(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】少なくとも1種のセラミド、少なくとも1種のスフィンゴイド塩基及びクエン酸トリエチルを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20220624BHJP
A61K 31/133 20060101ALI20220624BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220624BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220624BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K31/133
A61K47/14
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/41
A61K31/164
(21)【出願番号】P 2020079151
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2020-06-03
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウアズラ マチュキエヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】リーザ マウス
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ディートル
(72)【発明者】
【氏名】モニカ デジレー ファン ロホヘム
(72)【発明者】
【氏名】マリア メッキング
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ ザルミナ-ペーターゼン
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ブラスコ-ベゴイーン
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】Sensitive Cream, ID# 5550201, Mintel GNPD [online], 2018年4月, [検索日2021.6.4], URL https://www.mintel.com
【文献】Day Cream SPF 15, ID# 5685943, Mintel GNPD [online], 2018年5月, [検索日2021.6.4], URL https://www.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/00-31/327
A61K47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種のセラミド、
B)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基及び
C)クエン酸トリエチル
を含有し、成分A):B):C)の質量比が、2~6:1~2:1~5であ
り、4.0~8.0の範囲内のpH値を有する、組成物。
【請求項2】
前記セラミドが、セラミドNP、セラミドAP、セラミドEOP、セラミドNDS、セラミドADS、セラミドEODS、セラミドNS、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドNH、セラミドAH及びセラミドEOHの群から選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スフィンゴイド塩基が、スフィンゴシン、スフィンガニン、6-ヒドロキシスフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンの群から選択されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記セラミドが、セラミドNP及びセラミドAPの群から選択されており、かつ
前記スフィンゴイド塩基が、フィトスフィンゴシンから選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記セラミドが、セラミドNP及びセラミドAPであり、かつ
前記スフィンゴイド塩基が、フィトスフィンゴシンから選択されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分A):B):C)の質量比が、2~6:1~2:1~2であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
セラミドNP及びセラミドAPが、1.5~2.5:1の質量比で含まれていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
成分A)及びB)が合計で、1.0質量%~9.0質量%の量で含まれており、ここで、前記質量パーセントは、前記組成物全体を基準としていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
成分A)及びB)が合計で、0.02質量%~0.60質量%の量で含まれており、ここで、前記質量パーセントは、前記組成物全体を基準としていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、
