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特許7094354免疫測定システムを複数回通すためのモジュール式洗浄ブリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】免疫測定システムを複数回通すためのモジュール式洗浄ブリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20220624BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G01N35/02 E
G01N35/04 B
G01N35/04 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020500174
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018038940
(87)【国際公開番号】W WO2019010015
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】62/529,595
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル,アイマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲロルシュタイン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ボルジャー,ブライアン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173180(JP,A)
【文献】特開2001-013151(JP,A)
【文献】特開平07-181189(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02190889(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02,
G01N 35/04,
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫分析装置内で使用されるために構成された線形洗浄システムであって、
単一のインキュベーション・リングまたは2つの非同心円状のインキュベーション・リングに対して用いることができるように、複数のサンプル用キュベットを移送するように構成された線形トラックと、
前記複数のサンプル用キュベットと係合して、前記線形トラックに沿った移動力を提供するように構成された電動ベルトと、
前記線形トラックに沿って設けられた1つまたは複数の洗浄ステーションであって、各前記洗浄ステーションが、前記複数のサンプル用キュベット上に磁場を提供するように構成された1つまたは複数の磁石と、磁場の中にいる間に各前記キュベットの内容物を洗浄するように構成されたピペットとを含む、前記1つまたは複数の洗浄ステーションと、を含み、
前記線形トラックは、前記単一のインキュベーション・リングの中で用いられて、前記単一のインキュベーション・リングの内周側で、2点間のブリッジとして作用するように構成され、または、前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングの中で用いられて、外側のインキュベーション・リングの中に、前記線形トラックと内側のインキュベーション・リングとが配置されて、前記外側のインキュベーション・リングの内周側から前記内側のインキュベーション・リングの外周側まで、2点間のブリッジとして作用するように構成され、
前記線形トラックは、前記単一のインキュベーション・リングまたは前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングの第一の位置から各前記キュベットを受け入れるように構成された入力端と、前記単一のインキュベーション・リングまたは前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングの第二の位置に各前記キュベットを移送するように構成された出力端とを有し、
前記入力端および前記出力端は、前記単一のインキュベーション・リングの前記2点または前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングの前記2点に対して、キュベットの受け入れと移送を行うように、前記線形トラックの両端側に配置された、
線形洗浄システム。
【請求項2】
前記電動ベルトがサーペンタイン・ベルトである、請求項1記載の線形洗浄システム。
【請求項3】
前記線形トラックが、前記単一のインキュベーション・リングと同一平面状である、請求項1または2に記載の線形洗浄システム。
【請求項4】
前記線形トラックが、前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングと同一平面状である、請求項1または2に記載の線形洗浄システム。
【請求項5】
前記入力端および前記出力端が、前記1つまたは複数の洗浄ステーションとの関係でキャリブレーションを必要とせずに、前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングまたは前記単一のインキュベーション・リングの一部に対して、前記キュベットの受け入れと移送を行うように構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の線形洗浄システム。
【請求項6】
内周上に複数のスロットを有する単一のインキュベーション・リングであって、各前記スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成されていて、前記インキュベーション・リングを回転させるための駆動機構を有する、前記インキュベーション・リングと、
所定の位置で前記インキュベーション・リング内のキュベットと相互作用するように構成された複数のピペットと、
