(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】熱、冷気、及び/又は電力を供給するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F01K 3/02 20060101AFI20220624BHJP
F01K 3/12 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F01K3/02 C
F01K3/12
(21)【出願番号】P 2020570680
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2019062601
(87)【国際公開番号】W WO2019242948
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-07
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ダノフ,ウラジミール
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540831(JP,A)
【文献】国際公開第2016/169928(WO,A1)
【文献】特開2016-211515(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006119246(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/02
F01K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱、冷気、及び/又は、電力を供給するための装置(1)であって、
作動流体を圧縮するための第1及び第2の圧縮器(11、12)、
作動流体を膨張させるための第1及び第2の膨張器(21、22)、及び、
第1及び第2の蓄熱器(41、42)、
を含む装置(1)において、
前記第1の圧縮器(11)の出口部が、前記第1の蓄熱器(41)の第1の入口部(411)及び前記第2の蓄熱器(42)の第2の入口部(422)と、熱的に結合されており、
前記第2の圧縮器(12)の出口部が、前記第2の蓄熱器(42)の第1の入口部(421)及び前記第1の蓄熱器(41)の第2の入口部(412)と、熱的に結合されており、
前記第1の膨張器(21)の入口部が、前記第1の蓄熱器(41)の第1の出口部(413)及び前記第2の蓄熱器(
42)の第2の出口部(424)と、熱的に結合されており、さらに、
前記第2の膨張器(22)の入口部が、前記第2の蓄熱器(42)の第1の出口部(423)及び
前記第1の蓄熱器(41)の第2の出口部(414)と、熱的に結合されていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)において、
熱的な結合の各々が、三方弁(31)を用いて形成されていること、
を特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(1)において、
前記第1の蓄熱器(41)は、第1及び第2の端部領域を有しており、
前記第1の蓄熱器(41)の前記第1
の入口部(411)及び前記第1の蓄熱器(41)の前記第2の出口部(414)は、前記第1の蓄熱器(41)の前記第1の端部領域内に配設されており、
前記第1の蓄熱器(41)の前記第1の出口部(413)及び前記第1の蓄熱器(41)の前記第2の入口部(412)は、前記第1の蓄熱器(41)の前記第2の端部領域内に配設されていること、
を特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の装置(1)において、
前記第2の蓄熱器(42)は、第1及び第2の端部領域を有しており、
前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の入口部(421)及び前記第2の蓄熱器(42)の前記第2の出口部(424)は、前記第2の蓄熱器(42)の前記第2の端部領域内に配設されており、
前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の出口部(423)及び前記第2の蓄熱器(42)の前記第2の入口部(422)は、前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の端部領域内に配設されていること、
