生じる信号の電圧は、電圧測定回路66に印加される。検知巻線256に生じた信号に基づいて、回路66は、ドライバ324に加えられる駆動信号の電位の大きさ及び位相を表す信号Vsを生成する。制御コンソール50内に配置されたコイル86が、変圧器二次巻線264から延在する導体の1つに近接して配置されている。コイル86に生じる信号が、電流測定回路68に印加される。回路68は、ハンドピースドライバ324に供給された駆動信号の電流iの大きさ及び位相を表す信号を生成する。
【0040】
ハンドピース310に印加される駆動信号の電圧及び電流を表す信号が、制御コンソール50内のプロセッサ80に印加される。制御コンソール50は、メモリーリーダ78も備えている。メモリリーダ78は、ハンドピースメモリ338内のデータを読み取ることが可能である。メモリリーダ78の構造は、ハンドピースメモリ338を補足するものである。従って、メモリリーダは、EPROM又はEEPROM内のデータを読み取ることができるアセンブリ又はRFIDタグのデータを尋問し且つ読み取ることができるアセンブリとすることができる。メモリ338から読み取られたデータが駆動信号をハンドピースに供給する導体を介して読み取られる本発明の態様では、メモリリーダ78は、隔離回路を備えているとよい。リーダ78によって読み取られたデータは、プロセッサ80に印加される。
【0041】
オン/オフスイッチが、制御コンソール50に接続されている。図1,3において、このオン/オフスイッチは、フットペダル54によって具体化されている。ペダル54の状態は、プロセッサ80によって監視されている。オン/オフスイッチは、システム40のオン/オフ状態を調整するユーザー作動制御部材である。図1において、フットペダル54は、複数のペダルを備えるフットペダルアセンブリの一部として示されている。灌注ポンプ、吸引ポンプ、又は光源のような装置を制御するために、追加のペダルが用いられてもよい。これらの補助装置は、本発明の一部を成すものではない。
【0042】
制御コンソール50は、スライドスイッチ56を有するものとして示されている。フットペダル54と同様、スイッチ56の状態は、プロセッサ80によって監視される。スイッチ56は、チップヘッド344の振動の振幅の大きさを制御するために、施術者によって設定される。フットペダル54及びスイッチ56は、システム40にオン/オフ指令及び振幅設定指令を設定する手段を概して代表するものとして理解されたい。システムのいくつかの構成では、単一の制御部材がこれらの機能の両方を果たすようになっていてもよい。具体的には、システム40は、レバー又はフットペダルが最初に押された時にシステムがチップヘッドに比較的小さい振幅からなる振動サイクルを受けさせるように、構成されていてもよい。レバー又はフットペダルを押し続ける結果として、制御コンソールは、ハンドピースに印加される駆動信号を再設定し、これによって、チップヘッド344が大きな振幅の振動サイクルを受けることになる。
【0043】
ディスプレイ82が、制御コンソール50内に内蔵されている。ディスプレイ82上の画像は、プロセッサ80によって生成されるものとして示されている。ディスプレイ82上に表される情報は、ハンドピース、可能であれば、チップを識別する情報と、システムの動作レートの特性を記述する情報とを含んでいる。ディスプレイ82は、タッチスクリーンディスプレイとすることができる。本発明のこれらの態様では、ディスプレイ82上に位置するボタンの画像を押すことによって、指令をプロセッサ80内に入力させることができる。図示されないが、ディスプレイ82とプロセッサ80との間のインターフェイス構成要素によって、ディスプレイ上の画像の表示及びプロセッサ内への指令の入力が容易になる。
【0044】
プロセッサ80は、制御コンソール40からの駆動信号の出力を調整する。プロセサ80が駆動信号を設定する基となる施術者の制御入力は、オン/オフペダル54の状態及びスライドスイッチ56の状態である。ディスプレイ82を通して入力される指令は、駆動信号の設定を制御するために用いられてもよい。また、駆動信号の特性は、ハンドピースメモリ338から読み取られたデータに基づいて設定されてもよい。駆動信号の設定は、駆動信号の設定に更に寄与するフィードバック信号として、コンソールによって用いられてもよい。これらの複数の入力に基づいて、プロセッサ80は、駆動信号を制御する信号を出力する。これらの信号は、電源52に印加されるPOWERSUPPLYCONTROL信号及び増幅器58に印加されるBASE信号である。
【0045】
図4を参照すれば、本発明の変圧器250の操作の理論が理解されるだろう。図4は、変圧器250の電気的能動構成要素及び該構成要素によって生じた駆動信号が印加される構成要素の概略図である。変圧器は、コア270を有するものとして示されている。図示されるように、変圧器250は、コア270の左側に一次巻線252を備えている。図3から、一次巻線252の両端が線形増幅器58に接続されていることを理解されたい。電源52によって出力された電圧は、一次巻線252の中心タップに印加される。図面の複雑さを減らすために、検知巻線256は、図4に示されていない。
【0046】
図示されるように、二次巻線264が、コア270の右側において一次巻線252と直接対向して配置されている。図4において、ドライバ324は、それらの電気的等価物、すなわち、コンデンサCとして表されている。抵抗RHPが、コンデンサCと平行に配置されるものとして示されている。抵抗RHPは、ハンドピース310及びチップ340のインピーダンスの機械的等価物を表している。このインピーダンスは、実際には、抵抗成分、容量成分、及び誘導成分を有している。導体278は、コンソール50、ケーブル304、及びハンドピース310内の高側導体を表し、二次巻線264をドライバ324に接続するものである。導体284は、ドライバ324と二次巻線264との間の低側導体、すなわち、戻り導体である。電流iHPが、二次巻線264とドライバとの間に流れる。電流iHPは、駆動信号の電圧と、ハンドピースのインピーダンス、すなわち、コンデンサC及びインピーダンスの機械的等価物RHPからなる平行回路のインピーダンスとの関数である。
