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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】施療ユニットおよびマッサージ機
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20220627BHJP
   A61H 15/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61H7/00 320A
A61H7/00 323F
A61H7/00 323M
A61H15/00 350F
A61H7/00 322Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018015039
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019130048
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000112406
【氏名又は名称】ファミリーイナダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181850(JP,A)
【文献】実開昭59-172424(JP,U)
【文献】特開2016-198371(JP,A)
【文献】実開昭56-016419(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施療子を有する施療部と、
斜板偏心カムを有する第一駆動部と、
偏心カムを有する第二駆動部と、を備え、
前記第一駆動部は、前記斜板偏心カムの回転を出力する第一出力軸を有し、
前記第二駆動部は、前記偏心カムの回転を出力する第二出力軸を有し、
前記施療部は、前記斜板偏心カムに接続され、前記斜板偏心カムの動作が伝達されており、
前記第一駆動部は、前記偏心カムに接続され、前記第一駆動部に前記偏心カムの動作が伝達されることを特徴とする施療ユニット。
【請求項2】
施療子を有する施療部と、
斜板偏心カムを有する第一駆動部と、
偏心カムを有する第二駆動部と、を備え、
前記第一駆動部は、前記斜板偏心カムの回転を出力する第一出力軸を有し、
前記第二駆動部は、前記偏心カムの回転を出力する第二出力軸を有し、
前記施療部は、前記偏心カムに接続され、前記偏心カムの動作が伝達されており、
前記第二駆動部は、前記斜板偏心カムに接続され、前記第二駆動部に前記斜板偏心カムの動作が伝達されることを特徴とする施療ユニット。
【請求項3】

前記施療部を押圧方向に沿う方向に移動させる第三駆動部を備え、

前記第三駆動部は、付勢手段であり、前記第三駆動部が前記第二駆動部を押圧方向に沿う方向に付勢することで、前記施療部を移動させることを特徴とする請求項1に記載の施療ユニット。
【請求項4】

前記施療部を押圧方向に沿う方向に移動させる第三駆動部を備え、

前記第三駆動部は、付勢手段であり、前記第三駆動部が前記第一駆動部を押圧方向に沿う方向に付勢することで、前記施療部を移動させることを特徴とする請求項2に記載の施療ユニット。
【請求項5】

前記施療部は、前記施療子として、互いに近接離反可能な第一施療子と第二施療子とを有する、請求項1から4の何れか一項に記載の施療ユニット。
【請求項6】

前記第二施療子は、先端部分が複数肢に分岐している、請求項5に記載の施療ユニット。
【請求項7】

前記施療子の先端部分に膨縮袋を有する、請求項1から6の何れか一項に記載の施療ユニット。
【請求項8】

前記偏心カムの偏心量は、前記斜板偏心カムの偏心量よりも大きい、請求項1から7の何れか一項に記載の施療ユニット。
【請求項9】

請求項1から8の何れか一項に記載の施療ユニットを備え、

前記施療部を、被施療者の肩部の施療に用いるマッサージ機。
【請求項10】

請求項1から9の何れか一項に記載の施療ユニットを備え、

前記施療部を、被施療者の背部の施療に用いるマッサージ機。
【請求項11】

前記被施療者の前記背部に対向するローラーを前記施療ユニットと一体に備え、

前記ローラーは、前記施療ユニットの昇降に伴って回転しながら前記背部に沿い昇降する請求項10に記載のマッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療ユニットおよび当該施療ユニットを用いたマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
被施療者の肩を挟み込んで揉んだり叩いたりすることにより施療を行うマッサージ機が知られている。例えば、特許文献1には、仰臥位にある被施療者の左右のそれぞれの肩の前後を一対の揉み手で挟み込む肩用揉み手段を有すると共に、一対の揉み手による肩の前後への近接離反の動きを実現するマッサージ機構を有するマッサージ機(据え置き型のマッサージ装置)が開示されている。
【0003】
特許文献2には、間隔をおいて配置され相互に近接離反することにより先端の当接部で被施療者の肩を挟み込む第1アームおよび第2アームと、第1アームと第2アームの間隔を変更すべく第1および第2アームに対して回転可能に取り付けられた回転軸とを有し、第1および第2アームの内少なくとも一方は回転軸に対して偏心および傾斜して取り付けられたマッサージ機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-046541号公報
【文献】特開2012-120549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マッサージ機とは、人(施療者)が被施療者に対して行っていたマッサージ行為を機械的な操作に代替するものである。したがって、例えば被施療部として肩を施療する場合、施療者が被施療者の肩を揉む際の腕や指の動きをマッサージ機が再現すれば、施療者が行っていたマッサージ行為を代替することができると考えられる。例えば、施療者が被施療者の肩のツボである肩井を刺激する際には、被施療者の肩の前方を、施療者が自己の四指で保持しつつ肩の上方から親指で押圧(指圧)して施療するのが好ましい。さらに施療感を向上させるためには、親指で押圧する際、施療者の腕もしくは肘の動き、つまり、押圧方向と交差する方向に沿う変位が親指を介して被施療者の肩に加わることが好ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のマッサージ機においては、一対の揉み手が被施療者の肩を前後から挟むように近接離反を繰り返す動作をするのであって、一方の揉み手が被施療者の肩の前方を保持しつつ他方の揉み手が肩を上方から押圧するような動作はしない。また、施療者の腕の動きに対応する、押圧方向と交差する方向に沿う動作もしない。
【0007】
また、特許文献2に記載のマッサージ機においても、第2実施形態においては、一対の当接部が被施療者の肩を前後から挟むように近接離反を繰り返す動作をするのであって、一方の当接部が被施療者の肩の前方を保持しつつ他方の当接部が肩を上方から押圧する動作はしない。また、施療者の腕の動きに対応する押圧方向と交差する方向に沿う動作もしない。
【0008】
このように、施療子が被施療部を押圧して施療する際に、さらに押圧方向に交差する方向に沿う変位を被施療部に加えつつ施療する施療ユニットおよび当該施療ユニットを用いたマッサージ機が求められている。
【0009】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、施療子が被施療部を押圧して施療する際に、さらに押圧方向に交差する方向に沿う変位を被施療部に加えつつ施療する施療ユニットおよび当該施療ユニットを用いたマッサージ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る施療ユニットの特徴構成は、
施療子を有する施療部と、
斜板偏心カムを有する第一駆動部と、
偏心カムを有する第二駆動部と、を備え、
前記第一駆動部もしくは前記第二駆動部の何れか一方の駆動部が前記施療部に接続されており、前記第一駆動部もしくは前記第二駆動部の何れか他方の駆動部は、前記一方の駆動部に接続されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、第一駆動部で施療子を有する施療部を押圧方向に揺動させつつ、さらに、第二駆動部で当該揺動方向と交差する方向にも施療子を大きく変位させることができる。そのため施療子が被施療部を押圧して施療する際に、さらに押圧方向に交差する方向に沿う変位を被施療部に加えつつ施療する施療ユニットを提供することができる。
【0012】