を特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の装置(1)において、
前記蓄熱器(41、42)の前記第1の端部領域の各々が、それぞれの前記蓄熱器(41、42)に関連する前記第2の端部領域よりも高い温度を有していること、
を特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の装置(1)において、
前記第1の圧縮器(11)は、前記第2の圧縮器(12)よりも大きな圧縮を有している、
を特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(1)において、
前記第1の圧縮器(11)は、1メガパスカルから4メガパスカルの範囲の圧縮を有し、
前記第2の圧縮器(12)は、0.1メガパスカルから1メガパスカルの範囲の圧縮を有すること、
を特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)は、冷気を提供するための第1の熱交換器(51)を含み、
前記第1の熱交換器(51)は、前記第1の膨張器(21)の下流に配置されていること、
を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)は、第2の熱交換器(52)及び地域熱供給ネットワークの少なくとも一部を含み、
前記第2の熱交換器(52)は、前記地域熱供給ネットワークの少なくとも一部と熱的に結合されていること、
を特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置(1)において、
前記第2の熱交換器(52)は、前記第2の圧縮器(12)の下流でありまた前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の入口部(421)の上流に、配置されていること、
を特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)は、熱を供給するための第3の熱交換器(53)を含み、
前記第3の熱交換器(53)は、前記第2の膨張器の下流に配設されていること、
を特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の装置を運転するための方法であって、
少なくとも冷気を供給するために、以下の工程、
前記第1の圧縮器(11)を用いて作動流体を圧縮する工程、
前記第1の蓄熱器(41)の前記第1の入口
部(411)を用いて前記第1
の蓄熱器(41)へ、圧縮された前記作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
前記第1
の蓄熱器(41)の前記第1の出口
部(413)を用
いて前記第1の膨張器(21)の入口部へ、圧縮されまた前記作動流体から前記第1の蓄熱器(41)への熱伝達によって冷却された前記作動流体を少なくとも部分的
に導入する工程、及び、
前記第1の膨張器(21)を用いて前記第1の膨張器(21)に導入された前記作動流体を膨張させる工程、
を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
更に、
前記第2の蓄熱器(42)の前記第2の入口部(422)を用いて前記第2の蓄熱器(42)へ、前記第1の圧縮器(11)を用いて圧縮された前記作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
を含む方法。
【請求項14】
請求項1から11の何れか1項に記載の装置を運転するための方法であって、
少なくとも熱を供給するために、以下の工程、
前記第2の圧縮器(12)を用いて前記作動流体を圧縮する工程、
前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の入口部(421)を用いて前記第2の蓄熱器(42)へ圧縮された前記作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
前記第2の蓄熱器(42)の前記第1の出口部(423)を用いて前記第2の膨張器(21)の入口部へ、圧縮されまた前記第2の蓄熱器(42)から前記作動流体への熱伝達によって加熱された前記作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、及び、
前記第2の膨張器(22)を用いて前記第2の膨張器(22)へ導入された前記作動流体を膨張させる工程、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
