(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】化粧品用脂肪酸エチルエステル
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20220624BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220624BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20220624BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q17/04
A61Q1/02
A61Q19/00
A61K8/35
A61K8/49
(21)【出願番号】P 2019515852
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 KR2017009624
(87)【国際公開番号】W WO2018056608
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2016-0122416
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】イ・ユンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ・ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】パク・スンウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ・サンボム
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ソンジュン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/055196(WO,A1)
【文献】特表2019-533735(JP,A)
【文献】特表2002-537317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0031862(US,A1)
【文献】Cherry Blossom 5-in-1 Whitening CC Cream,ID 2125588 ,Mintel GNPD[online],2013年7月,[検索日2021.01.06],https://www.portal.mintel.com
【文献】Eye Shadow Palette,ID 2307307,Mintel GNPD[online],2014年2月,[検索日2021.01.06],https://www.portal.mintel.com
【文献】High Protection Sun Cream SPF 30,ID 2117378,Mintel GNPD[online],2013年7月,[検索日2021.01.06],https://www.portal.mintel.com
【文献】Cream Stick SPF 50+,ID 1893424 ,Mintel GNPD[online],2012年10月,[検索日2021.01.06],https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
C09K 23/00
B01J 13/00
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00- 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日焼け止め
及び色調顔料を可溶化するための、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む剤の使用であって、
前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルは、カプリル酸エチルエステル、カプリン酸エチルエステル、ラウリン酸エチルエステル、ミリスチン酸エチルエステル、パルミチン酸エチルエステルまたはこれらの混合物であり、
前記日焼け止めは、
ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びブチルメトキシジベンゾイルメタンからなる群から選択される有機日焼け止めであり、
前記色調顔料は、二酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄及び黒色酸化鉄からなる群から選択される1つ以上の色調顔料であり、
前記剤は、炭素数17以上の脂肪酸エチルエステルを含まない混合物である、使用。
【請求項2】
前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルは、植物性油脂及びリパーゼを接触させてエステル交換反応により生成された、請求項1に記載の剤の使用。
【請求項3】
前記植物性油脂は、パーム油(palm oil)、パーム核油(palm kernel oil)及びヤシ油(coconut oil)からなる群から選択される1以上の植物性油脂である、請求項2に記載の剤の使用。
【請求項4】
前記リパーゼは、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)由来のリパーゼまたはサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼである、請求項2に記載の剤の使用。
【請求項5】
化粧料組成物のための、
請求項1~
4のいずれかに記載の剤;及び
有機日焼け止めまたは色調顔料を含む組成物の使用。
【請求項6】
前記剤に対する前記日焼け止めまたは色調顔料の含有量は、それぞれ前記剤100重量部を基準として10~120重量部である、請求項
