(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】固体電解質、この製造方法、及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20220624BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220624BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220624BHJP
C08F 283/06 20060101ALI20220624BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220624BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M10/052
C08F283/06
C08F2/44 Z
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2020559354
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2019000438
(87)【国際公開番号】W WO2020013410
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0079193
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】デイル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0076709(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0050561(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0050278(KR,A)
【文献】特開2009-301833(JP,A)
【文献】特表2014-504788(JP,A)
【文献】特表2016-503572(JP,A)
【文献】国際公開第2018/093032(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0145450(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01B 1/06
C08F 283/06
C08F 2/44
C08F 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、
前記多官能性アクリレート系高分子は、前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドと架橋されてセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)を形成
する、固体高分子電解質であって、
前記非水系溶媒は、ジメチルスルホン(dimethyl sulfone)、スルホラン(sulforane)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、Triethylene glycol dimethyl ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含
み、
前記電解質は、全体重量を基準にして多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む固形分が70重量%以上である、固体高分子電解質。
【請求項2】
前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドは、多官能性アクリレート系高分子100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれる、請求項1に記載の固体高分子電解質。
【請求項3】
前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドの重量平均分子量は1,000ないし1,000,000g/molである、請求項2に記載の固体高分子電解質。
【請求項4】
前記多官能性アクリレート系高分子は、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane propoxylate triacrylate)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate)、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate)、ポリエステルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bis phenol A dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(1,4-butanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexandiol diacrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(ditrimethylolpropane tetraacrylate)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート(pentaerythritol ethoxylate tetraacrylate)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate)、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種の単量体来由重合単位を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項5】
前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはこれらの組み合わせからなる群から選択された1種である請求項1から4のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiOH、LiOH・H
2O、LiBOB、LiClO
4、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、CF
3SO
3Li、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
4BO
8、LiTFSI、LiFSI、LiClO
4及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項7】
前記リチウム塩は、電解質100重量部に対して10ないし50重量部で含まれるものである請求項1から6のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項8】
前記リチウム塩は、非水系溶媒に対して0.5ないし2.5Mの濃度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項9】
前記電解質の厚さは10ないし300μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項10】
