IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイモ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】有機性汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/147 20190101AFI20220627BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20220627BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20220627BHJP
   C08F 20/60 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C02F11/147
B01D21/01 107A
B01D21/01 107Z
C08F20/34
C08F20/60
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018028345
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019141789
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂野 幸治
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-245464(JP,A)
【文献】特開2019-118853(JP,A)
【文献】特開2015-057272(JP,A)
【文献】特開2009-106825(JP,A)
【文献】特開2013-094720(JP,A)
【文献】特開平02-107400(JP,A)
【文献】特開昭58-223500(JP,A)
【文献】特開平06-343976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/14
B01D21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥に、高分子凝集剤を添加、混合撹拌後、有機凝結剤を添加し、混合する汚泥の脱水方法において、前記高分子凝集剤が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体60~100モル%、下記一般式(2)で表されるアニオン性単量体0~30モル%、非イオン性単量体0~40モル%を構成単位とする高分子からなる高分子凝集剤あるいはpH7におけるカチオン当量値5.2meq/g以上のアミジン系高分子凝集剤から選択される一種以上であり、前記有機凝結剤がジアリルアミン系高分子、縮合系アミン系高分子、エチレンイミン系高分子、ビニルアミン系高分子、ジシアンジアミド系高分子から選択される一種以上であり、前記高分子凝集剤及び有機凝結剤の4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度をSLVとすると、高分子凝集剤よりも有機凝結剤のSLVが低く、且つ、前記有機凝結剤のSLVが、1~10mPa・sであることを特徴とする有機性汚泥の脱水方法。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1~3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシル基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X は陰イオンをそれぞれ表わす
一般式(2)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO 、CSO 、CONHC(CHCHSO 、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOO 、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記有機凝結剤のpH7における、カチオン当量値が、3.0~22.0meq/gであることを特徴とする請求項1に記載の有機性汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種汚泥を処理するのに際し高分子凝集剤を使用する汚泥の脱水方法に関するものであり、詳しくは高分子凝集剤と有機凝結剤を併用する有機性汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水から沈降させた初沈生汚泥、活性汚泥槽からの流出水から沈降させた余剰汚泥あるいは混合生汚泥、これら汚泥を嫌気消化処理した消化汚泥といった有機性の汚泥に対して凝集処理剤を添加し脱水処理する方法が下水処理場で用いられている。凝集処理剤として、一般的にポリアクリルアミド(PAM)系水溶性高分子凝集剤が汎用されている。しかし、近年の難脱水汚泥に対しては、PAM系高分子凝集剤単独では効果が不良な場合が多く、様々な脱水処方が提案されている。第一に無機凝集剤を添加後に、PAM系高分子凝集剤を併用する処方が挙げられる。これは、汚泥粒子に対して無機凝集剤が電荷中和を行ない、これにより生成した微細フロックを高分子凝集剤が架橋して粗大フロックを形成する作用機構である。PAM系高分子凝集剤の中でも両性PAMを使用する場合は、無機凝集剤を添加することでアニオン性に帯電した有機物の荷電中和を行ない、汚泥粒子内に存在するカルボキシル基を電気的に中和し疎水化し内部に保持していた水分を放出する作用を成す。次いで、両性PAMを添加することで両性PAM内のアニオン基は汚泥中に残存した過剰の金属イオンと反応し、カチオン基は汚泥中の未反応のカルボキシル基と反応し荷電を中和すると共に、脱水しやすい様にフロックを粗大化させるという作用機構が考えられる。この無機凝集剤を併用する処方に対して更なる脱水効率の改善を図る処方が提案されている。