【0047】
また、図4には、漏れ電流解析及び試験のための人体を表す回路と見なされるものが示されている。この回路は、IEC60601に含まれる規格に基づいている。この回路は、2つの分岐を有する平行回路から成っている。回路の第1の分岐は、抵抗RT1である。このモデルの第2の分岐は、コンデンサCと平行の第2の抵抗RT2である。このモデルでは、外科工具は、この回路の一端に作用する。回路の他端は、アース/グラウンドに接続されると考えられる。組織の損傷を防ぐために、外科器具から組織に流れる電流、すなわち、この回路を通る漏れ電流iは、ゼロであるべきある。電流iHPは、駆動信号の結果として生じるので、その全てが高側導体278からドライバ324を通ってさらに低電圧導体を通って戻るように流れる。従って、電流iHPは、漏れ電流iに寄与しない。
【0048】
駆動信号が二次巻線264からドライバ324に印加される時に通る回路は、寄生容量も有している。これらの容量は、互いに直列に接続されたコンデンサCPH及びCPLとして表されている。コンデンサCPH,CPL及びそれらが接続された導体及びグラウンドは、点線の構成要素として示されている。何故なら、これらは、回路内に物理的に存在しないからである。コンデンサCPH及びCPLの接合部は、アース/グラウンドに接続されている。高側導体278に接続されたコンデンサCPHは、高側導体とアース/グラウンドとの間の寄生容量を表している。低側導体284に接続された容量CPPLは、低側導体284とアース/グラウンドとの間の寄生容量を表している。
【0049】
これらの寄生容量の存在によって、システム40の導電要素を通る寄生電流が流れることになる。具体的には、コンデンサCPHを通る寄生電流が、寄生電流iPHである。コンデンサCPLを通る寄生電流が、寄生電流iPLを生じさせる。もしこれらの寄生電流が低側導体284を通って流れたなら、これらの電流は、漏れ電流iの成分を形成することになるだろう。繰り返すが、組織への損傷を防ぐために、電流iは、ゼロ又は少なくとも可能な限りゼロに近い値に抑えられるべきであることを理解されたい。
【0050】
低側導体284を通って流れる寄生電流を防ぐために、可変整合電流源が変圧器250内に設けられている。この電流源は、低側導体284に印加される整合電流iを生成するものであり、整合電流iは、高側容量CPHに起因して存在する電流iPHと大きさが同じであり、方向が逆である。この整合電流iの印加は、導体284を通って組織380に流れる寄生電流に対して2つの效果を及ぼす。第1に、整合電流iは、寄生電流iPHと等しいか又は実質的に等しいので、寄生電流iPHが組織に印加される電流iの存在に及ぼす影響の程度が実質的に排除されないとしても低減されることになる。本発明の目的から、もし整合電流iが寄生電流を(漏れ電流が変圧器250と一体のシステムに対する規格以内に抑えられるのに必要な程度まで)相殺したなら、この整合電流iは、実質的に寄生電流iPHと等しいと考えられる。変圧器250がIEC60601人体浮遊規格に適合しなければならない外科工具システム40の一部であるコンソール50内に含まれる場合、整合電流は、もし該整合電流が寄生電流iPHの100μアンペア以内であったなら、寄生電流と実質的に等しいと考えられる。変圧器250がIEC60601心臓浮遊規格に適合しなければならない外科工具システム40の一部であるコンソール50以内に含まれる場合、整合電流は、もし該整合電流が寄生電流iPHの10μアンペア内であったなら、寄生電流と実質的に等しいと考えられる。
【0051】
整合電流iの存在は、低側寄生電流iPLにも影響を与える。具体的には、整合電流iが高側寄生電流iPHと実質的に等しいので、寄生容量CPLを横切る電圧は、実質的にゼロである。この電圧の平衡の結果、組織380内に流れる漏れ電流iへの低側寄生電流iPLの寄与は、たとえ存在するとしても、極めてわずかである。
【0052】
整合電流は、2つの構成要素、すなわち、漏れ制御巻線246及びコンデンサ248から成っており、これらの構成要素のいずれも変圧器250に内蔵されている。巻線246は、寄生電流が完全でないにしても実質的に漏れ電流iから成っているので、漏れ制御巻線と呼ばれている。漏れ制御巻線246の一端は、グラウンドに繋がれている。コンデンサ248は、漏れ制御巻線246の自由端と低側導体284との間に直列に接続されている。巻線246に生じる電圧は、一次巻線252に加えられる電圧によって変化する。従って、巻線246及びコンデンサ248によって形成された整合電流源は、可変電圧源とみなすことができる。
【0053】
図4において、コンソールのグラウンドは、アース/グラウンドに接続されているものとして示されている。この接続は、コンデンサCgを介している。コンデンサCgは、コンソールとアース/グラウンドとの間の寄生容量である。
【0054】
図5は、本発明の基本的な変圧器250の構造を示している。変圧器250は、フェライトから形成されたE字状コア270から形成されている。コア270は、基部272を有するように形作られている。互いに平行の3つの脚が基部272から外方に延在している。第1の脚、すなわち、中心脚274が、基部272の中心から外方に延在している。変圧器250は、中心脚274を通る長軸(図5の水平軸)を中心として対称であることを理解されたい。外側脚275(1つが示されている)が、基部の両端から外方に延在している。巻線246,252,256,264が中心脚274の周りに巻装され、外側脚275の互いに向き合った内面によって画定された円の境界線内に含まれている。
