(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】引戸の自動閉止装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
E05F1/16 C
(21)【出願番号】P 2018078437
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-144421(JP,A)
【文献】実開昭51-53735(JP,U)
【文献】特開2016-205067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000057(US,A1)
【文献】特開2007-16521(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014103074(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の上端部に固定され、戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行自在とされる吊り車型ランナ装置と、前記吊り車型ランナ装置より前記引戸の開方向側に固定されるとともに、繰り出されたワイヤが前記引戸の閉方向の端部における前記ガイドレール又は戸枠に固定され、前記ワイヤの巻き取りにより前記引戸に閉方向の付勢力を与える
渦巻バネ式付勢装置とを備え、
前記吊り車型ランナ装置が、
ローラ支持部材の両側に、ローラ支軸によって支持されたローラを備え、これらローラが前記ガイドレールの走行溝を転動することにより前記ガイドレールに沿って走行自在とされるランナ本体と、前記引戸の上端部に固定されるランナ取付部材と、前記ランナ本体及びランナ取付部材を連結する連結部材とを備え、
前記連結部材に、前記ワイヤが挿通可能なワイヤ挿通部が設けられて
おり、
前記連結部材が、対面して配置された2枚の板材からなり、少なくとも前記ワイヤ挿通部において前記2枚の板材が離隔して配置されるとともに、前記2枚の板材の上部は、前記ローラ支持部材の両側にそれぞれ固定され、このローラ支持部材より下側に延在する部分によって、このローラ支持部材の幅分だけ離隔する前記ワイヤ挿通部が形成され、前記2枚の板材の下部は、前記ランナ取付部材に備えられた板材を両側から挟み込むように設けられ、これらを一体に貫通する軸部材によって固定され、前記2枚の板材の上部及び下部の中間部に、前記ワイヤ挿通部の離隔幅を確保するための上部に向けて離隔幅が拡大する拡幅部が設けられていることを特徴とする引戸の自動閉止装置。
【請求項2】
前記渦巻バネ式付勢装置が、前記引戸の上端部に形成された切欠き部に嵌合して設けられている請求項
1記載の引戸の自動閉止装置。
【請求項3】
前記渦巻バネ式付勢装置から上方に向けて繰り出された前記ワイヤが、滑車によって前記引戸の開閉方向に方向転換されている請求項1
、2いずれかに記載の引戸の自動閉止装置。
【請求項4】
前記引戸の閉止時に前記引戸を閉まり位置まで引き込む引込み装置が設けられている請求項1~
3いずれかに記載の引戸の自動閉止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻バネ式の付勢装置を備えることによって開放した引戸を自動的に閉止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸の自動閉止装置が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、引戸の走行体が傾斜レールを走行することによって引戸が自重によって自動的に閉止できるようにしたものが開示され、下記特許文献2には、シリンダ内にスライド自在に組み込まれた自閉用重錘の自重によって自動的に閉止できるようにしたものが開示され、下記特許文献3には、上框部に巻き取りゼンマイ方式の自閉機構を取付け、その付勢ワイヤの先端を引戸の滑車に固定することによって自動的に閉止できるようにしたものが開示されている。また、下記特許文献4には、ワイヤーが巻き付けられた回転体が一方向に回転することで圧縮コイルバネが圧縮して蓄勢し、この圧縮コイルバネの復元力によって前記回転体が他方向に回転することによって前記ワイヤーを介して閉扉力が引戸に伝達付与されるようにしたものが開示されている。
【0003】
