(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】先進高強度鋼板にクリンチナットを固定するための装置及び方法並びに結果アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B29C 65/56 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
B29C65/56
(21)【出願番号】P 2019543302
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(86)【国際出願番号】 US2018020654
(87)【国際公開番号】W WO2018160959
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519286865
【氏名又は名称】ユーティカ エンタープライジズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】サヴォイ マーク エー
(72)【発明者】
【氏名】モーガン フィリップ ジェイ アイ
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092224(JP,A)
【文献】米国特許第06446478(US,B1)
【文献】米国特許第03213914(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0315109(US,A1)
【文献】特表2010-525174(JP,A)
【文献】特開2012-112402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AHSSシートにクリンチナットを固定する装置であって、
前記AHSSシートが隣接配置される接合機構を具備し、
前記接合機構が、ベースと、前記AHSSシートに対して平行に動くように前記ベースに設けられた割り出し部材とを備え、
前記割り出し部材が、前記AHSSシートと平行な方向に沿って互いに離間して設けられた加熱開口部及びクリンチダイスを有し、
前記加熱開口部が前記AHSSシートの作業部位に位置する加熱位置と、前記クリンチダイスが前記AHSSシートの前記作業部位に位置する接合位置との間で、前記割り出し部材を移動させるアクチュエータと、
前記加熱位置にある前記割り出し部材の前記加熱開口部を通過するレーザビームを射出して、前記AHSSシートの前記作業部位を加熱するレーザ機構と、
各々がネジ穴を有する複数のクリンチナットが供給されるものであり、ねじ付き締結具が前記AHSSシートに取り付けられるようにするべく、前記割り出し部材が前記接合位置にあるときに前記クリンチダイスと位置合わせされて、前記AHSSシートにおける加熱された前記作業部位にクリンチナットを取り付けるナットラムと、
前記接合機構及び前記ナットラムを操作するように構成されたコントローラとをさらに具備する、装置。
【請求項2】
前記接合機構は、前記ベースによって部分的に画定された遮光室を画定する筐体を備え、前記レーザ機構が、前記筐体から、前記ベースの開口を経て前記割り出し部材の前記加熱開口部を通過する前記レーザビームを射出して、前記割り出し部材が前記加熱位置にある間に前記AHSSシートの前記作業部位を加熱し、
前記接合機構は、前記割り出し部材が前記加熱位置にあるときに、前記AHSSシートが前記加熱開口部の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触する場合にのみ、前記レーザ機構の動作を可能するように前記コントローラにより操作される検出機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出機構は、
前記遮光室に加圧ガスを供給するための加圧ガスのソースと、
前記遮光室を通る前記ソースからのガス流を検出して、前記AHSSシートが、前記加熱開口部の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触しているかどうかを検出するためのセンサとを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記AHSSシートに取り付けるためのピアスクリンチナットが、前記ナットラムに供給される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アクチュエータにより、前記加熱位置と前記接合位置との間で直線運動するように、前記割り出し部材を前記ベースに取り付ける摺動路、又は、前記アクチュエータにより、前記加熱位置と前記接合位置との間で回転運動するように、前記割り出し部材を前記ベースに取り付ける回転連結部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記作業部位における前記AHSSシートの温度を検知する温度センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
互いに間隔を置いて配置されるとともに、前記コントローラによって操作される複数の前記接合機構と、
前記コントローラによって操作される平行運動機械(PKM)とを備え、
前記PKMは、
第1の支持体と、
前記第1の支持体から互いに近づくように延設された伸縮可能な3つの支柱を有する三脚と、
前記3つの支柱により前記第1の支持体から離間して設けられ、前記AHSSシートへのクリンチナットの取り付けをするために、前記コントローラの操作の下で、前記クリンチダイスと位置合わせされる前記ナットラムが取り付けられた第2の支持体と、
互いに直交する水平方向に移動しながら、前記接合機構と協働して、異なる位置で前記AHSSシートにクリンチナットを取り付けるようにPKMを取り付ける直交レールとを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
