(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】プロバイオティクス強化食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20220624BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20220624BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220624BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220624BHJP
A21D 13/24 20170101ALI20220624BHJP
A21D 13/28 20170101ALI20220624BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/20
A61K35/747
A61P1/14
A21D13/24
A21D13/28
(21)【出願番号】P 2020152221
(22)【出願日】2020-09-10
(62)【分割の表示】P 2017520856の分割
【原出願日】2015-06-22
【審査請求日】2020-10-09
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】519180943
【氏名又は名称】グッドマン フィールダー ピーティーイー. リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ナッグ,アーラップ
(72)【発明者】
【氏名】ダス,シャーンタヌ
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-524026(JP,A)
【文献】特開2012-055278(JP,A)
【文献】特表2011-510633(JP,A)
【文献】Food Hydrocolloids,2014年,Vol.39,pp.231-242
【文献】Food Hydrocolloids,2012年,Vol.29,pp.166-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D,A23L,A61K,A61P
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティクス強化食品を製造する方法であって、
(a)ある量の乳、乳固形分または還元乳を含む組成物に、ある量の単一種のプロバイオティクス微生物または複数の異なるプロバイオティクス微生物の組み合わせを予め接種するステップであって、前記組成物は、前記プロバイオティクス微生物以外には、完全に乳由来であるか本質的に乳に見出される成分からなる、ステップと、
(b)前記プロバイオティクス微生物(複数可)の初期定常増殖期の前記組成物を、前記組成物中のプロバイオティクス培養物が7logCFU mL
-1を超えるか9.0logCFU mL
-1を超える細胞数に達するまでインキュベートするステップと、
(c)前記組成物を前記食品の表面の少なくとも一部分に適用するステップ
であって、前記食品の表面における前記組成物が0.1mm未満の厚さの薄層として適用され、食品上で実質的に透明である、ステップと、
を含み、
前記プロバイオティクス微生物のうちの少なくとも1種は、細菌であり、
前記食品は、パン、ミューズリーバーまたはスナックパンであり、かつ
ステップ(a)の前に、ラクトース、グルコースおよび/またはガラクトースを含む本質的に乳に存在する糖の種類から選択される少なくとも1種の糖の追加量が前記組成物に補充される、
25℃で保存した場合、前記組成物の適用後少なくとも5日間、前記プロバイオティクス微生物の細胞数がプロバイオティクス強化食品当たり7logCFUを超える、方法。
【請求項2】
ステップ(b)の後かつステップ(c)の前に、前記組成物を均質化して4cP未満の粘度を有する液体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)において、200μl~2mlの前記組成物を前記食品の表面に適用する、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)において、前記食品の全表面にわたり前記組成物を適用する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)において、前記食品の表面上に前記組成物を噴霧する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)の後に、
(d)前記食品の表面上の前記組成物を70℃未満の温度で乾燥させるステップ
をさらに含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥させるステップ(d)が、前記食品の表面および/または前記食品の複数の面に適用された前記組成物の水分活性(a
w)が0.5~0.9になるまで、および/または前記組成物を前記食品の表面に適用する前の前記食品の元の水分活性(a
w)とほぼ一致するまで行われる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
食品と、前記食品の表面上に適用された組成物とを含む、プロバイオティクス強化食品であって
、
前記組成物は、少なくとも1種のプロバイオティクス微生物と、完全に乳由来であるか本質的に乳に見出される成分とからなり、
前記完全に乳由来であるか本質的に乳に見出される成分は、乳、乳固形分または還元乳を含み、
前記組成物は、7logCFU mL-1を超えるか9.0logCFU mL-1を超えるプロバイオティクス微生物の細胞数を有し、
前記プロバイオティクス微生物のうちの少なくとも1種は、細菌であり、
前記食品は、パン、ミューズリーバーまたはスナックパンであり
、
前記組成物は、乳由来の糖を含
み、
25℃で保存した場合、前記組成物の適用後少なくとも5日間、前記プロバイオティクス微生物の細胞数がプロバイオティクス強化食品当たり7logCFUを超え、かつ
前記食品の表面上の前記組成物が0.1mm未満の厚さであり、食品上で実質的に透明である、プロバイオティクス強化食品。
【請求項9】
25℃で保存した場合、前記組成物の適用後少なくとも5日間、前記プロバイオティクス微生物の細胞数がプロバイオティクス強化食品の一食分当たり7logCFUを超える、請求項
8に記載のプロバイオティクス強化食品。
【請求項10】
前記一食分が10~100グラム、または30~50グラムである、請求項
9に記載のプロバイオティクス強化食品。
【請求項11】
前記食品の表面上の前記組成物
が0.05mm未満の厚さである、請求項
8~
10のいずれか1項に記載のプロバイオティクス強化食品。
【請求項12】
前記食品が0.5~0.9の水分活性(a
w)レベルを有する、請求項
8~
11のいずれか1項に記載のプロバイオティクス強化食品。
【請求項13】
前記少なくとも1種のプロバイオティクス微生物が、乳酸菌、非乳酸菌、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ビフィズス菌、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
8~
12のいずれか1項に記載のプロバイオティクス強化食品。
【請求項14】
腸管の機能異常もしくは障害および/またはこれらに関連する状態の改善、処置または予防のための、および/または免疫を改善する、抗アレルギーとして作用する、湿疹を治療する、および/またはコレステロール低下を補助するための医薬品の製造における、請求項
8~
13のいずれか1項に記載のプロバイオティクス強化食品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス強化食品およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンは、世界の大部分の地域での主食である。したがって、食品および健康産業では、プロバイオティクスを含む、機能的効果およびターゲットの健康上の利益のためのプラットフォームとして、パンを用いることに大きな関心が持たれている。
【0003】