前記電解質のイオン伝導度は、25℃を基準にして1.0×10
-6ないし5.0×10
-4S/cmである、請求項1から9のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項11】
前記電解質は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤及び無機化合物難燃剤からなる群から選択された1種以上の難燃性添加物をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項12】
前記電解質は、全体重量を基準にして多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む固形分が90重量%以上である請求項1から
11のいずれか一項に記載の固体高分子電解質。
【請求項13】
請求項1に記載の電解質の製造方法において、前記製造方法は、
(1)多官能性アクリレート系高分子単量体、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む電解質組成物を混合する段階;
(2)前記電解質組成物を100ないし150℃で溶融する段階;及び
(3)前記溶融された電解質組成物を光重合して電解質を収得する段階;
を含む固体高分子電解質の製造方法。
【請求項14】
前記製造方法は、(1)段階でDMPA(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone))、HOMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))、LAP(フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate))、IRGACURE2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(1-[4-(2-Hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane-1-one))からなる群から選択された1種以上の光開始剤をさらに投入することを含む、請求項
13に記載の固体高分子電解質の製造方法。
【請求項15】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の固体高分子電解質及び電極を含む全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月9日付韓国特許出願第10-2018-0079193号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、固体電解質、この製造方法、及びこれを含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、ノートパソコン、スマートフォンに主に使われている高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池は、リチウム酸化物からなる正極と炭素系の負極、分離膜及び電解質で構成されている。従来は前記電解質として液体状態の電解質、特に、非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に使われてきた。しかし、このように液体状態の電解質を使用すると、電極物質が退化され、有機溶媒が揮発する可能性が高いだけでなく、周りの温度及び電池自体の温度上昇による燃焼で安全性に問題がある。特に、リチウム二次電池は充放電する時、有機溶媒の分解及び/または有機溶媒と電極との副反応によって電池内部にガスが発生して電池の厚さを膨脹させる問題点があり、高温で保存する時は、このような反応が加速化してガスの発生量がさらに増加するようになる。
【0004】
このように持続的に発生したガスは、電池の耐圧増加を引き起こして角形電池が特定方向に脹れ上がって爆発するか、または電池の特定面の中心部が変形されるなど、安全性低下を引き起こすだけでなく、電池内の電極面で密着性に局所的な相違点を発生させ、電極反応が全体電極面で同様に起きることができないため、電池の性能が低下する短所をもたらすことになる。
【0005】
ここで、このような液体電解質の問題点を解決し、これを代替するためのリチウム二次電池用高分子電解質に関する研究が最近まで活発に行われた。
【0006】
高分子電解質は、大きくゲル型と固体型に分けられる。ゲル型高分子電解質は、高分子フィルム内に沸点が高い液体電解質を含浸させ、これをリチウム塩と一緒に固定して伝導度を示す電解質である。固体型高分子電解質は、O、N、Sのようなヘテロ元素を含んでいる高分子にリチウム塩を添加して、解離されたリチウム陽イオンが高分子内で移動する形態である。
【0007】
ゲル型高分子電解質の場合、液体電解質を多量に含んでいて、純粋液体電解質と類似のイオン伝導度を有する。しかし、安定性の問題と電池製造上の工程の難しさがそのまま残っている短所を持っている。
【0008】
一方、固体高分子電解質の場合は、液体電解質が含まれていないため、漏液と係わる安定性問題が改善されただけでなく、化学的、電気化学的安定性が高いという長所がある。しかし、常温でのイオン伝導度が非常に低いため、これを改善するための研究が多く行われている。
【0009】
現在、固体高分子電解質に最も多く使用されている物質はポリエチレンオキシド(PEO)で、固体相であるにもかかわらず、イオンを伝導させる能力を有している。しかし、線状のPEO系高分子電解質の場合は、高い結晶性によって常温で伝導度が10-5S/cmでとても低いため、リチウム二次電池に適用することが難しかった。また、電解質の加工性がよくないし、機械的強度が充分ではなく、5V未満の低い電圧安定性を示すなど、これを電池に応用して満足するほどの性能を具現しにくい実情である。
【0010】
このような問題点を解決するために、混合高分子電解質、相互侵入高分子網目(interpenetrating network)高分子電解質、不織布(nonwoven)固体高分子電解質などの様々な物質を開発して電池に適用しようとする試みがあったが、相変らず低いイオン伝導度と機械的強度、及び狭い駆動電圧範囲の問題を有している。
【0011】
よって、固体高分子電解質は、必須的に高いイオン伝導度、適切な機械的強度及び広い駆動電圧範囲を持つことはもとより、電池の駆動安定性を確保するために難燃特性を有しながらも、これを全固体電池に適用するために最小限の溶媒を含まなければならない必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、本発明者らは前記問題を解決するために多角的に研究した結果、多官能性アクリレート系高分子と、C2ないしC10ポリアルキレンオキシドを架橋してセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)を形成し、これにリチウム塩と非水系溶媒を添加して固体高分子電解質を製造する場合、電解質のイオン伝導度が向上されて難燃効果を示し、高い固形分の含量を示すことによって全固体電池に効果的に適用可能であることを確認して本発明を完成した。
【0014】
よって、本発明の目的は、全固体電池に適用可能な難燃性固体高分子電解質を提供し、これを含んで性能が向上された全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、
