(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20220624BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F24C7/04 301A
H05B6/12 335
(21)【出願番号】P 2021068299
(22)【出願日】2021-04-14
(62)【分割の表示】P 2019523249の分割
【原出願日】2017-06-06
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森井 彰
(72)【発明者】
【氏名】井下 ちづる
(72)【発明者】
【氏名】吉野 勇人
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 和裕
(72)【発明者】
【氏名】大熊 英里佳
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-097936(JP,A)
【文献】特開2011-054292(JP,A)
【文献】特開2017-069226(JP,A)
【文献】特開2011-165346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/04
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段に電力を供給する駆動回路と、
前記被加熱物の温度を検出する温度センサと、
前記駆動回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記被加熱物の温度を、設定された料理メニューに対応して設定された目標温度よりも高い温度まで上昇させる予熱工程と、
前記予熱工程の後に、前記被加熱物の温度を前記目標温度よりも高い温度に保つ保温工程と、を実行し、
前記予熱工程において、
前記被加熱物の温度が前記保温工程で保たれる前記被加熱物の温度よりも高い温度になるように、前記加熱手段に第1の電力を供給し、
前記被加熱物の温度が前記保温工程で保たれる前記被加熱物の温度よりも高い温度になったあと、前記加熱手段に前記第1の電力よりも単位時間あたりの電力量が小さい第2の電力を供給し、又は前記加熱手段への電力の供給を停止し、前記被加熱物の温度を下降させてから前記保温工程に移行する
加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記保温工程において、
前記被加熱物への食材の投入を検知した場合、当該保温工程を終了し、
前記保温工程における電力よりも単位時間あたりの電力量が大きい電力を前記加熱手段へ供給する調理工程を実行する
請求項1に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物の内容物の温度を上昇させる予熱工程と、内容物の温度を保つ保温工程とを行う加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器においては、自動揚げ物コースにおいて、所定火力で加熱を行う予熱工程と、鍋の温度が設定温度に到達すると、鍋の温度を設定温度に保つ保温工程を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加熱調理器では、油等の内容物の温度を設定温度まで上昇させる予熱工程において、鍋の温度が設定温度に到達すると、予熱工程を終了して保温工程に移行する。
しかしながら、加熱調理器においては、鍋等の被加熱物を加熱することによって、被加熱物に入れられた油等の内容物へ熱が伝熱されるため、被加熱物の温度と内容物の温度とに温度差が生じる。このため、実際には設定温度よりも内容物の温度が低いにも関わらず予熱工程を終了してしまう、という問題点があった。
一方、被加熱物の温度と内容物の温度との温度差を少なくするために、被加熱物から内容物へ熱が伝熱する時間を考慮して、被加熱物の温度を徐々に上昇させる場合、予熱工程の時間が長くなる、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、油等の内容物の温度上昇させる予熱工程において、予熱工程の時間の長期化を抑制しつつ、内容物の温度を精度良く目標温度まで上昇させることができる加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に電力を供給する駆動回路と、前記被加熱物の温度を検出する温度センサと、前記駆動回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記被加熱物の温度を、設定された料理メニューに対応して設定された目標温度よりも高い温度まで上昇させる予熱工程と、前記予熱工程の後に、前記被加熱物の温度を前記目標温度よりも高い温度に保つ保温工程と、を実行し、前記予熱工程において、前記被加熱物の温度が前記保温工程で保たれる前記被加熱物の温度よりも高い温度になるように、前記加熱手段に第1の電力を供給し、前記被加熱物の温度が前記保温工程で保たれる前記被加熱物の温度よりも高い温度になったあと、前記加熱手段に前記第1の電力よりも単位時間あたりの電力量が小さい第2の電力を供給し、又は前記加熱手段への電力の供給を停止し、前記被加熱物の温度を下降させてから前記保温工程に移行するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物の温度が保温工程で保たれる温度よりも高い温度になったあと、加熱手段に第1の電力よりも単位時間あたりの電力量が小さい第2の電力を供給し、又は加熱手段への電力の供給を停止する。そして、被加熱物の温度を下降させてから保温工程に移行する。
このため、予熱工程の時間の長期化を抑制しつつ、被加熱物内の内容物の温度を精度良く目標温度まで上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面図である。
【
図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を説明するブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の操作部及び火力表示部を説明する図である。
【
図4】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の予熱工程の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の予熱工程及び保温工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の保温工程及び調理工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の保温工程及び調理工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の積算値の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の表示部を示す図である。
【
図9】実施の形態4に係る誘導加熱調理器及び外部機器の設置状態を模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態4に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。
【
図11】実施の形態5に係る誘導加熱調理器の操作部及び火力表示部を説明する図である。
【
図12】実施の形態6に係る誘導加熱調理器と外部機器の設置状態を模式的に示す図である。
【
図13】実施の形態6に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。
【
図14】実施の形態7に係る誘導加熱調理器と外部機器の設置状態を模式的に示す図である。
【
図15】実施の形態7に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態では、本発明の加熱調理器として、誘導加熱コイルに高周波電力を供給して誘導加熱を行う誘導加熱調理器を説明する。なお、本発明はこれに限るものではなく、例えば電気抵抗体等の加熱体により被加熱物を加熱するようにしても良い。
【0010】
実施の形態1.