更に、
前記第1の蓄熱器(41)の前記第2の入口部(412)を用いて前記第1の蓄熱器(41)へ前記第2の圧縮器(12)を用いて圧縮された前記作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱、冷気、及び/又は電気的エネルギーを供給するための装置に関する。本発明は更に、そのような装置を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量を削減するためには、様々な形態のエネルギーを生成する及び/又は互いに変換する、柔軟で効率的な変換ユニット(英語:Power to Cold, Power to Heat, Heat to Power、等)を利用することが重要である。
【0003】
従来技術からは、電力(電流)、熱、及び/又は冷気を、例えば建物といった消費部に提供する複数の装置(変換ユニット)が知られている。前述の形態のエネルギーを提供するためは、従来技術によれば、複数の装置が、並行して駆動される或いは並列に接続される。例えば、ショッピングセンターは、電力、熱及び冷気を同時に必要とする。これらの形態のエネルギーが同時に提供されるように、電力グリッドから電流が引かれ得て、ガスボイラを使用して熱が発生され得て、そして、冷却機を使用して冷気が提供され得る。
【0004】
更に、例えば熱電併給(ドイツ語名称:Blockheizkraftwerke、ドイツ語略称:BHKW)といった、有利な組み合わせが知られている。この場合は、ガスエンジンは、電力と熱を同時に発生させる。更に、地域熱供給は、冷気を提供するための吸収式冷凍設備を運転するために、使用され得るだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱及び冷気を特には同時に供給すること及び/又は電力を供給すること、を効率的に可能にする装置及び方法を提供すること、を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項1の特徴を有する装置、独立請求項12の特徴を有する方法、並びに、独立請求項14の特徴を有する方法によって、解決される。従属請求項においては、本発明の有利な構成及び発展形態が記載されている。
【0007】
熱、冷気、及び/又は、電力を提供するための本発明に従う装置は、少なくとも、
作動流体を圧縮するための第1及び第2の圧縮器、
作動流体を膨張させるための第1及び第2の膨張器、及び、
第1及び第2の蓄熱器、
を含んでいる。
【0008】
本発明によれば、
第1の圧縮器の出口部は、第1の蓄熱器の第1の入口部及び第2の蓄熱器の第2の入口部と、熱的に連結されており、
第2の圧縮器の出口部は、第2の蓄熱器の第1の入口部及び第1の蓄熱器の第2の入口部と、熱的に連結されており、
第1の膨張器の入口部は、第1の蓄熱器の第1の出口部及び第2の蓄熱器の第2の出口部と、熱的に連結されており、そして、
第2の膨張器の入口部は、第2の蓄熱器の第1の出口部及び第1の蓄熱器の第2の出口部と、熱的に連結されている。
【0009】
特に、上述の熱的な連結は、少なくとも部分的に、特には完全に、作動流体に関して流動性の連結によって形成される。本発明を用いて、有利な様態で、熱、冷気及び/又は電力(電気又は電流)は、同時に又は時間的に互いに別々に供給又は生成され得る。従って、本発明に従う装置は、電力市場で柔軟に作動され得る。言い換えれば、本発明に従う装置は、電力-熱-冷結合のための相乗的概念を形成する。これに関して、本発明は、ジュールサイクル(又はブレイトンサイクル)の原理を複数の蓄熱器と相乗的に組み合わせる。
【0010】
ここで、本発明に従う装置は、例えば、熱、冷気及び電力の供給、又は例えば熱のみの供給、又は例えば、冷気のみの供給、を可能にする。例えば、熱及び冷気が同時に発生或いは供給される場合、本発明に従う装置は、典型的には、85パーセントを超える効率を有し、この効率は、使用される電力に対する発生される熱及び冷気の比によって定義されている。
【0011】
本発明に従う装置及び/又はその構成のうちの1つを駆動させるための本発明に従う方法であって、少なくとも冷気を供給するための方法は、少なくとも以下の工程を含む、即ち、
第1の圧縮器を用いて作動流体を圧縮する工程、
第1の蓄熱器の第1の入口部を用いて第1の蓄熱器へ圧縮された作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