【0055】
変圧器250は、コア中心脚274に最も近い巻線が一次巻線252であるように構成されている。本発明の図示される態様では、一次巻線252は、2つの巻層を有するものとして示されている。これらの巻層は、誘電性の絶縁ラップ276によって互いに分離されている。以下に説明するように、変圧器250は、複数の絶縁ラップ276を備えている。ラップ276は、ポリエチレンテレフタレート樹脂シートから形成されている。このような樹脂の一種は、Dupont Teijin FilmsからMylarの商品名で市販されている。このラップは、少なくとも0.005mm、多くの場合、少なくとも0.008mmの厚みを有している。一次巻線252を形成する巻層間のラップ276は、コア270の基部272まで延在しないものとして示されている。これは、一次巻線252を形成する巻層が互いに接続されていることを表すためである。一次巻線256の外層を覆って位置する絶縁層276は、巻線が配置されたコアによって画定される空間の長さの全体にわたって延在するものとして示されている。これは、一次巻線がその外方の最隣接する巻線から隔離されていることを表すためである。
【0056】
検知巻線256が、一次巻線252を直に覆って配置されている。検知巻線256は、巻線の内、最も少ない巻数を有している。具体的には、図5,7,9において、検知巻線252は、比較的わずかな個々の巻数の単一巻層から成るものとして示されている。本発明の多くの態様では、変圧器250が適切に機能することを確実にするために、巻線の巻きの相対的な方向が適切に設定されねばならない。図5の変圧器250は、検知巻線256の巻きの方向が一次巻線252の巻きの方向と同じになるように、構成されている。
【0057】
絶縁層276が、検知巻線256を覆って延在している。
【0058】
漏れ制御巻線246が、検知巻線256を覆って配置されている。本発明の多くの態様では、漏れ制御巻線246の巻数は、検知巻線256の巻数よりも多く、一次巻線252の巻数よりも少ない。漏れ制御巻線を形成するワイヤは、コア中心脚274の周りに一次巻線252を形成するワイヤが巻装される方向と逆の方向に巻装されている。絶縁層276が漏れ制御巻線246を覆って延在している。
【0059】
内側導体ラップ280が、漏れ制御巻線246を覆って配置された絶縁層276の周りに延在している。ラップ280は、銅のような導電材料から形成されており、少なくとも略0.002mm、多くの場合、少なくとも0.003mmの厚みを有している。このラップ280及び以下に記載される導体ラップ288,290は、短絡しないようになっている。これは、ラップの両端が一緒に接続されるべきでないことを意味している。絶縁層276が、導体ラップ280を覆って配置されている。
【0060】
二次巻線264が、内側導体ラップ280を覆って配置された絶縁層276を覆って配置されている。二次巻線は、典型的には、変圧器250の巻線の内、最も巻数が多く且つ最も巻層数が多い。図5,7,9において、4つの巻層を有する二次巻線264が記号的に示されている。変圧器250は、二次巻線がコア中心脚274の周りに一次巻線252を形成するワイヤが巻装される方向と逆の方向に巻装されるように、形成されている。絶縁層276(1つの層に部番が付されている)は、コア内の空間の完全な長さにわたって延在しておらず、図示されるように、二次巻線264の巻層と交互配置されている。
【0061】
コンソール50は、二次巻線の最内巻層を形成するワイヤの端末が低側導体284に接続されるように、構成されている。変圧器250の二次巻線264は、コア中心脚274の周りに一次巻線252が巻装される方向と逆方向に巻装されている。
【0062】
図示されるように、絶縁層276が、二次巻線264の最外巻層の長さの全体を覆って配置されている。
【0063】
第2の導体ラップ290が、二次巻線264を覆っ配置された絶縁層276を覆って配置されている。絶縁層276が、第2の導体ラップ290を覆って配置されている。
【0064】
図6を参照すれば、変圧器250の巻線間の電気接続部が理解されるだろう。図6及び付随する図8,10に示されるように、一次巻線252は、二本巻きとして実際に構成されている。二本巻の各々の一端は、可変電源52に接続されている。各二本巻の互いに向き合った端は、図示されるように、2電流シンクとして概略的に示される線形増幅器58に接続されている。
【0065】
検知巻線256の一端は、漏れ制御巻線246の端に繋がれている。これらの2つの共通巻線の端は、グラウンドに繋がれている。検知巻線256の自由端は、電圧測定回路66に取り付けられている。漏れ制御巻線246の高側の自由端は、内側導体ラップ280に接続されている。
【0066】
外側導体ラップ290は、低側導体264に接続された二次巻線264の端に接続されている。従って、外側導体ラップ290は、変圧器巻線の外側に位置する電磁シールドとして機能する。
【0067】
図5,7,9に示されるように、低側導体284は、シールド306に接続されている。このシールド306は、ケーブル304内にある。高側導体278は、シールド306を貫通している。
【0068】
本発明のシステム40が作動されると、制御コンソール50は、AC電圧を一次巻線に生じさせる。この電圧の結果として生じた電場が、他の巻線246,256,264に電圧を誘発する。二次巻線264に誘発された電圧は、駆動信号としてハンドピースドライバ324に印加される。検知巻線256に生じた電圧は、駆動信号の電圧の測定値として電圧測定回路66に印加される。