5に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤及びこれを含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品を剤形化するにおいて、化粧品を構成する有効な成分が溶媒によく混和され、他の成分と沈殿を形成しないように、別途の可溶化剤または分散剤などを添加剤として使用する。前記可溶化剤または分散剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、シリコン界面活性剤、ポリグルコシド、エチルベンゾエート、C12-15アルキルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、イソパラフィン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ノノキシノール-12などが一般的に使用されている。しかし、このような物質は、高温高圧の環境で製造され、又は化学的触媒と溶媒などを使用して製造される。例えば、大韓民国登録特許第10-1233939号(特許文献1)に開示されたように、高温(180℃以上)でメタンスルホン酸のような強酸触媒を使用して2-フェニルエチルアルコールと安息香酸を反応させることにより2-フェニルエチルベンゾエートを製造することができる。しかし、化学的反応により製造された触媒または溶媒が最終製品から完全に除去されず、残留物として残る場合、これらは問題を発生しうる。特に、皮膚に直接適用される化粧品内の前記化学物質の残留物は、深刻な皮膚の問題を発生しうる。このような問題点を解決するために、化粧品用原料としての機能は保持しながら、皮膚への刺激がなく、環境にやさしい方法で製造された物質が必要である。
【0003】
そこで、本出願人は、安全で環境にやさしい化粧料組成物について研究した結果、日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤または分散剤として適した脂肪酸エチルエステルを製造し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】大韓民国登録特許第10-1233939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の一つの目的は、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止め可溶化剤または色調顔料の可溶化剤を提供することにある。
【0006】
本出願の他の一つの目的は、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤;及び日焼け止めまたは色調顔料;を含む化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、安全で環境にやさしい化粧料組成物について研究した結果、日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤または分散剤として適した脂肪酸エチルエステルを製造し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本出願の炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルは、酸化安定性が高いだけでなく、日焼け止めまたは色調染料との混和性が良いため、日焼け止めまたは色調染料の可溶化剤として使用することができる。また、前記脂肪酸エチルエステルは、常温で液状として存在し、長時間保存しても変質されないため、多様な剤形の化粧料組成物に広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記目的を達成するための、本出願の一つの様態として炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止め可溶化剤または色調顔料の可溶化剤を提供する。
【0010】
本出願の他の一つの様態として炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤;及び日焼け止めまたは色調顔料;を含む化粧料組成物を提供する。
【0011】
以下、本出願を詳しく説明する。
【0012】
本出願は、特定の炭素数の飽和脂肪酸を含む脂肪酸エチルエステル、即ち、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルに関する。前記脂肪酸エチルエステルは、酸化安定性が高いだけでなく、日焼け止めまたは色調染料との混和性が良い。したがって、これを用いて化粧料組成物を製造する場合、多様な成分の溶解度を高めて目的とする剤形を具現することができる。また、前記脂肪酸エチルエステルは、多様な成分との混和性が良く、長時間保存後にも変質されないため、化粧料の成分として使用されるのに適する。
【0013】
本出願は、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止めまたは色調顔料の可溶化剤を提供する。
【0014】
前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルは、植物性油脂及びリパーゼを接触させてエステル交換反応により生成することができる。化学触媒を用いた反応によっても合成することができるが、これらに限定されない。より具体的には、化粧料に使用される日焼け止めや色調顔料に使用しようとする目的に符合するように、酵素的エステル交換反応を通じて生産することができる。
【0015】
前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルは、カプリル酸エチルエステル、カプリン酸エチルエステル、ラウリン酸エチルエステル、ミリスチン酸エチルエステル、パルミチン酸エチルエステルまたはこれらの混合物であってもよい。より具体的には、カプリル酸エチルエステル、カプリン酸エチルエステル、これらの混合物、またはパルミチン酸エチルエステルであってもよいが、これらに限定されない。