第1の蓄熱器の第1の出口部を用いて、作動流体から第1の蓄熱器への熱伝達によって冷却された圧縮された作動流体を、第1の膨張器の入口部に少なくとも部分的に導入する工程、及び、
第1の膨張器を用いて、第1の膨張器へ導入された作動流体を膨張させる工程、
を含む。
【0012】
特に好ましくは、本方法は少なくとも以下の更なる工程を含む、即ち、
第2の蓄熱器の第2の入口部を用いて、第1の圧縮器によって圧縮された作動流体を、第2の蓄熱器へ少なくとも部分的な導入する工程、
を有する。
【0013】
これに関し、作動流体は、好ましくは完全に、第2の蓄熱器に導入され得て、従ってこの場合は、作動流体は、第1の蓄熱器へは導入されない。
【0014】
言い換えれば、電力は、最初に、第1の圧縮器を用いて作動流体を圧縮するために利用される。作動流体の圧縮に基づき、この作動流体は加熱される。第1の蓄熱器へ圧縮された作動流体を少なくとも部分的に導入することによって、これは、その熱を第1の蓄熱器へ少なくとも部分的に放出する。言い換えれば、圧縮によって発生した熱は、第1の蓄熱器によって少なくとも部分的に蓄えられるか、又は、一時的に蓄えられる。第1の蓄熱器の第1の出口部で少なくとも部分的に冷却された作動流体は、その後、少なくとも部分的に第1の膨張器の入口に案内され、その際にこの作動流体は第1の膨張器を用いて膨張され、また従って更に冷却される。作動流体を冷却することによって、例えば第1の熱交換器を介して、冷気を準備することが出来る。この場合、冷気を準備するために発生した熱は失われずに、第1の蓄熱器によって更なる使用のために蓄えられる。更に、第1の膨張器によって電力が発生及び準備される。更に、十分な冷気を発生させるために、熱の一部、特に大部分を放出すること、そして、第1の蓄熱器を用いて熱を蓄えないこと、が補足的に必要であり得る。
【0015】
本発明に従う装置を動作させるための、及び/又は、少なくとも熱を提供するためのその構成のうちの1つを動作させるための、本発明に従う方法は、少なくとも以下の工程を含む、即ち、
第2の圧縮器を用いて作動流体を圧縮する工程、
第2の蓄熱器の第1の入口部を用いて第2の蓄熱器へ圧縮された作動流体を少なくとも部分的に導入する工程、
第2の蓄熱器の第1の出口部を用いて、圧縮され又第2の蓄熱器から作動流体への熱伝達によって加熱された作動流体を、第2の膨張器の入口部へ少なくとも部分的に導入する工程、及び、
第2の膨張器を用いて第2の膨張器へ導入された作動流体を膨張させる工程、
を含む。
【0016】
本方法は、特に好ましくは、少なくとも、
第1の蓄熱器の第2の入口部を用いて、第2の圧縮器によって圧縮された作動流体を第1の蓄熱器へ少なくとも部分的に導入する、
更なる工程を含む。
【0017】
この場合、作動流体は、好ましくは、完全に第1の蓄熱器へ導入されてもよく、この場合には従って、作動流体は、第2の蓄熱器へは導入されない。
【0018】
言い換えれば、電力は、最初に、第2の圧縮器を用いて作動流体を圧縮するために使用される。作動流体を圧縮することによって、この作動流体は加熱される。この熱は、既に直接使用されるか又は準備され得て、それにより作動流体は冷えることになる。例えば既にほぼ完全にロードされている第2の蓄熱器へ、圧縮された作動流体を、少なくとも部分的に導入することによって、導入された作動流体は、再び又は更に加熱される、或いは、過熱される。従って、第2の蓄熱器がほぼ完全にロードされている場合に熱を発生させることが有利であり、その場合、ロードは第1の圧縮器を用いた圧縮の際に発生する熱を用いて行われる。
【0019】
作動流体は加熱されるが、これは、通常、第2の圧縮器は作動流体を、第1の圧縮器が作動流体を圧縮するよりも、低く又は弱く圧縮するからである。言い換えれば、第1の圧縮器を用いる圧縮によって生成された熱は、第2の圧縮器を用いて圧縮された作動流体を加熱するために、使用される。第2の蓄熱器の第1の出口部で加熱された作動流体は、その後、少なくとも部分的に、第2の膨張器の入口部へ案内され、その際それによって、第2の膨張器を用いて過熱された作動流体から電力が生成される。更に、第3の熱交換器を介して熱が準備され得る。
【0020】
本発明に従う方法を用いて、少なくとも熱及び冷気を同時に発生又は準備することが、特に好ましい。
【0021】
本発明に従う装置及び/又はその構成のうちの1つに対して、本発明に従う方法と同様の及び同等の、利点が得られる。
【0022】
本発明の有利な構成に従えば、熱的な結合の各々は、三方弁によって形成されている。
【0023】
