(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/22 20060101AFI20220627BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20220627BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B23B27/22
B23B27/14 C
B23B27/20
(21)【出願番号】P 2021193901
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰岳
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04136417(DE,A1)
【文献】国際公開第2013/161558(WO,A1)
【文献】特開2008-213122(JP,A)
【文献】特開昭63-174803(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19653921(DE,A1)
【文献】国際公開第2003/015968(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/046045(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/150696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/22
B23B 27/14
B23B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側面と、
上面の一部を構成する平坦な頂面であって
、前記上面は該頂面以外の部分が窪んでいる頂面と、
前記周側面と前記頂面が交差する稜線のうち、2つの直線状の稜線を接続するコーナーRの稜線に少なくとも形成された切れ刃と、
前記頂面との交差線が波状となって現れる前記コーナーR側
から放射中心である要部へ向かって共に窪みつつ傾斜する交互に配列された畝部と溝部を有する扇状のすくい部と
を備える切削工具。
【請求項2】
前記頂面との境界において前記溝部の幅は前記畝部の幅より広い請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記畝部は、
前記交差線として現れる前記頂面との境界から前記要部へ向かって幅が一定に設けられており、前記溝部は、
前記交差線として現れる前記頂面との境界から前記要部へ向かって幅が漸減するように設けられている請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記畝部の個数Lは、前記コーナーRの曲率半径をr(mm)とした場合に、
4r+1≦L≦10r+2
を満たす整数である請求項1から3のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記個数Lは、奇数である請求項4に記載の切削工具。
【請求項6】
前記要部は、前記コーナーRの曲率中心と一致するように、または前記曲率中心に対して前記コーナーRとは反対側に位置するように設けられた請求項1から5のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項7】
前記すくい部に連続するように設けられた傾斜面と、
前記2つの直線状の稜線の二等分線に沿って連なり、前記傾斜面から隆起するように設けられた隆起部と
を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記すくい部は、ダイヤモンドを80%体積以上含む焼結体によって形成された請求項1から7のいずれか1項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド等を素材とする超高圧焼結体を切れ刃として採用した切削工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超高圧焼結体を切れ刃として採用する切削工具は、一般的に上面を研磨することにより切れ刃を形成するため、研磨面である平坦な頂面より高い隆起を設けることが難しく、切屑処理性に優れたチップブレーカを形成することが難しい。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、平坦な頂面を有しながらも切屑処理性にすぐれた切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における切削工具は、周側面と、平坦な頂面と、周側面と頂面が交差する稜線のうち、2つの直線状の稜線を接続するコーナーRの稜線に少なくとも形成された切れ刃と、コーナーR側を円弧として頂面から放射中心である要部へ向かって共に窪みつつ傾斜する交互に配列された畝部と溝部を有する扇状のすくい部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、平坦な頂面を有しながらも切屑処理性にすぐれた切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る切削インサートを装着した切削工具の全体斜視図である。
【
図4】刃先部材のコーナーR付近を斜方から観察した部分拡大図である。
【
図5】刃先部材のコーナーR付近を上方から観察した部分拡大図である。
【