多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、
前記多官能性アクリレート系高分子は、ポリアルキレンオキシドと架橋されてセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)を形成するものである二次電池用固体高分子電解質を提供する。
【0016】
本発明の一具体例は、前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドが多官能性アクリレート系高分子100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれることである。
【0017】
本発明の一具体例は、前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドの重量平均分子量が1,000ないし1,000,000g/molである。
【0018】
本発明の一具体例は、前記多官能性アクリレート系高分子がトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane propoxylate triacrylate)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate)、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate)、ポリエステルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bis phenol A dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(1,4-butanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexandiol diacrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(ditrimethylolpropane tetraacrylate)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート(pentaerythritol ethoxylate tetraacrylate)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate)、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種の単量体来由重合単位を含むものである。
【0019】
本発明の一具体例は、前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含むものである。
【0020】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩がLiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiOH、LiOH・H2O、LiBOB、LiClO4、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、CF3SO3Li、LiC(CF3SO2)3、LiC4BO8、LiTFSI、LiFSI、LiClO4及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含むものである。
【0021】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩が電解質100重量部に対して10ないし50重量部で含まれるものである。
【0022】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩は非水系溶媒に対して0.5ないし2.5Mの濃度を有するものである。
【0023】
本発明の一具体例は、前記非水系溶媒がジメチルスルホン(dimethyl sulfone)、スルホラン(sulforane)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、Triethylene glycol dimethyl ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含むものである。
【0024】
本発明の一具体例は、前記電解質の厚さが10ないし300μmのものである。
【0025】
本発明の一具体例は、前記電解質のイオン伝導度が25℃を基準にして1.0×10-6ないし5.0×10-4S/cmのものである。
【0026】
本発明の一具体例は、前記電解質がハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤及び無機化合物難燃剤からなる群から選択された1種以上の難燃性添加物をさらに含むものである。
【0027】
本発明の一具体例は、前記電解質が全体重量を基準にして多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む固形分が70重量%以上のものである。
【0028】
本発明の一具体例は、前記電解質が全体重量を基準にして多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む固形分が90重量%以上のものである。
【0029】
また、本発明は、
上述した電解質の製造方法において、前記製造方法は、
(1)多官能性アクリレート系高分子単量体、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む電解質組成物を混合する段階;
(2)前記電解質組成物を100ないし150℃で溶融する段階;及び
(3)前記溶融された電解質組成物を光重合して電解質を収得する段階;
を含む二次電池用固体高分子電解質の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の一具体例は、前記製造方法の(1)段階でDMPA(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone))、HOMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))、LAP(フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate))、IRGACURE2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(1-[4-(2-Hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane-1-one))からなる群から選択された1種以上の光開始剤をさらに投入することである。
【0031】
また、本発明は、
上述した固体高分子電解質及び電極を含む全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による固体高分子電解質は、電解質のイオン伝導度が向上されて難燃効果を示す。また、高い固形分の含量によって全固体電池に効果的に適用可能であり、高い機械的安定性と電圧安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施例及び比較例による電解質の電圧安定性グラフを示すものである。
