(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】二次電池の劣化判定システム及び劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220624BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2020181075
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2018147714の分割
【原出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 重巳
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020826(JP,A)
【文献】特開2010-032492(JP,A)
【文献】特表2015-521347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/44
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の表面の略矩形状の主面に取り付けられ、取付位置の電池表面の圧力を検出する4つのひずみゲージと、
前記4つのひずみゲージの測定値に基づいて、前記二次電池の劣化を判定する劣化判定部と、
を備え、
前記劣化判定部は、前記二次電池の表面のうち、前記4つのひずみゲージにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる膨張最大位置を推定する、
二次電池の劣化判定システム。
【請求項2】
前記二次電池の前記表面のうちの一面に4つの前記ひずみゲージが配置され、
前記劣化判定部は、
前記一面の中央位置を原点とし、前記4つのひずみゲージのそれぞれが各象限に配置されるように二次元座標系を設定し、
前記ひずみゲージのうち、前記二次元座標系のx軸の正側に配置される2つの前記ひずみゲージの測定値の和と、前記二次元座標系のx軸の負側に配置される2つの前記ひずみゲージの測定値の和との差分を計算し、該差分に応じて前記中央位置からのx軸方向のズレ量を算出し、
前記ひずみゲージのうち、前記二次元座標系のy軸の正側に配置される2つの前記ひずみゲージの測定値の和と、前記二次元座標系のy軸の負側に配置される2つの前記ひずみゲージの測定値の和との差分を計算し、該差分に応じて前記中央位置からのy軸方向のズレ量を算出し、
前記x軸方向のズレ量、及び、前記y軸方向のズレ量に基づいて、前記膨張最大位置の座標を算出する、
請求項1に記載の二次電池の劣化判定システム。
【請求項3】
前記二次電池はリチウムイオン電池である、
請求項1または2に記載の二次電池の劣化判定システム。
【請求項4】
前記4つのひずみゲージのそれぞれの中間位置にさらにひずみゲージを備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池の劣化判定システム。
【請求項5】
前記二次電池の充電を制御する充電制御部をさらに備え、
前記充電制御部は、前記劣化判定部により推定された前記膨張最大位置に基づいて充電制御を行う、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池の劣化判定システム。
【請求項6】
二次電池の表面の略矩形状の主面に取り付けられた4つのひずみゲージにより、取付位置の電池表面の圧力を検出する圧力検出ステップと、
前記4つのひずみゲージの測定値に基づいて、前記二次電池の劣化を判定する劣化判定ステップと、を含み、
前記劣化判定ステップでは、前記二次電池の表面のうち、前記4つのひずみゲージにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる膨張最大位置が推定される、
二次電池の劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の劣化判定システム及び劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池は、エネルギー密度が高く、コンパクトで軽量であるため、電気自動車やスマートフォンといった蓄電システムへ多く活用されている。
【0003】
リチウムイオン電池は充放電を繰り返すことで劣化を生じる。そこで、従来より、電池の主面の圧力を測定することにより劣化時の体積膨張を検出して、リチウムイオン電池の劣化判定を行う手法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1などに記載される従来の劣化判別手法では、リチウムイオン電池の主面全体の圧力変化を監視しており、電池の劣化発生の有無のみを判定していた。これに対して、電池の安全性の向上などの目的のため、主面の中で体積膨張が最大となる位置を特定して、電池の劣化位置を局所的に特定したいというニーズがある。
【0006】
本開示は、電池の劣化位置を局所的に特定できる二次電池の劣化判定システム及び劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係る二次電池の劣化判定システムは、二次電池の表面の略矩形状の主面に取り付けられ、取付位置の電池表面の圧力を検出する4つのひずみゲージと、前記4つのひずみゲージの測定値に基づいて、前記二次電池の劣化を判定する劣化判定部と、を備え、前記劣化判定部は、前記二次電池の表面のうち、前記4つのひずみゲージにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる体積膨張位置を推定する。
