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  • 特許-セルフピアスファスナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】セルフピアスファスナー
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20220624BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F16B35/04 Q
F16B37/04 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019564041
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034395
(87)【国際公開番号】W WO2018218024
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】62/511,055
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルンク,ジョナサン
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第01315137(FR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0290425(US,A1)
【文献】米国特許第05058315(US,A)
【文献】特表2012-509450(JP,A)
【文献】実開平07-025327(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102005013154(DE,A1)
【文献】特表2009-512822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
13/00-13/14
17/00-19/14
23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーおよびハニカムパネルを有する集成体において、
a)上部パネル、下部パネル、およびこれらパネル間にあって、側壁を有する離間垂直カラムによって形成される複数の内部セルを有するハニカムパネル、および
b)セルフピアスファスナーであって、
i)上部、下部、および周縁部を有する平面状のベースプレート、および
ii)前記周縁部に固定され、かつ前記ベースプレートの底部から下向きに延在する複数のプロングであって、これらプロングそれぞれが中心軸および遠位端部に固定した矢尻状の返しを有し、そして各返しがこの返しの先端から延在する対向前縁部、および前記プロングの前記中心軸に対して逆鋭角で配向した対向後縁部を有するプロングを有するセルフピアスファスナーを備え、
前記ファスナーのプロングが前記上部パネルに進入し、かつ前記返しが前記内部セルの前記カラムに係合し、前記ファスナーを前記ハニカムパネルの前記上部パネルに強く固定したことを特徴とする集成体。
【請求項2】
前記上部パネルへの前記ファスナーの装着時に前記返しをランダムにたわませて、少なくとも一対の対向返しが集成後に平行にならないように構成した請求項1に記載の集成体。
【請求項3】
前記返しが前記パネルの底面を突き破ることがない請求項2に記載の集成体。
【請求項4】
前記ファスナーの前記ハニカムパネルへの装着時に前記返しによって前記パネルの内部カラム壁をたわませて、たわんだカラム壁に直接係合することによって前記返しの後縁部の角部が抜き出し力に抵抗するようにした請求項3に記載の集成体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2017年5月25日に出願され、“セルフピアスファスナー”を発明の名称とする仮特許出願第62/511,055号の優先権を主張する非仮特許出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は機械分野におけるセルフピアスファスナー(self-piercing fastener:自動貫入型ファスナー。なお、本明細書においては「ファスナー」を「ファスナー装置」ともいう。)に関し、特にファスナー要素がハニカム型パネルの上部から上向きに延在するハニカム型パネルのセルフピアスファスナー装置に関する。
【背景技術】
【0003】