フロアと、前記フロアの上に離間して設けられた上部梁を有する枠体とを備え、
前記接合機構及び前記ナットラムが、前記フロアと前記枠体の前記上部梁との間に配置されるとともに操作される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記接合機構は、前記AHSSシートの下方において前記フロアに支持されており、
前記ナットラムは、前記AHSSシートの上方において前記枠体の前記上部梁により支持されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
互いに離間して前記フロアに設けられるとともに、前記コントローラにより操作される複数の前記接合機構と、
複数の前記ナットラムが設けられて、前記コントローラの操作の下で、前記複数の接合機構と協働して、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを同時に取り付けるナットラム機構とを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
一端部が、前記接合機構を支持するとともに、他端部が、前記コントローラの操作の下で前記クリンチダイスと協働して前記クリンチナットを前記AHSSシートに取り付ける前記ナットラムを支持するCフレームと、
前記コントローラの操作の下で前記Cフレームを移動させて、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを取り付けるロボットとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
AHSSシートにクリンチナットを固定する方法であって、
前記AHSSシートに対して平行に移動可能であり、前記AHSSシートと平行な方向に沿って互いに離間して設けられた加熱開口部及びクリンチダイスを有する割り出し部材を備えた接合機構に前記AHSSシートを隣接配置するステップと、
加熱位置にある割り出し部材の加熱開口を通してレーザビームを射出して、前記AHSSシートの作業部位を加熱するステップと、
前記AHSSシートの前記作業部位に前記クリンチダイスが位置合わせされる接合位置に、前記割り出し部材を、前記AHSSシートに対して平行に移動させるステップと、
各々がねじ穴を有する複数のクリンチナットが供給され、ねじ付き締結具が前記AHSSシートに取り付けられるようにするべく、前記割り出し部材が前記接合位置にあるときに前記クリンチダイスと位置合わせされて、前記AHSSシートにおける加熱された前記作業部位にクリンチナットを取り付けるナットラムを、コントローラを使用して操作するステップとを備える、方法。
【請求項13】
前記レーザビームは、遮光室から、前記遮光室内の開口部を経て前記割り出し部材の前記加熱開口部を通過して射出され、前記割り出し部材が前記加熱位置にある間に前記AHSSシートの前記作業部位を加熱し、
前記レーザビームの射出は、前記AHSSシートが、前記割り出し部材の前記加熱開口部を、当該加熱開口部の周囲において光に対して安全に閉じていることが検出された場合にのみ、前記コントローラによって許可される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記遮光室を通る加圧ガスの流れが検知され、前記AHSSシートが、前記加熱開口部の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触しているかどうかを検出して、前記コントローラによる前記レーザビームの動作を制御する、請求項1
3に記載の方法。
【請求項15】
ピアスクリンチナットが前記ナットラムに供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記割り出し部材は、前記加熱位置と前記接合位置との間で直線的に移動されるか、又は、前記加熱位置と前記接合位置との間で回転可能に移動される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記AHSSシートの上方又は下方から、前記作業部位における前記AHSSシートの温度が検知される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記コントローラが、互いに離間した複数の接合機構を操作し、前記コントローラが、平行運動機械(PKM)を操作し、
前記PKMが、
第1の支持体と、
前記第1の支持体から互いに近づくように延設された伸縮可能な3つの支柱を有する三脚と、
前記3つの支柱により前記第1の支持体から離間して設けられ、前記AHSSシートへのクリンチナットの取り付けをするために、前記コントローラの操作の下で、前記クリンチダイスと位置合わせされる前記ナットラムが取り付けられた第2の支持体と、
前記コントローラの操作の下で、互いに直交する水平方向に移動しながら、前記接合機構と協働して、異なる位置で前記AHSSシートにクリンチナットを取り付けるようにPKMを取り付ける直交レールとを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記接合機構及び前記ナットラムは、フロアと、前記フロアに設けられた枠体の上部梁との間で動作する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記接合機構は、前記AHSSシートの下方で動作し、前記ナットラムは、前記AHSSシートの上方で動作する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記コントローラが、互いに離間して前記フロアに設けれた複数の前記接合機構を操作し、
