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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/66 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
B65D5/66 301G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021077622
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2021-05-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社瑞光メディカルでの令和3年2月9日における販売
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000156846
【氏名又は名称】カンナル印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】茨木 久央
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274523(JP,A)
【文献】実開昭61-129718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面板、右側面板、左側面板、背面板、及び底面板を有する箱本体部と、背面板の上辺から背面板折目線を介して連設された蓋板であって、該蓋板の先端側に位置する蓋板折目線を介して連設された挿入片を有する蓋板と、正面板の上辺から正面板折目線を介して連設されたフラップであって、上記挿入片が差し込まれる差込口を有するフラップとを備えた収納箱であって、
上記正面板と上記背面板とが並ぶ方向を上記箱本体部の幅方向とし、該幅方向に平面視において直角な方向を長手方向として、上記差込口は、幅方向及び長手方向に側縁部を有する開口で構成されており、長手方向において最長寸法を有する最長位置部と、上記最長寸法よりも小さい最短寸法を有する最短位置部とを上記幅方向における異なる2箇所に有し、最長位置部は、最短位置部に対して幅方向において上記背面板折目線側に位置し、
上記幅方向に沿った測長において、蓋板における背面板折目線と蓋板折目線との間の長さは、背面板折目線と差込口における最長位置部との間の長さよりも大きく、
上記長手方向における上記挿入片の最長長さは、上記最長位置部における最長寸法よりも大きい、
ことを特徴とする収納箱。
【請求項2】
差込口における最短位置部は、上記正面板折目線に位置する、請求項1に記載の収納箱。
【請求項3】
差込口は、最短位置部における上記長手方向の1又は2つの端部と、最長位置部における長手方向の各端部との間をつなぎ差込口の輪郭をなす弧状の幅方向側縁部を有する、請求項1又は2に記載の収納箱。
【請求項4】
差込口は、最長位置部における長手方向の各端部間をつなぎ差込口の輪郭をなし、背面板折目線側へ凸である弧状の長手方向側縁部を有する、請求項1から3のいずれかに記載の収納箱。
【請求項5】
挿入片は、長手方向の少なくとも一端部に、差込口と係合して差込口に当該挿入片を係止させる係止部を有する、請求項1から4のいずれかに記載の収納箱。
【請求項6】
上記正面板は、上記差込口に差し込まれた挿入片を背面板折目線側へ押圧するための開口を有する、請求項1から5のいずれかに記載の収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製で、矩形状をなす底面板の外周縁に左右の側面板、並びに前後の後面板及び前面板が立設して形成される収納箱では、両側面板、並びに後面板及び前面板により囲繞された上端開口を閉塞するための蓋板が後面板に連設され、該蓋板の縁部には挿入片が連設されている。一方、前面板には、上記上端開口部分に差込口が設けられている。
このような収納箱では、差込口と蓋板の挿入片との抜き差しを行うことで、蓋板によって上端開口は、繰り返し開閉可能である(例えば特許文献1)。
【0003】
上述の差込口としては、挿入片の厚さとほぼ同じ幅を有する単なる切れ目のもの、又は、挿入片厚よりも大きい幅を有したスリット形状のものがある。スリット形状としては、平面視で単に矩形状であるもの、あるいは、特許文献1の図3に示すように、そのスリットの長手方向の両端部においてフラップの折目線より箱内側へ徐々に狭くなる形状を有するもの等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-84167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