請求項1から5のいずれか1項に記載の線形洗浄システムであって、前記線形洗浄システムの線形トラックは、前記単一のインキュベーション・リングの前記第一の位置から前記キュベットを受け入れて、各前記キュベットの内容物を洗浄して、前記単一のインキュベーション・リングの前記第二の位置に各前記キュベットを移送するように構成された、前記線形洗浄システムと、
前記線形トラック全体に沿って移動する各前記キュベットに対して続いて各前記キュベットの内容物を分析するように構成されたルミノメーターと、
を含む、免疫分析装置。
【請求項7】
前記線形トラックが、前記インキュベーション・リングと同一平面状である、請求項6に記載の免疫分析装置。
【請求項8】
さらに、前記第一の位置で前記インキュベーション・リングから前記線形トラックまで各前記キュベットを押し出すように構成されたアクチュエーターを備える、請求項6または7に記載の免疫分析装置。
【請求項9】
前記電動ベルトがサーペンタイン・ベルトである、請求項6から8のいずれか1項に記載の記載の免疫分析装置。
【請求項10】
さらに、前記インキュベーション・リングが、前記リングと熱接触して取り付けられて、前記リングと共に回転するように構成された加熱素子を含む、請求項6から9のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項11】
前記線形洗浄システムは、前記線形トラックに取り付けられた複数の磁石を含み、さらに、前記2つの非同心円状のインキュベーション・リングを有する別の免疫分析装置内に配置されることが可能であり前記外側のインキュベーション・リングから前記内側のインキュベーション・リングに前記キュベットを移すように構成されて、この配置は、複数の磁石の再構成を必要とすることなく達成される、請求項6から10のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項12】
内周上に複数のスロットを有する外側のインキュベーション・リングであって、各前記スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成されていて、前記外側のインキュベーション・リングを回転させるための駆動機構を有するように構成された、前記外側のインキュベーション・リングと、
外周上に複数のスロットを有する内側のインキュベーション・リングであって、各前記スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成されていて、前記内側のインキュベーション・リングを回転させるための駆動機構を有するように構成された、前記内側のインキュベーション・リングと、
所定の位置で前記外側のインキュベーション・リング内の前記キュベットと相互作用するように構成された複数のピペットと、
請求項1から5のいずれか1項に記載の線形洗浄システムであって、前記線形洗浄システムの線形トラックは、前記外側のインキュベーション・リングの前記第一の位置から前記キュベットを受け入れて、各前記キュベットの内容物を洗浄して、前記内側のインキュベーション・リングの前記第二の位置まで各前記キュベットを移送するように構成された、前記線形洗浄システムと、
前記線形トラック全体に沿って移動する各前記キュベットに対して続いて各前記キュベットの内容物を分析するように構成されたルミノメーターと、
を含む、免疫分析装置。
【請求項13】
前記線形トラックが、前記外側のインキュベーション・リングおよび前記内側のインキュベーション・リングと同一平面状である、請求項12に記載の免疫分析装置。
【請求項14】
さらに、前記第一の位置で前記外側のインキュベーション・リングから前記線形トラックまで各前記キュベットを押し出すように構成されたアクチュエーターを備える、請求項12または13に記載の免疫分析装置。
【請求項15】
前記電動ベルトがサーペンタイン・ベルトである、請求項12から14のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項16】
各前記インキュベーション・リングが、各前記リングと熱接触して取付られて、各前記リングと共に回転するように構成された加熱素子をさらに含む、請求項12から15のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【請求項17】
前記線形洗浄システムは、前記線形トラックに取り付けられた複数の磁石を含み、さらに、前記単一のインキュベーション・リングを有する別の免疫分析装置内に配置されることが可能であり、前記単一のインキュベーション・リング上の前記第一の位置から前記単一のインキュベーション・リング上の前記第二の位置へ前記キュベットを移すように構成され、この配置は、前記複数の磁石の再構成を必要とすることなく達成される、請求項12から16のいずれか1項に記載の免疫分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本出願は、2017年7月7日に出願された米国仮出願第62/529,595号に基づく優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示内容は、一般に、実験室環境下で使用するための自動化された免疫測定(イムノアッセイ)用分析装置システムに関するものであり、より詳細には、免疫測定用分析装置における体外(試験管内)診断用の患者サンプルの取り扱い(処理)および検査の実施のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
検査所は、体外診断(IVD:In vitro diagnostics)によって、患者の液体サンプルに実施される分析に基づいて、病気の診断を行うことができる。IVDは、患者の体液又は膿瘍から採取される液体サンプルの分析によって実施可能な、患者の診断及び治療に関する様々な種類の分析検査及び分析(アッセイ)を含む。これらの分析は、典型的には、患者サンプルを収容した管(チューブ)のような流体容器を装填した、自動臨床化学分析装置(分析器)を用いて行われる。分析装置は、管から液体サンプルを抽出し、そのサンプルを、特別な反応用キュベットまたは管(一般に、反応容器またはキュベットと呼ばれる)内の様々な試薬と組み合わせている。
【0004】