ナットラム機構が、複数の前記ナットラムを備え、コントローラの操作の下で、前記複数の接合機構と協働して、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを同時に取り付ける、請求項1
9に記載の方法。
【請求項22】
Cフレームの一端部が、前記接合機構を支持し、前記Cフレームの他端部が、前記コントローラの操作の下で前記クリンチダイスと協働して前記クリンチナットを前記AHSSシートに取り付ける前記ナットラムを支持し、
ロボットが、前記コントローラの操作の下で前記Cフレームを移動させて、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを取り付ける、請求項12に記載のAHSSシートにクリンチナットを固定する方法。
【請求項23】
AHSSシートと、加熱された作業部位において前記AHSSシートを貫通する穴に、クリンチインターロックによ
り取り付けられたピアスクリンチナットとを備え
、
前記ピアスクリンチナットの穿孔型が、前記穴を貫通しており、
前記ピアスクリンチナットのアンダーカット内に前記AHSSシートの加熱された作業部位が流れ込むことにより、前記クリンチインターロックが形成されている、アセンブリ。
【請求項24】
少なくとも700メガパスカルの引張強度を有する、請求項23に記載のアセンブリ。
【請求項25】
少なくとも0.7ミリメートルの厚さを有する、請求項24に記載のアセンブリ。
【請求項26】
0.7ミリメートル以上2ミリメートル以下の厚さを有する、請求項24に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月3日に出願された米国仮出願第62/466,489号の利益を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、クリンチナットを先進高強度鋼板に固定するための装置及び方法に関し、また、先進高強度鋼板の結果アセンブリ及びピアスクリンチナットの取付けに関する。
【背景技術】
【0003】
Durandらの米国特許第8,234,770号に開示されているように、従来、アルミニウム及び/又はマグネシウムの部品を、セルフピアスリベットを用いて予熱しながら機械的に接合するために、レーザが使用されている。
【0004】
金属接合プロセスにおける加熱のためのレーザの使用は、強力なレーザビームからの散乱放射線が作業者にダメージを与えないように、光に対して安全(ライトセイフ)な方法で行われなければならない。従来、このようなプロセスは、使用中に作業者がアクセスできない安全性が確保されたプロセスステーションで行われており、作業者がレーザビームにさらされることはない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、先進高強度鋼板(以下、AHSSとも呼ぶ)にクリンチナットを固定するための改良装置を提供することである。
【0006】
上記目的を実行するべく、前記装置は、AHSSシートが隣接配置され、ベースと、前記AHSSシートに対して平行に動くように前記ベースに設けられた割り出し部材とを備えた接合機構を具備し、前記割り出し部材は、前記AHSSシートと平行な方向に沿って互いに離間して設けられた加熱開口部及びクリンチダイスを有する。アクチュエータは、前記加熱開口部が前記AHSSシートの作業部位に位置する加熱位置と、前記クリンチダイスが前記AHSSシートの前記作業部位に位置する前記接合位置との間で、前記割り出し部材を移動させる。レーザ機構は、前記加熱位置にある前記割り出し部材の前記加熱開口部を通過するレーザビームを射出して、前記AHSSシートの前記作業部位を加熱する。この装置はまた、各々がねじ穴を有する複数のクリンチナットが供給されるナットラムを備え、このナットラムは、前記割り出し部材が接合位置にあるときに前記クリンチダイスと位置合わせされて、ねじ付き締結具を前記AHSSシートに取り付けられるようにするべく、前記AHSSシートにおける加熱された前記作業部位に前記クリンチナットを取り付ける。この装置のコントローラは、前記接合機構及び前記ナットラムを操作するように構成されている。
【0007】
開示されるように、前記接合機構は、内部にレーザ機構が配置されるとともに、遮光室を画定する筐体を備える。前記レーザ機構は、前記筐体のベースの開口を経て前記割り出し部材の前記加熱開口部を通過する前記レーザビームを射出し、前記割り出し部材が前記加熱位置にある間に前記AHSSシートの前記作業部位を加熱する。装置の検出機構は、前記割り出し部材が前記加熱位置にあるときに、前記AHSSシートが前記加熱開口部の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触しているときにのみ、前記レーザ機構の動作を可能にするように前記コントローラにより操作される。前記検出機構は、加圧ガスを前記遮光室に供給するための加圧ガスのソースを備え、さらに前記遮光室を通る前記ソースからのガスの流れを検出して、前記AHSSシートが、その加熱開口の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触しているかどうかを検出するためのセンサを有している。
【0008】
前記装置は、AHSSシートに取り付けられるピアスクリンチナットを前記ナットラムに供給することができる。
【0009】
開示される接合機構は、前記アクチュエータにより、前記加熱位置と前記接合位置との間で直線運動するように、前記割り出し部材を前記ベースに取り付ける摺動路、又は、前記アクチュエータにより、前記加熱位置と前記接合位置との間で回転運動するように、前記割り出し部材を前記ベースに取り付ける回転連結部のいずれかを備えていてもよい。
【0010】
前記装置はまた、前記AHSSシートの上方又は下方から、前記作業部位における前記AHSSシートの温度を検知するための温度センサを開示する。
【0011】