セルフピアスファスナー装置は機械分野において公知である。これらファスナー装置の場合、一般的に、パネルを通して反対側に部分的に、あるいは貫入することができるファスナープロング(prongs:先端部)をパネルの上部に突き通すことによって受け取り側パネルに取り付ける。これらセルフピアスファスナー装置の場合、受け取り側パネルに予め孔を設ける必要がなく、また接着剤も必要がない点で有利である。さらに、一部のセルフピアスファスナー装置では作業工程は一つあればよい。
【0004】
一部の従来セルフピアスファスナー装置、例えばUSP8,366,364に開示されている装置の場合、ファスナー装置の下部部分を受け取り側パネルに埋設した状態で、パネルの上部から上向きに延在する。パネルより上のファスナー装置部分がスタンドオフとして作用し、この部分には雌ネジまた雄ネジを切ることができる。従来のセルフピアスファスナー装置の別な例は、USP3,281,171に開示があり、プロングを有する取り付けプレートから延在するナット締め付け要素を有する。プロングについては、取り付けプレートの周囲に設け、受け取り側パネルを反対側に貫通する。次に、プロングの末端部分をパネルの反対側に折り曲げ、パネルの装着を実施する。
【0005】
これら従来のファスナー装置の場合、密度が均一な平面状パネルには適するが、軽量および強度が求められる用途に好適なことが多いハニカムのパネルなどの不均一なパネルには向かない。ハニカム構造パネルはハニカム形状を有する人工のプレート状集成体である。これらパネルの形状によって構造材料の必要な量が最少で済み、重量および材料コストを最小化することができる。
【0006】
ハニカム構造は多数の幾何学的形状を実現できるが、大半のハニカム構造は垂直壁間にセルを配列するものである。これらセルはほとんどの場合形状はカラム状で六角形である。通常、これらセルを2枚の薄いパネル層の間に層として配列し、セル壁に対して垂直な強度を与え、セルに対する荷重を分散させ、プレート状の複合材を構成する。ハニカム構造パネルの一例は、コネチカット州、スタンフォードのHexcel社によって製造されている。
【0007】
従来、ハニカム構造パネルに使用されるファスナー装置はパネルに成型してもよく、あるいは機械的にパネルに取り付けてもよい。いずれの方法においても、孔を空けるか、および/または研磨などによって直径を適正化する準備が必要である。一つの方法では、接着剤を塗布し、これを硬化させることによってパネルの孔にファスナー装置を接着する。もう一つの方法では、ファスナー装置を孔にプレスするか、あるいはリベットで締める。接着するファスナー装置は使用が簡単であるが、ファスナー装置の性能が接着剤の強度によって制限される欠点がある。このように、ハニカム型パネルの一度の工程で簡単に取り付けられる上に、接着剤を塗布しなくても強固な装着を担保するセルフピアスファスナー装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】USP8,366,364
【文献】USP3,281,171
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一度のプレス作業工程でハニカム型パネルに簡単に取り付けられる上に、接着剤を塗布しなくても強固な装着を担保するセルフピアスファスナー装置に関する。このファスナー装置は、複数の下向きプロングを有する金属製ベースプレートを有する。各プロングは矢尻状の返し(arrowhead shaped barb)を有し、この返しは複合的なテーパーを有する。これら返しはハニカムパネルの構造中に独特な形ですいつく縁部を有する。ファスナー装置のベースプレートがハニカム型パネルの水平面内に垂直にプレスされると、返しがハニカム構造の垂直方向に離間した内部カラムに係合するため、返しがランダムな方向にたわむ。この結果、後縁部を有する返しの表面がハニカム構造のカラムに係合し、これに食い込む。このようにして、ファスナー装置をハニカムパネルに強固に取り付けることができる。
【0010】
ベースプレートは、第2成分をこのプレートの上部に固定する第2取り付け手段を有する。第2ファスナー装置は、雌ネジや雄ネジなどの特徴を有するため、別な物品をベースプレートによってパネルに固定できる。この二次的なファスナー装置の取り付け手段については、クリンチ式手段が好ましいが、他の任意の適当な手段も使用可能である。
【0011】
一つの好適な実施態様では、セルフピアスファスナー装置は平面状のベースプレートを有し、このベースプレートは上部、下部および周縁部を有する。ベースプレートは実質的に円形であればよい。周縁部に固定された複数のプロングはベースプレートの底部から下向きに延在する。プロングそれぞれは中心軸、および遠位端部に固定された矢尻状の返しを有する。これら返しは実質的に同じで、ベースプレートの周囲に等間隔で離間している。各返しは、ファスナー装置が固定されるパネルの内部に固定的に埋設される。
【0012】
