IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 木村工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気調和装置 図1
  • 特許-空気調和装置 図2
  • 特許-空気調和装置 図3
  • 特許-空気調和装置 図4
  • 特許-空気調和装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20220627BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
F24F11/41 230
F25B47/02 570Z
F24F11/41 240
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020173175
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064500
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵一
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和也
【審査官】佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099032(JP,A)
【文献】特開2007-327684(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101943471(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気を冷媒で熱交換する空気熱源圧縮式のヒートポンプ(1)と、前記空調用空気を加熱するヒーター(2)と、前記空調用空気の給気温度を目標給気温度に調整する制御装置(6)と、を備え、
前記制御装置(6)は、前記ヒートポンプ(1)の除霜運転の要否を監視して除霜開始信号と除霜終了信号を出す除霜監視部(19)と、前記除霜開始信号を受けて前記ヒートポンプ(1)の加熱能力をゼロになるまで下げつつこれに伴う前記給気温度の下降分を相殺させるように前記ヒーター(2)の加熱能力を上げた後に除霜運転を開始すると共に前記除霜終了信号を受けて前記除霜運転を終了した後に前記ヒートポンプ(1)の加熱能力をゼロから上げつつこれに伴う前記給気温度の上昇分を相殺させるように前記ヒーター(2)の加熱能力を下げて前記給気温度と前記目標給気温度との差を抑制する除霜時温度抑制部(20)と、前記ヒートポンプ(1)の最小限界出力で加熱したときの前記空調用空気の予測給気温度が前記目標給気温度を上回るか否かを判断して上回る場合は前記ヒートポンプ(1)で加熱せずに前記ヒーター(2)で前記空調用空気を前記目標給気温度まで加熱する加熱補償部(22)と、を備えたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記除霜時温度抑制部(20)は、前記ヒートポンプ(1)の空気加熱温度と目標給気温度との差の絶対値(K)が変動する毎に前記絶対値(K)を前記ヒーター(2)の目標空気加熱温度(T)に設定し直してヒーター(2)の加熱能力を増減させるヒーター制御部(21)を、備えた請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記ヒートポンプ(1)は冷凍サイクル(8)を複数備え、前記冷凍サイクル(8)は、前記空調用空気に前記冷媒の熱を授受させる給気用熱交換器(10)と、前記冷媒に熱源用空気の熱を授受させる熱源用熱交換器(11)と、を備え、前記熱源用熱交換器(11)を複数の前記冷凍サイクル(8)にて共用した請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記給気用熱交換器(10)と前記熱源用熱交換器(11)は、楕円管で構成した伝熱管群(14)を備えた請求項1から3のいずれかに記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
恒温恒湿空調用の空気調和装置として、熱源用空気と空調用空気を冷媒を介して熱交換するヒートポンプと、ヒートポンプで熱交換した空調用空気を加熱する電気ヒーターと、空調用空気を加湿する蒸気加湿器と、これらの機器にて目標温湿度に調整した空調用空気を被空調空間に給気する送風機と、を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-23851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような空冷ヒートポンプでは、熱源空気が低温になるとヒートポンプの熱源用熱交換器に霜付きが発生するため、除霜運転が不可欠となる。除霜運転を行うとヒートポンプの給気用熱交換器で空調用空気を加熱できなくなるため、除霜運転の前後でヒートポンプ加熱と電気ヒーター加熱を切換えているが、両者の立上がりと立下りにズレが生じやすくなる。