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特許7094305ワックスエステル組成物及びその製造方法1.
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ワックスエステル組成物及びその製造方法1.
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/10 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20220624BHJP
   C12P 7/64 20220101ALN20220624BHJP
【FI】
C11C3/10
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q1/04
A61Q9/02
C12P7/64
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019563160
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018032545
(87)【国際公開番号】W WO2018213177
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】15/594,908
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500176311
【氏名又は名称】インターナショナル フローラ テクノロジーズ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アディー,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームス スティーブン
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-167543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177350(US,A1)
【文献】特開昭61-210054(JP,A)
【文献】日光ケミカルズ株式会社他4名,新化粧品ハンドブック,(2006),pp.18-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00- 5/02
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
C07C 69/52
C12P 7/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスエステル組成物であって、
化学触媒、酵素触媒、バイオベース触媒、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを用いて脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導される3つのエステルのエステル交換生成物を含み、エステル交換前の混合物中の前記3つのエステルの比率は、第1エステル、第2エステル、及び第3エステルが前記混合物の重量で測定して、それぞれ65%/23%/12%、56%/29%/15%、及び36%/34%/30%であり、
前記3つのエステルが、それぞれオレイン酸オレイル、ステアリン酸ステアリル及びベヘン酸ベヘニルであり、
前記生成物が、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の物理的性質と略同等の物理的性質を示す、ワックスエステル組成物。
【請求項2】
前記生成物が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の感覚的属性を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生成物が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の機能的属性を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記物理的性質がヨウ素価及び滴点のいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記生成物の平均分子量が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の平均分子量未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記感覚的属性が、感触、テクスチャ、及び作用時間のうちの1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記機能的属性が、粘度、色、及び安定性である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記3つのエステルが、18~22個の炭素の炭素鎖長を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
炭素鎖長分布が、34~44個の炭素であり、ピークが36個の炭素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物は、炭素鎖長の分布が36~46個の炭素であり、ピークが42個の炭素である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
ワックスエステル組成物であって、
化学酵素、酵素触媒、バイオベース触媒、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを使用して、脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導される3つ以上のエステルのエステル交換合成物を含み、エステル交換前の混合物中の前記3つのエステルの比率は、第1エステル、第2エステル、及び第3エステルが前記混合物の重量で測定して、それぞれ65%/23%/12%、56%/29%/15%、及び36%/34%/30%であり、
前記3つのエステルが、それぞれオレイン酸オレイル、ステアリン酸ステアリル及びベヘン酸ベヘニルであり、
前記合成物が、植物由来のホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の物理的性質と略同等の物理的性質を示す、ワックスエステル組成物。
【請求項12】
前記合成物は、炭素鎖長分布が34~44個の炭素であり、ピークが36個の炭素であり、前記ホホバエステルを含む前記エステル交換ワックスエステル組成物は、炭素鎖長分布が36~46個の炭素であり、ピークが42個の炭素である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記合成物が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の感覚的属性を示す、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記合成物が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の機能的属性を示す、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記物理的性質が、ヨウ素価及び滴点のいずれかである、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記合成物の平均分子量が、前記ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の平均分子量未満であり、前記合成物のピーク炭素鎖長が36個の炭素である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記感覚的属性が、感触、テクスチャ、及び作用時間のうちの1つである、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記機能的属性が、粘度、色、及び安定性である、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書の態様は、概して、合成ワックスエステル組成物についての組成物に関する。より具体的な実施態様は、化粧品に使用される合成組成物を含む。
2.
