(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】トリシクロデカンジメタノール組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 29/38 20060101AFI20220624BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220624BHJP
C07C 31/27 20060101ALI20220624BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220624BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20220624BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
C07C29/38
G01N27/62 C
G01N27/62 V
C07C31/27
G01N30/88 G
G01N30/72 A
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020563680
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2020075315
(87)【国際公開番号】W WO2020164598
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-11-11
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598131258
【氏名又は名称】大連化学工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAIREN CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan.Dist.Taipei City,Taiwan 104
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】チウ、シー-フェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チン-ジュイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シン-ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ジュン-イェン
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-139180(JP,A)
【文献】特開2003-146931(JP,A)
【文献】特開平11-100339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリシクロデカンジメタノールである第1の成分と、
第2の成分と、を有する組成物であって、
前記組成物をガスクロマトグラフィー分析により特徴付けられる場合、トリシクロデカンジメタノールは12.4分から13分までの範囲の保持時間に溶出され、前記第2の成分は11.8分から12.4分までの範囲の保持時間に溶出され、前記第1の成分および前記第2の成分はスペクトル中のそれぞれの保持時間における溶出ピークにより示され、トリシクロデカンジメタノールを示す溶出ピークの面積に対する前記第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.04:1の間であり、
前記ガスクロマトグラフィーにおいて、前記組成物を長さ30m、内径530μm、膜厚1μmのBP-5キャピラリーカラムに充填し、液相は5%のフェニルと95%のジメチルポリシロキサンとであり、キャリヤーガスは窒素であり、その流速を最初の11分間は5mL/分とし、その後1mL/分の増加率で流速を5mL/分から10mL/分に上げるステップ流速とし、温度は50℃で1分間保ち、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に温度を上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に温度を上げ、250℃で8分間維持する一連のステップ温度とし、その際、注入口温度が250℃であり、前記組成物の試料注入量が2μLであり、検出器が300℃で稼働されるフレームイオン化検出器であり、
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により特徴付けられる場合、前記第2の成分は15.0分から16.5分までの範囲に保持時間を有し、31、41、67、79、91、93、119、149および167からなる群から選択された質量電荷比(m/z)に1つ以上のピークを包含する断片化パターンをし、
前記GC/MSにおいて、前記組成物を長さ60m、内径320μm、膜厚1μmのBP-1キャピラリーカラムに充填し、液相は100%のジメチルポリシロキサンであり、キャリヤーガスはヘリウムであり、その流速を2mL/分とし、250℃の注入口温度下、50℃で2分間保ち、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に温度を上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に温度を上げ、250℃で6分間維持する一連のステップ温度で操作を行い、70eVの電子エネルギー、230℃の電子源温度、150℃の四重極マスフィルター温度および0分の溶媒遅延で20.0m/zと230.0m/zとの間の範囲の質量スキャンを行い、
溶媒を除く、前記組成物の溶出ピークの全面積に対するトリシクロデカンジメタノールを示す溶出ピークの面積の比が、0.95:1またはそれ以上であ
り、
前記第2の成分が式(XI)
に示す化合物の1つまたは混合物であり、
X
1
はCであり、
X
2
はCであり、
i=1または0、
j=1または0、
v=1または0であり、
i=1の場合、
j=v=0であり、
R
B1
、R
B2
、R
C1
、R
C2
、R
D1
およびR
G1
は存在せず、
(X
3
-R
A
)は直鎖状または分岐状のC
4
アルキルアルコールであり、
X
4
はCH
2
またはCH(CH
2
OH)であり、
X
4
がCH
2
である場合、
R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
およびR
G2
の1つがCH
2
OHであり、R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
およびR
G2
の他の5つはHであり、
X
4
がCH(CH
2
OH)である場合、
R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
およびR
G2
はHであり、
i=0の場合、
j=v=1であり、
X
3
はCHであり、
X
4
はCHであり、
R
A
、R
B1
、R
B2
、R
C1
およびR
C2
の1つがCH
2
OHであり、R
A
、R
B1
、R
B2
、R
C1
およびR
C2
の他の4つはHであり、
R
D1
、R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
、R
G1
およびR
G2
の1つがCH
2
OHであり、R
D1
、R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
、R
G1
およびR
G2
の他の1つがCH
3
であり、R
D1
、R
D2
、R
E1
、R
E2
、R
F1
、R
F2
、R
G1
およびR
G2
の他の6つはHである、
組成物。
【請求項2】
前記第2の成分の断片化パターンが、31、41、67、79、91、93および119のm/zにピークを包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の成分の断片化パターンが、15.8分から16.0分までの範囲の保持時間に、149および167のm/zにピークを包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の成分の断片化パターンが、16.2分から16.4分までの範囲の保持時間に、149および167のm/zにピークを包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリシクロデカンジメタノールは、前記GC/MSにおいて、16.5分から17.5分までの範囲の保持時間を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガスクロマトグラフィーにより特徴付けられる場合、10.8分から11.2分までの範囲の保持時間に溶出され、スペクトルの対応する保持時間における溶出ピークにより示される第3の成分をさらに含み、前記トリシクロデカンジメタノールを示す溶出ピークの面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.00005:1の0.005:1の間であり、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により特徴付けられる場合、前記第3の成分は14.0分から14.5分までの範囲に保持時間を有し、135の質量電荷比(m/z)に1つのピークを包含する断片化パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第3の成分が式(X)
の化合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の成分が式(XI)~(XX)
の1つ以上の化合物を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも請求項1の組成物由来の、
ポリマー。