そのため、給気温度がバラツキを起こして目標給気温度の許容範囲を超える問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、空調用空気を冷媒で熱交換する空気熱源圧縮式のヒートポンプと、前記空調用空気を加熱するヒーターと、前記空調用空気の給気温度を目標給気温度に調整する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ヒートポンプの除霜運転の要否を監視して除霜開始信号と除霜終了信号を出す除霜監視部と、前記除霜開始信号を受けて前記ヒートポンプの加熱能力をゼロになるまで下げつつこれに伴う前記給気温度の下降分を相殺させるように前記ヒーターの加熱能力を上げた後に除霜運転を開始すると共に前記除霜終了信号を受けて前記除霜運転を終了した後に前記ヒートポンプの加熱能力をゼロから上げつつこれに伴う前記給気温度の上昇分を相殺させるように前記ヒーターの加熱能力を下げて前記給気温度と前記目標給気温度との差を抑制する除霜時温度抑制部と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、除霜時温度抑制部によって目標給気温度の許容範囲を超えるバラツキを抑制でき、ヒートポンプを用いて常時安定した恒温恒湿空調を行える。恒温恒湿空調のみならず、除霜運転が不可欠となる一般的な室内空調など広範囲に利用できる。空気熱源圧縮式のヒートポンプを用いた空気調和装置なので、冷温水式と比べて設備及び施工の簡略化を図れてコストダウンできる。ヒートポンプと比べてエネルギー効率の低いヒーターの使用を最小限に抑えながら、ヒートポンプの加熱による給気温度のオーバーシュートを防止でき、省エネで高精度な恒温恒湿空調を行える。
【0007】
請求項2の発明によれば、ヒートポンプの出力変化に伴う空調用空気の給気温度変化を、最小限界出力がなく制御性が良いヒーターの加熱で補填するので追従性が良く、オーバーシュートやハンチングのない高精度な恒温恒湿空調を行える。
請求項3の発明によれば、熱源用熱交換器を複数の冷凍サイクルで共用しているので部品点数の削減とコンパクト化を図れる。複数の冷凍サイクルを、正サイクル(給気冷却)と逆サイクル(給気加熱)を混在させて運転する場合、共用する熱源用熱交換器の内部で高温冷媒と低温冷媒が熱交換して熱エネルギーが相殺されるので省エネとなる。
請求項4の発明によれば、給気用熱交換器と熱源用熱交換器の伝熱管群の死水領域が減少し、伝熱管群の通風抵抗が小さくて省エネとなり、空調用空気及び熱源用空気との接触面積(貫流熱量)が増して熱交換効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気調和装置の構成を示す簡略説明図である。
図2】熱交換器の簡略説明図である。
図3】除霜運転時の空気調和装置の制御例を示す説明図である。
図4】空気調和装置の運転パターン例を示す空気線図である。
図5】空気調和装置の加熱制御例を示す空気線図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の空気調和装置の一実施例で、この空気調和装置は、空気熱源圧縮式のヒートポンプ1と、ヒーター2と、加湿器3と、給気用送風機4と、熱源用送風機5と、制御装置6と、ケーシング7と、を備えている。ヒートポンプ1、ヒーター2、加湿器3、給気用送風機4及び熱源用送風機5は、ケーシング7に内装する。制御装置6をケーシング7に内装できない場合は外付けにしてもよい。図の太い点線の矢印は空調用空気と熱源用空気の気流方向を示しており、前記空気調和装置から、空調用空気を被空調空間Sに給気し、熱源用空気を屋外等に排気する。
【0011】
ヒートポンプ1は冷凍サイクル8を2つ備え、空調用空気を冷媒で熱交換して冷却又は加熱する。冷凍サイクル8は、冷媒を圧縮して搬送する圧縮機9、空調用空気に冷媒の熱を授受させる給気用熱交換器10、冷媒に熱源用空気の熱を授受させる熱源用熱交換器11、膨張弁12、四方弁13、その他の機器で構成された冷媒循環回路で、冷媒に対して圧縮・凝縮・膨張・蒸発の工程順を繰返し、冷媒と熱交換する空気に対して冷媒蒸発工程で吸熱(空気冷却)を、冷媒凝縮工程で放熱(空気加熱)を、各々行う。2つの冷凍サイクル8は、各々が独自に空気冷却と空気加熱を四方弁13にて切換できるように構成する。
【0012】
図1図2に示すように、給気用熱交換器10と熱源用熱交換器11は、伝熱管群14にフィン群15を接続して成る。伝熱管群14の内部に冷媒が流通し、伝熱管群14の外面及びフィン群15を空調用空気と熱源用空気が通過する。伝熱管群14は楕円管で構成するのが望ましいが円形管としてもよい。給気用熱交換器10は、外気又は還気を空調用空気として冷媒で熱交換したり、外気と還気の混合空気を空調用空気として冷媒で熱交換する。熱源用熱交換器11は、外気又は外気と還気の混合空気を熱源用空気として冷媒を熱交換する。図例では、1つの熱源用熱交換器11を2つの冷凍サイクル8で共用しているが、共用せずに冷凍サイクル8毎に別個の熱源用熱交換器を設けてもよい。
【0013】
ヒーター2は、電熱で空調用空気を加熱する電気加熱式とする。加湿器3は、蒸気で空調用空気を加湿する蒸気式とする。ヒートポンプ1の給気用熱交換器10とヒーター2は、空調用空気を給気用熱交換器10で熱交換した後にヒーター2で加熱するようにを設置する。給気用送風機4は、機内に空調用空気を取込んで、ヒートポンプ1の給気用熱交換器10とヒーター2と加湿器3に通過させ、図示省略のダクト等を介して被空調空間Sに給気する。熱源用送風機5は、機内に熱源用空気を取込んで、熱源用空気をヒートポンプ1の熱源用熱交換器11に通過させ、機外に排気する。
【0014】
