(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/30 20060101AFI20220627BHJP
E03D 1/28 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E03D1/30
E03D1/28
(21)【出願番号】P 2018058556
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】柏村 英明
(72)【発明者】
【氏名】羽生 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】下川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】黒木 恵子
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257142(JP,A)
【文献】実開平05-014763(JP,U)
【文献】特開平09-013463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、
洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、
上記洗浄水タンク内に洗浄水を給水する給水装置とを有し、
上記給水装置は、
上記洗浄水タンクの外部の給水源からの洗浄水を供給する第1給水流路と、
上記洗浄水タンクの内部の給水口に洗浄水を供給する第2給水流路と、
上記第1給水流路と上記第2給水流路との間に設けられた主弁座と、
上記主弁座に着座して上記第2給水流路を閉止する止水状態と、上記主弁座から離間して上記第2給水流路を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラム弁体と、
内部の圧力上昇時には上記ダイヤフラム弁体を上記主弁座へ向かって移動させ、且つ内部の圧力低下時には上記ダイヤフラム弁体を上記主弁座から離間するように移動させる圧力室と、
上記圧力室の内部圧力を開放できるように上記圧力室から延びる第1流路と、
上記圧力室の内部圧力を開放できるように上記圧力室から延びる第2流路と、
上記第1流路を開閉させる第1開閉弁装置と、
上記第2流路を開閉させる第2開閉弁装置とを備え、
上記第2流路は、上記圧力室から上方に延び、さらに、
上記第1流路は、上記圧力室の下部に接続され且つ上記圧力室内の洗浄水を下方に流出させる流出路を形成していることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記第2開閉弁装置は、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動するフロートと、このフロートの動作が機械的に伝達される弁体とを備え、
上記第2流路上に設けられた弁座に上記弁体が着座することにより、上記第2流路を開閉する、請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記第1開閉弁装置は、電気的に作動される電磁弁機構と、電磁弁機構により作動される第1弁体とを備え、
上記第1流路上に設けられた第1弁座に上記第1弁体が着座することにより、上記第1流路を開閉する、請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
上記第1流路は、その下流端に下方向きの流出口を形成している、請求項1乃至3の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記第2流路は、その下流端に上方向きの流出口を形成している、請求項1乃至4の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に係り、特に、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、寒冷地において洗浄水タンク装置内の洗浄水が凍結してしまうという問題が知られている。特に、洗浄水タンク装置に設けられる給水装置の洗浄水流路内において洗浄水が凍結する場合には、給水装置の動作不良となる又は給水装置の破損を生じさせる等の給水装置の故障を発生させるという問題がある。
【0003】
特許文献1に記載されているように、洗浄水タンク装置の給水装置として寒冷地仕様のボールタップが提案されている。この給水装置は、操作部によってボールタップを開弁しておくことで常にボールタップから水を流し、凍結によるボールタップの故障を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-190177号公報
【文献】特開2014-70415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、洗浄水タンク装置の給水装置に通水を継続すれば給水装置内での水の凍結を抑制することができるものの、常に水を流し続けるため大量の水を無駄に消費することになり、節水の観点からは望ましくない。
【0006】
そこで、凍結対策として、洗浄水タンク装置の給水装置にヒーターを設けることによって、給水装置内の流路内に残っている洗浄水の凍結を防止することも検討された。しかしながら、給水装置に別途ヒーターを設ける構成とした場合には、ヒーターを作動させ続けなければ洗浄水の凍結の防止機能を維持できないことに加えて、給水装置の大型化やコストが高くなるなどの問題が生じる。よって、給水装置にヒーターを設けることも採用しにくいという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するため、本発明の発明者らは給水装置内の流路から水抜きを行って流路の残水を抑制し残水の凍結を抑制することについて鋭意研究を行った。