言い換えれば、第1の圧縮器の出口部は、第1の蓄熱器の第1の入口部及び第2の蓄熱器の第2の入口部と、三方弁を介して熱的に、特に流体的に、結合されている。更に、第1の蓄熱器の第1の出口部及び第2の蓄熱器の第2の出口部は、第1の膨張器の入口部と、三方弁を介して熱的に、特に流体的に、結合されている。更に、第2の圧縮器の出口部は、第2の蓄熱器の第1の入口部及び第1の蓄熱器の第2の入口部と、三方弁を介して熱的に、特に流体的に、結合されている。更に、第2の蓄熱器の第1の出口部及び第1の蓄熱器の第2の出口部は、第2の膨張器の入口部と、三方弁を介して熱的に、特に流体的に、結合されている。
【0024】
本発明の有利な発展形態では、第1の蓄熱器は、第1及び第2の端部領域を有しており、第1の蓄熱器の第1の入口部及び第1の蓄熱器の第2の出口部は、第1の蓄熱器の第1の端部領域内に配設されており、また、第1の蓄熱器の第1の出口部及び第1の蓄熱器の第2の入口部は、第1の蓄熱器の第2の端部領域内に配設されている。
【0025】
第1の蓄熱器が水平に調整されている場合、その第1及び第2の端部領域は、互いに水平に対向して配設されている。第1の蓄熱器が垂直に調整されている場合、その第1及び第2の端部領域は、互いに垂直に対向して配設されている。第1の蓄熱器の向きに関わらず、その第1及び第2の端部領域は、互いに温度差を有している。第1の蓄熱器の第1及び第2の端部領域の間には、通常、第1の蓄熱器の2つの端部領域を互いから区切る、第1の蓄熱器の中間領域が配設されている。
【0026】
本発明の有利な構成に従い、第2の蓄熱器は、第1及び第2の端部領域を有しており、第2の蓄熱器の第1の入口部及び第2の蓄熱器の第2の出口部は、第2の蓄熱器の第2の端部領域内に配設されており、また、第2の蓄熱器の第1の出口部及び第2の蓄熱器の第2の入口部は、第2の蓄熱器の第1の端部領域内に配設されている。
【0027】
第2の蓄熱器が水平に調整されている場合、その第1及び第2の端部領域は、水平に互いに対向して配設されている。第2の蓄熱器が垂直に調整されている場合、その第1及び第2の端部領域は、垂直に互いに対向して配設されている。第2の蓄熱器の向きに関わらず、その第1及び第2の端部領域は、互いに温度差を有している。第2の蓄熱器の第1及び第2端部領域の間には、通常、第2の蓄熱器の2つの端部領域を互いに区切る第2の蓄熱器の中間領域が配設されている。
【0028】
本発明の有利な構成では、蓄熱器の第1の端部領域はそれぞれ、それぞれの蓄熱器に関連する第2の端部領域よりも高い温度を有している。
【0029】
言い換えれば、第1の熱交換器の第1の端部領域は、第1の熱交換器の第2の端部領域よりも暖かく、また、第2の蓄熱器の第1の端部領域も、第2の蓄熱器の第2の端部領域よりも暖かい。
【0030】
本発明の有利な構成に従い、第1の圧縮器は、第2の圧縮器よりも大きな圧縮を有している。
【0031】
その結果、作動流体は、有利には、第2の圧縮器を用いるよりも、第1の圧縮器を用いてより強く加熱される。有利には、それにより、第1の圧縮器を用いて作動流体を圧縮する場合に生成された熱は、第2の蓄熱器を介して、第2の圧縮器を用いて圧縮された作動流体を加熱するために、使用され得る。
【0032】
好ましくはこれに関して、第1の圧縮器は、好ましくは1メガパスカルから4メガパスカルの範囲、特に好ましくは0.5メガパスカルから3メガパスカルの範囲の圧縮を有し、また、第2の圧縮器は、0.1メガパスカルから1メガパスカルの範囲、特に好ましくは0.1メガパスカルから0.5メガパスカルの範囲の圧縮を有する。
【0033】
本発明の有利な構成に従い、本装置は、冷気を準備するための第1の熱交換器を含み、第1の熱交換器は、第1の膨張器の下流に配設されている。
【0034】
その結果、有利には、第1の膨張器を用いて生成された冷気は、それを消費するために準備され得る。
【0035】
本発明の有利な発展形態では、本装置は、第2の熱交換器と、地域熱供給ネットワークの少なくとも一部とを含み、第2の熱交換器は、少なくとも地域熱供給ネットワークの一部と熱的に結合されている。
【0036】
これに関して、第2の熱交換器は、好ましくは、第2の圧縮器の下流、及び、第2の蓄熱器の第1の入口部の上流、に配設されている。
【0037】
それにより、有利には、第2の圧縮器を用いて作動流体を圧縮する際に生成される熱が、準備され、放出され、及び/又は使用され得る。有利にはそれによって、第2の圧縮器を用いて圧縮された作動流体が冷える。それによって冷却された作動流体は、次いで、第2の蓄熱器の第1の入口部及び/又は第1の蓄熱器の第2の入口部へ案内され得る。
【0038】
