(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】厚み測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/06 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G01B7/06 C
(21)【出願番号】P 2018107387
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017119645
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-029111(JP,A)
【文献】特開昭63-308503(JP,A)
【文献】特開平09-005039(JP,A)
【文献】特開2015-079979(JP,A)
【文献】実開昭61-155711(JP,U)
【文献】特開2008-256715(JP,A)
【文献】特開2010-016279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面端部を有する略柱状の第1の電極、及び前記第1の電極の前記平面端部と同一平面上の端面を有して前記第1の電極を囲みかつ前記第1の電極と絶縁されて配置される第2の電極、を含む電極ヘッドと、
露出した第1の平面を有する導電性かつ多孔質の第1の多孔質部材と、
前記第1の多孔質部材を支持固定して前記第1の多孔質部材へエアを導入する第1の支持固定部材と、
露出した第2の平面を有する導電性かつ多孔質の第2の多孔質部材と、
前記第2の多孔質部材を支持固定して前記第2の多孔質部材へエアを導入する第2の支持固定部材と、
前記電極ヘッドに対向した位置にある被測定物の厚みを測定する測定部と、を備え、
前記電極ヘッドは、第1の電極ヘッドと、第2の電極ヘッドとを含み、
前記第1の電極ヘッドは、前記第1の電極ヘッドの前記第1の電極の前記平面端部が前記第1の多孔質部材の前記第1の平面と同一平面で、前記第1の多孔質部材によって柱側面を囲まれ、かつ前記第2の多孔質部材の前記第2の平面に平行に対向するように配置され、
前記第2の電極ヘッドは、前記第2の電極ヘッドの前記第1の電極の前記平面端部が前記第2の多孔質部材の前記第2の平面と同一平面で、前記第2の多孔質部材によって柱側面を囲まれ、かつ前記第1の多孔質部材の前記第1の平面に平行に対向するように配置され、
前記測定部は、
前記第1の電極ヘッドと前記第1の多孔質部材との間及び前記第2の電極ヘッドと前記第2の多孔質部材との間にそれぞれ交流電流を印加する交流電流発生手段と、
前記第2の電極と前記交流電流発生手段との間に挿入されて、前記第1の電極と前記第2の電極を交流的に同電位にするインピーダンス変換手段と、
前記第1の電極ヘッドの前記第2の電極と前記第1の多孔質部材との間及び前記第2の電極ヘッドの前記第2の電極と前記第2の多孔質部材との間の電圧値をそれぞれ測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段から得られた前記電圧値を基に前記被測定物の厚みを演算する演算手段と、を備えることを特徴とする厚み測定装置。
【請求項2】
向かい合う一対の前記電極ヘッドそれぞれの前記第1の電極の前記平面端部及び前記第2の電極の前記端面を、前記第1の平面に平行な仮想平面へ投影した領域が、それぞれ一致するように前記電極ヘッドが配置されることを特徴とする請求項1に記載の厚み測定装置。
【請求項3】
向かい合う前記電極ヘッドそれぞれの前記第1の電極の前記平面端部及び前記第2の電極の前記端面を、前記第1の平面に平行な仮想平面へ投影した領域が、それぞれ独立するように前記電極ヘッドが配置されることを特徴とする請求項1に記載の厚み測定装置。
【請求項4】
前記第1の多孔質部材及び前記第2の多孔質部材が多孔質カーボンを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の厚み測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、平成29年6月19日付けの出願を基礎とする国内優先権主張の出願である。本発明は、フィルム等の被測定物を連続的に非接触で測定を可能にする静電容量式の厚み測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の厚みを非接触で測定する静電容量方式の測定装置は、測定プローブ電極間に被測定物を挿入し、被測定物の厚みを測定するものである。例えば静電容量方式を用いて厚み測定を行う装置が特許文献1にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8―29111号公報