[加熱調理器の構成]
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面図である。
誘導加熱調理器100は、本体1と、本体1の上面に配置されるトッププレート2とを有する。誘導加熱調理器100は、トッププレート2の上に載置される鍋等の被加熱物を、本体1の内部に設けられた誘導加熱手段により加熱する。本実施の形態1では、トッププレート2の左側手前、右側手前、及び中央側奥に、それぞれ加熱口6が設けられている。
【0011】
本体1の上面には、加熱条件及び加熱指示の入力操作を受け付ける操作部3が、各加熱口6に対応して配置されている。使用者がトッププレート2上に被加熱物である鍋を載置し、各加熱口6に対応した操作部3に設けられた操作キーに操作入力を行うと、操作入力にしたがって誘導加熱手段により被加熱物が加熱される。加熱の進行状況及び調理モードなどの設定に関する情報は、トッププレート2の上面に各加熱口6に対応して配置された液晶等を有する表示部4に表示され、加熱の火力は火力表示部5に表示される。
【0012】
トッププレート2の加熱口6に対応する部分には、鍋等の被加熱物を載置する箇所を示す例えば円形の表示が印刷等によって設けられており、使用者は鍋を載置すべき場所が分かるようになっている。
【0013】
本体1内において加熱口6の下側には、誘導加熱手段である加熱コイル14が設けられている。なお、
図1では、加熱コイル14の大まかな配置を破線にて図示している。加熱コイル14に高周波電流を流すことでトッププレート2上に載置された被加熱物に渦電流が発生し、この発生する渦電流と鍋自身の抵抗により鍋底自身が発熱する。したがって、被加熱物の底を直接加熱する加熱効率の良い調理を実現できる。なお、誘導加熱調理器100の加熱口6の加熱手段として電気ヒータ等の他の加熱手段を設けてもよい。
【0014】
また、トッププレート2において加熱口6の内側には、平面視略円形の透過窓部7が設けられている。透過窓部7は、赤外線が透過しやすいような処理が施された領域である。例えば、トッププレート2には内部構造を外から見えにくくするための塗装13が施されているが(
図2参照)、透過窓部7には、塗料の塗布量を減らす、あるいは塗料を塗布しない等の処理が施されている。このようにすることで、本体1内に設けられた後述する赤外線センサ12(
図2参照)に、透過窓部7を介して赤外線が受光されやすくなる。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を説明するブロック図である。
図2では、一つの加熱口6に対応する構成のみ図示しており、また、被加熱物としての鍋200も併せて図示している。
トッププレート2に設けられた加熱口6の下部には、加熱コイル14が配置されている。本実施の形態1では、加熱コイル14は、略環状の内側加熱コイル14aと、その外側に設けられた略環状の外側加熱コイル14bとを備えた二重環形状である。内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの間には略環状の隙間が設けられており、この隙間を、隙間15と称する。加熱コイル14は、加熱コイル14を収容する加熱コイル支持部16により、トッププレート2の下面との間に所定距離をおいて保持されている。
【0016】
内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの隙間15内であって、加熱コイル14の上面よりも下方には、赤外線を検出すると検出した赤外線量に応じた出力を行う赤外線センサ12が設けられている。赤外線センサ12からの出力は、本体1に具備された赤外線温度検知部24に入力される。赤外線温度検知部24は、赤外線センサ12からの出力に基づいて、温度を算出する。より具体的には、記憶部21には、赤外線センサ12の出力量と、その出力量及び所定の放射率に基づいて算出された温度データとが対応付けられた温度換算表が、予め記憶されている。赤外線温度検知部24は、赤外線センサ12からの出力を受けるとこの温度換算表を参照して、温度を算出する。
【0017】
また、内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの環状の隙間15には、サーミスタ等の接触式の温度検知手段である接触式温度センサ17が2つ設けられている。なお、
図2には一つの接触式温度センサ17のみ図示している。2つの接触式温度センサ17は、加熱コイル14の中心部を基準に180度ずらした位置にそれぞれ設けられている。接触式温度センサ17は、トッププレート2の下面に密着するように設けられており、トッププレート2の下面の温度に応じた信号を出力する。接触式温度センサ17の出力信号は、本体1に具備されたトッププレート温度検知部25に入力される。トッププレート温度検知部25は、接触式温度センサ17からの信号に基づいて、トッププレート2の温度を検知する。なお、トッププレート2の温度をより正確に時間の遅れが少なく検出可能な手段であれば、サーミスタ等の接触式温度センサ17に限らず任意のものをトッププレート温度検知手段として採用することができる。
【0018】
なお、本実施の形態1では、接触式温度センサ17を内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの隙間15に設ける構成としたが、接触式温度センサ17の配置はこれに限定されない。例えば、接触式温度センサ17を、外側加熱コイル14bの外周近傍に配置してもよいし、加熱コイル14の中心に配置してもよい。また、接触式温度センサ17の数は2個に限定されることはなく、1個又は2個以上であってもよい。
【0019】
接触式温度センサ17は、設置数が少ないと、トッププレート2に載置される被加熱物の位置又は形状の違いによって、取得温度にばらつきが生じうる。このため、複数設けられた接触式温度センサ17の検出値の平均値、又は複数の接触式温度センサ17のうち最も高い温度を出力したものの検出値を、後述する鍋の温度検出に用いるようにしてもよい。このようにすることで、接触式温度センサ17の設置数が少ない場合でも、ばらつきに強い温度検出が可能となる。
【0020】
本体1に設けられている記憶部21には、操作部3にて設定した情報、赤外線温度検知部24、及びトッププレート温度検知部25からの出力が入力されて記憶される。
【0021】
演算部22は、例えばマイコン等で構成され、鍋の温度を算出する各種演算処理を行う。
【0022】