D)コレステロール
を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、
4.5~7.4の範囲内のpH値を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、クエン酸トリエチル以外の防腐剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から
12までのいずれか1項に記載の組成物を含有する製剤を製造する方法であって、次のプロセスステップを含む:
a)前記A)少なくとも1種のセラミドを用意し、かつC)クエン酸トリエチルを用意し、かつB)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基を用意し;
b)成分A)及びC)及びB)を水と一緒に混合して、成分A)の溶液を得る、
前記方法。
【請求項14】
プロセスステップb)を少なくとも部分的に、70℃~110℃の温度範囲内で実施することを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
A)少なくとも1種のセラミド及び
B)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基
を含有するセラミド含有製剤の、物理的安定化のため、及び/又は製剤中の少なくとも1種のセラミドの晶出の防止のため、及び/又はセラミド含有製剤の微生物安定化のための、C)クエン酸トリエチルの使用であって、成分A):B):C)の質量比を、2~6:1~2:1~5と
し、前記C)クエン酸トリエチルを含むセラミド含有製剤のpHを4.0~8.0の範囲内とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、少なくとも1種のセラミド、少なくとも1種のスフィンゴイド塩基及びクエン酸トリエチルを含有する組成物、少なくとも1種のセラミド及び少なくとも1種のスフィンゴイド塩基を含有する製剤を製造する方法並びにセラミド含有製剤の安定化のためのクエン酸トリエチルの使用である。
【背景技術】
【0002】
セラミド類は、化粧品製剤においてしばしば使用される。しかしながら、それらの低い溶解度及び再結晶の大きな傾向は、化粧品製剤に安定に配合するのを困難にする。殊に、その凝固点をほんの少し上回る温度で、製剤はしばしば不均質になる。
【0003】
付加的に、セラミド含有製剤の微生物安定化は要求が高い、それというのも、防腐剤は製剤の物理的安定性にいつも不利な影響を及ぼすからである。
【0004】
従来技術は、この問題を多様な剤形によって取り組む。
【0005】
例えば、国際公開第98/53797号(WO1998053797)には、水並びに長鎖カルボン酸とヒドロキシル基を有するカルボン酸とのエステル又はそれらの塩及び長鎖カルボン酸とポリアルコールとのエステルの群からの少なくとも1種の界面活性剤を含む、両親媒性の特徴を有するカプセル封入された水不溶性作用物質が記載されており、ここで、セラミド類は、該水不溶性作用物質であってよい。
【0006】
国際公開第99/29293号(WO1999029293)には、遊離のスフィンゴイド塩基及びセラミドの組合せを含む、局所に使用する組成物が記載されている。
【0007】
特開2008-297301号公報(JP2008297301)には、皮膚外用剤へ配合するための液体形のトリグリセリドを含有する油溶液中のセラミド類及びフィトステロール誘導体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第98/53797号
【文献】国際公開第99/29293号
【文献】特開2008-297301号公報
【文献】独国特許出願第102008001788.4号
【非特許文献】
【0009】
【文献】K. Schrader, “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika”, 第2版, p.329~341、Huethig Buch Verlag Heidelberg
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、優れた微生物安定性並びに物理的安定性を有する、セラミド類を含有する組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、以下に記載される組成物が、本発明に課された課題を解決することができることが見出された。
【0012】
したがって、本発明の対象は、A)少なくとも1種のセラミド、B)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基及びC)クエン酸トリエチルを含有する組成物である。
【0013】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1種のセラミドを含有する製剤を製造する方法並びにセラミド含有製剤の安定化のためのクエン酸トリエチルの使用である。
【0014】
本発明の利点は、本発明による組成物が、高められた貯蔵安定性を有し、したがって、それらの性質が、殊にそれらの粘度に関して、従来技術によるセラミド含有組成物に比べてよりゆっくりと、経時的に変化することである。