【背景技術】
【0002】
従来、物理的及び化学的性質が観察されるホホバエステルを取得するには、ホホバ植物の採集種子から油を抽出する必要がある。その後、油はエステル交換プロセスを経て処理される。
【発明の概要】
【0003】
ワックスエステル組成物の実施態様には、化学触媒、酵素触媒、バイオベース触媒、又はそれらの任意の組み合わせのうちのいずれかを使用して、脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導される3つのエステルのエステル交換生成物が含まれ得る。エステル交換前の混合物中の3つのエステルの比率は、第1のエステル、第2のエステル、及び第3のエステルがそれぞれ混合物の重量で測定して65%/23%/12%、56%/29%/15%、又は36%/34%/30%である。生成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の物理的性質と略同等の物理的性質を示し得る。
【0004】
ワックスエステル組成物の実施態様は、次のうちの1つ、全て、又は任意のいずれかを含み得る。
【0005】
生成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の感覚的属性を示し得る。
【0006】
生成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の機能的属性を示し得る。
【0007】
3つのエステルは、オレイン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸を含む脂肪酸、並びにオレイルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールを含む脂肪アルコールからそれぞれ誘導される。
【0008】
物理的性質は、ヨウ素価及び滴点のいずれかであり得る。
【0009】
生成物の平均分子量は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の平均分子量未満であってもよい。
【0010】
感覚的属性は、感触、テクスチャ、又は作用時間のいずれかであり得る。
【0011】
機能的属性は、粘度、色、又は安定性であり得る。
【0012】
3つのエステルの炭素鎖長は18~22個の炭素である。
【0013】
炭素鎖長分布は34~44個の炭素であり、ピークが36個の炭素であり得る。
【0014】
ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物は、炭素鎖長分布が36~46個の炭素であり、ピークが42個の炭素であり得る。
【0015】
ワックスエステル組成物の実施態様は、化学触媒、酵素触媒、バイオベース触媒、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを使用する脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導される3つ以上のエステルの合成物を含み得る。合成物は、植物由来のホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の物理的性質と略同等の物理的性質を示し得る。
【0016】
ワックスエステル組成物の実施態様は、次のうちの1つ、全て、又は任意のいずれかを含み得る。
【0017】
合成物は、炭素鎖長分布が34~44個の炭素であり、ピークが36個の炭素であり得る一方、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物は、炭素鎖長分布が36~46個の炭素であり、ピークが42個の炭素であり得る。
【0018】
合成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の感覚的属性を示し得る。
【0019】
合成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の機能的属性を示し得る。
【0020】
物理的性質は、ヨウ素価又は滴点のいずれかであり得る。
【0021】
合成物の平均分子量は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の平均分子量未満である。
【0022】
感覚的属性は、感触、テクスチャ、又は作用時間のいずれかであり得る。
【0023】
機能的属性は、粘度、色、又は安定性であり得る。
【0024】
該合成物の炭素鎖長のピークは、36個の炭素であり得る。
【0025】
ワックスエステル組成物の実施態様には、第1エステルと第2エステルのエステル交換生成物が含まれ得、第1エステルと第2エステルの各々は、化学触媒、酵素触媒、バイオベース触媒、又はそれらの任意の組み合わせを使用して、脂肪酸と脂肪アルコールから誘導される。エステル交換前の混合物中の第1エステルと第2エステルの比率は、混合物の重量で測定して33.3%/66.7%であり得る。生成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物の物理的性質と略同等の物理的性質を示し得る。
【0026】