各返しはこの返しの先端から延在する対向前縁部、およびプロングの中心軸に対して逆鋭角で配向する対向後縁部を有する。返しの各前縁部については、複合的なテーパー構成を有するのが好ましい。一つの実施態様では、返しの前縁部は第1および第2のテーパー領域を有する。第1領域については、相互に対してほぼ90度の夾角で配向させ、そして第2領域については、相互に対してほぼ60度の夾角で配向させる。
【0013】
第2ファスナー装置をベースプレートの上部に固定するとともに、これを上向きに延在させる。第2ファスナー装置は、例えば雄ネジを切った植え込みボルトか、あるいは雌ネジを切ったナットであればよい。一つの好適な実施態様では、ベースプレートの取り付け孔にクリンチ取り付け方式によって第2ファスナー装置を固定することによって、ファスナー装置のアンダーカットがベースプレートからの金属の冷間流れを受け取る。
【0014】
別な実施態様では、本発明は新規ファスナー装置およびハニカムパネルの集成体を提供するものである。このハニカムパネルについては、一般に上部パネル、下部パネル、およびこれらパネル間に存在し、かつ側壁を備えた離間垂直カラムによって形成される複数の内部セルで構成する。セルフピアスファスナー装置のプロングが上部パネルを貫通し、返しが内部セルのカラムに係合し、ファスナー装置をハニカムパネルの上部パネルに固定する。ファスナー装置の上部パネルへの装着時に、返しが半径方向にランダムにたわむため、少なくとも一つの対向対の返しが集成後に平行になることはない。返しについては、パネルの底面に貫通することがないように構成するのが好ましい。装着時に、パネルの内部カラム壁が返しによってたわむため、返しの後縁部の角部がたわんだカラム壁に直接係合することによって引き抜き力に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好適な実施態様に従って構成したセルフピアスファスナー装置を示す等測投影図である。
図2図1に示すファスナー装置のセルフピアス返しを示す側面図である。
図3図1に示すファスナー装置のベースプレートを示す側面図である。
図4図1に示すベースプレートに取り付けた二次的なファスナー装置を示す側面図である。
図5】本発明の別な実施態様に従って図1および図3のベースプレートに装着できる二次的なファスナー装置を示す一部断面を含む側面図である。
図6】本発明のさらに別な実施態様に従ってハニカムパネルに装着した図3のファスナー装置を示す等測投影図である。
図7図6の線7-7にそって取った横断面図である。
図7a図7から取った断片的な拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施態様に従って構成したセルフピアスファスナー装置を図1図3に示す。なお、全体を参照符号9で示す。このセルフピアスファスナー装置は全体としてベースプレート11を有し、このベースプレートは上面11a、下面11b、周縁部11c、および中心孔12を有する。二次的なファスナー装置13については、ベースプレート11の上下面11a、11bに固定し、かつこれらの上下面に対して全体として垂直に中心孔12に延在する。図1に示す好適な実施態様の場合、この二次的なファスナー装置13はクリンチングによってベースプレートに固定する。中心孔12を取り囲む材料が冷間変形し、二次的なファスナー装置13の軸部のアンダーカット(図示せず)内に入り込む。この実施態様では、二次的なファスナー装置13は雄ネジを切った植え込みボルト(stud)であり、このボルトはプレート11の上面11aから上向きに突出する。
【0017】
ベースプレート11は実質的に円形であり、ベースプレート11の周囲縁部11cに固定され、かつこれから突出する一連のプロング15を有する。これらプロングは上面15a、底面(下面)15b、および周囲面15cを有し、これら表面はベースプレート11のそれぞれ上面11a、下面11bおよび周囲面11cと連続化している。この好適な実施態様では、プロング15は半径方向に短い距離突出し、(上下面の平面に対して)底面11bに向かって約90度湾曲してから、軸方向に下向きに突出する。本実施態様では、プロング15は長さ方向に延在する中心軸を有し、均一な、全体として矩形の横断面を有する。矢尻状の返し16はプロング15の遠位端部に固定する。返し16については、プロング15と一体形成するのが好ましい。プレート11については、パターンを打抜いてから、プロングを好ましくは90度の角度に折り曲げて製造するのが効率がよい。図3では、図1に示すベースプレート11、プロング15および返し16は分離して示す。
【0018】