また、近年においては停電時にも洗浄水タンク装置に給水を行うことができる給水装置が要請されている。特許文献2に記載されているように、停電時にも洗浄動作が行えるように電磁弁装置の弁体により開閉されるパイロット流路と、機械式開閉弁装置の弁体により開閉されるパイロット流路とを備えた給水装置が提案されている。このように停電時にも給水が行える給水装置においては、2つのパイロット流路及び圧力室を備えるために、従来よりも流路が多く形成され、水抜き時に給水装置内の残水がさらに生じやすくなり、凍結により給水装置の故障を発生させる問題がより顕著となっている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、水抜き時に圧力室内に残水が生じることを抑制でき、残水が凍結することにより給水装置を故障させることを抑制することができる洗浄水タンク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、上記洗浄水タンク内に洗浄水を給水する上記給水装置とを有し、上記給水装置は、上記洗浄水タンクの外部の給水源からの洗浄水を供給する第1給水流路と、上記洗浄水タンクの内部の給水口に洗浄水を供給する第2給水流路と、上記第1給水流路と上記第2給水流路との間に設けられた主弁座と、上記主弁座に着座して上記第2給水流路を閉止する止水状態と、上記主弁座から離間して上記第2給水流路を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラム弁体と、内部の圧力上昇時には上記ダイヤフラム弁体を上記主弁座へ向かって移動させ、且つ内部の圧力低下時には上記ダイヤフラム弁体を上記主弁座から離間するように移動させる圧力室と、上記圧力室の内部圧力を開放できるように上記圧力室から延びる第1流路と、上記圧力室の内部圧力を開放できるように上記圧力室から延びる第2流路と、上記第1流路を開閉させる第1開閉弁装置と、上記第2流路を開閉させる第2開閉弁装置とを備え、上記第2流路は、上記圧力室から上方に延び、さらに、上記第1流路は、上記圧力室の下部に接続され且つ上記圧力室内の洗浄水を下方に流出させる流出路を形成していることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第1給水流路及び洗浄水タンクの水抜きを行う場合において、第1開閉弁装置が第1流路を開状態とすることにより、圧力室内の洗浄水を第1流路により下方に流出させることができる。よって、水抜き時に第1給水流路側に洗浄水が抜けにくい圧力室内に残水が生じることを抑制でき、この残水が圧力室内で凍結することにより給水装置を故障させることを抑制することができる。
また、第2流路は、圧力室から上方に延びているので、水抜き時に第2流路内の洗浄水を圧力室に流下させることができ、さらに、圧力室内から第1流路により下方に流出させることができる。よって、水抜き時に第2流路内に残水を生じさせることを抑制でき、この残水が第2流路内で凍結することにより給水装置を故障させることを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記第2開閉弁装置は、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動するフロートと、このフロートの動作が機械的に伝達される弁体とを備え、上記第2流路上に設けられた弁座に上記弁体が着座することにより、上記第2流路を開閉する。
このように構成された本発明においては、圧力室から上方に延びているので残水の凍結を生じにくい第2流路を、第2開閉弁装置のフロートの動作が機械的に伝達される弁体により開閉する。このため、仮に水抜き後に第1流路内に残水が生じ、この残水が第1流路内で凍結してしまった場合にも、水抜き状態からの復帰により第1給水流路に洗浄水を給水する際、第2流路は凍結していないので、第1給水流路から第2給水流路を介して洗浄水タンク内に給水することができると共に洗浄水タンク内の水位が上昇しフロートが上昇する場合には、弁体が第2流路上に設けられた弁座に着座することにより、第2流路を閉止し、ダイヤフラム弁体を閉止させることができる。従って、水抜きからの復帰時に使用者が特別な操作を行う手間を省きながら、洗浄水タンク内にフロートが上昇する満水水位まで給水を実現することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記第1開閉弁装置は、電気的に作動される電磁弁機構と、電磁弁機構により作動される第1弁体とを備え、上記第1流路上に設けられた第1弁座に上記第1弁体が着座することにより、上記第1流路を開閉する。
このように構成された本発明においては、電気的に作動される電磁弁機構をヒーターとして機能させることにより、圧力室及び第2流路から流下する洗浄水が通る第1流路の凍結を抑制させることができる。これにより、水抜き時に第1流路内に残水を生じさせ、この残水が第1流路内で凍結することにより給水装置を故障させることを抑制することができる。また、仮に、第1流路内に残水が生じ、この残水が第1流路内で凍結してしまった場合にも、電磁弁機構をヒーターとして機能させることにより、第1流路内の氷を溶かしやすくすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記第1流路は、その下流端に下方向きの流出口を形成している。
このように構成された本発明においては、第1流路は、その下流端に下方向きの流出口を形成しているので、水を第1流路から流出させやすくすることができ、第1流路内に残水が生じにくくすることができる。よって、水抜き時に第1流路内に残水を生じさせることをより抑制でき、この残水が第1流路内で凍結することにより給水装置を故障させることをより抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記第2流路は、その下流端に上方向きの流出口を形成している。