【0015】
本発明のもう1つの利点は、本発明による組成物が、従来技術によるセラミド含有組成物に比べて、著しい粘度低下なしにより多数の凍結融解ステップに耐えることである。
【0016】
本発明による組成物の1つの利点は、製剤中の該組成物が、改善された肌感触及び/又は髪感触をもたらす、優れた官能特性を有することである。
【0017】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、インビトロでヒト毛乳頭細胞(HFDPCs)の増殖を刺激し、これは、インビボで髪の成長の刺激に等しいことである。
【0018】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、改善された分配性を有することである。
【0019】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、改善された吸収性を有することである。
【0020】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、低下された油っぽさを有することである。
【0021】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、低下されたロウっぽさを有することである。
【0022】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、改善されたすべりやすさを有することである。
【0023】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、低下されたべとつきを有することである。
【0024】
本発明による組成物のさらなる利点は、製剤中の該組成物が、その個々の成分に比べて、改善されたシルキー感/ビロード感を有することである。
【0025】
本発明に関連して用語“セラミド”は、アシル化スフィンゴイド塩基であると理解され、ここで、該スフィンゴイド塩基は好ましくは、スフィンゴシン、スフィンガニン、6-ヒドロキシスフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンから選択されている。
【0026】
本発明に関連して“pH値”は、25℃で5分撹拌後の対応する組成物について、ISO 4319 (1977)に従って校正されたpH電極を用いて測定される値として定義されている。
【0027】
示される全てのパーセント(%)は、他に示されない限り、質量パーセントである。
【0028】
本発明による好ましい組成物は、該セラミドが、セラミドNP、セラミドAP、セラミドEOP、セラミドNDS、セラミドADS、セラミドEODS、セラミドNS、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドNH、セラミドAH及びセラミドEOHの群から選択されていることによって特徴付けられている。
【0029】
本発明による組成物が、スフィンゴシン、スフィンガニン、6-ヒドロキシスフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンの群から選択されるスフィンゴイド塩基を含有することが、本発明によれば好ましい。
【0030】
本発明による特に好ましい組成物は、該セラミドが、セラミドNP及びセラミドAPの群から選択されており、かつ該スフィンゴイド塩基が、フィトスフィンゴシンから選択されていることによって特徴付けられている。
【0031】
殊に、本発明による組成物が、セラミドとして、セラミドNP及びセラミドAPを含有し、かつ該スフィンゴイド塩基がフィトスフィンゴシンから選択されていることが好ましい。
【0032】
本発明による組成物のこの好ましい実施態様において、セラミドNP及びセラミドAPが1.5~2.5:1の質量比で、本発明による組成物中に含まれていることが好ましい。
【0033】
本発明による好ましい組成物は、成分A):B):C)の質量比が、2~6:1~2:1~5、好ましくは2~6:1~2:1~2であることによって特徴付けられており、ここで、それぞれの成分の質量は、該組成物中に含まれる全てのセラミド類、スフィンゴイド塩基もしくはクエン酸トリエチルを基準としている。
【0034】
本発明による好ましい組成物は、高い活性成分含有率を有する作用物質濃縮物であり;本発明によるそのような好ましい組成物は、成分A)及びB)が合計で、1.0質量%~9.0質量%、好ましくは1.5質量%~5.0質量%、特に好ましくは2.0質量%~3.0質量%の量で含まれていることによって特徴付けられており、ここで、該質量パーセントは、該組成物全体を基準としている。
【0035】
これらの作用物質濃縮物から、ブレンドすることにより、該作用物質濃度が上述の濃縮物に比較して低下されている製剤、殊に化粧品製剤を、製造することができ;本発明によるそのような選択的な好ましい組成物は、成分A)及びB)が合計で、0.02質量%~0.60質量%、好ましくは0.03質量%~0.40質量%、特に好ましくは0.05質量%~0.30質量%の量で含まれていることによって特徴付けられており、ここで、該質量パーセントは、該組成物全体を基準としている。
【0036】
本発明によるそのような選択的な好ましい組成物は、殊に製剤、特に好ましくは化粧品製剤である。
【0037】
