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▶ ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】充填ポリ塩化ビニル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20220624BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20220624BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L71/00 Z
C08K3/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020558905
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060174
(87)【国際公開番号】W WO2019206823
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】18168663.5
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリツチンス ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】リービッヒ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フリッチュ トマス
(72)【発明者】
【氏名】ハイツァー ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】クレスマン デニス
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-080320(JP,A)
【文献】特開昭58-179227(JP,A)
【文献】特開平04-174187(JP,A)
【文献】特開平07-292235(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045928(WO,A1)
【文献】特開昭59-220555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリ塩化ビニルと、
b)無機固体粒子と、
c)ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸基である末端基のカルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して前記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマーと、
を含む組成物。
【請求項2】
前記ポリマーは、1分子あたり平均して少なくとも1.0個のカルボン酸末端基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記連結セグメントは、前記エステル基と前記カルボン酸基との間に位置するヒドロカルビル基を含み、ここで、前記エステル基と前記カルボン酸基とは、最大6個の炭素原子によって隔てられている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルセグメントは、ポリアルキレンオキシド単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルセグメントは、式-[O-(CH]-の繰り返し単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルセグメントを有するポリマーは、2個~6個の末端基を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルセグメントを有するポリマーの数平均分子量Mnは、1000g/mol~5000g/molの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の無機固体粒子の量は、該組成物の重量に基づいて計算して、20重量%~90重量%の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
可塑剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
メチルメタクリレート単位および少なくとも1つの他のアクリルモノマーを含むアクリルコポリマーを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
a)7重量%~60重量%のポリ塩化ビニルと、
b)20重量%~90重量%の無機固体粒子と、
c)0.1重量%~5.0重量%の、前記ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して前記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマーと、
d)0重量%~30重量%の1種以上の可塑剤と、
e)0重量%~5重量%の成分a)~d)とは異なるその他の添加剤と、
を含み、ここで、重量%は前記組成物の総重量に基づいて計算される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
i)以下
a)ポリ塩化ビニルと、
b)無機固体粒子と、
c)ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸基である末端基のカルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して前記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマーと、
d)任意に更なる成分と、
を準備する工程、
ii)前記準備された成分を任意の適切な順序で混合する工程、
iii)任意に成分d)を含む、成分a)、成分b)および成分c)に、80℃~200℃の温度範囲で剪断力をかける工程、
を含む、充填ポリ塩化ビニル材料を調製する方法。
【請求項13】
無機固体粒子が充填されたポリ塩化ビニルの機械的特性を改善するための、ポリエーテルセグメントを有するポリマーの使用であって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸基である末端基のカルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して前記ポリエーテルセグメントに連結されている、ポリマーの使用。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を含むフロアタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニルと無機固体粒子とを含む組成物に関する。さらに、本発明は、充填ポリ塩化ビニル材料を調製する方法に関する。さらに、本発明は、無機固体粒子が充填されたポリ塩化ビニルの機械的特性を改善するための本発明によるポリマーの使用に関する。さらに、本発明は、無機固体粒子と本発明によるポリマーとを含む組成物に関する。さらに、本発明は、本発明による組成物を含むフロアタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