分析装置にはモジュール式アプローチがしばしば用いられている。大型のシステムの中には、あるサンプル処理モジュールと別のモジュールとの間で患者サンプルを往復移送することができる検査室自動化システムを含むものがある。これらモジュールには、サンプル処理ステーションおよび検査ステーションを含む、1つ以上のステーションが含まれる。検査ステーションは、特定の種類の分析に特化されていて、分析装置内のサンプルに予め定められた検査サービスを提供するユニットである。例示的な検査ステーションには、免疫測定(IA:immunoassay)および臨床化学(CC:clinical chemistry)のステーションが含まれる。典型的には小規模の検査室を含むいくつかの研究所では、これらの検査ステーションが独立型/スタンドアローンの分析装置または検査モジュールとして提供されることができ、その際、操作者は、検査室内の各ステーションにてCCまたはIAの検査用の個々のサンプルまたはサンプルのトレイを手動で装填したり、取り外すことができる。
【0005】
典型的なIA分析装置モジュールは、磁気分離および化学発光(ケミルミネッセンス)読み出しを用いた異種の免疫測定を自動化した臨床分析装置(大型の分析装置に組み込まれるものか、単独型のもの)である。免疫測定は、検査対象の分析物(被検体)に対する特徴的な抗体または検査対象の抗体に対する特徴的な抗原のいずれかの存在を利用する。このような抗体は、患者のサンプル中の分析物と結合して、「免疫複合体」を形成し得る。免疫測定において抗体を使用するために、それらは、分析の必要性に適合するように特徴的な仕方で改変される。不均一な(異種の)免疫測定では、1つの抗体(捕捉抗体)を、IAモジュール用の磁性粒子の微細懸濁液である固相と結合させて、磁場を用いた分離とその後の洗浄プロセスを可能にする。このことは、サンドイッチ分析および競合分析で例示される。例示的なIAモジュールのメニューには、これらの形式に関する追加のバリエーションが含まれることがある。
【0006】
典型的なサンドイッチ分析形式では、2つの抗体が用いられ、各抗体は、通常はタンパク質である分析物の分子上の異なる結合部位と結合するように選択される。1つの抗体は、磁性粒子に活用される。他の抗体は、アクリジニウム・エステル(AE:acridinium ester)分子に活用される。分析中、サンプルおよび2つの改変された抗体試薬がキュベットに加えられる。分析物が患者のサンプル中に存在する場合、2つの改変された抗体は分析物分子と結合して、「サンドイッチ」することができる。次いで、磁場を加えて、磁気粒子をキュベットの壁に引き寄せて、過剰な試薬を洗い流す。キュベット内に残された唯一のAE付き抗体(AEタグの付いた抗体)は、磁性粒子とのサンドイッチ形成を介して免疫複合体を形成したものである。次に酸溶液を加えてAEを溶液中に遊離させるが、その溶液には化学発光反応に必要な過酸化水素も含まれる。次にそれに塩基を加えて分解させて、発光させる(下記の反応参照-様々なAEが様々な分析に使用されるが、基本的な化学現象は実質的に同じである)。数秒間続くフラッシュとして光が発せられて、その光がルミノメーター(光度計)で採光及び測定される。まとめられた光の出力は、発光量(RLU:relative light unit)で表される。これは、標準曲線と比較されるが、その標準曲線は、同じ分析物の既知の標準によって生成されたRLU値に対して、その臨床範囲にわたって、用量-反応の曲線を当てはめることで生成される。サンドイッチ分析は、直接的な用量-反応曲線を生成するが、そこでは、より高い分析物用量がより大きなRLUと対応する。
【0007】
競合分析形式では、適用される分子には1つの抗体のみが使用される。この抗体は磁性粒子に対して活用される。第2の分析試薬は、AEに対して活用された分析物分子を含有する。分析中、患者のサンプルからの分析物およびAE付き分析物が、抗体の限られた量に対して競合するように、試薬の量が選択される。そこに存在する患者分析物が多いほど、抗体と結合できるAE付き分析物はより少なくなる。磁気分離および洗浄の後、キュベット内のAEの唯一の源は、抗体を介して磁性粒子と結合されたAE付き分析物からのものである。上記と同様に酸と塩基を加えて、用量分析がサンドイッチ分析について記載のように行われる。競合分析は、逆の用量-反応曲線を生成するが、そこでは、より高い信号は、患者サンプル中のより低い分析物の量に対応する。
【0008】
IA分析装置モジュールの磁性粒子試薬は「固相」とも呼ばれ、AE付き試薬は「ライト(lite)試薬」とも呼ばれる。IA分析装置モジュールは、様々な形式の複数の分析をランダムなアクセスで、かつ高い処理量で、同時に実行可能にするためのハードウェアとソフトウェアを提供する。
【0009】
典型的なIA分析装置/モジュールの心臓部には、インキュベーション(培養、潜伏など)リングがある。上述の分析を行うためには、良好に制御された温度範囲内で反応が起こる必要があるが、典型的には人体の公称温度と一致して起こる必要がある。インキュベーション・リングは、調節された温熱体を提供するが、それは、キュベットがIAモジュール内で移動する間、キュベットが上記温度範囲を維持することを確保するためである。リングを設けることにより、キュベットへのランダムなアクセスを提供できる。これにより、様々な長さでの分析を並行して実施することができ、その際、キュベットの一部は分析物/試薬を受け取り、一部はサンプルの一定分量を受け取り、一部は分析され、一部は洗浄されるなどを同時に行うことができる。次いで、このリングは、プロセッサの制御下で、一定間隔で移動可能であって、それによって反応の分析前に、所定の時間間隔で、制御されたインキュベーション温度で反応が起こることを確保する。典型的なインキュベーション・リングは、固定基盤(ベース)に対して回転し、典型的には基板に固定されたモーターによって駆動されるが、そのモーターは、移動するリング上でギアリングまたはベルトを駆動する。
【0010】