【請求項10】
少なくとも請求項1の組成物由来のポリエステル、エポキシ、アクリレート、ポリカーボネートまたはポリウレタンである、請求項
9に記載のポリマー。
【請求項11】
少なくとも請求項1の組成物由来のポリエステルである、請求項
9に記載のポリマー。
【請求項12】
請求項
9に記載のポリマーを含む、
光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トリシクロデカンジメタノールを含有する、透明光学材料を作製するための原材料として好適な新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における全ての刊行物は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に援用されるように示されたのと同様に、本明細書に援用される。以下の説明には、本発明の理解に有用である情報が含まれる。ここに提供される情報のいずれかが先行技術である、または現在の請求項に係る発明に関連している、または具体的または非明示的に参照されている刊行物が先行技術である、と認めるものではない。
【0003】
電子部品などに使用される光学材料または高分子材料は、高度の透明性を求められることが多い。それは、少なくとも光信号用の広範囲の光源を可能にするなどの処理能力に起因する。例えば,青色レーザーやUVレーザーなどの低波長範囲の光源では、高い透明性を有する光学材料を必要とする。従って、光透過性または紫外線抵抗性に劣る芳香族ポリエステルをそのような分野に応用することは困難である。
【0004】
各種ポリエステル樹脂はフィルム、シート、エラストマー、繊維、チューブ、容器等に成形することが可能であり、幅広い分野で使用可能であるが、ポリエステル樹脂の耐黄変性などの透明性を向上させるために、適切なコモノマーを含むことが重要である。同様に、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂なども様々な光学材料として使用でき、ポリマーの透明性を向上させるために適切なコモノマーを含むことが望ましい。
【0005】
本出願の目的は、向上した光学的特性を有する下流生成物を製造するための原材料として好適な、特定の成分とトリシクロデカンジメタノールとの組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態は、例示的かつ説明的であるべきシステム、製品、組成物および工程と併せて説明および例示されるものであって、範囲を限定するものではない。
【0007】
特定の成分を有し、光学材料の作製などに適用されるポリマーや樹脂の作製に使用できる、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)を含有する組成物を提供する。
【0008】
一部の実施形態では、請求項に係る組成物はTCDDMである第1の成分と第2の成分とを含み、該組成物をガスクロマトグラフィー(GC)分析により特徴付けられる場合、第2の成分は11.8分から12.4分までの範囲の保持時間に溶出され、TCDDMを示す溶出ピーク(例えば、12.4分と13分との間の保持時間範囲内のピーク)の面積に対する第2の成分を示す溶出ピーク(例えば、11.8分と12.4分との間の保持時間範囲内のピーク)の面積の比が0.001:1と0.04:1の間である。様々な実施形態では、GC分析において、TCDDMは12.4分から13分までの範囲の保持時間範囲に溶出される。
【0009】
一部の実施形態では、組成物をガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により特徴付けられる場合、該組成物の第2の成分は、31、41、67、79、91、93、119、149および167からなる群から選択された質量電荷比(m/z)に1つ以上のピークを包含する断片化パターンを有する。さらなる実施形態では、組成物の第2の成分は、149および167のm/zに少なくともピークを包含している断片化パターンを有する。さらなる実施形態では、第2の成分は、GC/MS分析において、15.0分から16.5分までの範囲に保持時間を有するが、TCDDMは、該GC/MS分析において、16.5分から17.5分までの範囲に保持時間を有する。
【0010】
一部の実施形態では、組成物は、TCDDMである第1の成分、上述の第2の成分および式(X)の化合物である第3の成分を含む。
【0011】
【化1】
式中、GC分析において、TCDDMを示す溶出ピークの面積に対する式(X)の化合物を示す溶出ピークの面積の比が0.00005:1と0.005:1の間である。一実施形態では、GC分析において、該組成物の第3の成分は、GC分析において、10.8分から11.2分までの範囲の保持時間に溶出される。
【0012】
一部の実施形態では、(溶媒を除く)組成物の溶出ピークの全面積に対するTCDDMを示す溶出ピークの曲線下面積の比は、0.95:1以上である。
【0013】
一部の実施形態は、第2の成分が式(XI)に示す化合物の1つまたは混合物であることを提供する。
【0014】
【化2】
式中、X
1はCであり、X
2はCであり、i=1または0、j=1または0、v=1または0であって、i=1の場合、j=v=0、R
B1、R
B2、R
C1、R
C2、R
D1およびR
G1は存在せず、(X
3-R
A)は直鎖状または分岐状のC
4アルキルアルコールであり、X
4はCH
2またはCH(CH
2OH)であり、X
4がCH
2である場合、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2の1つがCH
2OHであり、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2の残りの5つはHであり、X
4がCH(CH
2OH)である場合、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2はHであり、i=0である場合、j=v=1、X
3はCHであり、X
4はCHであり、R
A、R
B1、R
B2、R
C1およびR
C2の1つがCH
2OHであり、R
A、R
B1、R
B2、R
C1およびR
C2の残りの4つはHであり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の1つがCH
2OHであり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の他の1つがCH
3であり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の残りの6つはHである。
【0015】
一部の実施形態は、組成物中の第2の成分が以下の式の化合物の1つ以上を包含することを提供する。
【0016】
【0017】
上述の組成物から誘導できるポリマーが提供される。例えば、上述の組成物を含有するようにポリエステル、エポキシ、アクリレート、ポリカーボネートまたはポリウレタンを合成または修飾してもよい。該ポリマーから、光ディスク、繊維またはレンズなど様々な用途に使用される、光学材料を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例4のTCDDMベースの組成物のGC分析における保持時間スペクトル図である。
【
図2A】実施例4のTCDDMベースの組成物のGC/MS分析の保持時間スペクトル図である。
【
図2B】実施例4のTCDDMベースの組成物のGC/MS分析の保持時間スペクトル図である。
【
図3】実施例6のTCDDMベースの組成物(左側の倒立瓶内)の写真および比較例2(右側の倒立瓶内)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で引用される全ての参考文献は、完全に記載されているかのように、その全体が本明細書に援用される。特に定義されていない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。特に明記されない限り、または文脈から暗示される場合を除き、以下の用語および語句は以下に提供される意味を包含する。特に明記されない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語および語句は、その用語または語句が関連する技術において獲得された意味を除外するものではない。特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本出願は、本明細書に記載されている特定の方法、プロトコール、試薬などに限定されず、したがって変更可能であることを理解すべきである。本明細書で使用される定義および用語は、特定の実施形態を説明するために提供されており、請求項に係る発明を限定することを意図するものではない。
【0020】
当業者は、本出願の実施において使用され得る、本明細書に記載のものと同様または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。実際、本出願は、記載された方法および材料に決して限定されるものではない。便宜上、本明細書、実施例、添付の特許請求の範囲において使用される用語をここにまとめる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「包含している」または「包含する」という用語は、実施形態にとって有用である、組成物、方法、工程、製品、システムおよびそれらのそれぞれの成分に関連して使用されるが、有用であるかどうかにかかわらず、不特定の要素を含めるように開かれているものである。当業者は、一般に、本明細書で使用される用語は通常「開放型」ターム(例えば、「含んでいる」という用語は、「含むが、これに限定されない」として解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」として解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、など)として意図されていることを理解するであろう。含んでいる、含有している、または有している、などの用語の同義語としての「包含している」という開放型専門用語を、本明細書では本出願を説明および特許請求するために使用されているが、本発明またはその実施形態は、代わりに「から成る」や「から本質的に成る」などの代替用語を使用して説明されることがある。