充填ポリ塩化ビニル(PVC)は、比較的多量の、しばしば少なくとも50重量%の量の無機固体粒子を充填剤として使用してPVCフロアタイルおよびロール型フローリングの形成に一般的に使用される。充填剤の量はフローリング用途よりも少なくなり得るが、パイプおよびサイディング、窓、ケーブルおよびドア用部品、柵ならびにその他の建築部品で使用されるPVC複合材においても、より多量の無機固体粒子が充填剤として使用される。コストを削減するために多量の充填剤が使用され、充填剤同士をまとめるために最小限の量のポリ塩化ビニルが使用される。高充填された熱可塑性ポリ塩化ビニル組成物の加工は困難である場合があり、ポリビニルアルコール(PVA)/PVCコポリマーなどの高価なビニルコポリマーを必要とする場合さえもある。
【0003】
特許文献1には、充填プラスチックコンパウンドを加工するための添加剤として使用される二量体脂肪酸とモノアルコール、一例ではポリエーテルのモノアルコールとの縮合生成物が記載されている。PVCブレンド中の充填剤の濃度水準を更に増加させた場合に、上記二量体脂肪酸由来の加工添加剤は、上記充填PVCの適切な可塑化挙動または加工をもたらさない。
【0004】
特許文献2には、充填PVCブレンドのための加工添加剤としてのブチルアクリレート/メチルメタクリレートコポリマーが記載されている。PVCブレンド中の充填剤の濃度水準を更に増加させた場合に、上記コポリマーの加工添加剤としての使用は、上記充填PVCの適切な可塑化挙動または加工を高めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第1304210号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0111915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題を解決するポリ塩化ビニルと無機固体粒子の形の充填剤との組成物が継続的に必要とされている。本発明の特定の実施形態は、ポリ塩化ビニル内部の充填剤の分散品質を高めつつも組成物の調製時間が短縮される、充填ポリ塩化ビニル材料を調製する方法を提供することを目的とする。本発明の特定の実施形態は、改善された機械的特性を有する無機固体粒子が充填されたポリ塩化ビニルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリ塩化ビニルと、無機固体粒子と、ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマーと、を含む組成物を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様では、
i)以下
a)ポリ塩化ビニル、
b)無機固体粒子、
c)ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマー、
を準備し、
d)任意に更なる成分を準備する工程と、
ii)準備された成分を任意の適切な順序で混合する工程と、
iii)任意に成分d)を含む、成分a)、成分b)および成分c)に、80℃~200℃の温度範囲で剪断力をかける工程と、
を含む、充填ポリ塩化ビニル材料を調製する方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様では、無機固体粒子が充填されたポリ塩化ビニルの機械的特性を改善するための、ポリエーテルセグメントを有するポリマーの使用であって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されているポリマーの使用が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、無機固体粒子と、ポリエーテルセグメントを有するポリマーとを含む組成物であって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されており、該ポリマーが0.1重量%~5.0重量%(ここで、重量%は上記無機固体粒子の重量に基づいて計算される)の量で存在する組成物が提供される。
【0011】
本発明によるポリマー(成分c)は、無機固体粒子を含む充填PVCブレンドにおいて添加剤として使用されると、PVCブレンドの混合挙動および加工を向上させることが判明した。特に、充填PVCブレンドの可塑化挙動が改善され、充填PVCブレンドを適切に混合するのに必要とされる混合時間が短縮されることが判明した。さらに、得られる充填PVCブレンドの機械的特性、特に破断点伸びが改善されることが判明した。こうして、より多量の無機固体粒子を有する充填PVCブレンドを得ることができる。PVCブレンド中でより多量の無機固体粒子を使用することで、PVCブレンドのコストを削減することができる。
【0012】
本発明による無機固体粒子は、室温で固体であると共に、PVCブレンドを調製するための加工温度で固体である粒子である。実施形態では、無機固体粒子は、有機成分を更に含み得る。実施形態では、無機固体粒子は、PVCブレンドの充填剤として使用することができる。例えば、無機固体粒子を使用して、PVCブレンド中のポリ塩化ビニル樹脂の一部を置き換えることができる。追加的にまたは代替的に、無機固体粒子を選択して、PVCブレンドに追加の機能を与えることができ、および/またはその特性、例えばPVCブレンドの光学的特性(例えば、顔料を使用する)、電気的特性、化学的特性および他の特性を改変することができる。
【0013】
ポリマー(成分c)は、好ましくは、0.1重量%~5.0重量%の量で提供され、ここで、重量%は無機固体粒子の重量に基づいて計算される。より好ましくは、上記ポリマーは、好ましくは、0.1重量%~3.5重量%の量で提供され、更により好ましくは、上記ポリマーは、0.1重量%~2.5重量%の量で提供され、ここで、重量%は無機固体粒子の重量に基づいて計算される。無機固体粒子の種類および/または無機固体粒子の粒度に応じて、上記ポリマーの量は、充填PVCブレンドの可塑化挙動を向上させるための特定の至適濃度範囲を有し得ることが判明した。
【0014】
好ましい実施形態では、ポリエーテルセグメントを有するポリマー(c)は、ポリエーテルポリマー主鎖を有する。別の実施形態では、ポリマーセグメントは、ポリマー主鎖である。
【0015】
実施形態では、ポリ塩化ビニルは、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を含み得て、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)樹脂およびそれらの組み合わせを含み得る。代替的な実施形態では、ポリ塩化ビニルは、任意の他の置換ポリ塩化ビニル樹脂を含み得る。PVCまたはCPVCは、充填PVC組成物の最終用途に応じて、0.1重量%~95重量%の量で組成物中に存在する。好ましい実施形態では、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は懸濁重合によって調製される。
【0016】
無機固体粒子は、ポリ塩化ビニルと混合するのに適した任意の無機粒子であり得る。例示的な実施形態では、無機固体粒子は、炭酸カルシウム、石灰石、アルミニウム三水和物、石英、シリカおよびそれらの混合物からなる群から選択される。無機粒子として使用するのに適した材料の更なる例には、硫酸塩、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムまたは硫酸カルシウム、ケイ酸塩、粘土、金属の炭酸塩、酸化物および水酸化物、ならびにガラス繊維を含むガラス粒子が含まれる。無機固体粒子の平均粒度は、1ミクロン~100ミクロンの範囲であり得る。好ましい実施形態では、無機固体粒子の平均粒度は、1ミクロン~50ミクロンの範囲である。
【0017】