前述及び他の態様、特徴、及び利点は、発明を実施するための形態及び図面、並びに特許請求の範囲から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
実施態様は添付図面と併せて以下説明し、同様の名称は同様の要素を指す。
【0028】
図1】合成ワックスエステル組成物と植物由来のホホバエステルの実施態様のヨウ素価及び滴点を比較するグラフである。
【0029】
図2】合成ワックスエステル組成物と植物由来のホホバエステルの実施態様の平均分子量及び滴点を比較するグラフである。
【0030】
図3】ヨウ素価が66の、合成ワックスエステル組成物及び植物由来のホホバエステルの実施態様のワックスエステルの分布を比較するグラフである。
【0031】
図4】ヨウ素価が60の、合成ワックスエステル組成物と植物由来のホホバエステルの実施態様のワックスエステルの分布を比較するグラフである。
【0032】
図5】ヨウ素価が44の、合成ワックスエステル組成物及び植物由来のホホバエステルの実施態様」のワックスエステルの分布を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示、その態様及び実施態様は、本明細書で開示される特定の成分、集合手順、又は方法要素に限定されない。意図されるワックスエステル組成物と両立する、当該技術分野で知られている多くの追加の成分、集合手順、及び/又は方法要素が、本開示から特定の実施態様において使用されるために明らかになるであろう。したがって、例えば、特定の実施態様が開示されているが、そのような実施態様及び実装成分は、意図される操作及び方法と一致する、上記ワックスエステル組成物並びに実装成分及び方法に関して、当該技術分野で既知である任意の形状、サイズ、スタイル、タイプ、モデル、バージョン、測定値、濃度、材料、量、方法要素、ステップなどを含むことができる。
【0034】
本明細書に記載されるワックスエステル組成物の実施態様は、国際化粧品成分命名法(INCI)によってホホバエステルとして分類されるホホバベースの製品の感覚的及び機能的属性を再現するものである。本明細書に開示されるワックスエステルの実施態様は、自然界では観察されないため合成である。各種実施態様において、合成ワックスエステル組成物の属性には、感触、テクスチャ、作用時間、滴点、ヨウ素価、粘度、色、及び安定性が含まれ得る。ワックスエステル組成物の実施態様は、アリゾナ州チャンドラーのInternational Flora Technologies,Ltd.によりFLORAESTERS20、FLORAESTERS30、及びFLORAESTERS60の商品名で販売されているホホバエステル製品の感覚的及び機能的属性を再現することができる。
【0035】
本明細書に開示されるワックスエステル組成物の実施態様は、ホホバ植物の種子に由来するホホバエステルにのみ元来見られる様々な属性を示す特定の比率の2つ以上のエステルの組み合わせを使用して合成され得る。本明細書に記載のワックスエステル組成物の実施態様のための出発物質には、オレイン酸オレイル、ステアリン酸ステアリル、及びベヘン酸ベヘニルが含まれる。他の実施態様では、ワックスエステル組成物は、脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導される2つ以上のエステルを含んでもよい。各種実施態様において、脂肪酸はオレイン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸を含んでもよく、脂肪アルコールはオレイルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールを含んでもよい。2つ以上のエステルは、18から22個の炭素の炭素鎖長を含み得る。他の実施態様では、2つ以上のエステルは、34~44個の炭素の炭素鎖長分布を含み得る。いくつかの実施態様において、エステル化ワックスエステル出発物質の代わりに、個々の脂肪アルコール及び脂肪酸を使用してもよい。様々な実施態様で使用できる様々な源からの追加の適切な個々の脂肪アルコール及び脂肪酸の例は、非限定的な例として、トリグリセリド、カプリル、オクチルドデカノール、パルミチン酸エチルヘキシル、炭酸ジカプリリル、ヒマワリ油(高オレイン酸含有量)、ココナッツ油、パーム核油、ココアバター、アボカド油、パーム油、オリーブ油、アーモンド油、ニーム油、キャノーラ油、ルリヂサ油、ゴマ油、小麦胚芽、コーン油、大豆油、ひまわり油(低オレイン酸含有量)、ククイ、チア種子油、グレープ種子油、米ぬか油、麻油、ベニバナ油、及び化粧品の成分として有用な他のエステル含有油を含む。
【0036】
オレイン酸オレイルは、オレイルアルコールとオレイン酸のエステルである。オレイン酸オレイルの化学式はC3668、分子量は532.94g/mol、融点は14~16℃である。オレイン酸オレイルは、非限定的な例として、様々な動物性脂肪、植物性脂肪、オリーブ油、小麦胚芽油、ココナッツ油、亜麻仁油、アーモンド油、ベニバナ油などを含む油、又はそれらの任意の組み合わせ由来であり得る。また、オレイン酸オレイルは、牛肉又は羊肉の脂肪から得られる食用に適さない獣脂から商業的に入手することもできる。様々な前駆体から化学反応を介して、純粋な合成原料からオレイン酸オレイルを得ることも可能である。オレイン酸オレイルは液体であり、食品、軟せっけん、固形せっけん、パーマヘア溶液、クリーム、マニキュア液、口紅、ヘアコンディショニング剤、スキンコンディショニング剤において軟化剤として使用され得る。また、オレイン酸オレイルは、(Z)-オクタデカ-9-エニルオレイン酸塩、9-オクタデセン酸(9Z)、(9Z)-9-オクタデセニルエステル、9-オクタデセン酸、9-オクタデセニルエステル、9-オクタデセニルエステル9-オクタデセン酸、9オクタデセン酸(Z)、9-オクタデセニルエステル、(Z)、オレイン酸、オレイルエステル、又はオレイルエステルオレイン酸として列挙され得る。オレイン酸オレイルの誘導体は、ステアリン酸オレイル及びパルミチン酸オレイルを含み得る。