制御部23は、操作部3の設定内容と、赤外線センサ12及び接触式温度センサ17が検出した物理的情報に基づいて検出した鍋の温度情報とに基づいて、高周波インバータ26を制御し、加熱コイル14に流れる高周波電流を制御する。このようにすることで、被加熱物の加熱制御を行う。また、制御部23は、加熱動作等に応じて表示部4及び火力表示部5による報知を行う。制御部23は、回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコン等の演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0023】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の操作部及び火力表示部を説明する図である。誘導加熱調理器100の左側、右側、及び中央に設けられた加熱コイル14にそれぞれ対応する操作部3及び火力表示部5は、すべて同様の構成であるので、ここでは、左側の加熱コイル14に対応して設けられた操作部3及び火力表示部5を例に説明する。
【0024】
操作部3は、被加熱物を加熱する火力(投入電力)を設定するための火力設定キー31と、調理メニューを設定するためのメニューキー32と、設定温度又は調理時間等を入力する上下キー33を備える。
火力設定キー31は、「弱火」キー、「中火」キー、「強火」キー、及び「3kW」キーで構成されており、使用者は、これらのキーを用いて4段階の火力(投入電力)のいずれかを設定することができるようになっている。火力に応じて個別にキーを設けることで、使用者は、必要な火力の設定を一回の操作で入力できるようになっている。
【0025】
メニューキー32は、「揚げ物」キー、「予熱」キー、「煮込み」キー、及び「タイマー」キーを備える。これらのキーが押下されると、各メニューに対して予め設定され記憶部21に記憶された制御シーケンスにしたがって、被加熱物の温度が目標温度になるように制御部23が加熱制御を行う。
【0026】
火力表示部5は、火力設定キー31で入力された火力、及びメニューキー32で設定されたメニューに基づいて火力を複数段階に表示するものであり、火力に応じて表示態様が切り替わる。火力表示部5の表示により、動作中であることを使用者に示すことが可能である。火力表示部5は、例えば複数のLEDを有し、これらLEDの点灯状態(点灯、消灯、点滅等)を切り替える、あるいは点灯色を切り替えることにより、火力を表現する。このようにすることで、使用者が直感的に分かりやすい報知を行うことができる。
【0027】
なお、
図3には図示しないが、液晶画面等で構成された表示部4(
図1参照)には、例えば「予熱中」及び「適温到達」等の火力、経過状況、及び設定されているメニューの内容等に関する情報が表示される。
【0028】
なお、加熱コイル14は、本発明の「加熱手段」に相当する。
また、高周波インバータ26は、本発明の「駆動回路」に相当する。
また、表示部4は、本発明の「報知部」に相当する。
また、接触式温度センサ17及び赤外線センサ12の少なくとも一方は、本発明の「温度センサ」に相当する。
また、操作部3の上下キー33は、本発明における「設定操作部」に相当する。
【0029】
[加熱調理器の加熱制御動作]
次に、被加熱物の内容物の温度を目標温度に略一定に保つための加熱制御について、揚げ物調理を例に説明する。
【0030】
使用者は、鍋200内に揚げ物を行うための油を入れ、鍋200をトッププレート2の加熱口6に載置する。使用者によって操作部3のメニューキー32にて揚げ物モードが選択されると、制御部23は、目標温度Ttを決定する。揚げ物の温度は、料理メニュー(例えば、「てんぷら」、「とんかつ」、「から揚げ」等)によって異なるため、このような料理メニューが設定された場合にはその料理メニューに対応した温度を目標温度とする。そして、使用者により加熱開始の指示が操作部3に入力されると、制御部23は、高周波インバータ26を駆動制御して加熱コイル14に高周波電流を供給し、加熱を開始する。
【0031】
制御部23は、揚げ物モードにおける加熱制御として、予熱工程と、保温工程と、調理工程とを実行する。予熱工程は、鍋200の温度を目標温度Ttよりも高い第1の設定温度Tref1まで上昇させる工程である。保温工程は、予熱工程の後に、鍋200の温度を目標温度Ttよりも高く第1の設定温度よりも低い第2の設定温度Tref2に保つ工程である。調理工程は、保温工程において鍋200への食材の投入を検知した際に実行し、予熱工程における電力よりも大きい電力を加熱コイル14へ供給することで、油等の内容物の温度を高速で目標温度Ttまで復帰させる工程である。
【0032】
以下、本実施の形態1における予熱工程と保温工程と制御動作の詳細を説明する。
【0033】
(予熱工程)
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の予熱工程の動作を示すフローチャートである。
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の予熱工程及び保温工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の一例を示す図である。
図5において、縦軸は温度及び電力を示し、横軸は時間を示す。また、
図5において、Tdは鍋200の温度であり、Tcは鍋200内の油の温度であり、Pは加熱コイル14へ供給された電力である。
【0034】
図4において、予熱工程を開始すると、制御部23は、加熱コイル14に第1の電力P1を供給する(S10)。第1の電力P1は、例えば、「強火」キーの火力に相当する電力値、又は、定格電力値など、予め設定された任意の電力である。これにより、鍋200が誘導加熱され、鍋200の温度が上昇する。また、鍋200から鍋200内の油へと熱が伝熱し、油の温度が上昇する。
図5に示すように、時刻t0において予熱工程を開始すると、鍋200の温度Tdが上昇する。一方、油の温度Tcは、伝熱によるタイムラグが生じて、鍋200の温度Tdよりも遅れて上昇する。また、発熱源である鍋200の温度Tdは、油の温度Tcよりも高くなる。
【0035】
制御部23は、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1以上であるか否かを判断する(S11)。鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1以上でない場合、ステップS10に戻り、制御部23は加熱を継続する。一方、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1以上である場合、制御部23は、加熱コイル14への電力の供給を停止させる(S12)。