すなわち、上記構成によれば、第一駆動部もしくは第二駆動部の何れか一方の駆動部が施療部に接続されており、第一駆動部もしくは第二駆動部の何れか他方の駆動部は、当該一方の駆動部に接続されているため、第一駆動部および第二駆動部の変位動作の何れもが、直接、もしくは他方の駆動部を介して間接的に施療部に伝達される。そのため、斜板偏心カムを有する第一駆動部は、施療部を押圧方向に揺動させる。この際、偏心カムを有する第二駆動部が、施療部を、押圧方向と交差する方向にも大きく変位させることができる。
【0013】
例えば被施療部としての被施療者の肩を施療する場合、施療子は、第一駆動部により上下方向に揺動させられつつ肩を上方から押圧し、さらに、第二駆動部により、水平方向に大きく変位させられて、当該押圧動作にひねりを加えることができる。そのため、施療感を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記施療部は前記斜板偏心カムに接続されており、
前記第一駆動部は前記偏心カムに接続されており、
前記施療部には前記第一駆動部を介して前記偏心カムの動作が伝達される点にある。
【0015】
上記構成によれば、施療部は、第一駆動部の斜板偏心カムと接続されて、当該斜板偏心カムにより押圧方向に揺動させられる。さらに、第一駆動部が第二駆動部の偏心カムと接続されているため、施療部には当該第一駆動部を介して当該偏心カムの動作が伝達される。これにより、施療部は、第一駆動部と共に押圧方向と交差する方向に大きく変位させられる。
【0016】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記斜板偏心カムと、前記偏心カムとは、互いに独立した駆動源を有する点にある。
【0017】
上記構成によれば、斜板偏心カムと偏心カムとをそれぞれ独立して動作させることができる。つまり、施療子が被施療部を押圧して施療する際に、この押圧動作と、押圧方向に交差する方向に沿う変位動作とをそれぞれ独立して行って、施療者の腕や指の動きのような、複雑で繊細な動きを実現することができる。そのため、施療感を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記施療部を偏心方向に垂直な方向に移動させる第三駆動部を備え、
前記第三駆動部は、前記第一駆動部または前記第二駆動部の少なくとも何れか一方に接続されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、施療部を、第一駆動部または第二駆動部を介して、第三駆動部により偏心方向に垂直な方向に移動させることができる。
【0020】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記施療部は、前記施療子として、互いに近接離反可能な第一施療子と第二施療子とを有する点にある。
【0021】
上記構成によれば、第一施療子と第二施療子の近接離反によって、施療者の指による揉みに相当する施療を行うことができる。例えば第一施療子で押圧して施療する場合、第二施療子で被施療者の被施療部を保持すれば、施療感の良好な揉みを行える。
【0022】
例えば、被施療者の肩を上方から押圧し施療するには、第一施療子と第二施療子の動きを連携させて、第二施療子で被施療者の肩を保持しつつ第一施療子で肩を上方から押圧するのが適当である。よって、このような特徴構成とすれば、被施療者の肩の前方を第二施療子で保持しつつ第一施療子により被施療者の肩を上方から適切に施療することができる。
【0023】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記第二施療子は、先端部分が複数肢に分岐している点にある。
【0024】
上記構成によれば、第一施療子が親指を模しており、第二施療子が残りの四指を模している。よって、上記構成によれば、施療者が被施療者に対して親指と四指で被施療者を揉む際の指の動きに近づけて施療することができる。
【0025】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
前記施療子の先端部分に膨縮袋を有する点にある。
【0026】
上記構成によれば、施療者が自己の指で行う指圧に相当する施療をすることができる。
【0027】
本発明に係る施療ユニットの更なる特徴構成は、
偏心カムの偏心量は、前記斜板偏心カムの偏心量よりも大きい点にある。
【0028】
上記構成によれば、斜板偏心カムの偏心量を施療者の手首の動きを模した動作に対応させ、他方、偏心カムの偏心量を施療者の肘の動きを模した動作に対応させることができる。よって、上記構成によれば、施療者が被施療者に対して指と腕の動きで被施療者を揉む際の動作にさらに近づけて施療することができる。
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係るマッサージ機の特徴構成は、
上述の施療ユニットを備え、
前記施療部を、被施療者の肩部の施療に用いる点にある。
【0030】
上記構成によれば、施療子で、肩を上方から押圧しつつ、当該押圧動作にさらにひねりを加えて、施療感良く肩部を施療することができる。
【0031】
上記目的を達成するための本発明に係るマッサージ機の特徴構成は、
上述の施療ユニットを備え、
前記施療部を、被施療者の背部の施療に用いる点にある。
【0032】
上記構成によれば、施療子で、背部を上方背面から押圧しつつ、当該押圧動作にひねりを加えて、施療感良く背部を施療することができる。
【0033】
本発明に係るマッサージ機の更なる特徴構成は、
前記被施療者の前記背部に対向するローラーを前記施療ユニットと一体に備え、
前記ローラーは、前記施療ユニットの昇降に伴って回転しながら前記背部に沿い昇降する点にある。
【0034】
上記構成によれば、施療ユニットをローラーの回転を利用してなめらかに昇降させつつ、当該ローラーの昇降動作によって被施療者の背部を施療することができる。したがって施療ユニットの昇降動作の円滑化と、背部の施療とを、部品点数を増加させることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】マッサージ機の全体構成を示す斜視図
図2】肩施療機構の全体構成を示す斜視図
図3】左側側面から見た肩施療機構の分解斜視図
図4】右側側面から見た肩施療機構の分解斜視図
図5】第一カムの側面図
図6】第一駆動部の分解斜視図
図7】第一カムおよび施療子保持部の分解斜視図
図8】第二カム部の側面図(透視図)
図9】第二施療子の分解斜視図
図10】施療子を下方から見た図
図11】第一、第二施療子の動作を表す図
図12】第一、第二施療子の動作を表す図
図13】第一、第二施療子の動作を表す図
図14】背部施療機構の形態の説明図
図15】背部施療機構の別の形態の説明図
図16】第一施療子と第二施療子の施療部位を示す図(全身の場合)
図17】第一施療子と第二施療子の施療部位を示す図(右足の足裏の場合)
図18】第一施療子と第二施療子の施療部位を示す図(右足の左側面の場合)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。従って、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0037】
1.第1実施形態
〔マッサージ機の全体構成〕
図1に本実施形態に係るマッサージ機1の全体構造を示す。マッサージ機1は、座部11と、背もたれ部12と、を備えた、いわゆるマッサージ椅子であり、さらに、昇降アーム15と、施療ユニットの一例として肩施療機構200と、を備えてなるものである。
【0038】
座部11は、被施療者がその臀部または大腿部が当接した状態で着座するものであり、背もたれ部12は座部11に着座した被施療者の背を支持するものである。以後、マッサージ機1において被施療者が座部11に着座した状態での腹側を「前」、背側を「後」、右手側を「右」、左手側を「左」、頭側を「上」、足側を「下」と定義する。また、被施療者の肩幅方向に平行な方向を「幅方向」または「左右方向」、前から後に向かう方向に平行な方向を「前後方向」、幅方向と前後方向の両方に垂直な方向を「上下方向」と定義する。また、以下では特段の注釈なく「左右方向」における「左」ないし「右」、「前後方向」における「前」ないし「後」、「上下方向」における「上」ないし「下」などの方向を説明する場合、それぞれ単に、「左」ないし「右」、「前」ないし「後」、「上」ないし「下」などと記載する場合がある。例えば、左右方向における右側や右方は、単に「右側」や「右方」と記載する場合がある。
【0039】
以下の実施形態の説明においては、図1に示すマッサージ機1の左側の(左肩を施療する)肩施療機構200について説明する。マッサージ機1は左側と右側とで対称形状を有しているので、右側の肩施療機構200の形状の説明は省略する。
【0040】
〔肩施療機構の全体構成〕