【0008】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る二次電池の劣化判定方法は、二次電池の表面の略矩形状の主面に取り付けられた4つのひずみゲージにより、取付位置の電池表面の圧力を検出する圧力検出ステップと、前記4つのひずみゲージの測定値に基づいて、前記二次電池の劣化を判定する劣化判定ステップと、を含み、前記劣化判定ステップでは、前記二次電池の表面のうち、前記4つのひずみゲージにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる体積膨張位置が推定される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電池の劣化位置を局所的に特定できる二次電池の劣化判定システム及び劣化判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る劣化判定システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】リチウムイオン電池の局所的な劣化位置の推定手法を説明する模式図である。
【
図3】リチウムイオン電池の劣化判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る劣化判定システム1の概略構成を示すブロック図である。
図2は、リチウムイオン電池2の局所的な劣化位置Gの推定手法を説明する模式図である。劣化判定システム1は、二次電池の一例としてのリチウムイオン電池2の劣化を判定する。
図1に示すように、劣化判定システム1は、充電装置3と、制御装置4と、ひずみゲージ5A~5D(圧力検出部)とを備える。
【0013】
リチウムイオン電池2は、例えば
図1に示す構成をとり、一対の主面24を有する薄型の略直方体形状の筐体21で被覆されている。
図1では、図の奥行き方向に沿って対向するよう筐体21の一対の主面24が配置される。主面は略矩形状であり、主面24と直交する筐体21の4つの側面のうちの1つ(
図1では上方の面)には正極端子22及び負極端子23が設けられる。正極端子22及び負極端子23のそれぞれの一端は筐体21から外部に突出しており、充電装置3に接続されている。リチウムイオン電池2は、
図1に示す単セルでもよいし、
図1に示す単セルを複数個接続する組電池でもよい。
【0014】
充電装置3は、リチウムイオン電池2の正極端子22及び負極端子23と接続して、正極端子22及び負極端子23を介してリチウムイオン電池2の充電を行う。充電装置3は、例えば電池の劣化度合いに応じた充電許容上限値(安全率)の設定値をもっており、電池の残量をみて上限値まで充電することができる。また、充電装置3は、満充電までの所要時間などのデータを制御装置4に出力する。
【0015】
制御装置4は、充電装置3の充電を制御する。また、制御装置4は、ひずみゲージ5A~5Dから入力される情報に基づいて、リチウムイオン電池2の局所的な劣化位置G(
図2参照)を推定する。制御装置4は、これらに関する機能として、充電制御部41と、劣化判定部42とを有する。
【0016】
充電制御部41は、充電装置3によるリチウムイオン電池2の充電処理を制御する。充電制御部41は、充電時間や電圧値の制御を行う。また、充電制御部41は、劣化判定部42により推定された劣化位置Gの情報に基づいて、電池がより安定的な動作となるようにリチウムイオン電池2の充電に関するパラメータを適宜調整して充電装置3に出力してもよい。
【0017】
劣化判定部42は、ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、リチウムイオン電池2の局所的な劣化位置Gを推定する。局所的な劣化位置Gとは、リチウムイオン電池2の主面24上において、最も劣化が進行している局所的な部分である。劣化判定部42は、リチウムイオン電池2の主面24のうち、ひずみゲージ5A~5Dにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる膨張最大位置Gを推定し、この膨張最大位置Gを局所的な劣化位置Gとして出力する。劣化位置Gの具体的な推定手法については後述する。
【0018】
制御装置4は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いはそれらの組み合わせにより実現されてよい。制御装置4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置、I/O(Input-Output interface)等を含むマイクロコンピュータを中心に構成されてよく、ROMや補助記憶装置等に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより上記の各種機能が実現される。
【0019】
ひずみゲージ5A~5Dは、リチウムイオン電池2の表面に設置され、
図2に示すように設置部分のひずみに応じた電気信号S1~S4を出力する。ひずみゲージ5A~5Dとしては、例えば金属ひずみゲージや半導体ひずみゲージなど任意の種類のものを適用してよい。
【0020】
ひずみゲージ5A~5Dは、例えば
図2に示すように直方体形状のリチウムイオン電池2の主面24(表面)の四隅の領域24A~24D(以下では「角部24A~24D」とも表記する)にそれぞれ設置される。本実施形態では、主面24の中央より負極端子23側、かつ、負極端子23に近い側の角部24Aにひずみゲージ5Aが設置される。主面24の中央より負極端子23側、かつ、負極端子23から遠い側の角部24Bにひずみゲージ5Bが設置される。主面24の中央より正極端子22側、かつ、正極端子22から遠い側の角部24Cにひずみゲージ5Cが設置される。主面24の中央より正極端子22側、かつ、正極端子22に近い側の角部24Dにひずみゲージ5Dが設置される。