図1は、例示的な従来技術のインキュベーション・リングを一部断面で示す図である。インキュベーション・リング10は、一般的に、共に移動する2つの主要部分である、リング12および14を含む。内側磁性リング12は、リング12の周囲に沿って特定の位置に配置された複数の円弧状磁石を含む。リング12と共に移動する外側リング14は、キュベット16用の複数の受取り所(スロットと呼ばれるが、任意の適切な形状を有することができる)を含む。一般的に、リング12および14は、移動する際に共にロックされて、キュベットおよび外側リング14が所定の時間で磁場に曝されることを可能にする。所定のサイクル時間の後、リング12はリング14に対して所定の大きさだけ角度移動して、リング14内のキュベットが所定の時間で磁場に曝されるように各サイクルを指標とし、各キュベットが連続して磁場に曝されるようにする。この構成の欠点は、磁場に曝すことと、所定の時間後の磁場内での洗浄サイクルのスケジューリング(進行)が、リング14内の多数のサンプルのために複雑になり得ることであり、特にインキュベーション時間をそれらのキュベットのために変化させる場合には、そのような配置では困難または不可能になる可能性がある。
【0011】
インキュベーション温度制御は、リング10の下に置かれた固設型の加熱素子18によって提供されており、それによってキュベット16に均一な温度を与えることができる。キュベット16がリング10に沿って移動する際、所定の機器がこれらのキュベットと相互作用する。機器20乃至24は、所定の位置で互いに円周方向に間隔を空けている。これらの機器には、新しいキュベットを所定の位置でリングのスロット内に配置するキュベット・ハンドラー20が含まれる。一度、各キュベットがリング内に配置されると、キュベットは、患者サンプルの吸引された部分をキュベット内に配置する試薬プローブ/ピペット22の位置に到達するまで、リングの回転とともに移動する。サンプル部分をキュベット内に入れた後、キュベットは、リング10の動きと共に試薬ピペット24の位置まで移動して、試薬ピペット24は、所定の患者サンプルに対して実施される所定の免疫測定のための適切な試薬を投与する。次に、キュベットはリング10と共に移動し、そこでリング12内の磁石によって磁場に曝されて、キュベットの内容物は、その工程中に洗浄ピペットによって洗浄される。典型的に、キュベットは、2つの磁場/洗浄サイクルに曝される。最終的に、キュベットは昇降装置(エレベーター)26の位置に到達して、昇降装置26は、キュベットをリング10からルミノメーター28によって読取られる位置まで押し上げる。
【0012】
上記リング10の欠点として、リング12内の磁石は、リング12の湾曲(曲率)と一致するように湾曲される必要がある。このため、医学的検査に必要な許容誤差に合わせて製造するために高価になり得る。さらに、システムの処理量は、リング10の半径によって大きく左右される。リング10の所定のサイズが与えられると、リング12の磁石は、その半径に対して特別に合わせて設計される必要がある。製造業者は、しばしば、異なる要求事項を有する顧客に合わせて、異なる最大処理能力を有する製品ファミリーにおいて異なるモデルを提供することが望まれている。これらのシステムはFDAの承認を必要とするため、製品ファミリーの各リング10の半径は独立して認証されなければならず、そのために時間と費用がかかることがある。従って、図1に示したようなシステムは、異なるモデルに対して異なる処理能力の要求を有する製品ファミリーにとっては、柔軟な設計ではない場合がある。このシステムのさらなる欠点として、単一段階の免疫測定にのみ適当なことがある。洗浄サイクルのタイミングは、システム内の他のすべての他のキュベットの動きに対して直接的な影響を及ぼし、スケジューリングを複雑にしている。
【0013】
図2には、別の例示的な先行技術システム30が一部断面で図解的に示されている。図1に示されるようなキュベットを保持するための1つのリング10ではなく、装置30は、2つのキュベット・インキュベーション・リング32および34を使用する。これらのリングは、独立して動くことができ、各リングの内容物に対してランダムなアクセスを可能にしている。一方、同心円状のリング32および34の上方に、追加リング36が配置されている。リング36は、これらのリングとは非同心状であり、リング36は、リング32および34の移動に沿った異なる位置で、リング34および32の上方で2つの交差を可能にする。洗浄サイクルにはリング36が使用されて、リング32および34の移動と独立して、このリング36内のキュベットが所定の時間で磁場に曝されて、洗浄されることを可能にする。これにより、リング32および34内のキュベットに対して、より柔軟なインキュベーション・サイクル時間を可能にする。ピストン昇降装置40、42、および44は、アクチュエーターであって、分析のために追加のインキュベーションおよび洗浄サイクルが必要とされる場合に、まずリング32内のキュベットを洗浄リング36内に移動させ、次にリング34内に下降させることを行う。一度、キュベットに対して全てのインキュベーションおよび洗浄サイクルが完了すると、昇降装置46は、分析の結果を読み取るために、キュベットをルミノメーター48内まで上方に移動させることができる。
【0014】
図3は、上記システム30の上方からの様子を示す。リング32および34は同心円状であり、独立したキュベットの移動を可能にする。リング32は、上記のように、機器20乃至24と相互作用する。洗浄リング36は非同心状であり、リング36が所定の位置でリング32および34と交差することを可能にする。リング36内外へとキュベットをリング32および34から上下に移動させるために、対応する位置に昇降装置が配置される。ルミノメーター48用の昇降装置46は、上記のインキュベーションおよび洗浄時間後の免疫測定の結果を検査するために、サンプルをルミノメーター48内に移動させることができる。
【0015】
