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特許7094421無人航空機の制御システム、制御方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】無人航空機の制御システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 25/00 20060101AFI20220624BHJP
   B64C 27/00 20060101ALI20220624BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220624BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220624BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220624BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220624BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20220624BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20220624BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C27/00
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D47/08
G08B25/04 K
G08B25/10 A
G08B27/00 A
G08G5/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021083095
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】井沼 孝慈
(72)【発明者】
【氏名】田爪 敏明
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-189917(JP,A)
【文献】特開2009-288843(JP,A)
【文献】特開2010-54331(JP,A)
【文献】特開2013-89224(JP,A)
【文献】特開2015-177264(JP,A)
【文献】特開2021-12423(JP,A)
【文献】特開2003-162784(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107924608(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00
B64C 27/00
B64C 39/02
B64C 13/18
B64D 47/08
G08B 25/04
G08B 25/10
G08B 27/00
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声と光のうち少なくとも一方を発することにより、津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機を制御する制御システムであって、
予測津波情報を取得する予測津波情報取得手段と、
前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成手段と、
前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信手段と
を含む無人航空機の制御システム。
【請求項2】
前記飛行経路は、前記無人航空機が前記境界に沿って第1の方向に飛行する往路の飛行経路と、前記無人航空機が前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に前記境界に沿って飛行する復路の飛行経路とを含む
請求項1に記載される無人航空機の制御システム。
【請求項3】
前記往路の飛行経路と前記復路の飛行経路は前記境界に沿って同じ位置を通過する
請求項2に記載の無人航空機の制御システム。
【請求項4】
前記往路の飛行経路と前記復路の飛行経路は異なる位置を通過する
請求項2に記載の無人航空機の制御システム。
【請求項5】
前記飛行計画は前記境界に沿った位置でのホバリングを含む
請求項1乃至4のいずれかに記載される無人航空機の制御システム。
【請求項6】
前記飛行経路は、飛行の優先度が異なる第1位置と第2位置とを含み、
前記飛行計画生成手段は、前記第1位置での飛行速度と、前記第2位置での飛行速度とが異なるように前記飛行計画を生成する
請求項1乃至5のいずれかに記載される無人航空機の制御システム。
【請求項7】
前記飛行経路は、前記被災予想地域内において規定される第1部分経路と、前記境界に沿った前記飛行経路を含む第2部分経路とを含む
請求項1に記載される無人航空機の制御システム。
【請求項8】
前記第1部分経路において報知される案内と、前記第2部分経路において報知される案内は異なっている
請求項7に記載される無人航空機の制御システム。
【請求項9】
前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報に含まれる津波の予測到着時刻に基づいて前記飛行計画を生成する
請求項7に記載される無人航空機の制御システム。
【請求項10】
前記飛行計画生成手段は、前記無人航空機に搭載されている撮影部で取得された画像に基づいて、前記飛行計画を更新する
請求項7に記載される無人航空機の制御システム。
【請求項11】
複数の津波規模にそれぞれ対応する複数の候補経路が格納されている記憶手段をさらに含み、
前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報が示す津波の規模に対応する境界の候補経路に基づいて前記無人航空機の飛行計画を生成する
請求項1乃至10のいずれかに記載される無人航空機の制御システム。
【請求項12】
前記制御システムは、それぞれが前記報知部を有している第1無人航空機と第2無人航空機とを制御するシステムであり、
前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報に基づいて前記第1無人航空機に送信するための第1飛行計画を生成し、前記予測津波情報に基づいて前記第2無人航空機に送信するための第2飛行計画を生成する
請求項1乃至11のいずれかに記載される無人航空機の制御システム。
【請求項13】
前記制御システムは、前記複数の無人航空機の機体の視認性を示す情報が格納された記憶手段を含み、
前記飛行計画は、各無人航空機が飛行する高度情報を含み、
前記飛行計画生成手段は、前記機体に関する情報に基づいて前記高度情報を生成する
請求項1乃至12のいずれかに記載される無人航空機の制御システム。
【請求項14】
音声と光のうち少なくとも一方を発することにより、津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機の制御方法であって、
予測津波情報を取得する予測津波情報取得ステップと、
前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成ステップと、
前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信ステップと
を含む無人航空機の制御方法。
【請求項15】
音声と光のうち少なくとも一方を発することにより津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機を制御する装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
予測津波情報を取得する予測津波情報取得手段と、
前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成手段と、
前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信手段と