【0022】
特に明記されない限り、本出願の特定の実施形態を説明する文脈で(特に、請求項の文脈で)使用される「ある一つの」や「該」という用語や同様の言及は、単数および複数の両方を包含すると解釈することができる。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略法として役を果たすことを意図している。本明細書に特に記載がない限り、個々の値は、本明細書に個別に記載されているかのように、明細書中に組み込まれる。本明細書に記載の全ての工程は、本明細書に特に記載がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、好適ないずれの順序でも行うことができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供されるあらゆる全ての例または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本出願をよりよく説明することを意図しており、他の方法で特許請求された本出願の範囲に制限を課すものではない。略語「e.g.(例えば)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を示すために使用される。このように、略語「e.g.」は、「for example(例えば)」という用語の同義語である。本明細書内の言い回しは、本出願の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示していると解釈されるべきではない。
【0023】
「任意の」または「任意に」とは、続いて説明される状況が発生しても発生しなくてもよいことを意味し、そのため、該説明には、該状況が発生した場合と発生しない場合とが含まれる。
【0024】
本明細書で使用される「約」という用語は、表示値の上下20%を意味することができる。例えば、約75℃は、60℃~90℃の範囲を包含する。
【0025】
本出願の様々な実施形態は、産業用途の要求を満たす、透明性の高いまたは不透明度が低いポリエステルの調製に好適なTCDDMベースの組成物を提供する。
【0026】
一部の実施形態では、GC分析(
図1に示されるスペクトル)用の溶媒に溶解させた場合、TCDDMベースの組成物は、12.4分から13分までの保持時間に溶出される第1の成分(すなわち、TCDDM)および11.8分から12.4分までに溶出される第2の成分を有し、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.04:1の間である。
該GC分析は、長さ30m、内径530μm、膜厚1μmのBP-5キャピラリーカラムからTCDDMベースの組成物を溶出することを含み、液相が5%のフェニルと95%のジメチルポリシロキサンであり、キャリヤーガスが窒素であり、その流速を5mL/分で最初の11分間、その後1mL/分の増加率で5mL/分から10mL/分にするステップ流速、(その後、GC分析の終わりまで10mL/分を維持する)とし、温度を50℃で1分間保ち、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に温度を上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に温度を上げ、250℃で8分間維持する一連のステップ温度とし、注入口温度が250℃、組成物の試料注入量が2μL、検出器が300℃で稼働されるフレームイオン化検出器である、ことにより特徴付けされる。様々な実施形態では、成分を示す溶出ピークの面積は、GCスペクトル内において、溶出曲線下(例えば、成分の明示された保持時間範囲内であれば、一重、二重、三重などの1つまたは複数のピークであり得る)であって、一般的にGC稼働システムにより決定される基線よりも上の面積として定義される。
【0027】
一実施形態では、組成物は、GC分析において、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.04:1の間であることを特徴とする。
【0028】
他の実施形態では、組成物は、GC分析において、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.039:1の間であることを特徴とする。
【0029】
他の実施形態では、組成物は、GC分析において、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.039:1の間であることを特徴とする。
【0030】
さらに他の実施形態では、組成物は、GC分析において、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.027:1の間であることを特徴とする。
【0031】
一部の実施形態では、組成物は、GC分析により特徴付けられる場合、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.001:1、0.002:1、0.003:1、0.004:1、0.005:1、0.006:1、0.007:1、0.008:1、0.009:1、0.01:1、0.011:1、0.012:1、0.013:1、0.014:1、0.015:1、0.016:1、0.017:1、0.018:1、0.019:1、0.02:1、0.021:1、0.022:1、0.023:1、0.024:1、0.025:1、0.026:1、0.027:1、0.028:1、0.029:1、0.03:1、0.031:1、0.032:1、0.033:1、0.034:1、0.035:1、0.036:1、0.037:1、0.038:1、0.039:1、0.04:1または列挙されたいずれか2つの値の間である。
【0032】
組成物のさらなる実施形態は、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒を除く組成物の溶出ピークの全面積に対する第2の成分の溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.04:1の間、または組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.04:1の間であることをもたらす。組成物(すなわち、溶媒を除く)の溶出ピークの全面積は、典型的には、第1の成分を示す溶出ピークの面積と第2の成分を示す溶出ピークの面積を含む。
【0033】
組成物の他の実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒の溶出ピークを除く溶出ピークの全面積に対する第2成分の溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.039:1の間であり、言い換えるならば、組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.039:1の間である。
【0034】
組成物の他の実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒の溶出ピークを除く溶出ピークの全面積に対する第2成分の溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.038:1の間であり、言い換えるならば、組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.001:1と0.038:1の間である。
【0035】
組成物の他の実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒の溶出ピークを除く溶出ピークの全面積に対する第2成分の溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.038:1の間であり、言い換えるならば、組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.038:1の間である。
【0036】
組成物のさらに他の実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒の溶出ピークを除く溶出ピークの全面積に対する第2成分の溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.027:1の間であり、言い換えるならば、組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が0.0012:1と0.027:1の間である。
【0037】
組成物のさらに他の実施形態は、GC分析により特徴付けられる場合、溶媒の溶出ピークを除く組成物の溶出ピークの全面積に対する第2成分の溶出ピークの面積は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.021、0.022、0.023、0.024、0.025、0.026、0.027、0.028、0.029、0.03、0.031、0.032、0.033、0.034、0.035、0.036、0.037、0.038、0.039、0.04または列挙されたいずれか2つの値の間であることをもたらす。組成物のさらなる実施形態は、GC分析により特徴付けられる場合、組成物(溶媒を含まない)を示す溶出ピークの全面積に対する第2の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.001:1、0.002:1、0.003:1、0.004:1、0.005:1、0.006:1、0.007:1、0.008:1、0.009:1、0.01:1、0.011:1、0.012:1、0.013:1、0.014:1、0.015:1、0.016:1、0.017:1、0.018:1、0.019:1、0.02:1、0.021:1、0.022:1、0.023:1、0.024:1、0.025:1、0.026:1、0.027:1、0.028:1、0.029:1、0.03:1、0.031:1、0.032:1、0.033:1、0.034:1、0.035:1、0.036:1、0.037:1、0.038:1、0.039:1、0.04:1または列挙されたいずれか2つの値の間であることをもたらす。