【0016】
前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを製造するために使用可能な、前記植物性油脂は、パーム油(palm oil)、パーム核油(palm kernel oil)及びヤシ油(coconut oil)からなる群から選択される1以上の植物性油脂であってもよい。
【0017】
または、前記植物性油脂を分画して1.3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセロール(1,3-dipalmitoyl-2-oleoylglycerol:POP)を含有する油脂分画を使用することができる。前記分画は、乾式分別(dry fractionation)または溶剤分別(solvent fractionation)を通じて行うことができるが、これに限定されず、当業界において公知となった植物性油脂原料から飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有量に差があるPOP含有油脂を提供する方法を制限なく使用することができる。例えば、使用する植物性油脂原料の特徴に応じて分別方法を選択的に用いることができる。溶剤分別の場合、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、エタノールなど、原料油脂を溶解させる有機溶媒を制限なく使用して行うことができる。本発明で使用してもよい植物性油脂は、パーム中部油、または1.3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセロール(1,3-dipalmitoyl-2-oleoylglycerol:POP)を35~70重量%含み、35~55のヨウ素価を有する油脂であってもよい。
【0018】
具体的には、前記リパーゼは、当業界で使用される任意のsn-1,3の位置に特異性を有する酵素であってもよく、その非限定的な例は、リゾプス・デレマ(Rhizopus delemar)、リゾムコール・ミエヘイ(RhizoMucor miehei)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus miger)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ムコール・ヤバニカス(Mucor javanicus)、リゾプス・ジャバニクス(Rhizopus javenicus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oxyzae)及びサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼを含むことができる。具体的には、リゾプス・デレマ、ムコール・ミエヘイまたはサーモミセス・ラヌギノサス由来のリパーゼであってもよいが、これらに限定されない。
【0019】
本出願において、前記日焼け止めは、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine)またはブチルメトキシジベンゾイルメタン(Butyl Methoxydibenzoylmethane)であってもよい。
【0020】
前記ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、油溶性化合物であり、UVA線はもちろん、UVBを吸収する広いスペクトルの紫外線吸収剤である。欧州では、UVフィルターとして承認され、太陽から皮膚を保護するために考案された日焼け止め製品の有効成分として使用されている。一方、欧州において日焼け止め製品は、化粧品として扱われるが、米国では、日焼け止め製品は一般用医薬品に区分され、FDAの承認を受けた物質を有効成分として使用することができるが、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、まだ米国FDAの承認を受けていないので、日焼け止め製品には使用されないものの、化粧品や個人の美容及び衛生用品には、紫外線吸収剤として使用されている。
【0021】
前記ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、アボベンゾン(Avobenzone)とも呼ばれており、UVA線のスペクトル全体を吸収するために日焼け止め製品に使用される油溶性成分である。これは、欧州と米国のFDAで承認された物質であり、世界的に使用されているが、溶媒の性質に敏感で、極性プロトン性溶媒には安定であるが、非極性環境で不安定である。紫外線吸収により分解されるため、光安定化剤と共に使用することができる。共に使用可能な光安定剤の非制限的な例は、オクトクリレン、4-メチルベンジリデンTEMPO、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、サリチル酸ブチルオクチル、ヘキサデシルベンゾエート、ブチルオクチルベンゾエート、ウンデシルクリレンジメチコン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ジエチルヘキシル2,6-ナフタレート、ポリエステル-8、ポリシリコン-15、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン、エチルヘキシルメトキシクリレンを含む。またはシクロデキストリンと共に使用して光安定性を向上させることができるが、これらに限定されない。
【0022】
本出願において、前記色調顔料は、化粧品に色調を与えるために添加される顔料を主成分とする物質であり、化粧料組成物に添加され、目的とする色相を具現できる発色団を含む有機物または無機物であってもよい。具体的には、二酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄及び黒色酸化鉄からなる群から選択される1以上であってもよいが、これらに限定されず、当業界において公知となった化粧料用色調顔料を含むことができる。