【文献】特開2008-232793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでロールで連続して送られるフィルムの厚みを非接触で測定する手段として、ロール片側よりフィルムを繰り出し、反対側でロールにてフィルムを巻き取る構造で、この中間部にフィルムの厚みを測定する装置を設置することが公知である。この場合、測定箇所付近のフィルムが波を打ったりせずフラットな状態にしておかないと高い精度で測定することが困難であることが知られている。そこで測定対象のフィルムの部分的な反りや撓みを矯正する手法として、中空円筒型のエアノズルを静電容量計の外周に設けたり、扁平型エアノズルをフィルム斜め方向に設けたりするなどして、測定箇所において連続して送られるフィルムをフラットにする方法が特許文献2にて開示されている。
【0005】
しかしながらこの方法では、ノズルの形状を最適なものとする条件出しに時間を要するという課題があった。またノズルはフィルムの厚みを測定する箇所近傍に設けるのが望ましいが、静電容量式の厚み測定装置ではこのノズルを静電容量計の近傍に配置するとノズルの影響を受けやすいという課題があった。
【0006】
そして被測定物のフィルムは、誘電体のみで構成されているもの、誘電体の片面若しくは両面に導電箔や導電層を積層して構成されているもの等があり、それぞれの測定に対応したものが要望されている。
【0007】
このような問題に鑑みて本発明は、連続して送られる種々のタイプのフィルムの厚みを安定して高精度に非接触で測定可能にする厚み測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る厚み測定装置は、上記の目的を達成するために、
平面端部を有する略柱状の第1の電極、及び第1の電極の平面端部と同一平面上の端面を有して第1の電極を囲みかつ第1の電極と絶縁されて配置される第2の電極、を含む電極ヘッドと、
露出した第1の平面を有する多孔質の第1の多孔質部材と、
第1の多孔質部材を支持固定して第1の多孔質部材へエアを導入する第1の支持固定部材と、
露出した第2の平面を有する導電性かつ多孔質の第2の多孔質部材と、
第2 の多孔質部材を支持固定して第2の多孔質部材へエアを導入する第2の支持固定部材と、
電極ヘッドに対向した位置にある被測定物の厚みを測定する測定部と、を備え、
電極ヘッドは、第1の多孔質部材によって柱側面を囲まれ、電極ヘッドの第1の電極の平面端部が第2の平面と平行で所定の距離で対向するように配置され、
測定部は、
電極ヘッドと第2の多孔質部材との間に交流電流を印加する交流電流発生手段と、
第2の電極と交流電流発生手段との間に挿入されて、第1の電極と第2の電極を交流的に同電位にするインピーダンス変換手段と、
電極ヘッドの第2の電極と第2の多孔質部材との間の電圧値を測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段から得られた電圧値を基に被測定物の厚みを演算する演算手段と、を備えて構成されている。
【0009】
本発明の一態様に係る厚み測定装置は、上記の目的を達成するために、
平面端部を有する略柱状の第1の電極、及び第1の電極の平面端部と同一平面上の端面を有して第1の電極を囲みかつ第1の電極と絶縁されて配置される第2の電極、を含む電極ヘッドと、
露出した第1の平面を有する導電性かつ多孔質の第1の多孔質部材と、
第1の多孔質部材を支持固定して第1の多孔質部材へエアを導入する第1の支持固定部材と、
露出した第2の平面を有する導電性かつ多孔質の第2の多孔質部材と、
第2の多孔質部材を支持固定して第2の多孔質部材へエアを導入する第2の支持固定部
材と、
電極ヘッドに対向した位置にある被測定物の厚みを測定する測定部と、を備え、
電極ヘッドは、第1の電極ヘッドと、第2の電極ヘッドとを含み、
第1の電極ヘッドは、第1の電極ヘッドの第1の電極の平面端部が第1の多孔質部材の第1の平面と同一平面で、第1の多孔質部材によって柱側面を囲まれ、かつ第2の多孔質部材の第2の平面に平行に対向するように配置され、
第2の電極ヘッドは、第2の電極ヘッドの第1の電極の平面端部が第2の多孔質部材の第2の平面と同一平面で、第2の多孔質部材によって柱側面を囲まれ、かつ第1の多孔質部材の第1の平面に平行に対向するように配置され、
測定部は、
第1の電極ヘッドと第1の多孔質部材との間及び第2の電極ヘッドと第2の多孔質部材との間にそれぞれ交流電流を印加する交流電流発生手段と、
第2の電極と交流電流発生手段との間に挿入されて、第1の電極と第2の電極を交流的に同電位にするインピーダンス変換手段と、