例示的な実施形態では、少なくとも80重量%の少なくとも1種類の無機固体粒子、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種類の無機固体粒子と、0.1重量%~10.0重量%の本発明によるポリマーとを含むマスターバッチ組成物(ここで、重量%はマスターバッチ組成物の重量に基づいて計算される)が提供される。上記マスターバッチ組成物の利点は、マスターバッチ組成物を調製した後に、該マスターバッチ組成物をポリ塩化ビニルと混合することができることである。好ましくは、マスターバッチ組成物は、少なくとも90重量%の少なくとも1種類の無機固体粒子、より好ましくは少なくとも95重量%の少なくとも1種類の無機固体粒子と、0.1重量%~5.0重量%の本発明によるポリマーとを含み、ここで、重量%はマスターバッチ組成物の重量に基づいて計算される。特定の実施形態では、マスターバッチ組成物は、本質的に、少なくとも1種類の無機固体粒子と本発明による少なくとも1種のポリマーとからなる。
【0018】
例示的な実施形態では、上記ポリマーは、1分子あたり平均して少なくとも1.0個のカルボン酸末端基を有する。好ましい実施形態では、上記ポリマーは、1分子あたり平均して1.0個~1.5個の範囲のカルボン酸末端基を有し、より好ましくは、上記ポリマーは、1分子あたり平均して1.1個~1.3個の範囲のカルボン酸末端基を有する。
【0019】
特定の実施形態では、上記ポリマーは、1分子あたり平均して少なくとも0.5個のヒドロキシル末端基を有する。1分子あたり少なくとも0.5個のヒドロキシル末端基は、充填剤などの無機固体粒子の粒子外表面への上記ポリマーの濡れ挙動を向上し得る。該ポリマーの上記湿潤挙動は、上記ポリマーを有する充填PVCの適切な可塑化挙動または加工を支持する。さらに、該ポリマーの上記濡れ挙動は、少なくとも1種類の無機固体粒子と本発明による少なくとも1種のポリマーとの混合物のマスターバッチ組成物の適切な調製方法を支持する。
【0020】
例示的な実施形態では、上記ポリマーは、少なくとも2個の末端基、最大3個の末端基を有し、1分子あたり平均して少なくとも1.0個のカルボン酸末端基を有する。上記ポリマーは、線状の連環型ポリマー(catenated polymer)、3本のアームを有するスター形状を有するポリマー、および主鎖と1つの分岐型ポリマーセグメントとを有するポリマーからなる群から選択され得る。スター形状を有する上記ポリマーは、中心連結セグメントと該中心連結セグメントに接続された3本のアームとによって形成され得る。例において、中心連結セグメントは、三官能性成分、好ましくは、グリセロール成分、トリメチロールプロパン成分、およびトリエタノールアミン成分などのトリヒドロキシル成分によって提供され得る。実施形態では、上記3本のアームのそれぞれは、ポリエーテルセグメントを含み得る。
【0021】
特定の例示的な実施形態では、上記ポリマーは、2個の末端基を有する連環型ポリマーであり、ここで、該ポリマーは、1分子あたり平均して1.0個~2.0個の範囲のカルボン酸末端基を有する。特定の実施形態では、上記連環型ポリマーは、1つのポリエーテルセグメントによってほぼ完全に提供され得る。代替的に、上記連環型ポリマーは、二官能性連結セグメントによって互いに結合されている少なくとも2つのポリエーテルセグメントを含み得る。追加的または代替的に、上記連環型ポリマーは、ポリエーテルセグメントと少なくとも1つの他のポリマーセグメントとを含むコポリマーであり得る。上記他のポリマーセグメントは、ポリエステルセグメント、ポリウレタンセグメント、およびポリアミドセグメントなどの任意のポリマーセグメントであり得る。上記コポリマーは、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、上記連環型ポリマーは、1分子あたり平均して1.0個~1.5個の範囲のカルボン酸末端基を有し、より好ましくは、上記ポリマーは、1分子あたり平均して1.1個~1.3個の範囲のカルボン酸末端基を有する。カルボン酸末端基の数が1分子あたり平均して最大1.5個であると、充填PVCブレンドの可塑化過程が向上することが判明した。さらに、1分子あたり平均して最大1.5であるカルボン酸末端基の最大量は、充填PVC組成物中の無機固体粒子のポリマーによる相互の架橋を妨げ得るが、または少なくとも低減し得る。
【0023】
カルボン酸末端基は、エステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されている。連結エステル基を有する上記連結セグメントは、ジカルボン酸または環状酸無水物を使用する縮合反応または付加反応により容易に形成することができる。
【0024】
例示的な実施形態では、連結セグメントは、エステル基とカルボン酸基との間に位置するヒドロカルビル基を含み、ここで、エステル基とカルボン酸基とは、最大6個の炭素原子によって隔てられている。エステル基とカルボン酸基との間の最大6個の炭素原子は、1個~6個の炭素原子を有する線状で飽和のハロゲン化もしくは非ハロゲン化アルキル基、分岐状で飽和のハロゲン化もしくは非ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基、アルコキシアルキレンオキシド残基、またはアルコキシポリアルキレンオキシド残基の少なくとも1つの一部であり得て、ここで、アルキレン単位はそれぞれの場合に、好ましくはC~Cアルキレン単位、より好ましくはCアルキレン単位および/またはCアルキレン単位である。特定の実施形態では、連結セグメントは、上記の最大6個より多くの炭素原子を含み得る。例えば、分岐状アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基のいずれか1つは、エステル基とカルボン酸基とを隔てている6個の炭素原子に加えて追加の炭素原子を含み得る。
【0025】
特定の実施形態では、連結セグメントは、環状酸無水物と、1分子あたり少なくとも1個のヒドロキシル末端基を有するポリエーテルセグメント、好ましくは1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシル末端基を有するポリエーテルセグメント、より好ましくは1分子あたり2個のヒドロキシル末端基を有するポリエーテルセグメントとの開環付加反応によって形成される。得られる連結セグメントは、エステル基および該エステル基とカルボン酸基との間に位置するヒドロカルビル基を含む。カルボン酸末端基は、無水物の開環付加反応によって提供される。上記環状酸無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水コハク酸、置換無水コハク酸、例えば無水アルキルコハク酸または無水アルケニルコハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸および無水トリメリト酸からなる群から選択され得る。環状酸無水物を使用する利点は、付加反応の選択性が高いため、所望の数のカルボン酸末端基を容易に得ることができることである。別の利点は、得られるポリマーの平均分子量および/または多分散度Dが、ヒドロキシル末端基を有するプレポリマーまたはポリエーテルセグメントと比べて実質的に変化しないことである。別の利点は、環状酸無水物とヒドロキシル末端基を有するポリエーテルセグメントとの付加反応のため、水が形成されないことである。
【0026】