即ち、制御部23は、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達するまで、加熱コイル14に第1の電力P1を供給する。
【0036】
ここで、第1の設定温度Tref1は、目標温度Ttよりも高い温度である。なお、第1の設定温度Tref1は、調理メニュー又は目標温度Ttに応じて予め設定した温度でも良いし、使用者が操作部3から入力して設定しても良い。
【0037】
次に、制御部23は、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達した時から、予め設定された待機時間tiを経過したか否かを判断する(S13)。予め設定された待機時間tiを経過していない場合、ステップS12に戻り、加熱コイル14への電力供給の停止を継続する。
【0038】
ステップS13において、予め設定された待機時間tiを経過した場合、制御部23は、鍋200の温度が第2の設定温度Tref2よりも低いか否かを判定する(S14)。鍋200の温度が第2の設定温度Tref2よりも低くない場合、ステップS12に戻り、加熱コイル14への電力供給の停止を継続する。鍋200の温度が第2の設定温度Tref2よりも低い場合、予熱工程を終了して保温工程に移行する。
即ち、鍋200の温度が第1の設定温度Tref1に到達した時から待機時間tiを経過し、且つ、鍋200の温度が第2の設定温度Tref2よりも低い場合、予熱工程を終了して保温工程に移行する。
また、制御部23は、予熱工程の終了、又は保温工程の開始を、表示部4に報知させる。
【0039】
ここで、第2の設定温度Tref2は、目標温度Ttよりも高く、第1の設定温度Tref1よりも低い温度である。第2の設定温度Tref2は、例えば、保温工程において鍋200の温度を維持する保温温度と同じ温度に設定する。なお、第2の設定温度Tref2は、例えば、目標温度Ttに予め設定した温度を加算した値に設定される。なお、調理メニューに応じて目標温度Ttに加算する値を可変するようにしても良い。また、操作部3の上下キー33の設定操作に応じて、第1の設定温度Tref1、及び第2の設定温度Tref2の少なくとも一方を可変するようにしても良い。
【0040】
また、待機時間tiは、鍋200から鍋200内の内容物の全体へ熱が伝熱するために必要となる時間が設定される。例えば、揚げ物メニューにおいては、鍋200の底から鍋200の中央部まで熱が伝導するために必要となる時間が設定される。待機時間tiは、例えば、鍋200の内容物の種類に応じて予め設定した値でも良いし、使用者が操作部3から入力して設定しても良い。また例えば、使用者が操作部3から入力した内容物の量に応じて設定しても良い。また、待機時間tiは、内容物の熱伝導率が低いほど長い時間に設定される。また、待機時間tiは、内容物の量が多いほど長い時間に設定される。
【0041】
図5に示すように、時刻t1において鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達すると、待機時間tiが経過する時刻t2まで、加熱が停止される。待機時間tiにおいて、鍋200の温度Tdは、加熱が停止されることによって下降する。一方、加熱が停止した待機時間tiにおいて、鍋200内の油は、鍋200の底部分から上方に向かって熱が全体に伝熱する。このため、油の温度Tcは、大きく低下することなく略一定となる。つまり、鍋200内の底部の油の温度と上部の油の温度との温度差を少なくすることができ、油の温度を目標温度Ttに近づけることができる。
【0042】
なお、本実施の形態1では、ステップS12において、加熱コイル14への電力の供給を停止したが、本発明はこれに限定されない。ステップS12において、制御部23は、加熱コイル14に第1の電力P1よりも小さい第2の電力を供給しても良い。また、加熱コイル14へ間欠的に電力を供給しても良い。即ち、待機時間tiの単位時間あたりの電力量が、待機時間tiよりも前における単位時間当たりの電力量よりも小さくすればよい。
【0043】
(保温工程)
保温工程において、制御部23は、鍋200の温度Tdが第2の設定温度Tref2となるように、加熱コイル14へ供給する電力を制御する。
例えば、
図5に示すように、鍋200の温度Tdが第2の設定温度Tref2よりも低い場合、加熱コイル14へ電力を投入する。一方、鍋200の温度Tdが第2の設定温度Tref2以上である場合、加熱コイル14への電力の供給を停止させる。なお、
図5に示した保温工程の加熱制御は一例であり、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の設定温度Tref2に所定値を加えたオフしきい値と、所定値を引いたオンしきい値とを設け、電力供給をオンオフする温度に幅を設けても良い。
【0044】
また例えば、制御部23は、鍋200の温度Tdと第2の設定温度Tref2との温度差が大きいほど投入電力を大きくし、温度差が小さくなると電力を小さくする、もしくは停止して、油の温度Tcが大きく変動しない様に制御を行ってもよい。
【0045】
以上のように本実施の形態1においては、予熱工程において、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達するまで、加熱コイル14に第1の電力P1を供給する。鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達したあと、加熱コイル14に第1の電力P1よりも小さい第2の電力を供給し、又は加熱コイル14への電力の供給を停止する。そして、鍋200の温度Tdが第1の設定温度Tref1に到達した時から予め設定された待機時間tiを経過し、且つ、鍋200の温度Tdが第2の設定温度Tref2よりも低い場合、予熱工程を終了して保温工程に移行する。
このため、待機時間tiにおいて鍋200内の内容物の温度の均一化を促進することができる。また、鍋200の温度を、第2の設定温度Tref2よりも高い第1の設定温度Tref1まで上昇させるので、内容物の温度が目標温度よりも低いにも関わらず予熱工程を終了してしまうことを防止することができる。よって、鍋200内の内容物の温度を精度良く目標温度まで上昇させることができる。また、鍋200の温度を徐々に上昇させる制御を行わないため、予熱工程の時間の長期化を抑制することができる。
【0046】
実施の形態2.