【0023】
前記二酸化チタンは、ペイントから日焼け止め、飲食物まで染料として広く使用される物質である。前記黄色酸化鉄は、FeO(OH)・H2Oの化学式で表される一水和物の形態の鉄酸化物水酸化物であり、Fe(OH)3とも表示され、水和された鉄酸化物とも呼ばれる。FDA承認された物質として化粧料とタトゥーインクに使用されている。
【0024】
前記赤色酸化鉄は、Fe2O3の化学式で表される3価鉄酸化物であり、「Pigment Brown 6」、「Pigment Brown 7」及び「Pigment Red 101」に含まれており、FDA承認された物質として化粧料に使用されている。
【0025】
前記黒色酸化鉄は2価と3価鉄が共存する鉄酸化物であり、Fe3O4の化学式で表され、FeO・Fe2O3で表されることもある。C.I pigment black 11と知られる黒色染料である。
【0026】
また、本出願は、炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止め分散剤または色調顔料分散剤を提供することができる。
【0027】
本出願における用語「分散剤」とは、固体粒子を水に均一に分散させる物質を通称することができる。
【0028】
さらに、本出願に係る前記可溶化剤を含む化粧料組成物、または前記分散剤を含む化粧料組成物が提供される。
【0029】
さらに、本出願に係る前記炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む日焼け止め可溶化剤または色調顔料の可溶化剤;及び日焼け止めまたは色調顔料;を含む化粧料組成物が提供される。
【0030】
前記可溶化剤に対する前記日焼け止めまたは色調顔料の含有量は、それぞれ、前記可溶化剤100重量部を基準として10~120重量部であってもよい。
【0031】
前記化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、顔パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、リップバーム、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、日焼け止めクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーで構成された群から選択される剤形で製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、本出願の化粧料組成物は、一般的な皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上さらに含むことができ、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合することができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
または本出願の化粧料組成物に抗酸化効果、しわ改善効果、老化防止効果及び/または日焼け止め効果を有する成分をさらに含み、機能性化粧品に剤形化することができる。前記抗酸化効果、しわ改善効果、老化防止効果及び/または日焼け止め効果を有する成分としては、当業界において公知となった機能性化粧品に使用される有効成分を制限なく使用することができる。
【0034】
本出願の炭素数6~16の飽和脂肪酸エチルエステルを含む可溶化剤または分散剤は、これを前記の目的で添加し、化粧品に製造時に他の原料との混和性に優れ、従来と同じ目的で化粧料に使用された物質と比較し、同等以上の酸化安定性及び物性を有するため、化粧料に剤形化することが可能である。
【0035】
より具体的には、カプリル酸エチルエステル、カプリン酸エチルエステル及びパルミチン酸エチルエステルからなる群から選択される1種以上の脂肪酸エチルエステル; 及び日焼け止めまたは色調顔料;を含む化粧料組成物を提供することができる。前記脂肪酸エチルエステルに対する前記日焼け止めまたは色調顔料の含有量は、それぞれ、前記脂肪酸エチルエステル100重量部を基準として10~120重量部、15~110重量部、20~100重量部、25~90重量部、30~80重量部、35~70重量部、または40~60重量部であってもよい。より具体的な前記日焼け止めまたは前記色調顔料は、前述した内容を参考にすることができる。
【0036】
以下、実施例を挙げて本出願をより詳しく説明する。これら実施例は、本出願をより具体的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれら実施例により限定されるものではない。
【0037】
製造例1:酵素的エステル交換反応による脂肪酸エチルエステルの製造
トリグリセリド、即ち、パルミチン酸の含有量が高いパーム分画物であるパーム中部油(palm mid fraction; PMF)とステアリン酸エチルエステルを1:2のモル比(molar ratio)で、合計が1Lになるように混合した。この時に使用したパーム中部油はPOP55%、ヨウ素価40であり、具体的な製造方法は、下記の通りである:
【0038】
パーム油1kgを60℃で完全に溶解させた後、アセトン(acetone)10kgと混合して封じた後、攪拌して油脂がアセトンに完全に溶解されるようにした。前記混合液を0℃で3時間30rpmで攪拌して結晶化し、これを減圧濾過して固体状であるパームステアリン(palm stearin)と液体状であるパームオレイン(palm olein)に分離した。そのとき、パームオレインの収率は60%以上であり、ヨウ素価(iodine value)60以下の特性を示した。前記分別を通じて得た、アセトンを除去しないパームステアリンを40℃で完全に溶解させた。その後、さらにアセトンを添加して30℃で30rpmで攪拌して結晶化し、これを減圧濾過して結晶化された画分とパーム中部油(palm mid fraction; PMF)に分離した。このとき、パーム中部油の収率は30%以上であり、POP含有量55%、ヨウ素価40の特性を示した。