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人航空機(UAV)の制御システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、津波や土砂崩れなどの災害時に、無人航空機によって人々に避難を促進するシステムが開示されている。無人航空機は、被害予測地域を飛行し、災害の発生を知らせるメッセージをスピーカから発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-56899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
津波発生時には、どの位置(高さ)まで避難すれば良いかは避難対象者にとって重要である。ところが、特許文献1のシステムにおいては、そのことが避難対象者にとって分かりにくいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示で提案する無人航空機の制御システムは、音声と光のうち少なくとも一方を発することにより、津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機を制御する制御システムである。この制御システムは、予測津波情報を取得する予測津波情報取得手段と、前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成手段と、前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信手段とを含む。
【0006】
(2)前記飛行経路は、前記無人航空機が前記境界に沿って第1の方向に飛行する往路の飛行経路と、前記無人航空機が前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に前記境界に沿って飛行する復路の飛行経路とを含んでよい。
【0007】
(3)前記往路の飛行経路と前記復路の飛行経路は前記境界に沿って同じ位置を通過してよい。
【0008】
(4)前記往路の飛行経路と前記復路の飛行経路は異なる位置を通過してよい。
【0009】
(5)前記飛行計画は前記境界に沿った位置でのホバリングを含んでよい。
【0010】
(6)前記飛行経路は、飛行の優先度が異なる第1位置と第2位置とを含み、前記飛行計画生成手段は、前記第1位置での飛行速度と、前記第2位置での飛行速度とが異なるように前記飛行計画を生成してよい。
【0011】
(7)前記飛行経路は、前記被災予想地域内において規定される第1部分経路と、前記境界に沿った前記飛行経路を含む第2部分経路とを含んでよい。
【0012】
(8)前記第1部分経路において報知される案内と、前記第2部分経路において報知される案内は異なっていてよい。これによると、各部分経路に適した案内を報知できる。
【0013】
(9)前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報に含まれる津波の予測到着時刻に基づいて前記飛行計画を生成してよい。
【0014】
(10)前記飛行計画生成手段は、前記無人航空機に搭載されている撮影部で取得された画像に基づいて、前記飛行計画を更新してよい。
【0015】
(11)前記制御システムは、複数の津波規模にそれぞれ対応する複数の候補経路が格納されている記憶手段をさらに含んでよい。前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報が示す津波の規模に対応する境界の候補経路に基づいて前記無人航空機の飛行計画を生成してよい。
【0016】
(12)前記制御システムは、それぞれが前記報知部を有している第1無人航空機と第2無人航空機とを制御するシステムである。前記飛行計画生成手段は、前記予測津波情報に基づいて前記第1無人航空機に送信するための第1飛行計画を生成し、前記予測津波情報に基づいて前記第2無人航空機に送信するための第2飛行計画を生成してよい。
【0017】
(13)前記制御システムは、前記複数の無人航空機の機体の視認性を示す情報が格納された記憶手段を含んでよい。前記飛行計画は、各無人航空機が飛行する高度情報を含んでよい。前記飛行計画生成手段は、前記機体に関する情報に基づいて前記高度情報を生成してよい。
【0018】
(14)本開示で提案する無人航空機の制御方法は、音声と光のうち少なくとも一方を発することにより、津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機の制御方法である。この制御方法は、予測津波情報を取得する予測津波情報取得ステップと、前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成ステップと、前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信ステップとを含む。
【0019】
(15)本開示で提案するプログラムは、音声と光のうち少なくとも一方を発することにより津波からの避難を案内する報知部を有している無人航空機を制御する装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムある。このプログラムは、予測津波情報を取得する予測津波情報取得手段と、前記予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との境界に沿った飛行経路を含む前記無人航空機の飛行計画を生成する飛行計画生成手段と、前記飛行計画を前記無人航空機に送信する通信手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本開示で提案する制御システム、制御方法、及びプログラムによると、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示で提示する制御システムと無人航空機と津波予測システムとで構成されるシステムのブロック図である。
図2】無人航空機のハードウェアを示すブロック図である。
図3A】無人航空機の動作の例を示す概略図である。
図3B】無人航空機の動作の例を示す概略図である。
図3C】無人航空機の動作の例を示す概略図である。
図3D】無人航空機の動作の例を示す概略図である。
図3E】無人航空機の動作の例を示す概略図である。
図4】制御システムの機能を示すブロック図である。
図5A】安全境界に沿った飛行経路を含む飛行計画の基礎となる飛行経路基礎情報の例を示す図である。
図5B】津波規模-経路関係情報の例を示す図である。
図5C】被災予想地域内の飛行経路を含む飛行計画の基礎となる飛行経路基礎情報の例を示す図である。
図5D】機体情報の例を示す図である。
図5E】テンプレート情報の例を示す図である。
図5F】案内メッセージ情報の例を示す図である。
図6A】飛行計画生成部が生成する飛行計画の例を示す図である。
図6B】飛行計画生成部が生成する飛行計画の別の例を示す図である。
図7A】制御システムにおいて実行される処理の例を示す図である。
図7B】制御システムにおいて実行される処理の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示で提案する無人航空機の制御システムの一例について説明する。以下では、無人航空機をUAVと称する。
【0023】
制御システム10はネットワークを介して複数のUAV1a・1bと接続されている。また、制御システム10は津波予測システム200と接続されている。ネットワークは、移動体通信網及びインターネットで構成される。
【0024】
[津波予測システム]
図1で示すように、津波予測システム200は、予測装置201と、観測施設204とを有している。観測施設204は、例えば公共機関が海洋や島に設置する地震計を有している。観測施設204は、地震計で計測した揺れや位置を表す情報(地震情報)を、例えば衛星通信を介して、予測装置201に送信する。津波予測システム200は、複数の観測施設204を有してよい。予測装置201は、受信した地震情報に基づいて、予測津波情報を生成する。予測津波情報は、津波が到来すると予想される沿岸地域、予想される津波規模、及び沿岸への津波の予測到達時刻を含む。予測装置201は、予測津波情報を、ネットワークを介して制御システム10に送信する。予測装置201は、1又は複数のサーバーコンピュータによって構成される。
【0025】
[制御システム]