装置の一実施形態は、互いに離間され、コントローラによって操作される複数の前記接合機構と、コントローラによって操作される平行運動機械(PKM)とを備え、前記PKMは、第1の支持部と、前記第1の支持体から互いに近づくように延設された伸縮可能な3つの支柱を有する三脚と、前記3つの支柱により前記第1の支持体から離間して設けられ、前記AHSSシートへのクリンチナットの取り付けをするために、前記コントローラの操作の下で、前記クリンチダイスと位置合わせされる前記ナットラムが取り付けられた第2の支持体と、互いに直交する水平方向に移動しながら、前記接合機構と協働して、異なる位置で前記AHSSシートにクリンチナットを取り付けるようにPKMを取り付ける直交レールとを有する。
【0012】
本装置の別の実施形態は、フロアと、前記フロアの上方に離間して設けられた上部梁を有する枠体とを備え、前記接合機構及び前記ナットラムが、前記床と前記枠体の前記上部梁との間に配置されるとともに操作される。開示されるように、前記接合機構の実施形態は、前記AHSSシートの下方において前記フロアに支持されており、前記ナットラムは、前記AHSSシートの上方において前記枠体の前記上部梁により支持されている。この実施形態はまた、互いに離間して前記フロアに設けられるとともに、前記コントローラにより操作される複数の前記接合機構と、前記複数のナットラムが設けられて、前記コントローラの動作の下で、前記複数の接合機構と協働して、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを取り付けるナットラム機構とを備えることができる。
【0013】
装置のさらなる実施形態は、一端部が、前記接合機構を支持するとともに、他端部が、前記コントローラの操作の下で前記クリンチダイスと協働して前記クリンチナットを前記AHSSシートに取り付ける前記ナットラムを支持するCフレームと、前記コントローラの操作の下で前記Cフレームを移動させて、前記AHSSシートの異なる位置に同時に前記クリンチナットの取り付けるロボットとを含む。
【0014】
本発明の別の目的は、クリンチナットをAHSSシートに固定するための改良された方法を提供することである。
【0015】
上記目的を果たすうえで、この方法は、AHSSシートに対して平行に移動可能であり、前記AHSSシートと平行な方向に沿って互いに離間して設けられた加熱開口部及びクリンチダイスを有する割り出し部材を備えた接合機構に前記AHSSシートを隣接配置することにより実行される。レーザビームは、前記加熱位置にある前記割り出し部材の加熱開口を通して射出され、前記AHSSシートの作業部位を加熱し、前記割り出し部材は、前記AHSSシートの前記作業部位に前記クリンチダイスが位置合わせされる接合位置に、前記AHSSシートに対して平行に移動される。コントローラは、各々がねじ付き開口を有する複数のクリンチナットが供給され、前記割出し部材が前記接合位置にあるときに前記クリンチダイスと協働して、ねじ付き締結具を前記AHSSシートに取り付けられるように、前記AHSSシートの前記作業部位にクリンチナットを取り付けるナットラムを操作する。
【0016】
開示されているように、レーザビームは、遮光室から、前記遮光室内の開口部を経て前記割り出し部材の加熱開口部を通過して射出され、前記割り出し部材が前記加熱位置にある間に前記AHSSシートの前記作業部位を加熱する。前記レーザビームの射出は、前記AHSSシートが、前記割り出し部材の前記加熱開口部を、当該加熱開口部の周囲において光に対して安全に閉じていることが検出された場合にのみ、前記コントローラによって許可される。
【0017】
開示された方法は、前記遮光室を通る加圧ガスの流れを検知して、前記AHSSシートが、前記加熱開口部の周囲において前記割り出し部材と光に対して安全に接触しているかどうかを検出して、前記コントローラによる前記レーザビームの動作を制御し、ピアスクリンチナットが前記ナットラムに供給される。
【0018】
1つの動作モードでは、前記割り出し部材が前記加熱位置と前記接合位置との間で直線的に移動され、別の動作モードでは、前記割り出し部材が前記加熱位置と前記接合位置との間で回転可能に移動される。
【0019】
この方法はまた、前記AHSSシートの上方又は下方から、前記作業部位におけるAHSSシートの温度を感知するものとして開示されている。
【0020】
本方法の1つの実施では、前記コントローラが、互いに離間した複数の接合機構を操作するとともに、平行運動機械(PKM)を操作し、各接合機構は、第1の支持体と、前記第1の支持体から互いに近づくように延設された伸縮可能な3つの支柱と、前記3つの支柱により前記第1の支持体から離間して設けられ、前記AHSSシートへのクリンチナットの取り付けをするために、前記コントローラの動作の下で、前記クリンチダイスと位置合わせされる前記ナットラムが取り付けられた第2の支持体と、前記コントローラの動作の下で、互いに直交する水平方向に移動しながら、前記接合機構と協働して、異なる位置で前記AHSSシートにクリンチナットを取り付けるようにPKMを取り付ける直交レールとを有する。
【0021】
本方法の別の実施では、前記接合機構及び前記ナットラムが、フロアと、前記フロアに設けられた枠体の上部梁との間で動作する。この方法の実施態様は、前記AHSSシートの下方で操作される前記接合機構と、前記AHSSシートの上方で操作される前記ナットラムとを用いて開示される。また、この方法の実施態様は、互いに離間して前記フロアに設けられた複数の前記接合機構を利用することができ、前記ナットラム機構は、複数の前記ナットラムを備え、前記コントローラの操作の下で、前記コントローラと協働して、前記AHSSシートの異なる位置に同時にクリンチナットを取り付ける。
【0022】