【0039】
前記混合物を位置特異性リパーゼ(Mucor miehei由来)酵素50gと共に二重ジャケット2Lの反応器に混合し、50℃で6時間反応させた。反応過程中、リパーゼによりパーム中部油に結合しているパルミチン酸と原料として使用したステアリン酸エチルエステルが交換されながら、パルミチン酸エチルエステルが生成された。反応が完了した混合物からトリグリセリドを分離するために蒸留を実施した。4段蒸留塔で真空度2mbar、塔下部の温度235℃、及び還流比1の条件で蒸留してトリグリセリドを除去して脂肪酸エチルエステルを得た。パルミチン酸エチルエステルの純度を向上させるために追加の蒸留を実施した。具体的には22段の蒸留塔で真空度2mbar、塔下部の温度235℃、及び還流比3の条件で蒸留して純度98%以上のパルミチン酸エチルエステル(実施例2)を得た。
【0040】
脂肪酸エチルエステルの安定性及び可溶または分散効果を比較するために、前記と類似の方法でカプリル酸/カプリン酸エチルエステル(実施例1)及びステアリン酸エチルエステル(比較例1)及びオレイン酸エチルエステル(比較例2)を製造した。比較例3及び4では、汎用的に使用される脂肪酸エチルエステルの複合物とC12-15アルキルベンゾエートを使用した。これら試料の主成分を下記表1に示した。
【0041】
【0042】
実験例1:有機日焼け止めの溶解度比較評価
前記実施例1及び2、比較例1~4をそれぞれ可溶化剤として使用し、有機日焼け止めであるビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンジンとブチルメトキシベンゾイルメタンを25%の濃度で70℃の加温条件で10分間溶解させた。これらの安定度を評価するために、25℃の恒温器で1週間放置しながら1日、3日及び7日に析出有無を肉眼で確認し、その結果を下記表2及び表3にそれぞれ示した。
【0043】
【0044】
前記表2は、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを、それぞれの可溶化剤に25%の濃度で溶解させた場合、安定度を評価して示したものである。
【0045】
【0046】
前記表3は、ブチルメトキシベンゾイルメタンをそれぞれの可溶化剤に25%の濃度で溶解させた場合、安定度を評価して示したものである。
【0047】
前記表2及び表3に示すように、実施例1及び実施例2を可溶化剤として使用した場合、一週間、安定的に有機日焼け止めを溶解した。一方、不飽和脂肪酸エチルエステルを多量に含む比較例3またはアルキルベンゾエートを含む比較例4を可溶化剤として使用する場合、3日または7日後に、有機日焼け止めが析出された。一方、比較例1のC18のステアリン酸エチルエステルは、25℃でそれ自体で固体状態で存在するところ、有効成分の析出有無を判断することができなかった。即ち、実施例1及び実施例2の脂肪酸エチルエステルは、有機日焼け止めの可溶化剤として非常に適しているという点を確認することができた。
【0048】
実験例2:脂肪酸エチルエステルの酸化安定性
前記製造例1に基づいて酵素によるエステル交換反応を通じて製造した脂肪酸エチルエステルの酸化安定性を確認し、その結果を下記の表4に示した。酸化安定性は、AOCS Cd 12b-92試験方法に基づいて分析した。
【0049】
当該酸化安定性試験の方法は、油脂の酸化安定性を測定する試験方法である。
【0050】
【0051】
前記表4に示すように、飽和脂肪酸エチルエステル(実施例1、実施例2及び比較例1)は、不飽和脂肪酸エチルエステル(比較例2及び比較例3)に比べて優れた酸化安定性を示すことを確認した。比較例3の場合、飽和脂肪酸をある程度含有しているが、高い不飽和脂肪酸の含有量により、酸化安定性が著しく低下したものと考えられる。
【0052】
実験例3:日焼け止め剤形の評価
前記製造例1により製造された実施例1及び2、比較例3及び4を用いて日焼け止め組成物を製造し、各組成物の構成成分及び含有量は下記表5及び6に示した。前記実験例1及び2を参照すれば、比較例1及び2は、化粧品原料として使用するには無理があると判断し、実験例3ではこれらを除外した。
【0053】
【0054】
【0055】
各組成物の安定度を評価するため、それぞれ室温(約25℃)と45℃で30日間放置した後、性状の比較評価及び安定度を肉眼で確認し、その結果を下記表7に示した。変化が観察されていない場合を×と表示した。
【0056】
【0057】
前記表7に示すように、実施例1または実施例2を含む日焼け止めは、30日まで常温や高温にさらされても変色、変臭及び相分離など、いかなる物理的、化学的変化もなく安定したことを確認することができた。これは、有効成分の溶解を促進するための添加剤であり、本出願の脂肪酸エチルエステルを添加しても、他の化粧料組成物とよく混合され、剤形の品質に変化を起こさないだけでなく、高温で長時間保存しても安定性に優れるため、化粧料組成物として使用するのに適することを示すものである。
【0058】
実験例4:ファンデーション剤形の評価
下記表8に記載された成分と含有量でファンデーションを製造した。
【0059】
【0060】
30人の20歳~40歳の女性と男性で構成された評価団を対象に前記組成で製造したファンデーションを1週間使用させた後、使用した結果を比較評価した。評価項目は、伸びのよさ、密着感、持続性、塗り心地及び色相の表現で構成した。評価基準は、1(非常に不満)~10(非常に満足)を基準とし、各評価項目による官能評価の結果をまとめて下記表9に示した。
【0061】
【0062】
前記表9に示すように、本出願による実施例1及び実施例2の脂肪酸エチルエステルが含有されたファンデーションは、比較例のファンデーションに比べて評価項目の全体で優れると評価され、特に伸びのよさと色相の表現に優れていることを確認した。