【0069】
漏れ制御巻線246に生じた電圧が、内側導体ラップ280に印加される。このラップは、二次巻線264を形成するワイヤの隣接する内層の2mm、さらに好ましくは、1mm以内に位置している。内側導体ラップ280は、これらの間に位置する絶縁層276によって二次巻線の隣接する巻層から分離している。従って、内側導体ラップ280、二次巻線の隣接する巻層及びこれらの間の絶縁層276が、システム40の整合電流源のコンデンサ248として機能することになる。理想的には、システムを形成する構成要素は、この電流源によって生じる電流が高側寄生容量の結果として存在する電流iPHと大きさが等しく且つ方向が逆になるように、構成されている。この漏れ電流iPHの相殺によって、組織内へのシステムからの漏れ電流iの流れが排除されなくても低減されることになる。
【0070】
本発明の変圧器250のさらなる特徴は、コンデンサ248に生じる電圧が、コンデンサ又は変圧器自体の破断を生じることなく、500V、さらに好ましくは、少なくとも1000Vを超えることができることにある。これは、変圧器250が、少なくとも500V、さらに好ましくは、少なくとも1000Vの駆動信号を二次巻線264を通して出力させることができることを意味している。これらの電圧を有する駆動信号は、記載されるシステム40の超音波ハンドピース310のような電動式外科工具の動力生成ユニットに電力を供給するために必要である。
【0071】
図7は、本発明のシステム40の制御コンソール50内に内蔵可能な代替的変圧器250aの構造を示している。冗長さを最小限に抑えるために、代替的変圧器250a及び以下に記載の代替的変圧器250b,250cに関連するコア、巻線、及び絶縁層のそれぞれの区域に付される識別番号は、これらの構成要素が変圧器250の構成要素と同一の場合、変圧器250の構成要素の識別番号と同じである。また、冗長さ及び図面の複雑さを最小限に抑えるために、一次巻線の層間及び二次巻線の層間の絶縁層276は、図7,9において部番が付されていない。
【0072】
変圧器250aは、本発明の第1の実施形態におけるようにコア270の中心脚274の最も近くに巻装された一次巻線252を有するように構成されている。絶縁層276が、一次巻線の外層を覆って配置されている。内側導体ラップ280が、一次巻線を包囲する絶縁層276を覆って配置されている。
【0073】
内側導体ラップ290は、絶縁層276によって包囲されている。検知巻線256が、内側導体ラップ280の周りに巻装された絶縁層276の周りに巻装されている。検知巻線256を形成するワイヤは、一次巻線252を形成するワイヤの巻きの方向と同じ方向に巻装されている。
【0074】
二次巻線264が、検知巻線256を覆って配置された絶縁層276の周りに配置されている。変圧器250aは、二次巻線264を形成するワイヤが、一次巻線を形成するワイヤが巻装される方向と逆方向に巻装されるように、構成されている。絶縁層276が、二次巻線を形成するワイヤの外層を覆って配置されている。
【0075】
外側導体ラップ290が、二次巻線276を覆って配置された絶縁層276を覆って配置されている。絶縁層276が、外側導体ラップ290を覆って配置されている。
【0076】
漏れ制御巻線246が、外側導体ラップ290を包囲する絶縁層を覆って配置されている。変圧器250aは、漏れ制御巻線246が一次巻線252が巻装された方向と逆の方向に巻装されるように、形成されている。絶縁層276が漏れ制御巻線246の周りに巻装され、これによって、変圧器250aと一体の巻線サブアセンブリの外皮を形成することになる。
【0077】
図8から明らかなように、変圧器250aは、内側導体ラップ280が漏れ制御巻線246の高側端末に接続されるように、構成されている。漏れ制御巻線246の低側は、グラウンドに繋がれている。また、検知巻線256の低側もグラウンドに繋がれている。検知巻線の高側は、電圧測定回路66に接続されている。
【0078】
外側導体ラップ290が二次巻線264の低側に接続されている。二次巻線264の低側は、ケーブル304内のシールド306にも接続されている。
【0079】
変圧器250aは、内側導体ラップ280がコンデンサ248の1つのプレートとして機能するように、構成されている。コンデンサ248の第2のプレートは、二次巻線の最内巻層である。コンデンサ248の誘電層は、検知巻線256の両側の周りに配置された絶縁層276から成っている。本発明のこの態様では、検知巻線256は、コンデンサ248を形成する変圧器250aの2つの構成要素間に配置されている。検知巻線256に生じる電圧は、比較的低く、典型的には、二次巻線264に生じる電圧の5%以下である。これによって、検知巻線256の周りに生じる電場も比較的低い。従って、変圧器250aの(コンデンサ248を形成する)2つの構成要素間の検知巻線256の存在は、コンデンサ248の機能にそれほど大きな影響を与えるものではない。これは、コンデンサ248が、該コンデンサのプレート間に検知巻線256が配置されても、漏れ制御巻線246と組み合わされ、寄生電流iPHと実質的に整合する電流を生成することができることを意味している。
【0080】
他の導体ラップ290は、ラップ290の内側に配置された巻線252,256,258を覆うシールドとして機能する。
【0081】