図9】他の実施例における切削インサートの部分拡大図である。
【
図10】他の実施例における刃先部材のコーナーR付近を斜方から観察した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、各図において、同一又は同様の構成を有する構造物が複数存在する場合には、煩雑となることを回避するため、一部に符号を付し、他に同一符号を付すことを省く場合がある。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る切削インサート100を装着した切削工具200の全体斜視図である。本実施形態における切削工具200は、旋盤用の切削工具である。本体部210は、切削インサート100が装着される装着座220を有する。なお、本実施形態においては、切削インサート100が本体部210に交換可能に装着されて全体が切削工具200として機能する場合を説明するが、切削インサート100がワークを切削するという機能的な観点からは、切削インサート100そのものを切削工具と捉えることもできる。また、交換式の切削インサートに限らず、以下に説明する切削インサート100に相当する刃先部材を本体部に固着する形式を採用する場合には、全体を切削工具とみなすこともできる。
【0011】
装着座220は、本体部210の先端付近に設けられた、切削インサート100の装着面である。装着座220には雌ねじ孔が設けられており、切削インサート100を装着すると、切削インサート100のほぼ中心に設けられた装着孔191とおよそ同軸となる。切削インサート100は、装着孔191を介して雌ねじ孔と螺合する装着ねじ310により、装着座220に固定される。なお、図示する実施形態においては、工具寿命の延長を図るために、装着座220と切削インサート100の間に一定の厚みを有するシム320を挟み込んでいる。
【0012】
図2は、切削インサート100の全体斜視図である。切削インサート100は、全体形状としては上面および底面を略菱形とする柱状を成す。切削インサート100は、台金190と刃先部材110によって構成される。台金190は、略中央部に装着ねじ310を挿通させるための装着孔191が設けられている。台金190は、例えば鋼や超硬合金を素材とする。台金190のうち、上面の鋭角を成すコーナーの一つには段差部が設けられており、刃先部材110は、当該段差部にろう付け等により固着されている。
【0013】
図3は、切削インサート100の部分拡大図であり、具体的には
図2に示すA部の拡大図である。図示するように、本実施形態における刃先部材110は、焼結体120と基台140の二層構造になっている。焼結体120と基台140は、それぞれが全体として同じ大きさの略三角柱形状であり、上下に積層されている。焼結体120は、ダイヤモンドを80%体積以上含む。ダイヤモンドは強度および耐摩耗性に優れており、これを切れ刃に用いると切削インサート100の使用期間を延ばすことが期待できる。本実施形態においては、焼結体120は、ダイヤモンド粉末を焼結させたダイヤモンド焼結体を想定するが、気相合成法により合成された単結晶ダイヤモンドを用いて同様の形状を形成してもよい。基台140は、例えば超硬合金を素材とする。本実施形態おける刃先部材110は、焼結体120と基台140の二層構造を採用するが、例えば全体をダイヤモンド焼結体として形成してもよい。
【0014】
焼結体120は、略三角柱形状の上面の一部を構成する頂面121と側面を構成する周側面122を有する。頂面121は、研磨された平坦面であり、例えば表面粗さが0.05μm以上0.2μm未満の範囲に収まるように調整されている。頂面121は、上面の三角形のうち、周縁部と隆起部127に連続する一部に形成されている。頂面121と周側面122が交差する稜線は、三角形の一辺を成す直線状の第1稜線123と、同じく三角形の他の一辺を成す直線状の第2稜線124と、第1稜線123と第2稜線124を接続する円弧状のコーナーR125を含む。本実施形態においてコーナーR125は切れ刃として機能する。なお、切れ刃は、第1稜線123および第2稜線124に連続して形成されてもよい。頂面121のうち切れ刃近傍の領域は、ランド面として機能する。
【0015】
焼結体120の上面は、上述の頂面121以外の部分が窪んでいる。当該窪みは、主に、第1すくい部132と、第2すくい部126と、ブレーカ壁面128によって構成されている。第1すくい部132は、コーナーR125側を円弧として扇状に傾斜する。第1すくい部132の具体的な構成については後に詳述する。
【0016】
第2すくい部126は、第1すくい部132に連続するように設けられ、また、第1稜線123、第2稜線124から離れて三角形の内側へ向かうほど頂面121からの深さが深くなるように設けられた傾斜面である。第2すくい部126は、第1すくい部132と共にすくい面として機能する。ブレーカ壁面128は、第2すくい部126から隆起するように設けられた隆起部127の両側面として形成される。隆起部127は、第1稜線123と第2稜線をそれぞれ延長して交差する交差点を通り、そのなす角を二等分する二等分線に沿って連なっている。したがって、焼結体120の上面の窪みは、全体的に見れば、第1稜線123側の第2すくい部126とブレーカ壁面128に囲まれた第1凹部と、第2稜線124側の第2すくい部126とブレーカ壁面128に囲まれた第2凹部によって構成されていると言える。
【0017】
図4は、刃先部材110のコーナーR125付近を斜方から観察した部分拡大図であり、具体的には