例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントは、ポリアルキレンオキシド単位を含む。ポリアルキレンオキシド単位を基礎とするポリエーテルセグメントは商業的に通常に入手可能である。ポリアルキレンオキシド単位の例は、ポリエチレンオキシド単位、ポリプロピレンオキシド単位およびポリブチレンオキシド単位である。例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントは、ポリエチレンオキシド単位、ポリプロピレンオキシド単位、およびポリブチレンオキシド単位からなる群から選択される少なくとも1つのポリアルキレンオキシド単位を含む。特定の実施形態では、ポリエーテルセグメントは、少なくとも2つのポリアルキレンオキシドブロックを含み、ここで、第1のポリアルキレンオキシドブロックは、第2のポリアルキレンオキシドブロックとは異なり、各ポリアルキレンオキシドブロックは、ポリエチレンオキシド単位(PEO)、ポリプロピレンオキシド単位(PPO)およびポリブチレンオキシド単位(PBO)からなる群から選択される1つのポリアルキレンオキシド単位を含む。好ましくは、ポリエーテルセグメントは、3つのポリアルキレンオキシドブロックを含み、第1のポリアルキレンオキシドブロックと第3のポリアルキレンオキシドブロックとの間に配置される第2のポリアルキレンオキシドブロックは、上記第1のポリアルキレンオキシドブロックとは異なり、第3のポリアルキレンオキシドブロックは、第1のポリアルキレンオキシドブロックと等しい。一例では、上記ポリエーテルセグメントは、PEO/PPO/PEOトリブロックコポリマーである。PEO/PPO/PEOトリブロックコポリマーの一例は、BASF社により供給されるPluronic P-123である。特定の実施形態では、ポリエーテルセグメントは、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド単位が、ポリエーテルセグメントに沿ってランダムな順序で配置されている少なくとも2つのポリアルキレンオキシド単位を含む。上記ポリエーテルセグメントは、上記少なくとも2つのポリアルキレンオキシド単位の統計コポリマーである。
【0027】
好ましい実施形態では、ポリエーテルセグメントは、ポリエーテルセグメントに基づいて、最大20mol%のポリエチレンオキシド単位を含む。別の好ましい実施形態では、ポリマー(c)は、最大20mol%のポリエチレンオキシド単位を含む。
【0028】
特定の実施形態では、上記ポリマーは、中心連結セグメントと該中心連結セグメントに接続された3本のアームとによって構成され、各アームがポリエーテルセグメントを含むスター形状を有する。上記スター形状のポリマーは、中心連結セグメントと該中心連結セグメントに接続された3本のアームとを有して各アームがポリエーテルセグメントおよびヒドロキシル末端基を含むスター形状のプレポリマーと環状無水物を反応させることによって形成することができる。一例では、1分子あたり3つのヒドロキシル末端基を有するそのようなスター形状のプレポリマーは、Dow社から入手可能なトリオールポリエーテルポリオールVORANOLである。
【0029】
例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントは、式-[O-(CH]-の繰り返し単位を含む。上記ポリエーテルセグメントは、ポリテトラヒドロフランポリエーテルセグメントであり得る。上記ポリテトラヒドロフランポリエーテルは、テトラヒドロフランの酸触媒重合によって容易に形成することができる。上記ポリエーテルセグメントは、少なくとも1つのポリアルキレンオキシド単位などの追加の繰り返し単位を含み得る。
【0030】
例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントは、ポリエーテルカーボネート単位を含む。例において、ポリエーテルカーボネート単位は、1つ以上のアルキレンオキシド、二酸化炭素、および任意に2つ以上のOH官能性のスターター物質から調製される。ポリエーテルカーボネート単位を有するポリマーの一例は、Covestro社から入手可能なCARDYONである。
【0031】
例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントを有するポリマーは、2個~6個の末端基を有する。一例では、上記ポリマーは、ポリマー主鎖と該ポリマー主鎖に側鎖としてグラフトされている幾つかのポリエーテルセグメントとを有する櫛状構造を有し、ここで、該ポリマーは、合計で3個~6個の末端基を有する。例えば、ポリマー主鎖は、アリルアルコールモノマーおよび任意の別のアリルモノマーを重合することから調製することができる。グラフト化工程において、幾つかのポリエーテルセグメントは、アリルアルコールおよび任意の他のアリルモノマーによって形成されるポリマー主鎖のヒドロキシル基に連結またはグラフトされ得る。
【0032】
例示的な実施形態では、ポリエーテルセグメントを有するポリマーの数平均分子重量Mnは、700g/mol~6000g/molの範囲である。好ましい実施形態では、ポリエーテルセグメントを有するポリマーの数平均分子量Mnは、1000g/mol~5000g/molの範囲、より好ましくは1250g/mol~4000g/molの範囲である。数平均分子量は、較正標準としてポリスチレンを使用し、溶離液としてTHFを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって適切に測定することができる。
【0033】
例示的な実施形態では、上記組成物中の無機固体粒子の量は、該組成物の重量に基づいて計算して、20重量%~90重量%の範囲である。好ましい実施形態では、上記組成物中の無機固体粒子の量は、該組成物の重量に基づいて計算して、40重量%~80重量%の範囲である。より好ましい実施形態では、上記組成物中の無機固体粒子の量は、該組成物の重量に基づいて計算して、50重量%~80重量%の範囲である。
【0034】
例示的な実施形態では、上記組成物は可塑剤を更に含む。上記可塑剤は、PVCブレンドを可塑化する技術において知られている任意の適切な可塑剤であり得る。
【0035】
例示的な実施形態では、上記組成物は、メチルメタクリレート単位および少なくとも1つの他のアクリルモノマーを含むアクリルコポリマーを更に含む。該アクリルコポリマーを添加することで、上記組成物の溶融強度を向上させることができる。
【0036】
例示的な実施形態では、上記組成物は、
a)7重量%~60重量%のポリ塩化ビニルと、
b)20重量%~90重量%の無機固体粒子と、
c)0.1重量%~5.0重量%の、ポリエーテルセグメントを有するポリマーであって、該ポリマーの末端基の少なくとも60mol%はカルボン酸基およびヒドロキシル基からなる群から選択され、かつ該ポリマーの末端基の少なくとも一部はカルボン酸基であり、該カルボン酸末端基はエステル基を含む連結セグメントを介して上記ポリエーテルセグメントに連結されている上記ポリマーと、
d)0重量%~30重量%の1種以上の可塑剤と、
e)0重量%~5重量%の成分a)~d)とは異なるその他の添加剤と、
を含み、ここで、重量%は上記組成物の総重量に基づいて計算される。
【0037】
ポリマー(成分c)は、好ましくは、0.1重量%~5.0重量%(ここで、重量%は成分の総重量に基づいて計算される)の量で提供される。より好ましくは、上記ポリマーは、好ましくは、0.1重量%~3.5重量%の量で提供され、更により好ましくは、上記ポリマーは、0.1重量%~2.5重量%の量で提供され、ここで、重量%は成分の総重量に基づいて計算される。
【0038】