本方法のさらなる実施では、Cフレームの一端部が、前記接合機構を支持し、前記Cフレームの他端部が、前記コントローラの操作の下で前記クリンチダイスと協働して前記クリンチナットの前記AHSSシートへの取り付ける前記ナットラムを支持し、ロボットが、コントローラの操作の下で前記Cフレームを移動させて、前記AHSSシートの異なる位置にクリンチナットを取り付ける。
【0023】
本発明のさらなる目的はAHSSのシートと、前記AHSSシートを貫通する穴に、クリンチインターロックによる取付方で取り付けられたピアスクリンチナットとを備えるアセンブリを提供することであり、その結果、ねじ穴は、別の構成要素をAHSSシートに取り付けるためのねじ付き締結具を受け入れることができる。
【0024】
本発明の目的、特徴、及び利点は、参照された図面に関連してなされる好ましい実施形態の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の目的、特徴、及び利点は、参照された図面に関連してなされる好ましい実施形態の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】クリンチナットをAHSSのシートに取り付けるための方法を実施するために、本発明に従って構成された装置の一実施形態の概略的な立面図である。
【
図2】クリンチナットをAHSSシートに取り付けるための本発明の方法を実施するように構成された装置の別の実施形態の概略的な立面図である。
【
図3】クリンチナットをAHSSシートに取り付けるための方法を実施するために、本発明に従って構成された装置のさらなる実施形態の概略的な立面図である。
【
図4】本発明によるAHSSシートに接続されたピアスクリンチナットのアセンブリの断面図である。
【
図5】AHSSシートの作業部位を加熱するために、加熱位置にある割り出し部材の加熱開口部を通してレーザビームを射出するためのレーザ機構を備え、装置の一実施形態の接合機構を通る断面図である。
【
図6】割出し部材がアクチュエータによって加熱位置からクリンチダイスが配置される接合位置まで移動された後の、
図5と同様の部分図である。
【
図7】アクチュエータの動作及び割り出し部材の移動によって、その加熱位置と接合位置との間を直線的に移動する割り出し部材を示すために、
図5の線7-7の方向に沿った平面図である。
【
図8】アクチュエータの動作及び割り出し部材の移動によって、その加熱位置と接合位置との間を直線的に移動する割り出し部材を示すために、
図6の線8-8の方向に沿った平面図である。
【
図9】
図7と同様の別の実施形態の平面図であるが、概略的に示されたアクチュエータによってその加熱位置と接合位置との間で回転可能に移動される割り出し部材を有する。
【
図10】
図8と同様の別の実施形態の平面図であるが、概略的に示されたアクチュエータによってその加熱位置と接合位置との間で回転可能に移動される割り出し部材を有する。
【
図11】
図3に示す装置の実施例の拡大部分図である。
【
図12】
図11の線12-12の方向に沿った平面図であり、
図9の概略図に対応する加熱位置にある割り出し部材を示す。
【
図13】
図11に示す装置の一部の拡大図であり、その接合機構を示す。
【
図15】ピアスクリンチナットなしで示される装置のナットラムの斜視図である。
【
図16】装置のナットラムの斜視図であり、ピアスクリンチナットを支持する状態が示されている。
【
図17】割り出し部材のクリンチダイスと協働してAHSSシートに穴を開け、固定する準備としてクリンチナットを支持するナットラムの断面斜視図である。
【
図18】穿孔及びクリンチング動作のさらなる段階における、
図17と同様の斜視図である。
【
図19】穿孔及びクリンチングが完了した後の
図18と同様の斜視図である。
【
図20】装置のコントローラを使用して実行される動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態及び最新の態様が本明細書に開示されるが、開示される実施形態及び動作態様は、種々の代替される形態及び態様で実施され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張又は最小化され得る。したがって、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、定として解釈されるべきではなく、単に、本発明を様々に使用するように当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0028】
図1、
図2、及び
図3を参照すると、本発明に従って構成された装置20の3つの異なる実施形態が、本発明の方法を提供するために示されており、この方法は、ピアスクリンチナット24のアセンブリ(組み立て品)22を提供する。ピアスクリンチナット24は、延出する穿孔型132と、これを貫通するねじ穴25とを有し、
図4示すように、後述するAHSS26のシートにクリンチインターロックにより固定さる。本発明の装置及び方法の両方とも、本発明の異なる態様の理解を容易にするために、統合して説明される。また、AHSSシート26は、少なくとも700メガパスカル以上の引張強度を有する。このようなAHSSは、ピラー及びルーフヘッダのような構造部品である車両のホワイトボディのアセンブリに使用されるのに特に有用である。これにより、これらの車両構造部品は、比較的薄い寸法を有することができ、従って車両のエネルギー効率を向上させるとともに、乗員の安全性を向上させる軽量構造を有することができる。極端な硬度や伸びの欠如、すなわち約9パーセント未満であると、一般にAHSSシートは、従来の機械的な接合方法を用いては加工できない。
【0029】
図1~
図3に示される装置20の実施形態は、各々、光に対して安全な作業ステーション28内にあるものとして開示される。光に対して安全な作業ステーション28は、人間のアクセスが阻止されない限り、関連するレーザ加熱の動作が実行され得ないように制御され得る。しかしながら、作業ステーション28は、以下にさらに詳細に説明するように、作業中に人間がアクセスできるように構成され得る。