プロバイオティクスは、腸管でその効果を介してレシピエントに好影響を与える生きた微生物のサプリメントである。さらに、プロバイオティクスは、腸の健康を促進するのに用いられる3つの食品成分の一つである(他の成分は消化されない炭水化物と生理活性の植物代謝物である)。
【0004】
今日、生きた微生物を含んでいる商業的に有用な機能性パンを開発する努力は、行われておらずおよび/または市場に出す成功に至ってない。
【0005】
この理由は第一に、過去5~10年にわたり、パンの焼成工程の前にプロバイオティクスがパン内で一体的に混合されているパンを開発することに焦点が合わせられていたからである。
【0006】
Zhangらが、2014(Journal of Food engineering)に例証したように、主要な問題点は、安心して消費できる大部分のプロバイオティクス培養物は熱に弱いことにもある。したがって、細胞生存率は焼成工程の間、著しく減少し、それにより、もちろん、続いて、消費されると腸内でプロバイオティクスの有効性が減少する。これは、例えば、治療上許容可能なlogCFU(コロニー形成単位。試料中の生きた細菌細胞の推定数)が6を超える生きたプロバイオティクスヨーグルトと比較されている。
【0007】
この問題点に対処するために様々な努力が試みられてきた。
【0008】
例えば、Altamirano-Fortoulら,2012(Food Hydrocolloids)で、著者らは、パンの焼成の前に、細菌を保護するためにプロバイオティクスをマイクロカプセル化することおよび/またはデンプンを層として用いることを記述している。しかし、このカプセル化方法でも、細菌細胞の生存率は加熱の結果として減少した。同様に、この目的のために商業レベルで細菌をカプセル化することは、非常に問題があり、同じアプローチでは、細胞生存数を改善するために、大規模に、または高濃度/大量のプロバイオティクスを用いることによって効率的に生成できる可能性は低い。今のところ、高温の焼成から保護するために、商業的に適用できるカプセル化機構は開発されてない。
【0009】
さらに、著者は、パンの外皮の物理化学的性質の問題となる変化、水分活性の増加およびパンの破壊力の低下を報告した。著者は、官能評価によってパンの良好な容認性が提供されることを示唆した。しかし、本出願者は、デンプンを加えることによってパンの知覚認知プロファイル(例えば味、触感および/または外観)が著しく減少したと想像する。
【0010】
同様のアプローチにおいて、米国特許出願第20130115334号は、高温処理に耐えることが報告された粒状プロバイオティクス成分を記載している。パン生地に添加して、200℃で10分間焼成すると、細胞集団の50~80%が生存したことが報告された。
【0011】
米国特許出願第2010/0210000号は、焼成工程でバチルス・コアグランスと呼ばれる熱安定性の芽胞形成プロバイオティクスを使用することによって加熱問題の解決を試みた。
【0012】
バチルスを使用する大きな弱点は、バチルスが単一種または単一株であり、異なる腸内微生物叢または病気のプロファイルを有する様々の消費者をターゲットにすることができるラクトバチルスおよびビフィズス菌のような他の培養物の混合物ほど有効ではないことである。プロバイオティクスの有効性は、ホストの消化系または免疫系によって実質的にかなり変化することが確認されている。したがって、例えば米国特許出願第2010/0210000号で教示された極めて特異的な単一細菌株は、最終消費者群全体に対する治療上の利益が極めて限定的であるに違いない。
【0013】
また、バチルス・ジャンルの一部の種は、病原体である(例えば、バチルス・スブチリス(枯草菌)は食中毒を引き起こす)。欧州委員会のHealth & Consumer Protection Directorate-General(2002年10月17日に更新)は、一部のバチルス株が「問題を含むことがあり、in vitroおよびin vivoで毒性および病原性に対する検査の結果が陰性であることが明確に定められた株のみが受け入れられるべきである」ことを明らかにした。したがって、この潜在的危険性および/またはおそらく有害であるという一般認識のために、バチルス・コアグランス強化パンは主流ではなかったと思われる。最も信頼されているプロバイオティクス(例えばラクトバチルス)で強化されたパンが現在存在しないのは、前述のようにカプセル化などの利用できる技術的解決法がないことがおそらく原因であることは明白である。
【0014】
国際公開第1998009839号は、食品上に、または例えば薄いクリスプブレッドの詰め物として食品内に適用されるペースト状の配合物の使用を記載している。ペーストを使用する概念は、ペーストがプロバイオティクスの増殖を軽減させ、同時に保存工程中に生存を助けるので、有利なものとして考察された。このプロバイオティクスを脂肪と混合して、ペースト状の稠度をもたらした。
【0015】
同様に、欧州特許第1269857号および国際公開第2007/058614号は、食品の詰め物またはコーティングで用いられる同様の充填組成物またはペースト状組成物を記載している。
【0016】
これらのペーストの主な問題は、食品の味と外観が本質的に変わってしまうことにあり、これは好ましくないことが多い。パンとの関連で、商業的目的は、通常のパンと比較して味または外観が著しく変わらない、プロバイオティクス含有パンを提供することである。
【0017】
第二に、ペースト状の稠度をもたらすために使用される成分は、最も一般的には、脂肪、非天然の増粘剤もしくは他の賦形剤の添加を必要とし、および/または製品の味をマスキングするために甘味料が必要であろう。この場合もやはり、製品の全体的な健全さが低下する、または少なくとも消費者がそれらに気づき得ることから、不利である。
【0018】
Soukoulisら,2014(Food Hydrocolloids)は、パンの表面に適用された生きたプロバイオティクス薄膜(ラクトバチルス・ラムノーサス・GGによって)を補助する組成物を開示している。この組成物は、良好な安定性および微生物生存率を保持するために重要であると考察されているアルギン酸ナトリウムなどのヒドロゲルを含む。プロバイオティクス薄膜を含むパンは対照パンと比較して視覚的差異を示さず、安定性を示すことが結果から示唆されているが、プロバイオティクス薄膜がパンの知覚認知プロファイルに何らかの効果を及ぼすかどうかは考察されてない。
【0019】
さらに、Soukoulisらの段落2.2と2.3に概要が述べられているように最終製品を生成する製造手順は不便であり、かつ時間効率が悪い。最初の培養培地(PBS緩衝液、次いでMRSブロス)を用いて、培養物を増殖させてアリコートを形成し、これを以降の使用のために凍結させる。次いで、続いてのステップでは、乾燥材料(例えばアルギン酸ナトリウムおよび他の添加剤)を水に再分散させることによって、プロバイオティック薄膜形成溶液を調製する必要があり、次いでラクトバチルス・ラムノーサス凍結アリコートを加えてから、パンに適用する。
【0020】
国際公開第2002/065840号は、発酵後、直接シリアルに適用される組成物を記載している。この工程は、高温乾燥が不要であることから、有利であると思われる。良好な保存安定性、高いCFU値を良好に保持、および非プロバイオティクスシリアルと同様の外観を示すために、シリアルが考察された。
【0021】
しかし、国際公開第2002/065840号でのこれらの最終シリアル製品が0.2の水分活性を有し、その結果このシリアルがプロバイオティクスと共に入ってくる残留水分を吸収することができ(乾燥ステップを含まない)、総体的には、最終混合物の水分活性が0.2を超えて上がらなかったことを考慮することは重要である。一方では、パン製品の水分活性は、少なくとも0.5、およびほとんどの場合約0.8~0.9である。例えば、パンの内側の水分活性は0.8~0.9(非特許参考文献1参照)であり、パンの外皮の水分活性は約0.7~0.8(非特許参考文献2参照)であり、およびシリアルバーの水分活性は約0.6~0.7(非特許参考文献3参照)である。
【0022】
したがって、周囲貯蔵条件で、および特定のパン製品では約0.5を超える高い水分活性下でプロバイオティクスの安定性を提供する課題ははるかに困難である。国際公開第2002/065840号の教示は、パンなどの水分活性の高い製品に対して何ら有用な情報を示してはいない。
【0023】
さらに、国際公開第2002/065840号の組成物は、消泡剤、イースト抽出物、肉ペプトンおよび緩衝塩(とりわけ)を含む広範な賦形剤を含む。