例えば、特許文献1では、汚泥を脱水するに際し、重合系カチオン性高分子凝集剤、無機凝集剤をこの順で添加、混合した後、脱水する方法が開示されている。特許文献2では、有機性汚泥に高分子凝集剤を添加後、凝集フロックを濃縮し、無機凝集剤を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。
更には特許文献3では、汚泥に両性高分子凝集剤を添加・撹拌後、無機凝集剤を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。
しかし、これらの様に無機凝集剤を使用すると発生するスラッジ量が多量になり、スラッジを処理するコストが増加する等の問題がある。又、スラッジ中に含まれるアルミニウム化合物などの環境への放出が懸念される。
又、無機凝集剤の中でもポリ硫酸第二鉄の併用は有効であるが、無機凝集剤を高分子凝集剤の後に添加すると鉄イオンが汚泥中ではなく処理水側に移行することが報告されている。
そこで、無機凝集剤ではなく有機凝結剤を併用する処方も提案されている。例えば、特許文献4では、有機性汚泥に縮合型ポリアミンカチオン性高分子凝集剤を添加した後、両性高分子凝集剤を添加混合するか、これら混合凝集剤を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。しかし、有機性汚泥に対しては無機凝集剤に比べて有機凝結剤では脱水性の大きな改善効果は得られないことが多く、更なる脱水処方の改善が要望されている。
【0003】
【文献】特開2002-166300号公報
【文献】特開2012-45441号公報
【文献】特開2000-15300号公報
【文献】特開2000-225400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機性汚泥の脱水方法において、高分子凝集剤と有機凝結剤を組み合わせて処理する有機性汚泥の効率的な脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討の結果、以下に述べる発明に達した。即ち、有機性汚泥に対して、高分子凝集剤及び有機凝結剤の4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度をSLVとすると、一液目として高分子凝集剤を添加、混合撹拌後、高分子凝集剤のSLVより低いSLVを有する有機凝結剤を添加し、混合する有機性汚泥の脱水方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤を適用することで、無機凝集剤併用処方に比べて脱水効率が改善することが可能となる。その結果、スラッジ量の削減やそれに伴う処理コストが抑制される。無機凝集剤成分中の環境系に有害な物質を放出するリスクが低下する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明においては有機性汚泥に高分子凝集剤及び有機凝結剤を添加して処理する汚泥の脱水方法である。一般的に有機凝結剤の機能は、マイナスに帯電して分散している懸濁粒子の表面電荷を中和して凝結させる作用を有するものであり、この作用機能を発揮させるために、比較的カチオン密度(カチオン当量値)が高く、低い分子量の高分子が有機凝結剤として適用される。一方、高分子凝集剤は、懸濁粒子に対する架橋吸着作用によって微細粒子を凝集させて粗大なフロックを形成させる作用を有するため、有機凝結剤に比べて分子量が高い必要がある。本発明においても、それぞれ単独でこれら作用を有するものを使用する。
【0008】
本発明においては、有機性汚泥に対して、一液目に高分子凝集剤を添加する。
一液目に添加する高分子凝集剤として、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体10~100モル%、下記一般式(2)で表されるアニオン性単量体0~30モル%、非イオン性単量体0~90モル%を構成単位とする高分子からなる高分子凝集剤を使用することができる。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはヒドロキシアルキル基、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシル基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO 、CSO 、CONHC(CHCHSO 、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOO 、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0009】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物である。例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等である。これらカチオン性単量体は10~100モル%であるが、より凝集処理効果を示すには30~100モル%が好ましい。
又、一般式(2)で表されるアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。この高分子凝集剤の重量平均分子量は、100万~1000万が好ましく、200万~800万が更に好ましい。
【0010】
一液目に添加する高分子凝集剤として、アミジン系高分子凝集剤を使用することができる。アミジン系高分子凝集剤としては、公知のものが使用でき、例えば、特開平5-192513号公報等で開示されている方法で製造されたものが挙げられる。重量平均分子量としては、100万~500万が好ましく、200万~500万が更に好ましい。
【0011】
本発明における高分子凝集剤は、高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した4質量%食塩水溶液粘度(SLV;0.5質量%塩水溶液粘度)は、5mPa・s以上、100mPa・s以下の範囲であり、好ましくは5mPa・s以上、80mPa・s以下である。この0.5質量%塩水溶液粘度は、B型粘度計において1号ローター、60rpmで測定した値である。