また、前述の下記特許文献3には、引戸の上端部にピニオンを備えた制動機構が取り付けられるとともに、上框部に前記ピニオンが噛合う制動用ラックが取り付けられ、前記ピニオンが制動用ラックと噛合っている間のみ制動がかけられるようにすることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/073277号
【文献】特開平7-189549号公報
【文献】特開2001-303843号公報
【文献】特開2011-208443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2及び3に記載される自動閉止装置では、このような自動閉止装置が備えられない通常のものと比較して、特別な傾斜レールや自閉用重錘、制動機構、制動用ラックなどを設置しなければならず、通常のものとの部材の共通化が難しく、製作のコストが嵩む問題があった。
【0006】
また、上記特許文献4に記載される自動閉止装置では、ワイヤの取り回しが複雑で、故障しやすいと考えられるとともに、装置自体も複雑でメンテナンスしにくいなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、特別な部材を必要とせず部材の共通化が可能となるとともに、渦巻バネ式付勢装置から繰り出されたワイヤの設置及び取り回しを簡略化した引戸の自動閉止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、引戸の上端部に固定され、戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行自在とされる吊り車型ランナ装置と、前記吊り車型ランナ装置より前記引戸の開方向側に固定されるとともに、繰り出されたワイヤが前記引戸の閉方向の端部における前記ガイドレール又は戸枠に固定され、前記ワイヤの巻き取りにより前記引戸に閉方向の付勢力を与える渦巻バネ式付勢装置とを備え、
前記吊り車型ランナ装置が、ローラ支持部材の両側に、ローラ支軸によって支持されたローラを備え、これらローラが前記ガイドレールの走行溝を転動することにより前記ガイドレールに沿って走行自在とされるランナ本体と、前記引戸の上端部に固定されるランナ取付部材と、前記ランナ本体及びランナ取付部材を連結する連結部材とを備え、
前記連結部材に、前記ワイヤが挿通可能なワイヤ挿通部が設けられており、
前記連結部材が、対面して配置された2枚の板材からなり、少なくとも前記ワイヤ挿通部において前記2枚の板材が離隔して配置されるとともに、前記2枚の板材の上部は、前記ローラ支持部材の両側にそれぞれ固定され、このローラ支持部材より下側に延在する部分によって、このローラ支持部材の幅分だけ離隔する前記ワイヤ挿通部が形成され、前記2枚の板材の下部は、前記ランナ取付部材に備えられた板材を両側から挟み込むように設けられ、これらを一体に貫通する軸部材によって固定され、前記2枚の板材の上部及び下部の中間部に、前記ワイヤ挿通部の離隔幅を確保するための上部に向けて離隔幅が拡大する拡幅部が設けられていることを特徴とする引戸の自動閉止装置が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、ガイドレールに沿って引戸を吊持する吊り車型ランナ装置と、繰り出されたワイヤの巻き取りにより引戸に閉方向の付勢力を付与する渦巻バネ式付勢装置とが備えられている。このとき、前記吊り車型ランナ装置やガイドレールなどの部材は、自動閉止機能を有しない通常の引戸においても使用可能なものであり、特別な部材を必要とせず、自動閉止機能を備えた引戸と通常の引戸との部材の共通化が可能となる。
【0010】
また、前記吊り車型ランナ装置には、前記ランナ本体とランナ取付部材とを連結する連結部材が備えられ、この連結部材に、前記ワイヤが挿通可能なワイヤ挿通部が設けられているため、引戸の建込みの際、前記渦巻バネ式付勢装置から繰り出されたワイヤを前記ワイヤ挿通部に挿通してガイドレール又は戸枠の所定の位置に固定すればよいので、ワイヤの設置及び取り回しが簡略化できるようになる。
【0011】