このように構成された本発明においては、第2流路は、その下流端に上方向きの流出口を形成しているので、水を第2流路から圧力室側に流出させやすくすることができ、第2流路内に残水が生じにくくすることができる。よって、水抜き時に第2流路内に残水を生じさせることをより抑制でき、この残水が第2流路内で凍結することにより給水装置を故障させることをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄水タンク装置によれば、水抜き時に圧力室内に残水が生じることを抑制でき、残水が凍結することにより給水装置を故障させることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を第2蓋状部材を外した状態で上方から見た上面図である。
【
図6】
図2のVI-VI線に沿って見た断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置の正面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【
図9】
図8の給水装置において第1パイロット流路及び第2パイロット流路が共に開状態とされ、ダイヤフラム弁体が閉状態とされている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、添付図面により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を説明する。
まず、
図1により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の断面図である。
【0017】
図1に示すように、符号1は水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2には、ボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通する排水トラップ管路8がそれぞれ形成されている。
便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0018】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0019】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18が設けられ、この洗浄水タンク装置18に貯水された洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。洗浄水タンク装置18は、自身の高さが比較的低く形成されているいわゆるローシルエットタンクである。この洗浄水タンク装置18は、後述するように凍結による給水装置32の故障を抑制する機能を有している。また、洗浄水タンク装置18は、停電時に洗浄水を貯水できる機能を有している。この洗浄水タンク装置18は、外装カバー19に覆われている。この洗浄水タンク装置18は、便器に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク20を備え、この洗浄水タンク20の底部には、上下方向に延びる排水口22が形成され、この排水口22の下端は便器本体2の導水路6と連通し、洗浄水タンク20内の洗浄水が排水口22から便器本体2の導水路6に供給されるようになっている。
【0020】
便器本体2には、後述する基板35上に洗浄水タンク装置18の動作を制御できる制御部21が設けられている。制御部21は、有線又は無線により、壁面に設けられ且つ使用者が洗浄開始を操作できる操作部(図示せず)、後述するフロートスイッチ28、回動装置38、給水装置32の電動式流路開閉装置52等と電気的に接続されている。制御部21は、CPU、メモリ等を内蔵し、操作部の操作又は自己の設定により、これらの各装置等に作動信号を送り、各装置等を作動させる機能を有する。
【0021】
つぎに、
図2乃至
図6により、洗浄水タンク装置18の詳細について説明する。
図2は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の上面図であり、
図3は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の正面図であり、
図4は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を第2蓋状部材を外した状態で上方から見た上面図であり、
図5は
図2のV-V線に沿って見た断面図であり、
図6は
図2のVI-VI線に沿って見た断面図である。なお、
図5においては、洗浄水タンクの満水時の満水水位をWL1で示している。
以下、本発明の一実施形態における説明において、水洗大便器1を使用する使用者側(水洗大便器1を使用するために水洗大便器1の前に立っている使用者側)から見て手前側を前方側(正面側)とし、使用者から見て奥側を後方側とし、洗浄水タンク装置18を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側とし、洗浄水タンク装置18を前方から見て右側又は左側を側方側として説明している。
【0022】
図2乃至
図6に示すように、洗浄水タンク装置18は、洗浄水を貯水し且つ自身の上部に第1の開口24が形成された洗浄水タンク20と、この洗浄水タンク20に貯えられた洗浄水について排水口22を開放して便器本体2の導水路6に流出させる排水弁装置26と、洗浄水タンク20の満水水位WL1を電気的に検知するフロートスイッチ28と、洗浄水タンク20の外部の給水源からの洗浄水を洗浄水タンク20に供給する水供給管30と、洗浄水タンク20内に洗浄水を給水する給水装置32と、第1の開口24を覆う蓋状部材33と、洗浄水タンク20を支持する基板35(