【0021】
ひずみゲージ5A~5Dにより検出されるひずみS1~S4(以下では「ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4」とも表記する)は、設置部分に加えられた力(荷重)に応じて発生する機械的な微小変化である。リチウムイオン電池2の体積が膨張したときに、リチウムイオン電池2の筐体21には内側から外側へ荷重がかかり、筐体21の表面の圧力が増加する。リチウムイオン電池2の表面圧力が増加すれば、ひずみゲージ5A~5Dにより検出されるひずみS1~S4も増加する。また、電池の各所の劣化度合いの違いに応じて体積の膨張度合いも各所で異なり、例えば
図2に点線で示すような体積膨張の分布が主面24上に生じる。電池内で最も劣化が進んでいる局所的な劣化位置Gにおいて、電池の体積の膨張度合いも最大となる。このような体積膨張が最大となる膨張最大位置G(すなわち局所的な劣化位置)が主面24のどの位置にあるかによって、主面24の四隅に配置される各ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4の出方が異なるものとなる。
【0022】
ここで、
図2に示すように主面24の中心位置を原点Oとし、正極端子22及び負極端子23が設けられる一辺の延在方向をx軸方向とし、これと直交する方向をy軸方向とする二次元座標系を考える。この二次元座標系では、ひずみゲージ5Aは第1象限に配置され、ひずみゲージ5Dは第2象限に配置され、ひずみゲージ5Cは第3象限に配置され、ひずみゲージ5Bは第4象限に配置される。
【0023】
このような二次元座標系において、例えば、膨張最大位置Gが原点Oにある場合には、各ひずみゲージ5A~5Dはこの原点Oからそれぞれ略等距離にあるので、各ゲージ5A~5Dはほぼ同じ値の測定値S1~S4を出力する傾向がある。なお、電池の劣化が大きく進行した後は、膨張最大位置Gは主面24の略中央に集中する傾向がある。一方、膨張最大位置Gが原点Oよりx正方向側にある場合には、膨張最大位置Gに近い角部24A、24Bのひずみゲージ5A,5Bの測定値S1、S2のほうが、他のひずみゲージ5C、5Dの測定値S3、S4より大きくなる傾向がある。また、膨張最大位置Gが原点Oよりx負方向側にある場合には、膨張最大位置Gに近い角部24C、24Dのひずみゲージ5C,5Dの測定値S3、S4のほうが、他のひずみゲージ5A、5Bの測定値S1、S2より大きくなる傾向がある。これらの傾向はy軸方向でも同様である。そこで本実施形態では、このようなひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4の性質を利用して、リチウムイオン電池2の膨張最大位置G、すなわち局所的な劣化位置Gを推定している。
【0024】
より詳細には、制御装置4の劣化判定部42は、以下の(1)式、(2)式を用いて測定値S1~S4から膨張最大位置Gのx軸方向のX座標と、y軸方向のY座標とを算出する。
【0025】
【0026】
【0027】
ここで、L1は、主面24のx軸方向の辺の長さであり、L2は、主面24のy軸方向の辺の長さである。
【0028】
上記(1)式では、二次元座標系のx軸の正側に配置される2つのひずみゲージ5A、5Bの測定値の和S1+S2と、x軸の負側に配置される2つのひずみゲージ5C、5Dの測定値の和S3+S4との差分を計算し、この差分に応じて主面24の中央位置Oからのx軸方向のズレ量を算出する。この算出したx軸方向のズレ量を、膨張最大位置GのX座標として算出する。
【0029】
また、(1)式は、算出した差分を測定値S1~S4の総和で除算して0近傍の数値に正規化した後に、主面24のx軸方向の辺の長さL1を乗算することで、算出されるX座標が、ひずみゲージ5A、5Bのx軸位置と、ひずみゲージ5C、5Dのx軸位置との間の範囲内に収まるように定式化されている。
【0030】
同様に、上記(2)式では、二次元座標系のy軸の正側に配置される2つのひずみゲージ5A、5Dの測定値の和S1+S4と、y軸の負側に配置される2つのひずみゲージ5B、5Cの測定値の和S2+S3との差分を計算し、この差分に応じて主面24の中央位置Oからのy軸方向のズレ量を算出する。この算出したy軸方向のズレ量を、膨張最大位置GのY座標として算出する。
【0031】
また、(2)式も(1)式と同様に、算出した差分を測定値S1~S4の総和で除算して0近傍の数値に正規化した後に、主面24のy軸方向の辺の長さL2を乗算することで、算出されるY座標が、ひずみゲージ5A、5Dのy軸位置と、ひずみゲージ5B、5Cのy軸位置との間の範囲内に収まるように定式化されている。
【0032】
上記(1)、(2)式より算出される膨張最大位置Gは、ひずみゲージ5A~5Dにより区画される領域の中で体積膨張が最大となる位置である。したがって、ひずみゲージ5A~5Dは少なくとも4つ設置する必要があるが、4つより多くのひずみゲージを設置して、劣化位置Gの推定精度を向上させる構成としてもよい。例えば、四隅に設置する4つのひずみゲージ5A~5Dのそれぞれの中間位置(主面24の四辺の中点あたり)に新たな4つのひずみゲージを配置すれば、4つのみの場合と同程度の大きさの区画において、センサ数を倍増するため、より高精度な劣化位置推定ができる。
【0033】
図3を参照して、実施形態に係る劣化判定システム1の劣化判定方法を説明する。
