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特許7094484楔形引き留めクランプ及び楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】楔形引き留めクランプ及び楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/05 20060101AFI20220627BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H02G7/05 060
H02G1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020021238
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021129348
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】原田 正洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 俊一
(72)【発明者】
【氏名】安齊 豊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】倉 昂平
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-149669(JP,A)
【文献】特開2007-053834(JP,A)
【文献】特開平09-103022(JP,A)
【文献】特開平05-022831(JP,A)
【文献】実開昭51-068394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/05
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張架されている電線本線を把持する一対の楔と、前記一対の楔が挿入されたクランプ本体と、一端が前記クランプ本体と連結され、他端が相手金具と連結される連結板と、一端が前記楔と連結された、ジャンパ側電線を固定するジャンパ金具と、を備え、
前記連結板の長さが、600mm以上1100mm以下であり、前記ジャンパ金具の長さが、450mm以上900mm以下、前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が470mm以上1000mm以下であり、既設楔形引き留めクランプの取替用である、楔形引き留めクランプであり、
前記取替用である楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの連結板の長さよりも長く、前記取替用である楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長く、前記取替用である楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さ方向の曲率半径よりも大きい、既設楔形引き留めクランプの取替用である、楔形引き留めクランプ
【請求項2】
前記ジャンパ金具に、該ジャンパ金具の支持のためのジャンパ金具支持部が突設され、前記連結板に、前記ジャンパ金具支持部を固定するためのジャンパ金具固定部が設けられている請求項1に記載の楔形引き留めクランプ。
【請求項3】
前記ジャンパ金具固定部が、長手方向と短手方向を有する孔部であり、該孔部の長手方向が、前記連結板の伸延方向に沿って延在している請求項2に記載の楔形引き留めクランプ。
【請求項4】
前記電線本線を把持する前記楔の把持径が、18.2mm以上38.4mm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の楔形引き留めクランプ。
【請求項5】
前記取替用である楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記連結板の長さに対して2.0以上3.0以下の比率で長く、前記取替用である楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さに対して1.5以上3.0以下の比率で長く、前記取替用である楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径に対して2.0以上4.0以下の比率で大きい、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の楔形引き留めクランプ。
【請求項6】
張架されている電線本線を把持した既設楔形引き留めクランプから電線本線と既設碍子装置を取り外す、既設楔形引き留めクランプ取り外し工程と、
前記既設楔形引き留めクランプが前記電線本線を把持していた部位をジャンパ側電線にずらして、既設楔形引き留めクランプの取替用である取替用楔形引き留めクランプにて前記電線本線を把持させて前記電線本線に取替用楔形引き留めクランプを取り付け、且つ前記取替用楔形引き留めクランプを新設碍子装置に取り付ける、取替用楔形引き留めクランプ取り付け工程と、を有する碍子装置改修方法であり、
前記既設楔形引き留めクランプ及び前記取替用楔形引き留めクランプが、前記電線本線を把持する一対の楔と、前記一対の楔が挿入されたクランプ本体と、一端が前記クランプ本体と連結され、他端が相手金具と連結される連結板と、一端が前記楔と連結された、ジャンパ側電線を固定するジャンパ金具と、を備え、