図1参照)とを備えている。
【0023】
図5に示すように、排水弁装置26は、オーバーフロー管34と、オーバーフロー管34の下端部に固着された排水弁36と、オーバーフロー管34を上下動させることにより排水弁36を開閉操作する回動装置38を備えている。排水弁36は、洗浄水タンク20の底面に設けられた排水弁座37に着座して排水口22を密閉するようになっている。
また、洗浄水タンク20の排水口22の周辺部には、排水弁36の上下動をガイドし且つ高さ位置を規制するガイド部材40が取り付けられている。
【0024】
オーバーフロー管34は、上下方向に延びる円筒状の管部材である。そして、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位が、満水水位WL1を超えて上昇し、オーバーフロー管34の上端の高さ位置を上回ったときには、洗浄水がオーバーフローし、オーバーフロー管34の上端からその円筒管内を通って洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2側に供給されるようになっている。
【0025】
さらに、回動装置38は、DCモータ等の駆動手段を設けた駆動装置である、この回動装置38から延びる回転軸42の先端には、玉鎖44が取り付けられている。この玉鎖44の下方部分は、オーバーフロー管34に取り付けられている。回動装置38が玉鎖44を上方に引き上げるように回転軸42を回転させると、オーバーフロー管34が玉鎖44と共に上昇し、回動装置38が玉鎖44を引き下げるように回転軸42を回転させると、オーバーフロー管34が玉鎖44と共に下降するようになっている。
回動装置38は、停電時に、使用者が操作レバー(図示せず)を直接回転操作して回転軸42を回転させて排水弁36の開閉ができるような手動式の操作機構を備えている。
【0026】
フロートスイッチ28は、洗浄水タンク20の内部の上方に配置され、洗浄水タンク20の頂部よりその軸心部が下向きになるように取付けられている。フロートスイッチ28は、所定の満水水位WL1を電気的に検知し、その検知信号を制御部21に送信するようになっている。
【0027】
図6に示すように、水供給管30は、洗浄水タンク20の中心よりも側方側において建物の床面又は壁面から洗浄水タンク20の下部の高さまで上昇するように配置される。水供給管30は、便器本体2及び洗浄水タンク20の外部側に配置される。水供給管30は、ホース等の可撓性配管により形成される。水供給管30は、給水装置32の後述する接続部48と接続される。
【0028】
図2及び
図4に示すように、蓋状部材33は、第1の開口24を一部覆うように形成され且つ第1の開口24よりも小さい第2の開口25を形成する第1蓋状部材80と、第2の開口25を覆う第2蓋状部材82とを備えている。第1蓋状部材80と第2蓋状部材82とを組合せることにより、第1蓋状部材80と第2蓋状部材82との間に電動式流路開閉装置52の取付部73(
図8参照)を挟み込むように取付けている。
【0029】
つぎに、
図6乃至
図8により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置32の具体的な構成について説明する。
図7は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置の正面図であり、
図8は
図7のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【0030】
給水装置32は、洗浄水タンク20の内部に設けられる給水口部46と、洗浄水タンク20の外部において水供給管30と接続される接続部48と、接続部48から給水口部46まで延びる給水流路50と、蓋状部材33の外方に設けられる電磁弁機構72により給水流路50を開閉する第1開閉弁装置である電動式流路開閉装置52と、洗浄水タンク20の内部に設けられる機械式機構により給水流路を開閉する第2開閉弁装置である機械式流路開閉装置54と、を備えている。
【0031】
さらに、給水装置32は、給水流路50中に設けられる主弁座56と、給水流路50中に設けられ且つ主弁座56に着座して二次側通水路64を閉止する止水状態と主弁座56から離間して二次側通水路64を開放する給水状態とを切り換えるダイヤフラム弁であるダイヤフラム弁体58と、給水流路50のうち、洗浄水タンク20の外部の給水源からの洗浄水を供給する第1給水流路である一次側通水路60と、給水流路50においてダイヤフラム弁体58の主弁座56側と反対側に設けられ且つ内部の洗浄水の圧力が変動する圧力室62と、給水流路50のうち、洗浄水タンク20の内部の給水口部46に洗浄水を供給する第2給水流路である二次側通水路64と、圧力室62の内部圧力を洗浄水タンク20に開放できるように圧力室62から洗浄水タンク20に延びる第1流路である第1パイロット流路66と、圧力室62の内部圧力を洗浄水タンク20に開放できるように圧力室62から洗浄水タンク20に延びる第2流路である第2パイロット流路68とを備えている。
【0032】
主弁座56は、二次側通水路64の入口端に設けられている。主弁座56は、一次側通水路60と二次側通水路64との間に設けられている。
ダイヤフラム弁体58には一次側通水路60と圧力室62とを連通するブリード穴(図示せず)が形成されている。ダイヤフラム弁体58は、圧力室62の内部圧力及び一次側通水路60の水圧力との圧力差により主弁座56に向かって当接する方向又は主弁座56から離間する方向に移動するように設置されている。ダイヤフラム弁体58に形成されたブリード穴により、ダイヤフラム弁体58が閉弁した状態において、一次側通水路60と圧力室62とが連通して、圧力室62に一次側通水路60からの水圧が作用するようになっている。