【0037】
ステアリン酸ステアリルは、ステアリルアルコールとステアリン酸のエステルである。ステアリン酸ステアリルの化学式はC3672であり、分子量は536.97g/molである。ステアリン酸ステアリルは、非限定的な例として、クジラ油、動物性脂肪、植物油、植物源、ココアバター、及びシアバターから調製され得る。様々な前駆体からの化学反応を介して、純粋な合成原料からステアリン酸ステアリルを取得することも可能である。ステアリン酸ステアリルは固体アルコールの混合物であり、医薬品、クリーム、リンス、シャンプー、及びその他の類似製品に使用され得る。ステアリン酸ステアリルは、非限定的な例として、オクタデカン酸、オクタデシルエステル、オクタデカン酸、オクタデシルエステル、ステアリン酸、ステアリルエステル、オクタデシルエステルオクタデカン酸、及びステアリン酸オクタデシルとしてもリストアップされ得る。ステアリン酸ステアリルの誘導体は、ステアラミンオキシド、酢酸ステアリル、カプリル酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアリルジメチルアミン、グリチルレチン酸ステアリル、ヘプタン酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、及びステアリン酸ステアリルを含み得る。
【0038】
ベヘン酸ベヘニルは、ベヘニルアルコールとベヘン酸のエステルである。ベヘン酸ベヘニルの化学式はC4488であり、分子量は649.19g/molである。ベヘン酸ベヘニルは、非限定的な例として、ベンオイルツリー(ワサビノキ)の種子、プラカキシ油、ナタネ油、キャノーラ油、ピーナッツ油、及びピーナッツの皮を含む油及び油含有植物由来であり得る。様々な前駆体からの化学反応により、純粋な合成原料からベヘン酸ベヘニルを取得することも可能である。ベヘン酸ベヘニルは乾燥粉末であり、ヘアコンディショナー、保湿剤、潤滑油、消泡剤、床磨き剤、ろうそくに使用され得る。また、ベヘン酸ベヘニルは、ドコシルドコサン酸、ドコサニルドコサン酸、ドコサン酸、ドコシルエステル、ベヘン酸ドコシル、PelemolBB、及びKester WaxBBとして列挙され得る。
【0039】
本明細書に開示されるワックスエステル組成物の実施態様は、オレイン酸オレイル、ステアリン酸ステアリル、及びベヘン酸ベヘニルを、測定された重量による特定の比率で組み合わせることによって製造される。特定の実施態様では、比率はオレイン酸オレイル56%、ステアリン酸ステアリル23%、ベヘン酸ベヘニル12%である。別の実施態様では、比率はオレイン酸オレイル56%、ステアリン酸ステアリル29%、ベヘン酸ベヘニル15%である。別の実施態様では、比率はオレイン酸オレイル36%、ステアリン酸ステアリル34%、ベヘン酸ベヘニル30%である。これらの各種実施態様を以下の表1に示す。いったん本文書で前述した比率のいずれかで組み合わされると、組成物は、化学プロセス、バイオベース触媒プロセス、酵素触媒プロセス、それらの任意の組み合わせ、又は当技術分野の他の既知のプロセスを通してエステル交換される。触媒プロセスの使用によるエステル交換については、2015年8月31日に提出され、米国特許公開第20160177350号として公開されているJeff Addyらによる米国特許出願第14/841,242号「ワックスエステル誘導体の触媒製造プロセス及びシステム」に記載されており、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
理論に束縛されることなく、これらの材料を適切な比率でエステル交換することによるワックスエステル組成物の合成は、ホホバエステル由来のエステル交換ワックスエステル組成物と略同等の物理的性質を示す、全く予期不能な結果を達成すると考えられる。例えば、本明細書に開示される合成ワックスエステル組成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の感覚的属性を示す。製品の感覚的属性は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と略同等の感触、テクスチャ、又は作用時間を含み得る。合成されたワックスエステル生成物は、ホホバエステルを含むエステル交換ワックスエステル組成物と同等の機能的属性を示す。非限定的な例として、製品の機能的属性は、粘度、色、又は安定性を含み得る。本明細書に記載のワックスエステル組成物の実施態様は、FLORAESTERS20、FLORAESTERS30、及びFLORAESTERS60を含むホホバエステル製品関連の属性を有する費用効果の高い代替品として利用され得る。