無機固体粒子(成分b)は、好ましくは、30重量%~90重量%(ここで、重量%は成分の総重量に基づいて計算される)の量で提供される。より好ましくは、無機固体粒子は、好ましくは、40重量%~80重量%の量で提供され、更により好ましくは、無機固体粒子は、50重量%~70重量%の量で提供され、ここで、重量%は成分の総重量に基づいて計算される。
【0039】
本発明の別の態様では、本発明による組成物を含むフロアタイルが提供される。ロール型フローリング、フローリングタイル、および他のタイプのPVCベースのフローリングを含む、硬質ビニルフローリングおよび軟質ビニルフローリングの両方とも、本明細書で使用されるフロアタイルのフローリング用途に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
用途範囲
フローリング用途では、PVCの量は、好ましくは1重量%~50重量%、より好ましくは4重量%~40重量%の範囲である。ロール型フローリング、フローリングタイル、および他のタイプのPVCベースのフローリングを含む、硬質ビニルフローリングおよび軟質ビニルフローリングの両方とも、本明細書で使用される「フローリング」に包含される。
【0041】
サイディング用途では、PVCの量は、71重量%~93重量%の範囲である。本明細書で使用される「サイディング」には、限定されるものではないが、PVCビニルサイディングまたはCPVCビニルサイディング、鼻隠し板、排水管、雨樋、窓枠およびドア枠、柵、デッキ用材、および環境に曝されるべく設計された他の用途が含まれる。
【0042】
パイプ用途では、PVCまたはCPVCの量は、50重量%~95重量%、より好ましくは71重量%~93重量%の範囲である。PVC配管またはCPVC配管とは、熱い飲用水および冷たい飲用水、廃水、化学薬品、ガス、およびその他の流体輸送操作用を含む、流体の輸送に使用されるパイプおよび継手を意味する。
【0043】
「高充填」ポリ塩化ビニル複合材は、高充填複合材の最終用途に依存する用語である。フローリング用途のためには、充填剤の量は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。PVCまたはCPVCのパイプまたはサイディングの用途では、多量の充填剤は15重量%超、より好ましくは20重量%超、更に最大35重量%であることとなる。
【0044】
選択された充填剤の平均粒度は、対応する最終用途で通常使用される平均粒度であり得る。一般に、サイディングの場合の平均充填剤粒度は0.7ミクロン~1.5ミクロンの範囲であり、パイプの場合は1ミクロン~3ミクロンの範囲であり、フローリングの場合は1ミクロン~100ミクロンの範囲である。
【0045】
カレンダリング組成物
明確な塑性領域を有する高い溶融粘度(約10Pa・s~10Pa・s)を有する熱可塑性プラスチックは、カレンダリングによって加工することができる。この目的のための方法の例は、ハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第251頁およびそれ以降に記載されている。こうして製造された製品の例には、床敷物、非可塑化PVC、半硬質PVC、可塑化PVCなどからできた非常に広範な多岐にわたる用途を有するフィルムが含まれる。溶融物が金属表面に付着するのを防ぐために、内部潤滑剤、例えば長鎖脂肪酸(C14~C18)の脂肪アルコールエステルがしばしば添加される。該潤滑剤は、PVC粒子間の摩擦を減らすことによりメルトフローを改善する。カレンダリング組成物をロールから分離し易くするために、外部潤滑剤、例えばパラフィンおよびワックスも添加される。カレンダーの下流には、しばしば(例えば、可塑化PVCから装飾フィルム、室内装飾フィルムまたは合成皮革フィルムを製造するための)印刷機またはエンボスカレンダーが存在する。
【0046】
射出成形組成物
熱可塑性合成ポリマーからできた成形組成物は、通常、射出成形組成物と呼ばれる。該成形組成物は、ポリマー基礎材料と添加剤、例えば充填剤または強化材料とから構成される。射出成形組成物は、しばしば、押出組成物で使用される組成物よりも低いモル質量を有するポリマーを使用する。したがって、射出成形組成物は、より好ましい溶融粘度および流動性を有する。しかしながら、添加剤、例えば流動促進剤および潤滑剤を使用する場合には、これらの材料の作用を常に考慮する必要がある。例えば、ポリマーの相対モル質量のいかなる減少も機械的特性を損なう。さらに、潤滑剤添加剤は軟化点を低下させる場合もある。射出成形組成物における添加剤ならびにこれらの加工および組成の更なる詳細な説明は、ハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第204頁~第221頁に見られる。
【0047】
押出組成物
押出組成物では、しばしば、射出成形組成物のために使用されるモル質量よりも高いモル質量を有する、例えば、より高い溶融粘度およびより低い流動性を有するポリマーが使用される。押出組成物のより高い溶融粘度は、ダイからの排出物とキャリブレータとの間の強度を改善する。より高い相対モル質量、したがってより高い溶融粘度はまた、より優れた機械的特性と関連しているが、射出成形による加工がより困難になることと関連している。詳細な説明は、ハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第244頁およびそれ以降に見られる。
【0048】
コーティング組成物
DIN 8580によれば、コーティングは、無形物質から作られた被着層を工作物または基材ウェブに適用するための製造方法である。コーティング組成物は通常、熱可塑性プラスチックまたは(少しばかり)エラストマーである。熱可塑性プラスチックの中で、PVCペーストが最も一般的である。PVCペーストの中で、より一般的に使用されるプラスチゾルとオルガノゾルとは区別される。コーティング組成物は、適切な混合装置中で混合または分散させることにより、微粉のPVCペーストグレード(通常はエマルジョンPVCを基礎とし、場合によっては懸濁液PVCを基礎とする)と添加剤(安定剤)、顔料および充填剤とを可塑剤へと撹拌しながら入れることによって調製される。この調製方法の詳細な説明は、ハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第254頁およびそれ以降に見られる。製造された床敷物および合成皮革コーティングは、しばしば、追加の表面処理、例えば、エンボスロールを用いた特定のデザインのエンボス加工、および/または平版印刷もしくはグラビア印刷による表面コーティングで更に加工される。
【0049】
熱硬化性樹脂(成形コンパウンド)
成形コンパウンドには一般に、以下の成分:反応性樹脂、硬化剤、任意に促進剤(この混合物はしばしばバインダーマトリックスとも呼ばれる)、充填剤および/または強化材料、潤滑剤および離型剤、顔料および/または染料、他の添加剤、例えば、安定剤、柔軟剤、硬化遅延剤および非反応性樹脂が含まれる。通常使用される充填剤は、チョーク(CaCO)、ATH、石英粉末、岩粉、ウォラストナイト、マイカであり、通常使用される強化材料は、ガラス繊維、合成有機物質(例えば、合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アラミド)、炭素繊維(C繊維)、天然に存在する有機物質(例えば、木粉およびセルロース)である。これらの成形コンパウンドの加工の詳細は、ハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第224頁およびそれ以降に示されている。熱硬化性組成物の例は、UP成形組成物、特にハンス・バッツァー(Hans Batzer)によるポリメーレ・ヴェルクシュトッフェ(Polymere Werkstoffe)-第III巻,テヒノロギー2(Technologie 2)[Polymeric materials, Volume III, Technology 2],ゲオルク・ティーメ出版,シュトゥットガルト、1984年版、第235頁およびそれ以降に記載される繊維強化成形コンパウンドである。これらの繊維強化成形コンパウンドは、しばしばシート形で見られ(シート成形コンパウンドまたはSMCとも呼ばれる)、これは更に、LS(低収縮率)グループとLP(低プロファイル)グループとに分類される。LP系は、収縮を実質的に補償するコンパウンドである。LS系はLP樹脂の収縮補償を達成しないが、実質的により着色し易い。SMC成形が後続の表面コーティングを目的としている場合に、例えば車体構造部品の場合には、LP系が好ましい。