第1の電極ヘッドの第2の電極と第1の多孔質部材との間及び第2の電極ヘッドの第2の電極と第2の多孔質部材との間の電圧値をそれぞれ測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段から得られた電圧値を基に被測定物の厚みを演算する演算手段と、を備えて構成されている。
【0010】
また、向かい合う一対の電極ヘッドそれぞれの第1の電極の平面端部及び第2の電極の端面を、第1の平面に平行な仮想平面へ投影した領域が、それぞれ一致するように電極ヘッドが配置されて構成されている。
【0011】
また、向かい合う電極ヘッドそれぞれの第1の電極の平面端部及び第2の電極の端面を、第1の平面に平行な仮想平面へ投影した領域が、それぞれ独立するように電極ヘッドが配置されて構成されている。
【0012】
そして、第1の多孔質部材及び第2の多孔質部材が多孔質カーボンを含んで構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の厚み測定装置によれば、
第1の支持固定部材及び第2の支持固定部材から第1の多孔質部材及び第2の多孔質部材へそれぞれエアを供給して、対向する第1の多孔質部材と第2の多孔質部材からエアを吹き出し、第1の多孔質部材と第2の多孔質部材の間に位置する被測定物をフラットな形状に保って釣り合わせることができると共に、
電極ヘッドが対を成して複数設けられ、電極ヘッドと導電性の第1の多孔質部材及び導電性の第2の多孔質部材間に交流電流を印加して第2の電極と第1の多孔質部材及び導電性の第2の多孔質部材間の電圧値を測定することで、連続的に移動する導電箔や導電層を積層しているフィルムの全体の厚みを容易に測定することができる。
【0015】
また、対向する電極ヘッドは被測定物の同じ位置を測定しており、特に両面に導電箔若しくは導電層を積層しているフィルムの全体厚みを高精度に測定することができる。
【0016】
また、各電極ヘッドは他の電極ヘッドから出力される電気力線の影響を受けにくいので、特に片面に導電箔や導電層を積層しているフィルムの誘電体の厚みを高精度に測定することができる。
【0017】
そして、第1の多孔質部材及び第2の多孔質部材が多孔質カーボンであることから、通気性に優れて、被測定物をフラットな形状に保って釣り合わせることが容易であってなおかつ加工性にも優れた厚み測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を平面B1で切断した断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を平面B2で切断した断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を平面B3で切断した断面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る厚み測定装置について、図面を基に詳細な説明を行う。
図1は本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。
【0020】
第1の電極ヘッド1aは、被測定物100の厚みを測定するために後述の第1の電極11aと第2の電極12aが組み込まれたものである。
【0021】
第1の支持固定部材2aは例えば金属製であって、第1の多孔質部材5aを固定支持すると同時に、挿入された第1の電極ヘッド1aを固定している。第1の支持固定部材2aは継ぎ手で構成されるエア取入口3aから導かれるエア流路4aをその内部に有しており、このエア流路4aは第1の多孔質部材5aとの接合面に繋がっている。なお本実施形態では第1の電極ヘッド1aは1個であるが、これに限らず第1の支持固定部材2a側であって、被測定物100の平面上で進行方向Aに対して垂直な方向Wすなわち被測定物100の幅方向に複数個設けても良い。
【0022】
第1の多孔質部材5aは例えば多孔質カーボンであって、多孔質形状によって通気性のある部材である。第1の多孔質部材5aは多孔質カーボンに限らず多孔質の焼結金属材料等であっても良い。第1の多孔質部材5aは第1の支持固定部材2aにシール材及び接着剤によって接着固定されている。そして第1の多孔質部材5aは第1の支持固定部材2aから露出している第1の平面8aを有している。この構成でエア取入口3aから導かれたエアは、エア流路4aを経て第1の多孔質部材5aへ送られ、第1の多孔質部材5aの露出した第1の平面8aから吹き出される。
【0023】
第2の多孔質部材5bは導電性の部材であって例えば多孔質カーボンである。そして第2の多孔質部材5bの露出した第2の平面8bが第1の多孔質部材5aと平行に所定の距離で対向するように、第2の多孔質部材5bが配置されている。
【0024】