本実施の形態2では、保温工程において、鍋200への食材の投入を検知する動作について説明する。
なお、本実施の形態2における誘導加熱調理器100の構成は、上記実施の形態1と同様である。また、予熱工程及び保温工程の加熱動作は上記実施の形態1と同様である。
なお、以降の実施の形態において、制御部23が、鍋200への食材の投入を検知する動作を「食材検知機能」と称する。
【0047】
図6は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の保温工程及び調理工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の一例を示す図である。
図7は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の保温工程及び調理工程の各種温度と加熱コイルへ供給する電力の積算値の一例を示す図である。
図6において、縦軸は温度及び電力を示し、横軸は時間を示す。
図7において、縦軸は温度及び電力の積算値を示し、横軸は時間を示す。また、
図7において、Ipは加熱コイル14へ供給された電力の積算電力量である。
なお、
図6及び
図7は、保温工程における任意の時刻t3以降を示しており、時間軸の幅は
図5とは異なるものである。
【0048】
(保温工程)
予熱工程から保温工程に移行すると、制御部23は、加熱コイル14へ投入している電力の計測時間毎の積算値の演算を行い、積算電力量Ipを算出する。一例として計測時間を30秒間として説明を行う。また、制御部23は、保温工程において投入されている電力値を一秒間隔で取得する。そして、制御部23は、毎秒取得した30個のデータを積算する演算を行い、新たに電力値を取得する度に、積算電力量Ipの更新を行う。
【0049】
例えば
図6に示すように、時刻t4において食材が投入されると、油の温度Tcが低下する。一方、鍋200の温度Tdの変化は油の温度Tcと比較して少ない。また、鍋200の温度Tcを保つ加熱制御によって、加熱コイル14へ供給する電力量は大きくなる。
このため、
図7に示すように、鍋200へ食材を投入した時刻t4の前後で、積算電力量Ipが大きく変化することとなる。そこで、本実施の形態2では、積算電力量Ipを用いて食材投入の検知を行う。
【0050】
保温工程において、制御部23は、予め設定された計測時間の間に加熱コイル14へ供給された電力の積算値である積算電力量Ipが、しきい値Irefを超えたか否かを判断する。そして、積算電力量Ipが、しきい値Irefを超えた場合、鍋200への食材の投入を検知し、保温工程を終了し、調理工程に移行する。
また、制御部23は、保温工程の終了、又は調理工程の開始を表示部4に報知させる。
【0051】
(調理工程)
食材投入を検知してから調理工程へ移行すると、制御部23は、保温工程における電力よりも大きい電力を加熱コイル14へ供給する。例えば、制御部23は、調理工程において、調理工程の開始から予め設定された調理時間の間、鍋200の温度を第2の設定温度Tref2よりも高い第3の設定温度Tref3に保つように、高周波インバータ26を制御する。これにより、食材投入によって低下した油の温度を高速で復帰させることができる。
【0052】
調理工程の開始から予め設定された調理時間を経過すると、制御部23は、鍋200の温度を第2の設定温度Tref2に保つ保温工程に戻る。なお、調理工程時の電力制御方法に関しては、第3の設定温度Tref3に温度ヒステリシスを持たせて段階的に元の第2の設定温度Tref2(保温温度)へと下げていく等の方法で保温工程へと移行させても良い。
【0053】
なお、制御部23は、調理工程を開始したとき、鍋200に食材が投入された旨を、表示部4に報知させるようにしても良い。これにより、使用者に対して調理工程の開始を報知することができ、使用者の使い勝手を向上することができる。
【0054】
ここで、積算電力量Ipを食材投入判定に用いている効果について詳細な説明を行う。
前述のとおり、誘導加熱調理器100では、加熱コイル14へ高周波電流を投入する事で被加熱物である鍋200の鍋底に渦電流が発生し、この渦電流による損失によって鍋底部が発熱するものである。また、揚げ物調理においては、食材を入れた後に加熱された油の持つ熱量Qが、食材へ伝達される。その後、再び熱量Q相当の熱量が供給されるが、食材と鍋底との間に介在する油の粘度が高い(水の約50倍)ために、食材近傍の油の温度と鍋底部の油の温度とに差が生じる。つまり、食材が投入される油上部の温度低下に比較して、油下部の温度低下は小さくなり、温度センサによって検出される鍋200の温度低下は、油上部の温度低下に比べて小さくなる。
【0055】
また、食用の油の比熱は小さく(水の約半分)、鍋底部の温度低下分を復帰させるために必要となる熱量は、食材に与えられている熱量Qに比べて小さくなる。このため、鍋200の温度を基に電力制御を行っている場合には、食材投入後の鍋200の温度低下は油上部の温度低下に比べて小さい範囲で収まる事がある。
しかしながら、実際には食材近傍の温度は低下した状態で調理されている状態が維持されてしまうため、例えば、鍋200の温度の低下を検知することでは、食材投入を検知することができない場合がある。
【0056】
前述の通り、食材を投入した際の鍋200の温度変動幅は小さい範囲で収まるが、一方で電力投入を実施する期間は長期化する。また、鍋200が設定温度以下で継続している間の累積時間でしきい値を設けて食材投入を検知する場合、油量又は鍋底の反り、周囲温度(放熱変化)の影響により変動が大きく誤検知をしてしまう可能性がある。また、食材投入前の状態と投入後との相対値を用いる方法も考えられるが、保温工程初期に食材投入された場合は相対比較ができず、判定困難である。
【0057】
以上より、鍋200の温度Tdを用いて温度制御を行う場合は、電力の積算値をしきい値として食材投入検知を行う事が有効である。
このため、本実施の形態2においては、制御部23は、積算電力量Ipがしきい値Irefを超えたか否かによって鍋200への食材の投入を検知する。よって、精度良く食材の投入を検知することができる。
【0058】
なお、鍋200の温度の検出は、赤外線センサ12の出力のみ、もしくは接触式温度センサ17の出力のみを用いた温度制御でも同様に電力の積算値を用いる事が有効である。また、電力の検出には加熱コイル14に対して一次側電流値、もしくは二次側電流値を用いて演算を行っても良い。
【0059】
なお、上記の説明では、加熱コイル14へ供給された電力の積算値である積算電力量Ipを用いて食材の投入を検知したが、本発明はこれに限定されず、電力の積算値の変化量によって、食材の投入を検知しても良い。即ち、制御部23は、予め設定された計測時間の間に加熱コイル14へ供給された電力の積算値の変化量が、しきい値を超えた場合、被加熱物への食材の投入を検知するようにしても良い。
【0060】
実施の形態3.