前記取替用楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記連結板の長さよりも長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さよりも長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径よりも大きい、碍子装置改修方法。
【請求項7】
前記取替用楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記連結板の長さに対して2.0以上3.0以下の比率で長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さに対して1.5以上3.0以下の比率で長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径に対して2.0以上4.0以下の比率で大きい、請求項に記載の碍子装置改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の楔形引き留めクランプを取り替える際に使用される取替用楔形引き留めクランプ及び取替用楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法に関する。特に、送電設備を構成する碍子装置の改修において生じる、ジャンパ側電線の絶縁間隔調整作業を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる、取替用楔形引き留めクランプ及び取替用楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、従来の碍子装置の改修方法について説明する。なお、図6は、既設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けた送電設備の状態を示す説明図である。図7は、従来の新設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けたジャンパ改修工事前の送電設備の状態を示す説明図である。図8は、従来の新設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けたジャンパ改修工事後の送電設備の状態を示す説明図である。
【0003】
図6に示すように、既設の楔形引き留めクランプ100は、張架されている電線本線200を把持する一対の楔120と、一対の楔120が挿入されたクランプ本体110と、一端がクランプ本体110と連結され、他端が既設碍子装置300の相手金具310と連結される連結板130と、一端が楔120と連結された、ジャンパ側電線210を固定しつつジャンパ側電線210の経路を調整するジャンパ金具140と、を備えている。ジャンパ側電線210は、電線本線200が架設された塔体320から所要の絶縁間隔L1が確保されるように、ジャンパ側電線210の経路が調整されている。
【0004】
一方で、送電設備を構成する既設碍子装置300の寿命は電線本線200に比べて短いため、架空送電線の張り替えを伴わない既設碍子装置300単体の改修が必要となる。従来、既設碍子装置300単体の改修の際に、一対の楔120を用いた楔形引き留めクランプ100が碍子装置に使用されている場合には、電線本線200の同一箇所で楔120の押込みを行うことによる電線本線200の損傷を回避するために、図7に示すように、既設の楔形引き留めクランプ100の取り付け位置240を避けて、新設の楔形引き留めクランプ150を張架されている電線本線200側へずらして取り付ける。
【0005】
新設の楔形引き留めクランプ150を張架されている電線本線200側へずらして取り付ける方法は、一般的には、別途、連結板130とは別部材である延長リンク160を用いて行われる。すなわち、既設の楔形引き留めクランプ100と同じ形状、構成及び寸法を有する新設の楔形引き留めクランプ150の連結板130の他端と新設碍子装置350の相手金具310との間に、延長リンク160を取り付ける。しかし、延長リンク160を用いて新設の楔形引き留めクランプ150を電線本線200に取り付けると、張架されている電線本線200は重力方向下方への撓みを有するので、新設の楔形引き留めクランプ150は既設の楔形引き留めクランプ100よりも電線本線200側且つ重力方向下方にて電線本体200に取り付けられる。従って、ジャンパ線210が重力方向下方へ拡大するため、ジャンパ線210と塔体320間の絶縁間隔L2が、既設の楔形引き留めクランプ100における絶縁間隔L1よりも短くなってしまう。上記から、ジャンパ線210と塔体320間の絶縁性が確保できなくなる。
【0006】
そこで、図8に示すように、ジャンパ線210を一定の長さで切除した後に圧縮スリーブ220等を用いてジャンパ線210を圧縮接続により再度接続し、絶縁間隔L1と略同等の絶縁間隔L3を確保するジャンパ改修工事が必要であった。
【0007】