変圧器250aのこの態様は、第1の変圧器250を操作する方法と略同一の方法によって操作される。一次巻線252にAC信号が印加されると、駆動信号が二次巻線264に生じる。また、漏れ制御巻線246にも電圧が生じる。この電圧がコンデンサ248を通って低側導体284に印加されると、低側導体に電流が生じる。この電流は、高側導体とアース/グラウンドとの間に生じた寄生電流と大きさが等しく且つ方向が逆である。この整合電流は、この寄生電流がハンドピースが作用する組織に印加される漏れ電流に寄与する程度をもし排除しないまでも低減させることになる。
【0082】
変圧器250aのさらなる特徴は、漏れ制御巻線246が変圧器の最外巻線であることにある。これは、他の巻線の全てが適所に配置された後、変圧器が試験装置内の適所に配置可能となることを意味している。一次巻線に電圧を印加し、試験装置に生じる電流及び電圧を測定することによって、整合電流源によって生じた電流が可能な限り高側漏れ電流と整合することを確実にするために、ワイヤのどれほどの巻数の部分が漏れ制御巻線を構成するために用いられるべきかを決定することができる。
【0083】
以下、最初に図9を参照して、本発明の第2の代替的変圧器250bについて説明する。変圧器250bは、変圧器250と同様、一次巻線252がコア中心脚272の最も近くに位置するように、構成されている。絶縁層276が、一次巻線252の周りに配置されている。検知巻線256が、一次巻線252の周りに巻装された絶縁層276の周りに巻装されている。検知巻線256は、一次巻線252が巻装された方向と同じ方向に巻装されている。絶縁層276が、検知巻線256の周りに巻装されている。
【0084】
内側導体ラップ280が、検知巻線256の周りに巻装された絶縁層276を覆って配置されている。絶縁層276は、検知巻線256の周りに配置されている。二次巻線264が、検知巻線256を覆って配置された絶縁層276を覆って配置されている。変圧器250bは、二次巻線2645が一次巻線252と同じ方向に巻装されるように、構成されている。絶縁層276が二次巻線264を覆って配置されている。
【0085】
中間導体ラップ288が、二次巻線264の周りに巻装された絶縁層276を覆って配置されている。絶縁層276が、中間導体ラップ288を覆って配置されている。外側
導体ラップ290が、中間導体ラップ288を覆って配置された絶縁層276を覆って配置されている。絶縁層276が、外側導体ラップ290を覆って配置されている。
【0086】
漏れ制御巻線246が、外側導体ラップ290を包囲する絶縁層を覆って配置されている。漏れ制御巻線246は、コア中心脚の周りに一次巻線252が巻装される方向と同じ方向に巻装されている。絶縁層276が、漏れ制御巻線246の周りに巻装され、これによって、変圧器250bと一体の巻線サブアセンブリの外皮を形成することになる。
【0087】
図10を参照すれば、変圧器250bは、内側導体ラップ280及び中間導体ラップ288の両方が変圧器二次巻線264の低側に繋がれるように、構成されている。従って、ラップ280,288は、協働して、コンデンサ248の1つのプレートを形成している。外側導体ラップ290は、漏れ制御巻線246の高側に繋がれている。従って、外側導体ラップ290は、変圧器250b内のコンデンサ248の第2のプレートを形成している。導体ラップ288,290間の絶縁層276は、コンデンサ248の誘電層の一部として機能する。
【0088】
変圧器250bは、コンデンサ248の両プレートが導体ラップから形成されるように構成されている。プレートの1つ、具体的には、二次巻線264に繋がれたプレートは、実際には、2つの導体ラップ280,290から形成されている。従って、変圧器250、250aのコンデンサ248と比較して、変圧器250bのコンデンサ248は、より高い容量を有することになる。これによって、寄生電流iPHと実質的に等しい電流を生成する整合電流源をもたらしながら、漏れ制御巻線の大きさを減少させることができる。
【0089】
図11は、本発明のシステム40内に内蔵し得る第3の代替的変圧器250cの概略図である。変圧器250cは、前述の巻線252,258,264及び導体ラップ280,288、290を備えている。変圧器250cの巻線252,258,264及び導体ラップ280,288、290は、変圧器250bの巻線及び導体ラップと同じようにコア270の中心脚274に対して同じ順番で配置されている。
【0090】
変圧器250b,250c間の差は、変圧器250cが、単一の漏れ制御巻線に代わって、3つの変圧器制御副次的巻線246a,246b,246cを有する点にある。物理的に、副次的巻線246a,246b,246cは、単一の巻線246が変圧器250b内において巻線252,256,264に対して配置されるのと同じように、巻線252,256,264に対して配置されている。本発明の全ての態様ではないがいくつかの態様では、漏れ制御巻線246a,246b,246cを形成するワイヤの巻数は、単一層の漏れ制御巻線246aの巻数と同じである。
【0091】
図11から分かるように、検知巻線256の高側が、電圧測定回路66に接続されている。検知巻線256の低側は、グラウンドに接続されている。内側及び中間導体ラップ280,288の両方が、二次巻線264の低側に繋がれている。
【0092】
スイッチアレイ294が、変圧器250cと一体化されている。スイッチアレイ294は、変圧器250cに物理的に取り付けられ、変圧器250cから物理的に分離されるようになっているとよい。副次的巻線246a,246b,246cの各々の両端は、スイッチアレイ294に接続されている。外側導体ラップ290も、スイッチアレイ294に接続されている。また、スイッチアレイ294は、グラウンドへの接続部も有している。スイッチアレイ294内に、図示されない多数のスイッチが配置されている。スイッチアレイ内のスイッチは、副次的巻線246a,246b,246cのいずれか1つの高側を外側導体ラップ290に接続し、副次的巻線の低側を外側巻線の高側に接続し、副次的巻線のいずれか1つの低側をグラウンドに接続するように、構成されている。