【
図2】本発明の実施例及び比較例による電解質のイオン伝導度を比べたグラフを示すものである。
【
図3】本発明の実施例及び比較例による電解質の固形分含量によるイオン伝導度を比べたグラフを示すものである。
【
図4】本発明の実施例による高分子電解質のイメージを示すものである。
【
図5】本発明の実施例及び比較例による電解質構成成分の難燃特性を比べたイメージである。
【
図6】本発明の実施例及び比較例による電解質の難燃特性を比べたイメージである。
【
図7】本発明の実施例及び比較例による電解質の安定性測定に関するイメージを示すものである。
【
図8】本発明の比較例による電解質のイオン伝導度を示すものである。
【
図9】本発明の比較例による電解質の再度組み立て後のイオン伝導度を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、添付の図面を参照にして詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができる原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0036】
本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「持つ」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の別の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0037】
固体高分子電解質
本発明は、多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、前記多官能性アクリレート系高分子は、ポリアルキレンオキシドと架橋されてセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)を形成して固形分の含量が高く、難燃効果を示す固体高分子電解質及びその製造方法を提供する。
【0038】
既存のポリエチレンオキシドを適用した高分子電解質の場合、高分子構造の結晶性が高くてイオン伝導度が低いという限界を持っていた。しかし、本発明の一具現例による高分子電解質は、C2ないしC10ポリアルキレンオキシドと多官能性アクリレート系高分子が架橋された高分子を適用することによって結晶性が低くなり、これによって高分子鎖の流動性が向上するだけでなく、高分子の誘電定数が増加されて、より多くのリチウムイオンを解離して既存のポリエチレンオキシド系高分子より高いイオン伝導度を示すことができる。また、前記C2ないしC10ポリアルキレンオキシドと多官能性アクリレート系高分子が架橋された高分子は、セミ相互侵入高分子網目を形成して、これを含む高分子電解質は安定性と機械的強度が改善されると同時に、優れたイオン伝導度を示すことができる。前記セミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)は、線状高分子と架橋高分子が網状構造をなしていることを言い、このようなセミ相互侵入高分子網目は、2種類の高分子が鎖の形態で縛られていて網目構造(network structure)を形成しているので、一般的な共重合体に比べて丈夫で強い特性を持ち、優れた柔軟性を示すことができる。
【0039】
前記ポリアルキレンオキシドは、具体的にC2ないしC20アルキレン、またはC2ないしC10アルキレンであってもよく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドまたはこれらの組み合わせからなる群から選択された1種であってもよく、好ましくはポリエチレンオキシドであってもよい。
【0040】
前記多官能性アクリレート系高分子は、末端に2個以上の二重結合を持つ化合物であってもよく、非制限的な例としてトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane propoxylate triacrylate)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate)、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate)、ポリエステルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bis phenol A dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(1,4-butanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexandiol diacrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(ditrimethylolpropane tetraacrylate)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート(pentaerythritol ethoxylate tetraacrylate)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate)、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種の単量体来由重合単位を含むものであってもよい。前記単量体来由重合単位は、重合体を構成する一部分であって、重合体分子構造内で特定単量体から来由した一部分を意味する。例えば、アクリロニトリル来由重合単位は、重合体分子構造内でアクリロニトリルから来由した一部分を意味する。
【0041】
前記ポリアルキレンオキシドの重量平均分子量は1,000ないし1,500,000g/molであってもよい。具体的に1,000ないし 600,000g/mol、好ましくは1,000ないし100,000g/molであってもよく、この場合、前記範囲内で優れたイオン伝導度を示すことができ、前記範囲内で重量平均分子量が小さくなるほど高分子鎖の流動性がよくなって、イオン伝導度が高くなることがある。
【0042】
本発明の一具現例において、前記ポリアルキレンオキシドは多官能性アクリレート系高分子100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれてもよい。具体的に1ないし10重量部、好ましくは2ないし10重量部で含まれてもよい。前記範囲内で前記ポリアルキレンオキシドの含量が多くなるほど前記セミ相互侵入高分子網目のイオン伝達能力が向上される。
【0043】
一方、前記固体高分子電解質はリチウム塩を含んでもよい。前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能とし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役目をすることができる。前記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiOH、LiOH・H2O、LiBOB、LiClO4、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、CF3SO3Li、LiC(CF3SO2)3、LiC4BO8、LiTFSI、LiFSI、LiClO4及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種であってもよく、これに制限されない。