肩施療機構200は、被施療者の被施療部の施療を行うものである。本実施形態では、被施療者の肩に対して施療を行うものであり、特に、肩を上方から押圧して施療するものである。図2から図4に示すように、肩施療機構200は、基部210と、第一駆動部Aと、第二駆動部Bと、第三駆動部Cと、施療子260を有する施療子保持部250(施療部の一例)と、を有する。施療子保持部250は、施療子260として、第一施療子261と、先端部分が二肢に分岐している第二施療子265とを有している。第二施療子265は、前後方向において相対的に、第一施療子261の前側に配置されている。
【0041】
第一駆動部Aは、第一施療モータ駆動部230と、第一カム240(斜板偏心カムの一例)とを有している。第二駆動部Bは、第二施療モータ駆動部330と、第二カム340(偏心カムの一例、図8参照)とを有している。
【0042】
後述するように、施療子保持部250は第一駆動部Aの第一カム240に接続されている。また、第一カム240(第一駆動部A)は第二駆動部Bの第二カム340に接続されている。つまり、施療子保持部250には第一カム240を介して第二カム340の動作が伝達されるように構成されている。
【0043】
後述するように、さらに、第二駆動部Bの第二カム340は第三駆動部Cと接続されている。つまり、施療子保持部250には第一駆動部Aおよび第二駆動部Bを介して第三駆動部Cの動作が伝達されるように構成されている。
【0044】
〔基部〕
図3図4に示すように、基部210は、第一基部211と第二基部216とからなる。基部210は、背もたれ部12の左側の側面14から背当て面13の前方へ延出する昇降アーム15に吊持されて固定されている(図示せず)。なお、昇降アーム15は、側面14に沿い、背もたれ部12の延在方向に沿って移動可能に構成されている(図1参照)。
【0045】
第一基部211は金属板をU字状に屈曲させて形成されており、底部212と一対の側部213を有している。第一基部211の底部212はねじ等により昇降アーム15(図1参照)に取り付けられている。側部213には、対向する箇所に円形のジョイント保持貫通孔211aが形成されている。第一基部211は左右方向に延出しており、該ジョイント保持貫通孔211aは側部213の左方端部に形成されている。
【0046】
第二基部216は金属板をU字状に屈曲させて形成されており、一対の側部218を有している。第二基部216は第一基部211の底部212と側部213とに挟まれる箇所に位置している。第二基部216の底部217は第一基部211の底部212に対向している。第二基部216は第一基部211と、一対の接続具214でネジなどにより接続されている。
【0047】
接続具214は、第二基部216のそれぞれの側部218の外側と、第一基部211のそれぞれの側部213の内側との間に配置されている。接続具214は金属板をU字状に屈曲させて形成されており、底部と一対の側部214aを有している。側部214aには、対向する箇所に一対の円形の貫通孔214bが形成されている。接続具214は左右方向に延在して設けられており、貫通孔214bは接続具214の左方端部に形成されている。
【0048】
接続具214は、右方側を第二基部216とネジなどで固定されている。接続具214は、貫通孔214bとジョイント保持貫通孔211aとを貫通するジョイントピン(図示せず)で連結されており、ジョイント保持貫通孔211aを貫通するジョイントピンを回動軸心として、第一基部211に揺動自在に取り付けられている。これにより、接続具214に固定された第二基部216は、ジョイント保持貫通孔211aを貫通するジョイントピンを回動軸心として、接続具214を介して第一基部211に揺動自在に取り付けられる。つまり、第二基部216の右方側が第一基部211に対して離間ないし近接可能になる。
【0049】
〔第一駆動部〕
(1)第一施療モータ駆動部
図2図4および図6に示すように、第一基部211の内部空間には第一施療モータ駆動部230が収容されている。第一施療モータ駆動部230はブラシレスDCモータ(以下、「第一施療モータ」と称する)231、該第一施療モータ231を駆動する第一施療モータ駆動回路233、および第一施療モータ231の回転を減速して施療出力軸235に伝達する第一減速機237を有している。
【0050】
第一施療モータ231と第一施療モータ駆動回路233はステー238を介して第一減速機237に固定されている。第一減速機237は土台部234の平板部234aの下側面にねじ等により固定されており、第一施療モータ駆動部230は土台部234と一体となっている。また、施療出力軸235には後述する第一カム240が取り付けられている。
【0051】
第一施療モータ231は、その回転軸が施療出力軸235の回転中心となる軸心X(図6参照)と直交するように配置されている。第一施療モータ231の回転は、第一減速機237のプーリー237aとウォーム回転軸237bとギアボックス237c内のギア237dを介して減速され、また、その回転伝達方向を直角に変換して施療出力軸235に伝達される。なお、軸心Xは、第一基部211の底部212、および、第二基部216の底部217と交差(直交)するように配置されている。
【0052】
土台部234の平板部234aは、第二基部216の底部217の下面にネジなどで接続される複数本(三本)の円柱状のゴムダンパ290と接続されて、底部217と平行になるように吊持されている。ゴムダンパ290は、その長手方向が底部217および平板部234aと垂直に接続されている。平板部234aは、ゴムダンパ290とネジなどで接続されている。つまり、平板部234aは、軸心Xと垂直に交差している。これにより、土台部234は、第二基部216に対して軸心Xと交差する方向(垂直)に揺動可能となる。
【0053】
(2)第一カム
図5から図7に示すように、第一カム240は、環状軸受の一例である玉軸受242と、玉軸受242の内輪を軸心方向両側から挟み込んで玉軸受242の内輪と一体となって回転する樹脂製の円柱形状のカム本体244と、カム本体244の2つの底面に取り付けられ、カム本体244をさらに外側から挟み込む固定プレート246からなる。
【0054】
第一カム240には、カム本体244と固定プレート246を貫通する孔が2つ開けられている。一方の孔には一方の固定プレート246からカム本体244と他方の固定プレート246までボルト(図示せず)が挿通されてナット(図示せず)で締結されている。これにより、固定プレート246、カム本体244、玉軸受242が一体化される。もう一方の孔には施療出力軸235が挿通されてナット(図示せず)などで締結されている。施療出力軸235には径方向に突出する回り止めピン(図示せず)が挿入されており、この回り止めピンと嵌合する形状が一方の固定プレート246に形成されており、これにより施療出力軸235と第一カム240(玉軸受242の外輪を除く)が一体となって回転する。
【0055】
施療出力軸235の軸心Xが第一カム240の回転軸心になるが、施療出力軸235は玉軸受242の回転中心、すなわち、カム本体244の軸心から偏心して取り付けられている。これにより、施療出力軸235が回転したときに、第一カム240の玉軸受242の内輪は軸心Xに対して偏心の状態で回転する(図6参照)。
【0056】
また、玉軸受242の回転軸心はカム本体244の軸心および底面の双方に対して傾斜している。具体的には、カム本体244の軸心を起点に施療出力軸235の中心を通る径方向の半直線がカム本体244の外周面と交差する円周上の点を仮定し、この点を通ってカム本体244の軸心に平行な線上に玉軸受242の第一施療モータ駆動部230から最も離間する箇所が位置するように、玉軸受242は傾斜している。換言すると、玉軸受242の内、施療出力軸235に最も近い箇所が第一施療モータ駆動部230から最も離間し、施療出力軸235から最も遠い箇所が第一施療モータ駆動部230に最も近接している。これにより、施療出力軸235が回転したときに、第一カム240の玉軸受242の内輪は軸心Xに対して偏角の状態で回転する。
【0057】
つまり、施療出力軸235が回転したときに、第一カム240の玉軸受242の内輪は軸心Xに対して偏心かつ偏角の状態で回転する。
【0058】
〔第二駆動部〕
(1)第二施療モータ駆動部
図3図4、および図6に示すように、第一基部211の内部空間には第二施療モータ駆動部330が収容されている。第二施療モータ駆動部330はブラシレスDCモータ(以下、「第二施療モータ」と称する)331、該第二施療モータ331を駆動する第二施療モータ駆動回路(図示せず)、および第二施療モータ331の回転を減速して第二カム340に伝達する第二減速機337を有している。なお、第二施療モータ331は、第一施療モータ231とは独立して駆動される。
【0059】
第一施療モータ231は、その回転軸が施療出力軸235の回転中心となる軸心X(図6参照)に沿う方向に配置されている。第二施療モータ331と第二施療モータ駆動回路は第二基部216の延出部216aに固定されている(図6参照)。当該第二減速機337は、プーリー337bと、プーリー337bのベアリング部337cと、第二施療モータ331の回転軸からプーリー337bへ回転を伝達するプーリーベルト337aとを有する(図3参照)。第二減速機337は、ベアリング部337cのケーシングを第二基部216に設けられた開口部216bに内嵌して固定される(図6参照)。このように、第二施療モータ駆動部330は第二基部216と一体となっている。なお、プーリー337bには後述する第二カム340が取り付けられている。プーリー337bの回転中心となる軸心Yは、軸心Xと平行に配置されている(図8参照)。