【0012】
本発明において、二液目として有機凝結剤を添加する。二液目に添加する有機凝結剤としては、一般的に使用されているものが使用可能であり、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子、ジアリルアミン系高分子、縮合系アミン系高分子、エチレンイミン系高分子、ビニルアミン系高分子、ジシアンジアミド系高分子等が挙げられる。
【0013】
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子として、製造する際に使用する、カチオン性単量体のうち三級アミノ基含有カチオン性単量体の例としてはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびこれらの塩等が挙げられ、四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体の例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらカチオン性単量体単独での重合体、カチオン性単量体二種以上の重合体、カチオン性単量体と非イオン性単量体との共重合体でも良い。非イオン性単量体として、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられ、これらの中で一種以上のものとカチオン性単量体との共重合体を使用できる。
更にこれらのジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子は、カチオン性構成単位の効果を阻害しない範囲でアニオン性単量体を使用しても良い。アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-2-メチルスルフォン酸、マレイン酸、及びこれらの塩が挙げられる。これら、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子の重量平均分子量は、1万~200万の範囲が好ましい。
又、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子は、高分子凝集剤と同様な組成でも良いが分子量の指標となるSLVが、高分子凝集剤のSLVより低いことが必須である。
【0014】
ジアリルアミン系高分子として使用する単量体は、アリルアミン、ジアリルメチルアミンおよびこれらの塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これら単独で重合したもの、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子を製造する際に使用されるカチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体から選択される一種以上と任意に共重合したものも適用できる。重量平均分子量は、1万~300万の範囲が好ましく、1万~200万がより好ましい。
【0015】
縮合系アミン系高分子としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどとエピクロロヒドリンとの縮合物、あるいは、上記脂肪族アミン/エピクロロヒドリン縮合物をさらにエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンあるいはヘキサメチレンジアミンと縮合させたものなどが挙げられる。重量平均分子量は、1000~10万の範囲が好ましい。
【0016】
エチレンイミン系高分子としては、ポリエチレンイミンあるいはポリエチレンイミン変生物等が挙げられる。重量平均分子量は、1万~200万の範囲が好ましい。
【0017】
ビニルアミン系高分子としては、N-ビニルカルボン酸アミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等を必須モノマーとする重合体の酸またはアルカリ変性物からなるポリビニルアミンやビニルアミン単位と前記ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子を製造する際に使用されるカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体から選択される一種以上との共重合体が挙げられる。重量平均分子量は、1万~200万の範囲が好ましい。
【0018】
ジシアンジアミド系高分子としては、水溶性のジシアンジアミド・ホルムアルデヒド縮合物あるいはジシアンジアミド・ホルムアルデヒド・塩化アンモニウム縮合物が挙げられる。基本的には、酸あるいはそのアンモニウム塩の存在下で、ジシアンジアミドにホルムアルデヒドを加え、縮合させた生成物である。重量平均分子量は、1万~50万の範囲が好ましい。
【0019】
これら有機凝結剤のpH7におけるカチオン当量値は3.0meq/g以上が好ましい。3.0~22.0meq/gが好ましい範囲である。有機凝結剤の高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した4質量%食塩水溶液粘度(SLV)が、1~10mPa・sが好ましい範囲である。高分子濃度が0.2質量%になるように水で完全溶解したときの25℃において測定した0.2質量%水溶液粘度(AQV)は、1~30mPa・sが好ましい範囲である。0.2質量%水溶液粘度(AQV)は、B型粘度計において2号ローター、30rpmで測定した値である。B型粘度計としては東京計器製B8M等が使用される。これら有機凝結剤を二種以上組み合わせて使用することも可能である。
【0020】