【0024】
したがって、
-水分活性が高い、具体的には0.5を超える水分活性のパンなどの、得られた食品の治療上および商業的に許容可能な生きたプロバイオティクス数(対数コロニー形成単位、CFU)を可能にする。
-通常の(非プロバイオティクス)食品に極めて類似したまたは実質的に同一の味および/または外観を提供する。
-保存が安定している。
-追加の合成賦形剤または増粘剤を必要としない。
-製造するのに簡単で効率的であり、および基本的な食品加工機械のみを必要とする。
-焼成食品またはパンの他に広範囲の食品に適応できる、および/または
-広範囲のプロバイオティクス株またはそれらの組み合わせでの使用に適応できる、
製品(および関連する工程)を特定することは有益であろう。
【0025】
さらに大まかに言えば、前述の諸問題に対処すること、または少なくとも有用な選択肢を一般に提供することが本発明の一目的である。
【0026】
本明細書に引用するいずれの特許または特許出願を含むすべての参考文献でも、参照によって本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献も従来技術を構成するとは認められない。参考文献を考察することによって、それらの著者が断定していることを述べ、本出願者らは、引用した文献の正確さおよび適切性に疑問を呈する権利を留保する。いくつかの従来技術刊行物を本明細書に参照しているが、この参照は、これらの文献が当技術分野、ニュージーランドまたは他のいずれの国における一般知識の一部を形成することを認めていないことを明確に理解されたい。
【0027】
本明細書全体を通じて、「含む」またはその変形、例えば「含んでいる」もしくは「含むこと」という単語は、記載の要素、整数もしくはステップ、または複数の要素、整数もしくはステップの群を包含することを意味するが、いずれの他の要素、整数もしくはステップ、または複数の要素、整数もしくはステップの群を排除することを意味しないことが理解されよう。
【0028】
本発明のさらなる態様および利点は、例として挙げる以下の説明から明らかになろう。
【0029】
非特許参考文献
1.Curtiら,The use of potato fibre to improve bread physicochemical properties during storage, Food Chemistry.,2005(in Press)。
2.Curtiら,Effect of the addition of bran fractions on bread properties. Journal of Cereal Science.,2013。
3.Aigesterら,Physicochemical properties and sensory attributes of resistant starch-supplemented granola bars and cereals. Food Science and Technology,2011。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の態様によれば、
a)少なくとも1種のプロバイオティクス生物が接種された組成物を食品の表面の少なくとも一部分に適用するステップであって、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含む基剤を含むステップを特徴とするプロバイオティクス強化食品を製造する方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、プロバイオティクス強化食品において、
食品の少なくとも一部分が少なくとも1種のプロバイオティクス生物を含む組成物を含み、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含む基剤を含むことを特徴とするプロバイオティクス強化食品が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、腸管の機能異常もしくは障害、および/またはこれらに関連する状態の改善、処置または予防のためのプロバイオティクス強化食品の製造のための、完全に乳由来である組成物の使用が提供される。
【0033】
免疫の改善、抗アレルゲン剤としての作用、湿疹の治療、および/またはコレステロール低下の補助のための本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品の製造のための完全に乳由来である組成物の使用。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品を、それを必要とする人または他の動物に投与することによる、腸管機能異常もしくは障害および/またはこれらに関連する状態を処置、改善または予防する方法が提供される。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、免疫を改善する、抗アレルゲン剤として作用する、湿疹を治療する、および/またはコレステロール低下を補助するために、本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品を、それを必要とする人または他の動物に投与することによる処置の方法が提供される。
【0036】
本発明の重要な利点は、約0.5を超える水分活性レベルを含み、商業的および治療的な生存細胞数(一食当たり7.0logCFUを超える)でプロバイオティクス微生物を有するパンなどの、プロバイオティクス強化食品を調製できることである。
【0037】
また、本発明は調製するのが容易であり、食品の味、色または外観についての全体的な知覚認知に悪影響を及ぼすことはない。
【0038】
有利には、本発明は乳由来の組成物のみに依存する。
【0039】
本発明のさらなる利点および好ましい特徴は後述する。
【0040】
定義および好適な実施形態
本明細書全体にわたり、基剤(組成物の基剤を参照するとき)という用語は、組成物中に存在するプロバイオティクス微生物(複数可)以外のすべての成分または物質、および必要に応じて、粉末状の組成物を液体に還元するために使用され得る水などの液体を意味すると解釈されるべきである。
【0041】
本明細書全体にわたり、乳という用語は、哺乳動物の乳腺から生成される液体を意味すると解釈されるべきである。本発明による乳由来の特徴は、任意の数の哺乳動物を起源とすることができるが、しかし最も商業的に適用できる哺乳動物の乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、ラクダ、バッファローなどが挙げられる。
【0042】
本明細書全体にわたり、食品という用語は、体のために栄養補給を供給するために消費される任意の食用物質を意味すると解釈されるべきである。
【0043】
本明細書の残りの部分にわたり、簡単にするために、食品は、焼成パンと呼ぶことにする。しかし、本明細書に記載の発明概念は、他の種類の食品(焼成または非焼成のいずれか)、例えばミューズリーバー、朝食用シリアル、ビスケット、マフィン、ピザ生地、キャンディーバー、および特に、水分活性が0.5より高い食品に適用されることができる。本発明は、穀粉製品に特定の用途を有する。本出願者は、本発明概念が過敏性腸症候群(IBS)を著しく軽減すと考えられている低FODMAP食(FODMAPは、「発酵性オリゴ糖(フルクタンとガラクトオリゴ糖)二糖類(ラクトース)単糖類(フルクトース)およびポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトールとマルチトール)」を表す)を摂取している人に対して特に商業的応用を有し得ることも想定している。しかし、FODMAP食の不利な点は、繊維およびプレバイオティクスがしばしば少ないことである。これは、腸内微生物叢に悪影響を与えることもある。その代わりに、本発明によるプロバイオティクス強化低FODMAPパンは、健康な腸内微生物叢を維持するためにプロバイオティクスも提供し得ることから、低FODMAP食を使用するより特に有用であり得る。
【0044】
本明細書全体にわたり、プロバイオティクス強化食品という用語は、本発明に従ってその表面の一部分にプロバイオティクス組成物を含むように適応されたパンなどの任意の食品を意味すると解釈されるべきである。
【0045】