また、上記請求項1記載の発明では、前記吊り車型ランナ装置のランナ本体とランナ取付部材とを連結する連結部材の構造として、通常は軸部材によって構成しているところを、本発明では前記ワイヤ挿通部を形成するのに好適な2枚の板材を対面して配置した構造としている。したがって、2枚の板材を離隔して配置した離隔部によって、前記ワイヤ挿通部を形成することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記渦巻バネ式付勢装置が、前記引戸の上端部に形成された切欠き部に嵌合して設けられている請求項1記載の引戸の自動閉止装置が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、前記渦巻バネ式付勢装置を引戸に設ける際、前記引戸の上端部に形成された切欠き部に嵌合しているため、渦巻バネ式付勢装置を設けるに当たって戸枠やガイドレールなど建物側に固定される部材に影響を与えることがなく、これらの部材として通常のものを使用でき、部材の共通化が可能となる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記渦巻バネ式付勢装置から上方に向けて繰り出された前記ワイヤが、滑車によって前記引戸の開閉方向に方向転換されている請求項1、2いずれかに記載の引戸の自動閉止装置が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、前記渦巻バネ式付勢装置から上方に向けて繰り出されたワイヤを、引戸の開閉方向に方向転換するために滑車を用いているため、ワイヤの取り回しが単純化でき、ワイヤの繰り出し及び巻き取りがスムーズになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記引戸の閉止時に前記引戸を閉まり位置まで引き込む引込み装置が設けられている請求項1~3いずれかに記載の引戸の自動閉止装置が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、前記引込み装置を設けることにより、引戸が自動的に閉止する際、勢いよく閉まることによる衝撃音や引戸の跳ね返りを防止し、引戸が閉止位置までゆっくりと引き込まれるようになる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、特別な部材を必要とせず部材の共通化が可能になるとともに、渦巻バネ式付勢装置から繰り出されたワイヤの設置及び取り回しが簡略化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る自動閉止装置を用いた引戸1(閉状態)の要部の正面図である。
【
図2】本発明に係る自動閉止装置を用いた引戸1の要部の分解斜視図である。
【
図4】吊り車型ランナ装置3を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【
図6】渦巻バネ式付勢装置5を示す、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【
図7】ガイドレール2の端部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
本発明に係る引戸の自動閉止装置は、
図1及び
図2に示されるように、引戸1の上端部に固定され、戸枠の鴨居に固設されたガイドレール2に沿って走行自在とされる吊り車型ランナ装置3と、この吊り車型ランナ装置3より引戸1の開方向側の上端部に固定されるとともに、繰り出されたワイヤ4が引戸1の閉方向の端部におけるガイドレール2又は戸枠に固定され、前記ワイヤ4の巻き取りにより引戸1に閉方向の付勢力を与える渦巻バネ式付勢装置5とを備えている。これにより、引戸1の開操作によって前記渦巻バネ式付勢装置5から繰り出されたワイヤ4を、渦巻バネ式付勢装置5が巻き取ることにより、引戸1が自動的に閉止するようになっている。
【0022】
前記吊り車型ランナ装置3は、
図3及び
図4に示されるように、前記ガイドレール2に沿って走行自在とされるランナ本体6と、前記引戸1の上端部に固定されるランナ取付部材7と、前記ランナ本体6及びランナ取付部材7とを連結する連結部材8とを備えている。
【0023】
そして、前記連結部材8には、前記ワイヤ4が挿通可能なワイヤ挿通部9が設けられている。すなわち、吊り車型ランナ装置3より引戸の開方向側に固定された渦巻バネ式付勢装置5から延びるワイヤ4は、前記ワイヤ挿通部9を通って引戸1の閉方向の端部に固定されるようになっている。
【0024】
前記連結部材8に前記ワイヤ挿通部9が設けられる点を除いて、吊り車型ランナ装置3のランナ本体6及びガイドレール2は、自動閉止機能を有しない通常の引戸においても使用可能な部材であるため、特に戸枠に固設されるガイドレール2や、それに組み込まれるランナ本体6として、特別な部材を必要とせず、部材の共通化が可能となる。
【0025】