差込口が単なる切れ目の形態では、差込口と挿入片との各長手方向サイズをほぼ同じにすることで、差込口と挿入片とを両者間の摩擦で係止させることができる。この場合、摩擦による係止のため、挿入片が差込口から外れ易い、つまり蓋板が開き易く上記上端開口の閉塞に難があるという欠点がある。
【0006】
このような、差込口からの挿入片の外れ易さを改善するため、あるいは差込口がスリット形状である場合には、挿入片は、特許文献1(図2)に記載するように、挿入片の長手方向に突出した係止部を挿入片の両端部に設けて、キノコ状にしたものが多い。この形態では、係止部を含めた挿入片の長手方向の長さは、差込口の長手方向の長さよりも大きく、挿入片は差込口を乗り越えて通過し、係止部が差込口と係合することで、挿入片と差込口とが係止されロックされる。尚、このような係止形態は、通称「キノコロック」と呼ばれる。
【0007】
このようなキノコロックにおける係合程度(係合具合)は、挿入片と差込口とのサイズの差の大きさに依存するが、係止部が差込口を乗り越える際の差込口への負荷が大きく、抜き差しの繰り返しによる、挿入片及び差込口におけるそれぞれの長手方向両端部の摩耗が激しい。その結果、多数回の開閉により係合が不完全となり、蓋板が浮き上がってしまうことが多くなり、また、係止部、さらには挿入片が破損してしまうこともしばしば発生する。
【0008】
また、ロックが強めに設定されている場合に、使用者が蓋板の端部を摘まんで開封しようとしたときには、挿入片と蓋板との境界付近が破断してしまう現象も生じる。
【0009】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、収納箱における挿入片と差込口との複数回の抜き差しにおいても良好な係合状態が維持可能な係合機構を有する収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における収納箱は、正面板、右側面板、左側面板、背面板、及び底面板を有する箱本体部と、背面板の上辺から背面板折目線を介して連設された蓋板であって、該蓋板の先端側に位置する蓋板折目線を介して連設された挿入片を有する蓋板と、正面板の上辺から正面板折目線を介して連設されたフラップであって、上記挿入片が差し込まれる差込口を有するフラップとを備えた収納箱であって、
上記正面板と上記背面板とが並ぶ方向を上記箱本体部の幅方向とし、該幅方向に平面視において直角な方向を長手方向として、上記差込口は、幅方向及び長手方向に側縁部を有する開口で構成されており、長手方向において最長寸法を有する最長位置部と、上記最長寸法よりも小さい最短寸法を有する最短位置部とを上記幅方向における異なる2箇所に有し、最長位置部は、最短位置部に対して幅方向において上記背面板折目線側に位置し、
上記幅方向に沿った測長において、蓋板における背面板折目線と蓋板折目線との間の長さは、背面板折目線と差込口における最長位置部との間の長さよりも大きい、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、収納箱は、挿入片と差込口とを有し、差込口は最長位置部と最短位置部とを有し、蓋板の背面板折目線と蓋板折目線との間の長さを、背面板折目線と差込口における最長位置部との間の長さよりも大きく構成したことで、挿入片と差込口とを複数回、抜き差しを行っても、良好な係合状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における収納箱を示す斜視図である。
図2図1に示す収納箱において蓋板を除いた上面図である。
図3図1に示す収納箱における正面図である。
図4図1に示す収納箱において蓋板を閉めた状態の斜視図である。
図5図1に示す収納箱のブランクシートを示す図である。
図6図5に示すブランクシートにおける蓋板及びフラップを含む部分の拡大図である。
図7図1等に示す差込口の拡大平面図である。
図8図1等に示す挿入片の拡大平面図である。
図9A図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9B図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9C図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9D図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9E図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9F図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9G図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図9H図1等に示す差込口の変形例を示す平面図である。