本発明の有利な構成に従い、本装置は、熱を供給するための第3の熱交換器を含んでおり、第3の熱交換器は、第2の膨張器の下流に配設されている。
【0039】
それにより、有利な様態で熱が供給される。
【0040】
本発明の更なる長所、特徴、及び詳細は、以下に説明される複数の実施例から並びに図面に基づいてもたらされる。唯一の図面は、本発明の構成に従う装置の概略的な構造を示している。
【0041】
同種、同等、又は同様に機能する要素には図中で同一の符号を付すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明の構成に従う装置1の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
装置1は、第1の圧縮器11及び第2の圧縮器12を含み、それらは作動流体を圧縮するために、設計されておりまた設けられている。これに関し、第1の圧縮器11は、第2の圧縮器12よりも大きな圧縮を有している。更に、装置1は、第1の膨張器21及び第2の膨張器22を含み、それらは作動流体を膨張させるために設計されそして設けられている。装置1は更に、第1の蓄熱器41及び第2の蓄熱器42を含む。更に装置1は、第1の熱交換器51、第2の熱交換器52、及び、第3の熱交換器53を有している。
【0044】
第1の蓄熱器41及び第2の蓄熱器42はそれぞれ、第1及び第2の端部領域を有しており、通常、それぞれの第1の端部領域は、それぞれの第2の端部領域よりも高い温度を有する。言い換えれば、第1の端部領域は、それぞれの蓄熱器41、42の暖かい領域であり、第2の端部領域は、それぞれの蓄熱器41、42の冷たい領域である。従って、それぞれの蓄熱器41、42内の温度勾配は、その第1の端部領域(暖)からその第2の端部領域(冷)へと延びる。
【0045】
装置1の動作モードを説明するためには、装置1を先ず観念的に、作動流体の流れに関して第1の経路と第2の経路とに区分することが合目的である。
【0046】
第1の経路内では、作動流体は、第1の圧縮器11を用いて、例えば30bar(3メガパスカル)の圧力まで圧縮され、作動流体として空気が使用される場合、これは約540℃の温度を有する。このために、約540キロジュール毎キログラムの電力が必要である。第1の圧縮器11を用いて圧縮された作動流体は、第1の三方弁31を介して、第1の蓄熱器41の第1の入口部411へ、又は、第2の蓄熱器42の第2の入口部422へ、案内される。従って、第1の三方弁31を使用して、第1の圧縮器11を用いて圧縮された作動流体が、第1の蓄熱器41の第1の入口部411へ導かれるか、又は、第2の蓄熱器42の第2の入口部422へ導かれるかが、調整可能である。これに関し、作動流体は、その質量流量に関して、前述の入口部411、422へ、部分的にまたは完全に分配され得る。第1の経路内では、作動流体は、第1の蓄熱器41の第1の入口部411に完全に供給される。蓄熱器41内では、或いは、第1の蓄熱器41と熱的に結合して、作動流体は、作動流体から第1の蓄熱器41への或いは第1の蓄熱器41の貯蔵媒体への熱伝達によって、冷える。それにより冷却された作動流体は、第1の蓄熱器41の第1の出口部413を用いて、第2の三方弁32を介して、第1の膨張器21の入口部に供給され、膨張される。膨張により、作動流体は更に冷え、作動流体は通常約1bar(0.1メガパスカル)の圧力まで膨張される。従って、作動流体は、-50℃から-20℃の範囲の温度を有することが出来る。言い換えれば、それにより冷気が発生される。冷気を発生させるために、熱を更に排出することも企図され得る。
【0047】
発生された冷気は、その後、第1の熱交換器51を用いて、外部の冷気消費部のために提供され得る。このようにして、説明した第1の経路内で、冷気が提供又は発生される。
【0048】
第2の通路内では、作動流体は、第2の圧縮器12を用いて圧縮される。これに関して、第2の圧縮器12を用いる圧縮は、第1の圧縮器11を用いる圧縮よりも小さい。例えば、作動流体は、5bar(0.5メガパスカル)の圧力まで圧縮され、従って、作動流体が空気の場合、約200℃の温度まで加熱される。このためには、約175キロジュール毎キログラムの電力が必要とされる。第2の圧縮器12を用いて圧縮及び加熱された作動流体は、第2の熱交換器52に供給され、その結果、圧縮の際に発生された熱は、特に地域熱供給ネットワークに結合されている第2の熱交換器52を用いて提供可能である。その後、作動流体は、第3の三方弁33を用いて、第2の蓄熱器42の第1の入口部421へ又は第1の蓄熱器の第2の入口部412へ案内される。従って、第3の三方弁33を用いて、第2の圧縮器12を用いて圧縮された作動流体が、第2の蓄熱器42の第1の入口部421へ導かれるか、又は、第1の蓄熱器41の第2の入口部412へ導かれるかが、調整可能である。この場合、作動流体は、その質量流量に関して、上述の入口部421、412へ部分的に又は完全に分配され得る。第1の経路内では、作動流体は、第2の蓄熱器42の第1の入口部421に完全に供給される。