【0038】
本出願の組成物は、一部の実施形態では、GC分析において10.8分から11.2分までの保持時間に溶出される第3の成分を有する。第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第3の成分を示す溶出ピーク(例えば、10.8分と11.2分との間の保持時間範囲内のピーク)の面積の比が、0.00005:1と0.005:1の間である。
【0039】
組成物の一実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.00005:1と0.0018:1の間である。
【0040】
組成物の一実施形態では、GC分析により特徴付けられる場合、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.0001:1と0.0018:1の間である。
【0041】
組成物のさらに他の実施形態では、第1の成分を示す溶出ピークの面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.00005:1、0.00006:1、0.00007:1、0.00008:1、0.00009:1、0.0001:1、0.0002:1、0.0003:1、0.0004:1、0.0005:1、0.0006:1、0.0007:1、0.0008:1、0.0009:1、0.001:1、0.0011:1、0.0012:1、0.0013:1、0.0014:1、0.0015:1、0.0016:1、0.0017:1、0.0018:1、0.0019:1、0.002:1、0.0021:1、0.0022:1、0.0023:1、0.0024:1、0.0025:1、0.0026:1、0.0027:1、0.0028:1、0.0029:1、0.003:1、0.0031:1、0.0032:1、0.0033:1、0.0034:1、0.0035:1、0.0036:1、0.0037:1、0.0038:1、0.0039:1、0.004:1、0.0041:1、0.0042:1、0.0043:1、0.0044:1、0.0045:1、0.0046:1、0.0047:1、0.0048:1、0.0049:1、0.005:1または列挙されたいずれか2つの値の間である。
【0042】
組成物のさらなる実施形態は、GC分析により特徴付けられる場合、組成物を示す溶出ピーク(溶媒の溶出ピークを含まない)の全面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.00005:1と0.005:1の間、0.00005:1と0.0018:1の間、または0.0001:1と0.0018:1の間である。様々な実施形態は、組成物(すなわち、溶媒を除く)の溶出ピークの全面積は、第1の成分を示す溶出ピークの面積、第2の成分を示す溶出ピークの面積および第3の成分を示す溶出ピークの面積を含むことをもたらす。さらなる実施形態では、組成物(溶媒を除く)を示す溶出ピークの全面積に対する第3の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.00005:1、0.00006:1、0.00007:1、0.00008:1、0.00009:1、0.0001:1、0.0002:1、0.0003:1、0.0004:1、0.0005:1、0.0006:1、0.0007:1、0.0008:1、0.0009:1、0.001:1、0.0011:1、0.0012:1、0.0013:1、0.0014:1、0.0015:1、0.0016:1、0.0017:1、0.0018:1、0.0019:1、0.002:1、0.0021:1、0.0022:1、0.0023:1、0.0024:1、0.0025:1、0.0026:1、0.0027:1、0.0028:1、0.0029:1、0.003:1、0.0031:1、0.0032:1、0.0033:1、0.0034:1、0.0035:1、0.0036:1、0.0037:1、0.0038:1、0.0039:1、0.004:1、0.0041:1、0.0042:1、0.0043:1、0.0044:1、0.0045:1、0.0046:1、0.0047:1、0.0048:1、0.0049:1、0.005:1または列挙されたいずれか2つの値の間である。
【0043】
組成物のその他の実施形態は、GC分析により特徴付けられる場合、組成物を示す溶出ピーク(溶媒の溶出ピークを含まない)の全面積に対する第1の成分を示す溶出ピークの面積の比が少なくとも0.95:1であることをもたらす。
【0044】
一実施形態では、組成物を示す溶出ピーク(溶媒の溶出ピークを含まない)の全面積に対する第1の成分を示す溶出ピークの面積の比が、0.95:1、0.951:1、0.952:1、0.953:1、0.954:1、0.955:1、0.956:1、0.957:1、0.958:1、0.959:1、0.96:1、0.961:1、0.962:1、0.963:1、0.964:1、0.965:1、0.966:1、0.967:1、0.968:1、0.969:1、0.97:1、0.971:1、0.972:1、0.973:1、0.974:1、0.975:1、0.976:1、0.977:1、0.978:1、0.979:1、0.98:1、0.981:1、0.982:1、0.983:1、0.984:1、0.985:1、0.986:1、0.987:1、0.988:1、0.989:1、0.99:1、0.991:1、0.992:1、0.993:1、0.994:1、0.995:1、0.996:1、0.997:1、0.998:1、0.999:1または列挙されたいずれか2つの値の間である。
【0045】
GC分析における本出願の組成物のための好適な溶媒は、組成物、GCカラムまたはGC機器に悪影響(例えば、悪化)を及ぼさないものであり得る。GC分析における組成物用の例示的溶媒には、メタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
組成物のさらなる実施形態は、GC/MS分析(
図2Aおよび
図2Bに例示的スペクトルを示す)により特徴付けされ、組成物の第2の成分は、15.0分
から16.5分
までの保持時間を有し、31、41、67、79、91、93、119、149および167からなる群から選択される質量電荷比(m/z)に1つ以上のピークを含む断片化パターンを有する。GC/MS分析は、長さ60m、内径320μm、膜厚1μmのBP-1キャピラリーカラムから組成物を溶出することを含み、液相を100%のジメチルポリシロキサン、キャリヤーガスをヘリウムとし、流速2mL/分、注入口温度250℃とし、温度を50℃で2分間保ち、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に温度を上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に温度を上げ、250℃で6分間維持する一連のステップ温度で操作を行い、70eVの電子エネルギー、230℃の電子源温度、150℃の四重極マスフィルター温度および0分の溶媒遅延で20.0m/zと230.0m/zとの間の範囲の質量スキャンを行う。
【0047】
組成物の一実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が31、41、67、79、91、93および119のm/zにピークを含む断片化パターンを有することをもたらす。
【0048】
組成物の他の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が149および167のm/zにピークを含む断片化パターンと共に15.8分から16.0分までの保持時間を有することをもたらす。
【0049】
組成物のさらに他の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が31、41、67、79、91、93および119からなる群から選択されるm/zに1つ以上のピークをさらに含む断片化パターンと共に15.8分から16.0分までの保持時間を有することをもたらす。
【0050】
組成物のさらなる実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が少なくとも31、41、67、79、91、93、119、149および167のm/zにピークを含む断片化パターンと共に15.8分から16.0分までの保持時間を有することをもたらす。
【0051】
組成物の一実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が149および167のm/zにピークを含む断片化パターンと共に16.2分から16.4分までの保持時間を有することをもたらす。
【0052】
組成物の他の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が31、41、67、79、91、93および119のm/zに1つ以上のピークをさらに含む断片化パターンと共に16.2分から16.4分までの保持時間を有することをもたらす。
【0053】
組成物のさらに他の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第2の成分が31、41、67、79、91、93、119、149および167のm/zにピークを含む断片化パターンと共に16.2分から16.4分までの保持時間を有することをもたらす。