【0033】
圧力室62は、内部の圧力上昇時にはダイヤフラム弁体58を主弁座56へ向かって移動させ、且つ内部の圧力低下時にはダイヤフラム弁体58を主弁座56から離間するように移動させる。
【0034】
電動式流路開閉装置52は、電気的に制御される電磁弁装置である。電動式流路開閉装置52は、第1パイロット流路66の第1弁座66aに着座して、第1パイロット流路66を閉止できるように形成されている第1弁体70と、制御部21によって電気的に作動される電磁弁機構72とを備えている。第1弁体70は、電磁弁機構72により作動される。電動式流路開閉装置52は、フロートスイッチ28が洗浄水タンク20の満水水位WL1を電気的に検知していない場合には、第1弁体70を第1弁座66aから離間させて第1パイロット流路66を開放させ、フロートスイッチ28が洗浄水タンク20の満水水位WL1を電気的に検知している場合には、第1弁体70を第1弁座66aに押し付けて閉止させて第1パイロット流路66を閉止させるようになっている。電動式流路開閉装置52は、第1パイロット流路66上に設けられた第1弁座66aに第1弁体70が着座することにより、第1パイロット流路66を開閉する。
【0035】
なお、電磁弁機構72は通電時に発熱させることができるため、制御部21の制御により電磁弁機構72をヒーターとして機能させることができる。例えば、第1弁体70の開弁時に電磁弁機構72をヒーターとして機能させ、電磁弁機構72の近傍の第1パイロット流路66及び第1弁体70等を温めることができる。
【0036】
電動式流路開閉装置52は、第1弁体70により第1パイロット流路66を開閉させることにより、後述するようにダイヤフラム弁体58を開閉させることができ、洗浄水の洗浄水タンク20内への吐水と止水を切り替える機能を有する。電動式流路開閉装置52のうち少なくとも電磁弁機構72は、電子部品が洗浄水タンク20内の湿度の高い空気の影響を受けるのを防ぐように、蓋状部材33の外方に設けられている。
【0037】
機械式流路開閉装置54は、電気を使わない機械式のいわゆるボールタップ弁装置を形成している。機械式流路開閉装置54は、第2パイロット流路68上に設けられた弁座である第2弁座68aに着座して、第2パイロット流路68を閉止できるように形成されている弁体である第2弁体74と、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動する機械式機構であるフロート76(
図4及び
図7参照)と、機械式機構として、一方がフロート76に接続され、且つ他方が第2弁体74に接続され、フロート76が上下動することにより揺動して第2弁体74を機械的に開閉動作させる機械式機構である揺動部材78と、を備えている。第2弁体74には、フロート76の動作が揺動部材78を介して機械的な動作として伝達される。機械式流路開閉装置54は、第2パイロット流路68上に設けられた第2弁座68aに第2弁体74が着座することにより、第2パイロット流路68を開閉する。
【0038】
揺動部材78は、揺動部材78のフロート76側の部分が上方移動するとき、第2弁体74側の部分が下方移動して第2弁体74を第2弁座68aに押し付けて閉止させ、揺動部材78のフロート76側の部分が下方移動するとき、第2弁体74側の部分が上方移動して第2弁体74を第2弁座68aから離間させて開放させるようになっている。電動式流路開閉装置52は、フロート76及び揺動部材78に接続された第2弁体74により第2パイロット流路68を開閉させることにより、後述するようにダイヤフラム弁体58を開閉させることができ、洗浄水の洗浄水タンク20内への吐水と止水を切り替える機能を有する。
【0039】
給水装置32の大部分、例えば電動式流路開閉装置52以外の基本的な構造である給水流路50の一次側通水路60、二次側通水路64、圧力室62、ダイヤフラム弁体58、主弁座56、機械式流路開閉装置54が、洗浄水タンク20の内部に設けられている。よって、洗浄水タンク20内に延びる給水流路50と、機械式流路開閉装置54との距離を比較的近くすることができる。これにより、給水装置32を比較的小型に形成することができ、従来のように洗浄水タンク20の壁面を跨ぐように給水装置32の流路を配置する切欠きを洗浄水タンク20に設ける必要がなくなり、本実施形態におけるように給水装置32の大部分を内部に収める洗浄水タンク20を比較的小型に形成することができる。
【0040】
第2パイロット流路68は、圧力室62から上方に延びている。第2パイロット流路68は、横方向に延びる横方向流路及び上方向に延びる上方向流路の組合せ、又は上方向流路のみにより形成される。上方向流路は、鉛直方向上方のみならず斜め上方に延びる流路も含む。第2パイロット流路68は、下方向に延びる下方向流路を含まないような水抜き時に水が残存しにくい形状の流路により形成されている。第2パイロット流路68は、その下流端に上方向きの流出口68bを形成している。
【0041】
第1パイロット流路66は、圧力室62の下部に接続され且つ圧力室62内の洗浄水を下方に流出させる流出路を形成している。第1パイロット流路66は、横方向に延びる横方向流路及び下方向に延びる下方向流路の組合せ、又は下方向流路のみにより形成される。下方向流路は、鉛直方向下方のみならず斜め下方に延びる流路も含む。第1パイロット流路66は、上方向に延びる上方向流路を含まないような水抜き時に水が残存しにくい形状の流路により形成されている。第1パイロット流路66は、その下流端に下方向きの流出口66bを形成している。第1パイロット流路66の流出口66bは、その周囲が洗浄水タンク20内の空間に開かれる開口である。