このシステムは、2段階の分析用に符号32および34のリングを使用可能にするため、より柔軟なスケジューリングおよびより広範囲の様々な免疫測定を提供する一方、このシステム30にはいくつかの欠点がある。第一に、洗浄リング36はリングであるため、リング10の場合と同じく、湾曲した磁石の製造および認証に関する問題がある。すなわち、リング36は製造することが高価であるため、リング36は、異なる直径の洗浄リングに対して追加の認証試験が行われない限り、製品ファミリーに対し分析装置の全ての場合で所定の直径に限定されることになり得る。さらに、複数の昇降装置のため、追加の費用およびスケジューリングの複雑さが増すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術における欠点の1つ以上は、インキュベーション・リングの部分間で、線形トラック(直線軌道)に沿ってキュベットを移送する、線形(直線状)のブリッジ(架橋型)洗浄システムを提供することで対処可能にする。これには、同じインキュベーション・リングの部分間の移送、または1つのインキュベーション・リングから別のインキュベーション・リングへの移送を含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、免疫分析装置に使用されるように構成された線形洗浄システムは、複数のサンプル用キュベットを移送するように構成された線形トラックを有するブリッジ(架橋部)と、複数のサンプル用キュベット(容器)を係合させて、線形トラックに沿った駆動力を提供するように構成された電動ベルトと、線形トラックに沿って設けられた1つまたは複数の洗浄ステーション(洗浄装置)とを備える。各洗浄ステーションは、複数のサンプル用キュベット上に磁場を提供するように構成された1つまたは複数の磁石と、磁場の中にいる間に各キュベットの内容物を洗浄するように構成されたピペット/プローブとを含む。線形トラックは、第1のキュベット・インキュベーション・リング部分から各キュベットを受け取るように構成された入力端と、各キュベットを第2のキュベット・インキュベーション・リング部分に移送するように構成された出力端とを有する。本明細書中で用いられる、ピペットまたはプローブは、水または洗浄剤などの流体を吸引および/または投与するように構成された細長い管状(チューブ状)部品である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、電動ベルトは、ゴムまたは類似の材料で作られたサーペンタイン・ベルト(蛇行ベルト)、またはプラスチックまたは金属製のタイミングチェーンなどのような硬い材料で作られたチェーンであり、それぞれが線形トラックに沿った移送のためにキュベットと係合するのに適した形状を有する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、入力端および出力端は、単一のインキュベーション・リングの部分まで、キュベットの受け取りと、キュベットの移送のために構成されている。一態様によれば、線形トラックは、単一のインキュベーション・リングと同一平面状とすることができる。別の態様によれば、入力端および出力端は、2つの非同心円状インキュベーション・リングの一部まで、キュベットの受け取りと、キュベットの移送のために構成することができる。別の態様では、線形トラックは、2つの非同心円インキュベーション・リングと同一平面状にすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、入力端および出力端は、1つまたは複数の洗浄ステーションを再度キャリブレーション(調整)することなく、2つの非同心円状インキュベーション・リングおよび単一のインキュベーション・リングの両方の部分まで、キュベットの受け取りと、キュベットの移送のために構成される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、免疫分析装置は、インキュベーション・リングの内周上に複数のスロットを有するキュベット・インキュベーション・リングを含み、各スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成され、リングを回転させる駆動機構と、キュベット・インキュベーション・リング内のキュベットと所定の位置で相互作用するように構成された複数のピペットとを備える。線形洗浄ブリッジは、キュベット・インキュベーション・リングの第一の位置からキュベットを受け取り、各キュベットの内容物を洗浄し、各キュベットをキュベット・インキュベーション・リングの第二の位置に移送するように構成されている。ルミノメーターは、線形洗浄ブリッジに沿って移動する各キュベットに対して続いて各キュベットの内容物を分析するように構成されている。
【0022】
一態様によれば、線形洗浄ブリッジは、キュベット・インキュベーション・リングと同一平面状とすることができる。いくつかの実施形態において、免疫分析装置は、第1の位置でキュベット・インキュベーション・リングから各キュベットを線形洗浄ブリッジまで押し込むように構成されたアクチュエーターを含む。このアクチュエーターは、空気圧ピストンまたは油圧ピストンとすることができ、またはリニア・アクチュエーターのような電気機械式部品とすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、線形洗浄ブリッジは、キュベットを移送するように構成された線形トラックと、キュベットの各々と係合して、線形トラックに沿った駆動力を提供するように構成された電動ベルトと、線形トラックに沿って設けられた1つまたは複数の洗浄ステーションとを含み、各洗浄ステーションは、各キュベットに磁場を提供するように構成された1つまたは複数の磁石と、磁場の中にいる間に各キュベットの内容物を洗浄する(すすぐ)ように構成されたピペットとを含む。
【0024】
一態様によれば、キュベット・インキュベーション・リングは、リングと熱接触するように取付られて、リングと共に回転するように構成された加熱素子を含むことができる。別の態様によれば、線形洗浄ブリッジは、線形トラックに取り付けられた複数の磁石を含むことができ、さらに、2つのキュベット・インキュベーション・リングを有する別の免疫分析装置内に配置されて、1つのリングから他のリングにキュベットを送るように構成されることができ、この際、このような配置は、複数の磁石を再構成することなく達成される。
【0025】