従来の楔形引き留めクランプを用いた既設碍子装置300単体の改修手段としては、例えば、架空送電線を鉄塔へ牽引するための楔型引留クランプの押込機であって、前記押込機は、油圧導入口とプランジャーとを具備するシリンダーと、第1のブロックと、第2のブロックとを有し、前記楔型引留クランプは、楔型引留クランプ本体とクランプ添板と2枚の連結板と楔とを有し、前記架空送電線を、前記鉄塔に牽引される前記楔型引留クランプ本体に仮挿入し、前記シリンダーを前記第1のブロックに固定し、前記プランジャーの先端に前記第2のブロックを固定し、前記第1のブロックを前記2枚の連結板に固定し、前記油圧導入口からの油圧により前記シリンダーのプランジャーが押し出された力が前記第2のブロックを介して前記楔の端部に伝達されることで、前記楔を所定の位置まで前記楔型引留クランプ本体に押し込む手段が提案されている(特許文献1)。
【0008】
特許文献1は、架空送電線を鉄塔へ牽引するため、楔を作業性良く楔型引留クランプへ押し込むものである。
【0009】
しかし、特許文献1等の従来の楔形引き留めクランプでは、圧縮機や電線切断工具等の改修用器具の重量が大きく、その運搬に大きな労力が必要となるという問題があった。また、既設碍子装置単体の改修の際に、作業者には非常に不安定な作業姿勢での作業が要求されるため、作業者の安全性の確保が問題となると共に、作業時間が長期化するという問題があった。また、ジャンパ線を切断し圧縮スリーブを圧縮してジャンパ線を再接続する圧縮接続となるため、接続箇所には、長期経年によって生じる接触抵抗値の増加等の劣化や接続箇所の劣化によって接続箇所から発熱することの懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-234596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ジャンパ側電線の絶縁間隔調整作業、すなわち、ジャンパ改修工事を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる、取替用楔形引き留めクランプ及び取替用楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1] 張架されている電線本線を把持する一対の楔と、前記一対の楔が挿入されたクランプ本体と、一端が前記クランプ本体と連結され、他端が相手金具と連結される連結板と、一端が前記楔と連結された、ジャンパ側電線を固定するジャンパ金具と、を備え、
前記連結板の長さが、600mm以上1100mm以下であり、前記ジャンパ金具の長さが、450mm以上900mm以下、前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が470mm以上1000mm以下であり、既設楔形引き留めクランプの取替用である、楔形引き留めクランプ。
[2]前記ジャンパ金具に、該ジャンパ金具の支持のためのジャンパ金具支持部が突設され、前記連結板に、前記ジャンパ金具支持部を固定するためのジャンパ金具固定部が設けられている[1]に記載の楔形引き留めクランプ。
[3]前記ジャンパ金具固定部が、長手方向と短手方向を有する孔部であり、該孔部の長手方向が、前記連結板の伸延方向に沿って延在している[2]に記載の楔形引き留めクランプ。
[4]前記電線本線を把持する前記楔の把持径が、18.2mm以上38.4mm以下である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の楔形引き留めクランプ。
[5]張架されている電線本線を把持した既設楔形引き留めクランプから電線本線と既設碍子装置を取り外す、既設楔形引き留めクランプ取り外し工程と、
前記既設楔形引き留めクランプが前記電線本線を把持していた部位をジャンパ側電線にずらして、既設楔形引き留めクランプの取替用である取替用楔形引き留めクランプにて前記電線本線を把持させて前記電線本線に取替用楔形引き留めクランプを取り付け、且つ前記取替用楔形引き留めクランプを新設碍子装置に取り付ける、取替用楔形引き留めクランプ取り付け工程と、
を有する碍子装置改修方法であり、
前記既設楔形引き留めクランプ及び前記取替用楔形引き留めクランプが、前記電線本線を把持する一対の楔と、前記一対の楔が挿入されたクランプ本体と、一端が前記クランプ本体と連結され、他端が相手金具と連結される連結板と、一端が前記楔と連結された、ジャンパ側電線を固定するジャンパ金具と、を備え、
前記取替用楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記連結板の長さよりも長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さよりも長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径よりも大きい、碍子装置改修方法。