図3に示すB部の拡大図である。第1すくい部132は、上述のようにコーナーR125側を円弧として扇状に傾斜しているが、頂面121から当該扇状の放射中心である要部131へ向かって、共に窪みつつ傾斜する交互に配列された畝部133と溝部134を有する。
【0018】
要部131は、車輪に例えればハブに相当する部分であり、畝部133は、スポークに相当する部分である。畝部133は、頂面121である上面方向へ向かって凸状に隆起するように形成された部分であり、溝部134は、上面とは反対方向へ向かって凸状に掘穿するように形成された部分である。本実施形態における第1すくい部132は、図示するように、5つの畝部133と4つの溝部134を有する。畝部133は、それぞれ要部131まで連なっており、溝部134は、隣接する2つの畝部133の間に設けられている。
【0019】
それぞれの畝部133の稜線、およびそれぞれの溝部134の谷筋は、頂面121に対して10°~30°の範囲の傾斜となるように調整されている。したがって、第1すくい部132は、全体的には10°~30°のすくい角を有するすくい面として機能する。さらに、第1すくい部132に連続する傾斜面として第2すくい部126が設けられている。そして、第2すくい部126から隆起するように隆起部127が設けられている。ただし、頂面121は焼結体120の上面を研磨して形成されるので、隆起部127の稜線の高さは、頂面121の高さ以下となる。
【0020】
このような形状を備える刃先部材110、ひいては切削インサート100は、ワークから排出される切屑の処理性に優れる。具体的には、コーナーR125に形成された切れ刃で削り出された切屑は、畝部133と溝部134に沿って摺動する過程において、要部131へ向かうほど湾曲しつつ絞り込まれる。このように絞り込まれた切屑は、それのみでも折断しやすいが、さらに第2すくい部126を摺動して隆起部127で拘束され、カールをしながら周側面122またはワークに衝突することで、容易に折断する。もしくは、絞り込まれた切りくず自身の重みと自らの振れ回りにより、容易に折断する。すなわち、本実施形態に係る切削インサート100は、切れ刃より高い凸部が存在しなくても、切屑を捉える拘束力を確保し、拘束した切りくずをより効率的に折断することができる。
【0021】
図5は、刃先部材110のコーナーR125付近を上方から観察した部分拡大図である。扇形状である第1すくい部132の要に位置する要部131は、図示するように、それぞれの畝部133の中心線が交差する交点である。本実施形態においては、要部131は、コーナーR125の曲率中心(図において二点鎖線で示す円の中心)と一致するように設定されている。このように、要部131は、コーナーR125の曲率中心と一致するように、または当該曲率中心に対してコーナーR125とは反対側(コーナーR125から遠い側)に位置するように設けると、切屑の折断性および排出性が向上することが確認された。
【0022】
また、本実施形態においては、畝部133を5つ設けているが、畝部133の個数は、コーナーR125の曲率半径に応じて決定するとよい。具体的には、畝部の個数Lは、コーナーRの曲率半径をr(mm)とした場合に、4r+1≦L≦10r+2を満たす整数とすればよいことが確認できた。図示する例では曲率半径を0.4mmとしているが、ワークの材質や切削目的等に応じて要請されるコーナーRの曲率半径rは異なるので、それぞれの事情に応じて畝部の個数Lを決定すればよい。特に、畝部の個数Lを奇数とすれば、コーナーRの頂点に連なる中心線が畝部となり、溝部とする場合に比較して折断性が向上することが確認できた。すなわち、上記の関係式を満たすLのうちでもLを奇数とすることが好ましいと言える。
【0023】
図6は、
図5に示す刃先部材110のC-C断面図である。図示するように、畝部133と溝部134が交互に配置され、両端に位置する頂面121に対して全体的に窪んでいる。なお、本実施形態においては、頂面121と周側面122のなす角は鋭角である。
【0024】
図7は、
図5に示す刃先部材110のD-D断面図である。D-Dは、上述の二等分線に沿う平面である。図示するように上面と断面の交線は、頂面121と中央の畝部133の境界から下降し始めて要部131へ到達し、さらに第2すくい部126として窪んで最下点へ至ると、その後隆起部127として隆起してコーナーR125とは反対側の頂面121へ到達する。
【0025】
図8は、コーナーR125の拡大概略図であり、具体的には
図5に示すE部の拡大図である。上述のように畝部133と溝部134は、頂面121から要部131へ向かって形成されているが、頂面121は研磨された平面であるので、頂面121と畝部133および溝部134との交差線Lは波状に現れる。
【0026】
交差線Lは、畝部133に相当する部分でコーナーR125とは反対方向に凸状の曲線となり、溝部134に相当する部分でコーナーR125の方向に凸状の曲線となる。その接続点を変曲点P1とする。隣接する2つのP1のうち、畝部133の曲線を挟む2つのP1(図の例では、中央の畝部133aの曲線を挟む2つのP1)の距離であるd1を頂面121との境界における畝部133の幅とする。また、隣接する2つのP1のうち、溝部134の曲線を挟む2つのP1(図の例では、中央の畝部133aに隣接する溝部134aの曲線を挟む2つのP1)の距離であるd2を頂面121との境界における溝部134の幅とする。このとき、d2>d1であることが好ましい。すなわち、頂面121との境界において溝部134の幅は畝部133の幅より広いことが好ましい。このような関係を満たす場合に、切屑を第1すくい部132へ円滑に導くことが確認された。なお、幅の定義はこれに限らず、畝部133に相当する部分でコーナーR125とは反対方向に凸状の曲線の部分と、溝部134に相当する部分でコーナーR125の方向に凸状の曲線の部分がそれぞれ区別できればよい。例えば、両曲線間に直線部分があってもそれぞれが区別できるのであれば構わない。