本発明による製剤は、さらに、
エモリエント剤、
乳化剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
UV光保護フィルター、
酸化防止剤、
ヒドロトロープ(又はポリオール)、
固体材料及び充填剤、
皮膜形成剤、
真珠光沢添加剤、
消臭剤及び制汗剤作用物質、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
保存剤、
コンディショニング剤、
香料、
着色剤、
臭気吸収剤、
化粧品作用物質、
ケア用添加剤、
過脂肪剤、
溶剤
の群から選択される、少なくとも1種の付加的な成分を含有していてよい。
【0038】
個々の群の例示的な代表例として使用することができる物質は、当業者に公知であり、かつ例えば独国特許出願第102008001788.4号(DE 102008001788.4)から読み取ることができる。この特許出願は、本明細書に参照により援用され、したがって本開示の一部を形成する。
【0039】
さらなる任意の成分並びにこれらの成分の使用される量に関して、当業者に公知の関連したハンドブック、例えばK. Schrader, “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika”, 第2版, p.329~341、Huethig Buch Verlag Heidelbergが明確に参照される。
【0040】
それぞれの添加物の量は、意図される使用に依存する。
【0041】
それぞれの用途のための典型的な骨格処方は、公知の従来技術であり、かつ例えばそれぞれのベース成分及び作用物質の製造者のパンフレットに含まれている。これらの既存の製剤は通例、変えずに採用することができる。しかし、必要な場合には、適合及び最適化のために、所望の変更を、簡単な試験により、煩雑さを伴うことなく行うことができる。
【0042】
本発明による本発明の組成物が、D)コレステロールを、殊に本発明による作用物質濃縮物として、好ましくは0.1質量%~3.0質量%、好ましくは0.3質量%~2.0質量%、特に好ましくは0.4質量%~1.0質量%の量で含有することが、本発明によれば好ましく、ここで、該質量パーセントは、該組成物全体を基準としている。
【0043】
本発明によれば好ましい本発明の組成物は、エマルション、殊に水中油型エマルションである。
【0044】
したがって、本発明による本発明の組成物が、E)少なくとも1種の乳化剤を、殊に本発明による作用物質濃縮物として、0.1質量%~3.0質量%、好ましくは0.3質量%~2.0質量%、特に好ましくは0.4質量%~1.0質量%の量で含有することが、本発明によれば好ましく、ここで、該質量パーセントは、該組成物全体を基準としている。
【0045】
本発明に関連して用語“乳化剤”は、界面活性特性を有する有機物質であると理解され、該物質は、20℃で及び該組成物全体に対して0.5質量%の濃度で水の表面張力を45mN/m未満に低下させる能力を有することができ、かつこれらは、20℃でその分子の少なくとも50mol%が電離して存在するpH値が2~12の間に存在しない。したがって、これらの物質は、2~12の全てのpH値で大部分が全体として見かけ上非荷電で存在する。
【0046】
該表面張力は、ここでは、デュヌイによるリング法によって20℃で決定される。
【0047】
好ましくは含まれる乳化剤は、アシルラクチレート(殊にラウロイルラクチレートナトリウム)、エトキシル化脂肪アルコール(殊にセテアレス-25)、エトキシル化脂肪酸(殊にPEG_100ステアレート)、ポリグリセリンエステル(殊にポリグリセリル-3メチルグルコースジステアレート、ポリグリセリル-6ステアレート;ポリグリセリル-6ベヘネート)、グリセリンエステル、(殊にクエン酸ステアリン酸グリセリル)、エトキシル化ソルビタンエステル及びレシチンの群から選択されている。
【0048】
本発明に関連して用語“アシルラクチレート”は、脂肪酸と乳酸及び/又はポリ乳酸との塩の形の反応生成物であると理解される。
【0049】
本発明による特に好ましい組成物は、前記組成物が4.0~8.0、好ましくは4.5~7.4、特に好ましくは5.5~6.9、あるいは特に好ましくは4.0~5.4の範囲内のpH値を有することによって特徴付けられている。
【0050】
本発明のさらなる対象は、A)少なくとも1種のセラミドを含有する製剤を製造する方法であって、次のプロセスステップを含む:
a)少なくとも1種の該セラミドを用意し、かつC)クエン酸トリエチルを用意し;
b)成分A)及びC)を水と一緒に混合して、成分A)の溶液、殊に完全溶液を得る。
【0051】
本発明による方法は好ましくは、A)少なくとも1種のセラミド及びB)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基を含有する製剤を製造する方法であって、次のプロセスステップを含む:
a)少なくとも1種の該セラミドを用意し、かつC)クエン酸トリエチルを用意し、かつ少なくとも1種の該スフィンゴイド塩基を用意し;
b)成分A)及びC)及びB)を水と一緒に混合して、成分A)の溶液を得る。
【0052】
本発明による方法によって製造される製剤は、好ましくは上記の本発明による組成物であり、ここで、本発明による好ましい組成物は同様に好ましくは、本発明による方法によって製造される。
【0053】