また、前記吊り車型ランナ装置3の連結部材8に、渦巻バネ式付勢装置5から繰り出されたワイヤ4が挿通可能なワイヤ挿通部9が設けられているため、引戸1の建込みの際、前記渦巻バネ式付勢装置5から繰り出されたワイヤ4をワイヤ挿通部9に挿通して所定の位置に固定すればよいので、ワイヤ4の設置及び取り回しが簡略化できるようになる。
【0026】
以下、前記引戸の自動閉止装置について更に詳細に説明すると、
前記ガイドレール2としては、一般の引戸に用いられるガイドレールをそのまま使用することができ、特別なレールは不要である。前記ガイドレール2は、
図2に示されるように、下面中央にレール長手方向の全長に亘って前記吊り車型ランナ装置3の連結部材8が係合した状態でレール長手方向に移動可能なスリット2aが形成されるとともに、このスリット2aの両側に後述のランナ本体6のローラ11、11…が転動可能な走行溝2b、2b(
図7参照。)が形成されることにより、断面略C字状に形成されている。このガイドレール2は、天井面に設けられた複数の通孔に挿通される固定ねじによって戸枠の鴨居の下面に固設されている。
【0027】
前記吊り車型ランナ装置3のランナ本体6は、詳細には
図4に示されるように、ローラ支持部材12の両側に夫々2個づつ、ローラ支軸10A、10Bによって支持されたローラ11、11…を備え、これらローラ11、11…がガイドレール2の走行溝2b、2b(
図7参照。)を転動することにより前記ガイドレール2に沿って移動自在となっている。
【0028】
前記ランナ取付部材7は、
図2に示されるように、引戸1の上端の角部に形成された切欠き部1aに固定される固定台座7aと、この固定台座7aに嵌合される取付部材本体7bと、この取付部材本体7bの側面を覆うカバー材7cとから構成されている。前記ランナ取付部材7には、引戸1の上下方向位置及び/又は室内外方向位置を調整するための調整機構を備えるようにしてもよい。
【0029】
前記連結部材8は、
図3及び
図4に示されるように、引戸1の室内外方向に対面して配置された2枚の板材13、13からなり、少なくとも前記ワイヤ挿通部9において前記2枚の板材13、13が離隔して配置されている。つまり、2枚の板材13、13を引戸1の室内外方向に離隔して配置した離隔部によって、引戸1の開閉方向に貫通する前記ワイヤ挿通部9が形成されている。前記2枚の板材13、13の上部は、ランナ本体6におけるローラ支持部材12の両側にそれぞれ固定され、このローラ支持部材12より下側に延在する部分によって、概ねこのローラ支持部材12の幅分だけ離隔するワイヤ挿通部9が形成されている。一方、前記2枚の板材13、13の下部は、ランナ取付部材7に備えられた上方に突出する板材を両側から挟み込むように設けられ、これらを一体的に貫通する軸部材によって固定されている。ランナ取付部材7から上方に延びる2枚の板材13、13は、中間部で離隔幅が拡大する拡幅部が設けられ、前記ワイヤ挿通部9のための離隔幅を確保している。
【0030】
一般に吊り車型ランナ装置は、引戸の開閉方向の両端にそれぞれ設けられるが、上記のワイヤ挿通部9が形成された吊り車型ランナ装置3は、引戸1の閉方向側の端部のみに設け、開方向側の端部には前記ワイヤ挿通部9が形成されない吊り車型ランナ装置を設けてもよいが、部材の共通化を図る観点から、全ての吊り車型ランナ装置として、前記ワイヤ挿通部9が形成された吊り車型ランナ装置3を用いるのが望ましい。
【0031】
次に、前記渦巻バネ式付勢装置5は、
図5に示されるように、引戸1の上端部に形成された切欠き部14に嵌合して設けられている。前記切欠き部14は、引戸1の上端部であって開閉方向中間の閉方向寄り位置に設けられ、引戸1を室内外方向に貫通する略四角形状に形成されている。
【0032】
前記渦巻バネ式付勢装置5は、
図5及び
図6に示されるように、引戸1に固定されるケーシング15と、このケーシング15に固定される渦巻バネ式付勢装置本体16と、前記ケーシング15に取り付けられ、前記渦巻バネ式付勢装置本体16から繰り出されるワイヤ4の方向転換を行う滑車17とを備えている。前記ケーシング15は、ほぼ引戸1の厚み分だけ凹陥する凹陥部15aが形成され、その両側に引戸1の表面にネジ止めするための通孔が備えられたフランジ部15b、15bが形成されている。前記凹陥部15aの底面には、前記渦巻バネ式付勢装置本体16をネジ止めするためのネジ孔が形成されるとともに、上端部に前記滑車17が取り付けられている。
【0033】