制御システム10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを有している。制御部11は、例えば、少なくとも1つのマイクロプロセッサを含む。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。記憶部12は、例えば、Random Access Memory(RAM)や、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)などを有している。通信部13は、有線通信又は無線通信用の通信インタフェースを含む。通信部13は、ネットワークを介してデータ通信を行う。本開示において、制御システム10は、津波予測システム200から予測津波情報を通信部13を通して受信し、その予測津波情報に基づいて複数のUAV1a・1bのそれぞれについて飛行計画を生成し、通信部13を通して飛行計画をUAV1a・1bに送信する。図1では、2つのUAV1a・1bが示されているが、制御システム10が制御するUAVの数は1つでもよいし、2つより多くてもよい。
【0026】
[無人航空機]
図2は、UAV1a・1bが有しているハードウェアを示すブロック図である。図2に示すように、各UAV1a・1bは、制御部9、記憶部2、通信部3、撮影部4、センサ群5、駆動部6、及び報知部7を含む。
【0027】
センサ群5は、飛行位置センサ及び高度センサを有している。飛行位置センサは、例えば、GNSS(global navigation satellite system)センサである。高度センサは、例えば気圧センサであり、UAV1の飛行高度に応じた信号を出力する。センサ群5は、さらに、加速度センサや角速度センサで構成される姿勢センサ、地磁気センサを有してもよい。また、飛行位置センサは、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサを有してもよい。この場合、後述する飛行経路は、GNSSセンサの出力に基づいて算出可能な位置(緯度、経度)で特定されるのではなく、UAV1a・1bが飛行する地域に予め規定された座標系での座標で特定されてよい。
【0028】
駆動部6は、電動モータと、電動モータの駆動により回転するロータ(ブレード)とを有している。また、駆動部6は、制御部11から出力される信号に応じた電力を電動モータに供給する駆動回路を有している。
【0029】
制御部9は、例えば、少なくとも1つのマイクロプロセッサを含む。制御部9は、記憶部2に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。制御システム10から受信する飛行計画は、UAV1a・1bが飛行すべき経路(飛行経路)を含んでいる。制御部9は、センサ群5の出力に基づいて自機の現在位置を検知し、UAV1a・1bが飛行経路に沿って飛行するように駆動部6に制御信号を出力する。記憶部2は、例えば、RAMや、ROM、ハードディスクドライブ、SSDなどを有している。通信部3は、有線通信又は無線通信用の通信インタフェースを含む。通信部3は、ネットワークを介して制御システム10との間でデータ通信を行う。
【0030】
撮影部4は、1又は複数のカメラを有し、UAV1の下方の画像を撮影する。UAV1の飛行中に撮影部4によって取得された画像データは、通信部3を通して制御システム10に送信される。撮影部4は、360度カメラであってもよいし、画角が360度よりも小さな複数のカメラであってもよい。
【0031】
報知部7は、音声と光のうちの少なくとも一方によって、津波からの避難を案内する。本明細書において、「避難を案内する」とは、避難すべき場所や、津波の予測到達時刻などを音声と光のうちの一方で示すことである。報知部7は、望ましくは、避難すべき場所や、津波の予測到達時刻などの情報を音声で報知するスピーカを含んでいる。また、報知部7は、LEDを含む発光部を有してもよい。UAV1a・1bは、避難すべき場所の近くを飛行しながら(具体的には、後述する安全境界)を飛行しながら、発光部を発光させることによって、人々に避難すべき場所を案内できる。
【0032】
[無人航空機の動き]
図3A図3Fは、制御システム10によって制御されるUAV1a・1bの動作の例を示す概略図である。これらの図では、沿岸地域の例が模式的に示されている。これらの図に示す例では、沿岸地域に住宅地区と商業地区とが存在する。また、沿岸から離れた内陸部に高台が存在する。沿岸地域にはUAV1a・1bの待機施設Sa・Sbが設置される。待機施設Sa・Sbは住宅地区の近くや、住宅地区内に設置されてよいし、高台に設置されてもよい。
【0033】
図3Aにおいて6本の破線L1a~L3a・L1b~L3bが示されている。各破線L1a~L3a・L1b~L3bは、津波が沿岸地域に到来したときに被災すると予測される地域(被災予想地域)と、被災を免れると予想される地域(安全地域)との境界を示す。破線L1a~L3a・L1b~L3bよりも内陸側(高台側)が安全地域である。(以下では、この境界を「安全境界」と称する。)破線L1a・L1bは、例えば、比較的小規模の津波が沿岸地域に到来したとの安全境界であり、破線L2a・L2bは、例えば、中規模の津波が沿岸地域に到来したときの安全境界であり、破線L3a・L3bは、例えば、大規模の津波が沿岸地域に到来したときの安全境界である。安全境界L2a・L2bは、それぞれ安全境界L1a・L1bよりも高台寄りに規定され、安全境界L3a・L3bは、それぞれ安全境界L2a・L2bよりも高台寄りに規定されている。安全境界が対応づけられる津波規模は3段階でなく、2段階でもよいし、3段階より多くてもよい。
【0034】
制御システム10は、津波予測システム200から予測津波情報を受信すると、各UAV1a・1bについて飛行計画を生成する。飛行計画は、例えば、飛行経路や、飛行速度など、各UAV1a・1bの飛行時の動作を規定する情報を含む。制御システム10が生成する飛行計画は、予測津波規模に対応する安全境界L1a~L3a・L1b~L3bに沿った飛行経路を含む。
【0035】
図3Aで示す例では、安全境界L1aに沿った飛行経路R1aを含む飛行計画が第1UAV1aについて生成され、安全境界L1bに沿った飛行経路R1bを含む飛行計画が第2UAV1bについて生成されている。飛行経路R1a・R1bは、例えば、高台の斜面に沿って規定される。UAV1a・1bは制御システム10から飛行計画を受信すると、その飛行計画に従って飛行する。この飛行によると、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる。また、避難すべき方向(避難の目印)を避難対象者に案内できる。第1UAV1aは、例えば、待機施設Saから安全境界L1aに向かって飛行し、その後、飛行経路R1aに沿って飛行する。第2UAV1bは、例えば、待機施設Sbから安全境界L1bに向かって飛行し、その後、飛行経路R1bに沿って飛行する。UAV1a・1bは飛行計画に従って飛行しつつ、津波からの避難を避難対象者に案内するとよい。具体的には、UAV1a・1bは、津波の予測到達時刻や、避難所名を音声で避難対象者に報知するとよい。
【0036】
安全境界L1a~L3a・L1b~L3bは、例えば、公共機関(国の行政機関や地方公共団体など)が発表している情報に基づいて特定されてよい。このような情報の例として、ハザードマップがある。ハザードマップでは、津波によって被災する恐れのある地域が、津波の規模に応じて推定されている。制御システム10の構築者は、制御システム10の構築過程において、記憶部12に格納する基礎情報(例えば、後述する飛行経路基礎情報(図5A)や津波規模-経路関係情報(図5B))を、安全境界を参照して作成してよい。
【0037】
図3BはUAV1a・1bの飛行経路の別の例を示す図である。同図に示すように、UAV1a・1bは安全境界L1a~L3a・L1b~L3bに沿って飛行する前に、被災予想地域を飛行してよい。図3Bで示す例において、第1UAV1aは被災予想地域内にある住宅地区を飛行し、第2UAV1bは、被災予想地域内にある2つの商業地区を飛行している。UAV1a・1bは、被災予想地域内で予め規定された地区を1又は複数回に亘って周回してもよい。各UAV1a・1bは被災予想地域を飛行しているとき、避難対象者に避難を案内してもよい。例えば、各UAV1a・1bは被災予想地域を飛行しているとき、津波の予測到達時刻や、避難所を音声で報知してよい。