本明細書全体にわたり、表面という用語は、焼成の結果形成される外皮としても知られているパンの外側部分を意味すると解釈されるべきである。外皮は、焼成パンの底部、両面および上部を含む、パンの表面全体を形成する。
【0046】
本明細書全体にわたり、薄層という用語は、パンの表面の少なくとも一部分に(例えば、組成物を噴霧する、もしくは広げる、もしくは塗りつけることによって)適用されるコーティング、膜、薄膜または皮を意味すると解釈されるべきである。
【0047】
本明細書全体にわたり、実質的に乾燥した(または乾燥している)という用語は、パンの表面に水分が適用された後、その薄層から水分の大半、大体、またはすべてが除去されていることを意味すると解釈されるべきである。
【0048】
したがって、乾燥、乾燥している、または実質的に乾燥しているという用語は、薄層内に一部の水分が保持されることを許容するが、本質的には水分は自由に利用できないと認識すべきである。薄層に関して乾燥または乾燥しているという用語は、非改良食品と比較して、類似の水分含量および/または水分活性(aw)を有するプロバイオティクス強化食品をもたらすとみなされるべきである。
【0049】
水分活性は、比率、すなわち、物質中の水の部分蒸気圧を標準状態の水の部分蒸気圧で割った比率として定義される。食品科学において、標準状態は、典型的に、同じ温度での純水の部分蒸気圧として定義される。純水の水分活性は1である。
【0050】
本明細書全体にわたり、および国連の食糧農業機関とWHOにより定義されているように、プロバイオティクスという用語は、適当量で経口投与されると、ホストの健康に利益をもたらすことができる生きた微生物(細菌および/または酵母)のコレクションを意味すると解釈されるべきである。このコレクションは、微生物の単一種または微生物の複数種の組み合わせのいずれかを包含すると解釈されるべきである。
【0051】
一般に、特定の微生物は、いくつかの異なる基準を満たすことが可能である場合、プロバイオティックとみなされることができる。これらには、生理的要求と生産需要を通しての妥当な生存、ならびにホストに有益な効果を発揮する能力が挙げられる(B.O‘Grady,2005)。
【0052】
現在、プロバイオティックであることが知られている種は多数ある。これらには、ラクトバチルスおよびビフィズス菌が含まれ、これらは商業的重要性が高い。したがって、これらはプロバイティクス生物として食品産業で広く使用されている。ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株、ラクトバチルス・ラムノーサス、およびラクトバチルス・ロイテリは普及している選択肢であり、長い適用の歴史を有し、それに続いて一部のビフィズス菌種、および医薬用途で主に使用されている数種の非乳酸菌がある(Holzapfelら,1998)。プロバイオティクスは、凍結乾燥形態で、または発酵食品としてのいずれかで市販されている。
【0053】
従来、科学文献は、免疫調節および腸粘膜バリアの強度の向上に向けてプロバイオティクス微生物の1種または異なる株の組み合わせのいずれかからの健康上の利益に重点を置いてきた。これらの効果は、腸内微生物叢の改変、病原体接着または活性化を防止するのに役立つ腸粘膜との接着能、食品タンパクおよび細菌酵素の能力の改変、ならびに腸粘膜透過性に影響を与えることによって達成される(Holzapfelら,1998)。
【0054】
2000年に、KailasapathyとChinによるレビューによって、プロバイオティクスが免疫、コレステロールの低下、ラクトース耐性の改善において、およびさらに一部の癌の予防において有益な役割を果たすことも報告されていることがわかった。また、プロバイオティクスは、消化機能および呼吸機能、ならびに小児および他の高リスク集団において感染症の予防に関連している(出典元WHO,2001)。これに基づき、本発明は、そのような文献に記載の広範な病態のいずれか1種またはその組み合わせを治療するため、および/または健康全般を単に向上させるための治療上の利益も有すると考えられる。
【0055】
本明細書全体にわたり、接種する、接種されている、および接種という用語は、少なくとも1種の細菌の菌株を組成物に付加する工程、および次いで最も典型的には発酵工程によってプロバイオティクス菌株を7.0logCFU mL-1を上回る、より理想的には9.0logCFU mL-1を上回る商業的および治療上のレベルまで増殖させることを意味すると解釈されるべきである。本発明に従う治療効果をもたらすために、7.0logCFU mL-1を達成する前発酵の工程は本発明の一部として行う必要はなく、および代わりに第三者によって供給され、次いで十分な量/濃度で組成物に付加されてもよいと認識されるべきである。しかし、本明細書に概要を述べた理由から、施設内で前発酵のステップを行うと、細菌の増殖期を効果的に調節することができ、便利であり、および特にパンの表面に適用した後、経時的な細胞生存率の向上を示すことから、施設内で行うことが好ましい。例えば、約16時間の前発酵ステップは終夜行うことができ、および翌朝に発酵組成物を新たにパンに適用することができる。
【0056】
プロバイオティクス強化食品を調製する方法:
プロバイオティクス強化食品を調製する方法は、
a)少なくとも1種のプロバイオティクス生物が接種された組成物を食品の表面の少なくとも一部分に適用するステップであって、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含有する基剤を含むステップ、を特徴とする。
【0057】
好ましくは、ステップa)は、食品の調理後に行われる。しかし、当然のことながら、本発明は調理済み食品または焼成食品に必ずしも限定されず、したがって、非調理済み食品または非焼成食品に適用可能であり得る。
【0058】
従来技術の方法と比較して本発明の重要な有利な相違点は、以下で論じるように、薄層として組成物を食品に適用した後、単に適度に乾燥させるステップのみを必要とすることである。
【0059】
パンの場合、プロバイオティクス細胞生存率の減少を含む多くの不利な点を有する従来技術とは異なり、プロバイオティックは本質的にパン内に適用されてから焼成するのではない。したがって、本発明では、焼成工程の間に使用される熱安定性のあるプロバイオティクスを使用する必要がなく、および/または最適に焼成されたパンを提供するために必要な焼成条件の変更も必要がない。
【0060】
従来技術のペーストアプローチと比較して、組成物が薄層として適用されると、早く乾燥して、パンの表面に接着させることができ、さらに達成可能な細胞生存率を予想外に保持できるという発見により、本発明の有利なステップは達成可能である。
【0061】
かなり保存した後でも、および従来技術のシリアル系のプロバイオティクス組成物よりもはるかに高い水分活性レベルを保持するときも、細胞生存率は持続する。また、通常の非プロバイオティクスパンに見られる水分活性変化と比較して、その変化が極めて少なく、パンの種類にもよるが、一般的なaw値は0.5から0.9の間である。前述のように、大部分のパンの内側/外皮の水分活性は、0.7から0.9の間の範囲である。バンズ/チャバタで本出願者が試験した試作試料から、約0.7から0.8の水分活性を確認した。
【0062】
さらに、従来技術で見られるペースト方法とは異なり、得られた食品は、実施例で例示した非プロバイオティック・パンと実質的に同じ味と外観を保持している。これは、実際、ペーストでは可能ではない。
【0063】
最終的に、本方法は非常に効率的であり、標準的な焼成設備およびキッチン設備のみを必要とする。
【0064】
好ましくは、ステップa)は、200μLから2mLのプロバイオティクス培養物をパンに適用することを含む。
【0065】
パンに適用する量は主にパンの大きさによることを認識すべきである。当業者は、その意図が一食当たりで生存細胞の治療有効量または用量、すなわち一食当たり約7.0logCFUを提供することであることを認識するであろう。典型的なパンの1食分の大きさは、約10から100グラムであり、さらにおそらく30から50グラムであろう。したがって、一食分のパンの場合、適用される量は、一般的に大きなローフより小さい。大きなローフの場合、組成物が表面(例えば上部表面)に確実に均一に広げられ、パンを一切れに切った場合、各一人分に適当量のプロバイオティクスが確実に供給され得ることがより重要となり得る。
【0066】