前記渦巻バネ式付勢装置本体16は、前記ケーシング15の凹陥部15aに嵌合可能な大きさで形成された外装体の内部に主要な部材がパッケージングされている。この内部には、支軸と、この支軸により回動自在に支持された前記ワイヤ4を巻き取る巻取りドラムと、前記支軸に内方端が係止されるとともに、前記巻取りドラムに外方端が係止された渦巻バネ部材とが備えられている(図示せず)。引戸1の開操作により、ワイヤ4が巻取りドラムから繰り出されるとともに、前記巻取りドラムの回転によって渦巻バネ部材に蓄勢される。その後、開操作の停止により、蓄勢された前記渦巻バネ部材の復元力によって巻取りドラムが逆回転し、ワイヤ4が巻取りドラムに巻き取られ、引戸1が自動的に閉止するようになっている。
【0034】
前記渦巻バネ式付勢装置本体16の外装体の上面には、ワイヤ4の先端が延出する開孔が設けられている。この開孔から延出するワイヤ4は、渦巻バネ式付勢装置5を引戸1に取り付けた状態で、引戸1の室内外方向(厚み方向)の略中央部を上方に向けて繰り出されるようになっている。
【0035】
前記滑車17は、前記渦巻バネ式付勢装置本体16から上方に向けて繰り出されたワイヤ4を、引戸1の開閉方向に方向転換するためのものである。前記滑車17は、引戸1の室内外方向(厚み方向)の略中央部に配置され、ワイヤ4が引戸1の室内外方向の中央部を開閉方向に沿って配置されるようにしている。
図1に示されるように、前記滑車17の上端は、引戸1の上端より上側に突出して設けられ、引戸1の開閉方向に方向転換されたワイヤ4が、引戸1の上端より上側に離隔して配置されるようにしている。
【0036】
前記渦巻バネ式付勢装置5から繰り出されたワイヤ4の先端は、引戸1の閉方向の端部におけるガイドレール2又は戸枠に固定されている。
図1及び
図5に示される例では、ガイドレール2の端部に固定されている。ワイヤ4の先端をガイドレール2の端部に固定するには、
図7に示されるように、ガイドレール2の端部に、ワイヤ4が掛止可能な下側に突出する掛止軸18を備えた先端キャップ19を固定するとともに、ワイヤの先端を折り返してループ部4aを形成し、このループ部4aを前記掛止軸18に掛止することにより行うことができる。前記先端キャップ19は、本体部分がガイドレール2内に嵌合されるとともに、前記掛止軸18がガイドレール2のスリット部2aから下側に突出して設けられ、本体部分の上端にレール長手方向に延出する固定用延出部19aが備えられ、この固定用延出部19aに形成された通孔及びガイドレール2に形成された通孔を一体的に挿通する固定ねじ20によって戸枠の鴨居に固定されている。また、図示しないが、前記ワイヤ4の先端は、戸枠やガイドレール2に直接ネジ止めされるようにしてもよい
本発明に係る引戸の自動閉止装置では、
図8に示されるように、引戸1の閉止時に引戸1を閉まり位置まで引き込む引込み装置21を設けるのが好ましい。前記引込み装置21としては、一般に引戸の引込み装置として用いられているものを制限なく使用できる。前記引込み装置21は、例えば、前記引戸1とともにガイドレール2内を移動可能とした引込み装置本体22と、前記ガイドレール2の天井面から内方側に突出させた状態で設けられ、前記引込み装置本体22と係脱する関係にある係合ピン23とを備えている。
【0037】
前記引込み装置本体22としては、
図1に示されるように、ケース内を引戸1の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケースに形成されたスライド案内溝22aに係合する係合突部22bを有し、且つ上端部が前記係合ピン23と係脱する関係にあるスライダー22cと、ピストン先端が前記スライダー22cに連結された状態で前記ケース内に設けられるピストン式ダンパー(図示せず)と、一端が前記スライダー22cに係止されるとともに他端が前記ケースに係止され、前記スライダー22cに引戸1の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材(図示せず)とを備えたものを用いることができる。
【0038】
前記引戸1の閉止時には、前記スライダー22cが係合ピン23と係合することにより、前記ピストン式ダンパーによる制動力を受けながら、前記スプリング部材による付勢力により、引戸1を閉まり位置まで引き込むようになっている。
【符号の説明】
【0039】
1…引戸、2…ガイドレール、3…吊り車型ランナ装置、4…ワイヤ、5…渦巻バネ式付勢装置、6…ランナ本体、7…ランナ取付部材、8…連結部材、9…ワイヤ挿通部、10A・10B…ローラ支軸、11…ローラ、12…ローラ支持部材、13…板材、14…切欠き部、15…ケーシング、16…渦巻バネ式付勢装置本体、17…滑車、18…掛止軸、19…先端キャップ、20…固定ねじ、21…引込み装置、22…引込み装置本体、23…係合ピン