図1、2、及び3にそれぞれ示される装置20の実施形態は、それぞれ「フロア」、「工場フロア」、「台」、又は「フロア台」などの水平支持体30上に取り付けられ、そのすべては本出願の目的のために参照番号30に関連してカバーされる。
図1、2、及び3にそれぞれ示される装置20の別の実施形態は、20a、20b、及び20cとしてより具体的に示され、単独で又は組み合わせて動作され得る。これらの実施態様は、ねじ穴25が受けるねじ付きボルトやねじ付きスタッドなどのねじ付き締結具を使用することでAHSSシートに別の構成要素を容易に接続するべく、
図4に示すように、1つ又は複数のクリンチナット24をAHSSシート26に固定してなるアセンブリ22を提供する際に論じされる。
【0030】
図1~
図3に示される作業ステーション28の各々は、少なくとも1つの接合機構32を備えており、
図1の実施形態20a及び
図2の実施形態20bは、複数の接合機構を備えており、
図3に示される装置20cは、単一の接合機構を備える。装置の実施形態の各々は、ベース34と、AHSSシート26に対して平行に移動するようにベース上に設けられた割り出し部材36とを有する。割り出し部材は、加熱開口部38が位置する加熱位置と、クリンチダイス40が加熱開口部38からAHSSシート26に対して平行な方向に沿って離間する接合位置との間を移動する。アクチュエータ42は、加熱開口部38がAHSSシート26の作業部位44に位置合わせされた
図5、
図7及び
図9に示す加熱位置と、割り出し部材内に配置されたクリンチダイス40が作業部位44に位置合わせされる
図6、
図8及び
図10に示す接合位置との間で、割り出し部材36を移動させる。
【0031】
各実施形態のレーザ機構48は、
図5に示すように、加熱位置において、AHSSシート26を加熱するために、割り出し部材36の加熱開口部38を通して、レーザビーム50を射出する。このような加熱は、AHSSシート26において加熱された作業部位44をより延性にして、穴の穿孔及びクリンチナットのAHSSシートへの取り付けを可能にする。装置20の各実施形態は、ナットラム52を備える。ナットラム52には、ピアスクリンチナット24が周期的に供給される。ナットラム52は、クリンチダイス40と協働して互いに向かう動きにより、各クリンチナットをAHSSシート26に取り付ける。これにより、
図17~
図19に示すように、AHSSシートにおいて加熱された作業部位44にクリンチナットを固定し、それによって上述したねじ付き締結具をAHSSシートに接続することができる。
【0032】
図1~3に示される装置20の各実施形態は、AHSSシート26にクリンチナット24を取り付けて
図4に示されるアセンブリ22を得るべく、接合機構32、ナットラム52、及び装置の任意の他の必要な構成要素を制御するコントローラ54を備える。
【0033】
図5に最もよく示されるとともに、
図13にある程度示されているように、開示された装置の各実施形態は、接合機構32が、ベース34によって部分的に区画された遮光室58を画定する筐体56を有している。レーザ機構48は、AHSSシート26の作業部位44が加熱される加熱位置に割り出し部材36がある間に、割り出し部材36の加熱開口部38だけでなく、ベース34の開口60を通してレーザビーム50を射出する。
図5に示すように、AHSSシートをベース34上の割り出し部材36に載置することは、放出された過剰な放射線が遮光室から漏れるのを防止するために、光に対して安全である。さらに、検出機構62は、AHSSシート26が加熱開口部38の周りで割り出し部材36と光に対して安全に接触しているときのみ、レーザ機構48の動作を制限するためにコントローラ54によって動作される。従って、装置が上述のようなクリンチナットの取付けを実行している場合であっても、オペレータがレーザビームからの有害な散乱放射線を受けることなく、必要な操作、修理、又は保守機能のために作業ステーション28に安全にアクセスすることができる。
【0034】
図5に最もよく示されているように、接合機構32の各実施形態には、接合機構における遮光室58に加圧ガスを供給するためのソース64を備えた検出機構62が設けられている。また、検出機構62は、検出器70を挟んで設けられたセンサ66、68を有し、これらのセンサ間の所定のガスの移動を検出する。そして、このガスの移動の検出は、加熱開口部38の周りで割り出し部材がAHSSシート26との間の光に対して安全な接触が欠如していることを示し、レーザがアクティブな場合は、レーザ機構48がレーザビーム50を射出することを防ぐ信号をコントローラ54に出力する。レーザは、レーザ発生器72からコリメータ74に導かれる。コリメータ74は、上述したように、ベースの開口60及び割り出し部材の加熱開口部38を通してAHSSシート26の作業部位44にレーザビーム50を射出する。
【0035】
上述した装置及び方法により取り付けられたクリンチナットは、以下でより詳細に説明されるように、AHSSシート26に穴を穿孔してインターロック接続を形成する穿孔クリンチナット24として開示され、レーザ加熱は、穴の穿孔及びクリンチナットの取り付けを可能にするのに十分な延性をAHSSシート26に与える。
【0036】
図7及び
図8に示すように、接合機構32は、上述した光に対して安全な方法で、アクチュエータ42の動作により、
図7に示す加熱位置と
図8に示す結合位置との間で、ベース34上において割り出し部材36を直線運動するように支持する摺動路76を備える。アクチュエータ42は、割り出し部材に直接接続された、又は、リンク機構を介して割り出し部材に連結されたエアシリンダ或いはソレノイドなどの任意の適切なタイプのものとすることができる。
【0037】
また、
図9及び
図10に示すように、接合機構32は、
図9の加熱位置と