したがって、例えば、本発明による方法において、成分A):B):C)の質量比が、2~6:1~2:1~5、好ましくは2~6:1~2:1~2の質量比で、好ましくは使用され、ここで、それぞれの成分の質量は、本方法において使用される全てのセラミド類、スフィンゴイド塩基もしくはクエン酸トリエチルを基準としている。
【0054】
本発明による方法によって製造される製剤は、殊に物理的に安定な製剤である。本発明に関連して用語“少なくとも1種のセラミドを含有する物理的に安定な製剤”は殊に、該セラミド類及び該スフィンゴイド塩基の晶出を殊に示さず、並びに25℃で6ヶ月以上の貯蔵後に分離又は不均質性を示さない製剤であると理解される。
【0055】
本発明による方法が、プロセスステップb)が少なくとも部分的に、70℃~110℃、好ましくは75℃~100℃、特に好ましくは80℃~90℃の温度範囲内で実施されることによって特徴付けられている場合に、本発明によれば有利であり、したがって好ましい。
【0056】
殊に本発明によれば好ましいのは、本発明による方法が、プロセスステップb)において、成分A)、好ましくは及びB)を、水と、70℃~110℃、好ましくは75℃~100℃、特に好ましくは80℃~90℃の温度範囲内で混合して、均質溶液を得て、成分C)を、5℃~50℃、好ましくは10℃~40℃、特に好ましくは15℃~30℃の温度範囲内で、該均質溶液と混合することによって特徴付けられている場合である。
【0057】
本発明による好ましい方法は、プロセスステップb)において、該溶液が、4.0~8.0、好ましくは4.5~7.4、特に好ましくは5.5~6.9、あるいは特に好ましくは4.0~5.4のpH範囲を有することによって特徴付けられている。
【0058】
本発明による特に好ましい方法は、プロセスステップb)において、少なくとも1種の乳化剤が含まれていることによって特徴付けられている。
【0059】
この乳化剤は、本発明によれば好ましくはプロセスステップb)において、70℃~110℃、好ましくは75℃~100℃、特に好ましくは80℃~90℃の温度範囲内で、その他の成分と混合される。
【0060】
好ましくは使用される乳化剤は、ラウロイルラクチレートナトリウム、エトキシル化脂肪アルコール(殊にセテアレス-25)、エトキシル化脂肪酸(殊にPEG_100ステアレート)、ポリグリセリンエステル(殊にポリグリセリル-3メチルグルコースジステアレート、ポリグリセリル-6ステアレート;ポリグリセリル-6ベヘネート)、グリセリンエステル、(殊にクエン酸ステアリン酸グリセリル)、エトキシル化ソルビタンエステル及びレシチンの群から選択されている。
【0061】
合計での成分A)及びB)の、該乳化剤に対する好ましい質量比は、プロセスステップb)において、1:1~1:20、好ましくは1:2~1:10であり、ここで、該質量は、含まれる全てのセラミド類、スフィンゴイド塩基及び乳化剤を基準としている。
【0062】
本発明による方法における個々の成分相互のさらに好ましい質量比は、本発明による組成物の好ましい質量比に相応する。
【0063】
同様のことは、好ましい成分A)、B)及びC)並びに乳化剤に当てはまる。
【0064】
全く驚くべきことに、クエン酸トリエチルがセラミド含有製剤の安定化に有利な効果を及ぼすことが見出され;したがって、本発明のさらなる対象は、セラミド含有製剤の物理的安定化のための、殊に均質性に関して、及び/又は製剤中の少なくとも1種のセラミドの晶出の防止のための、及び/又はセラミド含有製剤の微生物安定化のための、殊にスタフィロコッカス アウレウス(S. aureaus)、シュードモナス エルジノーサ(P. aeruginosa)、エシェリキア コリ(E. coli)、カンジダ アルビカンス(C. albicans)及びアスペルギルス ブラジリエンシス(A. brasiliensis)から選択される少なくとも1つに関して、クエン酸トリエチルの使用である。
【0065】
以下に挙げられる例において、本発明は例により記載されるが、本発明は、用途の幅が明細書及び請求の範囲全体から明らかになり、実施例において挙げられる実施態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
例1:微生物安定性
セラミド含有製剤を、多様な防腐剤の組み合わせを使用して、製造した。
【0067】
該セラミド含有製剤の組成は、第1表に見出される(濃度データは質量%である):
【表1】
【0068】
該製造を、次のように行った:
相A及びBを85℃に温めた。ついで、相Aを、Ystrahl撹拌機を用いて撹拌しながら、相Bにゆっくりと添加した。続いて、70℃に冷却し、相Cを添加し、該製剤が均質になるまで該Ystrahlを用いて均質化した。撹拌しながら、続いて25℃に冷却した。
【0069】
この製剤に、最後のステップとして多様な防腐剤を添加し、かつ均質に撹拌した。
【0070】
こうして得られた製剤を、保存効力試験(KBT)にかけた。この試験を、European Pharmacopoeia 7.0、5.1.3 Efficacy of antimicrobial preservationからの対応する手順に従って実施した。該試験が、全ての生物で少なくとも基準Bを満たさなかった場合には、該KBTは“不合格”とみなした。
【0071】