【0038】
また、UAV1a・1bは、被災予想地域内に規定された地区(図3Bの例において住宅地区や商業地区)から安全境界L1a~L3a・L1b~L3bに向けて飛行する過程で、避難対象者を安全境界まで先導してもよい。例えば、UAV1a・1bは、避難対象者が通るべき避難経路(避難用に適した道)に沿って飛行してよい。図3Bで示す例において、第1UAV1aは、住宅地区から安全境界L1aに向けて飛行する過程で、避難経路(避難用に適した道)に沿って飛行している。(以下では、この飛行を「先導飛行」と称する。)先導飛行における飛行速度は、住宅地区における飛行速度、或いは、安全境界に沿った飛行の速度と異なっていてよい。先導飛行における飛行速度は、人間の歩行速度に応じて設定されてよい。
【0039】
第1UAV1aは安全境界L1a・L2a・L3aに沿った経路を往復してよい。すなわち、第1UAV1aの飛行計画が含む飛行経路R1aは、図3Cで示すように、安全境界L1aに沿った往路の飛行経路(順方向の飛行経路)と、安全境界L1aに沿った復路の飛行経路(逆方向の飛行経路)とを含んでよい。第1UAV1aは安全境界L1aに沿った往路の飛行と復路の飛行のそれぞれを複数回実行してよい。この飛行によると、避難対象者は、避難すべき方向や、避難時に到達するべき位置を適切に把握できる。第1UAV1aと同様に、第2UAV1bは安全境界L1b・L2b・L3bに沿った往路の飛行と復路の飛行のそれぞれを複数回実行してよい。
【0040】
このように飛行計画が往路の飛行経路と復路の飛行経路とを含む場合、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、図3Cで示すように、同じ位置を通過してよい。(図3Cでは往路の飛行経路と復路の飛行経路は2本の平行な線で表されている。)
【0041】
図3Cの例とは異なり、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、安全境界の内側(海側)と、安全境界の外側(内陸側)とに交互に進入するように規定されてよい。すなわち、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、波状に規定されてもよい。
【0042】
また、図3Dで示すように、飛行計画が含む飛行経路R1aが往路の飛行経路(図3Dにおいて右方向の経路)と復路の飛行経路(図3Dにおいて左方向の経路)とを含む場合、往路の飛行経路と復路の飛行経路は異なる位置を通過してよい。この場合、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、安全境界L1aと交差するように規定されていてよい。
【0043】
また、UAV1a・1bは、津波規模に応じた安全境界に沿った飛行経路の一部分を優先的に飛行してもよい。図3C及び図3Dで示す例において、第1UAV1aは、安全境界L1aに沿った飛行経路R1aにおいて避難所に近い位置を優先的に飛行している。具体的には、第1UAV1aは、例えば、飛行経路の一部の位置において、他位置に比して低い速度で飛行してよい。(図3C及び図3Dでは、優先的に飛行する位置が「優先飛行範囲」として示されている。)この飛行によれば、避難すべき方向を避難対象者に、より効果的に案内できる。
【0044】
また、制御システム10が生成する飛行計画は、安全境界に沿った位置でのホバリングを含んでもよい。例えば、第1UAV1aは、図3Eで示すように、安全境界L1aの上空で停止していてもよい。このとき、第1UAV1aの位置は、避難所の近くであってよい。
【0045】
なお、本明細書において「安全境界に沿った飛行経路」の一例は、図3Cで示すように安全境界と平行に規定される飛行経路である。しかしながら、「安全境界に沿った飛行経路」はこれに限られず、図3Dで示すように、安全境界と交差するように規定されていてもよい。この場合、飛行経路の一部は、安全境界より内陸側に規定され、他の一部は安全境界より海側に規定されてよい。また、飛行経路と安全境界との距離は、避難者がUAV1a・1bの近くが安全であると認識できる距離であれば、特に限定されない。例えば、飛行経路と安全境界との距離は、数十メートルであってもよいし、数百メートルほどであってもよい。
【0046】
[制御システムの機能]
以下では、図3A図3Eを参照しながら説明したUAV1a・1bの飛行を実現するために制御システム10が実行する処理の例を説明する。
【0047】
図4は制御システム10が有する機能を示すブロック図である。制御システム10は、その機能として、予測津波情報取得部11a、飛行計画生成部11c、案内生成部11d、及び飛行監視部11eを有している。これらは、記憶部12に格納されているプログラムを実行する制御部11によって実現される。記憶部12には、制御部11がプログラムを実行する際に参照する情報が格納されている。具体的には、図4で示すように、津波規模-経路関係情報(図5B)、安全境界に沿った飛行経路を含む飛行計画の基礎となる飛行経路基礎情報(境界ウェイポイントリスト、図5A)と、被災予想地域内での飛行経路を含む飛行計画の基礎となる飛行経路基礎情報(域内ウェイポイントリスト、図5C)と、機体情報(図5D)と、テンプレート情報(図5E)、案内メッセージ情報(図5F)とが記憶部12に格納されている。
【0048】
[予測津波情報取得部]
予測津波情報取得部11aは津波予測システム200が送信した予測津波情報を取得する。予測津波情報は、上述したように、予測津波規模、予測到達地域、及び予測到達時刻を含む。予測津波規模は、例えば、3段階や5段階など複数段階で、津波規模を表す。これとは異なり、予測津波規模は津波の高さを表す数値(2メートルや2.5メートルなど)であってもよい。全国の沿岸には複数の予報区が規定される。例えば、ABC県沿岸や、DEF半島沿岸、GHI地方北部沿岸などが規定されている。予測津波情報が含んでいる予測津波規模は、発生した地震規模に応じて、各予報区について算出される。予測到達地域は、予報区の名称や、予報区の識別情報である。
【0049】
[飛行計画生成部]
飛行計画生成部11cは、各UAV1a・1bについて飛行計画を生成する。飛行計画生成部11cは、例えば、記憶部12に格納されている飛行経路基礎情報と「規模-経路関係情報」とを参照して、飛行計画を生成する。
【0050】
図5Aは、安全境界に沿った飛行を実現するための飛行経路基礎情報の例を示す図である。飛行経路基礎情報は、例えば、各UAV1a・1bが飛行する複数の候補経路をそれぞれ表す複数のリストを有している。このリストでは、図5Aに示すように、UAV1a・1bが通過すべき位置(緯度、経度、及び高度)が順番に並んでいる。各リストでは、UAV1a・1bが通過すべき位置に対応して飛行速度が規定されてよい。以下では、リストにある各位置(緯度、経度、及び高度)をウェイポイントと称する。また、このリストのそれぞれを「境界ウェイポイントリスト」と称する。
【0051】
図3Aを参照して説明したように、第1UAV1aのための候補経路として、複数の安全境界L1a・L2a・L3aに沿った飛行経路があり、第2UAV1bのための候補経路として、複数の安全境界L1b・L2b・L3bに沿った飛行経路がある。飛行経路基礎情報は、複数の安全境界L1a~L3a・L1b~L3bに沿った飛行経路をそれぞれ示す複数の境界ウェイポイントリストを含んでいる。
【0052】
図5Bは、「津波規模-経路関係情報」の例を示す図である。同図に示すように、「津波規模-境界関係情報」では、津波規模(例えば、小規模、中規模、大規模)と、飛行経路R1a~R3a・R1b~R3bとが対応づけられている。例えば、小規模の津波に対しては、飛行経路R1a・R1bが対応づけられ、中規模の津波に対しては、飛行経路R2a・R2bが対応づけられる。
【0053】
飛行計画生成部11cは選択部11b(図4参照)を有している。選択部11bは予測津波規模に基づいて、UAV1a・1bの飛行経路を選択する。すなわち、選択部11bは、飛行経路基礎情報が有している複数の候補経路(複数の境界ウェイポイントリスト)から、予測津波規模に対応する経路(境界ウェイポイントリスト)を選択する。例えば、選択部11bは、予想される津波規模が小規模である場合、第1UAV1aについては安全境界L1aに沿った飛行経路R1aを表す境界ウェイポイントリストを選択し、第2UAV1bについては安全境界L1bに沿った飛行経路R1bを表す境界ウェイポイントリストを選択する。