【0044】
前記リチウム塩の含量は、電解質100重量部に対して10ないし50重量部、具体的に20ないし47重量部で含まれてもよい。もし10重量部未満で含む場合、その含量が低くて電解質のイオン伝導度が低くなることがあり、50重量部以上含まれる場合、高分子電解質内で全てのリチウム塩が解離されることができず、結晶状態で存在してイオン伝導度に寄与することができず、むしろイオン伝導性を邪魔する役目をしてイオン伝導度が減ることがあり、相対的に高分子の含量が減少して固体高分子電解質の機械的強度が弱くなることがあるので、前記範囲で適切に調節する。
【0045】
前記リチウム塩は後述する本発明の一具現例による非水系溶媒に対して0.5ないし2.5M、具体的に0.97ないし2.22Mの濃度であってもよい。前記リチウム塩は、リチウムをイオン化することができる非水系溶媒の含量との相対的な関係、電池駆動に必要なリチウムイオンの正常的供給の側面で適量を添加すればよく、もし0.5M以下である場合は電解質のイオン伝導度が減ることがあり、2.5Mを超える場合はリチウム塩が結晶化されて電池内部で抵抗として作用することがある。前記範囲内でより向上された電池特性が得られる。
【0046】
一具現例による高分子電解質の優れたイオン伝導度を示すことができる。具体的に、前記高分子電解質のイオン伝導度は、25℃を基準にして1.0×10-6ないし5.0×10-4S/cmであってもよい。
【0047】
既存の全固体電池の場合、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの非水系溶媒を通常使用したが、前記ジメチルスルホキシドなどの溶媒の場合、電池の安定性を確保するための難燃特性を与えにくい問題点があった。
【0048】
よって、本発明の一具現例において、前記非水系溶媒はジメチルスルホン(dimethyl sulfone)、スルホラン(sulforane)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、Triethylene glycol dimethyl ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含んでもよい。非制限的な例として、前記ジメチルスルホン(DMSO2、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane))またはスルホラン(sulforane)は常温で固体型溶媒であって、前記溶媒を含む固体高分子電解質の場合、電解質の固形分含量を増加させることによって、これを全固体電池に容易に適用可能であり、難燃特性を与えて電池の安定性を確保することができる長所がある。下記表1は、本発明による非水系溶媒の一種であるジメチルスルホン(DMSO2、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane))及びスルホラン(sulforane)の特性を示す。
【0049】
【0050】
前記でNFPA(National Fire Protection Association)は、難燃等級及び生物学的安全性等を評価して等級を付けた指標として、難燃等級1は引火点(flash point) 93.3℃以上の物質であり、難燃等級0は石、コンクリート、砂などである。前記表1を見ると、ジメチルスルホン(DMSO2、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane))及びスルホラン(sulforane)は常温(25℃基準)で固体型なので前記溶媒が含まれた電解質の場合、固形分の含量が増加する長所があり、発火点が140℃以上で電解質の難燃特性を与えることができる。
【0051】
前記非水系溶媒の含量は、電解質100重量部に対して1ないし30重量部、具体的に5ないし30重量部で含まれてもよい。もし、1重量部未満で含む場合、電解質組成物の均一な混合が難しくなるなど製造工程が円滑でないこともあり、30重量部以上含まれる場合、相対的に高分子の含量が減少して固体高分子電解質の機械的強度が弱くなることがあるので前記範囲で適切に調節する。
【0052】
本発明の一具現例による前記電解質の厚さは10ないし300μmであることが好ましい。前記電解質の厚さが薄いほどエネルギー密度を向上させることができ、イオン伝導度を高めることができるが、厚さが10μm未満の場合、電解質の適切な機械的強度を確保することができない問題点があるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0053】
本発明の一具現例によると、前記固体高分子電解質は難燃特性を与えるために難燃性添加物をさらに含むことができる。前記難燃性添加物は全固体電池の温度が急上昇して発火される場合でも全固体電池があまり燃えないようにして、さらに大きい火災が起きることを防ぐ役目をする。
【0054】
本発明で使うことができる難燃性添加物は特に限定せずに、公知の難燃剤を利用することができる。
【0055】
例えば、前記難燃剤では、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤及び無機化合物難燃剤などからなる群から選択された1種以上のものを使用することが可能であるが、これに限定されることではない。
【0056】
より詳しくは、前記ハロゲン系難燃剤では、トリブロモフェノキシエタン、テトラブロモビスフェノール-A(TBBA)、オクタブロモジフェニルエーテル(OBDPE)、ペンタブロモジフェニルエタン(PBDE)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5トリアジン、ブロム化エポキシ樹脂、ブロム化ポリカーボネートオリゴマー、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン及び脂環族塩素系難燃剤などからなる群から選択された1種以上のものを使用することができ、
前記リン系難燃剤では、赤リン、リン酸アンモニウム、ホスフィンオキシド(phosphine oxide)、ホスフィンオキシドジオール(phosphine oxide diols)、ホスファイト(phosphites)、ホスホン酸(phosphonates)、ビスフェノール-Aジホスフェート(BPADP)、トリアリールホスフェート(triaryl phosphate)、アルキルジアリールホスフェート(alkyldiaryl phosphate)、トリアルキルホスフェート(trialkyl phosphate)及びレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(resorcinaol bisdiphenyl phosphate(RDP))などからなる群から選択された1種以上のものを使用することができ、
前記窒素系難燃剤では、メラミン、メラミンホスフェート及びメラミンシアヌレートなどからなる群から選択された1種以上のものを使用することができ、
前記無機化合物難燃剤では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化アンチモン、水酸化スズ、酸化スズ、酸化モリブデン、ジルコニウム化合物、ホウ酸塩及びカルシウム塩などからなる群から選択された1種以上のものを使用することができるが、これに限定されることではない。