別の実施形態では、免疫分析装置は、内周上に複数のスロットを有する第1のキュベット・インキュベーション・リングを含み、その際、各スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成され、第1のリングを回転させる駆動機構と、外周上に複数のスロットを有する第2のキュベット・インキュベーション・リングを含み、その際、各スロットはサンプル用キュベットを保持するように構成され、第2のリングを回転させる駆動機構とを含む。複数のピペットが、所定の位置で第1のキュベット・インキュベーション・リング内のキュベットと相互作用するように構成される。線形洗浄ブリッジは、第1のキュベット・インキュベーション・リングの第1の位置からキュベットを受け取り、各キュベットの内容物を洗浄し、第2のキュベット・インキュベーション・リングの第2の位置に各キュベットを移送するように構成される。ルミノメーターは、線形洗浄ブリッジに沿って移動する各キュベットに対して続いて各キュベットの内容物を分析するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、例示的な従来技術インキュベーション・リングの断面図である。
図2図2は、例示的な従来技術インキュベーション・リングの断面図である。
図3図3は、例示的な従来技術インキュベーション・リングを上方から図解的に示す図である。
図4図4は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な単一のインキュベーション・リング・システムの断面図である。
図5図5は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な単一のインキュベーション・リング・システムの斜視図である。
図6図6は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な二重のインキュベーション・リング・システムの断面図である。
図7図7は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な二重のインキュベーション・リング・システムの斜視図である。
図8図8は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な線形洗浄ブリッジの斜視図である。
図9図9は、いくつかの実施形態に使用するための例示的な線形洗浄ブリッジの底部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
免疫分析装置およびインキュベーション/洗浄システムの実施形態は、1つ以上のインキュベーション・リング内の2点間のブリッジとして作用する線形洗浄システムをその中で利用する。線形ブリッジ洗浄システムを利用することにより、このブリッジは様々な大きさのインキュベーション・リングを使用することができるが、それによって、いくつかの先行技術システムでは問題となっていた、製品ファミリー内のモデル間での洗浄部品の再設計や再認証を不要にする。さらに、線形(直線状)磁石のような線形部品は、従来のリング形状の洗浄システムで使用されていた円弧状磁石と比べて、より安価に製造し、設計することができる。これにより、線形ブリッジ洗浄装置を利用した製品ファミリーの設計、製造、および認証費用を全体的に削減することが可能になる。
【0028】
本実施形態は、一般に、2種類の形態に分類される。第一の構成では、単一のインキュベーション・リングを使用することができる。このリングはリングの内周に沿ったスロット(溝)を有する。これらのスロットは、リングの中心に向かって開口している。リング内の2つの位置の間に、線形ブリッジが弦(直線)状に配置される。その弦は、好ましくは、リングの中心を通る半径方向の弦である(例えば、リングの直径と同一の広がりをもつ)。各キュベット用スロットが、ブリッジがリングと交差する位置まで回転するとき、そのスロット内のキュベットは、リングの中心の位置に向かってスロットから押し出され、ブリッジ内に押し込まれることができる。その後、洗浄ブリッジ内の移送システムが、そのキュベットを2つの洗浄ステーションを通るように移送する。各洗浄ステーションは、磁場を提供するために1つ以上の磁石と、磁場に曝される間にキュベットの内容物を洗浄する(すすぐ)ためのプローブ(例えば、ピペットまたはノズル)とを備えている。各キュベットは、線形ブリッジ上の2つの洗浄ステーションにより洗浄された後、線形ブリッジのコンベア(移送)システムによってブリッジの出力側のリング内のスロットまで移動される。ブリッジがリングの中心点を横切る実施形態では、入力部および出力部は、リングの正反対側にある。(入力スロットおよび出力スロットは洗浄サイクル中に移動するため、洗浄サイクル中にリングがどのように動くかによって、入力スロットおよび出力スロットは任意の角度関係を有することができることに注意されたい。)その後、洗浄されたキュベットは、リングが回転するにつれて、異なる位置で、ルミノメーターまで持ち上げられることができる。それによって、洗浄と検査結果のルミノメーターの読み取りのタイミングは、独立して決めることができる。
【0029】
別の実施形態は、2つの非同心円状のインキュベーション・リングを利用し、そのうちの一方は他方の内側にある。非同心円状リングを用いることにより、洗浄ブリッジはより大きなリングの内周とより小さなリングの外周との間に配置することができる。外側リングは、内周に沿って配置されて、キュベットを保持するように構成されたスロットを有する。内側リングは、そのリングの外周に沿って配置されて、キュベットを保持するように構成されたスロットを有する。洗浄ブリッジは、より大きなリングの内周から内側のリングの外周までキュベットを移送することができる。これにより、単一のリングによって提供される場合と比べて、キュベットのインキュベーション用のスロットをより多く有することができる。このことは、1つのリングを有する実施形態と2つのリングを有する実施形態との間で洗浄ブリッジを変更することなく、システムの処理量を向上させることができる。従って、同一の洗浄ブリッジを、単一リングの実施形態と二重リングの実施形態の両方に使用することができる。さらに、複数リング実施形態では、2つのリングの直径は任意の大きさに選択することができるが、その際、内側リングの外縁と外側リングとの内縁の配置間隔が、洗浄ブリッジの長さと同じ距離であることを条件とする。さらに別の実施形態では、空間効率がより低くなる。2つの非同心円状のリングは、内側のリングと外側のリングを使用するのではなく、互いに隣り合うように配置することができる。各リングの外側にはスロットが配置され、リング間の洗浄ブリッジを有する。これにより、リングを同じ大きさにすることができるとともに、リングを互いに対して任意の所望の大きさにすることができる。