【0054】
組成物の追加の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、組成物の第1の成分が16.5分から17.5分までの保持時間を有することをもたらし、一部の実施形態では、31、41、67、79、91、93、119、147、165および178のm/zに1つ以上のピークを含む断片化パターンを有する。
【0055】
一実施形態では、GC/MS分析における組成物の第1の成分 は、31、41、67、79、91、93および119のm/zにピークを含む断片化パターンを有する。
【0056】
他の実施形態では、GC/MS分析における組成物の第1の成分は、147、165および178のm/zにピークを含む断片化パターンを有する。さらに他の実施形態では、GC/MS分析における組成物の第1の成分は、31、41、67、79、91、93、119、147、165および178のm/zにピークを含む断片化パターンを有する。
【0057】
組成物の他の実施形態は、GC/MS分析により特徴付けられる場合、14.0分から14.5分までの保持時間に溶出される第3の成分を有する。さらなる実施形態では、GC/MS分析における第3の成分は、135のm/zにピークを含む断片化パターンを有する。
【0058】
本出願の組成物は、TCDDMである第1の成分を含む。組成物の一部の実施形態では、TCDDMは式(II)
【0059】
【0060】
組成物の一部の実施形態では、TCDDMは、3,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカン、3,9-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカン、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカン、4,9-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカン、5,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカンおよび5,9-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02-6]デカンから選択される少なくとも1つである。
【0061】
組成物の一部の実施形態は、第2の成分が脂肪族ジオールであることをもたらす。一実施形態では、第2の成分がC12(炭素数12またはC12)脂肪族ジオールである。他の実施形態では、第2の成分がC12飽和脂環式ジオールである。さらなる実施形態では、第2の成分が式(XI)
【0062】
【化5】
により表される化合物の1つまたは混合物であり、式中、(1)X
1はCであり、(2)X
2はCであり、(3)i=1または0、(4)j=1または0、(5)v=1または0、および(6)i=1の場合、j=v=0、R
B1、R
B2、R
C1、R
C2、R
D1およびR
G1は存在せず、(X
3-R
A)は直鎖状または分岐状のC
4(炭素数4)アルキルアルコールであり、X
4はCH
2またはCH(CH
2OH)であり、X
4がCH
2である場合、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2の1つがCH
2OHであり、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2の残りの5つはHであり、X
4がCH(CH
2OH)である場合、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2およびR
G2はHであり、(7)i=0の場合、j=v=1、X
3はCHであり、X
4はCHであり、R
A、R
B1、R
B2、R
C1およびR
C2の1つがCH
2OHであり、R
A、R
B1、R
B2、R
C1およびR
C2の残りの4つはHであり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の1つがCH
2OHであり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の他の1つがCH
3であり、R
D1、R
D2、R
E1、R
E2、R
F1、R
F2、R
G1およびR
G2の残りの6つはHである。さらに別の実施形態では、組成物の第2の成分が、
【0063】
【化6】
のいずれか1つまたは複数を含む。式(XV)~(XX)のいずれにおいても、ヒドロキシメチル基の1つが、シクロアルカン環においてメチル基が結合している炭素に結合してよく、よって、組成物の第2の成分は、
【0064】
【0065】
組成物の一部の実施形態は、第3の成分がトリシクロデカンモノメタノール(TCDM)であることをもたらす。一部の実施形態では、TCDMは式(X)
【0066】
【0067】
他の実施形態では、組成物の第3の成分が、1つの水酸基を有する飽和C11(炭素数11)脂環式化合物である。
【0068】
さらなる実施形態では、組成物の第3の成分が、4-ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02-6]デカン、3-ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02-6]デカンおよび5-ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02-6]デカンから選択される少なくとも1つである。
【0069】
本出願の組成物は、上述の第1、第2および/または第3の成分に加えて、1つ以上の成分を有してもよく、該付加的な成分は、意図した用途のための組成物の特性に悪影響を及ぼさない。例示的な付加的な成分には、アセタール含有化合物、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンおよびN,N-ジメチルエタノールアミン)、芳香族三級アミン(N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリンおよびトリフェニルアニリン)および複素環三級アミン(ピリジンおよびキノリン)などのアミン含有化合物、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチル グリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールおよびトリメチロールプロパンなどのアルコール含有化合物、またはトリシクロデカンジカルバルデヒドおよびペンタシクロペンタデカンジカルバルデヒドなどのアルデヒド含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本出願の組成物は、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。例示的な添加剤は、意図した用途のための組成物に悪影響を及ぼさず、これらに限定されないが、安定剤、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、カーボンブラック、色材、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、チキソトロープ剤、レベリング剤、カップリング剤、離型剤、防カビ剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態は、本発明のTCDDMベースの組成物を光学材料として使用できることをもたらす。一部の実施形態では、本出願のTCDDMベースの組成物に、ポリエステル、エポキシ、アクリレート、ポリカーボネート、ポリカーボネートジオールおよび/またはポリウレタン樹脂またはそれらの光学製品が添加される。一部の実施形態では、本出願のTCDDMベースの組成物は、ポリエステル、エポキシ、アクリレート、ポリカーボネート、ポリカーボネートジオールおよび/またはポリウレタンを調製するために使用され、TCDDM残留物を含有するポリマーは、光ディスク、繊維またはレンズに加工される。
【0072】
一部の実施形態では、TCDDMベースの組成物と、ベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸または両者などのカルボン酸含有化合物と、任意でさらにアルカンジオールとを組み合わせて、ポリエステルを調製することができる。例示的なベンゼンジカルボン酸には、フタル酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸)、イソフタル酸(1,3-ベンゼンジカルボン酸)、テレフタル酸(1,4-ベンゼンジカルボン酸)が含まれる。例示的なベンゼントリカルボン酸には、トリメシン酸(ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸)、トリメリット酸(ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸)が含まれる。アルカンジオールは、2つの水酸基を有するC2-C6直鎖状または分岐状アルカンであってよい。
【0073】
一実施形態では、ポリエステルがTCDDMベースの組成物、テレフタル酸、トリメリット酸およびエチレングリコールから誘導される。CIELAB色空間では、スケールb*は黄変を示す。本発明のTCDDMベースの組成物に由来するポリエステルでは、黄変抵抗が向上している。
【0074】
本出願の組成物は、1つ以上の方法により調製することができる。例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)をヒドロホルミル化した後、相分離及び抽出を行い、その後水素化して組成物を調製する。他の実施形態では、該水素化生成物は、既知の方法で蒸留することができ、例えば、当業者は、蒸留塔の高さまたは理論段を調整することができる。さらに他の実施形態では、当業者は、還流比または蒸留圧を調整することができ、あるいは蒸留工程で金属化合物を添加することができる。上述の様々な調製工程は、本出願の組成物がこれらの工程においてのみ調製できるということを推定するものではない。