【0054】
飛行計画生成部11cは、選択された経路(選択された境界ウェイポイントリスト)に基づいて、各UAV1a・1bについて飛行計画を生成する。飛行計画生成部11cは、安全境界に沿った往路の飛行経路(順方向の飛行経路)と、安全境界に沿った復路の飛行経路(逆方向の飛行経路)とを含む飛行計画を生成する。
【0055】
図5Aで示すように、境界ウェイポイントリストは、例えば、往路の飛行経路を示すウェイポイントと、復路の飛行経路を示すウェイポイントとを含む。往路の飛行経路を示すウェイポイントと、復路の飛行経路を示すウェイポイントは、反対の順番で並んでいる。この境界ウェイポイントリストを利用することによって、飛行計画生成部11cが生成する飛行計画は往路と復路とを含むこととなる。
【0056】
図6Aは、飛行計画生成部11cが生成する飛行計画の例を示す図である。飛行計画生成部11cは、例えば、複数の同じ境界ウェイポイントリストを連続させることで、飛行計画を生成する。より具体的には、UAV1a・1bが飛行経路を往復する回数だけ境界ウェイポイントリストを連続させて、各UAV1a・1bについて1つの飛行計画を生成する。飛行計画生成部11cのこの処理によって、図3Aを参照しながら説明した、往路の飛行経路と復路の飛行経路とを含む飛行計画が生成される。
【0057】
飛行計画生成部11cは、津波の予測到達時刻に基づいて飛行計画を生成してよい。例えば、飛行計画生成部11cは、各UAV1a・1bが飛行経路を往復する回数、すなわち境界ウェイポイントリストを連続させる回数を、津波の予測到達時刻に基づいて算出してよい。より具体的には、各UAV1a・1bの飛行経路への予定到着時刻から津波の予測到達時刻までの時間を、各UAV1a・1bが飛行経路の往復に要する時間で除算した値に基づいて、連続させる境界ウェイポイントリストの数を算出してよい。
【0058】
第1UAV1aの飛行経路と第2UAV1bの飛行経路は、共通の海岸N(図3A参照)に沿って規定される。第1UAV1aの飛行経路と第2UAV1bの飛行経路は相互に重複しないよう規定される。すなわち、第1UAV1aのための複数の境界ウェイポイントリスト(図5A)にあるウェイポイントと、第2UAV1bのための複数の境界ウェイポイントリストにあるウェイポイントは、重複していない。
【0059】
往路の飛行経路と復路の飛行経路は、同じ位置を通過してよい。すなわち、図5Aで示す各境界ウェイポイントリストにおいて、往路を示す複数のウェイポイントと、復路を示す複数のウェイポイントは同じであってよい。この場合、図3Cを参照しながら説明したように、往路の飛行経路と復路の飛行経路のそれぞれは、安全境界L1a~L3a・L1b~L3bと平行であってよい。
【0060】
これとは異なり、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、異なる位置を通過してもよい。すなわち、図5Aで示す各境界ウェイポイントリストにおいて、往路を示す複数のウェイポイントと、復路を示す複数のウェイポイントは、異なっていてよい。この場合、図3Dを参照しながら説明したように、往路と復路の飛行経路は安全境界L1a~L3a・L1b~L3bと交差するよう規定されていてよい。
【0061】
図6Aで示すように、飛行計画の一例では、各ウェイポイントについて、緯度、経度、高度、及び速度が規定されている。また、図6Aで示す飛行計画では、各ウェイポイントについて、後述する案内メッセージIDが対応づけられている。飛行計画で規定される要素は、これに限定されない。例えば、各ウェイポイントにおいて、機体の向きが規定されてもよい。
【0062】
図5Aで示すように、境界ウェイポイントリストでは、一部のウェイポイントでは、他のウェイポイントよりも低い飛行速度が設定されている。(図5Aでは、飛行速度が低い複数のウェイポイントが優先飛行範囲として示されている。)このような境界ウェイポイントリストを使用すると、飛行計画生成部11cが生成する飛行計画においても、一部のウェイポイントでの飛行速度は他のウェイポイントでの飛行速度よりも低くなる。これによって、図3C及び図3Dを参照しながら説明したように、UAV1a・1bは、優先度が高い位置での飛行速度は、他の位置での飛行速度より低くなる。そして、避難対象者に対して避難所を効果的に案内できる。
【0063】
図3Eを参照しながら説明したように、飛行計画は、安全境界に沿った位置でのホバリングを含んでよい。この場合、安全境界に沿った飛行を実現するための飛行経路基礎情報は、津波規模にそれぞれ対応づけられている複数の位置(ウェイポイント)であってもよい。例えば、飛行経路基礎情報は、小規模、中規模、大規模にそれぞれ対応づけられている3つウェイポイントを、複数のUAV1a・1bのそれぞれについて有していてよい。選択部11bは、予測津波情報(より具体的には、予測津波規模)に基づいて、UAV1a・1bが飛行(ホバリング)すべきウェイポイントを選択してよい。
【0064】
記憶部12には、安全境界に沿った飛行を実現するための飛行経路基礎情報(図5A参照)だけでなく、被災予想地域内の飛行を実現するための飛行経路基礎情報が格納されていてよい。飛行計画生成部11cは、この2つの飛行基礎情報を参照して飛行計画を生成してよい。この飛行計画は、被災予想地域内に規定される飛行経路(第1部分経路)と、安全境界に沿った飛行経路(第2部分経路)とを含んでもよい。すなわち、UAV1a・1bは、図3Bで示したように、被災予想地域内に規定された地区(図3Bにおいて住宅地区や、商業地区)を飛行し、その後に、選択部11bによって選択された飛行経路を飛行してもよい。
【0065】
図5Cは、被災予想地域内の飛行を実現するための飛行経路基礎情報の例を示す図である。この飛行経路基礎情報は、例えば、各UAV1a・1bの飛行経路を示す複数のリストを有している。図5Aで説明した飛行経路基礎情報と同様、このリストでは、UAV1a・1bが通過すべき位置(緯度、経度、及び高度)が順番で並んでいる。各リストでは、UAV1a・1bの通過位置(ウェイポイント)に対応して飛行速度が規定されている。(以下では、このリストを「域内ウェイポイントリスト」と称する。)
【0066】
複数の域内ウェイポイントリストは、制御システム10が制御する複数のUAV1a・1bにそれぞれ予め対応づけられていてよい。予測津波情報取得部11aが予測津波情報を取得すると、飛行計画生成部11cは、飛行経路基礎情報を構成する複数の域内ウェイポイントリストから、複数のUAV1a・1bのそれぞれについて域内ウェイポイントリストを選択する。
【0067】
図6Bは、飛行計画生成部11cが生成する飛行計画の例を示す図である。この図に示すように、飛行計画生成部11cは、域内ウェイポイントリスト(図5C参照)と、選択部11bによって選択された境界ウェイポイントリスト(図5A参照)とを利用して、各UAV1a・1bについて飛行計画を生成する。例えば、飛行計画生成部11cは、域内ウェイポイントリスト(第1部分経路)と、境界ウェイポイントリスト(第2部分経路)とを合成してよい。飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bが境界に沿った飛行経路を往復する回数だけ境界ウェイポイントリストを連続させてよい。飛行計画生成部11cのこの処理によって、図3Bを参照しながら説明した、被災予想地域内に規定された地区を飛行し、その後に、安全境界に沿って飛行するというUAV1a・UAV1bの動きが実現できる。
【0068】
飛行計画生成部11cは、津波の予測到達時刻に基づいて飛行計画を生成してもよい。例えば、飛行計画生成部11cは、津波の予測到達時刻まで時間的な余裕がある場合に、域内ウェイポイントリスト(図5C)で示す飛行経路を含む飛行計画(図6B)を生成してよい。一方、予想津波到着時刻まで時間的な余裕がない場合、飛行計画生成部11cは、域内ウェイポイントリスト(図5C)で示す飛行経路を含まず、安全境界に沿った飛行経路だけを含む飛行計画(図6A)を生成してよい。
【0069】
