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特許7094490ガラス、ガラスフィラー、及び樹脂混合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ガラス、ガラスフィラー、及び樹脂混合体
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20220627BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20220627BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/093
C03C3/097
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018097542
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019202902
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】虫明 篤
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076180(WO,A1)
【文献】特開2003-313047(JP,A)
【文献】特開2004-010477(JP,A)
【文献】特開平10-167756(JP,A)
【文献】特開平11-314932(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125477(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/196421(WO,A1)
【文献】特開2001-287936(JP,A)
【文献】特開平05-270859(JP,A)
【文献】特開2010-248011(JP,A)
【文献】特開2016-190942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、SiO 35~75%、Al 0.1~30%、B 0~30%、SiO+Al+B 55~90%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%、Nb+WO 5~15%を含有し、質量比で、SiO /Nb が12~20であることを特徴とするガラスフィラー
【請求項2】
さらに、質量%で、LiO+NaO+KO 0~15%を含有することを特徴とする請求項1に記載のガラスフィラー
【請求項3】
質量%で、Nb 0.1~15%を含有し、質量比で、SiO/Nb13.6~20であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィラー
【請求項4】
屈折率ndが1.50~1.70、アッベ数νdが40~60であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラスフィラー
【請求項5】
形状が略球状であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラスフィラー。
【請求項6】
平均粒子径が0.5~20μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラスフィラー。
【請求項7】
請求項のいずれかに記載のガラスフィラーと樹脂とを含むことを特徴とする樹脂混合体。
【請求項8】
ガラスフィラーと樹脂との屈折率ndの差が±0.05以内であることを特徴とする請求項に記載の樹脂混合体。
【請求項9】
立体造形用であることを特徴とする請求項又はに記載の樹脂混合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、ガラスフィラー、及び樹脂混合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料等を積層させて立体造形物を得る方法が知られている。例えば光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法等種々の方法が提案され実用化されている。
【0003】
例えば光造形法は、細やかな造形や正確なサイズ表現に優れており、広く普及している。この方法は以下のようにして立体造形物を作製するものである。まず液状の光硬化性樹脂を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射して所望のパターンの硬化層を作製する。このようにして硬化層を1層造ると造形ステージを1層分だけ下げて、硬化層上に未硬化の樹脂を導入し、同様にして紫外線レーザーを光硬化性樹脂に照射して前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げる。この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。また、粉末焼結法は、樹脂、金属、セラミックス、ガラスの粉末を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の粉末に半導体等のレーザーを照射し、軟化変形にて所望のパターンの硬化層を作製するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-26060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光造形法等で作製される樹脂製の立体造形物は、細やかで精密であるが、機械的強度等に劣ることが指摘されている。そこで特許文献1では、光硬化性樹脂と無機充填材を混合することが提案されている。
【0006】
ところが樹脂と無機充填材粒子を混合すると、樹脂混合体である立体造形物の透明性が損なわれるという問題があった。
【0007】
以上に鑑み、本発明は、樹脂と混合しても樹脂混合体の透明性を損ないにくいガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラスは、質量%で、SiO 35~75%、Al 0.1~30%、B 0~30%、SiO+Al+B 55~90%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%、Nb+WO 5~15%を含有することを特徴とする。このような組成のガラスは、樹脂と屈折率が整合しやすく、樹脂と混合してもガラスと樹脂の屈折率差に起因する光の散乱が生じにくく、結果として樹脂混合体の透明性を高めることができる。ここで、「SiO+Al+B」はSiO、Al、及びBの合量、「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO」はMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの合量、「Nb+WO」はNb、及びWOの含有量の合量を意味する。