【表1】
【0041】
ワックスエステル生成物の実施態様は、驚くべきことにホホバエステルの物理的性質も再現することが実証された。一例では、物理的性質に生成物の滴点が含まれた。合成されたワックスエステル生成物は、表2に示されるように、同様のヨウ素価を有し、より低い分子量を有しながら、ホホバエステルの滴点を再現することが示された。分子内の不飽和は、具体的にはシス構造をとると予想される。当業者であれば、同程度の不飽和度及びヨウ素価を有するワックスエステルベースの脂質は、同様の滴点を有すると予測するであろう。また、当業者であれば、高分子量の種は、同様のヨウ素価を有する低分子量化合物よりも高い滴点を有すると予測するであろう。表でSYNOBAとラベル付けされたワックスエステル組成物の実施態様は、これらの予測される特性を示さず、その代わりに、SYNOBA化合物は同じ滴点を有しながら天然由来のホホバエステルよりも平均分子量が低い。これは全く予期不能な結果である。
【表2】
【0042】
図1を参照すると、グラフは、SYNOBA組成物はFLORAESTERS化合物とを比較したとき、同様のヨウ素価と滴点を有することを示している。図2を参照すると、グラフは、SYNOBA化合物が、FLORAESTERS化合物よりもかなり低い分子量を有しつつ、同じ滴点を有することを示している。これらの図が示すように、滴点は、組成物の平均分子量よりもヨウ素値に大きく依存する。いかなる理論にも束縛されることなく、図1及び図2で生成される勾配は、部分飽和したワックスエステル組成物の多形性により、ほぼ同じである。多形とは、結晶を含む固体材料が、複数の形態又は結晶構造で存在できる能力である。シス構造の二重結合は、シス構造に通常存在するより大きな分子間力とより大きな分子構造のために、結晶形成の積層機構を妨げることにより、結晶化を阻害する。本文書に開示される組成物における不飽和の唯一の源は、オレイルアルコールとオレイン酸に由来する。当業者であれば、ホホバ油が不飽和脂肪アルコール及び脂肪酸においてはるかに高い多様性を有することを理解しているであろう。不飽和脂肪アルコールと脂肪酸はどちらも、両生成物のエステル交換反応中に、存在する全てのワックスエステルに均等に分配される。本文書に開示される組成物のより均一な不飽和ワックスエステルは、ホホバ由来の同等物よりも効率的な分子の充填、ひいてはより安定した多形体をもたらすと考えられる。本文書に開示される組成物の密に充填されたワックスエステル多形体は、高い結晶化熱を呈することにより、低い平均分子量と等しい不飽和度を有するにもかかわらず、高い滴点という予期せざる結果が観察される。
【0043】
図3、4、及び5を参照すると、本文書に開示される組成物の個々のワックスエステル種及び前述のFLORAESTERS組成物の分布が示されている。図3を参照すると、図示された組成物(SYNOBA20)は、66のヨウ素価を有する。図4を参照すると、図示された組成物(SYNOBA30)は60のヨウ素価を有する。図5を参照すると、図示された組成物(SYNOBA60)は、44のヨウ素価を有する。これらのグラフは、本明細書に開示される合成ワックスエステル生成物が、ホホバエステルよりも小さい炭素鎖長分布を有することを示している。図示されるワックスエステル生成物は、炭素鎖長分布が34~44個の炭素であり、ピーク炭素鎖長が36個の炭素である。ワックスエステル生成物の炭素鎖長は、炭素鎖長分布が36~46個の炭素であり、ピークが42個の炭素であるホホバエステル化合物よりも平均して小さい。
【0044】
また、ワックスエステルの実施態様は、化粧品の配合に使用されたときに同様の官能性を備えていた。表3を参照すると、本明細書に開示される組成物(SYNOBA20)とFLORAESTERS20として販売されている組成物とが、示された配合物に入れられた。配合されたSYNOBA20及びFLORAESTERS20のローションは、同様の感触、粘度、テクスチャ、色、及び安定性を有していた。SYNOBA30とFLORAESTERS30を比較するため、同じ配合で追加の配合試験を実施した。ここでも、美観と安定性は類似しており、本明細書に開示された組成物は、ワックスエステルプロファイル及び平均分子量が異なるにもかかわらず、商品名FLORAESTERS並びに他のホホバエステル製品及び組成物として販売されているものの適切な代替物であることをさらに示している。したがって、本明細書に開示されているような組成物は、ホホバ油及びホホバエステル含有組成物の代替物として、ローション、洗顔料、保湿剤、メイク落とし、リップコンディショナー、シェービングジェル、又は類似の塗布物などの化粧品での使用に適し得る。
【表3】

【表4】
【0045】
表4は、エステル交換前の混合物全体の各成分の重量パーセントの範囲を示しており、本文書内の類似の性質に関して本文書で観察される結果が観察されている。
【0046】
上記の説明がワックスエステル組成物の特定の実施態様及び実装成分、サブ成分、方法、及びサブ方法に言及している箇所には、その精神から逸脱することなく多くの修正を加えることができ、これらの実施態様、実装成分、サブ成分、方法、及びサブ方法は、他のワックスエステル組成物にも適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5