図2を参照して説明すると、各返し16は遠位先端18を有し、この先端には予め受け取り孔を設ける必要なく、受け取り側パネルに自動的に進入できる点までテーパーを施してある。返し16の場合、対向する前縁部および対向する後縁部14を有し、これらは返しが進入する材料に係合する。後縁部14はプロング15の中心軸に対して斜めに延在し、かつプロング15の周囲縁部15cから短い角部10まで延在する。前縁部はこの角部10から延在し、先端18で収斂する。後縁部14はプロングの中心軸に対して(先端18から離れる方向に)逆鋭角で配向する。
【0019】
前縁部は、それぞれがアーム15の中心軸に対して異なる角度でテーパーを有する2つのテーパー付き領域17、19を有する複合的な外形を有する。返しの形状によって、装着時に材料が受ける応力が最小化する。第1領域17は先端18から前縁部の中間点まで延在し、一方第2領域19はこの中間点から角部10まで延在する。第1領域17の夾角(対向する第1領域間で測定される角度)は90度であり、また第2領域19の夾角(対向する第2領域間で測定される角度)は60度である。この好適な実施態様では、第1領域17の長さは第2領域19の長さよりも短い。第2領域19に60度のテーパーが付いているため、漸進的に装着を行うことができ、パネルの損傷が少なくなる。第1領域17に90度のテーパーが付いているため、返しを短くでき、薄いハニカムシートに適用した場合にシートの対向面に突出することはない。他の形状も可能であるが、この外形を採用した方がファスナー装置の性能を最大化できる。
【0020】
図1に示したベースプレート11、プロング15および返し16は、図3では分離して示す。プロングおよび返しについては、ベースプレート11の周囲に等間隔で離間配置するのが好ましい。対向対のプロングおよび返しは、相互の鏡像として配向する。ベースプレート11の平面に対して90度の角度でプロングを下向きに折り曲げた好適な実施態様の場合、対向する返しは相互に平行な平面内に存在する。例えば、図1から良く理解できるように、ファスナー装置は6つのプロングを相互に180度離間した対として設ける。図1に、2つのプロング(P1、P2で示す)の返しが平行平面内にどのように存在するかを示す。
【0021】
ベースプレート11は中心取り付け孔12を有し、これがクリンチなどの任意の適当な手段によって取り付ける各種の二次的なファスナー装置を受け取る。図4および図5に、ベースプレートとともに使用できる2つの異なる種類の二次的なファスナー装置を示す。図4には図1に示す雄ネジを切った植え込みボルト13を示し、図5には雌ネジを切ったファスナー装置113を示す。図4および図5のファスナー装置それぞれは、ベースプレート取り付け孔に係合するクリンチ取り付け手段21、121を有する。
【0022】
図6に、内壁20によって相互接続した上部パネル23および下部パネル22を有するハニカムパネル25に装着した図1のファスナー装置9を示す。ベースプレート11が上部パネル23の上面にぴったりと接触するまで、ファスナー装置9をパネル25内にプレスする。ベースプレート11が大きな接触面積をもつため、二次的なファスナー装置13が左右にたわむことはない。
【0023】
図7aおよび図7bに、ファスナー装置9の装着後にハニカムパネル25の内部構造20に返し16がどのように係合するかを示す。返しがパネル25に進入すると、返し16によってランダムな方向にパネル25の内壁20がたわむ。各返しの進入エリアがパネル25内で異なるからである。返し16が内壁20からの抵抗を受けている間に、返し16がランダムに湾曲するか、あるいはねじ曲がる。プロングおよび返しの長さについては、返しが下部パネル22を貫くことがないように選択するのが好ましい。図7bに、後縁部14の角部を含む返し16の構造部分がどのように(たわんだ状態にある)内壁20または上部パネル23に直接係合することによって確実に抜け出しを防止するかをより明確に示す。
【0024】
当業者ならば、以上の実施態様に各種の変更などを加えることができるはずである。換言すると、以上の実施態様は例示のみを目的とするものと理解されるべきである。本発明の範囲および精神に従って実施されるこれら実施態様の変更などについては、全て、特許請求の範囲およびこれらの法的な等価物によって判断されるべきである。
【符号の説明】
【0025】
9、13、113:ファスナー装置
10:角部
11:ベースプレート
11a:上面
11b:下面、底面
11c:周縁部、周囲面
12:中心孔、中心取り付け孔
14:後縁部
15:プロング
15a:上面
15b:底面(下面)
15c:周囲面、周囲縁部
16:返し
17:第1領域
18:遠位先端、先端
19:第2領域
20:内壁、内部構造
21、121:クリンチ取り付け手段
22:下部パネル
23:上部パネル
25:ハニカムパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-7A】