図10図1等に示す正面板に設けられる開口の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る収納箱について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
以下に説明する、本実施形態における収納箱は、例えば、使い捨てマスク等を収納する紙製の箱体を例に採るが、収納物及び用途等、並びに収納箱の大きさ(サイズ)は、勿論、これに限定するものではない。
また、使用材料についても、紙製に限定されず、例えば、段ボール、柔軟性及び/又は可撓性を有する材料、例えば樹脂製板等を使用することができる。
【0015】
図1に示すように、本実施形態における収納箱100は、正面板10、右側面板20、左側面板30、背面板40、及び底面板50を有する箱本体部60と、蓋板70と、フラップ80とを有する箱体である。尚、「正面板」等の名称は、説明の便宜上及び理解の容易さのために伏したもので、第1面板、第2面板等と称してもよい。
ここで蓋板70は、背面板40の上辺から背面板折目線42を介して背面板40に連設されており、蓋板70の先端側に位置する蓋板折目線72を介して蓋板70に連設された挿入片74を有する。またフラップ80は、正面板10の上辺から正面板折目線12を介して正面板10に連設されており、挿入片74が差し込まれる差込口82を正面板折目線12近傍に有する。このようなフラップ80は、本実施形態では、図2に示すように箱本体部60の開口を覆い、中央部分に、収納物取出用の窓84を形成しており、正面板折目線12を介して開閉可能である。またフラップ80は、差込口82を形成する領域を有する部材であればよく、本実施形態のように箱本体部60の開口を覆ったり、窓84を有する構成は必須ではない。
【0016】
このような構成を有する収納箱100は、箱本体部60の開口を覆うように、本実施形態では先に箱本体部60の開口を覆っているフラップ80を覆い、蓋板70が背面板折目線42を介して開閉可能である。よって、該開閉に伴い、挿入片74は、差込口82へ繰り返し抜き差しされる。収納箱100は、このような挿入片74と差込口82との係合に工夫を施したものであり、この点については以下で詳しく説明する。
尚、図1は、蓋板70を開けた状態を、図4は、蓋板70が箱本体部60の開口を覆った状態、つまり収納箱100の閉状態を示している。
【0017】
また、正面板10は、差込口82に差し込まれた挿入片74を背面板折目線42側へ押圧するための、具体的には使用者の指が入り押すことができる開口14を、本実施形態では正面板折目線12からほぼ半円状に有している。図3は、このような開口14を示している。しかしながら開口14は、必ずしも正面板折目線12を含まなくてもよく、蓋板70を開く際に、使用者の指が入り挿入片74を背面板折目線42側へ押圧可能な形状であればよく、例えば図10に示すように、正面板折目線12から離れて配置された円形形状であってもよい。
【0018】
図5は、上述の構成をなす収納箱100を平面に展開したブランクシート102を示している。尚、本実施形態では一例として、厚さ0.4mm程度の厚紙を打ち抜いて形成されている。
ブランクシート102は、図1に示すように組み立て可能なように、連設して設けられた背面板40、左側面板30、正面板10、及び右側面板20と、これらに連設して設けられた底面板50、蓋板70、及びフラップ80から構成される。背面板40の上側には背面板折目線42を介して蓋板70が、下側には第1底面板折目線51を介して第1底面板52がそれぞれ連設されている。左側面板30の上側には折目線32を介して第1突出片34が、下側には第2底面板折目線53を介して第2底面板54がそれぞれ連設されている。正面板10の上側には正面板折目線12を介してフラップ80が、下側には第3底面板折目線55を介して第3底面板56がそれぞれ連設されている。右側面板20の上側には折目線22を介して第2突出片24が、下側には第4底面板折目線57を介して第4底面板58がそれぞれ連設されている。ここで、第1底面板52、第2底面板54、第3底面板56、及び第4底面板58は、互いに係合し合うように構成されており、互いを係合させることで底面板50が形成され、かつ収納箱100の箱本体部60が組み立てられる。
【0019】