より好ましくは、ステップa)は、500μLから1mLのプロバイオティクス培養物をパンに適用することを含む。
【0067】
予備調査において、パンの水分含量が不必要に増加すると、パンの触感および他の官能特性を損なうことなく元の水分含量に近いパンになるように乾燥させる必要があるため、パンの水分含量の不必要な増加を防止するために、本発明者らはこれらの量が特に有利であることを発見した。
【0068】
また、組成物をより多く添加する場合(または組成物の粘度がペーストの様に高い場合)、より長い/より厳しい乾燥条件が必要となろう。より厳しい乾燥は、プロバイオティクスの生存率の大きな減少をもたらし得る。
【0069】
これらの技術的なハードルと相まって、本発明者らは、適当量のプロバイオティックがパンの表面(好ましくは、少なくともパンの上部表面全体にわたり)の薄層中に存在し、なおも適切な細胞生存率と用量を供給することを確実に行う必要があった。
【0070】
好ましくは、ステップa)は、確実に薄層の厚さを0.1mm未満にすることを含む。
【0071】
より好ましくは、ステップa)は、確実に薄層の厚さを0.05mm未満にすることを含む。
【0072】
上述のように、本発明者らは、薄層が0.1mm未満、またはより好ましくは0.05mm未満であることが、乾燥工程の効率を向上させるために、生存細胞数の減少を回避しながら水の水分問題を防止するために、およびまた組成物が確実にパンの表面に接着するのを助けるために、およびプロバイオティクスパンの味と外観の変化を防止するのを助けるために有利であることを特定した。
【0073】
好ましくは、ステップa)は、食品の側面全体にわたり薄層を広げることを含む。
【0074】
例えば、側面は焼成パンの上部の一部分であり得る。他の例において、焼成パンのいくつかの他の表面(例えば、焼成パンの長手側面、端部分および底部)と共に上部部分にわたり薄層を適用することに適用できる。卵型のロールの別の例において、薄層はロール外面全体に適用できる。これは、多くのプロバイオティック用量が必要とされるとき、またはプロバイオティックの保存可能期間が短い場合、有用になり得る。
【0075】
好ましくは、ステップa)は、食品の表面に組成物を噴霧することを含む。
【0076】
噴霧は、迅速な適用を可能にして、かつ噴霧工程の結果として薄層をもたらすことに役立つことから有利である。自動化も、パンの表面全体ににわたり均一な密度を可能にするために有用であり得る。
【0077】
一選択肢として、ステップa)はディスペンサ(例えばピペット)を用いて行われてもよく、次いで組成物をスパチュラまたはブラシを用いて薄層として広げてもよい。
【0078】
好ましくは、方法は、組成物が食品の表面に適用された後に、組成物を乾燥させることも含む。
【0079】
結果を向上させるために、乾燥の条件は、製品の官能効果に影響を与えないようにすること、乾燥工程における細菌の最適な生存、ならびに細菌の生存の向上を含む、いくつかの要因を考慮する必要がある。
【0080】
好ましくは、方法は、薄層が0.5から0.9の間の水分活性(aw)を含むまで、パンを乾燥させることを含む、さらなるステップb)を含む。この範囲は、パンタイプの製品の代表的な水分活性を表すことから選択される。この目的は、パンの知覚認知のいかなる変化も防ぐのに役立つように、組成物の水分活性をパンの水分活性にマッチさせることにある。
【0081】
前述のように、本発明の重要な利点および際だった特徴の1つは、食品の高水分活性レベルで、例えばパンの場合、約0.7から0.9で組成物の安定性とプロバイオティクス生存率を保持する能力である。これは、全く異なる組成物基剤を有し、および約0.2の極めて低い水分活性でシリアルに適用される国際公開第2002/065840号の焦点と極めて異なる。しかし、組成物が0.5未満の水分活性レベルで食品に適用可能であり得ることを認識すべきである。しかし、約0.5を超える高い水分活性で食品に作用できることは、特に有益でかつ商業上重要であると考えられる。
【0082】
好ましくは、ステップb)は組成物の薄層が約0.5から0.8の間の水分活性(aw)レベルを含むまで、組成物を乾燥させることを含む。
【0083】
前述のように、好ましい目的は、組成物の薄層を適用する前に、パンの元の水分活性(aw)とほぼ一致させることにある。
【0084】
好ましくは、ステップb)は70℃未満の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0085】
70℃を超える高い乾燥温度は、生きたプロバイオティクス細胞を破壊し得るだけでなく、パンの触感を崩れやすい外皮を有するよりクリスピーなものへと変化させ得る。
【0086】
より好ましくは、ステップb)は30℃から70℃の間の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0087】
乾燥ステップは30℃より下で行うこともできるが、予備試験から、これは製品品質に悪影響を与えることもあり、所要乾燥時間が不必要に長くなることが示唆されている。
【0088】
最も好ましくは、ステップb)は50℃から60℃の間の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0089】
これらの好ましい乾燥温度は、パンを焼成するために用いられる温度(一般的には約180℃)とはかなり異なる。
【0090】
好ましくは、ステップb)は10分から30分の間で行われる。
【0091】
乾燥時間は、温度、空気の流れ、湿度、組成物の適用方法、パンの形状等を含む多数の要因に依存し得る。条件および乾燥時間は大きく変更され得るが、しかしその意図はパンの水分活性を組成物が適用される前の元の水分活性近くに戻すことであることを認識すべきである。また、乾燥ステップは、確実に組成物をパンに効果的に固着させるのに十分でなければならない。50℃から60℃の間の温度で、10分から30分の間、特に15分から20分の間の乾燥時間が作業効率と製品品質に理想的であることがわかった。
【0092】
最も好ましくは、ステップb)は、15分から20分の間で行われる。
【0093】
本発明者らは、乾燥ステップb)を行うための好適で便利な機械が強制空気対流式であると考える。
【0094】
ステップb)を行うための他の選択肢としては、熱風トンネルを通過する連続コンベヤーベルトの使用が挙げられる。乾燥ステップが単純に受動蒸発によって、例えば、室温条件下で約24時間の間、行われることもできる。しかし、これの不利な点は、この間、微生物が増殖し続けて、細胞生存率が減少する可能性および、または食品の味に有害な変化をもたらし得ることを含み得る。
【0095】
次いで、ステップb)の後、食品は通常のパンの条件下(例えば、25℃で最高5日間)で、プロバイオティクス培養物の細胞生存率が実質的に何ら減少することなく、保存され得る。これを、実施例で例示する。得られたプロバイオティクス強化食品を冷蔵または冷凍することもできる。そのような場合、保存可能期間が延長され得る。
【0096】
本発明者らは、本発明が特にプロバイオティクス強化食品の強化に向けて適用可能であり、および有利であると予測する。しかし、他の機能性成分、例えばパンの表面に適用されるビタミンによって食品を強化するために同様の方法で本発明が利用され得ることも理解すべきである。例えば、ビタミンCなどの一部のビタミンは、熱に敏感である。
【0097】
また、本発明は、プロバイオティクスとビタミンなどの2種以上の異なる機能性成分の組み合わせにとって有用であり得る。
【0098】
明らかに、本発明は、プロバイオティクスのように、機能性成分(複数可)が熱に敏感である問題に取り組むために特に魅力的である。
【0099】
本製造方法で用いられる組成物の好ましい特徴:
好ましくは、組成物は7.0logCFU mL-1を超える生存細胞数を有する。
【0100】
組成物は、理想的には、一食当たり少なくとも7.0logCFU、より好ましくは少なくとも9.0logCFUを含む量で適用すべきであると認識すべきである。これは、FAO/WHO(2003)、発酵乳に関する規格CODEX STAN243、を反映し、この規格は、プロバイオティクス培養物を含む任意の食品に関して、製品は、所望の健康効果をもたらすためには1グラム当たり少なくとも106CFUの細胞生存率を含む必要があるというガイダンスを提供している。
【0101】
より好ましくは、組成物は9.0logCFU mL-1を超える生存細胞数を有する。