制御装置6は、被空調空間Sの目標温度及び目標湿度を設定する設定部16と、被空調空間Sの温度及び湿度を検出する検出部17と、空調制御部18と、除霜監視部19と、除霜時温度抑制部20と、ヒーター制御部21と、加熱補償部22と、冷却補償部23と、を備えており、これらはマイクロプロセッサ、各種センサー、スイッチ、その他の制御機器にて構成する。
【0015】
空調制御部18は、検出部17で検出した被空調空間Sの温度及び湿度が、設定部16で設定した被空調空間Sの目標温度及び目標湿度になるように、ヒートポンプ1、ヒーター2及び加湿器3の能力と、給気用送風機4と熱源用送風機5の風量を増減させて、空調用空気の給気温度を目標給気温度及び目標給気湿度に調整する。被空調空間Sの温度及び湿度は、被空調空間Sに設けた図示省略の温温度センサーなどにて検出する。
【0016】
除霜監視部19は、ヒートポンプ1の除霜運転の要否を監視して除霜開始信号と除霜終了信号を出力する。ヒートポンプ1の除霜運転の要否は、熱源用熱交換器11に霜付きが発生するときの熱源用空気の温度や冷媒圧力、冷媒温度などが検出される否かによって除霜運転の要否を判断する。これらの温度や圧力は、ヒートポンプ1に設けた図示省略の温度センサーや冷媒圧力センサー、冷媒温度センサーなどにて検出する。除霜方式は、冷凍サイクル8にバイパス弁24を設けて、熱源用熱交換器11と圧縮機9のみに高温の冷媒を循環させて除霜を行うホットガスバイパス方式とするが、他の除霜方式としてもよい。
【0017】
図1図3に示すように、除霜時温度抑制部20は、除霜監視部19の除霜開始信号を受けてヒートポンプ1の加熱能力(HP出力)をゼロになるまで漸次下げつつこれに伴う空調用空気の給気温度の下降分を相殺させるようにヒーター2の加熱能力(HT出力)を漸次上げた後に除霜運転を開始すると共に、除霜監視部19の除霜終了信号を受けて除霜運転を終了した後にヒートポンプ1の加熱能力(HP出力)をゼロから漸次上げつつこれに伴う空調用空気の給気温度の上昇分を相殺させるようにヒーター2の加熱能力(HT出力)を漸次下げて給気温度と目標給気温度との差を抑制する。
【0018】
図3(a)は除霜時温度抑制部20によるヒートポンプ1のHP出力とヒーター2のHT出力の変化を示し、図3(b)はヒートポンプ1による空気加熱温度(HP温度)とヒーター2による空気加熱温度(HT温度)の変化を示す。除霜時温度抑制部20はヒーター制御部21を備えており、ヒーター制御部21は、ヒートポンプ1による空気加熱温度と目標給気温度との差の絶対値K(K1、K2)が変動する毎に絶対値K(K1、K2)をヒーター2による目標空気加熱温度T(T1、T2)に設定し直してヒーター2の加熱能力を増減させる。
【0019】
図4は本発明の空気調和装置の代表的な運転パターンを示した空気線図である。黒丸で示すポイントAは目標給気温湿度、白丸で示すポイントB、C及びDは機内に取込んだときの空調用空気の温湿度を示している。ポイントBの場合は、ヒートポンプ1でポイントAの目標湿度まで冷却減湿した後にポイントAの目標温度までヒートポンプ1又はヒーター2で加熱(再熱)する。ポイントCの場合は、ヒートポンプ1又はヒーター2でポイントAの目標温度まで加熱した後にポイントAの目標湿度まで加湿する。ポイントDの場合は、ヒートポンプ1でポイントAの目標温度まで冷却した後にポイントAの目標湿度まで加湿する。このように空調用空気を目標給気温度に調整して被空調空間Sに給気する。
【0020】
図1図5に示すように、ヒートポンプ1の圧縮機9は、構造上運転可能な最低出力(最小限界出力)があるため、ヒートポンプ1で空調用空気を加熱する際に、ポイントAの目標給気温度を超える(ポイントEまでオーバーシュートする)場合がある。そこで、加熱補償部22にて、ヒートポンプ1の最小限界出力で加熱したときの空調用空気の予測給気温度がポイントAの目標給気温度を上回るか否かを判断して上回る場合はヒートポンプ1で加熱せずにヒーター2で空調用空気をポイントAの目標給気温度まで加熱する。
【0021】
また、図4のポイントDからヒートポンプ1の最小限界出力で空調用空気を冷却する際に、目標給気温度を下回る(アンダーシュートする)場合は、冷却補償部23にて、ヒートポンプ1の最小限界出力で冷却したときの空調用空気の予測給気温度が目標給気温度を下回るか否かを判断して下回る場合はヒートポンプ1の最小限界出力で冷却してから、空調用空気を目標給気温度までヒートポンプ1で加熱せずにヒーター2で加熱(再熱)する。
【0022】
なお、本発明は上述の実施例に限定されない。それぞれ図示省略するが、ヒートポンプ1の冷凍サイクル8の数の増減は自由である。ヒートポンプ1の冷凍サイクル8は、圧縮機9、熱源用熱交換器11及び熱源用送風機5のセットを屋外に設置し、この屋外セットと、ケーシング7内の給気用熱交換器10などの残りの冷凍サイクル8の構成部品である屋内セットと、を冷媒配管でつないだセパレート形としてもよい。また、気化式加湿器を加湿器3と給気用熱交換器10の間に設けてもよく、気化式加湿器のみで加湿不足となる場合、その不足分を蒸気加湿器で加湿するように構成するも自由である。
【符号の説明】
【0023】
1 ヒートポンプ
2 ヒーター
6 制御装置
8 冷凍サイクル
10 給気用熱交換器
11 熱源用熱交換器
14 伝熱管群
19 除霜監視部
20 除霜時温度抑制部
21 ヒーター制御部
22 加熱補償部
S 被空調空間
図1
図2
図3
図4
図5