【0049】
第2の蓄熱器42は、好ましくは既に略完全にロードされている。それにより、第2蓄熱器42へ導入され、また、第2蓄熱器の貯蔵媒体と熱的な接触状態にある作動流体は加熱され、加熱された作動流体は、第2の蓄熱器42の第1の出口部423を介して、第2の膨張器22の入口部に供給される。第2の蓄熱器42の第1の出口部423では、作動流体は、例えば、約540℃の温度を有している。第2の膨張器22の入口への作動流体の案内又は導入は、第4の三方弁34を介して行われる。
【0050】
第2の膨張器22の下流では、作動流体は、通常、約1bar(0.1メガパスカル)の圧力、及び、約245℃の温度、を有する。この熱は、第3の熱交換器53を用いて供給され得る。例えばこれに関して、100キロジュール毎キログラムの熱が発生及び供給され得る。
【0051】
第1及び第2の経路は、本発明に従い、第1及び第2の蓄熱器41、42を介して互いに結合されている。この場合、熱的な結合は、三方弁31、32、33、34を用いて形成される。言い換えれば、第1の圧縮器11を用いて圧縮された作動流体は、第1の蓄熱器41の第1の入口部411へ又は第2の蓄熱器42の第2の入口部422へ、案内され得る。第2の圧縮器12によって圧縮された作動流体は、第3の三方弁33を用いて、第2の蓄熱器42の第1の入口部421へ又は第1の蓄熱器41の第2の入口部412へ、案内され得る。
【0052】
第1の膨張器21の入口部には、第2の三方弁32を用いて、作動流体が、第1の蓄熱器41の第1の出口部413から又は第2の蓄熱器42の第2の出口部424から、供給され得る。
【0053】
第2の膨張器22の入口部には、第4の三方弁34を用いて、作動流体が、第2の蓄熱器42の第1の出口部423から又は第1の蓄熱器41の第2の出口部414から、供給され得る。
【0054】
それにより、全体として、有利で相乗的な熱結合がもたらされ、この熱的結合を用いて、熱及び冷気並びに電力は同時に又は互いに別々に効率的に発生可能である。言い換えれば、圧縮器11を用いてまた第2の圧縮器12を用いて作動流体を圧縮する場合に発生される熱は失われず、むしろ、熱を発生するため、電力を発生するため、及び/又は、冷気を発生するために、使用される。異なるエネルギー形態の分離及び使用は、相乗的に組み合わされまた結合された蓄熱器41、42を用いて可能となる。
【0055】
例えば、第2の蓄熱器42は、第1の蓄熱器41が既に完全にロードされている場合には、第1の圧縮器11を用いた発生の場合に発生された熱を用いて、ロードされる。それにより、有利には、第1の圧縮器11を用いた作動流体の圧縮の場合に発生する熱は、第1の熱交換器51を介して冷気を供給するために、及び/又は、第3の熱交換器53を介して熱を供給するために、使用される。
【0056】
2つの蓄熱器41、42を相乗的かつ本発明に従って接続させることによって与えられる図示され説明された2つの経路を組み合わせることによって、装置1は、熱と冷気を同時に発生させる場合には、使用される電力に関して、85パーセントを超える効率を有する。それにより、有利な様態で効率的に、熱及び冷気が提供される。
【0057】
本発明は、好ましい例示的な実施例によって詳細に説明されまた記述されたが、本発明は、開示された例によって限定されていない、又は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、当業者によって、他の変形形態をそれらから導出することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
1 装置
11 第1の圧縮器
12 第2の圧縮器
21 第1の膨張器
22 第2の膨張器
41 第1の蓄熱器
42 第2の蓄熱器
51 第1の熱交換器
52 第2の熱交換器
53 第3の熱交換器
411 第1の蓄熱器の第1の入口部
412 第1の蓄熱器の第2の入口部
413 第1の蓄熱器の第1の出口部
414 第1の蓄熱器の第2の出口部
421 第2の蓄熱器の第1の入口部
422 第2の蓄熱器の第2の入口部
423 第2の蓄熱器の第1の出口部
424 第2の蓄熱器の第2の出口部