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤の製品形態は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルジョンあるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。
【0021】
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤を製造する際の重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用しても良い。使用する場合は、架橋性単量体を単量体総量に対し、0.00005~0.050質量%の範囲内で存在させる。単量体組成や重合条件により異なるが、0.050質量%を超えると架橋が進行しすぎて水不溶性となるため本発明の用途としては好ましくはない。架橋性単量体の例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸-1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N-ビニル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが好ましく適用されている。
【0022】
本発明の汚泥脱水方法が適用される有機性汚泥とは、脱水がより困難な有機分比率の高い汚泥である。具体的には有機物の指標となる汚泥の有機物量(VSS、浮遊物質中の強熱減量、質量%対SS)が45質量%以上の汚泥である。中でも特にM-アルカリ度、アニオン量が高い汚泥に対してより有効である。M-アルカリ度は、500~10000mg/Lの範囲、アニオン量は、4.0~15.0meq/Lの範囲においてより効果を発揮するためこれら汚泥への適用が好ましい。尚、各種測定値は、定法(下水試験方法)に基づく測定による。
【0023】
本発明における高分子凝集剤を添加後、有機凝結剤を添加する汚泥の脱水方法は、一液目の高分子凝集剤により汚泥中の粒子と架橋吸着による凝集作用によりフロックを形成させ、その後、カチオン量が高く、ある一定の範囲の分子量を有する有機凝結剤を添加することで形成フロック間を、凝結を主体とした作用により結合させることでより締まった強固なフロックを形成するためと推測される。そのため、高分子凝集剤単独処方、無機凝集剤併用処方に比べて脱水効率が高まると考えられる。
【0024】
本発明における汚泥脱水方法では、無機凝集剤を使用しなくても有効であるが、効果を阻害しない範囲において無機凝集剤、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等を使用しても差し支えない。
【0025】
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤は、製品のままの状態で添加することもできるし、任意の濃度に水で溶解、希釈して汚泥に添加できる。溶解する場合は、一般的に溶解濃度0.05~0.5質量%を適用する。又、汚泥に対する添加率は、通常50~2000ppmであるが、対象汚泥により任意に調節する。
【0026】
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤添加処理後、スクリュー濃縮機、遠心濃縮機、楕円盤型濃縮機等や、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円盤型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等の脱水機を任意に適用できる。
【実施例
【0027】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0028】
先ず、本発明で使用する高分子凝集剤試料A~Eを準備、調製した。これらの組成、物性を表1に示す。次いで、本発明で使用する有機凝結剤試料1~7を準備、調製した。これらの組成、物性を表2に示す。又、無機凝集剤としてポリ硫酸第二鉄を用意した。
【0029】
(表1)
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
AAM:アクリルアミド
形態;P:粉末、EM:油中水型エマルジョン
0.2質量%水溶液粘度(AQV);高分子濃度が0.2質量%になるように水で溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)
0.5質量%塩水溶液粘度(SLV);4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0030】
(表2)
形態;AQ:水溶液重合体
0.2質量%水溶液粘度(AQV);高分子濃度が0.2質量%になるように水で溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)
0.5質量%塩水溶液粘度(SLV);4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0031】
(実施例1)
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤添加処方の汚泥脱水試験を実施した。対象汚泥として下水消化汚泥(pH7.6、SS分15750mg/L、有機物量69.8質量%/SS、粗浮遊物量877mg/L、電気伝導度620mS/m、M-アルカリ度3358mg/L、アニオン量8.6meq/L)を用いた。当汚泥200mLをポリビーカーに採取し試験に用いた。一液目に前記表1の高分子凝集剤試料Aの0.2質量%溶解液を対汚泥液量270ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、汚泥を40メッシュ濾布にて60秒濾過、残渣汚泥液量に対して、二液目に前記表2の有機凝結剤試料の0.2質量%溶解液を100ppm添加、スパチュラによる混合攪拌10回実施後、ナイロン製濾布(#202)により60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cmで30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。その結果を表3に示す。