本実施の形態3では、調理工程における報知動作について説明する。
以下、本実施の形態3における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1及び2との相違点について説明する。なお、予熱工程及び保温工程の加熱動作は上記実施の形態1又は2と同様である。
【0061】
(オートカウントアップ機能)
制御部23は、食材検知機能により食材投入を検出すると、表示部4へ食材投入検知からの経過時間を自動表示するオートカウントアップ機能を立ち上げる。
即ち、制御部23は、調理工程において、調理工程の開始からの経過時間を、表示部4に報知させる。
【0062】
図8は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の表示部を示す図である。
例えば
図8に示すように、表示部4に、揚げ物調理モード表示41、経過時間を示す複数のランプ表示42、及び経過時間を示す数値表示43によって報知する。
揚げ物調理モード表示41は、揚げ物調理モードによる自動調理機能が動作中である旨を示す表示である。
ランプ表示42は、調理工程の開始からの経過時間の長さに応じて点灯表示させる表示である。ランプ表示42は、例えば1分経過する度に、点灯表示させるランプを増やしていく。
数値表示43は、調理工程の開始からの経過時間を数値で示す表示である。なお、
図8に示すように、数値を含めた文章で表示しても良い。
【0063】
なお、経過時間の報知は表示部4の表示に限らず、音声で経過時間を知らせても良いし、本体に備えた複数個のLEDなどで示しても良い。また、オートカウントアップ機能の表示を停止する場合、又は経過時間をリセットする場合には操作部3で行っても良いし、予め所定時間経過後に停止するように設定可能としてもよい。
【0064】
このようなオートカウントアップ機能により、本体に設けたタイマーを開始させるボタン操作、又は別体で備えたキッチンタイマー等の操作をすることなく、使用者に対して、食材投入からの経過時間を報知することができる。よって、使用者は、調理作業を効率的に進められ、かつ、調理時間を把握できるため、加熱不足又は加熱しすぎる事を防ぐことができる。
【0065】
(オートカウントダウン機能)
上述したオートカウントアップ機能の代わりに、食材投入の検知から予め設定した時間となると報知、又は火力を停止もしくは低下させるオートカウントダウン機能を備えても良い。
【0066】
例えば、制御部23は、調理工程において、予め設定された調理時間から、調理工程の開始からの経過時間を引いた時間である残り時間を、表示部4に報知させる。
ここで、調理時間は、調理メニューなどに応じて予め初期値を設定しても良いし、操作部3の上下キー33の設定操作に応じて、調理時間を可変しても良い。
【0067】
このようなオートカウントアップ機能により、使用者が他の作業を行っていても加熱不足又は加熱をしすぎることなく、食材を鍋200から取り出すことが可能となる。
【0068】
なお、制御部23は、残り時間が例えば1分になった場合など、予め設定した残り時間を下回った場合、表示部4にその旨を報知するようにしても良い。
これにより、使用者が他の調理を行っていても効率的に作業を行う事が可能となる。
【0069】
また、制御部23は、調理工程の開始から予め設定された調理時間を経過したあと、加熱コイル14に供給する電力を低下させ、又は加熱コイル14への電力の供給を停止させるようにしても良い。
これにより、調理の終了とともに、電力を低下させることができ、消費エネルギーを削減することができる。また、調理時間の経過後に電力を下げる事で、加熱しすぎを防ぐ効果もある。
【0070】
(オートパワーセーブ機能)
また、制御部23は、調理工程において、鍋200への食材の投入を検知する度に、調理経過時間の計時を開始し、調理経過時間が予め設定された停止時間となった場合、加熱コイル14への電力の供給を停止するオートパワーセーブ機能を備えても良い。
【0071】
ここで、揚げ物モードにおける加熱制御では、鍋200内の油の温度を目標温度に維持できるため、長時間に渡って加熱調理を行っても、油の温度上昇を抑制することが可能である。一方で、省エネルギーの観点から、揚げ物モードの開始から例えば45分間で調理機能を停止するといったパワーセーブ機能が設けると、使用者の使い勝手が悪くなる。つまり、調理によっては食材量が多く調理中に、揚げ物モードの開始から45分を経過し、加熱を停止してしまう場合もある。この場合、再度、操作部3にて設定を行う必要があり、改めて予熱工程での待機時間が生じるなどの煩わしさがある。
【0072】
そこで、上述したオートパワーセーブ機能により、食材投入を検知した時間を起点として調理経過時間(例えば30分)後に加熱停止をする。
このように、最後に食材投入を検知した時を起点とすることで、追加投入などで食材が入った時は、最後に食材投入を検知した時点から調理経過時間を経過するまでは、加熱を実施できる。よって、食材量が多い場合など、調理時間が長くかかる場合であっても、調理作業中に加熱が停止してしまうことを防止することができる。
【0073】
実施の形態4.