【0009】
本発明のガラスは、質量%で、LiO+NaO+KO 0~15%を含有することが好ましい。ここで、「LiO+NaO+KO」はLiO、NaO、及びKOの含有量の合量を意味する。
【0010】
本発明のガラスは、Nb 0.1~15%を含有し、質量比で、SiO/Nbが2.4~20であることが好ましい。ここで、「SiO/Nb」はSiOの含有量をNbの含有量で除した値を意味する。
【0011】
本発明のガラスは、屈折率ndが1.50~1.70、アッベ数νdが40~60であることが好ましい。
【0012】
本発明のガラスフィラーは上記ガラスからなることを特徴とする。
【0013】
本発明のガラスフィラーは、形状が略球状であることが好ましい。
【0014】
本発明のガラスフィラーは、平均粒子径が0.5~20μmであることが好ましい。ここで、「平均粒子径」とは一次粒子のメジアン径での50%体積累積径を示し、レーザー回折式粒度分布測定法により測定された値をいう。
【0015】
本発明の樹脂混合体は、上記ガラスフィラーと樹脂とを含有することを特徴とする。
【0016】
本発明の樹脂混合体は、ガラスフィラーと樹脂との屈折率ndの差が±0.05以内であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂混合体は、立体造形用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂と混合しても樹脂混合体の透明性を損ないにくいガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のガラスは、ガラス組成として、SiO 35~75%、Al 0.1~30%、B 0~30%、SiO+Al+B 55~90%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%、Nb+WO 5~15%を含有する。以下、上記のように各成分を限定した理由を説明する。なお、各成分の含有量に関する説明において、「%」は「質量%」を意味する。
【0020】
SiOはガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。SiOの含有量は、35~75%であり、40~70%、45~65%、48~60%、特に50~58%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、SiOの含有量が多すぎると溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0021】
Alはガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。Alの含有量は、0.1~30%であり、1~25%、5~22%、10~20%、特に12~18%であることが好ましい。Alの含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、Alの含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0022】
はガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。Bの含有量は、0~30%であり、1~26%、5~22%、10~20%、特に12~18%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また、略球状化工程において蒸発して設計組成からの組成ズレが生じやすくなる。
【0023】
SiO+Al+Bの含有量は、55~90%であり、60~89%、65~88%、70~87%、75~86%、特に80~86%であることが好ましい。SiO+Al+Bの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、SiO+Al+Bの含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0024】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOはガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させるとともに、粘性を低下させる成分である。MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量は、2~15%であり、2.2~12%、2.4~10%、2.6~8%、特に2.8~6%であることが好ましい。MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0025】
なお、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの好ましい範囲は以下の通りである。
【0026】
MgOの含有量は、0~15%、0.5~10%、特に1~6%であることが好ましい。
【0027】
CaOの含有量は、0~15%、0.5~10%、特に1~6%であることが好ましい。
【0028】
SrOの含有量は、0~15%、0.5~10%、特に1~6%であることが好ましい。
【0029】
BaOの含有量は、0~15%、0.5~10%、特に1~6%であることが好ましい。
【0030】
ZnOの含有量は、0~15%、0.5~10%、特に1~6%であることが好ましい。
【0031】
Nb、及びWOは屈折率、アッベ数を調整できる成分である。Nb+WOの含有量は、5~15%であり、5~12%、5~10%、6~9%、特に7~8%であることが好ましい。Nb+WOの含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、Nb+WOの含有量が多すぎると、屈折率が大きくなりすぎ、アッベ数が小さくなりすぎる傾向がある。また、ガラスが失透しやすくなる。
【0032】
なお、Nb、及びWOの好ましい範囲は以下の通りである。
【0033】
Nbの含有量は、0~15%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。Nbの含有量が多すぎると、屈折率が大きくなりすぎ、アッベ数が小さくなりすぎる傾向がある。また、ガラスが失透しやすくなる。