そして、正面板折目線12を介してフラップ80を箱本体部60側へ折り曲げ、さらに、蓋板折目線72を介して挿入片74を折り曲げた蓋板70を、背面板折目線42を介して箱本体部60及びフラップ80側へ折り曲げて、挿入片74をフラップ80の差込口82へ挿入する。
これにより、収納箱100が形成される。
【0020】
次に、主に図6から図8を参照して、挿入片74と差込口82との位置関係及び係合関係について説明する。ここで、図1に示すように、正面板10と背面板40とが並ぶ方向を箱本体部60の幅方向92とし、平面視においてこの幅方向92に直角な方向、即ち、右側面板20と左側面板30とが並ぶ方向を箱本体部60の長手方向94とする。
フラップ80における差込口82は、図1等に示すように、幅方向92及び長手方向94に側縁部826を有する開口で構成されており、また図7に示すように、長手方向94において、最長寸法L1を有する最長位置部822と、この最長寸法L1よりも小さい最短寸法L2を有する最短位置部824とを、幅方向92における異なる2箇所に有する。尚、図7は、図1等に示す差込口82の拡大図に相当するが、説明上の尺度具合から、長手方向94において破断線を介して図示している。
ここで、最長位置部822は、図6に示すように、最短位置部824に対して幅方向92において背面板折目線42側に位置する。また、本実施形態では、最短位置部824は、正面板折目線12に一致している。尚、図9Hを参照して後述するように、最短位置部824は、正面板折目線12に一致していなくてもよい。
【0021】
差込口82の輪郭を形成する側縁部826は、本実施形態では図7に示すように、幅方向側縁部826aと、長手方向側縁部826bとで形成される。幅方向側縁部826aは、最短位置部824における側縁部826の長手方向94の端部82bと、最長位置部822における側縁部826の長手方向94の端部82cとの間をつなぎ、差込口82の輪郭をなす弧状の側縁部である。また、長手方向側縁部826bは、最長位置部822における側縁部826の長手方向94の各端部82c間をつなぎ差込口82の輪郭をなして、背面板折目線42側へ凸である弧状の側縁部である。
本実施形態では、差込口82の輪郭である側縁部826は、最長寸法L1の中点を含み幅方向92に延在する中央線827を対称軸として、長手方向94に対象に形成している。尚、図9Eあるいは図9Gを参照して後述するように、側縁部826は、対称的構成を採らなくてもよい。
【0022】
さらに、図6に示すように、幅方向92に沿った測長において、蓋板70における背面板折目線42と蓋板折目線72との間の長さAは、背面板折目線42と差込口82における最長位置部822との間の長さBよりも大きく構成されている。また長さAは、背面板折目線42と正面板折目線12との間の寸法、つまり収納箱100の幅方向92における幅寸法に一致する長さである。
【0023】
尚、図6において、長さBの基点となっている、フラップ80部分に記した背面板折目線42について補足説明する。既に説明したようにブランクシート102の組み立てにより収納箱100が形成される。この組み立ての際、フラップ80における突出片86は、折目線86aを介して箱本体部60内へ折り曲げ挿入されることから、この挿入状態において背面板折目線42に対応する位置を示したものがフラップ80部分に記した背面板折目線42である。また、図6では、背面板折目線42と正面板折目線12とは、一直線上に示されることになるが、上述のように組み立てにより、異なる場所に配置されるものである。
【0024】
また、幅方向92における、正面板折目線12つまり本実施形態では最短位置部824と、最長位置部822との間の長さは、挿入片74と差込口82との良好な係合状態を維持するために重要になる寸法であり、本出願人による創意工夫及び試行錯誤によって求められた寸法である。本実施形態では、ほぼ1.0-1.5mmの範囲にある。また、最短位置部824と最長位置部822との間の長さは、差込口82及び挿入片74の形状あるいは材質により、適宜調整が必要である。尚、本実施形態では、挿入片74は、差込口82への挿入時において設計上、最長位置部822から1.2mmの位置つまり最短位置部824から0.3mmの位置を通過する。
【0025】
以上説明した、最長位置部822、最短位置部824、長さA、及び長さBに関する相互関係を有することで、収納箱100の箱本体部60を閉塞するために、蓋板70の挿入片74に幅方向92に力を加えることなく単に挿入片74を、フラップ80における差込口82に差し込んだときには、長さAが収納箱100の幅寸法に一致又はほぼ一致しているので、挿入片74は、差込口82における最短位置部824又はその近傍に、本実施形態では正面板折目線12又はその近傍に位置することになる。