【0102】
プロバイオティクス培養物中に9.0logCFUmL-1を超える高い生存細胞数を有する利点は、プロバイオティクス強化食品の乾燥条件および/または保存の結果として、生存細胞がわずかに減少するものの、それでも7.0logCFUmL-1の許容可能な生存細胞数を超えて維持できることである。しかし、本明細書に記述し、実施例に示すように、食品上のプロバイオティクスが、細胞生存率の減少が極めて最小で、安定した状態をいかに良く保っていることがわかり本発明者らは非常に驚いた。
【0103】
好ましくは、組成物中のプロバイオティクス微生物(複数可)は、乳酸菌、非乳酸菌および非病原性酵母またはその組み合わせからなる群から選択される。本質的に、消費しても安全であり、腸内でプロバイオティクスの治療有効性を示す(または示すと思われる)任意のプロバイオティクス微生物を用いることができる。良好な保存可能期間を有する微生物が好ましい。
【0104】
より好ましくは、組成物中のプロバイオティクス微生物は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ビフィダス(ビフィズス菌)、ラクトバチルス・プランタルム、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびその組み合わせからなる群から選択される。
【0105】
これらの微生物は食品産業において定期的に使用されており、したがって、製造業者および消費者の視点から商業的に許容されている。Yakult(商標)は細菌ラクトバチルス・カセイシロタを用いているプロバイオティクス製品の一例である。これは、単一のプロバイオティック株を有する製品の代表である。Activate(商標)は、健康上の利益が証明されている、Bifio-Defenis(商標)として知られている独自の単一のビフィズス菌の別の例である。ラクトバチルス・プランタルムは、プロバイオティクス微生物であり、特に西欧諸国で多く見られる過敏性腸症候群を有する人々の腸の健康を目的とした治療効果に良好に関連している。
【0106】
組成物は、単一プロバイオティック株のみ、あるいは複数のプロバイオティック株の組み合わせを含み得る。
【0107】
単一株を用いる商業的な利点は、プロバイオティック強化パンとして最終製品を主張できることである。それでも、複数のプロバイオティック株の組み合わせは、より広範な治療効果または相乗治療効果を腸にもたらすために有用であり得る。
【0108】
組成物は、乳由来の基剤を含む。基剤は、乳由来のものまたは基剤に付加してもよいもののいずれかであるが、本質的に乳に見られる多くの賦形剤からできている。
【0109】
組成物の基剤は、
a)必要な場合、好ましいCFUレベルを超えるまで、および初期増殖相のまさに終了時に有利に微生物を発酵させる増殖培地として作用することができ、
b)食品の表面に薄層として容易に広げて適用することを可能にする有利に低い粘度を提供することができ、
c)食品の表面への効率的で効果的な接着を可能にすることができ、および
d)食品に適用した後、商業的に有用な期間の間、プロバイオティクスの生存数を保持することができることが好ましい。例えば、パンの予備試験において、組成物は25℃で5日の保存期間(パンの保存安定性に係る標準試験期間)にわたり最適なCFUを保持した。Yakult(登録商標)およびActivate(登録商標)をパンの表面に適用すると、パンの表面に塗布する直前に組成物を前発酵した試験群と比較して、予備試験の結果は悪かった(細胞生存率の減少が早かった)。
【0110】
組成物の基剤として乳由来の成分(複数可)を用いることの予想外の利点は、本明細書でさらに深く述べることにする。しかし、最も重要な商業的焦点の一つは、プロバイオティクスのために必要な望ましいCFU、安定性、食品への効率的で効果的な適用を達成することであり、および従来技術でかなり見られたような、例えば国際公開第2002/065840号に記載のようないずれの非乳由来の成分に頼る必要もなく、有益な知覚認知を保持することである。
【0111】
好ましくは、組成物の基剤は、ある量の乳、乳固形分(複数可)または還元乳(好ましくは脱脂乳)を含む。
【0112】
乳由来のこれらの成分が、本発明の方法を実行して有益な結果をもたらすことができる組成物の基剤を提供するのに十分であることがわかったのは予想外であった。
【0113】
例えば、組成物は約12%の還元脱脂乳を含み得る。
【0114】
好ましくは、組成物の基剤は5%未満の脂肪を含む。
【0115】
より好ましくは、組成物の基剤は実質的に脂肪を含まない。
【0116】
これらの組成物の場合、脂肪は必要とされなかった。これは、粘度を上げ、および微生物の増殖を阻止し、かつ保持するためにペーストに高い含有量の脂肪を用いる、ペーストについて記述する従来技術と極めて異なる。
【0117】
好ましくは、組成物中の基剤は凝固剤を含む。この場合、凝固剤は、培地中で発酵によって生じる乳酸であり得る。
【0118】
また、驚くべきことに、本発明者らは、凝乳、乳タンパクまたは他の乳成分が、組成物が食品の表面に固着するのを補助する際に重要な利点を提供することがわかった。
【0119】
また、凝固は微生物の発酵工程(細胞数を急増させるために初期のステップとしてこの工程が必要とされる場合)に過度に有益な影響を及ぼすことはなく、組成物の粘度および/または展延性に過度に影響を及ぼすことはない。
【0120】
多種多様な成分を用いて、この少なくとも部分的な凝固効果を達成することができ、および当業者はこれを理解するだろう。
【0121】
好ましくは、少なくとも乳を部分的に凝固するように構成される成分は、乳酸である。乳酸を使用する利点は、それが乳由来である化合物であることである。これは、合成賦形剤または外来的に供給された(すなわち非乳ベースの)賦形剤に頼る必要がなく、本発明の結果をもたらすために、主に乳ベースの成分を用いることによって認められる利点と合致している。言い換えれば、それは天然成分を使用して生成されるという商業的に有益な効果を保持し、健康食品を提供することにほぼ合致している。
【0122】
好ましくは、組成物の基剤は、少なくとも1種の糖を含む。
【0123】
糖の存在は、以下に述べる多くの有益な効果を達成するために極めて有用であることが判明したのは驚くべきことであった。
-組成物が前発酵工程で使用されると、発酵工程でプロバイオティクス数を増加させるのを顕著に助ける、
-組成物がパンの表面に接着するのを助ける、および/または
-パンの表面に適用される前後の組成物の良好なプロバイオティクス生存率を保持するのを助ける。
【0124】
好ましくは、糖は乳源から本質的に供給される。
【0125】
これは、完全に乳由来である、または本質的に乳に見出される成分のみを基剤に含んでいる組成物を維持するという本出願者の最も重要な商業的焦点に合致する。
【0126】
好ましくは、糖はラクトース、グルコースおよび/またはガラクトースから選択される。
【0127】
有利には、乳にはこれらの種類の糖が含まれている。ラクトースは、牛乳カロリー値の約40%、および乳含有量の約5%体積重量%を占める。ラクトースは、グルコースとガラクトースの2種の単糖でできている二糖類であり、したがってこのような一次糖のいずれか一つまたは両方を本発明で用いてもよい。乳由来である糖を扱う商業目的を自ら課したことで、本出願者は、前発酵、効果的な接着特性、および優れたプロバイオティクス生存率の保持を可能にする高機能組成物を提供できることは驚くべきことであった。
【0128】
組成物の基剤に追加量の糖が補充され得ることを認識すべきである。技術的には、組成物に補充するために任意の食品等級の糖を用いることができるが、本出願者の商業的焦点に合致させておくために、任意の補充糖は乳由来であるもの、または少なくとも本質的に乳に見出されるものであることが必要である。例えば、乳中に天然で見出される、または乳から得られる食品等級の糖(すなわち、例えばラクトース、グルコースまたはガラクトース)を用いることができる。これらの添加糖を、乳から分離する、抽出する、または得る必要はない。例えば、植物源から得られるグルコースが使用され得る。
【0129】
最も好ましくは、糖はラクトースである。
【0130】