[6]前記取替用楔形引き留めクランプの前記連結板の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記連結板の長さに対して2.0以上3.0以下の比率で長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さが、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さに対して1.5以上3.0以下の比率で長く、前記取替用楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が、前記既設楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径に対して2.0以上4.0以下の比率で大きい、[5]に記載の碍子装置改修方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の取替用楔形引き留めクランプの態様によれば、連結板の長さが、600mm以上1100mm以下であり、前記ジャンパ金具の長さが、450mm以上900mm以下、前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が470mm以上1000mm以下であることにより、取替用楔形引き留めクランプで形成されるジャンパ側電線の経路が、既設の楔形引き留めクランプで形成されていたジャンパ側電線の経路と重複化されるよう調整される。従って、取替用楔形引き留めクランプを電線本体に取り付けても、ジャンパ側電線が重力方向下方へ拡大するのを防止できるので、ジャンパ側電線と塔体との間の絶縁間隔が既設の楔形引き留めクランプにおける絶縁間隔よりも短くなることを防止できる。上記から、本発明の取替用楔形引き留めクランプでは、ジャンパ側電線の絶縁間隔調整作業、すなわち、ジャンパ改修工事を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる。
【0014】
また、圧縮スリーブを用いてジャンパ側電線を再接続すると、架空送電線を張り替える際に架空送電線へ印加される引抜張力が、圧縮スリーブの電線把持力を超過し、圧縮スリーブからジャンパ側電線が抜ける懸念がある。そこで、引抜張力が印加される前に、圧縮スリーブ両端のジャンパ側電線を切断し、圧縮スリーブを除去した後、引抜張力に耐えうる方法(ワイヤ、工事用スリーブ等)によりジャンパ側電線を再接続する必要があった。本発明の取替用楔形引き留めクランプの態様によれば、ジャンパ改修工事を省略することができるので、別途、圧縮スリーブからジャンパ側電線が抜けることを防止する対策を実施する必要がなく、架空送電線の張り替え作業を容易化できる。
【0015】
本発明の取替用楔形引き留めクランプの態様によれば、ジャンパ金具に該ジャンパ金具の支持のためのジャンパ金具支持部が突設され、連結板にジャンパ金具支持部を固定するためのジャンパ金具固定部が設けられていることにより、ジャンパ金具の長さが既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長尺であっても、ジャンパ金具の振れが防止されて、ジャンパ側電線210の経路が安定化される。
【0016】
本発明の取替用楔形引き留めクランプの態様によれば、ジャンパ金具固定部が長手方向と短手方向を有する孔部であり、該孔部の長手方向が連結板の伸延方向に沿って延在していることにより、張架されている電線本線からの応力によって楔がクランプ本体にさらに挿入されていって上記孔部に位置ずれが生じても、ジャンパ金具の振れを確実に防止できる。
【0017】
本発明の碍子装置改修方法の態様によれば、取替用楔形引き留めクランプの連結板の長さが既設の楔形引き留めクランプの連結板の長さよりも長く、取替用楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さが既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長く、取替用楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が既設の楔形引き留めクランプの前記ジャンパ金具の長さ方向の曲率半径よりも大きいことにより、取替用楔形引き留めクランプで形成されるジャンパ側電線の経路を、既設の楔形引き留めクランプで形成されていたジャンパ側電線の経路と重複化するよう調整できる。従って、取替用楔形引き留めクランプを電線本体に取り付けても、ジャンパ側電線が重力方向下方へ拡大するのを防止できるので、ジャンパ側電線の絶縁間隔調整作業を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる。
【0018】
本発明の碍子装置改修方法の態様によれば、取替用楔形引き留めクランプの連結板の長さが既設の楔形引き留めクランプの連結板の長さに対して2.0以上3.0以下の比率で長く、取替用楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さが既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さに対して1.5以上3.0以下の比率で長く、取替用楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さ方向の曲率半径が既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さ方向の曲率半径に対して2.0以上4.0以下の比率で大きいことにより、取替用楔形引き留めクランプで形成されるジャンパ側電線の経路を、既設の楔形引き留めクランプで形成されていたジャンパ側電線の経路と重複化するよう、より確実に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプの概要を説明する側面図である。