【0026】
次に、図8を参照して、挿入片74について詳しく説明する。
本実施形態では、挿入片74は、大略台形形状を有し、蓋板折目線72付近から挿入片74の上底に向けてテーパー部77を有し、また本実施形態では、蓋板折目線72に隣接して長手方向94における両端部に、差込口82の側縁部826と係合して差込口82に挿入片74を係止させる切欠きで形成した係止部76を有する。長手方向94における係止部76間の寸法L3、つまり挿入片74の最長寸法は、差込口82の最長位置部822における最長寸法L1よりも僅かに大きく設計される。このような係止部76を設けることで、上述した、いわゆる「キノコロック」にて、挿入片74と差込口82とを係合させることができる。
一方、係止部76は、挿入片74の両端部に設けることに限定するものではなく、長手方向94における少なくとも一端部に設けてもよい。更には、係止部76は設けなくてもよい。即ち、上述した、最長位置部822、最短位置部824、長さA、及び長さBの相互関係を有することで、後述の係合動作にて説明するように、挿入片74は、物理的に差込口82における最短位置部824側へ付勢、押圧されることから、両者間の摩擦が従来構成に比べて大きく、キノコロックに依らずとも、より良好な係止状態が得られるからである。
【0027】
以下では、図9Aから図9H(総称して「図9」と記す場合もある)を参照して、差込口82の輪郭を形成する側縁部826の変形例、つまり差込口82の変形例、について説明を行う。ここで変形例は、以下の形態のみに限定するものではなく、上述した、最長位置部822、最短位置部824、長さA、及び長さBの相互関係を有する形態であればよい。
【0028】
本実施形態では上述したように、差込口82の側縁部826は、幅方向側縁部826aと長手方向側縁部826bとで形成し、幅方向92において最長位置部822を境界として異なる形状(例えば図7に示すように、左側を幅方向側縁部826a、右側を長手方向側縁部826b)で構成したが、図9Aに示すように、幅方向92において同じ形状としてもよい。この例では、差込口82は、幅方向92及び長手方向94において、最長位置部822及び上述の中央線827を対称軸として対称形状となる。また、図9B及び図9Cに示すように、長手方向側縁部826bを、弧状形状ではなく、矩形形状で形成してもよい。また図9Dに示すように、長手方向側縁部826bを、最長位置部822上に位置させて直線状としてもよい。尚、図9A図9Dの例では、差込口82は、長手方向94において中央線827を対称軸として対称形状となる。
【0029】
また、本実施形態では上述したように、最短位置部824は、ある長さの最短寸法L2を有したが、図9Eに示すように「点」であってもよい。尚、図9Eでは、幅方向側縁部826aは、例えば直線にて、長手方向側縁部826bは、直線状あるいは円弧状等の例にて記しているが、差込口82の側縁部826は、それぞれ中央線827を対称軸として長手方向94において対称形状とすることができる。
【0030】
また、幅方向側縁部826aを弧状形状で形成する場合、図9Fに示すように、上述した本実施形態とは逆向きの弧状としてもよい。このとき、長手方向側縁部826bの形状は、本実施形態あるいは上の変形例のいずれであってもよい。また図9Gに示すように、長手方向94における各幅方向側縁部826aの形状が長手方向94の両端側で異なってもよい。このときも、長手方向側縁部826bの形状は、本実施形態あるいは上の変形例のいずれであってもよい。
【0031】
さらにまた、図9Hに示すように、最短位置部824と正面板折目線12とは一致して配置しなくてもよく、最長位置部822は、最短位置部824に対して幅方向92において背面板折目線42側に位置すればよい。
【0032】
また、これらの変形例を組み合わせて構成することも可能である。
【0033】
以上のように構成される本実施形態における収納箱100における取り扱い操作、特に挿入片74と差込口82との係合動作について、以下に説明する。
既に説明したように、収納箱100の箱本体部60を閉塞するために、蓋板70の挿入片74に対して幅方向92に力を加えることなく単に挿入片74を差込口82に差し込んだときには、挿入片74は、差込口82における最短位置部824に、本実施形態では正面板折目線12に位置する。実際には、挿入片74が図8等に示すように先細り状を形成するようにテーパー部77を有し、また正面板10の開口14を介して使用者が挿入片74を幅方向92に押圧する場合もあり、挿入片74のテーパー部77は、図7に示すように、幅方向92において最短位置部824と最長位置部822との間の位置、例えば位置P、で幅方向側縁部826aに接して、差込口82に差し込まれる。