【0060】
(2)第二カム
図8に示すように、第二カム340は、環状軸受の一例である玉軸受342と、玉軸受342の内輪と一体となって回転するカム本体344と、玉軸受342の外周に嵌る土台部234のスリーブ234bとからなる。スリーブ234bは、土台部234の平板部234aから上方側に延出する筒状部として設けられており、当該筒状部の筒の内側に玉軸受342を嵌めて、玉軸受342と土台部234とを相対的に固定している。
【0061】
カム本体344は、プーリー337bと一体に設けられている。カム本体344は、プーリー337bの回転中心、すなわち、軸心Yから偏心して取り付けられている。これにより、プーリー337bが回転したときに、第二カム340の玉軸受342の内輪は軸心Yに対して偏心の状態で回転する。
【0062】
上記のような構成により、第二駆動部Bの第二カム340の動作が第一駆動部A、すなわち、土台部234およびこれと第一施療モータ駆動部230の施療出力軸235を介して連結する第一カム240に伝達可能となる。
【0063】
〔第三駆動部〕
図3図4に示すように第一基部211の底部212と第二基部216の底部217との間には第三駆動部Cの一例である膨縮袋228が取り付けられている。これにより第二基部216の左右方向における右方側には第一基部211から軸心Xに沿い離間する方向の力(付勢力)を適宜作用させることができる。
【0064】
膨縮袋228は、空気の出し入れにより容積が膨張、収縮する空気袋であって、当該膨張により押圧力を発生させるアクチュエータである。
【0065】
膨縮袋228は、底部212および底部217の面に沿う方向の蛇腹を有し、空気穴228aを介してエアコンプレッサ(不図示)から空気の供給を受けると、当該空気の供給量の増加に応じて当該蛇腹が伸びて容量が膨張し、底部212と底部217とが離間する方向の力(付勢力)を生じる。つまり、この付勢力は空気の供給量に応じた膨張量で調整することができる。例えば、肩が強く押圧されることを望む人には膨張量を多くし、弱く押圧されることを望む人には膨張量を少なくする。
【0066】
膨縮袋228は、左右方向に延在しており、左方端部をネジなどで第一基部211に固定されている。また、膨縮袋228は、膨縮袋228における左右方向の中央部分に設けられた空気穴228aを有するプラグ228bを、第一基部211の底部212の中央部分に設けた貫通孔211bの下方から挿通した状態で、プラグ228bをネジなどで底部212に固定されている。
【0067】
〔施療部〕
(1)施療子保持部
図3図4および図7に示すように、第一カム240には施療子保持部250が取り付けられている。施療子保持部250は金属板からなる板状の第一部材252と樹脂からなり底面と底面の周囲を囲むように立設している側面を有する第二部材254とがねじ等により締結されて構成されている。第一部材252は第二部材254のカム保持貫通孔255の周囲を覆う蓋としての機能を果たす。施療子保持部250には第一部材252から第二部材254に亘って第一カム240の玉軸受242の外輪に嵌り込む断面円形のカム保持貫通孔255が形成されており、該カム保持貫通孔255は、第二部材254においては底面から垂直に立設する円筒形状の突起255aにより形成されている。突起255aの内周面に圧入や接着等の方法により玉軸受242の外輪が取り付けられている。すなわち、施療子保持部250は玉軸受242の回転軸心に対して垂直に取り付けられている。よって、施療子保持部250は施療出力軸235に対して玉軸受242と同じ角度で傾斜している。また、第二部材254の底面の突起が形成されている側と反対側には、第一カム240に端部を覆うようにカバー257が取り付けられている(図7参照)。
【0068】
(2)施療子
図3図4図7図9、および図10に示すように、施療子保持部250の第二部材254のカバー257の、第一カム240よりも幅方向の内側(すなわち、前から後を見たときに第一カム240の左側)に樹脂やゴム等からなる第一施療子261(施療子の一例)が一体に形成されている。第一施療子261は下方に突出しており、その先端は略半球状になっている。第一施療子261は施療者の親指による施療を模したものであり、例えば、肩中愈、肩外愈、曲垣、肩井等のツボや、広背筋、肩甲挙筋、僧帽筋を押圧する。
【0069】
施療子保持部250の第一カム240が取り付けられている箇所の近傍且つ前方に、第二施療子265が施療子保持部250に対して前後方向および上下方向に揺動可能に取り付けられている。第二施療子265は、連結部材266と、第二施療子本体276と、連結軸(リンクの一例)280と、を有する。
【0070】
連結部材266は、角を丸めた略直角三角形状になるような板状部材266aを二枚平行にして、直角三角形の斜辺を板状部材266bで接続した部材であって樹脂により形成されている。直角を挟む2辺(長辺、短辺)のうち長辺と斜辺とからなるそれぞれの板状部材266aの角部には、それぞれの板状部材266aを同一軸心で貫通するように貫通孔274が一対で形成されている。一対の貫通孔274には軸ピン(図示せず)が挿入されている。施療子保持部250の第二部材254に形成されたU字溝256に当該軸ピンが挿入され、第一部材252がU字溝256を覆っている。これにより、連結部材266は施療子保持部250に対して貫通孔274を軸心に前後方向および上下方向に揺動可能に保持されている。連結部材266は、貫通孔274が施療子保持部250の幅方向に平行になるように施療子保持部250に取り付けられている。連結部材266のそれぞれの板状部材266aの直角をなす角部には、それぞれの板状部材266aを貫通するように貫通孔270が形成されている。
【0071】
第二施療子本体276は、樹脂やゴム等からなり、その基端側を連結部材266の板状部材266bにねじ等により固定される支持板276aにねじ等で固定され、連結部材266と一体となっている。第二施療子本体276は、第一施療子261よりも幅方向で外側にあり、且つ、施療子保持部250から前方に延出している。すなわち、幅方向に沿って見たときに、第二施療子本体276は第一施療子261よりも前方に位置し、第二施療子本体276の先端部は第一施療子261の先端部よりも下方に位置している。
【0072】
第二施療子本体276の先端側は被施療者の肩に当接する箇所であり、第二施療子本体276の途中から先端に向けて二肢に分かれている。それぞれの肢の幅方向の大きさは同一であり、幅方向の内側にある肢である第一当接部277と幅方向外側にある肢である第二当接部278とは同一の大きさである。
【0073】
また、第二施療子本体276の先端部の全幅は第一施療子261の幅(半球状部分の直径)よりも大きい。第一当接部277と第二当接部278とは、その基端側を、連結部材266の板状部材266bにねじ等により固定される支持板276aにネジなどで固定されている。
【0074】
第一当接部277と第二当接部278とはそれぞれ、その延出方向に対して沿う方向の蛇腹を有した膨縮袋277aと膨縮袋278aとを有している。空気穴277b、278bを介してエアコンプレッサ(不図示)から空気の供給を受けると、当該空気の供給量の増加に応じて当該蛇腹が伸びて容量が大きくなり(当該空気の供給量の増加に応じて膨張し)、第一当接部277ないし第二当接部278の延出方向に直交する方向の力(付勢力)を生じる。この付勢力は空気の供給量に応じた膨張量で調整することができる。これにより、第一当接部277と第二当接部278とが被施療者の肩を押圧する際の圧力を強弱することができる。例えば、肩が強く押圧されることを望む人には膨張量を多くし、弱く押圧されることを望む人には膨張量を少なくする。
【0075】
なお、第二施療子本体276は施療者の親指を除く四指による施療を模したものであり、被施療者の身体を前側から支えたり擦ったりすると共に、例えば欠盆というツボや大胸筋を押圧する。第二施療子本体276は、二股に分かれておらず、一体型であってもよい。また、第二施療子本体276は、三股以上、例えば親指を除く四指を模した四股に分かれていてもよい。
【0076】
連結軸280は上下方向に延出しており、連結部材266や第二施療子本体276の上方に位置している。連結軸280の上側である一端が球形に形成されて、第一施療モータ231のベアリング押えカバー231aに設けられた球形孔とボールジョイント方式により接続されており、下側である他端が連結部材266に対して揺動可能に取り付けられている。つまり、連結軸280の一端はベアリング押えカバー231aに対して前後方向、上下方向、幅方向の移動において、所定の角度範囲内で回転自在、揺動自在となるように接続されている。