例えば、所定時刻(例えば、津波予測システム200から予測津波情報を受信した時刻)から津波の予測到達時刻までの時間(T2)と、被災予想地域内での飛行に要する時間(T1)との差が閾値(Tth)よりも大きい場合、すなわち、T2-T1>Tthが成立する場合に、飛行計画生成部11cは、域内ウェイポイントリスト(図5C)で示す飛行経路を含む飛行計画(図6B)を生成してよい。反対に、T2-T1>Tthが成立しない場合、飛行計画生成部11cは、安全境界に沿った飛行経路だけを含む飛行計画(図6A)を生成してよい。
【0070】
上述した閾値(Tth)は、UAV1a・1bの初期位置や、UAV1a・1bの機種に応じて異なっていてよい。(UAV1a・1bの初期位置は、図3A及び図3Bで示す例において待機施設Sa・Sbの位置である。)例えば、被災予想地域内に規定されている飛行地区(図3A及び図3Bの例において住宅地区や商業地区)とUAV1a・1bの初期位置との距離が小さい場合には、その距離が大きい場合に比して、閾値(Tth)は小さくてよい。また、UAV1a・1bの最高速度が高い場合には、低い場合に比して、閾値(Tth)は小さくてよい。
【0071】
図5Cで示すように、各域内ウェイポイントリストは、被災予想地域内の飛行経路から、安全境界に沿った飛行経路(例えば、図3Cで示す経路R1a・R1b)に向かう経路(先導飛行経路)を含んでよい。このような先導飛行経路は、避難対象者が通るのに適した避難経路(避難道)に沿って規定されていてよい。この域内ウェイポイントリストによると、図3Cを参照しながら説明したように、UAV1a・1bは、被災予想地域内の避難対象者を安全境界に向けて先導できる。
【0072】
図5Cで示すように、先導飛行経路を示す位置に対応づけられている飛行速度は、他の飛行経路について規定されている飛行速度とは異なっていてよい。例えば、先導飛行経路での飛行速度は、他の飛行経路(例えば、安全境界に沿った飛行経路)での飛行速度より低くてよい。こうすることで、UAV1a・1bは、被災予想地域内の飛行経路から、安全境界に沿った飛行経路に向かう先導飛行において、避難対象者を適切に先導できる。
【0073】
図5Cで示すように、域内ウェイポイントリストにおいても、一部のウェイポイントでは、他のウェイポイントよりも低い飛行速度が設定されてよい。(図5Cでは、飛行速度が低い複数のウェイポイントが優先飛行範囲として示されている。)このような域内ウェイポイントリストを利用するので、図6Aで示すように、飛行計画において一部のウェイポイントでの飛行速度は他のウェイポイントでの飛行速度よりも低くなる。すなわち、UAV1a・1bは、被災予想地域内の一部の位置では、他の位置よりも優先的に飛行することとなる。飛行速度の低い位置は、例えば、避難対象者が多いと推定される地区であってよい。こうすることによって、避難対象者に対して避難を効果的に案内できる。
【0074】
記憶部12には、UAV1a・1bについての情報である機体情報が格納されている。図5Dは機体情報の例を示す図である。機体情報は、図5Dで示すように、UAV1a・1bの視認性(目立ち度合い)を表す情報を含んでよい。図5Dで示す例では、UAV1a・1bの視認性が3段階で示されている。視認性のレベルは、UAV1a・1bの色やサイズに基づいて予め設定されてよい。
【0075】
飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bの視認性に基づいて、飛行計画を生成してもよい。例えば、飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bの視認性に基づいて、上述した境界ウェイポイントリスト(図5A)で特定されている飛行高度や域内ウェイポイントリスト(図5C)で特定されている飛行高度を補正してよい。例えば、視認性が相対的に高いUAV1a・1bについては、高度が高くなる方向に飛行高度を補正してよい。反対に、視認性が相対的に低いUAV1a・1bについては高度が低くなる方向に飛行高度を補正してよい。図6A及び図6Bで示す例では、境界ウェイポイントリスト(図5A)で特定されている飛行高度や域内ウェイポイントリスト(図5C)で特定されている飛行高度に、補正値としてαが加算されている。
【0076】
記憶部12に格納されている機体情報は、図5Dで示すように、UAV1a・1bが設置されている施設(待機施設)を表す情報(待機施設ID)を含んでいる。記憶部12は、各待機施設IDの位置情報(ウェイポイント)も有している。飛行計画生成部11cは、待機施設IDから割り出される位置情報を利用して、飛行計画を生成してよい。例えば、飛行計画生成部11cは、待機施設から被災予想地域内の飛行経路までの経路を含む飛行計画(図6B)、或いは、待機施設から安全境界に沿った飛行経路までの経路を含む飛行計画(図6A)を生成する。
【0077】
記憶部12に格納されている機体情報は、図5Dで示すように、UAV1a・1bが帰還すべき施設(帰還施設)を表す情報(帰還施設ID)を含んでもよい。記憶部12は、各帰還施設IDの位置情報(ウェイポイント)も有している。飛行計画生成部11cは、帰還施設IDから割り出される位置情報を利用して、飛行計画を生成してよい。例えば、飛行計画生成部11cは、安全境界に沿った飛行経路から帰還施設までの経路を含む飛行計画を生成してよい。待機施設と帰還施設は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
[案内生成部]
記憶部12には、UAV1a・1bが報知する案内の基礎となる情報(テンプレート情報)が格納されている。図5Eはテンプレート情報の例を示す図である。同図に示すように、テンプレート情報では、メッセージIDに案内メッセージのテキスト情報が対応づけられている。図5Eで示す例においては、「メッセージID:101」のテキスト情報が、例えば、津波の予測到達時刻と予測到達地域とを報知するためのテンプレートである。案内生成部11dは、「メッセージID:101」のテンプレートと、予測津波情報に含まれる津波の予測到達時刻情報と、予測到達地域情報とに基づいて、案内メッセージ(テキスト情報)を生成する。
【0079】
また、記憶部12には、UAV1a・1bが報知する案内メッセージが格納されている。図5Fは、案内メッセージの例を示す図である。図5Fで示すように、案内メッセージは、例えば、避難所を案内するメッセージ(テキスト情報)を含む。案内メッセージは、避難の方向を案内するメッセージ(テキスト情報)を含んでもよい。図5Fで示す例では、高台の名称によって避難の方向が示されている。案内生成部11dは、これらの案内メッセージ(テキスト情報)から音声データを生成する。
【0080】
記憶部12には、UAV1a・1bの飛行経路と、案内メッセージIDとを対応づける情報が格納されている。例えば、図5A及び図5Cで示すように、飛行経路基礎情報において、飛行経路を示す複数のウェイポイントと案内メッセージIDとが対応づけられてよい。図6A及び図6Bで示すように、飛行計画生成部11cが生成する飛行計画において、飛行経路を示すウェイポイントとメッセージIDとが対応づけられてよい。
【0081】
飛行計画生成部11cは、生成した飛行計画を、通信部13を通してUAV1a・1bに送信する。また、案内生成部11dは、生成したメッセージの音声データを、通信部13を通してUAV1a・1bに送信する。UAV1a・1bは、飛行計画に従って飛行しながら、案内メッセージIDのメッセージ(音声データ)を報知部(スピーカ)7から出力する。
【0082】
なお、案内メッセージは、上述した例に限られない。例えば、案内メッセージは、自機の位置が避難の方向を表していることを示すメッセージ(図5Cの例において「ここより高い位置まで避難して下さい」)を含んでよい。この場合、案内生成部11dは、このメッセージの音声データを生成し、通信部13を通してUAV1a・1bに送信してよい。
【0083】
上述したように、被災予想地域内の飛行を実現するための各域内ウェイポイントリスト(図5C)は、被災予想地域内の飛行経路から、安全境界に沿った飛行経路に向かう経路(先導飛行経路)を含んでいる。案内メッセージは、この先導飛行経路において発されるメッセージを含んでよい。具体的には、案内メッセージは、自機の飛行している方向が避難の方向であることを示すメッセージを含んでよい。図5Fで示す例において、案内メッセージは、「こちらに向かって避難して下さい」を含んでいる。この場合、案内生成部11dは、このメッセージの音声データを生成し、通信部13を介してUAV1a・1bに送信する。飛行計画では、先導飛行経路を示すウェイポイントに、このメッセージのメッセージIDが対応づけられていてよい。