【実施例
【0050】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、限定的な効果を有するものではない。
【0051】
略語、商品名および/または化学組成
PVC:ポリ塩化ビニル樹脂
CPVC:塩素化ポリ塩化ビニル樹脂
S-PVC1:Inovyn社により供給されるS-PVC INOVYN 264 PC;懸濁重合によって調製されるポリ塩化ビニル樹脂
DOTP-GPO:Oxea GmbH社により供給されるDOTP Oxsoft GPO;式:ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレートを有する可塑剤
STA1:Galata Chemicals社により供給されるCa/Zn stabilizer Mark CZ 2000;Ca/Zn金属セッケン安定剤
STA2:Galata Chemicals社により供給されるCa/Zn stabilizer Mark CZ 2060;Ca/Zn金属セッケン安定剤
CA-OG:Omya社により供給されるOmya Millicarb OG;炭酸カルシウム粉末
CA-D40:Omya社により供給されるDurcal 40;炭酸カルシウム粉末
MMA-BA1:約87℃のガラス転移点(Tg)を有するアクリルコポリマーまたはメタクリルコポリマー
MMA-BA2:約122℃のガラス転移点(Tg)を有するブチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー
AC-FA:化学組成:85mg KOH/gの酸価を有する脂肪アルコール(長鎖アルコール)の極性酸性エステル
PPO-DFA:化学組成:14mg KOH/gの酸価を有する二量体脂肪酸で封鎖されたブチル化合物から出発する(butyl started)PPO
PPG 2000:ポリプロピレングリコール、数平均分子量(Mn):2000
PPG 600:ポリプロピレングリコール、数平均分子量(Mn):600
Dowfax DF123:3000g/molの数平均分子量(Mn)を有するグリセロール化合物から出発する(glycerol started)ポリプロピレンオキシドポリエーテル
【0052】
本発明によるポリマー(分散剤)の形成:
実施例A
ポリプロピレングリコールと無水マレイン酸との反応
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた四ツ口反応容器に、室温で2000g(1mol)のポリプロピレングリコールポリエーテル(2000g/molのMnおよび1.1未満のDを有するPPG 2000)および6.6g(0.3重量%)のKOHを装入する。該混合物を真空下、100℃で2時間撹拌した。80℃に冷却した後に、147g(1.5mol)の無水マレイン酸を加え、該混合物を80℃でさらに3時間撹拌した。反応の進行は無水物値を測定することによって監視した。0.0の無水物値が達成されるまで反応を続ける。次いで、該混合物を冷却して排出する。反応が完了した後に、主として、1個または2個のカルボン酸末端基を有すると共に、1個のヒドロキシル末端基を有するまたはヒドロキシル末端基を有しないポリプロピレングリコールからなる生成物が形成される。得られたポリプロピレングリコールポリエーテルは、1分子あたり平均して1.5個のカルボン酸末端基を有する(これは、ポリマーの末端基の約75mol%に等しい)。該ポリプロピレングリコールは、1分子あたり平均して0.5個のヒドロキシル末端基を有する(これは、ポリマーの末端基の約25mol%に等しい)。GPCにより、得られたポリプロピレングリコールポリエーテルの分散度DおよびMnは、前駆体ポリエーテルPPG 2000の分散度DおよびMnに実質的に等しいことが示された。
【0053】
実施例B
ポリテトラヒドロフランポリエーテルと無水マレイン酸との反応
2000g(1mol)のポリテトラヒドロフランポリエーテル(Overlack GmbH社により供給される2000g/molのMnを有するpolyTHF 2000)と147g(1.5mol)の無水マレイン酸との反応を、実施例Aについて記載したのと同様に実施した。ポリテトラヒドロフランポリエーテル(polyTHF 2000)は、2個のヒドロキシル末端基を有する。反応が完了した後に、主として、1個または2個のカルボン酸末端基を有すると共に、1個のヒドロキシル末端基を有するまたはヒドロキシル末端基を有しないポリテトラヒドロフランポリエーテルからなる生成物が形成される。変性ポリテトラヒドロフランポリエーテルは、1分子あたり平均して1.5個のカルボン酸末端基を有する(これは、ポリマーの末端基の約75mol%に等しい)。変性ポリテトラヒドロフランポリエーテルは、1分子あたり平均して0.5個のヒドロキシル末端基を有する(これは、ポリマーの末端基の約25mol%に等しい)。GPCにより、得られた置換ポリテトラヒドロフランポリエーテルの分散度DおよびMnは、前駆体ポリテトラヒドロフラン 2000の分散度DおよびMnに実質的に等しいことが示された。
【0054】
実施例C
ポリプロピレングリコールと五酸化リンとの反応
上記のフラスコ内で、1molの2000g/molのMnを有するポリプロピレングリコールと1molのPとを混合し、窒素下で60℃で1時間撹拌した。温度を85℃から90℃に上げ、更に23時間保持した。次いで、該混合物を冷却して排出した。
【0055】
実施例D
ポリプロピレングリコールと五酸化リンとの反応
上記のフラスコ内で、1molの2000g/molのMnを有するポリプロピレングリコールと0.5molのPとを混合し、窒素下で60℃で1時間撹拌した。温度を85℃から90℃に上げ、更に23時間保持した。次いで、該混合物を冷却して排出した。
【0056】
実施例E
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた四ツ口反応容器に、室温で1molのDowfaxDF123および6.6gのKOHを装入する。該混合物を真空下、100℃で2時間撹拌した。80℃に冷却した後に、1.0molの無水マレイン酸を加え、該混合物を80℃でさらに3時間撹拌した。反応の進行は無水物値を測定することによって監視した。0.0の無水物値が達成されるまで反応を続ける。次いで、該混合物を冷却して排出する。
【0057】
実施例F~Jは実施例Eに従って調製したが、1.0molの無水マレイン酸の代わりに以下の量を使用した。
【0058】
【表1】
【0059】
PVCブレンドの形成:
PVCドライブレンドの製造
Vorwerk社製のThermomix TM 31を利用して、PVCドライブレンドを調製する。この装置で使用されるコンパウンドの量は600グラムである。可塑剤を除く全ての原材料をミキシングカップに量り入れる。コンパウンドを速度レベル「7」で混合する。5分間の混合時間後に、遅い混合速度(レベル4)で可塑剤を添加する。可塑化されたコンパウンドをレベル「7」で100℃の素材温度になるまで混合する。PVCドライブレンドを紙の上に置いて冷やす。