図2】(a)図は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプのクランプ本体と楔の概要を説明する平面断面図である。(b)図は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプのクランプ本体と楔の概要を説明する側面断面図である。
図3】本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付ける方法の概要を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付けた場合と従来の新設楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付けた場合との対比を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを新設の楔形引き留めクランプとして電線本線に取り付けた送電設備の状態を示す説明図である。
図6】既設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けた送電設備の状態を示す説明図である。
図7】従来の新設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けたジャンパ改修工事前の送電設備の状態を示す説明図である。
図8】従来の新設の楔形引き留めクランプを電線本線に取り付けたジャンパ改修工事後の送電設備の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプについて説明する。なお、図1は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプの概要を説明する側面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1は、張架されている電線本線(図1では、図示せず)を把持する一対の楔20と、一対の楔20が挿入されたクランプ本体10と、クランプ本体10と連結された連結板30と、楔20と連結された、ジャンパ側電線(図1では、図示せず)を固定するジャンパ金具40と、を備えている。連結板30は、一端31がクランプ本体10と連結され、他端33が相手金具(図1では、図示せず)と連結される。ジャンパ金具40は、一端41が楔20と連結されている。楔形引き留めクランプ1は、既設の楔形引き留めクランプの取替用である。
【0022】
楔20は、2分割されており、半円状の内周面を有する一方の楔20-1と、一方の楔20-1と対向配置された、半円状の内周面を有する他方の楔20-2と、を有している。一方の楔20-1の内周面と他方の楔20-2の内周面とで電線本線を狭持することで、電線本線に楔形引き留めクランプ1が取り付けられる。また、一方の楔20-1と他方の楔20-2は、ボルト21にて連結されることで一体化されている。図1では、一方の楔20-1は重力方向上方に位置し、他方の楔20-2は重力方向下方に位置している。
【0023】
クランプ本体10内には、楔20を挿入するための空間である楔挿入孔(図1では、図示せず)が形成されている。一対の楔20が、電線本線を狭持した状態で楔挿入孔に挿入される。このとき、後述するように、一方の楔20-1の外周面形状と他方の楔20-2の外周面形状とクランプ本体10の楔挿入孔の周面形状の協働作用により、一方の楔20-1と他方の楔20-2が挿入される。
【0024】
連結板30は、碍子装置の取り付け金具(図1では、図示せず)とクランプ本体10とを引き留める部材である。連結板30の長さ方向は、直線状に伸延している。連結板30の一端31は、クランプ本体10と連結されている。楔形引き留めクランプ1では、連結板30の一端31がピン11にてクランプ本体10と連結されることで、連結板30とクランプ本体10が一体化されている。連結板30の他端33には、碍子装置の取り付け金具に連結板30を連結するための接続手段が設けられている。楔形引き留めクランプ1では、接続手段として孔35が設けられている。例えば、孔35にボルト(図示せず)を挿入することで、連結板30が碍子装置の取り付け金具と連結される。
【0025】
ジャンパ金具40は、ジャンパ側電線を固定し、また、ジャンパ側電線の経路を調整する部材である。楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ金具40の長さ方向は、曲部を有しており、図1では、円弧状に伸延している。ジャンパ金具40は、一端41が楔20と連結されている。楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ金具40の一端41が、他方の楔20-2と連結されている。ジャンパ金具40の一端41がボルト47にて他方の楔20-2と連結されていることで、ジャンパ金具40と楔20が一体化されている。ジャンパ金具40の他端43には、ジャンパ側電線を固定するための固定部44が設けられている。ジャンパ側電線が固定部44でジャンパ金具40に固定されることで、ジャンパ側電線の経路を安定的に維持できる。
【0026】