【0030】
図4は、線形洗浄ブリッジ60を用いた単一リングシステム50の例示的な実施形態を一部断面で示す。システム50は単一のインキュベーション・リング52を含み、これはリングの中心に向かう開口部を有する複数の円周状のスロットを含む。キュベット54は、キュベット装填器20によってこれらスロット内に配置され、サンプル・プローブ22および試薬プローブ24を用いて充填される。リング52の回転は所定の移動プログラムに従い、それによってキュベットに対するランダムなアクセスを提供しながら、キュベットを所定のインキュベーション・サイクルに曝す。この実施形態では、リング装着型加熱素子56は、リング52の表面と熱接触するように配置される。この加熱素子56は、37Cなどの所定の温度でキュベットをインキュベートするための制御された熱調節を提供する。加熱素子56の出力および制御は、1つまたは複数のスリップ・リング58によって提供することができる。スリップ・リング58は、リング52への回転に軸方向の制約を与える、より大きな静的部品の一部であってもよい。加熱素子56及びスリップ・リング58の動作に関するさらなる情報は、「診断分析装置内のインキュベーション・システムの熱制御用のシステム及び方法」と題して、2017年3月16日に提出された米国特許出願第62/472,472号に見出すことができるが、この特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。いくつかの実施形態において、インキュベーション・リングと共に回転しない静的な加熱素子を使用することは可能である。
【0031】
洗浄ブリッジ60の入力側に対応する所定の位置までキュベットを回転させるとき、プッシャー(押出装置)62などの押出部品(例えば、空気圧ピストン/油圧ピストン、線形アクチュエーター、リード・スクリュー/ラックおよびピニオン装置)がキュベットに対して半径方向(放射状)の力を与えて、リング52内のスロットからキュベットを押し出して、洗浄ブリッジ60の移送機構内に押し込む。洗浄ブリッジ60は、次いで、複数の洗浄ステーションを通ってキュベットを直線的に移送するが、洗浄ステーションは1つ以上の線形磁石を含むとともに、洗浄剤の吸引および投与を行って、磁石の磁場に曝される間にキュベットの内容物を洗浄するプローブとを含む。洗浄ステップが完了した後、キュベットは移動システムによって移送されるが、移動システムはリング52の反対側のスロットまで線形ブリッジを横切るように各キュベットに線形移動(線形推進力)を与える。次に、その新しいスロット内のキュベットとともにリング52を回転させて、そのキュベットが昇降装置(エレベーター)64(例えば、空気圧ピストン/油圧ピストン、線形アクチュエーター、リード・スクリュー/ラックおよびピニオン装置)に到達させて、それによりキュベットをルミノメーター(光度計)66内まで持ち上げて、免疫測定の結果を検出するために光度を読み取る。回転移動力は、タイミング・ベルト/チェーンまたは直接的な駆動/歯車駆動を介して、モーター68によってインキュベーション・リングを移動させるように与えられてもよい。これにより、リング52をコンピュータ制御下で回転可能にする。
【0032】
図5は、例示的な実施形態50の斜視図である。インキュベーション・リング52は、内周上にキュベットを保持するように構成された複数のスロット53を含む。各スロットが洗浄ブリッジ60用の開口部と並ぶとき、押出装置(プッシャー)がキュベットを洗浄ブリッジ60の移動システム内に押し込み、そこで洗浄ステーションによって洗浄ステップが行われる。洗浄ステーションを通った後、洗浄ブリッジ60の移動システムは、キュベットをリング52の反対側の開口スロット内に配置する。この移送は、別の押出装置を利用して、キュベットをインキュベーション・リングの受入用の出力スロット内に配置してもよい。
【0033】
図6は、洗浄ブリッジによって連結された、2つのインキュベーション・リングを用いるシステム70の一部断面図である。インキュベーション・リング52aは、図4に示したインキュベーション・リング52と同じ構成を有する、より大きな直径のインキュベーション・リングである。図解をわかりやすくするため、静的なスリップ・リングは示されていない。インキュベーション・リング52は、上述のように、加熱素子56によって熱的に調節される。この実施形態では、洗浄ブリッジ60は、リング52aの内周とより小さなインキュベーション・リング72の外周との間を行き来する。これにより、これら2つのリング内のキュベット用のスロットの数をより多くすることができる。また、リング72は加熱素子(図示略)によって熱的に調節される。キュベット用スロットは、リング72の周囲に円周方向に配置され、外側に向きを定められて、ブリッジ60に対してスロットを露出させる。インキュベートされたキュベットは、ピストン62によってリング52aから洗浄ブリッジ60まで押し出される。キュベットは、洗浄ブリッジ60の移動機構を介して、洗浄ブリッジ60から出てリング72内の開口スロットに入る。昇降装置64と一致する位置72に到達すると、各キュベットをルミノメーター66内まで持ち上げて、分析の結果を読み取る。
【0034】
図7は、2つのリングのシステム70の斜視図である。外側リング52aは熱的に調節されていて、キュベットを保持するように構成された複数の内側に面するスロット53aを含む。これらのスロット53aの各々がブリッジ60への入り口と一致する位置に達するとき、そのキュベットがリング52aのスロットから出て、洗浄用にブリッジ60の移動システム内に移動される。洗浄ブリッジ60上の洗浄ステーションによって洗浄が完了した後、線形移動システムは、内側リング72上の対応する開口スロット内にキュベットを配置する。リング72は、ルミノメーター66(図5)が免疫測定の結果の読み取りに利用可能になるまで、キュベットを受け取って、保持するように構成された複数の外側に面するスロット73を有する。昇降装置(図示略)によって、読み取りのためにキュベットを持ち上げる。
【0035】