【0060】
表I-aは、無機固体粒子CA-OGを有するPVC組成物の配合表を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
無機固体粒子CA-OG(Omya社により供給されるMillicarb OG)は、2.7μmの粒度分布の中央値(D50%)を有する炭酸カルシウム粉末である。無機固体粒子CA-OGは、試験方法ISO 787/7に従って、45μmで0.01%のふるい残分の量を有する。該無機固体粒子の平均粒度は比較的小さいため、PVC樹脂100質量部に対して100質量部から200質量部の間の無機固体粒子負荷量範囲では、可塑化時間および溶融時間などのPVCブレンドの加工挙動が低下することが予想される。より大きな平均粒度を有する充填剤が使用される場合に、無機固体粒子負荷量の加工挙動への影響は、これらの実験で観察される参照最小無機固体粒子負荷量よりも高い無機固体粒子負荷量点(組成物の総重量に基づいて計算される(重量%)で表現される)より上で観察され得る。さらに、異なる量の可塑剤が使用される場合にまたは別の種類の可塑剤が使用される場合に、充填PVCの加工挙動は相違し得る。可塑剤がより多量であると、PVCブレンドの加工挙動が高まる場合があるが、得られるPVCブレンドの機械的特性の低下(例えば、より低い引張強度)が犠牲となる。
【0063】
表I-bおよび表I-b-1は、無機固体粒子Durcal 40を有するPVC組成物の配合表を示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
無機固体粒子CA-D40(Omya社により供給されるDurcal 40)は、30μmの粒度分布の中央値(D50%)を有する炭酸カルシウム粉末である。
【0067】
マスターバッチ組成物の形成
Durcal 40無機固体粒子および添加剤としての実施例Aから、幾つかのマスターバッチ組成物を調製した(表I-cを参照)。Durcal 40無機固体粒子および実施例Aを混合装置Thermomix TM 31中で混合(レベル6で20分間)することによって、マスターバッチ組成物(実施例13Mおよび実施例14M)を調製した。混合後に、Durcal 40無機固体粒子は(おそらく無機固体粒子の表面上に)実施例Aの添加剤を吸着した。
【0068】
表I-cは、無機固体粒子Durcal 40を有するマスターバッチ組成物の配合表を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
実施例Aの添加剤でコーティングされた乾燥無機固体粒子のマスターバッチ組成物を更に加工して、Vorwerk社製のThermomix TM 31を利用して実施例13~14に従ってPVCブレンドを調製して、PVCドライブレンドを調製した。これらの配合物の組成を表I-dに示す。
【0071】
【表6】
【0072】
マスターバッチ組成物を調製し、更に加工してPVCブレンドを調製して、最終的なPVCブレンドに対するマスターバッチ組成物の効果を試験した。
【0073】
加熱された2ロールの研究室カレンダー機でコンパウンドの加工を評価する
加熱された2ロールの研究室カレンダー機(Collin W 150P)でコンパウンドの加工を試験した。165℃~185℃の範囲の設定温度までカレンダーロールを加熱した。250グラムの調製されたPVCドライブレンドを、0.2mmのギャップで5rpmの速度で動作している加熱されたカレンダーロールの間に配置した。カレンダーロールの最終的な温度設定は、配合(PVC樹脂のK値、可塑剤の含有量、無機固体粒子の量)に依存する。10秒後に、前方のカレンダーロールの速度を18RPMに高め、後方のロールの速度を15RPMに高めた。ギャップを0.5mm(または示される場合は異なるギャップ)まで開いた。溶融速度を視覚的に確認し、ギャップ内の溶融物の分布を確認した。PVCドライブレンドの素早い溶融および良好な分布は、良好な加工特性の指標であった。カレンダーローラーへのPVCドライブレンドの接着性および熱安定性を観察した。コンパウンドがカレンダーロールへの付着または色不良を示した場合に、ドライブレンドの放出は不十分であると判定した。カレンダーロールの表面上に無光沢層の形成が観察された場合に、これは、カレンダーロールへのコンパウンドの付着挙動につながる場合がある。カレンダーロールの表面上での無光沢層の形成は、「プレートアウト」と表示する。カレンダーロール上での無光沢層は、通常、コンパウンドからカレンダーロール上への1つ以上の添加剤のマイグレーションによって引き起こされる。溶融した材料は、30秒ごとにカレンダーギャップに戻し入れた。4分後にPVCシートをカレンダーから取り出し、平板上に置いて冷やした。
【0074】
Brabender社製のPlasti-Corder、ニーダーW50EHTを用いた可塑化挙動の試験
速度:速度を50RPM~70RPMの範囲で選択する
温度設定:温度を150℃~170℃の範囲で選択する
試験時間:6分間
自動充填システム:プランジャー(2bar)による
測定:一定のチャンバー容量で
【0075】
PVCドライブレンドを、加熱されたニーダー装置中に上方から充填した。特殊な形状の混練ブレードを使用してコンパウンドを均質化した。無機固体粒子の量およびPVCドライブレンドの嵩密度に応じて、PVCコンパウンドの量を調整してチャンバー容量を一定に保った。Plasti-Corderは、トルク(溶融粘度を示す)、溶融時間、および温度を記録していた。対応する図は時間に対するトルク(溶融粘度を示す)と温度との間の関係を示した。
【0076】
DIN EN ISO 527-3(改変された測定)に準拠したZWICK社製のzmart.proを用いた物理的特性の試験
Zwick社製のパンチを使用して、試験用の試料を作製した。試料サイズ:
長さ(全体):152mm
クランプ長さ:116mm
端部の幅:25mm
中央の幅:13mm
Zwick社製のzmart.proの測定条件:
ロードセル:1kN
初期荷重:0.1MPa
試験速度:200mm/分
試験対象:引張強度、破断点伸び
【0077】
2ロールの研究室カレンダー機の試験結果
表II-aは、温度185℃での2ロールの研究室カレンダー機での実施例1~7(無機固体粒子Millicarb OGを含む)の加工特性を示す。
【0078】
【表7】
【0079】
温度185℃での2ロールの研究室カレンダー機の試験結果に対する注釈:
実施例1は、ギャップ内での溶融物の良好な自己回転および良好な溶融強度を示した。実施例2は、実施例1よりも遅い可塑化、ロールからの部分的なさざ波、およびギャップ内の溶融物の自己回転の不良を示した。実施例3は、実施例1よりも明らかに遅い可塑化、実施例2より多くのロールからのさざ波、およびギャップ内の溶融物の自己回転がないことを示した。実施例1~3から、無機固体粒子量を100phr(実施例1)から200phr(実施例3)に高めると、2ロールの研究室カレンダー機での溶融物の加工挙動が悪化することは明らかである。実施例4は、PVCブレンド材料がカレンダーロールからほぼ完全に落下し、可塑化が非常に遅く、ギャップ内の溶融物の自己回転がないことを示した。したがって、アクリル-メタクリルコポリマー(MMA-BA1)は、PVCブレンドの加工挙動を改善しなかった。実施例5は、実施例2と同様の挙動を示した。したがって、脂肪アルコールの酸性エステル(AC-FA)は、PVCブレンドの加工挙動をわずかだけ改善した。しかしながら、ブレンド内の成分を適切に混合するには十分ではない。実施例6は、ロールからのわずかなさざ波、およびギャップ内の溶融物の良好な自己回転を示した。したがって、プロピレングリコールの二量体脂肪酸縮合生成物は、PVCブレンドの加工の向上をもたらす。しかしながら、PVCブレンドを適切に混合するための可塑化時間は長かった(表III-aに示される結果から観察することもできる)。実施例7は、実施例3~6と比較して、素早い可塑化およびギャップ内の溶融物の明らかに改善された自己回転を示した。したがって、本発明による添加剤は、PVCブレンドの加工挙動を改善した。これは、表III-aに示される結果から観察することもできる。