【0093】
変圧器250cは、変圧器250bと同様、導体ラップ280,288がコンデンサ248の1つのプレートとして機能するように構成されている。導体ラップ290は、コンデンサ248の第2のプレートとして機能する。
【0094】
変圧器250cは、スイッチの選択的設定がスイッチアレイ294,296を形成するように、更に形成されている。スイッチアレイ294のスイッチを選択的に設定することによって、副次的巻線246a,246b,246cのいずれか1つ、2つ又は3つ(全て)の組合せを外側導体ラップ290とグラウンドとの間に接続することができる。これは、副次的巻線246a,246b,246cのいずれか1つ、2つ、又は全てが整合電流源の漏れ制御巻線として機能することを意味している。本発明のこの特徴は、変圧器250cの整合電流源の調整を容易にし、電流源によって出力される電流iを確実に高側寄生容量CPHの結果として生じる電流と実質的に等しくさせることができる。この調整プロセスは、典型的には、変圧器250cが組み合わされた後又は変圧器250cがコンソール50の残りに装着された後に行われる。
【0095】
前述の説明は、本発明の特定の態様に向けられている。本発明の代替的態様が、記載された特徴と異なる特徴を有していてもよい。
【0096】
例えば、本発明の種々の態様の特徴が互いに組み合わされてもよい。具体的には、変圧器250cの漏れ制御副次的巻線246a,246b,246c及びスイッチアレイ294は、変圧器250,250a,250b内に内蔵されてもよい。
【0097】
整合電流源を形成するために選択的に繋がれた複数の漏れ制御巻線が配置される本発明の態様では、2つ、4つ、又はそれを超える数の個々の巻線が配置されてもよい。
【0098】
本発明を形成する構成要素の構造は、記載された構造と異なっていてもよい。例えば、本発明のいくつかの態様は、E/Iコアアセンブリ、Uコアアセンブリ、U/Iコアアセンブリ、又はIコアを有する変圧器を備えていてもよい。
【0099】
本発明のいくつかの態様では、内部検知コイルを有する変圧器を必ずしも設ける必要がない。
【0100】
整合電流源と一体のコンデンサ248を形成するための他のアセンブリも可能である。具体的には、本発明のいくつかの態様では、導体ラップは、二次巻線264の低側に取り付けられてもよい。この導体ラップは、漏れ制御巻線246の高側の一部に十分近接して配置され、これによって、導体ラップがコンデンサ248の1つのプレートとして機能し、漏れ制御巻線の一部がコンデンサ248の第2のプレートとして機能するようになっていてもよい。
【0101】
同様に、本発明の全ての態様において、必ずしも、コンソールは、この巻線の中心タップに電圧を印加し、巻線をグラウンドの両端に周期的に接続することによって、AC電圧を変圧器一次巻線に生じさせるように構成されている必要がない。本発明の代替的態様では、変圧器一次巻線252の両端に印加されるAC信号の源であるAC電圧源が設けられてもよい。同様に、本発明の全ての構成において、変圧器の特定の使用に応じて、変圧器に印加される又は変圧器に誘発されるAC電圧は、一定であってもよい。
【0102】
本発明の殆どの態様において、変圧器は、少なくとも1つの導体ラップを有しているが、本発明の全ての態様において、必ずしも、変圧器は、複数の導体ラップを有している必要がない。単一の導体ラップが設けられる時、このラップは、制限されるものではないが、典型的には、整合電流源のコンデンサ248の1つのプレートを形成するようになっている。もし3つの導体ラップが設けられるなら、必ずしも、各ラップがコンデンサ248の一部を形成する必要がない。ラップの2つがコンデンサ248の1つ又は複数のプレートを形成し、第3のラップがシールドであってもよい。同様に、4つ以上のプレートを有する変圧器も、本発明の範囲内にある。従って、変圧器が5つの導体ラップを備えるアセンブリ、具体的には、2つのラップがコンデンサ248の第1のプレートを形成し、2つのラップがコンデンサ248の第2のプレートを形成し、単一のラップがコンデンサの外側巻線の周りのシールドとして機能するアセンブリも、本発明の範囲内にある。
【0103】
同様に、コア270の中心に対する巻線246,252,236,264の順序は、記載された順序と異なっていてもよい。
【0104】
全ての特徴が、必ずしも本発明の全ての態様内に含まれていなくてもよい。例えば、本発明の代替的コンソールは、変圧器内に完全に組み込まれない整合電流源を備えていてもよい。本発明のいくつかの態様では、変圧器は、一組の漏れ電流巻線246a,246b,246c及び巻線を選択的に一緒に接続するスイッチを含んでいてもよい。本発明のこれらの態様では、整合電流源と一体のコンデンサ248は、変圧器250から分離されていてもよい。
【0105】
図示されないが、本発明のこれらの態様のいくつかの実施形態において、トランジスタ、典型的には、FETがスイッチアレイ294の個々のスイッチとして機能してもよいことを理解されたい。
【0106】
選択的に一緒に接続される複数の漏れ電流巻線を有する整合電流源を備えるこの特徴に関して、選択的に接続可能な副次的巻線が必ずしも3つである必要がないことを理解されたい。本発明のいくつかの態様では、2つの副次的巻線のみが設けられてもよい。本発明のさらに他の態様では、選択的に一緒に接続される副次的巻線は、4つ以上であってもよい。さらに、本発明は、複数の副次的巻線の1つが常に漏れ制御巻線の副次的巻線であるように構成されていてもよい。
【0107】