【0077】
連結軸280の他端には径方向に貫通孔283が形成されており、貫通孔283、および、連結部材266の貫通孔270を貫通する連結ピン(図示せず)により、連結部材266に揺動自在に取り付けられている。当該連結ピンは施療子保持部250の幅方向に平行、すなわち、二つの貫通孔274と平行になるように取り付けられているので、第二施療子265(連結部材266)は連結軸280により当該連結ピンを軸心に前後方向および上下方向に揺動可能に支持されている。また、連結軸280と連結部材266の連結箇所は第二施療子265の基端側と先端側の間に位置している。
【0078】
上記のような構成により第二施療子265は、連結部材266が施療子保持部250に対して揺動可能なリンクを構成すると共に、連結軸280がボールジョイント、および、揺動可能なリンクを構成しており、いわゆる2リンク機構を備えている。よって、第二施療子265は施療子保持部250に対して上下方向に移動可能であり、且つ、ベアリング押えカバー231a、すなわち、第一駆動部Aの土台部234に対して回転可能である。
【0079】
〔施療子の動作〕
次に、本実施形態に係るマッサージ機1を作動させたときの第一施療子261と第二施療子265の動作について図11から図13を用いて説明する。
【0080】
まず、被施療者がマッサージ機1の座部11に着座していない状態、すなわち、第一施療子261と第二施療子265が何にも当接していない状態において以下では、図11から図13に示すように膨縮袋228の付勢力が第二基部216に作用していないものとして説明する。また、以下では、まず、第二施療モータ331が動作していないものとして説明する。
【0081】
第一施療モータ231を駆動させると、第一減速機237により減速されて施療出力軸235が回転する。施療出力軸235の回転により第一カム240のカム本体244、固定プレート246、玉軸受242の内輪が一体となって回転する。しかし、施療子保持部250は連れ回りしない。これは、施療子保持部250に取り付けられた第二施療子265が連結軸280、ベアリング押えカバー231aを介して土台部234に支持されているからである。ただし、施療子保持部250は玉軸受242の外輪に固定されているので、施療子保持部250が回転しなくても、施療出力軸235、カム本体244、固定プレート246、玉軸受242の内輪が回転する際の抵抗にはならない。
【0082】
上述したように、施療出力軸235は第一カム240のカム本体244の軸心に対して偏心した状態で取り付けられているので、施療出力軸235の回転に伴い第一カム240のカム本体244の軸心は軸心X周りに公転する。すなわち、第一カム240は、施療出力軸235の軸心Xに対して偏心回転する。
【0083】
玉軸受242の回転軸心はカム本体244の軸心および底面の双方に対して傾斜しているので、玉軸受242の回転軸心に対して垂直に取り付けられた施療子保持部250もカム本体244の軸心および底面の双方に対して傾斜している。この状態で施療出力軸235が回転すると、図11から図13に示すように、施療子保持部250は、第一カム240の施療出力軸235に対する前後方向および幅方向への移動量と同じだけ移動し(図11参照)、それと同時に、玉軸受242の揺動する角度範囲(上下方向への振れ)と同じ角度範囲で揺動する(図12、13参照)。すなわち、施療子保持部250の前後方向および幅方向の位置および傾斜方向は、施療出力軸235の回転角度に応じて連続的に変化する。
【0084】
上述したように、第一施療子261は施療子保持部250の第二部材254のカバー257に一体的に取り付けられている。施療子保持部250が施療出力軸235に対して最も右方側に位置する状態を回転の基準(0度)にしたとき(図11から図13各々の(I))、第一施療子261は、上下方向に沿って見たときに、図11に示すように、施療出力軸235が下から見て時計方向に回転するにつれて、施療子保持部250の動きに連動して前方側(施療出力軸235の回転角度が90度、図11(II))、左方側(180度、図11(III))、後方側(270度、図11(IV))を経て、再び右方側(0度、図11(I))に移動(円運動)する。
【0085】
これと同時に、幅方向に沿って見たときに、図12に示すように、第一施療子261は中位置(0度、図12の(I))から、下方位置(90度、図12の(II))、下方位置(180度、図12の(III))、上方位置(270度、図12の(IV))を経て、再び中位置(0度)になるように移動(揺動)する。これは、施療子保持部250(第一施療子261)に内嵌された玉軸受242が施療出力軸235に対して、偏心且つ偏角の状態で回転するからである。
【0086】
上述した左方位置とは第一施療子261が幅方向において位置し得る最左方およびその近傍の位置を意味し、右方位置とは第一施療子261が幅方向において位置し得る最右方およびその近傍の位置を意味する。中間位置とは左方位置と右方位置との中間の位置を意味する。上方位置とは第一施療子261が上下方向において位置し得る最上方およびその近傍の位置を意味し、下方位置とは第一施療子261が上下方向において位置し得る最下方およびその近傍の位置を意味する。中位置とは上方位置と下方位置との中間の位置を意味する。
【0087】
このとき、第二施療子265は、図11から図13に示すように、施療子保持部250が施療出力軸235に対して最も右方側にある位置を回転の基準(0度)にしたとき(図11から図13各々の(I))、第二施療子265の基端側は、上下方向に沿って見たときに、図11に示すように、施療出力軸235が下から見て時計方向に回転するにつれて、施療子保持部250の動きに連動して後方側(施療出力軸235の回転角度が90度、図11(II))、左方側(180度、図11(III))、前方側(270度、図11(IV))を経て、再び右方側(0度、図11(I))に移動(円運動)する。
【0088】
第二施療子265の第二施療子本体276の先端側(第一当接部277、第二当接部278)も基端側と同様に移動するが、2リンク機構の作用により、基端側よりも前後方向への移動量は小さい。これと同時に、幅方向に沿って見たときに、図12に示すように、第二施療子本体276の先端側は中位置(0度、図12(I))から、下位置(90度、図12(II))、中位置(180度、図12(III))、上位置(270度、図12(IV))を経て、再び中位置(0度)になるように揺動する。
【0089】
さらに、前後方向に沿って見たときに、図13に示すように、第二施療子本体276の先端側は右方位置(0度、図13(I))から、中間位置(90度、図13(II))、左方位置(180度、図13(III))、中間位置(270度、図13(IV))を経て、再び中間位置(0度)になるように揺動する。ただし、2リンク機構の作用により、施療子保持部250(第一施療子261)よりも上下方向の動き(揺動量)は小さい。幅方向の動きは第一施療子261と同等である。
【0090】
上述した上方位置とは第二施療子本体276が上下方向において位置し得る最上方およびその近傍の位置を意味し、下方位置とは第二施療子本体276が上下方向において位置し得る最下方およびその近傍の位置を意味する。中位置とは上位置と下位置との中間の位置を意味する。左方位置とは第二施療子本体276が幅方向において位置し得る最左方およびその近傍の位置を意味し、右方位置とは第二施療子本体276が幅方向において位置し得る最右方およびその近傍の位置を意味する。中間位置とは左方位置と右方位置との中間の位置を意味する。
【0091】
上記のように、幅方向に沿って見たときに、第一施療子261は施療子保持部250の動きに連動して前後に移動(揺動)する。第二施療子265の第二施療子本体276の先端側も施療子保持部250の動きに連動して前後に揺動するもののその移動量(揺動量)は小さい。よって、幅方向に沿って見たときに、第一施療子261と第二施療子本体276の先端側の距離は、施療出力軸235の回転に応じて変化する。そして、第一施療子261と第二施療子本体276が互いの先端側の距離が短くなるように連係して移動することにより、被施療者の肩を前方から第二施療子本体276で保持しつつ、第一施療子261で被施療者の肩を上方から押圧して施療することができる。
【0092】
このように、第一カム240を用いるという簡単な構成により、第一施療子261と第二施療子265を上下方向に揺動させることができる。なお、施療出力軸235の回転角度による第一施療子261、第二施療子265の動きは、施療出力軸235と、第一施療モータ駆動部230から最も離間した玉軸受242との位置関係により変わってくる。
【0093】
次に、第二施療モータ331をさらに動作させた場合について説明を加える。第二施療モータ331を動作させると、第二減速機337により減速されて、プーリー337bが回転する。プーリー337bの回転により第二カム340のカム本体344と玉軸受342の内輪が一体となって回転する。