【0057】
本発明の一具現例による電解質は、電解質の全体重量を基準にして前記多官能性アクリレート系高分子、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む固形分が70重量%以上であってもよい。
【0058】
既存固体電解質を製造する時、一般的に使用していた溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))は常温において液体状態で存在し、電解質組成物の限界溶解度が存在するので、電解質の固形分を増加させることに限界があった。しかし、本発明による非水系溶媒を含む場合、溶媒自体が常温において固体で存在するので、溶融過程を経て電解質を製造する場合、既存の溶媒を使用する時より固形分の含量を増加させることができ、好ましくは固形分が90重量%以上であってもよい。
【0059】
電解質内の固形分の含量が高くなると固体電解質に含まれた溶媒(solvent)の含量が減少し、常温で前記電解質を含む全固体電池が安定的な駆動特性を示すことができる長所があり、製造過程で溶媒を取り除くための乾燥エネルギーを少なく使用することができて工程価格が減少する長所がある。
【0060】
固体高分子電解質の製造方法
本発明による一具現例では、前記固体高分子電解質の製造方法を提供する。前記電解質の製造方法は特に制限されず、当業界で公知された方法が用いられてもよい。
【0061】
前記製造方法は、(1)多官能性アクリレート系高分子単量体、C2ないしC10ポリアルキレンオキシド、リチウム塩及び非水系溶媒を含む電解質組成物を混合する段階;(2)前記電解質組成物を100ないし150℃で溶融する段階;及び(3)前記溶融された電解質組成物を光重合して電解質を収得する段階;を含む。前記方法によって多官能性アクリレート系高分子とC2ないしC10ポリアルキレンオキシドが架橋されてセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN:semi-Interpenetrating Polymer Networks)を形成する固体高分子電解質が製造されてもよい。
【0062】
前記多官能性アクリレート系高分子単量体は、末端に2個以上の二重結合を持つ化合物であってもよく、具体的な例は前述したとおりである。前記段階(1)でポリアルキレンオキシドは、多官能性アクリレート系高分子単量体100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれてもよい。具体的に1ないし10重量部、2ないし10重量部で含まれてもよい。前記範囲内で前記ポリアルキレンオキシドの含量が多くなるほど前記セミ相互侵入高分子網目のイオン伝達能力が向上される。
【0063】
この時、さらに光開始剤を含んで進めることができ、DMPA(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone))、HOMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))、LAP(フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate))、IRGACURE2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(1-[4-(2-Hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane-1-one))からなる群から選択された1種以上の光開始剤を含んでもよく、好ましくはHOMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))を使用してもよいが、必ずこれに制限されることではない。前記光開始剤は紫外線照射によってラジカルを形成できるものであって、もし光開始剤の濃度が低すぎると光重合反応が効率的に進められないため高分子電解質が不完全に形成されるし、光開始剤の濃度が高すぎると光重合反応が急に行われ、高分子電解質の均一性が落ちて応用性に制限があるので、所望の電解質の物性によって適正量を使用することができる。
【0064】
前記多官能性アクリレート系高分子単量体及びC2ないしC10ポリアルキレンオキシドを混合する段階では、リチウム塩がさらに投入されて混合されてもよい。この場合、固体高分子電解質のイオン伝導度が向上し、電池の性能が改善される。リチウム塩に対する説明は前述したとおりである。前記リチウム塩は、多官能性アクリレート系高分子単量体100重量部に対して10ないし50重量部、具体的に20ないし47重量部が投入されてもよい。この場合、前記優れたイオン伝導度を示す高分子電解質を製造することができる。
【0065】
また、段階(1)で非水系溶媒がさらに投入されて混合されてもよい。本発明の一具現例による前記非水系溶媒は常温で固体であってもよいので、段階(2)の溶融過程を経て電解質組成物と均一に混合されてもよい。前記非水系溶媒は、多官能性アクリレート系高分子単量体100重量部に対して1ないし30重量部、具体的に1ないし10重量部が投入されてもよい。この場合、前記高い固形分の含量を示す高分子電解質を製造することができる。
【0066】
段階(2)は電解質組成物を均一に混合する段階で、100ないし150℃の温度で溶融して撹拌する段階であってもよい。もし、100℃未満で行われる場合、電解質組成物に含まれた非水系溶媒が溶融されないので組成物が均一に混合されないことがあり、150℃を超えて行う場合、製造された電解質が電池に適した物性を示すことができない問題点があるので、前記範囲で適切に調節する。前記温度範囲で電解質組成物を溶融させ、12ないし24時間撹拌して均一な混合物を製造することができる。前記撹拌は特に制限されず、当業界で公知された方法が用いられてもよい。
【0067】
前記均一に混合された電解質組成物を光重合させてセミ相互侵入高分子網目を形成する段階(3)は、段階(2)で収得した電解質組成物に紫外線(UV)を照射して行われてもよい。この場合、とても早い時間内に重合される長所がある。前記電解質組成物に照射される紫外線の波長が254ないし360nmの紫外線であってもよい。紫外線は可視光線の紫色より波長が短い光線で、略語はUV(Ultraviolet rays)であり、波長が長い紫外線A(320nm~400nm)、波長が中間である紫外線B(280nm~320nm)、波長が短い紫外線C(100nm~280nm)に分けられる。前記電解質組成物に紫外線を照射する時、紫外線の照射時間は5ないし30分であってもよい。ただし、照射される紫外線(UV)の強さによって紫外線(UV)の照射時間は変わることがある点からみて、紫外線(UV)の照射時間は前記範囲に限定されない。
【0068】
全固体電池
本発明のまた別の一具現例では、前記固体高分子電解質及び電極を含む全固体電池を提供する。
【0069】
本発明で提示する全固体電池は、前記で示したように固体高分子電解質の構成を限定し、これを構成する別の要素、つまり、正極及び負極は本発明に特に限定されずに下記説明にしたがう。
【0070】
全固体電池の負極は、リチウム金属を単独で使用するか、または負極集電体上に負極活物質が積層されたものを使用する。
【0071】