本発明の殆どの態様において、コンデンサプレートとして機能する導体ラップは、その下の1つ又は複数の巻線の周りに周方向に360°延在していてもよい。本発明のいくつかの態様では、この導体層は、その下の1つ又は複数の巻線の周りに完全に延在していなくてもよい。代替的に、導体ラップは、巻線の周りに360°を超える角度にわたって延在していてもよい。ラップが巻線の周りに延在する程度に関わらず、ラップの両側が電気的に互いに接続されるべきではないことを理解されたい。これは、導体ラップの短絡を防ぐためである。
【0108】
同様に、本発明のコンソールの態様によって駆動信号が供給される電動式外科工具は、動力生成ユニットが一組の超音波変換器を備える工具に制限されるものではないことを理解されたい。本発明の他のシステムは、工具の動力生成ユニットが光(光子エネルギー)を放射する装置であるように構成されていてもよい。本発明の他のシステムは、単極式又は双極式電極アセンブリのいずれかを有するハンドピースを備えていてもよい。この種のシステムでは、ハンドピースを貫通する導体が動力生成ユニットと考えられる。組織に当てられる1つ又は複数の電極がエネルギーを印加することになる。この種のシステムは、電流を組織に印加することによって作動する。この電流は、組織を加熱し、意図された融除又は組織の焼灼をもたらすことになる。
【0109】
さらに、本発明の制御コンソール及び本発明の変圧器は、電動式外科ハンドピース以外の装置に比較的低い漏れ電流を含むAC信号を印加する目的に用いられてもよい。このような装置の例として、双極式鉗子が挙げられる。この種のアセンブリでは、鉗子のチップは、ハンドピースのエネルギーアプリケータと考えられる。AC信号をチップに伝達する鉗子のアームと一体の導体は、ハンドピースの動力生成ユニットと考えられる。
【0110】
従って、添付の請求項の目的は、本発明の真の精神及び範囲内に包含されるこのような
修正及び変更の全てを含むことにある。
出願時の特許請求の範囲は以下の通り。
[請求項1]
駆動信号を外科工具(310)の動力生成ユニット(324)に供給するための制御コンソール(50)であって、
AC電圧が印加される一次巻線(252)と駆動信号が誘発される二次巻線(264)とを備える変圧器(250,250a,250b,250c)であって、前記駆動信号は、前記外科工具(310)の前記動力生成ユニット(324)に印加可能になっている、変圧器(250,250a,250b,250c)と、
前記一次巻線に印加された前記AC信号によって電圧を誘発する漏れ制御巻線(246)と、前記漏れ制御巻線と前記変圧器二次巻線との間に接続されたコンデンサ(248)とから成る整合電流源であって、寄生容量の結果として前記駆動信号内に存在する漏れ電流を少なくとも部分的に相殺する電流を生成するように設計されている、整合電流源と、
を備える制御コンソール(50)において、
前記整合電流源の前記漏れ制御巻線(246)及び前記コンデンサ(248)は、いずれも前記変圧器(250,250a,250a,250c)内にあり、前記コンデンサは、前記変圧器の前記巻線の少なくとも1つの周りに巻装された導体材料の層(280,288、290)から形成された少なくとも1つのプレートを備えることを特徴とする、制御コンソール(50)。
[請求項2]
前記導体材料層は、前記整合電流源コンデンサ(2480)の第1のプレートとして機能し、
前記変圧器(250,250a,250b)の前記巻線の1つの一組の巻数分が、前記整合電流源コンデンサ(248)の第2のプレートとして機能するようになっている、
請求項1に記載の制御コンソール(50)。
[請求項3]
前記二次巻線(264)の一組の巻数分が、前記整合電流源コンデンサ(248)の前記第2のプレートとして機能するようになっている、請求項2に記載の制御コンソール(50)。
[請求項4]
複数の前記導体材料層(280,288,290)が、前記変圧器(250,250a,250b,250c)の前記巻線の周りに巻装されている、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項5]
少なくとも1つの導体材料層(280)は、前記整合電流源コンデンサ(248)のプレートとして機能し、
前記整合電流源のプレートとして機能する前記層(280)以外の少なくとも1つの導体材料層(290)は、前記変圧器二次巻線(264)の低側に接続され、シールドとして機能するようになっている、
請求項4に記載の制御コンソール(50)。
[請求項6]
少なくとも1つの導体材料層(280,288)の少なくとも1つは、前記整合電流源コンデンサ(248)の第1のプレートとして機能し、
前記整合電流源の前記第1のプレートとして機能する前記層以外の少なくとも1つの導体材料層(290)は、前記変圧器二次巻線(264)の低側に接続され、前記整合電流源コンデンサ(248)の前記コンデンサの第2のプレートとして機能するようになっている、
請求項3又は請求項4に記載の制御コンソール(50)。
[請求項7]
複数の前記導体材料層(280,288)は、互いに接続され、前記整合電流源コンデンサ(248)の単一プレートとして機能するようになっている、請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項8]
検知巻線(256)が、前記変圧器(250,250a,150b,250c)内に配置されている、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項9]
前記検知巻線は、前記一次巻線(252)と前記二次巻線(264)との間に位置している、請求項8に記載の制御コンソール(90)。
[請求項10]