【0075】
本出願の組成物を作製する例示的な工程を以下に示す。
【0076】
様々な実施形態は、開示された本出願の組成物がトリシクロデカンジアルデヒドの水素化工程によって作製されることを提供する。さらなる実施形態は、開示された組成物が、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化物の水性抽出層から、または水性抽出層内の成分として得られるトリシクロデカンジアルデヒドの水素化工程により作製されることを提供する。一部の実施形態では、水素化工程が、水素ガスを、例えば、約2MPaから10MPa等、圧力を上げてトリシクロデカンジアルデヒド、またはジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化物に導入することを含み、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化物には、少なくともトリシクロデカンジアルデヒドが含まれる。さらなる実施形態では、水素化工程を40℃と200℃との間または約60℃と150℃との間の温度範囲で行う。さらに他の実施形態では、水素化工程は、ニッケル、アルミニウム、またはそれらの組み合わせなどの触媒の存在下、または反応物質への添加により行われる。その他の水素化の工程は米国特許第6,365,782号に開示されており、その内容は本明細書に援用される。
【0077】
本開示を、以下の実施例によってさらに説明するが、限定と解釈されるべきではない。実施例は単なる例示であり、本明細書に記載される実施形態のいずれかを限定することを意図するものではない。以下の実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0078】
実施例
以下の実施例は、請求項の範囲を本発明に限定することを意図せず、むしろ特定の実施形態の例示を意図している。当業者が想起する例示的な工程のいかなる変化も、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0079】
本出願を、本発明の純粋に例示であることが意図され、本発明をなんら限定するものとみなされるべきではない、以下の実施例によりさらに説明する。以下の実施例は、請求項に係る発明をよりよく説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及される限りにおいて、それは単に説明の目的のためであり、本発明を限定することを意図していない。当業者は、本発明の内容について訓練をすることなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物質を開発することができる。
【0080】
TCDDMベースの組成物
調製例
【0081】
水素と一酸化炭素との比が1:1の雰囲気下、ヒドロホルミル化を行い、TCDDMベースの組成物の前駆体としてアルデヒド化合物を取得した。具体的には、メチルシクロヘキサン100g、Rh(acac)(CO)2 (アルドリッチ)0.015gおよびトリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF)4.5gを混合し、ヒドロホルミル化混合物を作成した。ヒドロホルミル化混合物を70℃で1.5時間加熱し、均一に溶解した。この手順が完了したら、ヒドロホルミル化混合物を1kg/cm2Gの圧力のオートクレーブに入れた。その後、オートクレーブの温度と圧力をそれぞれ80℃および50kg/cm2Gに上げる。ジシクロペンタジエン(DCPD)(ゼオン)50gを、複式ポンプを使って0.83g/分の速度で30分かけてオートクレーブに連続的に供給した。50kg/cm2Gの圧力で12時間反応を進行させた。反応の完了後、非水ヒドロホルミル化物溶液を得た。
【0082】
実施例1
【0083】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)と2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPO)、メタノールおよび水を重量比1:7:2(MPO:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、25℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物(非水ヒドロホルミル化溶媒層(すなわち、非極性相)および水性抽出溶媒層(すなわち、極性相))を得た。抽出温度は25℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、5MPaの水素ガス圧をかけ、60℃で約3時間水素化工程を進めた。その後、水素化生成物(253.1g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、12hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(57.1g)を取得した。
【0084】
実施例2
【0085】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、メタノールおよび水を重量比1:7:2(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、35℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は35℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、8MPaの水素ガス圧をかけ、80℃で約3時間水素化工程を進めた。80℃で約3時間導入した。その後、水素化生成物(252.4g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、10hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(75.1g)を取得した。
【0086】
実施例3
【0087】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とMPO、メタノールおよび水を重量比7:1:2(MPO:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、70℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は70℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、2MPaの水素ガス圧をかけ、150℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(264.7g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、5hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(60.35g)を取得した。
【0088】
実施例4
【0089】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とシクロヘキサンジメタノール(CHDM)、メタノールおよび水を重量比1:6:3(CHDM:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、30℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は30℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、4MPaの水素ガス圧をかけ、80℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(258.7g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、4hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(60.23g)を取得した。
【0090】
実施例5
【0091】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とMPO、メタノールおよび水を重量比3:5:2(MPO:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、20℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は20℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、9MPaの水素ガス圧をかけ、100℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(257.9g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、4hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(59.42g)を取得した。
【0092】
実施例6