【0034】
さらに挿入片74を差込口82に差し込んで行くことで、差込口82の幅方向側縁部826aに接する、挿入片74の長手方向94における長さが大きくなっていくことから、挿入片74は、幅方向92において最長位置部822側へ移動し、最終的に最長位置部822にて、係止部76が差込口82に押し込まれる。
ここで、最長位置部822側への移動中もそうであるが、挿入片74が最長位置部822に位置する状態では、長さA>長さBの関係によって、蓋板70は撓んだ湾曲状態にある。よって挿入片74は、蓋板70が有する復元力により、幅方向92において最短位置部824側へ付勢されている。
【0035】
したがって、最長位置部822で係止部76が差込口82に差し込まれた後、挿入片74は、長手方向94に突出した係止部76を形成する切欠き76a部分が差込口82の幅方向側縁部826aを摺動しながら、最短位置部824側へ戻るように移動する。
そして切欠き76a部分における長手方向94における長さと、幅方向側縁部826aにおける長手方向94の長さとが一致する場所で、挿入片74は、移動が停止し、差込口82に対して、いわゆるキノコロックされる。
これにより、収納箱100は、蓋板70によって閉塞される。
【0036】
一方、収納箱100を、つまり蓋板70を開ける場合、使用者は、正面板10の開口14を通して指にて挿入片74を、幅方向92において最長位置部822側へ押圧する。これにより、挿入片74は、最長位置部822まで移動し、このとき、蓋板70を上に持ち上げることで、挿入片74の係止部76による差込口82との係合が外れ、挿入片74は、差込口82から抜ける。これにより蓋板70は、背面板折目線42を介して回動可能になり、収納箱100は、開かれる。
【0037】
このように、本実施形態の収納箱100によれば、上述した、最長位置部822、最短位置部824、長さA、及び長さBの相互関係を有することで、差込口82との挿入片74の抜き差しは、差込口82の最長位置部822にて行われ、挿入片74と差込口82との摩擦程度、あるいは係合程度が最も低い状態で、行うことができる。よって、例えば、挿入片74自体の破損、挿入片74と蓋板70との境界付近での破断などの発生を、従来に比べて低減することができる。したがって、挿入片74と差込口82とを複数回にわたり抜き差しを行った場合でも、良好な係合状態が維持することができる係合機構を提供することができる。
さらに、差込口82の最長位置部822にて差し込まれた挿入片74は、差込口82の最短位置部824側へ移動して、本実施形態では、いわゆるキノコロックされる。これにより、蓋板70が不用意に開いてしまうことを防止することができる。
【0038】
また、挿入片74が係止部76を有しない場合でも、差込口82への差し込み後においても、挿入片74は、最短位置部824側へ付勢されていることから、挿入片74と差込口82との摩擦が従来に比べて大きい。よって、蓋板70が不用意に開いてしまうことを防止することができる。
【0039】
以上説明した効果は、図9を参照して上述した、差込口82の変形例についても、同様に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、収納箱に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10…正面板、12…正面板折目線、20…右側面板、30…左側面板、
40…背面板、42…背面板折目線、50…底面板、60…箱本体部、
70…蓋板、72…蓋板折目線、74…挿入片、80…フラップ、
82…差込口、92…幅方向、94…長手方向、100…収納箱、
822…最長位置部、824…最短位置部、826…側縁部、
L1…最長寸法、L2…最短寸法、
A、B…長さ。
【要約】
【課題】収納箱における挿入片と差込口との複数回の抜き差しにおいても良好な係合状態が維持可能な係合機構を有する収納箱を提供する。
【解決手段】収納箱100において、フラップ80に設けられた差込口82は、幅方向92及び長手方向94に側縁部826を有する開口で構成されており、長手方向において最長寸法L1を有する最長位置部822と、最長寸法よりも小さい最短寸法L2を有する最短位置部824とを幅方向における異なる2箇所に有し、最長位置部は、最短位置部に対して幅方向において背面板折目線42側に位置し、幅方向に沿った測長において、蓋板70における背面板折目線と蓋板折目線72との間の長さAは、背面板折目線と差込口における最長位置部との間の長さBよりも大きい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10