前記漏れ制御巻線(246)は、前記検知巻線(256)の外方に位置し、前記二次巻線(264)は、前記漏れ制御巻線の外方に位置している、請求項8又は請求項9に記載の制御コンソール。
[請求項11]
前記漏れ制御巻線(246)は、前記一次巻線(252)の外方に位置している、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項12]
前記漏れ制御巻線(246)は、前記二次巻線(264)の外方に位置している、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,又は11のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項13]
前記一次巻線(252)は、DC電圧が印加される中心タップを有し、
前記一次巻線の両端は、前記AC電圧を前記一次巻線に生じさせるために、前記一次巻線の前記両端をグラウンドに選択的に繋ぐ回路(115)に接続されている、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項14]
前記漏れ制御巻線は、複数の副次的巻線(246a,246b,246c)から成っており、
一組のスイッチ(294,296,298)が、前記漏れ制御巻線の前記副次的巻線を選択的に一緒に接続し、前記一次巻線(252)に印加される所定の電圧に対して、前記漏れ制御巻線に生じる電圧を設定するようになっている、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項15]
前記整合電流源コンデンサ(248)の少なくとも1つのプレートを形成する前記導体材料層(280,288,290)は、前記変圧器(250,250a,250b,250c)の前記少なくとも巻線の周りに周方向に延在している、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項16]
前記制御コンソールは、超音波外科工具(310)の少なくとも1つのドライバ(324)への印加のための駆動信号を供給するように構成されている、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項17]
駆動信号を外科器具(310)の動力生成ユニット(324)に供給するための制御コンソール(50)であって、
AC電圧が印加される一次巻線(252)と、駆動信号が誘発される二次巻線(264)とを備える変圧器(250c)であって、前記駆動信号は、前記外科工具(310)の前記動力生成ユニット(324)に印加可能になっている、変圧器(250c)と、
前記一次巻線に印加された前記AC信号によって電圧を誘発する漏れ制御巻線(246a,246b,246c)と、前記漏れ制御巻線と前記変圧器二次巻線(265)との間に接続されたコンデンサ(248)とから成る整合電流源であって、寄生容量の結果として前記外科工具に印加された前記駆動信号内に存在する漏れ電流を少なくとも部分的に相殺する電流を生成するように設計されている、整合電流源と、
を備える制御コンソール(50)において、
前記漏れ制御巻線は、前記変圧器内にあり、複数の副次的巻線(246a,246b,246c)を備え、
スイッチアレイ(294)が、前記漏れ制御巻線を形成するために、前記副次的巻線の1つ又は複数を前記コンデンサ(248)とグラウンドとの間に選択的に接続するようになっており、これによって、前記変圧器一次巻線(252)に印加される所定の電圧に対して前記スイッチアレイを設定することによって、前記漏れ制御巻線に生じる前記電圧が選択的に設定されるようになっている
ことを特徴とする、制御コンソール(50)。
[請求項18]
前記整合電流源コンデンサ(248)は、前記変圧器(250c)内に組み込まれている、請求項17に記載の制御コンソール(50)。
[請求項19]
検知巻線(256)が、前記変圧器内に配置されている、請求項17又は請求項18に記載の制御コンソール(50)。
[請求項20]
前記検知巻線(256)は、前記一次巻線(252)と前記二次巻線(264)との間に位置している、請求項19に記載の制御コンソール(50)。
[請求項21]
前記漏れ制御巻線の前記副次的巻線(246a,246b,246c)は、前記検知巻線(256)の外方に位置し、前記二次巻線(264)は、前記漏れ制御巻線の外方に位置している、請求項19又は請求項20に記載の制御コンソール(50)。
[請求項22]
前記漏れ制御巻線の前記副次的巻線(246a,246b,246c)は、前記二次巻線の外方に位置している、請求項16ないし請求項21のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項23]
前記漏れ制御巻線は、3つの副次的巻線(246a,246b,246c)を含んでいる、請求項16ないし請求項22のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
[請求項24]
前記一次巻線(252)は、DC電圧が印加される中心タップを有し、
前記一次巻線の両端は、前記AC電圧を前記一次巻線に生じさせるために、前記一次巻線の前記両端をグラウンドに選択的に繋ぐ回路に接続されている、
請求項16ないし請求項23のいずれか一項に記載の制御コンソール。
[請求項25]
前記制御コンソールは、超音波外科工具(310)の少なくとも1つのドライバ(324)への印加のための駆動信号を供給するように構成されている、請求項16ないし請求項24のいずれか一項に記載の制御コンソール(50)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11