【0093】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とMPO、エタノール(EtOH)および水を重量比1:6:3(MPO:EtOH:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、40℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は40℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、4MPaの水素ガス圧をかけ、120℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(264.2g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、8hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(58.42g)を取得した。
【0094】
実施例7
【0095】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、メタノールおよび水を重量比1:6:3(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、55℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は55℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、7MPaの水素ガス圧をかけ、85℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(254.1g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、6hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(75.5g)を取得した。
【0096】
実施例8
【0097】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とMPO、メタノールおよび水を重量比8:1.5:0.5(MPO:メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、30℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は30℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、10MPaの水素ガス圧をかけ、65℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(262.3g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、11hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(56.7g)を取得した。
【0098】
実施例9
【0099】
非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とMPOおよび水を重量比8:2で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、40℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は40℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、3MPaの水素ガス圧をかけ、140℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(256.6g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、4hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(59.2g)を取得した。
【0100】
比較例1
【0101】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とプロピレングリコールおよび水を重量比8:2(プロピレングリコール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、35℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は35℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、2MPaの水素ガス圧をかけ、60℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(245.4g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、4hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(57.1g)を取得した(「比較例1」)。
【0102】
比較例2
【0103】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とメタノールおよび水を重量比8:2(メタノール:水)で含有する水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:水性抽出溶媒)で混合し、25℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は25℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、6MPaの水素ガス圧をかけ、70℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(236.8g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、10hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(48.4g)を取得した(「比較例2」)。
【0104】
比較例3
【0105】
調製例で得た非水ヒドロホルミル化物溶液(174.5g)とプロピレングリコールの水性抽出溶媒とを、質量比1:1(非水ヒドロホルミル化物溶液:プロピレングリコール)で混合し、30℃に保持されたミキサー内で攪拌した。1時間攪拌した後、混合物をグラス抽出装置に注ぎ、2時間静置し、二相混合物を得た。抽出温度は30℃に維持した。次いで、0.5gのニッケル/Al2O3を100gの水性抽出層に添加し、4MPaの水素ガス圧をかけ、100℃で約3時間水素化工程を進めた。水素化工程後、圧力を開放し、反応物を室温に冷却した。その後、水素化生成物(220.0g)をコンデンサー付きのクライゼンヘッド上、3hPaの圧力で蒸留し、170℃~210℃の沸騰範囲にTCDDMベースの組成物(41.8g)を取得した(「比較例3」)。
【0106】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析
【0107】
TCDDMベースの組成物をガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。GCは、BP-5カラム(SGEアナリティカルサイエンス社製)30m×530μm×1μm(長さ×内径×膜厚)を有するAgilent6890システムを使用して行い、液相として5%のフェニルと95%のジメチルポリシロキサンを、キャリヤーガスとして窒素を、5mL/分で最初の11分間、その後1mL/分の増加率で5mL/分から10mL/分に上げていくステップ速度、その後、GC分析の終わりまで10mL/分を維持する、一連の流速で使用した。試料注入口温度は250℃、フレームイオン化検出器温度は300℃、試料注入量は2μLとし、温度は50℃で最初の1分間保ち、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に上げていくステップ温度、続いて250℃で8分間維持する一連の温度とした。
【0108】
GC分析の詳細なパラメーターを参考のため表1に示す。
【0109】
【0110】
図1は、実施例4のTCDDMベースの組成物のGC保持時間スペクトルを示し、括弧1は組成物の第1の成分を示す12.4分と13分との間の保持時間におけるピーク(「ピーク1」)を指し、括弧2は組成物の第2の成分を示す11.8分と12.4分との間の保持時間におけるピーク(「ピーク2」)を指し、「3」というラベルが付けられたピークは組成物の第3の成分を示すおよそ10.8分から11.2分の保持時間におけるピーク(「ピーク3」)である。
【0111】
GCスペクトルをさらに分析すると、少なくとも第2の成分の量が実施例と比較例との間で異なることが明らかになった。表2および3に、ピーク1(「1」として注釈)、ピーク2(「2」として注釈)およびピーク3(「3」として注釈)の曲線下の相対面積を要約する。「合計」は、測定時間(溶媒を除く)中の全ての曲線下の面積の合計である。実施例1~9は、少なくとも「ピーク2/ピーク1値」と表示される、ピーク1の曲線下面積に対するピーク2の曲線下面積に関して、比較例1~3と異なっていた。具体的には、実施例1~9では、0.001と0.04との間の範囲にピーク2/ピーク1値を有するが、比較例1~3のピーク2/ピーク1値はこの範囲外である。
図3に示すように、ピーク2/ピーク1値が0.000801である比較例2(右側の瓶)は、実施例6(左側の瓶)よりも固形状で硬く、(流動性は、瓶を逆さまにし、2分間待って、組成物が流動性であるかどうかを調べることによって決定されるが、流動性の面で合格しなかった)、さらなる混合または他の処理に適さない。
【0112】
【0113】
【0114】
ガスクロマトグラフィー/質量分析
【0115】