【0084】
図5A及び図5Cで示すように、安全境界に沿った飛行を実現するための境界ウェイポイントリスト(図5C)で規定されている案内メッセージIDと、被災予想地域内の飛行を実現するための域内ウェイポイントリスト(図5C)で規定されている案内メッセージIDは異なっていてもよい。こうすることによって、被災予想地域内での飛行と安全境界に沿った飛行とでは、異なる案内が報知されることとなる。例えば、安全境界に沿った飛行においては、津波の予測到達時刻や避難所名が報知される。その一方で、被災予想地域内での飛行においては、津波の予測到達時刻や避難所名だけでなく、避難の方向を示す情報(例えば、高台の名称)が報知されてよい。こうすることで、未だ被災予想地域内にいる避難対象者は、避難すべき方向を容易に把握できる。
【0085】
[飛行監視部]
UAV1a・1bが飛行しているとき、飛行監視部11eは、UAV1a・1bから、それらの飛行及び状態に関する情報や、それらの周囲の情報を、通信部13を通して取得する。UAV1a・1bの飛行及び状態に関する情報は、例えば、UAV1a・1bのセンサ群5の出力であり、具体的には、飛行位置センサ(例えば、GNSSセンサ)や、高度センサ(具体的には、気圧センサ)、姿勢センサ(例えば、加速度センサ及び/又は角速度センサ)、地磁気センサなどの出力である。また、UAV1a・1bの周囲の情報は、撮影部4によって取得される画像データである。
【0086】
飛行監視部11eは、UAV1a・1bから受信する情報に基づいて、UAV1a・1bの飛行が正常であるか否かを判断する。飛行監視部11eはUAV1a・1bに異常が生じていると判断する場合、UAV1a・1bに着陸指令を送信してよい。
【0087】
図4で示すように、飛行計画生成部11cは未避難者判定部11fを有してよい。未避難者判定部11fは、UAV1a・1bが被災予想地域内を飛行しているときに、UAV1a・1bから通信部13を通して受信する画像データに基づいて、未避難者の有無を判定してよい。例えば、未避難者判定部11fは、時間的に連続する複数の画像データを比較し、移動している人や乗り物の有無を判断してよい。
【0088】
未避難者判定部11fにおいて未避難者がいないと判定された場合、飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bに既に送信している飛行計画を変更してよい。例えば、飛行計画生成部11cは、被災予想地域内での飛行を途中で終了し、選択部11bによって選択された飛行経路に向かった飛行を開始するように飛行計画を変更してよい。具体的には、飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bの現在位置から安全境界までの飛行経路と、安全境界に沿った飛行経路とを含む飛行計画を新たに生成し、この飛行計画をUAV1a・1bに送信してよい。新たな飛行計画を受信したUAV1a・1bは、この飛行計画に従った飛行を開始してよい。
【0089】
[フローチャート]
図7Aは、制御システム10で実行される処理とUAV1a・1bで実行される処理の例を示すフローチャートである。図7Bは、図7Aで示すUAV1a・1bの飛行制御(S109)において実行される処理の例を示すフローチャートである。図7Bでは、制御システム10と第1UAV1aとにおいて実行される処理が示されているが、同様の処理は制御システム10と第2UAV1bとの間でも実行される。
【0090】
図7Aで示すように、予測津波情報取得部11aが津波予測システム200から通信部13を通して予測津波情報を取得すると(S101)、選択部11bは、「津波規模-経路関係情報」(図5B)を参照し、予測津波規模に応じた飛行経路を選択する(S102)。
【0091】
また、飛行計画生成部11cは、被災予想地域内で避難を案内する時間が津波の予測到達時刻までにあるか否かを判定する(S103)。例えば、飛行計画生成部11cは、津波予測システム200から予測津波情報を受信した時刻から津波の予測到達時刻までの時間(T2)と、被災予想地域内での飛行に要する時間(T1)との差が閾値(Tth)よりも大きいか否かを判定する。すなわち、飛行計画生成部11cは、T2-T1>Tthが成立するか否かを判定する。被災予想地域内で避難を案内する時間がある場合、例えばT2-T1>Tthが成立する場合、飛行計画生成部11cは、被災予想地域内での飛行経路(図5C)と安全境界に沿った飛行経路とを含む飛行計画(図6B)を各UAV1a・1bについて生成する(S104)。一方、被災予想地域内で避難を案内する時間がない場合、例えばT2-T1>Tthが成立しない場合、飛行計画生成部11cは、被災予想地域内での飛行経路(図5C)で示す飛行経路を含まず、安全境界に沿った飛行経路だけを含む飛行計画(図6A)を各UAV1a・1bについて生成する(S105)。
【0092】
また、案内生成部11dは、テンプレート情報(図5E)を参照し、津波の予測到達時刻と、津波の予測到達地域とに基づいて案内メッセージを生成する(S106)。案内生成部11dは、S106で生成した案内メッセージと、案内メッセージ情報(図5F)に含まれている案内メッセージの音声データを生成する(S107)。
【0093】
案内生成部11dと飛行計画生成部11cは、案内メッセージの音声データと飛行計画とを各UAV1a・1bに送信する(S108)。その後、制御システム10は各UAV1a・1bについて飛行制御を実行する(S109)。
【0094】
図7Bで示すように、UAV1aの制御部9は飛行計画と案内メッセージの音声データとを受信したか否かを判定する(S201)。制御部9は、飛行計画と案内メッセージの音声データと受信すると、それらを記憶部2に格納する(S202)。そして、制御部9は、駆動部6を駆動し、UAV1aを飛行計画に従って飛行させる(S203)。すなわち、制御部9は、飛行計画が含む飛行経路(ウェイポイント)に沿って自機が飛行するように駆動部6を制御する。また、制御部9は、飛行計画に含まれる案内メッセージIDを参照しながら、現在位置(現在のウェイポイント)に対応する案内メッセージを報知部(スピーカ)7から出力する(S203)。制御部9は、飛行状況を示す情報、具体的には、撮影部4で取得した画像データと、現在の位置情報とを制御システム10に送信する(S204)。
【0095】
UAV1aの制御部9は、自機が飛行経路の終了位置に到着したか否かを判定する(S205)。未だ、自機が飛行経路の終了位置に到着していない場合、制御部9は、S201の処理に戻る。制御部9は、自機が飛行経路の終了位置に到着するまで、S201~S205の処理を繰り返し実行する。一方、S205の判定において、自機が飛行経路の終了位置に到着した場合、制御部9は、その旨を示す信号を制御システム10に送信し(S206)、その処理を終了する。
【0096】
制御システム10においては、画像データなど飛行状況を示す情報をUAV1aから受信すると、飛行計画生成部11cは飛行計画の更新が必要か否かを判定する(S207)。例えば、UAV1aが被災予想地域内を飛行しているときには、飛行計画生成部11c(未避難者判定部11f)が、連続する複数の画像データを比較することで未避難者が周囲にいるか否かを判定する。未避難者が既にいない場合、飛行計画生成部11cは飛行計画の更新が必要と判定し、新たな飛行計画を生成する(S208)。例えば、飛行計画生成部11cは、被災予想地域内での飛行を途中で終了し、選択部11bによって選択された飛行経路に向かった飛行を開始するように飛行計画を更新する。そして、飛行計画生成部11cは、生成した飛行計画をUAV1aに送信する。なお、S207及びS208において、新たな案内メッセージが生成されて、その案内メッセージの音声データがUAV1aに送信されてもよい。
【0097】
S207において、飛行計画の変更が必要と判定されなかった場合、制御システム10の制御部11は、S210において、UAV1aが終了位置に到着した旨の信号をUAV1aから受信したか否かを判定する。制御部11は、UAV1aが終了位置に到着した旨の信号をUAV1aから受信するまで、S207~S209の処理を繰り返し実行する。制御部11は、S210において、UAV1aが終了位置に到着した旨の信号をUAV1aから受信すると、UAV1aの飛行を制御するための処理(S109、図7A)を終了する。