【0042】
つぎに、
図6及び
図8を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水動作を説明する。
図8に示すように、給水装置32が洗浄水タンク20内に給水を行う前の状態において、ダイヤフラム弁体58が主弁座56に着座し、一次側通水路60及び圧力室62内が外部水道等からの給水で満たされ、圧力室62内の内部圧力は一次水圧となり、一次側通水路60と二次側通水路64との間がダイヤフラム弁体58により止水された状態になっている。また、電動式流路開閉装置52の第1弁体70は、第1パイロット流路66の第1弁座66aに着座して、第1パイロット流路66を閉止した状態となっている。機械式流路開閉装置54の第2弁体74は、第2パイロット流路68上に設けられた第2弁座68aに着座して、第2パイロット流路68を閉止した状態となっている。このように、給水装置32において第1パイロット流路66及び第2パイロット流路68が共に閉状態とされ、ダイヤフラム弁体58が閉状態とされている。
【0043】
図6に示すように、洗浄水タンク20内には、満水水位WL1まで洗浄水が満たされている。この状態で使用者が、便器使用後に、例えば、大洗浄用の操作ボタン(操作部)を押すと、この操作ボタンからの信号が制御部21に送信され、回動装置38が駆動する。そして、回転軸42が回転し、回転軸42の先端に取り付けられている玉鎖44が上方へ引き上げられ、オーバーフロー管34及び排水弁36が一体的に上昇し、排水口22が開放され、洗浄水タンク20内の洗浄水が排水口22から便器本体2の導水路6に供給される。
【0044】
便器本体2に洗浄水が供給されると、それに伴い、洗浄水タンク20内の水位がフロートスイッチ28より低下し、それにより、フロートスイッチ28がONからOFFに変わる。さらに洗浄水タンク20内の水位がフロート76下面より低下を開始すると、機械式流路開閉装置54のフロート76が自動的に追従して下降を開始し、てこのような動きをする揺動部材78の揺動運動によって、第2弁体74が上昇し、第2弁体74が第2弁座68aから離間する。第2弁体74が第2弁座68aから離間された状態は
図9において示されているので
図8においては図示を省略する。第2弁体74が第2弁座68aから離間すると、矢印F1に示すように、圧力室62内の洗浄水が第2パイロット流路68を通って洗浄水タンク20内の内部空間に向かって流出を開始し、圧力室62内の洗浄水の水圧が下がる。よって、ダイヤフラム弁体58が一次側通水路60からの水圧によって主弁座56から離間され、仮想線の矢印F2に示すように、ダイヤフラム弁体58が主弁座56から離間された状態で一次側通水路60からの洗浄水が二次側通水路64に直接流入する。
図8において、ダイヤフラム弁体58が主弁座56から離間された状態、すなわちダイヤフラム弁体58の開状態を仮想線A1により示している。
【0045】
また、フロートスイッチ28がONからOFFに変わった後所定時間経過後には、制御部21は電動式流路開閉装置52の電磁弁機構72を作動させ、第1弁体70を開状態とする向きに移動させる。第1弁体70が第1弁座66aから離間すると、第1パイロット流路66が開放される。第1弁体70が第1弁座66aから離間された状態は
図9において示されているので
図8においては図示を省略する。矢印F3に示すように、第1弁体70が第1弁座66aから離間した状態において圧力室62内の洗浄水が第1パイロット流路66を通って洗浄水タンク20内に流出し、圧力室62内の水圧が下がる。よって、ダイヤフラム弁体58が一次側通水路60からの水圧によって主弁座56から離間され、仮想線の矢印F2に示すように、一次側通水路60からの洗浄水が二次側通水路64に直接流入する。
すなわち、通常の給水動作において、電動式流路開閉装置52及び機械式流路開閉装置54が各々独立して並列的に動作し、共通のダイヤフラム弁体58を作動させるようになっている。従って、第1パイロット流路66及び第2パイロット流路68がともに開放された状態となり、両方から同時に洗浄水が流出する。これらの動作により、一次側通水路60と二次側通水路64との連通を開放し、洗浄水が二次側通水路64から給水口部46を介して洗浄水タンク20内に給水される。
なお、電動式流路開閉装置52及び機械式流路開閉装置54が、停電や故障などの要因により一方が動作しない場合にも、これらの少なくともいずれか一方が一次側通水路60と二次側通水路64との連通を開放するので洗浄水タンク20内の給水口部46からの給水が安定して行われる。
【0046】
次に、使用者の操作又は制御部21の判断等により、回動装置38が動作して、回転軸42が回転し、回転軸42の先端に取り付けられている玉鎖44が下方へ引き下げられ、オーバーフロー管34及び排水弁36が一体的に下降し、排水口22が閉鎖され、洗浄水タンク20への給水が洗浄水タンク20内に貯水される。
洗浄水タンク20内の水位が機械式流路開閉装置54のフロート76の高さまで達すると、フロート76が上昇を開始し、てこのような動きをする揺動部材78の揺動運動によって、第2弁体74が下降し、第2弁体74が第2弁座68aに着座した状態となる。この場合、第2弁体74が第2パイロット流路68を閉止した状態となっても、電動式流路開閉装置52の第1弁体70が第1弁座66aから離間して、第1パイロット流路66が開放されており、圧力室62内の洗浄水の水圧は下がった状態のままである。よって、ダイヤフラム弁体58が一次側通水路60からの水圧によって主弁座56から離間され、一次側通水路60からの洗浄水が二次側通水路64に直接流入している。