本実施の形態4では、外部機器との接続を可能とするネットワーク機器を備える事で、各種の自動調理機能の進行状況の確認、及び設定変更を行う構成について説明する。
以下、本実施の形態4における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1~3との相違点について説明する。
【0074】
図9は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器及び外部機器の設置状態を模式的に示す図である。なお、
図9においては、誘導加熱調理器100が、キッチン家具Kに設置された状態を正面から示している。
図9に示すように、外部機器300は、誘導加熱調理器100の本体とは別体で構成された機器である。外部機器300は、例えば、遠隔で操作可能なリモートコントローラ、又は携帯情報端末など無線通信機能を有する通信機器であり、本体との間で通信を行う。
【0075】
図10は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。
図10に示すように、誘導加熱調理器100の本体には、第1通信部9を備える。
第1通信部9は、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、NFC(Near field radio communication)など、任意の通信規格に適合した通信インターフェースによって構成される。第1通信部9は、外部機器300の第2通信部51と双方向で情報通信する。なお、通信方式は、無線に限定されず有線でも良い。
【0076】
外部機器300は、第2制御部50、第2通信部51、第2表示部52、及び第2操作部53を備える。
第2通信部51は、第1通信部9の通信規格に適合した通信インターフェースによって構成される。第2通信部51は、第1通信部9と双方向で情報を通信する。第2制御部50は、マイコン又はDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等で構成される。
第2制御部50は、第2操作部53からの操作内容に基づいて、通信情報を第2通信部51から送信する。また、第2制御部50は、第1通信部9から受信した通信情報などに応じて、第2表示部52への表示を行う。
なお、第2操作部53は、本発明における「設定操作部」に相当する。
【0077】
このような構成により、本体の制御部23は、表示部4に報知させる情報の少なくとも一部を、第1通信部9から送信する。外部機器300の第2通信部51は、第1通信部9から送信された情報を受信する。第2制御部50は、第2通信部51が受信した情報を第2表示部52に表示させる。
【0078】
また、外部機器300の第2操作部53から設定操作が入力されると、第2制御部50は、設定操作の情報を第2通信部51に送信させる。本体の制御部23は、第1通信部9を介して、外部機器300からの設定操作の情報を取得する。
【0079】
これにより、外部機器300において、前述した食材投入検知後のオートカウントダウン機能の経過時間の表示、調理時間に到達した際の報知を行う。また、外部機器300において、調理時間の変更、又は設定温度の変更も可能となる。
【0080】
したがって、使用者が、誘導加熱調理器100の本体から離れた位置で別作業を行っていても、外部機器300によって遠隔で操作を行えるため、効率的に作業を行う事が可能となる。また、外部機器300を用いて操作を行うことで、操作性を向上することができる。さらに、外部機器300として携帯情報端末など、通信回線を用いたアプリケーションのアップデートが可能な機器を用いることで、多様な操作が可能となり、使用者の利便性を向上することができる。
【0081】
なお、本体の操作部3に設けた操作キーの一部を省略し、外部機器300の第2操作部53によって、省略した操作キーの操作を行うようにしても良い。これにより、本体の操作部3の操作キーを、基本的な操作に用いる操作キーに限定することができ、使用者の操作性を向上することができる。
【0082】
実施の形態5.
本実施の形態5では、保温工程における食材検知機能の別の動作について説明する。
以下、本実施の形態5における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1~4との相違点について説明する。なお、予熱工程及び保温工程の加熱動作は上記実施の形態1~4と同様である。
【0083】
図11は、実施の形態5に係る誘導加熱調理器の操作部及び火力表示部を説明する図である。
図11に示すように、操作部3は、調理工程の開始操作を入力するブーストボタン34を備える。
なお、ブーストボタン34は、本発明における「加熱操作部」に相当する。
【0084】
(調理工程)
使用者は、保温工程において、鍋200内に食材を投入した際、操作部3のブーストボタン34を操作する。制御部23は、ブーストボタン34の操作が入力されると、鍋200への食材の投入を検知し、調理工程に移行する。なお、調理工程の動作は上記実施の形態2と同様である。なお、制御部23は、保温工程の場合にのみ、ブーストボタン34の操作入力を受け付けるようにしても良い。
【0085】
このような構成により、保温工程において、使用者による任意のタイミングで調理工程へ移行する事ができる。また、上述したオートカウントアップ機能もしくはオートカウントダウン機能を食材投入と同タイミングで立ち上げる事が可能となる。
【0086】
実施の形態6.
本実施の形態6では、保温工程における食材検知機能の別の動作について説明する。
以下、本実施の形態6における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1~5との相違点について説明する。なお、予熱工程及び保温工程の加熱動作は上記実施の形態1~4と同様である。
【0087】
図12は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器と外部機器の設置状態を模式的に示す図である。なお、
図12においては、誘導加熱調理器100が、キッチン家具Kに設置された状態を正面から示している。
図12に示すように、外部機器301は、誘導加熱調理器100の本体とは別体で構成された機器である。外部機器301は、例えば、誘導加熱調理器100の本体の上方に設けられた換気扇Fの筐体に設置される。
【0088】
図13は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。なお、
図13において、上記実施の形態4と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、外部機器301は、集音装置55を備える。集音装置55は、マイクロフォン等によって構成され、検出した音を電気信号に変換して第2制御部50に入力する。
第2制御部50は、集音装置55からの音の情報を第2通信部51から送信する。
【0089】
本体の制御部23は、第1通信部9を介して、集音装置55が検出した音の情報を取得する。制御部23は、集音装置55が検出した音が、予め設定された音と一致した場合、鍋200への食材の投入を検知する。なお、制御部23は、保温工程の場合にのみ、集音装置55が検出した音の情報を受け付けるようにしても良い。
【0090】
ここで、予め設定された音としては、例えば、拍手などの定期的な音レベルの変化のパターンでも良いし、任意の言葉などの音声コマンドでも良い。音声コマンドの場合には、制御部23が音声認識を行って、検出された音声と一致するかを判断しても良い。また例えば、本体にスピーカを設け、制御部23は、予め設定した音声メッセージをスピーカから報知し、音声メッセージに対応した音声コマンドを検出するような対話型の状態確認によって、食材の投入を検知しても良い。
【0091】
このような構成により、使用者が調理中に機器を触ることなく、鍋200への食材の投入を検知することができ、誘導加熱調理器100を衛生的に保つことができる。また、使用者の操作性を向上することができる。
【0092】
実施の形態7.