【0094】
上述したように、第二カム340のカム本体344は、軸心Xに沿う方向の円柱状に形成され、プーリー337bの軸心Yから偏心した状態で取り付けられているので、プーリー337bの回転に伴い第二カム340のカム本体344の軸心は軸心Y周りに公転する。すなわち、第二カム340と相対的に固定された関係にある土台部234これにより、土台部234およびこれと第一施療モータ駆動部230の施療出力軸235を介して連結する第一カム240、施療子保持部250、施療子保持部250の第一施療子261および第二施療子265は、軸心Xに平行な軸心Yに対して偏心回転(公転)する。
【0095】
第二カム340のカム本体344の軸心Yから偏心量、すなわち、軸心Yからカム本体344の円柱の軸心までの距離は、第一カム240のカム本体244の軸心Xからの偏心量、すなわち、軸心Xからカム本体244の円柱の軸心までの距離よりも大きく設定するとよい。これにより、第一カム240の動作を施療者の手首の動きを模した動作に対応させ、他方、第二カム340の動作を施療者の肘の動きを模した動作に対応させることができる。
【0096】
このように、第一カム240と第二カム340を用いるという簡単な構成により、第一施療子261と第二施療子265とを上下方向(軸心Xに沿う方向)に揺動させながら、さらに、軸心Xに平行な軸心Yに対して公転(揺動)させることができる。つまり、第一施療子261と第二施療子265とを上下方向(軸心Xに沿う方向)に沿う方向に揺動させつつ、これに交差する方向にも大きく変位させる、いわばひねりを加えることができる。
【0097】
次に、被施療者がマッサージ機1に着座した状態での第一施療子261、第二施療子265の動きについて説明する。まず、被施療者がマッサージ機1の座部11に着座した状態で、昇降アーム15に支持された肩施療機構200を肩の位置に合わせる。具体的には、第一施療子261が肩の上部、第二施療子265が肩の前部に位置するようにする。その後、膨縮袋228を膨張させる。
【0098】
膨縮袋228を膨張させると、第一基部211の底部212と第二基部216の底部217とが離間する方向の力(付勢力)を生じる。これにより、第二基部216は、ジョイント保持貫通孔211aを貫通するジョイントピンを回動軸心として回動し、第二基部216の右方側が第一基部211から離間するように押し下げられて、第一施療子261が、被施療者の肩を上方から押圧する。
【0099】
膨縮袋228の膨張による付勢力により第二施療子265で被施療者の肩を前方から保持しつつ、第一施療子261で被施療者の肩を上方から押圧しているので、第一施療子261と第二施療子265は上下方向およびこれに交差する方向の揺動で被施療者の肩から離間することはなく、常に肩を保持しつつ上方から押圧することが可能である。
【0100】
第一施療子261による上方からの押圧中は、第一施療子261の上下方向の揺動と、第一施療子261の公転と、膨縮袋228の付勢力により、第一施療子261が被施療者の肩を押圧する力や、押圧する向きを周期的に変化させることができるので、施療者の指による施療に近い、もしくは、施療者の指による施療を凌駕する、良好な施療感を得ることができる。
【0101】
従って、本実施形態に係る肩施療機構200およびこれを用いたマッサージ機1においては、第一施療子261が被施療部を押圧して施療する際に、さらに押圧方向に交差する方向に沿う変位を被施療部に加えつつ施療することができる。
【0102】
また、第一施療子261と第二施療子265とは、前後左右方向に移動するので、被施療者の肩の特定箇所だけではなく、その周辺も押圧することができるので、押圧による施療効果をさらに高めることができる。
【0103】
また、第二施療子265は、前後左右方向の移動とは別に、第一当接部277や第二当接部278の膨縮袋277a、278aで前方から押圧することができるので、押圧による施療効果や保持効果をさらに高めることができる。
【0104】
本実施形態の肩施療機構200においては、上述のように、第一施療子261が前後左右方向に移動していわゆる円運動を行いつつ(図11参照)、2リンク機構により第一施療子261と第二施療子265が互いに前後方向に近接、離反を繰り返し(図12参照)、さらにはこれら動作にひねりを加えることができるため、肩の押圧のみならず、把握揉捏による肩甲挙筋や僧帽筋上部等の肩の筋肉をほぐすことができる。僧帽筋は太くて強い筋肉であるが、肩甲挙筋は細く弱い筋肉である。特に、女性やなで肩の人は、肩甲挙筋が弱いため筋肉が緊張状態になりやすく肩こりになりやすい。
【0105】
そのため、肩施療機構200においては、上下方向に延在する施療出力軸235を円運動させ、さらに当該施療出力軸235の周りを第一施療子261が円運動することで、揉捏の際の施療者の腕や、指の動き、さらに拇指球の回転を再現して、指圧より少し広い範囲を押圧して肩甲挙筋や僧帽筋上部等の肩の筋肉をほぐすことができる。このとき第二施療子265は、第一施療子261による揉捏動作の際に被施療者の身体が逃げないように把握と支持を行う。すなわち、第二施療子265は、第一施療子261と第二施療子265が互いに近接するときは被施療者の肩の筋肉を把握し、離反するとき被施療者の身体を支持する。これにより、被施療者の肩の筋肉を効果的にほぐすことができる。
【0106】
背もたれ部12の左右の側面14にそれぞれ備えられた昇降アーム15の上下方向への移動、肩施療機構200の幅方向への移動は、各々を独立して行うことができる。また、左右の肩施療機構200の第一施療モータ231についても、一方の第一施療モータ231だけを駆動させたり、それぞれの回転数を異ならせたりすることができる。また、左右の肩施療機構200の第二施療モータ331についても、一方の第二施療モータ331だけを駆動させたり、それぞれの回転数を異ならせたりすることができる。すなわち第一施療モータ231や第二施療モータ331のそれぞれを独立して制御することができる。これにより、被施療者の個人差により左右の肩の高さが異なっている場合、被施療者が所望する押圧位置、押圧力等が左右の肩で異なっている場合、左右の肩の一方だけを施療したい場合等にも容易に対応することができる。
【0107】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、施療子保持部250は第一駆動部Aの第一カム240に接続されており、第一カム240(第一駆動部A)は第二駆動部Bの第二カム340に接続されている場合を例示した。しかしながら、施療子保持部250と第一駆動部Aと第二駆動部Bとの接続は上記態様に限られず、施療子保持部250は第二駆動部Bの第二カム340に接続されており、第二カム340(第二駆動部B)は第一駆動部Aの第一カム240に接続される態様も取り得る。
(2)上記実施形態では、第一駆動部Aは、第一施療モータ駆動部230と、第一カム240とを有しており、第一施療モータ駆動部230は、第一施療モータ231を有している場合を例示した。また、第二駆動部Bは、第二施療モータ駆動部330と、第二カム340とを有しており、第二施療モータ駆動部330は、第二施療モータ331を有している場合を例示した。しかしながら、第一駆動部Aと第二駆動部Bとは、別個に第一施療モータ231と第二施療モータ331とを有する代わりに、一つの施療モータを共有することもできる。この場合、第一施療モータ駆動部230と、第二施療モータ駆動部330とが一つの施療モータを共有することもできるし、第一施療モータ駆動部230の機能と、第二施療モータ駆動部330の機能とを包含する一つの施療モータ駆動部を設け、一つの施療モータで、第一駆動部Aの第一カム240と、第二駆動部Bの第二カム340とを駆動してもよい。
【0108】
(3)上記実施形態では、第一基部211の底部212と第二基部216の底部217との間には第三駆動部Cの一例である膨縮袋228が取り付けられており、第二基部216の先端側には第一基部211から軸心Xに沿い離間する方向の力(付勢力)を作用させ、当該付勢力を膨縮袋228への空気の供給量に応じた膨張量で調整する場合を例示した。しかしながら、第三駆動部Cは、膨縮袋228の代わりに、コイルバネなどの弾性部材を採用することもできる。膨縮袋228の代わりにコイルバネを採用した場合は、上記付勢力は一定になる。
【0109】
(4)上記実施形態では、第一基部211の底部212と第二基部216の底部217との間には第三駆動部Cの一例である膨縮袋228が取り付けられており、第二基部216の先端側には第一基部211から離間する方向の力(付勢力)を作用させる場合を例示した。しかしながら、第三駆動部Cは、膨縮袋228の代わりに、モータを採用することもできる。
【0110】