楔形引き留めクランプ1では、連結板30の長さが、600mm以上1100mm以下となっている。また、上記連結板30の長さに対応して、楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ金具40の長さが、450mm以上900mm以下となっている。さらに、楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ金具40の長さ方向の曲率半径は470mm以上1000mm以下となっている。楔形引き留めクランプ1の連結板30の長さが、既設の楔形引き留めクランプの連結板の長さよりも長く、上記連結板30の長さに対応して、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さが、既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長くなっている。さらに、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さ方向の曲率半径が、既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さ方向の曲率半径よりも大きい態様となっている。なお、「ジャンパ金具40の長さ方向」とは、ジャンパ金具40の伸び伸延形状に沿った長さを意味する。
【0027】
楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さが、既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長いことから、ジャンパ金具40の中央部42に、ジャンパ金具40の支持のためのジャンパ金具支持部45が突設されている。また、連結板30の中央部32に、ジャンパ金具支持部45を固定するためのジャンパ金具固定部34が設けられている。
【0028】
具体的には、ジャンパ金具支持部45の先端部に孔部46が形成されている。また、ジャンパ金具固定部34は、長手方向と短手方向を有する孔部であり、孔部の長手方向が、連結板30の伸延方向に沿って延在している。ジャンパ金具支持部45の孔部46とジャンパ金具固定部34を重ね合わせてボルト(図示せず)で連結することにより、ジャンパ金具40が連結板30に支持される。
【0029】
ジャンパ金具40にジャンパ金具支持部45が突設され、連結板30にジャンパ金具支持部45を固定するためのジャンパ金具固定部34が設けられていることにより、ジャンパ金具40の長さが既設の楔形引き留めクランプのジャンパ金具の長さよりも長尺であっても、ジャンパ金具40の振れが防止されて、ジャンパ側電線の経路が安定化される。また、ジャンパ金具固定部34が長手方向と短手方向を有する孔部であり、該孔部の長手方向が連結板30の伸延方向に沿って延在していることにより、張架されている電線本線からの応力によって楔20がクランプ本体10にさらに挿入されていってジャンパ金具固定部34においてジャンパ金具支持部45に位置ずれが生じても、ジャンパ金具40の振れを確実に防止できる。
【0030】
次に、楔形引き留めクランプ1のクランプ本体10と楔20の構成について、より詳細に説明する。なお、図2の(a)図は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプのクランプ本体と楔の概要を説明する平面断面図である。図2の(b)図は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプのクランプ本体と楔の概要を説明する側面断面図である。
【0031】
図2(a)、(b)に示すように、クランプ本体10の楔挿入孔13の内周面には、テーパー部12が形成されている。テーパー部12は楔20の挿入方向に向かうに従って幅狭となるように形成されている。図2(a)、(b)に示すように、一方の楔20-1の外周面には、テーパー部12に対応したテーパー部22-1が形成されている。また、図2(b)に示すように、他方の楔20-2の外周面には、テーパー部12に対応したテーパー部22-2が形成されている。従って、一方の楔20-1の外周面と他方の楔20-2の外周面が、クランプ本体10の楔挿入孔13の内周面と面接触した状態で、楔挿入孔13のテーパー部12に、一方の楔20-1のテーパー部22-1と他方の楔20-2のテーパー部22-2が嵌合する。上記から、一方の楔20-1の外周面形状と他方の楔20-2の外周面形状とクランプ本体10の楔挿入孔の内周面形状の協働作用により、一方の楔20-1と他方の楔20-2が挿入される。
【0032】
架空送電線201のうち、一方の楔20-1と他方の楔20-2で把持された部位を境に電線本線200とジャンパ側電線210に区別される。なお、本明細書では、一方の楔20-1と他方の楔20-2で把持された部位は電線本線200として扱っている。
【0033】
電線本線200を把持する楔20の把持径は、楔形引き留めクランプ1の使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、18.2mm以上38.4mm以下が挙げられる。
【0034】
次に、楔形引き留めクランプ1を架空送電線201と碍子装置に取り付ける方法を説明する。なお、図3は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付ける方法の概要を示す説明図である。
【0035】