【0034】
WOの含有量は、0~15%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。WOの含有量が多すぎると、屈折率が大きくなりすぎ、アッベ数が小さくなりすぎる傾向がある。また、ガラスが失透しやすくなる。さらに、ガラスが着色しやすくなる傾向がある。
【0035】
SiO/Nbは、2.4~20、4~18、8~16、10~15、特に12~14であることが好ましい。このようにすることで化学的耐久性、耐失透性を高めつつ、樹脂の屈折率と整合したガラスを得やすくなる。
【0036】
本発明のガラスは、上記成分以外にも以下の成分を含有することができる。
【0037】
LiO、NaO、及びKOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。LiO+NaO+KOの含有量は、0~15%、0.1~10%、0.5~8%、1~6%、特に1~4%であることが好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が多すぎると、ガラスの略球状化工程においてガラス成分が蒸発しやすく、設計組成からの組成ずれが生じやすくなる。また化学耐久性が低下しやすく、LiO、NaO、及びKOが樹脂中に溶出し樹脂が劣化しやすくなる。
【0038】
なお、LiO、NaO、及びKOの好ましい範囲は以下の通りである。
【0039】
LiOの含有量は、0~10%、0.1~9%、0.5~7%、特に1~5%であることが好ましい。
【0040】
NaOの含有量は、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~2.5%であることが好ましい。
【0041】
Oの含有量は、0~10%、0.1~8%、0.5~6%、特に1~4%であることが好ましい。
【0042】
TiOは、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。TiOの含有量は、0~15%、0.1~12%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。TiOの含有量が多すぎると屈折率が大きくなりすぎ、またアッベ数が小さくなりすぎる傾向がある。さらに、ガラスが着色しやすくなる。
【0043】
本発明のガラスは、屈折率ndが1.50~1.70、1.50~1.60、特に1.50~1.55であることが好ましく、アッベ数νdは、40~60、45~60、特に50~57であることが好ましい。このようにすれば、アクリル系樹脂等多くの樹脂と光学定数が整合しやすくなる。光学定数が上記範囲から外れると、樹脂と整合した光学定数を得ることが難しくなる。また、本発明のガラスは、得られる樹脂混合物の透明性を高める観点から、588nmにおける厚み0.5mmでの光透過率が30%以上、50%以上、特に70%以上であることが好ましい。
【0044】
本発明のガラスフィラーは、上記のガラスからなる。
【0045】
本発明のガラスフィラーの形状は破砕状、柱状、繊維状、略球状を取りうるが、略球状であることが好ましい。形状を略球状とすれば樹脂に含有するガラスフィラーの量を増やした際に、樹脂混合体の粘度上昇を抑制することができ、流動性を維持することができる。また、樹脂に添加した際、樹脂と接触する表面積が低減できるため、光の散乱が生じにくく、樹脂混合体の透明性を高めることができる。
【0046】
本発明のガラスフィラーは、平均粒子径が0.5~20μm、1~15μm、特に3~12μmであることが好ましい。このようにすれば、液体の樹脂にガラスフィラーを添加した際、ガラスフィラーの沈降速度を低下させることができる。特に、紫外線硬化樹脂にガラスフィラーを添加し、紫外線を照射して硬化させる立体造形用である場合、造形に必要な時間内に沈降が生じると造形物にムラが生じるが、上記平均粒子径とすることでその虞が低減できる。
【0047】
次に、本発明のガラス及びガラスフィラーの製造方法の一例について説明する。
【0048】
まず、ガラス原料を所定割合で調合して得られた原料バッチを1400~1700℃で溶融して溶融ガラスを得る。次に、溶融ガラスを所定形状(例えば、フィルム状)に成形した後、粉砕、分級しガラス粉末を得る。粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、振動ミル等が使用され、湿式粉砕又は乾式粉砕を使用することができる。分級方法としては、網篩い、気流式分級装置等の公知の分級技術を用いることができる。
【0049】
得られたガラス粉末を加熱溶融することにより球状化する。加熱溶融方法としては、ガラス粉末をテーブルフィーダー等で炉内へ供給し、空気バーナー等で1400~2000℃で加熱し、溶融して、表面張力によりガラス粉末を球状化し、冷却、回収する方法が挙げられる。
【0050】
次に、球状化したガラス粉末を所望の粒度分布になるように分級することにより、ガラスフィラーを得る。分級方法としては、網篩い、気流式分級装置等の公知の分級技術を用いることができる。
【0051】
なお、ガラスフィラーの表面をシランカップリング剤によって処理する。シランカップリング剤で処理すれば、ガラスフィラーと樹脂の結合力を高めることができるため、機械的強度の優れた樹脂混合物を得ることが可能になる。さらに、ガラスフィラーと樹脂のなじみがよくなり、界面の泡や空隙が減少し、光散乱が少なくなるため、樹脂混合体の透明性を高めやすい。シランカップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等が好ましい。なおシランカップリング剤は、用いる樹脂によって適宜選択すればよい。
【0052】
次に、本発明で使用する樹脂について説明する。
【0053】
樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであってもよく、採用する造形法によって適宜選択することができる。例えば光造形法を使用する場合は液状の光硬化性樹脂を選択すればよく、また粉末焼結法を採用する場合は粉末状の熱硬化性樹脂を選択すればよい。
【0054】