図10の接合位置との間で、上述した光に対して安全な方法により、回動可能な回転連結部78によってベース34上に支持された割り出し部材36を有することも可能である。さらに、
図9及び
図10にも示すように、割り出し部材は、ダイスインサート80を備えることができる。このダイスインサート80は、クリンチダイス40の摩耗による交換を可能にしたり、或いは、実行されるジョブの生産に必要なクリンチダイスの構成に利用されるクリンチナットのタイプを切り替え可能にしたりするものである。
【0038】
また、
図5に示すように、接合機構は、AHSSシートの上側又は下側のいずれかから、割り出し部材36の加熱開口部38を介して、AHSSシート26における作業部位44の温度を検知するための温度センサ82を備えている。この温度感知は、実行される任意の生産ジョブを実行するための加熱度合いを決定するために用いられ得る。構成や動作は後述するが、
図13の実施例に示されているように、温度センサ82は、接合機構32の割り出し部材から離れた側で作業部位44の温度を上方から検知することも可能である。どちらの実施形態においても、そのような制御が保証される場合、検出された温度がコントローラ54の動作によってレーザ加熱の度合いを制御することも可能である。
【0039】
図1を参照すると、装置20aの実施形態は、工場の床によりなされる水平支持体30上に設けられた複数の接合機構32を備えている。装置20aによりなされるレーザ加熱は、以下でより詳細に説明されるが、AHSSシート26を加熱して、クリンチナットのAHSSシートへの機械的接合をなし得る。レーザ発生器72は、ビームスプリッタを介して光ファイバケーブル86からレーザコリメータ(
図5において74として識別される)にレーザを導出し、複数の接合機構32とそれぞれ位置合わせされた複数の作業部位において選択的に加熱を実施する。
【0040】
また、
図1に示す装置20aは、平行運動機械(PKMと呼ばれる)88を備える。PKM88は、概略的に図示されたキャリッジ支持ライザ90によって、水平レール92、94に取り付けられている。水平レール92、94は、枠体96において互いに垂直方向に延びている。枠体96は、それ自身は向上床30に支持されており、上部梁97を支持している。PKM88は、ナットラム52を支持し、ナットラム52は、接合機構32のクリンチダイス40(
図17~19)と協働して、AHSSシートに穴を穿孔し、クリンチナットを固定することによって接合を実施する。そして、ナットラム52は、レール92、レール94に沿って異なる作業部位に互いに垂直な水平方向に移動可能であり、一方、伸長及び収縮によるPKMのストラットの動作は、ナットラム52を移動させてクリンチナット取り付けを実施する。さらに、ナットラム52は、接合作業のためにピアスクリンチナット24を周期的に供給する。ライザ90上に示されたフィーダ98は、ピアスクリンチナット24をナットラム52に周期的に供給する。このフィーダ98は、Mark A. Savoyらの「PROGRAMMABLE APPARATUS AND METHOD FOR VECLE BODY PANEL AND CLINCH NUT ATTACHMENT」という名称の米国特許第7,100,260号、又は、「VEHICLE BODY SHEET METAL CLINCH NUT FEEDER」という名称のPhillip J. I. Morganの米国特許第7,398,896号によって開示されたフィーダなどの任意の従来型のフィーダであってもよく、これら2つの特許の全開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。このピアスクリンチナットの供給は、
図15及び
図16に示されており、これらは、ナットラム52の位置決めストッパ101を背にして、ばねフィンガ100の間に保持されている。
【0041】
図1を継続して参照すると、PKM88のライザ90は、その第1の支持体102をキャリッジ104に接続しており、キャリッジ104は、互いに直交するレール92及びレール94による互いに直交する方向に沿って、制御装置の動作に基づき選択された位置に移動するように支持されている。PKM88の伸縮可能な支柱106は、第1の支持体102から第2の支持体108に突き出ており、第2の支持体とともにナットラムに設けられて、回転するとともに、上述したように連結機構32と協働して、任意の必要な方向での動作を可能にする向きとなるための三脚110をなす。支柱106は、Mark A. Savoyらによって2016年9月15日にWORK STATION AND METHOD FOR JOINING METALLIC SHEETSという名称で公開された米国特許出願公開第2016/0263641号に開示されているような任意の適切な方法で伸縮可能であってもよく、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、支柱106は、参照された出願に開示されるようなローラねじによって具現化されてもよく、このローラねじは、PKMの第1の支持部102に旋回可能に接続された上端と、第2の支持部108に旋回可能に接続された下端と、細長いねじと、遊星キャリアと、遊星キャリアに回転可能に設けられてねじと噛み合い、そのねじとナットとの間で相対的に回転して、支柱の長さを変化させる複数のねじ付きローラとを有するものである。
【0042】
図2を参照すると、装置20bの実施形態は、工場の床30に設けられた少なくとも1つの接合機構32を備える。1つの接合機構32を用いることにより、AHSSシート26は、種々の位置にクリンチナットを接続するために位置割り出しされる。
図1の実施例と同様に、この実施例は、工場の床30に設けられるとともに、ケーブル86を介してレーザ発生器72によってレーザが導かれる複数の接合機構32を備えることも可能である。これらの接合機構32は、各々がナットフィーダ98を備えた1つ又は複数のナットラム52を支持するプラテン111を具備したナットラム機構110と協働してコントローラ54によって作動される。プラテン111は、