予備試験において、4%の乳由来ラクトースまたはグルコースを補充した8%の還元脱脂乳を含む組成物が24時間の保存後(および開始細胞数が一食当たり約9.25logCFUであったときパンに適用後に)、9.0logCFU mL-1を保持していたことを本発明者らは特定した。驚くべきことに、ラクトースは、細胞生存率の保持に関してグルコースよりわずかに良好な成績を示した。これを12%の還元脱脂乳を含む組成物と比較したところ、12%還元脱脂乳を含む組成物では24時間の保存後、8.7logCFU mL-1へのより実質的な減少を確認した。ラクトースが最も容易に入手可能な乳ベースの糖を表すという事実は、ラクトースが商業的に実現可能な選択肢になり得ること、ならびに製品および方法の商業焦点と合致することを意味する。ラクトースを含まない、またはラクトースを減少させた基剤の組成物の場合、ラクトースをグルコースと置換することが可能である。
【0131】
好ましくは、組成物の基剤は、2体積重量%から20体積重量%の間の全糖、またはより好ましくは3体積重量%から10体積重量%の間の全糖を含む。
【0132】
還元脱脂乳は、約3体積重量%の糖(脱脂粉乳を10倍希釈する状況で)を自然に含む。単体の還元脱脂乳(本質的にラクトースを主に含む)は有益な結果を達成するが、追加量の糖を含む(例えば4~10体積重量%を追加した糖)ように組成物にさらに補充すると、細胞生存数に関して実施例で示したように結果を向上させることを本出願者は特定した。
【0133】
したがって、一実施形態において、組成物は還元乳固形分、および強化ラクトースである。この組成物は、望ましい結果、特に細胞生存率を達成するために特に効果的であるこが判明した。組成物は完全に乳由来であることが有利である。
【0134】
好ましくは、組成物は4cP(センチポアズ)未満の粘度を有する。
【0135】
好ましい粘度は、組成物がパンの表面に薄層として適用されるのに役立つ。例えば、粘度が低いとき、組成物はスプレーで適用されてもよく、あるいはピペットで採取した後、スパチュラなどのスプレッダーで容易に広げることができる。
【0136】
好ましくは、組成物は1cPから3cPの間の粘度を有する。
【0137】
前述の組成物のこの好ましい粘度は、以下に詳細に述べるように、組成物を食品上で容易に広げて、乾燥させるために役立つことから、乳と類似である。
【0138】
この好ましい粘度は、本発明と明らかに異なるアプローチを代表するペーストとさらに差別化することに役立つ。従来技術のペースト状の組成物は、食品で用いられるトッピング/詰め物の細胞増殖および生存率を調節するために高粘度に依存していた。これは、味および外観に関して通常の製品と実質的に違わないプロバイオティクス強化パンを提供する観点から、本発明の重要な目的に取り組むことにならない。ペースト状のトッピング/詰め物は、本発明とは別のものを教示している。
【0139】
また、これは、パン上で薄層をより効率的に乾燥させ、それによって、薄層が適用される前の元のパンの水分含量のレベルに戻すように水分含量を減少させることに役立つ。環境温度で少なくとも5日間安定に保つレベルでいずれのパンの水分含量および/または水分活性を維持することは、標準的な業界の慣習であるので、本発明の工程も、元のパンにできるだけ近づいた乾燥後水分含量を維持することを目標とする。予想外に、本発明者らは、適度の乾燥工程後の細胞生存率が商業的におよび治療上許容可能なレベルで保持されることができることを見出した。また、予想外に、本発明者らは、適度の乾燥工程後に細胞生存率が商業的におよび治療上許容可能なレベルで保持されることができることを見出した。
【0140】
さらに、組成物を(低粘度で促進された)薄層として適用できることは、組成物がパン上で一旦乾燥すると、実質的には透明および/または見えなくなることに役立つ。これは、通常のパンと比較して、プロバイオティクス強化パンの味、触感または外観に悪影響を与えることを防ぐのにも役立たつ。
【0141】
前発酵:
プロバイオティクス微生物を組成物中で前発酵することができ、または7.0log mL-1を超える、もしくはより好ましくは9.0log mL-1を超えるCFUを達成するために、適切なレベルで付加することができることを認識すべきである。
【0142】
したがって、そのような場合、「前発酵されている」という用語の使用は、別のステップにおいて、例えば、濃縮細菌試料を供給する第三者によって、または単なる別のステップとして食品製造業者によって行われこともできる。
【0143】
ともかく、組成物の最終結果は、組成物に加えられる細菌の量および濃度が適切な治療レベルのプロバイオティックス(すなわち7.0logCFU mL-1を超える)を提供するために十分であることが必要である。
【0144】
例えば、生きた細胞の供給源として凍結乾燥、冷凍または他の形態の濃縮細菌を担持材料に加えてもよい。
【0145】
あるいは、プロバイオティクス培養組成物を調製する方法は、7.0logCFU mL-1を超える所望の細胞数を達成するために組成物の基剤中で微生物を前発酵させることを含む。
【0146】
前述のように、組成物の利点は、組成物の基剤が微生物の発酵工程を可能にする増殖培地として作用することもできることである。したがって、製造の便宜上、発酵ステップからの組成物をパンの表面に適用するための新たな組成物に適合させる必要はない。
【0147】
組成物の基剤は典型的に、安全性および調節の目的で、使用前に滅菌される。例えば、滅菌は約90℃で約15分間の加熱を含み得る。
【0148】
好ましくは、プロバイオティクス微生物の種菌(すなわちスターター)は、滅菌温度から十分に冷ましてから、組成物の基剤に添加される。本発明者らは、0.05重量%の接種が適当であり得ると考える。
【0149】
好ましくは、この方法は初期定常増殖期の間、組成物の基剤をインキュベートすることを含む。
【0150】
例えば、ラクトバチルス・カゼイ431すなわちLC431の場合、適切な細胞数を得るためにインキュベーションは37℃で16時間行われ得る。
【0151】
好ましくは、プロバイオティクス培養物が7logCFU mL-1を超える生存細胞数を有するまで、組成物の基剤をインキィベートすることを含む。
【0152】
より好ましくは、プロバイオティクス培養物が9.0logCFU mL-1を超える生存細胞数を有するまで、組成物の基剤をインキィベートすることを含む。
【0153】
これらの生細胞数の利点は、前述している。
【0154】
好ましくは、方法は、展延可能な/噴霧可能な組成物を生成するために、得られた培地(一般的にカード)を均質化するまたは撹拌することを含む。
【0155】
前述のカード培地のpHは、ラクトバチルス・カゼイ431を用いた16時間の試験インキュベーション後、4.45として記録された。このpHは、得られたプロバイオティクスの細胞生存率に負の影響を与えることはなかった。
【0156】
本発明の利点の概要としては、以下が挙げられるが、このうちの1つまたは複数に限定されるものではない。
-組成物の基剤が乳由来であるという単純性は、供給、製造および使用することが容易であることを考慮すると、有益であり、一般に良好に受け入れられるであろう。
-乳由来である基剤は、微生物の前発酵を可能にし、パンの表面への適用および/または展延性を補助するため、パンの表面に組成物を接着させるのを助けるために、組成物の粘度を望ましい範囲内に保持するのを助け、ならびにプロバイオティクスの生存率を商業的に有用な期間良好に保持するのを助ける;
-パンなどの食品の高水分活性レベルで、最適なプロバイオティクス生存率(CFU数)を保持することができる;
-商業的におよび治療的な生存細胞数(7.0logCFU mL-1を超える)のプロバイオティクスを強化したパンなどの食品を調製することができる;
-25℃で標準的な5日間(通常のパンの保存可能期間)の試験の後、生きたプロバイオティクス細胞の安定性は良好である;
-不利なペースト(味および外観に影響を及ぼす)の使用、または焼成前のパンに全体的に適用する(最終的に細胞生存度を大幅に減少させる)必要がない;
-薄層として適用することで、極めて効率的に乾燥させることができる;これは、水分含量および/または水分活性が大きく変わらない生成物を得るために重要である;
-専門の機器または高温耐性を有するプロバイオティック株を必要としない。
-通常の対照パンと比較(味、触感または外観)して、プロバイオティクス強化パンの全体的な知覚認知に実質的な悪影響を及ぼすことはない、および/または;
-パンの保存安定性に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0157】