この時、負極活物質はリチウム金属、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能である。この時、リチウム合金は、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnから選択される少なくとも一つの金属からなる合金を使用してもよい。また、リチウム金属複合酸化物は、リチウムとSi、Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeからなる群から選択されたいずれか一つの金属(Me)酸化物(MeOx)で、一例としてLixFe2O3(0<x≦1)またはLixWO2(0<x≦1)であってもよい。
【0072】
これに加え、負極活物質はSnxMe1-xMe'yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの酸化物などを使用してもよく、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独で、または2種以上が混用されて使用されてもよい。
【0073】
また、負極集電体は全固体電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されないし、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されてもよい。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使用されてもよい。
【0074】
本発明による全固体電池の正極は特に限定されず、公知の全固体電池に使用される材質であってもよい。
【0075】
電極が正極の場合は正極集電体で、負極の場合は負極集電体である。
【0076】
正極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに、高い導電性を有するものであれば特に制限されないし、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてもよい。
【0077】
正極活物質は、リチウム二次電池の用途によって変わることがあり、LiNi0.8-xCo0.2AlxO2、LiCoxMnyO2、LiNixCoyO2、LiNixMnyO2、LiNixCoyMnzO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLi4Ti5O12などのリチウム遷移金属酸化物;Cu2Mo6S8、FeS、CoS及び MiSなどのカルコゲン化物、スカンジウム、ルテニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの酸化物、硫化物またはハロゲン化物が使用されてもよく、より具体的には、TiS2、ZrS2、RuO2、Co3O4、Mo6S8、V2O5などが使用されてもよいが、これに限定されることではない。
【0078】
正極活物質の形状は特に限定されず、粒子型、例えば、球形、楕円形、直方体型などであってもよい。正極活物質の平均粒径は1ないし50μm範囲内であってもよいが、これのみに限定されることではない。正極活物質の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡によって観察される活物質の粒径を測定し、この平均値を計算することで得ることができる。
【0079】
正極に含まれるバインダーは特に限定されず、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素含有バインダーが使用されてもよい。
【0080】
バインダーの含量は正極活物質を固定することができる程度であれば特に限定されないし、正極全体に対して0ないし10重量%の範囲内であってもよい。
【0081】
正極にはさらに導電材が含まれてもよい。導電材は正極の導電性を向上させることができれば特に限定されず、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを例示することができる。カーボンでは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維及びフラーレンからなる群から選択されたいずれか一つ、またはこれらの中で1種以上を挙げることができる。
【0082】
この時、導電材の含量は導電材の種類など、その他電池の条件を考慮して選択されてもよく、例えば、正極全体に対して1ないし10重量%範囲内であってもよい。
【0083】
前述の構成を有する全固体電池の製造は本発明で特に限定せず、公知の方法を通じて製造可能である。
【0084】
一例として、正極及び負極の間に固体電解質を配置させた後、これを圧縮成形してセルを組み立てる。また、高分子電解質の第1高分子電解質層が正極と接して配置されるようにして製造することができる。
【0085】
前記組み立てられたセルは、外装材内に取り付けられた後、加熱圧縮などによって封止する。外装材では、アルミニウム、ステンレスなどのラミネートパック、円筒状や角形の金属製容器が適する。
【0086】
以下、実施例などを通じて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されたり制限されて解釈されてはならない。また、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくと、具体的に実験結果が示されていない本発明を通常の技術者が容易に実施できることは自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0087】
実施例:固体高分子電解質の合成
多官能性アクリレート系高分子の単量体としてトリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート(ETPTA、trimethylopropane ethoxylate triacrylate)、C2ないしC10ポリアルキレンオキシドとしてポリエチレンオキシド(PEO、polyethylene oxide、Mw=600,000ないし1,000,000g/mol)、リチウム塩としてLiTFSI、非水系溶媒としてジメチルスルホン(DMSO
2、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane))、スルホラン(sulforane)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、Triethylene glycol dimethyl ether)の組み合わせ、光開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HOMPP、2-hydroxy-2-methylpropiophenone)、難燃性添加剤としてテトラブロモビスフェノールA(TBBA、tetrabromo bisphenol A)を下記表2のような条件で投入し、120℃で溶融しながら24時間撹拌して電解質組成物を製造した。前記電解質組成物をテフロン(登録商標)離型フィルムにドクターブレードコーティングし、紫外線を加えて光重合を実施した。紫外線照射は325nm波長で1分、以後254nm波長で1分、そして365nm波長で1分間順次実施し、紫外線照射を終えた後、前記テフロン(登録商標)離型フィルムでフィルム形態の固体高分子電解質を収得した。
図4は、前記のように製造された実施例5による電解質を示すものである。
【0088】
【0089】