図3に示すように、先ず、架空送電線201の所定の部位を、一方の楔20-1と他方の楔20-2で把持して、一方の楔20-1と他方の楔20-2をボルト21で固定する。これにより、架空送電線201の所定の部位に一方の楔20-1と他方の楔20-2が固定される。所定の部位は、新設碍子装置の相手金具310からクランプ本体10までの間隔が距離Aとなる部位である。次に、半割状に開いた、ピン11にて連結板30が締結されているクランプ本体10を一方の楔20-1と他方の楔20-2の上に被せて、電線本線200からジャンパ側電線210の方向へクランプ本体10を引き込むことで、クランプ本体10内に一方の楔20-1と他方の楔20-2を挿入する。次に、連結板30の孔35にボルト(図示せず)を挿入することで、連結板30を新設碍子装置の相手金具310と連結する。
【0036】
次に、ジャンパ金具40(図3では、図示せず)に沿ってジャンパ側電線210を配線することで、楔形引き留めクランプ1を架空送電線201と碍子装置に取り付けることができる。
【0037】
次に、楔形引き留めクランプ1の作用と効果について説明する。図4は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付けた場合と従来の新設楔形引き留めクランプを架空送電線に取り付けた場合との対比を示す説明図である。なお、図4では、既設の楔形引き留めクランプ100、既設の楔形引き留めクランプ100から伸延するジャンパ側電線210、従来の新設の楔形引き留めクランプ150及び従来の新設の楔形引き留めクランプ150から伸延するジャンパ側電線210は、いずれも、1点破線で図示している。また、本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1及び本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1から伸延するジャンパ側電線210は、いずれも、実線で示している。図5は、本発明の実施形態例に係る取替用楔形引き留めクランプを新設の楔形引き留めクランプとして電線本線に取り付けた送電設備の状態を示す説明図である。
【0038】
図4、6に示すように、既設の楔形引き留めクランプ100は、張架されている電線本線200を把持する一対の楔120と、一対の楔120が挿入されたクランプ本体110と、一端がクランプ本体110と連結され、他端が既設碍子装置300の相手金具310と連結される連結板130と、一端が楔120と連結された、ジャンパ側電線210を固定しつつジャンパ側電線210の経路を調整するジャンパ金具140と、を備えている。ジャンパ側電線210は、ジャンパ金具140から所定の経路にて、対向する他の既設の楔形引き留めクランプ100へ向かって伸延している。従来は、図4、7に示すように、新設の楔形引き留めクランプ150は、既設の楔形引き留めクランプ100よりも電線本線200側へずらした位置で架空送電線201に取り付けられる。また、従来は、上記の通り、既設の楔形引き留めクランプ100と新設の楔形引き留めクランプ150とは、同じ形状、寸法、構造の楔形引き留めクランプを使用する。従って、従来の新設の楔形引き留めクランプ150の楔120とジャンパ金具140は、既設の楔形引き留めクランプ100の楔120とジャンパ金具140よりも電線本線200側へずれた位置となる。このように、新設の楔形引き留めクランプ150は、既設の楔形引き留めクランプ100と同じ位置に取り付けることができないため、ジャンパ改修工事が必要となる。
【0039】
これに対し、図4に示すように、本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1では、連結板30の長さが600mm以上1100mm以下、ジャンパ金具40の長さが450mm以上900mm以下、ジャンパ金具40の長さ方向の曲率半径が470mm以上1000mm以下となっていることにより、取替用である楔形引き留めクランプ1で形成されるジャンパ側電線210の経路が、既設の楔形引き留めクランプ100で形成されていたジャンパ側電線210の経路と重複化されるよう調整されている。すなわち、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40におけるジャンパ側電線210の経路は、既設の楔形引き留めクランプ100のクランプ本体110とジャンパ金具140におけるジャンパ側電線210の経路に対応しており、また、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の位置が、既設の楔形引き留めクランプ100のクランプ本体110の位置と対応するような、連結板30の長さを有している。
【0040】
従って、図5に示すように、本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ線210を一定の長さで切除した後に圧縮スリーブ等を用いてジャンパ線210を再度接続するジャンパ改修工事を行わなくても、既設の楔形引き留めクランプにおいて確保されていた、塔体320からの絶縁間隔と略同等の絶縁間隔L3を確保することができる。上記から、図5では、ジャンパ線210にジャンパ改修工事に用いられる圧縮スリーブ等は設けられていない。
【0041】