洗浄水タンク20内の水位がさらに上昇して満水水位WL1に達すると、フロートスイッチ28がONとなり、制御部21はこれを検知して、制御部21は電動式流路開閉装置52の電磁弁機構72を作動させ、第1弁体70を閉状態とする向きに移動させる。第1弁体70が第1弁座66aを閉止すると、圧力室62と連通する第1パイロット流路66及び第2パイロット流路68が共に閉止された状態となり、圧力室62内の洗浄水の水圧が一次側通水路60の水圧を受けて上がる。よって、ダイヤフラム弁体58が一次側通水路60からの水圧によって主弁座56に押圧され、ダイヤフラム弁体58が閉止された状態となる。これにより、洗浄水は一次側通水路60から二次側通水路64に流入しなくなり、洗浄水タンク20内の給水口部46への給水が停止され、洗浄水が洗浄水タンク20内に満水に貯水された状態となって、一連の洗浄動作が終了する。
【0047】
先ず、
図9を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置18の給水装置32の水抜き時の動作を説明する。
図9は
図8の給水装置において第1パイロット流路及び第2パイロット流路が共に開状態とされ、ダイヤフラム弁体が閉状態とされている様子を示す図である。
洗浄水タンク装置18の外気温度が0℃以下となるような寒冷環境が予想される場合、水の凍結による給水装置32の故障を抑制するため水抜き方式の対策が取られる。水抜き方式の対策においては、回動装置38の回動により排水弁36を開状態とし洗浄水タンク20内に貯水されている洗浄水を排出させるような水抜きが実行される。また、水供給管30等に設けられた水抜き栓等により水供給管30及び一次側通水路60の水抜きが実行される。
【0048】
図9に示すように、一次側通水路60は水抜きが実行されて洗浄水が残っていない状態となっている。一次側通水路60の洗浄水が無くなるので、ダイヤフラム弁体58は主弁座56に着座した状態となっている。圧力室62と一次側通水路60とはダイヤフラム弁体58のブリード穴を介して連通されているものの、ブリード穴は小径の開口であるため、圧力室62内の洗浄水は一次側通水路60側に流出しにくく圧力室62内に残水として引き続き留まったままの状態となる。この残水が圧力室62内で凍結すると、ダイヤフラム弁体58が動作不良となる又は圧力室62、ダイヤフラム弁体58等が破損することによる給水装置の故障が発生する可能性がある。
【0049】
一次側通水路60及び洗浄水タンク20の水抜き時において、洗浄水タンク20内の洗浄水が排出されるため、機械式流路開閉装置54のフロート76が下降し、第2弁体74が上昇し、第2弁体74が第2弁座68aから離間する。よって、第2パイロット流路68が開放された状態となる。
また、水抜き時において、洗浄水タンク20内の洗浄水が排出されるため、フロートスイッチ28がOFFとなり、電動式流路開閉装置52の電磁弁機構72が作動され、第1弁体70が第1弁座66aから離間する。よって、第1パイロット流路66が開放された状態となる。
【0050】
第2パイロット流路68は、圧力室62から上方に延びているので、矢印F4に示すように、第2パイロット流路68内の洗浄水を圧力室62に流下させることができ、さらに、圧力室62から第1パイロット流路66により下方に流出させることができる。よって、水抜き時に第2パイロット流路68に洗浄水が残水を生じさせることを抑制することができる。また、洗浄水は第2パイロット流路68から圧力室62に流下するので、第1パイロット流路66からの洗浄水の排出を促進させることができる。
【0051】
第1パイロット流路66は、洗浄水を下方に流出させる流出路を形成しているので、矢印F5に示すように、圧力室62の下部から圧力室62内の洗浄水を下方に流出させることができる。第1パイロット流路66は、横方向流路及び下方向流路のみにより形成されているので、洗浄水を滞留させることを抑制しながら比較的スムーズに下方に流出させることができる。少なくとも第1パイロット流路66が開放されていれば圧力室62内の洗浄水を下方に流出させることができる。このように、水抜き時に一次側通水路60側に洗浄水が抜けにくい圧力室62及び第1パイロット流路66に洗浄水が残水を生じさせることを抑制することができる。第2パイロット流路68、圧力室62及び第1パイロット流路66の水抜きが完了したと判断した場合には、使用者の操作又は制御部21の判断により電動式流路開閉装置52の第1弁体70は閉止され、給水装置32の水抜き時の動作を終了させる。
【0052】
変形例として、給水装置32において、第1流路を第2開閉弁装置によって開閉させるように構成し、第2流路を第1開閉弁装置によって開閉させるように構成してもよい。具体的には、給水装置32において、第1パイロット流路66を機械式流路開閉装置54によって開閉させるように構成し、第2パイロット流路68を電動式流路開閉装置52によって開閉させるように構成してもよい。このように構成された場合においても、一次側通水路60の水抜きを行う場合において、機械式流路開閉装置54が第1パイロット流路66を開状態とすることにより、圧力室62内の洗浄水を第1パイロット流路66により下方に流出させることができる。
【0053】
さらなる変形例として、給水装置32において、第1流路を開閉する第1開閉弁装置を手動又は自動で開閉させる弁装置に変更し、第1流路を水抜き時に使用する水抜き流路に変更してもよい。具体的には、電動式流路開閉装置52を手動又は自動で流路を開閉させる弁装置に変更し、第1パイロット流路66を水抜き時に使用する水抜き流路として構成してもよい。例えば、上記弁装置は、使用者が水抜き時に手動で操作する水抜き用の手動弁である。第1パイロット流路66は水抜き時に水抜き流路として使用される。第2パイロット流路68を機械式流路開閉装置54によって開閉させることにより、ダイヤフラム弁体58の開閉を行う。このように構成された場合においても、一次側通水路60の水抜きを行う場合において、弁装置が第1パイロット流路66を開状態とすることにより、圧力室62内の洗浄水を第1パイロット流路66により下方に流出させることができる。