*ただし、前記表において、非水系溶媒の中でメチルスルホニルメタン(D2)、スルホラン(SL)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)と略称する。
【0090】
比較例1:固体高分子電解質の合成
多官能性アクリレート系高分子でトリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート(ETPTA、trimethylopropane ethoxylate triacrylate)1ml、光開始剤で2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HOMPP、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))0.01ml、リチウム塩で1MのLiTFSI(ジメチルスルホキシド(DMSO)4mlの条件)、電解質2.5重量%のポリエチレンオキシド(ジメチルスルホキシド(DMSO)条件)を投入し、60℃で溶融しながら24時間撹拌して電解質組成物を製造した。前記電解質組成物をテフロン(登録商標)離型フィルムにコーティングし、紫外線を加えて光重合を実施した。紫外線照射は325nm波長で1分、以後254nm波長で1分、そして365nm波長で1分間順次実施し、紫外線照射を終えた後、前記テフロン(登録商標)離型フィルムでフィルム形態の固体高分子電解質を収得した。
【0091】
比較例2:固体高分子電解質の合成
下記表3の含量と電解質組成物を製造したことを除いては、前記実施例と同様にして電解質を製造した。
【0092】
【0093】
実験例1:電圧安定性評価
リニアスイープボルタンメトリー(LSV、Linear sweep voltammetry)を利用して前記実施例1ないし5及び比較例1ないし2で製造された固体高分子電解質の電圧安定性を評価し、BioLogic社VMP3を利用した。前記実施例と比較例の電解質の一面はリチウムメタル電極を接触させ、他の一面はSUS基板を接触させてコインセルを製作し、走査速度は10mV/sにして1.5V~6.0Vの範囲で測定した。
【0094】
図1で図示されたように、比較例の電解質に比べて実施例の電解質の場合5.0V以上の高電圧で安定した特性を示すことを確認した。
【0095】
実験例2:イオン伝導度評価
前記実施例1ないし5及び比較例1ないし2で製造された電解質のイオン伝導度は、そのインピーダンスを測定した後、下記数式1を利用して求めた。
【0096】
測定のために一定の広さと厚さを有する前記高分子固体電解質のフィルムサンプルを用意した。板状サンプルの両面にイオン遮断電極(ion blocking electrode)に電子伝導性に優れたサス(SUS)基板を接触させた後、サンプル両面の電極を通じて交流電圧を印加した。この時、印加される条件で測定周波数1.0MHz~0.1Hzの振幅範囲で設定し、BioLogic社VMP3を利用してインピーダンスを測定した。測定されたインピーダンス軌跡の半円や直線が実数軸と会う交点(R
b)からバルク電解質の抵抗を求め、サンプルの広さと厚さから高分子固体電解質膜のイオン伝導度を計算し、これをリチウム塩の濃度と固形分の含量によってそれぞれ
図2及び3に示す。
【0097】
【0098】
σ:イオン伝導度
Rb:インピーダンス軌跡と実数軸との交点
A:サンプルの広さ
t:サンプルの厚さ
【0099】
図2を見ると、実施例3の電解質対比リチウム塩の濃度を増加させた実施例4及び5の場合、電解質のイオン伝導度が増加したことを確認することができた。
図3を見ると、実施例の電解質の固形分含量が増加するほど、イオン伝導度が減少することが分かるが、リチウム塩の濃度を増加させた実施例4及び5の場合、安定的な全固体電池の駆動のためのイオン伝導度を示すことを確認した。
【0100】
図7は前記比較例1による電解質の特性に係り、
図7を見ると、比較例1の電解質はフリースタンディング(freestanding)のフィルム形態を維持するが、分解した後はクラックが生じてつぶされ、溶媒の漏液が観察されることを確認した。前記実験例2のインピーダンス測定値のナイキスト線図(Nyquist plot)で抵抗値を求め、これを利用して比較例1のイオン伝導度を計算した結果、2.51±0.97×10
-3S/cmの値を示し(
図8)、同じ電解質を分解した後、漏液した溶媒を取り除いて再度組み立てた後で測定した結果、1.83±0.75×10
-3S/cmの高いイオン伝導度値を示すことを確認した(
図9)。ただし、比較例1による電解質の高いイオン伝導度は、74.3wt%の高い溶媒の含量のためであると把握された。
【0101】
前記比較例及び実施例による実験結果を下記表4に要約した。
【0102】
【0103】
前記表4を見ると、本発明の実施例による電解質は、溶媒の含量とリチウム塩の含量を調節して電解質に含まれた固形分含量を70重量%以上、好ましくは90重量%以上を含み、イオン伝導度が0.1mS/cm以上で、5V以上の高電圧安定性を有し、これを全固体電池に適用できるようにフリースタンディングの中の機械的特性を示すことが分かった。また、難燃性添加剤を追加して前記実施例の電解質を含む全固体電池の安全性を確保することができる長所もある。
【0104】
比較例1及び2の場合、固形分含量がそれぞれ35.8重量%及び47.5重量%で、実施例の電解質に比べて低く、リチウム塩の濃度が0.5M以下であるにもかかわらず0.4mS/cmのイオン伝導度を示すが、電圧安定性が5V以下で低く、難燃特性を示すことができないことを確認した。
【0105】
実施例1及び2の場合、比較例1及び2に比べて固形分含量が増加することにつれイオン伝導度は減ったが、難燃性添加剤を含んで電解質の難燃特性が向上されたことを確認した。
【0106】
実施例3では、固形分の含量を90重量%まで増加させてイオン伝導度が減ったが、実施例1及び2のように難燃性添加剤を含んで電解質の難燃特性が向上されたことを確認した。
【0107】
実施例4及び5の場合は、固形分の含量を90重量%以上にして電解質の機械的安定性を確保し、全固体電池の適用可能性を高めると同時に、高濃度のリチウム塩を適用して固形分含量増加によるイオン伝導度減少問題を解決したことを確認した。また、室温で固体相溶媒であるメチルスルホニルメタン(DMSO2、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane))の混合の割合を高めて電解質の固形分含量が増加し、難燃性非水系溶媒の混合の割合を異にして電解質の難燃特性が付加されたことを確認した。
【0108】
実験例3:難燃特性実験
本発明による電解質の難燃特性を確認するために各成分のサンプル及び前記比較例及び実施例によって製造された電解質の直径2cm大きさの円形サンプルを用意した。それぞれのサンプルを、トーチを利用して燃消し、その結果を確認して難燃特性を調べた。
図5は本発明による電解質に含まれた各成分の難燃特性を示す結果で、
図6は前記比較例及び実施例によって製造された電解質の難燃特性を示す結果である。
【0109】
図5及び6を見ると、本発明による非水系溶媒は時間差があるが、蒸気が発生して火花が付いて燃焼される特性を示し、ETPTAオリゴマー(oligomer)、PEO、LiTFSIは難燃特性を示すことが分かった。また、難燃剤を10wt%添加した全ての高分子電解質は、火花によって燃焼されず、2秒以内に火花が消える自己消化性を示して、優れた難燃特性を示すことが分かった。(O:難燃特性優秀、×:難燃特性なし)