【0080】
表II-bは、温度165℃での2ロールの研究室カレンダー機での実施例8~12(無機固体粒子Durcal 40を含む)の加工特性を示す。
【0081】
【表8】
【0082】
温度165℃での2ロールの研究室カレンダー機の試験結果に対する注釈:
実施例8は、ギャップ内での溶融物の良好な可塑化速度および十分な溶融強度を示した。実施例8は、実施例9~12および実施例15~16の参考である。実施例9は、実施例8よりも遅い可塑化、および実施例8と比較して増加した溶融強度を示した。実施例10は、実施例8よりも遅い可塑化、および実施例8と同様の溶融強度を示した。実施例11(実施例Aの添加剤を含む)は、実施例8よりも明らかに素早い可塑化を示した。溶融強度は実施例8と同様である。実施例12(実施例Bの添加剤を含む)は、良好な可塑化速度、および実施例8と比較して増加した溶融強度を示した。実施例15はプレートアウトを示し、実施例16と同様に、実施例8よりも遅い可塑化速度を示した。実施例の溶融物の適切な自己回転のために到達可能なギャップは、表II-bに示されている。参考は0.5mmのギャップを有する実施例8である。実施例9、10および12の溶融物の適切な自己回転のために到達可能なギャップはより大きい。実施例11の溶融物の適切な自己回転のために到達可能なギャップはより小さい。したがって、本発明による添加剤(実施例Aおよび実施例B)は、PVCブレンドの加工挙動(特に可塑化挙動)を改善する。これは、表III-bに示される結果から観察することもできる。
【0083】
Brabender社製のPlasti-Corderを用いた可塑化挙動の試験結果
【表9】
【0084】
Brabender社製のPlasti-Corderでの可塑化挙動を、170℃、50rpmの条件で6分間の間試験した。Brabender社製のPlasti-Corderでの可塑化挙動では、無機固体粒子量を100phrから200phrに増加させると、溶融時間が54(秒)から238(秒)に増加することが示された(実施例1~3)。実施例4のブレンドの溶融時間およびトルクは、Brabender社製のPlasti-Corderでの試験の間に材料が可塑化しなかったため、測定することができなかった。実施例5は、適度な良好な溶融時間を示した(実施例1の溶融時間と実施例2の溶融時間との間)。実施例6は、実施例2の溶融時間と同様のより遅い溶融時間を示した。実施例7は、実施例1の溶融時間と同様の素早い溶融時間を示した。したがって、本発明による添加剤は、溶融時間を実施例1の水準まで明らかに高める。
【0085】
【表10】
【0086】
Brabender社製のPlasti-Corderでの可塑化挙動を、150℃、70rpmの条件で6分間の間試験した。実施例8の可塑化挙動は、溶融時間が50(秒)であることを示した。実施例9は、実施例8と相違しない52(秒)の溶融時間を示した。実施例10は、実施例8より遅い86(秒)の遅い溶融時間を示した。実施例11および実施例12は両方とも、素早い溶融時間(すなわち、それぞれ30(秒)および26(秒))を示し、この溶融時間は実施例8よりも素早い。実施例15および実施例16は両方とも、実施例8より遅い溶融時間を示した。したがって、本発明によるポリマー添加剤(実施例Aおよび実施例B)は、溶融時間を実施例8より素早い水準まで明らかに高める。
【0087】
表III-cは、Brabender社製のPlasti-Corderでの実施例8、11および13および14の可塑化挙動を比較している。
【0088】
【表11】
【0089】
Brabender社製のPlasti-Corderでの可塑化挙動を、150℃、70rpmの条件で6分間の間試験した。実施例11は、実施例Aの添加剤と混合されたPVCブレンドである。実施例13および実施例14は、実施例Aの添加剤と予備混合された無機固体粒子のマスターバッチ組成物からできたPVCブレンドである。実施例13および実施例11は両方とも、1.0重量%のポリマー添加剤(実施例A)を有し、ここで、重量%は無機固体粒子の重量に基づいて計算される。実施例13の溶融時間は、実施例8の溶融時間よりもはるかに短く、実施例11の溶融時間と同様である。実施例13の終了時のトルクは、実施例11の終了時のトルクと同様である。これは、このマスターバッチ組成物が、実施例Aの添加剤を含まない参考実施例8と比較して、同様の溶融時間の改善をもたらすことを示している。実施例14は、1.5重量%のポリマー添加剤(実施例A)を有し、ここで、重量%は無機固体粒子の重量に基づいて計算される。実施例14の溶融時間は、実施例11および実施例13の溶融時間よりもわずかに短い。実施例13の終了時のトルクは、実施例11および実施例13の終了時のトルクよりもわずかに低い。
【0090】
【表12】
【0091】
Brabender社製のPlasti-Corderでの可塑化挙動を、150℃、70rpmの条件で6分間の間試験した。
【0092】
本発明による全ての実施例は、本発明によるものではない比較例17と比較して、溶融時間の短縮および終了時のトルクの減少を示した。したがって、本発明による添加剤は加工挙動を明らかに高める。
【0093】
物理的特性の試験結果
【表13】
【0094】
無機固体粒子Millicarb OGの場合に、無機固体粒子量を100phrから200phrに増加させると、引張強度が減少する(実施例1~3)。無機固体粒子量を100phrから200phrに増加させると、破断点伸びは大幅に減少する(実施例1~3)。実施例4は、実施例3と比較して、引張強度に実質的な変化を示さず、破断点伸びのわずかな改善のみを示した。実施例5は、実施例3と比較して、引張強度および破断点伸びに実質的な変化を示さなかった。実施例6は、実施例3と比較して、引張強度に実質的な変化を示さず、破断点伸びのわずかな改善のみを示した。実施例7は、実施例3と比較して、引張強度のわずかな減少のみを示し、破断点伸びの大幅な改善を示した。破断点伸びは、実施例2よりも良好な水準まで改善した。したがって、本発明による添加剤は、破断点伸びを実施例1(100prの無機固体粒子)と実施例2(150prの無機固体粒子)との間の水準まで明らかに高める。
【0095】
表IV-bは、無機固体粒子Durcal 40を含むPVCブレンドの引張特性を比較している。
【0096】
【表14】
【0097】
無機固体粒子Millicarb OGと比較して無機固体粒子Durcal 40の粒度がより大きいため、引張強度は実施例1~7よりもはるかに低い。引張強度は、添加剤におおよそ依存しない。全ての添加剤は、実施例8と比較して破断点伸びを改善する。実施例11および実施例12は、破断点伸びが実施例8と比較してさらに改善されることを示している。
【0098】
表IV-cは、無機固体粒子Durcal 40を含むPVCブレンドのεB破断点伸びを比較している。
【0099】
【表15】
【0100】
この表は、本発明による実施例を本発明によるものではない比較例17と比較した場合の破断点伸びεBの改善を示している。したがって、試験結果は、本発明の実施例の物理的特性の明らかな改善を示している。