(5)上記実施形態では、肩施療機構200の第二施療子265で被施療者の肩を前方から保持しつつ、第一施療子261で被施療者の肩を上方から押圧している態様を例示した。しかしながら、肩施療機構200における第二施療子265と第一施療子261との関係はこの例示の態様に限定されない。たとえば、第二施療子265で被施療者の肩を上方から保持しつつ、第一施療子261で被施療者の肩を後方から押圧する態様も採りうる。また、第二施療子265で被施療者の肩を前方から保持しつつ、第一施療子261で被施療者の肩を後方から押圧する態様も採りうる。
【0111】
(6)上記実施形態では、マッサージ機1が、施療ユニットの一例として、肩を施療する肩施療機構200を有する場合を例示した。しかしながら、マッサージ機1は、肩施療機構200に代えて、もしくは、肩施療機構200と共に、被施療者の背部を施療する背部施療機構300(図14図15参照)を、背もたれ部12に、施療ユニットとして有することもできる。この場合、背部施療機構300は、肩施療機構200と同様の機構に加えて、被施療者の背部に対向するローラーRを一体に備えることができる。これにより、ローラーRを、背部施療機構の昇降に伴って回転させて、背部施療機構300を被施療者の背部に沿いなめらかに昇降させることができる。この場合、背部施療機構300は、被施療者の背部の背中の面に対して、第一施療子261を内側(右側)に配置し、第二施療子265を外側(左側)に配置することで、人(施療者)が被施療者に対して施療しているような施療を行うことができる。
【0112】
図14を参照して、背部施療機構300の一例を説明する。背部施療機構300は、たとえば図14に示すように左右一対のユニットとして設けられている。背部施療機構300は、左右に一対の矩形の支持板3と、支持板3の四隅に設けられ、上下方向に沿い転動する回転体(本実施形態では、左右方向に所定の厚みを有し、左右方向に回転軸心を有する円筒状)であるローラーRとを有する支持板3に、肩施療機構200と同様の機構を有するユニット200aが一つ設けられている。以下では、説明の便宜のため、ユニット200aにおける肩施療機構200と同様の構造部分は同一の符号を用いて説明する。
【0113】
ローラーRは、支持板3に軸支された回転軸を回転軸心として回転する回転体である。ローラーRは、被施療者の背部に対向する状態で転がって、背部施療機構300を上下方向に沿い移動させる。
【0114】
本実施形態では、ユニット200aの第一基部211がねじ等で支持板3に固定されている場合を図14に図示して説明している。以下の実施形態の説明においては、マッサージ機1の左側の(背中の左側領域を施療する)ユニット200aについて説明する。マッサージ機1は左側と右側とで対称形状を有しているので、右側のユニット200aの形状の説明は省略する。また、ユニット200aは、肩施療機構200と同様の動作が可能であり、これら同様の動作については説明を省略する。
【0115】
ユニット200aは、第一施療子261が施療者の背中の内側寄り(右側寄りの位置)に、第二施療子265が、施療者の背中における外側寄り(右側寄り)に配置されている。つまり、第一施療子261に対して、第二施療子265が相対的に背中の外側に変位した位置に配置されている。被施療者がマッサージ機1に着座し、背もたれ部12に凭れた状態で、ユニット200aにおける第一施療子261および第二施療子265が被施療者の背中に当接する。
【0116】
被施療者が背もたれ部12に凭れた状態で、背部施療機構300がローラーRで上下に昇降することで、ユニット200aは、被施療者の背中の上部から下部にかけて広い範囲で施療することができる。背部施療機構300は、たとえば肩の下(背中の上部)から腰の位置(背中の下部)までの範囲で昇降させることができる。
【0117】
なお、背部施療機構300の左右のユニットはそれぞれ別個に(独立して)上下に昇降することができる。このようにすることで、被施療者は人(施療者)が左右の手で異なる部位を別々に施療しているような施療を味わうことができる。
【0118】
なお、図14には、背部施療機構300の左右のユニットが一対である場合を図示したが、二対以上とすることもできる。この場合、それぞれのユニットが上下方向に重複しない位置に配置することもできる。たとえば、ユニットを左右方向において四列で配置することができる。
【0119】
また、左方側ないし右方側にあるユニットを、それぞれの側において上下に重複する位置に配置することもできる。たとえば、背部施療機構300を上下に二列配置し、上部側の背部施療機構300、下部側の背部施療機構300として用いることもできる。
【0120】
図15を参照して、背部施療機構300の他の例を説明する。図15に示した場合の背部施療機構300は、図14に示した場合とは、一つの矩形の支持板3に、一対のユニット200aが設けられている点で異なり、他は同じである。
【0121】
図15に示すように、一つの矩形の支持板3に、一対のユニット200aが設けられている場合は、一つの矩形の支持板3の昇降にともなって、一対のユニット200aが上下に昇降し、被施療者の背中を施療することができる。この場合も、ユニット200aは、被施療者の背中の上部から下部にかけて広い範囲で施療することができる。背部施療機構300は、たとえば肩の下(背中の上部)から腰の位置(背中の下部)までの範囲で昇降させることができる。
【0122】
(7)上記実施形態では、上記実施形態では、マッサージ機1が、施療ユニットの一例として、肩を施療する肩施療機構200を有する場合を例示した。しかしながら、マッサージ機1は、肩施療機構200に代えて、もしくは、肩施療機構200と共に、被施療者の身体の各部、たとえば、首、腕(上腕、前腕)、背中ないし腰、尻、脚(大腿部、ふくらはぎ)ないし足(以下では、身体各部と称する場合がある)を施療する他の施療機構(図示せず)を有することもできる。
【0123】
この場合、施療機構は、被施療者の身体各部に対して、適した配置にすることができる。具体的には、図16から図18に示すように、被施療者の首、腕(上腕、前腕)、背中ないし腰、尻、脚(大腿部、ふくらはぎ)(図16参照)ないし足(図17図18参照)に対して、第一施療子261を内側(右側)に配置し、第二施療子265を外側(左側)に配置することで、人(施療者)が被施療者に対して施療しているような施療を行うことができる。
【0124】
図16には、人の身体の各部を施療する場合を模式的に示している。図16中、破線で描いた円弧で指し示す部位P1には第一施療子261が当接される。図16中、実線で描いた円弧で指し示す部位P2には第二施療子265が当接される。
【0125】
図16の場合は、人の身体に対する背面視(身体の背面から見た正面視)における身体の外側(図16における身体の領域の外側)に第二施療子265が配置され、内側(図16における身体の領域の内側)に第一施療子261が配置される場合を図示している。これにより、被施療者の身体各部に対して、身体の外側に四指を配置し、内側に親指を配置した状態で人(施療者)が施療しているような施療を行うことができる。
【0126】
図16における首部分H1、腕の上腕部H2、腕の前腕部H3、背中ないし腰の部分である背部H4、尻の臀部H5、脚の大腿部H6、ふくらはぎ部H7を例示して、マッサージ機1にこれら部分を施療するユニットを設ける態様について例示的な説明を加える。
【0127】
以下は、被施療者の身体各部を説明する場合に、被施療者の腹側を「前」、背側を「後」、右手側を「右」、左手側を「左」、頭側を「上」、足側を「下」と定義する。また、被施療者の肩幅方向に平行な方向を「左右方向」、前から後に向かう方向に平行な方向を「前後方向」、幅方向と前後方向の両方に垂直な方向を「上下方向」と定義する。また、以下では特段の注釈なく「左右方向」における「左」ないし「右」、「前後方向」における「前」ないし「後」、「上下方向」における「上」ないし「下」などの方向を説明する場合、それぞれ単に、「左」ないし「右」、「前」ないし「後」、「上」ないし「下」などと記載する場合がある。例えば、左右方向における右側や右方は、単に「右側」や「右方」と記載する場合がある。
【0128】
人の身体は、左側と右側とで対称形状を有しているので、首部分H1、腕の上腕部H2、腕の前腕部H3、背部H4、尻の臀部H5、脚の大腿部H6、ふくらはぎ部H7については、被施療者の身体の左側についてのみ説明を加え、身体の右側については説明を省略する。
【0129】
首部分H1を施療する場合には、首部分H1の外側(左側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に首部分H1を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、背もたれ部12の上方部分ないし上端部に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が首部分H1の内側に当接し、第二施療子265が首部分H1の外側に当接するように配置する。
【0130】