図3は、実施形態に係る劣化判定システム1により実施されるリチウムイオン電池2の劣化判定処理の手順を示すフローチャートである。
図3のフローチャートの処理は制御装置4により実施される。
【0034】
ステップS01(圧力検出ステップ)では、ひずみゲージ5A~5Dにより、リチウムイオン電池2の主面24の四隅24A~24DにおけるひずみS1~S4が計測される。計測されたひずみS1~S4は劣化判定部42に出力される。
【0035】
ステップS02(劣化判定ステップ)では、劣化判定部42により、ステップS01にて測定されたひずみ測定値S1~S4に基づいて、主面24上において体積膨張が最大となる膨張最大位置GのX,Y座標が、上記(1)式、(2)式を用いて算出される。劣化判定部42は、この膨張最大位置Gを電池の劣化が最も進行している局所的な劣化位置Gとして出力する。ステップS02の処理が完了すると本制御フローは終了する。
【0036】
なお、ステップS02にて局所的な劣化位置Gが算出された後に、充電制御部41によりリチウムイオン電池2の安全性を向上し得るような充電に関する制御(たとえば劣化位置の情報をBMS(Battery Management System)の制御情報として活用するなど)を実施してもよい。
【0037】
このように、本実施形態の劣化判定システム1は、リチウムイオン電池2の主面24に取り付けられ、取付位置の電池表面の圧力を検出する少なくとも4つのひずみゲージ5A~5Dと、ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、リチウムイオン電池2の劣化を判定する劣化判定部42と、を備える。劣化判定部42は、リチウムイオン電池2の表面のうち、ひずみゲージ5A~5Dにより区画される領域の中で、体積膨張が最大となる膨張最大位置Gを推定する。
【0038】
この構成により、ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、リチウムイオン電池2の主面24における膨張最大位置G、すなわち電池の劣化が最も進行している劣化位置Gを局所的に特定することができる。リチウムイオン電池2の劣化位置Gを局所的に特定できると、例えばリチウムイオン電池2の劣化発生メカニズムの分析などに用いるビックデータとして活用できる。また、特定した劣化位置Gの情報を利用して、リチウムイオン電池2の劣化状態に応じた充電抑制制御などの処理をより的確に行うことが可能となるので、リチウムイオン電池2の安全性を向上でき、リチウムイオン電池2の長寿命化に繋がる。
【0039】
また、本実施形態では、電池の主面24上の各位置でひずみを直接計測して最大歪の位置を特定するのではなく、主面24の四隅に設置された4つのひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、局所的な劣化位置Gの座標を算出する。これにより、少なくとも4つのひずみゲージ5A~5Dを設置すれば劣化位置を特定できるので、必要なセンサ数を少なくできる。
【0040】
また、本実施形態の劣化判定システム1では、上記の(1)式、(2)式を用いて膨張最大位置の座標G(x、y)を算出するので、ひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4の情報に基づいて、リチウムイオン電池2の局所的な劣化位置Gをより高精度に推定できる。
【0041】
また、本実施形態の劣化判定システム1では、リチウムイオン電池2の表面に設置されるひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、電池表面の局所的な劣化位置Gを推定するので、比較的安価なひずみゲージ5A~5Dを用いて低コスト化を図れる。
【0042】
また、本実施形態の劣化判定システム1では、ひずみゲージ5A~5Dは、リチウムイオン電池2の略矩形状の主面24の四隅の領域24A~24Dにそれぞれ設置される。これにより、局所的な劣化位置Gを推定できる区画を最大化できる。
【0043】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0044】
上記実施形態では、電池表面に設置されたひずみゲージ5A~5Dの測定値S1~S4に基づいて、電池の局所的な劣化位置Gを推定する構成を例示したが、電池の表面圧力の変動を計測できればよく、例えばひずみゲージ以外の圧力センサなど、他の圧力検出部を用いてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、リチウムイオン電池2の主面24の四隅の領域にひずみゲージ5A~5Dを設置する構成を例示したが、少なくとも4つのひずみゲージがあればよく、各ひずみゲージ5A~5Dの設置位置は主面24の四隅以外でもよい。また、リチウムイオン電池2の表面のうち主面24以外の一面(側面や上面など)にひずみゲージ5A~5Dを配置してもよい。
【0046】
上記実施形態では、劣化判定の対象としてリチウムイオン電池2を例示したが、ニッケル水素電池や鉛電池など他の二次電池にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 劣化判定システム
2 リチウムイオン電池(二次電池)
3 充電装置
4 制御装置
5A~5D ひずみゲージ(圧力検出部)
21 筐体
22 正極端子
23 負極端子
24 主面
24A~24D 角部
41 充電制御部
42 劣化判定部
ステップS01 圧力検出ステップ
ステップS02 劣化判定ステップ
S1~S4 測定値
G 膨張最大位置
L1 x軸方向の辺の長さ
L2 y軸方向の辺の長さ