従って、楔形引き留めクランプ1を電線本体200に取り付けても、ジャンパ側電線210が重力方向下方へ拡大するのを防止できるので、ジャンパ側電線210と塔体との間の絶縁間隔が既設の楔形引き留めクランプ100における絶縁間隔よりも短くなることを防止できる。上記から、楔形引き留めクランプ1では、ジャンパ側電線210のジャンパ改修工事を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる。また、楔形引き留めクランプ1では、上記の通り、ジャンパ改修工事を省略することができるので、別途、圧縮スリーブからジャンパ側電線210が抜けることを防止する対策を実施する必要がなく、架空送電線201の張り替え作業を容易化できる。
【0042】
次に、本発明の楔形引き留めクランプを用いた碍子装置改修方法について、図4を用いながら説明する。先ず、張架されている電線本線200を把持した既設の楔形引き留めクランプ100から電線本線200と既設碍子装置を取り外す(既設楔形引き留めクランプ取り外し工程)。
【0043】
次に、既設碍子装置が取り付けてあった部位に、新設碍子装置を取り付ける(新設碍子装置取り付け工程)。
【0044】
次に、既設の楔形引き留めクランプ100が電線本線200を把持していた部位をジャンパ側電線210方向へずらして、取替用である本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1にて電線本線200を把持させて架空送電線201に楔形引き留めクランプ1を取り付ける。すなわち、既設の楔形引き留めクランプ100が把持していた電線本線200の部位は、楔形引き留めクランプ1の取り付け後は、ジャンパ側電線210となる。あわせて、楔形引き留めクランプ1を新設碍子装置に取り付ける(取替用楔形引き留めクランプ取り付け工程)。上記工程によって、碍子装置を改修することができる。
【0045】
また、取替用楔形引き留めクランプ取り付け工程では、必要に応じて、ジャンパ金具40の支持のためにジャンパ金具40に設けられたジャンパ金具支持部45を、ジャンパ金具支持部45を固定するために連結板30に設けられたジャンパ金具固定部34に固定する。これにより、ジャンパ金具40の長さが既設の楔形引き留めクランプ100のジャンパ金具140の長さよりも長尺であっても、ジャンパ金具40が振れ止めされて、ジャンパ側電線210の経路が安定化される。
【0046】
本発明の碍子装置改修方法では、取替用である本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1の連結板30の長さは既設の楔形引き留めクランプ100の連結板130の長さよりも長く、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さは既設の楔形引き留めクランプ100のジャンパ金具140の長さよりも長く、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さ方向の曲率半径は既設の楔形引き留めクランプ100のジャンパ金具140の長さ方向の曲率半径よりも大きい。従って、取替用である楔形引き留めクランプ1で形成されるジャンパ側電線210の経路を、既設の楔形引き留めクランプ100で形成されていたジャンパ側電線210の経路と重複化するよう調整できる。上記から、取替用として本発明の実施形態例に係る楔形引き留めクランプ1を電線本体200に取り付けても、ジャンパ側電線210が重力方向下方へ拡大するのを防止できるので、ジャンパ側電線210の絶縁間隔調整作業を省略することができる。従って、楔形引き留めクランプ1では、碍子装置の改修工事を省力化でき、また、碍子装置の改修工事の安全性を向上させることができる。
【0047】
楔形引き留めクランプ1の連結板30の長さは既設の楔形引き留めクランプ100の連結板130の長さに対して2.0以上3.0以下の比率で長いのが好ましく、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具140の長さは既設の楔形引き留めクランプ100のジャンパ金具140の長さに対して1.5以上3.0以下の比率で長いのが好ましく、楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具40の長さ方向の曲率半径は既設の楔形引き留めクランプ1のジャンパ金具140の長さ方向の曲率半径に対して2.0以上4.0以下の比率で大きいのが好ましい。取替用である楔形引き留めクランプ1が既設の楔形引き留めクランプ100に対して上記比率を有することにより、楔形引き留めクランプ1で形成されるジャンパ側電線210の経路を、既設の楔形引き留めクランプ100で形成されていたジャンパ側電線210の経路と重複化するよう、より確実に調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の取替用である楔形引き留めクランプでは、ジャンパ側電線の絶縁間隔調整作業、すなわち、ジャンパ改修工事を省略することができることから、碍子装置の改修工事を省力化できるので、架空送電線の張り替えを伴わずに、既設の碍子装置を新設の碍子装置に改修する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0049】
1 楔形引き留めクランプ
10 クランプ本体
20 楔
30 連結板
34 ジャンパ金具固定部
40 ジャンパ金具
45 ジャンパ金具支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8