試験したのは、微生物スタフィロコッカス アウレウス(S. aureaus)、シュードモナス エルジノーサ(P. aeruginosa)、エシェリキア コリ(E. coli)、カンジダ アルビカンス(C. albicans)及びアスペルギルス ブラジリエンシス(A. brasiliensis)であった:
【0072】
【0073】
驚くべきことに、クエン酸トリエチルを含有する防腐剤の組み合わせが、該保存効力試験の要件を満たすのに対して、クエン酸トリエチルなしの防腐剤の組み合わせが、これを達成しないことが見出された。
【0074】
例2:物理的安定性
多様な防腐剤を有する例1からのセラミド含有製剤を、該セラミド類の再結晶について付加的に試験した。これを、型式Olympus IX83の光学顕微鏡を用いて行った。第3表には、該顕微鏡検査の結果がまとめられている。
【表3】
【0075】
驚くべきことに、ここでも、該クエン酸トリエチルが、セラミド類の再結晶を防止するのに対して、クエン酸トリエチルを含有しない防腐剤が、それをできなかったことが見出された。クエン酸トリエチルなしでは、該セラミド含有製剤は、該セラミド類の明らかな再結晶を示した。
【0076】
本発明の実施形態は次のとおりである:
1. A)少なくとも1種のセラミド、
B)少なくとも1種のスフィンゴイド塩基及び
C)クエン酸トリエチル
を含有する、組成物。
2. 前記セラミドが、セラミドNP、セラミドAP、セラミドEOP、セラミドNDS、セラミドADS、セラミドEODS、セラミドNS、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドNH、セラミドAH及びセラミドEOHの群から選択されていることを特徴とする、前記1.に記載の組成物。
3. 前記スフィンゴイド塩基が、スフィンゴシン、スフィンガニン、6-ヒドロキシスフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンの群から選択されていることを特徴とする、前記1.又は2.に記載の組成物。
4. 前記セラミドが、セラミドNP及びセラミドAPの群から選択されており、かつ
前記スフィンゴイド塩基が、フィトスフィンゴシンから選択されていることを特徴とする、前記1.から3.までのいずれかに記載の組成物。
5. セラミドとして、セラミドNP及びセラミドAPが含まれており、かつ
前記スフィンゴイド塩基が、フィトスフィンゴシンから選択されていることを特徴とする、前記1.から4.までのいずれかに記載の組成物。
6. 成分A):B):C)の質量比が、2~6:1~2:1~5であることを特徴とする、前記1.から5.までのいずれかに記載の組成物。
7. セラミドNP及びセラミドAPが、1.5~2.5:1の質量比で含まれていることを特徴とする、前記5.又は6.に記載の組成物。
8. 成分A)及びB)が合計で、1.0質量%~9.0質量%、好ましくは1.5質量%~5.0質量%、特に好ましくは2.0質量%~3.0質量%の量で含まれており、ここで、前記質量パーセントは、前記組成物全体を基準としていることを特徴とする、前記1.から7.までのいずれかに記載の組成物。
9. 成分A)及びB)が合計で、0.02質量%~0.60質量%、好ましくは0.03質量%~0.40質量%、特に好ましくは0.05質量%~0.30質量%の量で含まれており、ここで、前記質量パーセントは、前記組成物全体を基準としていることを特徴とする、前記1.から7.までのいずれかに記載の組成物。
10. 前記組成物が、
D)コレステロールを、
好ましくは、0.1質量%~3.0質量%、好ましくは0.3質量%~2.0質量%、特に好ましくは0.4質量%~1.0質量%の量で、
含有し、ここで、前記質量パーセントは、前記組成物全体を基準としていることを特徴とする、前記1.から9.までのいずれかに記載の組成物。
11. 前記組成物が、4.0~8.0、好ましくは4.5~7.4、特に好ましくは5.5~6.9、あるいは特に好ましくは4.0~5.4の範囲内のpH値を有することを特徴とする、前記1.から10.までのいずれかに記載の組成物。
12. A)少なくとも1種のセラミドを含有する製剤を製造する方法であって、次のプロセスステップを含む:
a)前記少なくとも1種のセラミドを用意し、かつC)クエン酸トリエチルを用意し;
b)成分A)及びC)を水と一緒に混合して、成分A)の溶液を得る、
前記方法。
13. プロセスステップb)を少なくとも部分的に、70℃~110℃、好ましくは75℃~100℃、特に好ましくは80℃~90℃の温度範囲内で実施することを特徴とする、前記12.に記載の方法。
14. プロセスステップb)において、前記溶液が、4.0~8.0、好ましくは4.5~7.4、特に好ましくは5.5~6.9、あるいは特に好ましくは4.0~5.4のpH範囲を有することを特徴とする、前記12.又は13.に記載の方法。
15. セラミド含有製剤の、殊に均質性に関しての、物理的安定化のため、及び/又は製剤中の少なくとも1種のセラミドの晶出の防止のため、及び/又はセラミド含有製剤の、殊にスタフィロコッカス アウレウス(S. aureaus)、シュードモナス エルジノーサ(P. aeruginosa)、エシェリキア コリ(E. coli)、カンジダ アルビカンス(C. albicans)及びアスペルギルス ブラジリエンシス(A. brasiliensis)から選択される少なくとも1種に関しての、微生物安定化のための、クエン酸トリエチルの使用。