第2の支持固定部材2bは、第1の支持固定部材2aと同様に、第2の多孔質部材5bを支持固定し、継ぎ手で構成されるエア取入口3bから導かれたエア流路4bをその内部に有しており、このエア流路4bは第2の多孔質部材5bとの接合面に繋がっている。よってエア取入口3bから導かれたエアは、エア流路4bを経て第2の多孔質部材5bへ送られ、第2の多孔質部材5bの露出した第2の平面8bから吹き出される。
【0025】
そしてこの第1の多孔質部材5aと第2の多孔質部材5bの間に被測定物100が挿入され、進行方向Aへ連続して送られる。本発明の第1の実施形態は、例えば誘電体101からなる被測定物100の厚みを離間して測定するのに有用である。
【0026】
図2は本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を、
図1で示す平面B1にて切断した断面図である。第1の電極ヘッド1aは、本実施形態では円柱状の金属で導電性の第1の電極11aと、第1の電極11aを囲う絶縁部材と、この絶縁部材によって第1の電極11aと絶縁される円筒形状の導電性金属からなる第2の電極12aとを含んでいる。なお第1の電極ヘッド1a内にある、第1の電極11aの平面端部7aと、第2の電極12aの端面とは、同一平面となるように配置されている。そして第1の電極ヘッド1aは、さらに第2の電極12aの円筒側面に絶縁部材を介して、筐体をなす筒状の部材と、第1の電極11a及び第2の電極12aにそれぞれ独立して接続している電線と、この電線を固定する固定部材等を含んでいる。なお第1の電極11aは円柱状に限らず、断面が楕円や多角形などの、略柱状のものであっても良い。
【0027】
第1の支持固定部材2a及び第2の支持固定部材2b内に設けられたエア流路4a及びエア流路4bは、それぞれ第1の支持固定部材2a及び第2の支持固定部材2b内で分岐して配置されている。エア取入口3a及びエア取入口3bから導入されたエアは第1の多孔質部材5a及び第2の多孔質部材5bへ送られる。そして第1の電極ヘッド1aは、第1の支持固定部材2aに設けられた固定用穴に挿嵌されて固定されていて、その柱側面が第1の多孔質部材5aによって囲まれている。
【0028】
第1の多孔質部材5a及び第2の多孔質部材5bは、第1の支持固定部材2a及び第2の支持固定部材2bそれぞれから供給されたエアを第1の平面8a及び第2の平面8bそれぞれから対向して吹き出し、両者の中間に置かれた被測定物100はこのエアを釣り合わせることでフラットに浮遊しつつ送ることができる。吹き出されるエアは第1の多孔質部材5a及び第2の多孔質部材5bによって面状に広がり、円筒形ノズルや扁平ノズルよりも被測定物100を容易にフラットな状態にすることが可能となる。
【0029】
なお本実施形態において第1の多孔質部材5a及び第2の多孔質部材5bは、上下垂直方向に対向して配置されているがこれに限らず、例えば垂直方向に移動する被測定物を挟んで、第1の多孔質部材5a及び第2の多孔質部材5bが水平方向に対向して配置されていても良い。
【0030】
図3は本発明の第1の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。交流電流発生手段13aは交流定電流を発生させるものであって、一方がグランド側の第2の多孔質部材5bに接続され他方が途中で分岐され、分岐された線は第1の電極11aと、インピーダンス変換手段15aを介して第2の電極12aとにそれぞれ接続されている。インピーダンス変換手段15aによって、第1の電極11aと第2の電極12aは交流的に同電位になるので、第1の電極11aから第2の電極12aへ電流が流れることがない。それゆえ第1の電極11aと第2の電極12a間の静電容量の影響をキャンセルすることができる。本発明ではインピーダンス変換手段15aはバッファーアンプを用いている。そして電圧測定手段14aは、第2の多孔質部材5bと第2の電極12aとの間の電圧値を測定するように配置されている。測定部16aは、交流電流発生手段13a、電圧測定手段14a、インピーダンス変換手段15aを有し、電圧測定手段14aにて測定した電圧値から被測定物の厚みを演算する演算手段17aを含むものである。
【0031】
なお第2の電極12aは第1の電極11aとグランド側の第2の多孔質部材5bとの間の電気力線6が均一になるように第1の電極11aの周囲に同電位を加えて電極端部の効果を取り除くものである。そして測定部16aにおいて、電圧測定手段14aが第2の電極12aの電圧値を測るように配置されているのは、第1の電極11aに比べて第2の電極12aのインピーダンスが小さいことからより正確に電圧値を測定できるからである。
【0032】