【0098】
制御システム10のS209の処理の結果、UAV1aが新たな飛行計画を制御システム10から受信すると、新たな飛行計画がUAV1aの記憶部2に格納される(S201及びS202)。そして、UAV1aの制御部9は新たな飛行計画に従った飛行を実行する(S203)。以上が、制御システム10で実行される処理とUAV1a・1bで実行される処理の例である。
【0099】
[まとめ]
(1)以上説明したように、制御システム10は、予測津波情報を取得する予測津波情報取得部11aと、予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との安全境界(例えば、境界L1a・L1b、図3A及び図3B参照)に沿った飛行経路(例えば、経路R1a・R1b、図3A図3B)を含む無人航空機(UAV1a・1b)の飛行計画を生成する飛行計画生成部11cと、飛行計画をUAVに送信する通信部13とを含む。このシステム10によると、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる。
【0100】
(2)飛行経路の一例は、図3C及び図6Aで示すように、UAV1a・1bが安全境界に沿って順方向に飛行する往路の飛行経路と、UAV1a・1bが逆方向に安全境界に沿って飛行する復路の飛行経路とを含む。これによると、どの位置まで避難する必要があるかを、より効果的に避難対象者に案内できる。
【0101】
(3)図3Cで示したように、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、例えば、安全境界に沿って同じ位置を通過する。
【0102】
(4)図3Dで示したように、往路の飛行経路と復路の飛行経路は、例えば、異なる位置を通過する。
【0103】
(5)図3Eで示したように、飛行計画は安全境界に沿った位置でのホバリングを含んでよい。
【0104】
(6)図3C図3D図6A、及び図6Bで示したように、飛行経路は、飛行の優先度が異なる第1位置と第2位置とを含み、飛行計画生成部11cは、第1位置での飛行速度と、第2位置での飛行速度とが異なるように飛行計画を生成してよい。これによると、避難の案内を報知する必要性の高い位置(例えば、避難対象者が多い地域)で避難を報知したり、避難に適した位置(避難所に近い位置)を効果的に避難対象者に案内できる。
【0105】
(7)図6Bで示すように、飛行経路は、被災予想地域内において規定される飛行経路(第1部分経路)と、安全境界に沿った飛行経路(第2部分経路)とを含んでよい。これによると、被災予想地域内を飛行しているときにも、避難対象者に避難の必要を知らせることができる。
【0106】
(8)被災予想地域内において規定される飛行経路(第1部分経路)において報知される案内と、安全境界に沿った飛行経路(第2部分経路)は異なっていてよい。これによると、各部分経路に適した案内を報知できる。
【0107】
(9)飛行計画生成部11cは、予測津波情報に含まれる津波の予測到着時刻に基づいて飛行計画を生成してよい。これによると、例えば、津波の予測到着時刻まで時間的な余裕がない場合と、津波の予測到着時刻まで時間的な余裕がある場合とでは、飛行計画を異ならせることができる。
【0108】
(10)飛行計画生成部11cは、UAV1a・1bに搭載されている撮影部4で取得された画像データに基づいて、飛行計画を更新してよい。これよると、UAV1a・1bの飛行中に、UAV1a・1bの周囲の状況に応じて飛行計画を適切化できる。
【0109】
(11)制御システム10は、複数の津波規模にそれぞれ対応する複数の候補経路(R1a~R3a、R1b~R3b、図5A参照)が格納されている記憶部12を有している。飛行計画生成部11cは、予測津波情報が示す津波規模に対応する候補経路に基づいてUAVの飛行計画を生成してよい。
【0110】
(12)制御システム10は、それぞれが報知部7(スピーカ)を有している第1UAV1aと第2UAV1bとを制御するシステムである。飛行計画生成部11cは、予測津波情報に基づいて第1UAV1aに送信するための第1飛行計画を生成し、予測津波情報に基づいて第2UAV1bに送信するための第2飛行計画を生成する。これによると、広い範囲において効果的に避難を案内できる。
【0111】
(13)制御システム10は、複数のUAV1a・1bの機体の視認性を示す情報(図5D)が格納された記憶部12を含んでいる。飛行計画は、各UAV1a・1bが飛行する高度情報を含んでよい。飛行計画生成部11cは、機体に関する情報に基づいて高度情報を生成する。例えば、飛行計画生成部11cは、域内ウェイポイントリストと境界ウェイポイントリストとで規定されている飛行高度を補正してよい。これによると、例えば、視認性が高いUAV1a・1bは高い位置を飛行させて、広い地域の避難対象者に避難を案内できる。
【0112】
(14)上述したUAV1a・1bの制御方法は、予測津波情報を取得する予測津波情報取得ステップと、予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との安全境界に沿った飛行経路(例えば、経路R1a・R1b、図3A参照)を含むUAV1a・1bの飛行計画を生成する飛行計画生成ステップと、飛行計画をUAV1a・1bに送信する通信ステップとを含む。この制御方法によると、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる。
【0113】
(15)本開示で提案するプログラムは、音声を発することにより津波からの避難を案内する報知部7を有しているUAV1a・1bを制御する装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムある。このプログラムは、予測津波情報を取得する予測津波情報取得部11aと、予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との安全境界に沿った飛行経路(例えば、経路R1a・R1b、図3A参照)を含むUAV1a・1bの飛行計画を生成する飛行計画生成部11cと、飛行計画をUAV1a・1bに送信する通信部13としてコンピュータを機能させる。このプログラムによると、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる。
【0114】
[変形例]
本開示で提案する制御システムは、上述した制御システム10に限られない。例えば、以上説明した例において、UAV1a・1bは報知部7としてスピーカを有しており、制御システム10は報知部7から出力される案内メッセージの音声データを生成し、UAV1a・1bに送信していた。UAV1a・1bは報知部7として、スピーカとともに、スピーカに代えて、LEDを含む発光部を有してもよい。UAV1a・1bは、発光部で光を発しながら、安全境界に沿った飛行経路を飛行してよい。
【符号の説明】
【0115】
1a・1b:無人航空機(UAV)、2:記憶部、3:通信部、4:撮影部、5:センサ群、6:駆動部、7:報知部、9:制御部、10:制御システム、11:制御部、11a:予測津波情報取得部、11b:選択部、11c:飛行計画生成部、11d:案内生成部、11e:飛行監視部、11f:未避難者判定部、12:記憶部、13:通信部、200:津波予測システム、201:予測装置、204:観測施設、L1a~L3a・L1b~L3b:安全境界。
【要約】
【課題】津波発生時に、どの位置(高さ)まで避難する必要があるかを避難対象者に案内できる制御システムを提供する。
【解決手段】制御システム10は、予測津波情報を取得する予測津波情報取得部11aと、予測津波情報が取得された津波による被災が予想される地域である被災予想地域と、被災を免れる安全地域との安全境界L1a・L1bに沿った飛行経路R1a・R1bを含む無人航空機1a・1bの飛行計画を生成する飛行計画生成部11cと、飛行計画を無人航空機1a・1bに送信する通信部13とを含む。
【選択図】図3A
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7A
図7B