上記光硬化性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン樹脂、(メタ)アクリル-スチレン共重合体、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0055】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化型ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド系樹脂、フラン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アニリン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
次に、本発明の樹脂混合体について説明する。
【0057】
本発明の樹脂混合体は、上記のガラスフィラーと樹脂とを含む。ガラスフィラーの量は、樹脂100質量部に対して10~300質量部、20~280質量部、特に30~260質量部であることが好ましい。ガラスフィラーの量が少なすぎると、樹脂混合体の機械的強度が低くなる傾向がある。一方、ガラスフィラーの量が多すぎると、樹脂混合体の粘度が高くなりすぎ、樹脂の流動性が低下しやすくなる。
【0058】
本発明の樹脂混合体は、ガラスフィラーと樹脂との屈折率ndの差が±0.05以内であることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィラーと樹脂の屈折率差に起因する光の散乱を低減することができるため、樹脂混合体の透明性を高めやすい。
【0059】
本発明の樹脂混合体は、厚み0.5mmにて波長588nmにおける光透過率が50%以上、70%以上、特に80%以上であることが好ましい。このような樹脂混合体は、立体造形用として好適である。
【0060】
本発明の樹脂混合体は、本発明のガラスフィラー以外の材料、例えば粘度調整剤、他のガラスフィラー、セラミックフィラー、金属材料、樹脂材料、炭素材料などを含んでいてもよい。粘度調整剤としては液体のものであっても固体のものであってもよく、特にフュームドシリカは少量の添加で樹脂混合体の粘度を上昇させ、ガラスフィラーの沈降を抑制することができる。ちなみに、フュームドシリカは表面に多数のシラノール基を有し、各フュームドシリカ同士が水素結合して、液体樹脂中にて三次元網目構造を形成するため、樹脂混合体の粘度を高める効果が大きい。フュームドシリカは例えば平均粒子径1~500nm、2~200nm、2~100nm、2~50nm、2~20nm、2~10nmのものを用いることができる。
【0061】
次に、立体造形物の製造方法の一例を説明する。具体的には、光硬化性樹脂を含む樹脂混合体を用いた立体造形物の製造方法について説明する。なお樹脂混合体は既述の通りであり、ここでは説明を省略する。
【0062】
まず光硬化性樹脂混合体からなる1層の液状層を準備する。例えば液状の光硬化性樹脂混合体を満たした槽内に造形用ステージを設け、ステージ上面が液面から所望の深さ(例えば0.2mm程度)となるように位置させる。このようにすることで、ステージ上に液状層を準備することができる。
【0063】
次に、この液状層に活性エネルギー線、例えば紫外線レーザーを照射して光硬化性樹脂を硬化させ、所定のパターンを有する硬化層を形成する。なお活性エネルギー線としては、紫外線の他に、可視光線、赤外線等のレーザー光を用いることができる。
【0064】
続いて、形成した硬化層上に、光硬化性樹脂混合体からなる新たな液状層を準備する。例えば、前記した造形用ステージを1層分下降させることにより、硬化層上に光硬化性樹脂を導入し、新たな液状層を準備することができる。
【0065】
その後、硬化層上に準備した新たな液状層に活性エネルギー線を照射して、前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する。
【0066】
以上の操作を繰り返すことによって硬化層を連続的に積層し、所定の立体造形物を得る。
【実施例
【0067】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
表1は本発明の実施例(No.1~6)、及び比較例(No.7)を示している。
【0069】
【表1】
【0070】
(ガラスフィラーの作製)
表1の組成となるように、原料粉末を調合し、均一に混合した。得られた原料バッチを1580~1600℃で均質になるまで溶融した後、一対のローラー間に流し出してフィルム状に成形した。溶融したガラスの一部については720℃から5時間かけて室温まで降温し、屈折率測定器(島津製作所社製 KPR-2000)により屈折率を測定した。
【0071】
フィルム状に成形したガラスをジェットミル粉砕し、ガラス粉末を得た。得られたガラス粉末をテーブルフィーダーで炉内へ供給し、空気バーナーでガラス粉末を1400~2000℃に加熱し、溶融して、ガラス粉末を球状化した。
【0072】
次に、ガラス粉末表面に付着した微粒子を水で洗浄して取り除いた後、乾燥した。
【0073】
次いで、球状化したガラス粉末を表1に記載の平均粒子径になるように気流式分級装置にて分級することにより、ガラスフィラーを得た。なお、平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定法により求めた。
【0074】
(シラン処理)
ビーカーに純水9g及びシランカップリング剤(信越化学社製 KBM-503)1gを混合した。さらに酢酸0.03gを添加し、スターラーを用いて30分撹拌し、シランカップリング剤を加水分解させた。
【0075】
次に、別の容器に重量比で、ガラスフィラー:エタノール:加水分解させたシランカップリング剤を20:19:1の割合で混合し、1時間撹拌した。
【0076】
次に、エタノールを蒸発乾燥させ、さらに110℃で30分保持した。
【0077】
(樹脂混合体の作製)
硬化性樹脂(デジタルワックス社製 DL360)100質量部に対してシラン処理を施したガラスフィラー46.5質量部となるように秤量した。さらに、自公転ミキサー(シンキー社製 ARE-310)を用いて、ガラスフィラー及び硬化性樹脂を混合し、樹脂混合体を得た。なお、光硬化後の硬化性樹脂の屈折率ndは1.511であった。
【0078】
(光透過率測定)
得られた樹脂混合体をスライドガラス上に適量採取し、厚さ0.5mmのガラス板をスペーサとしてもう一枚のスライドガラスで挟み、紫外線を照射して樹脂混合体を硬化させた。
【0079】
次にスライドガラスを含めた樹脂混合体について、分光光度計(島津製作所製 UV-3100)により全光線透過率測定を行い、588nmにおける光透過率を測定した。
【0080】
表1に示すように、本発明の実施例である試料No.1~6は、光透過率が80~84%と高かった。一方、比較例である試料No.7は、屈折率ndが1.725であり、樹脂の屈折率ndとの差が大きいため、光透過率が22%と低かった。