図17~
図19に示すように、クリンチナットを取り付けるための穿孔及びクリンチングをするべく、上部梁97で枠体96に支持された1つ又は複数の作動部112によって垂直方向に移動可能である。1つの接合機構32がある場合、この実施形態は、1つのナットラム52により一度に穿孔する1つのクリンチナットを用いるであろう。次いで、AHSSシート26は、必要に応じて、他の箇所にピアスクリンチナットを接続するために、水平方向に割り出される。また、複数の接合機構32がある場合、その実施形態では、各接合機構において、AHSSシート26に順次穴を開けてクリンチナット24を固定することができる。また、この実施形態の各ナットラム52は、作動部112によりなされる垂直運動に対する作動の角度を制御するべく、必要に応じてカムによってプラテン111上で角度的に作動される。
【0043】
図3及び
図11を参照すると、装置20cは、Cフレーム114を備えており、Cフレーム114の一端部は、AHSSシート26を加熱するためのレーザビームが内部に供給される接合機構32を支持し、Cフレーム114の他端部118は、ナットラム52を支持する。より具体的には、Cフレーム114のハウジング120は、レーザコリメータ74を支持し、
図13に最もよく示されるように、そのレーザビーム50は、コリメータから、ハウジングによって区画された遮光室58内の第1のミラー122に向かって下方に進行する。この第1のミラー122は、レーザビーム50を第2のミラー124に向けて水平方向に90度の角度で反射し、その加熱位置とその接合位置との間で旋回することによって、
図9及び
図10における上述の実施形態とほぼ同じように機能する割り出し部材36に向けて上方に90度反射する。この実施形態では、アクチュエータ42のピストン連結ロッド126の進退が、割り出し部材36を回動連結部78の周りに旋回させて、加熱位置と接合位置との間を移動させる。
【0044】
さらに
図11を参照すると、装置22cは、ナットラム52を垂直に移動させるローラスクリュー128を備え、
図3に示すロボット130は、Cフレーム114を支持しながら異なる位置に移動させる。
【0045】
各実施形態における穿孔クリンチング動作は、
図17に示すように、クリンチダイス40が割り出し部材36内に配置されており、割り出し部材が
図7に示す接合位置にある状態で始まる。この位置にある間、割り出し部材36内に設けられたクリンチダイス40が開口60を覆っているので、遮光室58は光に対して安全なままである。次に、割り出し部材が加熱位置に移動し、AHSSシートをレーザビームによって加熱することができる。
図17に示すように、ナットラム52を作動させると、クリンチナット24の穿孔型132が加熱されたAHSSシート26と接触する。ナットラム52の下向きの動きを続けると、穿孔型132がAHSSシート内に移動し、
図18に示すように穿孔された穴が形成さる。穿孔スラグは、クリンチダイス40の開口を通して廃棄される。AHSSシートに孔を形成するのと同時に、ナットラム52が下方に流れ続けると、クリンチダイス40の開口部に取り囲まれて加熱されたAHSSシート26の領域が、
図18に示すように、クリンチナット24のアンダーカット129内に流れ始める。ナットラム52が下向きの動きの終着に到達すると、AHSSシート26は、アンダーカット内に流れ続けて、インターロック133を形成し、アンダーカット129の領域を完全に充填し、
図4及び
図19に示すように、クリンチナット24をAHSSシート26にしっかりと取り付ける。その後は、サイクルが繰り返された後に、ラム52がその開始位置まで上方に移動する。
【0046】
理解されようが、穿孔型132は、円形、正方形、長円形、又は湾曲形状を有する構成であってもよい。
【0047】
本発明が特に有用である車体組立中、クリンチナット24が取り付けられるAHSSのシート26は通常、0.7~2ミリメートルの厚さを有し、約500~825℃の温度に加熱される。加熱時間は厚さに依存するが、通常は約0.5~1.5秒であり、割り出し時間は約0.1~0.3秒であり、クリンチの取り付けを行う時間は約1.2~2.2秒であり、レーザは上述のような機能を達成することができる任意のタイプのレーザである。さらに、
図1~
図3に示すように、オペレータがステーション28内に位置していても、説明したように、レーザビームからの散乱放射線が閉じ込められるため、動作は光に対して安全である。さらに、利用されるレーザは、ファイバレーザ又はダイオードレーザであってもよい。また、レーザ加熱及び機械的接合の間、任意の適切であるが図示されていないクランプなどを使用して、動作のためにAHSSシート26を位置決めすることができる。
【0048】
図1~
図3に関連して、上述したコントローラ54は、
図20のフローチャート134に示す動作をなすように構成されている。この動作は、上述したように、割り出し部材が加熱位置に移動されるステップ136により始まり、レーザがAHSSシートにおける作業部位を光に対して安全に加熱するステップ138に続く。次いで、ステップ140に示すように、割出し部材を接合位置に移動させた後、ステップ142におけるナットラム及びダイスの動作が続き、クリンチナットをAHSSのシートに接合する。
【0049】
例示的な実施形態が上述されているが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を説明することは意図されていない。むしろ、本明細書で使用される単語は限定ではなく説明の単語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることを理解されたい。さらに、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。