第1の電極11aの平面端部7aと第2の多孔質部材5bとの距離gは予め定めたものであって、被測定物100(誘電体101)の厚みや誘電体101の誘電率等を勘案して決定される。本実施形態ではこの距離は固定としているが、可変にできる構成であっても良い。
【0033】
以下、本発明の第1の実施形態において、誘電体からなる被測定物100の厚み測定を行う測定部の16aの演算手段17aの演算の詳細について説明する。被測定物100は厚みt
1(未知)、比誘電率εs(既知)の誘電体のフィルムである。第1の電極11aと被測定物100間の距離をg
1、第2の多孔質部材5bと被測定物100間の距離をg
2、それぞれの空間の静電容量をC
1、C
2、誘電体101の静電容量をC
Fとすると、これらの静電容量は、直列に接続されていると見なせるので、電極間の合成静電容量Cは式(1)で表される。
【数1】
なおε
0は真空誘電率、Aは第2の電極12aの円筒端部の面積である。したがって、電圧測定手段14aの出力電圧は、式(2)で表される。但し、Iは交流電流、ωは角周波数である。
【数2】
【0034】
一方被測定物100がない場合は、式(3)となる。
【数3】
よって被測定物100の有無での電圧の差V
a-V
0は、式(4)で表される。
【数4】
ゆえに電圧の差は被測定物100の厚みt1に比例する。したがって被測定物100の厚みt
1はV
aを測定して得て式(5)を演算することで求めることができる。
【数5】
【0035】
すなわち厚みが既知の物を用意して、被測定物が無い時に零点を調整し、既知の厚さの被測定物を挿入した時の出力で校正を行えば、被測定物の厚みt1を測定することができる。
【0036】
図4は本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。そして
図5は本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を
図4で示す平面B2にて切断した断面図である。基本は第1の実施形態と同じであるので、相違点のみ説明する。
【0037】
本発明の第2の実施形態の厚み測定装置の測定部は、同じ寸法の電極ヘッドが対を成して複数設けられていて、第1の多孔質部材5aがある上側の第1の電極ヘッド1a、第1の支持固定部材2a、第1の多孔質部材5a等は第1の実施形態と同じである。一方下側の第2の多孔質部材5b側にも第2の電極ヘッド1bが設けられていて、第1の電極ヘッド1aと第2の電極ヘッド1bは対向するように配置されている。そして第1の電極ヘッド1aは、第1の支持固定部材2aに設けられた固定用穴に挿嵌されて固定されていて、その柱側面が第1の多孔質部材5aによって囲まれている。一方、第2の電極ヘッド1bは、第2の支持固定部材2bに設けられた固定用穴に挿嵌されて固定されていて、その柱側面が第2の多孔質部材5bによって囲まれている。また第1の電極ヘッド1aの第1の電極11aの平面端部7a及び第2の電極12aの端面と、第2の電極ヘッド1bの第1の電極11bの平面端部7b及び第2の電極12aの端面とを、第1の平面8aに平行な仮想平面へ投影した領域が一致するように一対の電極ヘッドが配置されている。なお本実施形態では第1の電極ヘッド1aと第2の電極ヘッド1bはそれぞれ1個であるが、これに限らず第1の支持固定部材2a側、第2の支持固定部材2b側にそれぞれ複数個設けることができる。
【0038】
本発明の第2の実施形態の厚み測定装置では、特に誘電体101の両面に導電体102及び導電体103が積層されている被測定物100全体の厚みを測定するのに有用である。
【0039】
図6は本発明の第2の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。交流電流発生手段13aは交流定電流を発生させるものである。上側の第1の電極ヘッド1aにおいては、交流電流発生手段13aの一方がグランド側の第1の多孔質部材5aに接続され、他方が途中で分岐され、分岐された線は第1の電極11aと、インピーダンス変換手段15aを介して第2の電極12aとにそれぞれ接続されている。第1の実施形態同様に、インピーダンス変換手段15aによって、第1の電極11aと第2の電極12aは交流的に同電位になるので、第1の電極11aから第2の電極12aへ電流が流れることがない。それゆえ第1の電極11aと第2の電極12a間の静電容量の影響をキャンセルすることができる。そして電圧測定手段14aは第1の多孔質部材5aと第2の電極12aとの間の電圧値を測定するように配置されている。測定部16aは、交流電流発生手段13a、電圧測定手段14a、インピーダンス変換手段15aを有し、電圧測定手段14aにて測定した電圧値から被測定物の厚みを演算する演算手段17aを含むものである。
【0040】