図8は、洗浄ブリッジ60の斜視図である。図9は、洗浄ブリッジ60の底部を示す図である。洗浄ブリッジ60は、機械アルミニウム、硬質プラスチック、または繊維強化プラスチックなどの適当な硬質材料から作ることができる線形洗浄ブリッジ・トラック80を含む。これは、ブリッジを横切るキュベットの動きに対して剛性の線形な制約を与える。キュベットは、ステップモータ84によって駆動されるタイミング・ベルト86などの電動ベルトを介して、洗浄ブリッジ・トラック80に沿って移動する。上記の電動ベルトという用語は、連続した材料で形成されたフレキシブルな(可撓性)ベルトを記述するための一般的な用語であって、例えば、歯車と係合するための歯を有する、または歯を有しない、ゴム製のタイミング・ベルト、または剛性のプラスチックまたは金属製のリンクでできたチェーンなどを意味する。ベルトはキュベットと係合する(かみ合う)ように構成された特徴を備え、例えば、キュベットを移動方向に移動させるためにキュベットを移動ベルトに対して固定させるための高摩擦面または機械要素などを備える。電動ベルトは、洗浄ブリッジ60の線形洗浄ブリッジ・トラック80に沿ってキュベットを移送するための移動力を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態において、タイミング・ベルト86は、モーター84によって駆動されて、アイドラ・プーリー88にて張力が与えられて、位置決めされる、サーペンタイン・ベルトとして配置されている。サーペンタイン・ベルト86は、線形洗浄ブリッジ・トラック80を横切るキュベット上で対応する構造的特徴と相互作用する複数のリブを含む。キュベットは、洗浄ステーション90aおよび90bを通る。各洗浄ステーションは、ステッパーモーター(84)によって上下に駆動される、線形に駆動されるピペット(92aおよび92b)を含む。プローブ内の圧力は、空気圧または油圧のポンプまたはピストンなどの適切な手段によって駆動可能であって、洗浄プロセス中にキュベットの内容物の外来成分を取り除くために吸い出しおよび吐き出すための吸引及び投与の圧力を提供できる。これらのピペットと相互作用する前に、キュベット96は、線形磁石94aおよび94bを通る。これらの線形磁石は、反応液中の磁性粒子と相互作用する磁場を提供して、これらの粒子をキュベットの壁に引きつける。このため、これらの粒子が、吸い出しと吐き出しを行う洗浄過程中にピペットで洗い出されることを防ぐことができる。残留粒子は、その後、光度の読み取り中に発光する。この実施形態では、当該技術分野における洗浄プロセスでは典型的であるが、線形ブリッジ60上に2つの洗浄ステーションが設けられる。このことは、各ステーションでの洗浄プロセスが、1回の洗浄サイクルを用いて完了するには十分でない場合に典型的である。しかしながら、いくつかの実施形態では、1回の洗浄操作によってキュベットの内容物の十分に完全な洗浄を行う単一の洗浄ステーションを使用する場合であって、洗浄プロセスを追加することで、使用される免疫測定が利益を得る場合には、追加の洗浄ステーションをブリッジ60の一部として提供してもよいことを理解されたい。使用される洗浄ステーションの数は、ステーションの全体的な洗浄効率に基づいて選択することができ、このことは、洗浄剤、洗浄剤の圧力/速度/体積(量)、洗浄される分析物の体積、磁場の強さ、必要とされる検査精度、サイクル時間、ステーションで実施される洗浄サイクルの数などの要因によって影響を受け得る。
【0037】
幾つかの実施形態において、サーペンタイン・ベルト86は、図8および図9に示されるように、完全に平面状ではない。幾つかの実施形態では、サーペンタイン・ベルト86はねじれていてもよく、その場合、モーター84は、洗浄ステーション90a及び90bと同一平面に取り付けられる必要がない(例えば、モーターは、水平に設置された駆動シャフトと共に下方に取り付けられていてもよい)。このことは、必要に応じて、より効率的なパッケージング(配置)のために行われてもよい。
【0038】
洗浄ブリッジ60の単一の設計を、単一のインキュベーション・リングの実施形態および二重のインキュベーション・リングの実施形態に対して使用可能にすることが望ましい。従って、洗浄ブリッジは、第1のインキュベーション・リングの部分のスロット(例えば、第1のインキュベーション・リングの内部に面した周囲上のもの)からキュベットを受け取り、そのキュベットを第2のインキュベーション・リングの部分のスロット(例えば、同一のインキュベーション・リングの内部に面した周囲上のもの、または第2の内部のインキュベーション・リングの外部に面した周囲上のもの)に配置する前に、そのキュベットを適当な数(例えば、2つ)の磁性洗浄ステーションを通すように、線形移動力を用いてキュベットを移動させるように設計される。二重のリングのシステムのいくつかの実施形態は、逆の仕方で(より小さなリングからより大きなリングへ)作動できることを理解されたい。いくつかの実施形態では、線形洗浄ブリッジは、双方向に作動するように設計されて、認証されてもよい。このことは、より多くの磁石またはより大型の磁石を必要とする可能性があるが、より柔軟なスケジューリングの選択肢をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0039】
50 単一リングシステム
52 インキュベーション・リング
52a インキュベーション・リング(外側リング)
53 スロット
53a スロット
54 キュベット(容器)
56 加熱素子
60 線形洗浄ブリッジ(架橋部)
62 プッシャー(押出装置)
64 昇降装置(エレベーター)
66 ルミノメーター(光度計)
68 モーター
70 2つのインキュベーション・リングを用いるシステム
72 インキュベーション・リング(内側リング)
73 スロット
80 洗浄ブリッジ・トラック(軌道)
86 電動ベルト(サーペンタイン・ベルトまたはタイミング・ベルト)
90a 洗浄ステーション
90b 洗浄ステーション
92a ピペット(プローブまたはノズル)
92b ピペット(プローブまたはノズル)
94a 線形磁石
94b 線形磁石
96 キュベット(容器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9