【0054】
次に、上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の効果を説明する。
上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、一次側通水路60及び洗浄水タンク20の水抜きを行う場合において、電動式流路開閉装置52が第1パイロット流路66を開状態とすることにより、圧力室62内の洗浄水を第1パイロット流路66により下方に流出させることができる。よって、水抜き時に一次側通水路60側に洗浄水が抜けにくい圧力室62内に残水が生じることを抑制でき、この残水が圧力室62内で凍結することにより給水装置32を故障させることを抑制することができる。
また、第2パイロット流路68は、圧力室62から上方に延びているので、水抜き時に第2パイロット流路68内の洗浄水を圧力室62に流下させることができ、さらに、圧力室62内から第1パイロット流路66により下方に流出させることができる。よって、水抜き時に第2パイロット流路68内に残水を生じさせることを抑制でき、この残水が第2パイロット流路68内で凍結することにより給水装置32を故障させることを抑制することができる。
【0055】
さらに、一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、圧力室62から上方に延びているので残水の凍結を生じにくい第2パイロット流路68を、機械式流路開閉装置54のフロート76の動作が機械的に伝達される弁体により開閉する。このため、仮に水抜き後に第1パイロット流路66内に残水が生じ、この残水が第1パイロット流路66内で凍結してしまった場合にも、水抜き状態からの復帰により一次側通水路60に洗浄水を給水する際、第2パイロット流路68は凍結していないので、一次側通水路60から第2給水流路を介して洗浄水タンク20内に給水することができると共に洗浄水タンク20内の水位が上昇しフロート76が上昇する場合には、第2弁体74が第2パイロット流路68上に設けられた第2弁座68aに着座することにより、第2パイロット流路68を閉止し、ダイヤフラム弁体58を閉止させることができる。従って、水抜きからの復帰時に使用者が特別な操作を行う手間を省きながら、洗浄水タンク20内にフロート76が上昇する満水水位WL1まで給水を実現することができる。
【0056】
また、一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、電気的に作動される電磁弁機構72をヒーターとして機能させることにより、圧力室62及び第2パイロット流路68から流下する洗浄水が通る第1パイロット流路66の凍結を抑制させることができる。これにより、水抜き時に第1パイロット流路66内に残水を生じさせ、この残水が第1パイロット流路66内で凍結することにより給水装置32を故障させることを抑制することができる。また、仮に、第1パイロット流路66内に残水が生じ、この残水が第1パイロット流路66内で凍結してしまった場合にも、電磁弁機構72をヒーターとして機能させることにより、第1パイロット流路66内の氷を溶かしやすくすることができる。
【0057】
また、一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、第1パイロット流路66は、その下流端に下方向きの流出口66bを形成しているので、水を第1パイロット流路66から流出させやすくすることができ、第1パイロット流路66内に残水が生じにくくすることができる。よって、水抜き時に第1パイロット流路66内に残水を生じさせることをより抑制でき、この残水が第1パイロット流路66内で凍結することにより給水装置32を故障させることをより抑制することができる。
【0058】
また、一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、第2パイロット流路68は、その下流端に上方向きの流出口68bを形成しているので、水を第2パイロット流路68から圧力室62側に流出させやすくすることができ、第2パイロット流路68内に残水が生じにくくすることができる。よって、水抜き時に第2パイロット流路68内に残水を生じさせることをより抑制でき、この残水が第2パイロット流路68内で凍結することにより給水装置32を故障させることをより抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 排水トラップ管路
8a 入口
8b 上昇路
8c 下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 洗浄水タンク装置
19 外装カバー
20 洗浄水タンク
21 制御部
22 排水口
24 第1の開口
25 第2の開口
26 排水弁装置
28 フロートスイッチ
30 水供給管
32 給水装置
33 蓋状部材
34 オーバーフロー管
35 基板
36 排水弁
37 排水弁座
38 回動装置
40 ガイド部材
42 回転軸
44 玉鎖
46 給水口部
48 接続部
50 給水流路
52 電動式流路開閉装置
54 機械式流路開閉装置
56 主弁座
58 ダイヤフラム弁体
60 一次側通水路
62 圧力室
64 二次側通水路
66 第1パイロット流路
66a 第1弁座
66b 流出口
68 第2パイロット流路
68a 第2弁座
68b 流出口
70 第1弁体
72 電磁弁機構
73 取付部
74 第2弁体
76 フロート
78 揺動部材
80 第1蓋状部材
82 第2蓋状部材
A1 仮想線
W0 貯留面
WL1 満水水位