【0032】
(比較例1)実施例1と同じ汚泥を対象に同様な試験を添加順序や試料を変更して実施した。その結果を表3に示す。
【0033】
(表3)
【0034】
一液目に高分子凝集剤を添加後、二液目に有機凝結剤を添加した実施例に対し、一液目に有機凝結剤添加、二液目に高分子凝集剤を添加した処方、高分子凝集剤同士を添加する処方ではケーキ含水率が高くなった。ポリ硫酸第二鉄と高分子凝集剤を併用する処方ではある程度の脱水効率を上げるにはポリ硫酸第二鉄の添加率を増加させる必要が生じた。
【0035】
(実施例2)
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤添加処方の汚泥脱水試験を実施した。対象汚泥として下水余剰汚泥(pH6.5、SS分9500mg/L、有機物量81.6質量%/SS、粗浮遊物量393mg/L、電気伝導度248mS/m、M-アルカリ度719mg/L、アニオン量4.1meq/L)を用いた。当汚泥200mLをポリビーカーに採取し試験に用いた。一液目に前記表1の試料Cの0.2質量%溶解液を、対液200ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、汚泥を40メッシュ濾布にて60秒濾過、残渣汚泥液量に対して、二液目に前記表2の有機凝結剤試料Cの0.2質量%溶解液を100ppm添加、スパチュラによる混合攪拌10回実施後、ナイロン製濾布(#202)により60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cmで30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。その結果を表4に示す。
【0036】
(比較例2)実施例2と同じ汚泥を対象に同様な試験を添加順序や試料を変更して実施した。その結果を表4に示す。
【0037】
(表4)
【0038】
一液目に高分子凝集剤を添加後、二液目に有機凝結剤を添加した実施例に対し、一液目に有機凝結剤添加、二液目に高分子凝集剤を添加する処方や、ポリ硫酸第二鉄と高分子凝集剤を併用する処方ではケーキ含水率が高くなった。
【0039】
(実施例3)
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤添加処方の汚泥脱水試験を実施した。対象汚泥として下水消化汚泥(pH7.3、SS分10500mg/L、有機物量73.8質量%/SS、粗浮遊物量997mg/L、電気伝導度717mS/m、M-アルカリ度3327mg/L、アニオン量7.2meq/L)を用いた。当汚泥200mLをポリビーカーに採取し試験に用いた。一液目に前記表1の試料Bの0.2質量%溶解液を、対液230ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、汚泥を40メッシュ濾布にて60秒濾過、残渣汚泥液量に対して、二液目に前記表2の有機凝結剤試料の0.2質量%溶解液を100ppmあるいは150ppm添加、スパチュラによる混合攪拌10回実施後、ナイロン製濾布(#202)により60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cmで30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、処理水の鉄イオン量を原子吸光光度法(JISK-0102法)により測定した(原汚泥7ppm)。これらの結果を表5に示す。
【0040】
(比較例3)実施例3と同じ汚泥を対象に同様な試験を添加順序や試料を変更して実施した。その結果を表5に示す。
【0041】
(表5)
【0042】
一液目に高分子凝集剤を添加後、二液目に有機凝結剤を添加した実施例に対し、一液目に有機凝結剤添加、二液目に高分子凝集剤を添加した処方や、ポリ硫酸第二鉄と高分子凝集剤を併用する処方ではケーキ含水率が高くなった。又、二液目としてポリ硫酸第二鉄を添加する場合では処理水に鉄イオンが多く検出され、処理水に鉄イオンが移行することが分かった。
【0043】
(実施例4)
本発明における高分子凝集剤及び有機凝結剤添加処方の汚泥脱水試験を実施した。対象汚泥として産廃汚泥(pH8.1、SS分18000mg/L、有機物量73.6質量%/SS、粗浮遊物量1042mg/L、電気伝導度1676mS/m、M-アルカリ度8195mg/L、アニオン量11.8meq/L)を用いた。当汚泥200mLをポリビーカーに採取し試験に用いた。一液目に前記表1の試料Eの0.2質量%溶解液を、対液700ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、汚泥を40メッシュ濾布にて60秒濾過、残渣汚泥液量に対して、二液目に前記表2の有機凝結剤試料の0.2質量%溶解液を100ppm添加、スパチュラによる混合攪拌10回実施後、ナイロン製濾布(#202)により60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cmで30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。その結果を表6に示す。
【0044】
(比較例4)実施例4と同じ汚泥を対象に同様な試験を添加順序や試料を変更して実施した。その結果を表6に示す。
【0045】
(表6)
【0046】
一液目に高分子凝集剤を添加後、二液目に有機凝結剤を添加した実施例に対し、一液目に有機凝結剤添加、二液目に高分子凝集剤を添加した処方、ポリ硫酸第二鉄と高分子凝集剤を併用する処方、高分子凝集剤同士を添加する処方ではケーキ含水率が高くなった。
【0047】
本発明における有機性汚泥に対して一液目に高分子凝集剤を添加後、二液目に有機凝結剤を添加することで、本発明以外の添加処方や無機凝集剤併用処方等に比べて脱水効率が改善することが確認できた。