一方下側の第2の電極ヘッド1bにおいては、交流電流発生手段13bの一方がグランド側の第2の多孔質部材5bに接続され、他方が途中で分岐され、分岐された線は第1の電極11bとインピーダンス変換手段15bを介して第2の電極12bにそれぞれ接続されている。インピーダンス変換手段15bによって、第1の電極11bと第2の電極12bは交流的に同電位になるので、第1の電極11bから第2の電極12bへ電流が流れることがない。それゆえ第1の電極11bと第2の電極12b間の静電容量の影響をキャンセルすることができる。そして電圧測定手段14bは第2の多孔質部材5bと第2の電極12bとの間の電圧値を測定するように配置されている。測定部16bは、測定部16aと同様に、交流電流発生手段13b、電圧測定手段14b、インピーダンス変換手段15bを有し、電圧測定手段14bにて測定した電圧値から被測定物の厚みを演算する演算手段17bを含むものである。そして測定部16aと測定部16b両方の測定によって被測定物の厚みを得ることができる。なお交流電流発生手段13aのグランド側と交流電流発生手段13bのグランド側は必ずしも同じ共通のグランドである必要はないが、共通であっても良い。
【0041】
本発明の第2の実施形態において、誘電体101の両面に導電体102と導電体103が積層された被測定物100の厚み測定の詳細について説明する。被測定物100は厚みt
2(未知)、比誘電率εs(既知)の積層フィルムであって、第1の電極11aと被測定物100間の距離をg
1、第1の電極11aと導電体102間の空間の静電容量をC
1、導電体102と第1の多孔質部材5a間の静電容量をC
01とすると、これらの静電容量は、直列に接続されていると見なせるので、第2の電極12aと第1の多孔質部材5a間の合成静電容量Caは式(6)で表される。
【数6】
なおε
0は真空誘電率、Aは第2の電極12aの円筒端部の面積である。
【0042】
ここで第1の多孔質部材5aはグランドに接続されていて静電容量C
01はC
1と比較して充分大きいことから合成静電容量C
aに与える影響は小さく無視できる。したがって、電圧測定手段14aの出力電圧V
aは、式(7)で表される。
【数7】
【0043】
一方下側において、第1の電極11bと被測定物100間の距離をg
2、第1の電極11bと導電体103間の空間の静電容量をC
2、導電体103と第2の多孔質部材5b間の静電容量をC
02とすると、これらの静電容量は、直列に接続されていると見なせるので、第2の電極12bと第2の多孔質部材5b間の合成静電容量C
bは式(8)で表される。
【数8】
【0044】
ここで第2の多孔質部材5bはグランドに接続されていて静電容量C
02はC
2と比較して充分大きいことから合成静電容量C
bに与える影響は小さく無視できる。したがって、電圧測定手段14bの出力電圧V
bは式(9)で表される。
【数9】
なおε
0は真空誘電率、Aは第2の電極12bの円筒端部の面積である。
【0045】
第1の電極11aと第1の電極11b間の距離gは既知であることから、被測定物100の厚みt
2はV
a、V
bを測定してこれを用いて式(10)を計算することで得ることができる。
【数10】
【0046】
図7は本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の測定部の斜視外観図である。そして
図8は本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の測定部を
図7で示す平面B3にて切断した断面図である。基本は第1の実施形態及び第2の実施形態と同じであるので、相違点のみ説明する。
【0047】
本発明の第3の実施形態の厚み測定装置は、上側の第1の電極ヘッド1a、第1の支持固定部材2a、第1の多孔質部材5a等は第1の実施形態、第2の実施形態と同じである。第3の実施形態では、下側の第2の支持固定部材2b側に設けられた第2の電極ヘッド1bは、第1の電極ヘッド1aと直接対向しない位置に配置されている。すなわち、第1の電極ヘッド1aの第1の電極11aの平面端部7a及び第2の電極12aの円筒端面を第1の電極11aの平面端部7aに平行な仮想平面へ投影した領域と、第2の電極ヘッド1bの第1の電極11bの平面端部7b及び第2の電極12bの円筒端面を上記仮想平面に投影した領域と、が独立するようにそれぞれ配置されている。なお本実施形態では第1の電極ヘッド1aと第2の電極ヘッド1bはそれぞれ1個であるが、これに限らず第1の支持固定部材2a側、第2の支持固定部材2b側にそれぞれ複数個設けても良い。
【0048】
そして本発明の第3の実施形態の厚み測定装置では、誘電体101の片面に導電体102が積層されている誘電体101の厚みを測定するのに有用である。