本発明のさらなる態様は、添付の図を参照し、および例としてのみ挙げられている以下の説明から明らかになろう。
【
図1】強化LC431プロバイオティクスパンの調製および保存後のlogCFUの分析を示す。
【
図2】LC431、BB12およびLA05を組み合わせた強化プロバイオティクスパンの調製および保存後のlogCFUの分析を示す。
【
図3】プロバイオティクスパンの製造の種々の段階で、市販のYakultとActivateのプロバイオティクス飲料と比較した、強化LC431組成物の調製および保存後のlogCFUの分析を示す。
【
図4】強化ラクトバチルス・プランタルム299Vの調製および保存後のlogCFUの分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0158】
実施例1:増殖培地の調製
ラクトバチルス・カゼイLC431用の増殖培地を以下のステップに従って作製した。
1.8.0重量%の還元脱脂乳と4.0重量%のグルコースまたはラクトースを含む培地を調製する。
2.この培地を90℃に15分間加熱する。
3.室温に冷却する。
【0159】
実施例2:前発酵プロバイオティクス組成物の調製
ラクトバチルス・カゼイLC431プロバイオティクス組成物を以下のように調製した。
1.0.05重量%の凍結乾燥LC431培養物の種菌を実施例1で事前調製した増殖培地に加える。
2.接種した増殖培地を37℃で16時間インキュベートする。
3.得られたソフトカードを均質化して、展延可能な/噴霧可能な液体を形成する。
【0160】
実施例3:プロバイオティクス強化パンの調製
強化ラクトバチルス・カゼイLC431プロバイオティクスパンを以下のように調製した。
a)組成物(実施例2を参照されたい)500μLから1mLを事前に焼成したパンローフの表面に噴霧し、確実に薄層がパンの表面に均一に適用されるようにする。
b)前述のパンの表面の薄層を強制空気対流式オーブン内で、50℃で15分間、乾燥させる。
c)このプロバイオティクス強化パンを25℃以下で保存する。
【0161】
実施例4:強化ラクトバチルス・カゼイ431(LC431)プロバイオティクスパンの調製および保存後のlogCFU分析
プロバイオティクス強化パンを実施例3に従って調製した。本発明者らは、LC431細胞の生存率(logCFU)を3回の異なる試験で試験した。対照LC431のlogCFUを、適用/乾燥後、ならびに25℃で5日間の保存(パンの標準保存試験条件)後に記録した。
【0162】
下記の表1(および続いて
図1)に示すように、パンの上部外皮および底部に組成物を適用し、次いで乾燥させる工程でのlogCFUは、非常にわずかな細胞生存率の減少を示した。保存後、細胞生存率の軽微な減少が両試料で記録されたが、それでも商業的および治療上必要とされるレベルの7.0logCFUを優に上回った。この方法を用いて種々の種類のパンを試験したが、同様のプロバイオティクス生存率の結果が認められたことを注目すべきである。プロバイオティクスを適用する前のパンの水分活性は一般的に、0.75から0.94の範囲内であり、乾燥後、水分活性は0.66から0.74の範囲であった。
【0163】
【0164】
実施例5:強化LC431、バチルス・ラクティス12(BB12)およびラクトバチルス・アシドフィルス05(LA05)配合プロバイオティクスパンの調製および保存後のlogCFUの分析
実施例3に従ってプロバイオティクスLC431、BB12およびLA05配合物強化パンを調製した。LC431だけでなく、3種類微生物すべてを種菌として使用した。結果を表2に(および
図2にも)示す。
【0165】
実施例4と同様に、次いで本発明者らは、強化配合プロバイオティクス細胞の生存率を試験した。この試験において同様の有益で驚くべき結果が認められ、本発明の概念が特定のプロバイオティクスの種類に限定されず、および複数のプロバイオティクスの配合も同様に含み得ることを示した。
【0166】
【0167】
実施例6:強化ラクトバチルス・プランタルム299Vの調製および保存後のlogCFUの分析
実施例5と同様の試験を行ったが、今回はラクトバチルス・プランタルム299Vを用いた。前述のように、このプロバイオティクス微生物は、過敏性腸症候群(IBS)の治療におけるその有用性の理由で、魅力的なターゲットである。結果を
図4に示す。
【0168】
5日後の絶対値はパン当たり9.12と9.07logCFU(それぞれ、保存後の上部外皮と底部外皮)であった。これは、パン当たり13億と11.7億の生存細胞が送達されたことを表す。本出願者は広範な種々のプロバイオティクス生物を用いて、本発明を出願することができ、およびラクトバチルス・プランタルム299Vの場合、5日間の保存試験後、結果は極めて良好なプロバイオティクス細胞生存度数を示していることから、これは商業的に重要な達成である。
【0169】
したがって、臨床的に確証され、かつ普及しているプロバイティクス株、ラクトバチルス・プランタルム299Vを強化パンによって送達することは、過敏性腸症候群と呼ばれる一般的な胃腸障害に苦しんでいるターゲットの消費者のとって非常に魅力的な選択肢であり得る。
【0170】
実施例7:パンに新たに適用した前発酵組成物と、市販のプロバイオティクス飲料との比較
種々のプロバイオティクス株の安定性および組成物中の前発酵微生物の利点を試験するために、LC431(前述のように8.0重量%の還元脱脂乳と4.0重量%のデキストロース一水和物中で発酵させた)を含む試験組成物を2種類の市販のプロバイオティクス飲料(YakultとActivate)と比較した。
【0171】
各群に対して、試験組成物1mLをパンの各小片上に広げて強制空気対流式オーブン内で、50℃で5分間、乾燥させた。マイクロピペットを用いて、飲料液1mLを小さい液滴形態でパンの表面に分配し、スパチュラで均一に広げた。次いで、これらの試料を強制空気対流式オーブン内で、50℃で15分間、乾燥させた。次いで、パン試料を低密度ポリエチレン(LDPE)小袋に詰め、これを25℃の一定温度に維持した実験用インキュベーターに5日間保存した。パン表面の上部外皮および底部外皮への適用の前後、および5日間の保存後も、プロバイオティクスの生存率を試験した。
【0172】
結果を
図3に示す。ラクトバチルス・カゼイ431の単一株を含有する発酵カードは、9.9logCFUもの非常に高濃度の生存細胞をもたらした。乾燥による生存率減少はわずかであり、パンの上部と底部でそれぞれ、9.7と9.43として記録された。さらに、保存期間後、パンの上部と底部で観察された細胞のlog減少値は、それぞれわずか1.3と1.1であった。これを、細胞存在率がはるかに急速に減少した市販の製品と比較した。試験組成物の場合、5日後の絶対値は8.4と8.3logCFUであった。これは、パン当たり2.5億と2億の生きた細胞が送達されたことを表す。これらは、パン当たり少なくとも0.1億の細胞を送達するベンチマークより10倍以上高かった。
【0173】
実施例8:プロバイオティクスパンの官能試験
官能試験を行い、対照(通常の非プロバイオティクスパン)と比較して、強化プロバイオティクスパン試料1(実施例4で用いたものと同じ)およびプロバイオティクスパン試料2(実施例5で用いたものと同じ)の味、触感および外観についての容認性を決定した。容認性について、スケール1(低い容認性)から始まり、9(優れた容認性)までのスコアを提供した。
【0174】
下記の表3に示すように、プロバイオティクスパン試料1および2は、各特定の試験および全体的な容認性に関して、対照のパン試料に極めて匹敵する。
【0175】
【0176】
実施例9:プロバイオティクスパンの水分分析
プロバイオティクスパン試料1と2の外皮の水分含量(%)および水分活性は、対照よりもわずかに高い。これらの値は商業目的の許容範囲内であり、および実施例6に示した受容性分析によって例証したように、恐らく消費者は何ら著しい違いに気がつかないであろう。
【0177】
試験試料中のわずかに高い水分含量は、パンの保存可能期間に悪影響を与えることはなく、さらにプロバイオティクス強化パンは全5日間の保存可能期間の要件を保持することが予想される。
【0178】
【0179】
本発明の態様を例としてのみ説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義されるその範囲から逸脱することなく、修正および追加がそれになされ得ることを理解すべきである。