TCDDMベースの組成物をガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)によりさらに分析した。GC/MSは、Agilent6890GCシステムおよびAgilent5975不活性MSD(G3171A)により行った。GC部は、BP-1カラム(SGEアナリティカルサイエンス社製)60m×320μm×1μm(長さ×内径×膜厚)を有し、液相として100%のジメチルポリシロキサンを、キャリヤーガスとしてヘリウムを2mL/分の流速で使用した。試料注入口温度を250℃とし、温度上昇条件として、50℃で最初の2分間、その後15℃/分の上昇率で50℃から180℃に上げ、次いで30℃/分の上昇率で180℃から250℃に上げるステップ温度とし、続いて250℃で6分間維持した。その後、MS分析を開始した。MS部は、70eVの電子イオン化エネルギー、230℃の源温、150℃の四重極マスフィルター温度および20m/zから230m/zまでのスキャン範囲で稼働させた。
【0116】
GC/質量分析の詳細なパラメーターを参考のため表4に示す。
【0117】
【0118】
図2Aは、実施例4のTCDDMベースの組成物のGC/MS分析の保持時間スペクトルを示し、括弧1’は組成物の第1の成分を示す16.5分と17.5分との間の保持時間範囲(「ピーク1’」)を指し、括弧2’は組成物の第2の成分を示す15.0分と16.5分との間の保持時間範囲(「ピーク2’」)を指し、「3’」というラベルが付けられたピークは組成物の第3の成分を示す14.0分から14.5分までの保持時間範囲(「ピーク3’」)である。
【0119】
図2Bは、
図2Aの括弧2’内のスペクトルの細部を示し、約15.8分から16.0分の保持時間におけるピークには「2-1」というラベルを付け(「ピーク2-1」)、約16.2分から16.4分の保持時間におけるピークには「2-2」というラベルを付けた(「ピーク2-2」)。
【0120】
ピーク1’、ピーク2’、ピーク2-1、ピーク2-2およびピーク3’に関するm/zを表5に示す。
【0121】
【0122】
TCDDMベースの組成物由来ポリエステル
【0123】
実施例1~9および比較例1、3のTCDDMベース組成物を使用して、それぞれ実施例10~18および比較例4、5のポリエステルを調製した。具体的には、トリメリット酸(TMA)(東京化学工業株式会社)、実施例1~9および比較例1、3のそれぞれのTCDDMベースの組成物、エチレングリコール(EG)(オリエンタル・ユニオン・ケミカル社)および精製テレフタル酸(PTA)(China American Petrochemical社)を、モル比0.5:40:20:50で、オートクレーブ内で混合した。その後、100ppmのチタニウムブトキシドを加え、室温で150rpmの攪拌速度で均一に混合した。エステル化を4気圧220℃の条件下に進めた。エステル化により作製された水の量が理論値90%に達した後、温度を250℃に上げ、混合物を真空下に30分置いた。その後、温度を280℃に上げて重縮合を行った。組成物の固有粘度が約0.6~0.7dL/gに達したら、各混合物を室温に冷却し、ポリエステルを回収した。
【0124】
各TCDDMベースの組成物由来のポリエステルの色判定分析をさらに行った。
【0125】
固有粘度はASTM D4603基準により決定した。簡単に言えば、約0.25gのポリエステルをフラスコに秤量し、約25mLの溶媒(フェノール:1,1,2,2-テトラクロロエタン=60:40(重量%))に溶解し、溶液を室温程度に冷却した。その後、溶液を漏斗に通して清潔で乾燥したCANNON-Ubbelohde粘度計に注ぎ、より大きな粘度計チューブの上部に浸透させた。フロー時間を記録した。測定は、合計で少なくとも3回繰り返し、結果の平均を取った。固有粘度は以下のように決定した。
【0126】
ポリエステルペレットの色は、ASTM D6290標準に準拠し、D65/10光源(標準光源D65)を備えた日本電色NE4000色度計を使用して決定し、CIELAB色空間(国際照明委員会による定義)L*、a*およびb*として表した。
【0127】
表6および7に、実施例1~9および比較例1、3のTCDDMベース組成物由来のポリエステルのCIELAB色空間を、EG、PTAおよびTMAと共に要約する。CIELAB色空間において、スケールb*は黄変を示す。実施例1~9のTCDDMベース組成物由来のポリエステルでは、比較例由来のポリエステルと比較して、黄変抵抗が向上していた。このように、請求項に係る本出願のTCDDMベースの組成物は、光学的特性が向上した下流生成物を製造するための原材料として好適である、と思われる。
【0128】
【0129】
【0130】
上述の種々の工程および技術は、本出願を実行するための多くの方法を提供する。当然ながら、記載されている全ての目的または利点が、本明細書に記載されている特定の実施形態に従って必ず達成できるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書に教示または示唆されている他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点群を達成または最適化するように、工程を行えることを認識するであろう。本明細書では、様々な代替案が述べられている。一部の実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの特徴を具体的に含み、他の実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの特徴を具体的に除外し、さらに他の実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの有利な特徴を含むことによって特定の特徴を軽減することを理解されたい。
【0131】
さらに、当業者は、異なる実施形態の様々な特徴の適用可能性を理解するであろう。同様に、本明細書に記載の原理に従って工程を実行するために、当業者は、上記の様々な要素、特徴およびステップ、ならびにそのような要素、特徴またはステップの既知の同等物を様々に組み合わせて採用することができる。様々な要素、特徴およびステップの中で、多様な実施形態において、一部は具体的に含まれ、他は具体的に除外される。
【0132】
本出願は、特定の実施形態と実施例の文脈により開示されているが、本出願の実施形態は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替実施形態および/または使用ならびにそれらの修飾および均等物に及ぶことは、当業者には理解されるであろう。
【0133】
本出願の様々な実施形態が、発明者が知る本出願を実行するための最良の形態を含め、本明細書に記載されている。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読むことによって当業者には明らかになるであろう。当業者は、そのような変形を適切に採用できると考えられ、本出願は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施することができる。したがって、本出願の多くの実施形態は、適用される法律により許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修飾および均等物を含む。さらに、本明細書に特に記載がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本出願に包含される。
【0134】
本明細書および実施例において特定された全ての特許及び他の刊行物は、関連する出願ファイルの履歴、本文書と整合性がないかまたは矛盾するもの、または本文書に現在または後に関連する請求項の最も広い範囲に関して限定的に影響を及ぼし得るものを除いて、あらゆる目的で本明細書に明確に援用される。例として、組み込まれた資料のいずれかに関連する用語の説明、定義および/または使用と、本文書に関連するそれらとの間に不一致または矛盾がある場合、本文書における用語の説明、定義および/または使用が優先される。これらの特許および他の刊行物は、それらの開示が本出願の出願日以前であることのみにより提供される。この点に関するいかなるものも、発明者らが先行技術によってまたは他の理由のために、そのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が利用できる情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関する承認を構成するものではない。
【0135】
本出願の様々な実施形態は、上記の詳細な説明に記載されている。これらの説明は上記の実施形態を直接説明しているが、当業者は、本明細書に示され、説明されている特定の実施形態に対する修飾および/または変形を着想できることが理解される。この説明の範囲内にあるそのような修飾または変形も、同様にその中に含まれることが意図される。特に記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲内の単語および語句は、適用可能な技術分野の当業者に通常かつ慣習的な意味を与えることが、発明者らの意図である。
【0136】
本出願の出願時に出願人が知っていた本出願の様々な実施形態についてなされた上述の説明は、例示および説明の目的を意図している。本説明は、網羅的であることを意図するものではなく、開示した形態に本発明をきっちりと制限することを意図するものでもなく、上記の教示に照らして、多くの修飾および変形が可能である。説明した実施形態は、本出願の原理およびその実際の応用を説明するためのものであり、当業者が本出願を様々な実施形態において、企図される特定の用途に適するように様々な修飾を加えて利用できるようにするものである。したがって、本発明が、本発明を実行するために開示された特定の実施形態に限定されないことを意図している。
【0137】
本明細書では特定の実施形態を示し、詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修飾、追加、置換などを行うことができ、したがって、次に続く特許請求の範囲に定義される発明の範囲内であると見なされることは当業者には明らかであろう。さらに、まだ示されていない範囲で、本明細書で説明および例示された様々な実施形態のいずれか1つをさらに修飾し、本明細書に開示されている他の実施形態のいずれかに示す特徴を組み込むことができる、ということは当業者には理解されるであろう。