【0049】
図9は本発明の第3の実施形態に係る厚み測定装置の模式図である。下側の第2の電極ヘッド1b(第1の電極11b、第2の電極12b)の配置位置が異なること、第1の多孔質部材5a側のグランドと第2の多孔質部材5b側のグランドとが共通であること、を除けば構成及び配線は第2の実施形態と同じである。
【0050】
本発明の第3の実施形態において、誘電体101の片面に導電体102が積層された誘電体101の厚み測定の詳細について説明する。誘電体101は厚みt
4(未知)、比誘電率εs(既知)、導電体102は厚みt
3(既知)の積層フィルムであって、第1の電極11aと導電体102間の距離をg
1、第1の電極11aと導電体102間の空間の静電容量をC
1、導電体102と第1の多孔質部材5a間の静電容量をC
01とすると、これらの静電容量は、直列に接続されていると見なせるので、第2の電極12aと第1の多孔質部材5a間の合成静電容量C
aは式(11)で表される。
【数11】
なおε
0は真空誘電率、Aは第2の電極12aの円筒端部の面積である。
【0051】
ここで第1の多孔質部材5aはグランドに接続されていて静電容量C
01はC
1と比較して充分大きいことから合成静電容量C
aに与える影響は小さく無視できる。したがって、電圧測定手段14aの出力電圧V
aは式(12)で表される。
【数12】
【0052】
一方下側では第1の電極11bと誘電体101間の距離をg
2、第1の電極11bと誘電体101間の空間の静電容量をC
2、誘電体の静電容量をC
F1、導電体102と第2の多孔質部材5b間のうち、誘電体101部の静電容量をC
F2、空間部の静電電容量をC
02とすると、これらの静電容量は、直列に接続されていると見なせるので、第2の電極12bと第2の多孔質部材5b間の合成静電容量C
bは式(13)で表される。
【数13】
【0053】
ここで第2の多孔質部材5bはグランドに接続されていて静電容量C
F2及び静電容量C
02は静電容量C
F1.及び静電容量C
2と比較して充分大きいことから合成静電容量C
bに与える影響は小さく無視できる。したがって、電圧測定手段14bの出力電圧V
bは、式(14)で表される。
【数14】
【0054】
一方、予め被測定物がない状態にて、上下いずれかの交流電流発生手段で交流を印加して電圧測定手段にて測定することで電圧V
0を式(15)で得ておくことができる。
【数15】
V
bとV
0の差をとって、
【数16】
整理すると、式(17)となる。
【数17】
g
1は式(12)から得られるのでこれを代入してt
4を求める式にすると式(18)となる。
【数18】
導電体102の厚みt
3は既知であり、予めV
0は測定済であり、V
a、V
bを測定してこれを用いて式(18)で計算することで誘電体101の厚みt
4を得ることができる。
【0055】
本発明の第3の実施形態では下側の第2の支持固定部材2b側に設けられた第2の電極ヘッド1bを上側の第1の電極ヘッド1aと直接対向しない独立した位置に配置することで、導電体102に両方から加わる交流電流の相互干渉を防止し、片面に導電箔若しくは導電層が積層された被測定物の誘電体の厚みを精度良く測定することを可能にしている。
【0056】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以上の説明における「平面」「同一平面」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「平面」「同一平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平面である」「実質的に同一平面である」という意味である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の活用例として、金属箔に誘電体を積層形成するフィルム等の製造装置、両面銅張基板などの厚み測定装置、金属フィルムの厚み測定装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1a :第1の電極ヘッド
1b :第2の電極ヘッド
2a :第1の支持固定部材
2b :第2の支持固定部材
3a、3b :エア取入口
4a、4b :エア流路
5a :第1の多孔質部材
5b :第2の多孔質部材
6 :電気力線
7a、7b :平面端部
8a :第1の平面
8b :第2の平面
11a、11b :第1の電極
12a、12b :第2の電極
13a、13b :交流電流発生手段
14a、14b :電圧測定手段
15a、15b :インピーダンス変換手段
16a、16b :測定部
17a、17b :演算手段
100 :被測定物
101 :誘電体
102、103 :導電体