本実施の形態7では、保温工程における食材検知機能の別の動作について説明する。
以下、本実施の形態7における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1~6との相違点について説明する。なお、予熱工程及び保温工程の加熱動作は上記実施の形態1~4と同様である。
【0093】
図14は、実施の形態7に係る誘導加熱調理器と外部機器の設置状態を模式的に示す図である。なお、
図14においては、誘導加熱調理器100が、キッチン家具Kに設置された状態を正面から示している。
図14に示すように、外部機器302は、誘導加熱調理器100の本体とは別体で構成された機器である。外部機器302は、例えば、誘導加熱調理器100の本体の上方に設けられた換気扇Fの筐体に設置される。
【0094】
図15は、実施の形態7に係る誘導加熱調理器及び外部機器の構成を説明するブロック図である。なお、
図15において、上記実施の形態4と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
図15に示すように、外部機器302は、画像検出装置56を備える。画像検出装置56は、誘導加熱調理器100の本体の上方に配置され、トッププレート2に載置された被加熱物を撮像する。画像検出装置56は、撮像した画像の情報を第2制御部50に入力する。
第2制御部50は、画像検出装置56からの画像の情報を第2通信部51から送信する。
【0095】
本体の制御部23は、第1通信部9を介して、画像検出装置56が検出した画像の情報を取得する。制御部23は、撮像した時間がそれぞれ異なる複数の画像が、予め設定された動作を示す複数の画像と一致した場合、鍋200への食材の投入を検知する。なお、制御部23は、保温工程の場合にのみ、画像検出装置56が検出した画像の情報を受け付けるようにしても良い。
【0096】
ここで、予め設定された動作としては、使用者の手が鍋200を横切るように移動させるなどのジェスチャー、又は、加熱口6の範囲において、食材、箸、トング、手などが所定時間以上動く動作など、任意の動作を設定することができる。
【0097】
また、制御部23は、予熱工程において、画像検出装置56が検出した画像を第1の画像として取得し、保温工程において、画像検出装置56が検出した画像を第2の画像として取得する。そして、制御部23は、第1の画像と第2の画像の色彩の変化量が予め設定された値よりも大きい場合、鍋200への食材の投入を検知しても良い。
【0098】
このような構成により、使用者が調理中に機器を触ることなく、鍋200への食材の投入を検知することができ、誘導加熱調理器100を衛生的に保つことができる。また、使用者の操作性を向上することができる。
【0099】
なお、誘導加熱調理器100の上方に設けた外部機器に、赤外線検知手段を備え、加熱口6の範囲内における温度を検知しても良い。この場合、制御部23は、鍋200の温度を上方から検知し、鍋200内の油の温度の変化がしきい値を超えた場合に、食材の投入を判断する。
【0100】
なお、誘導加熱調理器100の上方に設けた外部機器に、赤外線検知手段を備え、検知温度の変化によって、上述した予め設定された動作を判定し、鍋200への食材の投入を検知しても良い。例えば、赤外線検知手段は、複数のエリアに分割して温度を検知し、各エリアにおける検知温度の時間変化のパターンが、予め設定した条件に一致した場合に、鍋200への食材の投入を検知する。
【0101】
実施の形態8.
本実施の形態8では、保温工程を終了したあと調理工程の前に、温度確認工程を実行する動作について説明する。
なお、本実施の形態8における誘導加熱調理器100の構成は、上記実施の形態1~7の何れかと同様である。また、予熱工程、保温工程、及び調理工程の加熱動作は上記実施の形態1~7の何れかと同様である。
【0102】
(温度確認工程)
制御部23は、保温工程において、上述した実施の形態1~7の何れかの食材検知機能により食材の投入を検知すると、温度確認工程に移行する。
制御部23は、温度確認工程において、保温工程における電力よりも小さい電力を加熱コイル14へ供給する。又は、制御部23は、加熱コイル14への電力の供給を停止する。そして、制御部23は、鍋200の温度の変化量がしきい値以上の場合、当該温度確認工程を終了して、調理工程に移行する。
【0103】
以上のような動作により、上記実施の形態1~7の食材検知機能に加え、食材の投入に伴う鍋200の温度低下も確認した上で調理工程へ移行することができ、食材の投入の誤検知を低減することができる。
【0104】
なお、上記実施の形態1~8では、調理メニューとして、油の温度を一定に保つ揚げ物調理を例に説明をしたが、本発明はこれに限定されない。被加熱物の内容物の温度を目標温度に略一定に保つための任意の加熱制御において、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 本体、2 トッププレート、3 操作部、4 表示部、5 火力表示部、6 加熱口、7 透過窓部、9 第1通信部、12 赤外線センサ、13 塗装、14 加熱コイル、14a 内側加熱コイル、14b 外側加熱コイル、15 隙間、16 加熱コイル支持部、17 接触式温度センサ、21 記憶部、22 演算部、23 制御部、24 赤外線温度検知部、25 トッププレート温度検知部、26 高周波インバータ、31 火力設定キー、32 メニューキー、33 上下キー、34 ブーストボタン、41 揚げ物調理モード表示、42 ランプ表示、43 数値表示、50 第2制御部、51 第2通信部、52 第2表示部、53 第2操作部、55 集音装置、56 画像検出装置、100 誘導加熱調理器、200 鍋、300 外部機器、301 外部機器、302 外部機器。