【0027】
また、畝部133は、コーナーR125の円弧から要部131へ向かって幅が一定に設けられている。具体的には、例えば、交差線Lにおいて、上述の畝部133の曲線を挟む2つのP1を結ぶ直線と、これに平行で畝部133の曲線の頂点P0を通る直線の2直線に対して等距離の直線が、交差線Lと交わる2点をそれぞれ中間点P3とする。この2つの中間点P3を通りすくい面のすくい角に平行な平面で畝部133を切断したときの幅d3を畝部133の幅と定める。この幅d3は、要部131へ向かって一定である。例えば、d3は0.01mm以上0.3mm以下が好ましい。畝部133の幅を一定にすると、溝部134は、コーナーR125の円弧から要部131へ向かって幅が漸減するように設けられることになる。このような、畝部133の幅と溝部134の幅の関係を満たす場合、切屑が要部131へ向かって円滑に絞り込まれることが確認された。なお上記においては、幅d3を用いることにより畝部133の幅が一定であることを定義したが、幅の定義はこれに限らない。また、幅が多少揺らぐ場合であっても、畝部133の凸状の曲線が頂部の曲率半径を保ったまま要部131へ向かって延在する場合にも、同様の効果が得られることが確認された。頂部の曲率半径としては、平面視で0.01mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0028】
次に、他の実施例として切削インサート100’について説明する。切削インサート100’は切削インサート100に対してすくい部の構成が異なる。他の要素の構成や機能は切削インサート100の対応する各要素の構成や機能と同様であるのでその説明を省略し、異なる構成や機能について説明する。
【0029】
図9は、他の実施例における切削インサート100’の部分拡大図である。切削インサート100’の刃先部材110’におけるコーナーR125’の曲率半径は、切削インサート100の刃先部材110におけるコーナーR125の曲率半径よりも大きい0.8mmを想定している。これに合わせて、台金190’のコーナーも曲線に形成されている。
【0030】
第1すくい部132’は、コーナーR125’側を円弧として扇状に傾斜する点は切削インサート100の第1すくい部132と同様であるが、コーナーR125’の大きさに合わせて、大きな扇状となっている。
【0031】
図10は、刃先部材110’のコーナーR125’付近を斜方から観察した部分拡大図であり、具体的には
図9に示すF部の拡大図である。第1すくい部132’は、頂面121から当該扇状の放射中心である要部131’へ向かって、共に窪みつつ傾斜する交互に配列された畝部133’と溝部134’を有する。ただし、刃先部材110’においては、隆起部127’がコーナーR125’側へせり出しており、要部131’は、隆起部127’に覆われている。そこで、それぞれの畝部133’および溝部134’は、要部131’までは到達せず、頂面121’と要部131’の半分程度の長さに設けられている。
【0032】
このように構成された刃先部材110’を採用する切削インサート100’は、第1すくい部132で絞り込まれた切屑をいち早く隆起部127’に衝突させ、左右の第2すくい部126周側面122またはワークに導くことができる。ワークの材質や切削目的等によってはこのような切屑処理が好ましい場合もあり、切削インサート100’は、そのような場合に好適である。
【0033】
以上の本実施形態においては、切削インサート100、100’が菱形柱状の場合を説明したが、全体形状はこれに限るものではない。また、切削インサートの本体部210への装着方法も、装着ねじ310を用いる場合に限らない。また、切削インサートに固着される刃先部材は一つに限らず、複数であっても構わない。一つの切削インサートが複数の刃先部材を備えれば、本体部210への装着の向きを変えることにより、一つの切削インサートを長期間利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100、100’…切削インサート、110、110’…刃先部材、120…焼結体、121、121’…ランド面、122…周側面、123…第1稜線、124…第2稜線、125、125’…コーナーR、126、126’…第2すくい部、127、127’…隆起部、128…ブレーカ壁面、131、131’…要部、132、132’…第1すくい部、133、133’、…畝部、134、134’…溝部、140…基台、190、190’…台金、191…装着孔、200…切削工具、210…本体部、220…装着座、310…装着ねじ、320…シム
【要約】
【課題】平坦な頂面を有しながらも切屑処理性にすぐれた切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具は、周側面と、平坦な頂面と、周側面と頂面が交差する稜線のうち、2つの直線状の稜線を接続するコーナーRの稜線に少なくとも形成された切れ刃と、コーナーR側を円弧として頂面から放射中心である要部へ向かって共に窪みつつ傾斜する交互に配列された畝部と溝部を有する扇状のすくい部とを備える。
【選択図】
図3