上腕部H2を施療する場合には、上腕部H2の外側(左側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に上腕部H2を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、背もたれ部12の側部(左側側部)ないし側面14(図1参照)に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が上腕部H2の内側に当接し、第二施療子265が上腕部H2の外側に当接するように配置する。
【0131】
前腕部H3を施療する場合には、前腕部H3の外側(たとえば右側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に前腕部H3を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、ひじ掛け部16(図1参照)に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が前腕部H3の内側に当接し、第二施療子265が前腕部H3の外側に当接するように配置する。なお、前腕部H3については、第二施療子265が左側側面に当接するように配置されてもよい。
【0132】
背部H4を施療する場合には、背部H4の外側(左側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に背部H4を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、背もたれ部12に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が背部H4の内側に当接し、第二施療子265が背部H4の外側に当接するように配置する。この場合、マッサージ機1に背部H4を施療するユニットとして、上述の背部施療機構300(図14図15参照)を採用すると好適である。
【0133】
臀部H5を施療する場合には、臀部H5の外側(左側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に臀部H5を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、背もたれ部12の下端部ないし座部11(図1参照)に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が臀部H5の内側に当接し、第二施療子265が臀部H5の外側に当接するように配置する。
【0134】
大腿部H6を施療する場合には、大腿部H6の外側(左側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1に大腿部H6を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、座部11の前端部や、脚ユニット17の上端部(図1参照)に当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257が大腿部H6の内側に当接し、第二施療子265が大腿部H6の外側に当接するように配置する。なお、大腿部H6については、第二施療子265が右側側面に当接するように配置されてもよい。
【0135】
ふくらはぎ部H7施療する場合には、ふくらはぎ部H7の外側(たとえば右側側面)に第二施療子265が配置され、内側(背面側)に第一施療子261が配置される。マッサージ機1にふくらはぎ部H7を施療するユニットを設ける場合は、たとえば、脚ユニット17の凹部17aに当該ユニットを設け、当該ユニットにおいて、第一施療子261やカバー257がふくらはぎ部H7の内側に当接し、第二施療子265が大腿部H6の外側に当接するように配置する。なお、ふくらはぎ部H7については、第二施療子265が左側側面に当接するように配置されてもよい。
【0136】
図17図18に示すように、施療者の足の足裏ないし足側面を施療する場合には、脚ユニット17(図1参照)の下端ないし下方に足ユニットを設け、当該脚ユニットに施療ユニットを設けることができる。
【0137】
図17には、人の身体の右足の裏(以下では足裏と称する)を施療する場合を模式的に示している。図17中、破線で描いた円弧で指し示す部位P1には第一施療子261が当接される。図17中、実線で描いた円弧で指し示す部位P2には第二施療子265が当接される。
【0138】
図17の場合は、足裏に対する正面視における足裏の外側(右側側面)に第二施療子265が配置され、内側に第一施療子261が配置される場合を図示している。これにより、被施療者の足裏の正面視外側に四指を配置し、内側に親指を配置した状態で人(施療者)が施療しているような施療を行うことができる。なお、足裏の左側側面に第二施療子265を配置する態様も採りうる。
【0139】
図18には右足の左側側面を図示している。図18は、人の身体の右足を施療する場合を模式的に示している。図18中、破線で描いた円弧で指し示す部位P1には第一施療子261が当接される。図18中、実線で描いた円弧で指し示す部位P2には第二施療子265が当接される。
【0140】
図18の場合は、右足の右側面に施療機構の施療子260を当接している。そして、右足の右右足の甲側に第二施療子265が配置され、足裏側に第一施療子261が配置される場合を図示している。これにより、被施療者の足の甲に四指を配置し、足裏に親指を配置した状態で人(施療者)が施療しているような施療を行うことができる。
【0141】
なお、被施療者の腕ないし脚に対して第一施療子261を正面視外側に配置し、第二施療子265を正面視内側に配置することもできる。
【0142】
(8)上記実施形態では、施療ユニットである肩施療機構200をいわゆるマッサージ椅子であるマッサージ機1に設け、被施療者の肩を施療する場合を例示した。しかしながら、施療ユニットは、マッサージ椅子であるマッサージ機1に設けられる場合に限られない。
【0143】
例えば施療ユニットを、一端を地面などに固定され、当該固定された端部の他端側に、指示駆動部により駆動される一つないし二つ以上の関節部を設けた、いわゆるロボットロボットアームに設け、被施療者の肩、背(背部)、首、腕、脚、足を包含する、被施療者の身体の任意の部位、ないし、体全体の施療に用いることもできる。たとえば、被施療者がベッドに横たわる状態で、ベッドに一端を固定されたロボットアームの他端に施療ユニットを設けて、当該施療ユニットで、被施療者の身体を施療することもできる。
【0144】
この場合、ロボットロボットアームには、施療者の指示に従って動作させるべく制御部をもうけ、当該制御部に、当該施療者の指示に基づいてロボットロボットアームを制御させ、被施療者を施療することができる。例えば、被施療者が、当該被施療者の身体のどの部位を、どのように、どの順番で施療するかといった当該被施療者の希望を制御部に指示することで当該制御部にロボットアームを駆動させ、当該希望に対応する部位などを、施療ユニットで施療することもできる。
【0145】
(9)上記実施形態では、施療ユニットである肩施療機構200をいわゆるマッサージ椅子であるマッサージ機1に設け、被施療者の肩を施療する場合を例示し、肩施療機構200は、その基部210を介してマッサージ機1の昇降アーム15に吊持されて固定されている場合を例示した。しかしながら、施療ユニットは、マッサージ椅子であるマッサージ機1のような家具や建物に固定される場合に限られない。
【0146】
例えば肩施療機構200と同様の構造の施療ユニットの基部210に、被施療者ないし施療者が当該施療ユニットを把持するための把持部を設けて、手持ち式(ハンディータイプ)の施療器とすることもできる。
【0147】
このように手持ち式とした場合、被施療者は施療器の把持部を把持し、自己の肩、背(背部)、首、腕、脚、足を包含する、被施療者の身体の任意の部位に移動させることで自己を施療することができる。
【0148】
またこのように手持ち式とした場合、上記同様に、施療者は、施療器の把持部を把持し、被施療者の肩、背(背部)、首、腕、脚、足を包含する、被施療者の身体の任意の部位に移動させて施療することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、施療ユニットおよびマッサージ機に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 :マッサージ機
15 :昇降アーム
200 :肩施療機構(施療ユニット)
200a :ユニット(施療ユニット)
210 :基部
228 :膨縮袋(第三駆動部)
240 :第一カム(斜板偏心カム)
260 :施療子
261 :第一施療子
265 :第二施療子
276 :第二施療子本体(第二施療子)
277a :膨縮袋
278a :膨縮袋
300 :背部施療機構(施療ユニット)
340 :第二カム(偏心カム)
A :第一駆動部
B :第二駆動部
C :第三駆動部
X :軸心
Y :軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18