(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】流体供給管
(51)【国際特許分類】
B01F 25/434 20220101AFI20220627BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220627BHJP
B05B 1/34 20060101ALI20220627BHJP
F15D 1/02 20060101ALI20220627BHJP
F15D 1/04 20060101ALI20220627BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20220627BHJP
【FI】
B01F25/434
B23Q11/10 A
B05B1/34 101
F15D1/02 C
F15D1/04
B01F23/2373
(21)【出願番号】P 2018091788
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509089340
【氏名又は名称】株式会社塩
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(72)【発明者】
【氏名】駒澤 増彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 勝
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030802(JP,A)
【文献】特開2018-015892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B23Q 11/00-13/00
B05B 1/34
F15D 1/02
F15D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給管であって、
内部構造体と、
内部構造体を収納するための管本体と、
を含み、
管本体は、流入口と流出口とを含
む筒形部を有し、
内部構造体は、断面が円形の共通の軸部材上に一体化して形成されている第1の部分と、第2の部分とを含んでおり、
第1の部分は、管本体に内部構造体が収納された際、管本体の上流側に位置し、軸部と、流体に渦巻流を発生させるように螺旋状に形成された複数の翼とを含んでおり、
第2の部分は、第1の部分より下流側に位置し、軸部と、軸部の外周面から突出した複数の突起部とを含んでおり、
第2の部分の複数の突起部の高さが、全てが同一ではなく、低い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該低い突起部との隙間を流れる流体の流れが大であり、高い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該高い突起部との隙間を流れる流体の流れが小である或いはほぼ無い
ものであり、
この高い突起部は、突起部が管本体に収納されたときは、管本体の筒形部の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部は、筒形部の内面壁との間に隙間ができて、この隙間は高い突起部と低い突起部の高さの差にほぼ等しく、流体がこの隙間を流動できるようになることを特徴とする、
流体供給管。
【請求項2】
内部構造体は、第1の部分よりも上流側に位置し、管本体の流入口を通じて流入される流体を管の中心から半径方向へ拡散させて、第1の部分に与える流体拡散部を更に有することを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項3】
内部構造体の流体拡散部は、円錐形又はドーム形に形成されている内部構造体の一端部であることを特徴とする請求項2に記載の流体供給管。
【請求項4】
内部構造体の第1の部分は、三つの翼を含んでおり、
翼の各々は、その先端が軸部の円周方向に互いに120°ずつずらされていることを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項5】
内部構造体の第2の部分の複数の突起部は網状に形成されており、各々の突起部は菱形の断面を有する柱形をしていることを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項6】
内部構造体の第2の部分の複数の突起部は、上流から下流に向けて、突起部の高さの高低を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項7】
突起部の高低は、上流から下流に向けて、高い突起が一列あると、低い突起が少なくとも一列あることを特徴とする請求項6に記載の流体供給管。
【請求項8】
内部構造体の第2の部分の複数の突起部は、軸体の円周方向に向けて、突起部の高さの高低を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項9】
突起部の高低は、軸体の円周方向に向けて、高い突起が一列あると、低い突起が少なくとも一列あることを特徴とする請求項8に記載の流体供給管。
【請求項10】
内部構造体は下流側の端部に流体を管の中心に向かって誘導する誘導部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項11】
内部構造体の誘導部は、円錐形に形成されている内部構造体の一端部であることを特徴とする請求項10に記載の流体供給管。
【請求項12】
内部構造体の誘導部は、ドーム形に形成されている内部構造体の一端部であることを特徴とする請求項10に記載の流体供給管。
【請求項13】
管本体は、流入側部材と流出側部材とからなり、
流入側部材と流出側部材とは、ねじ結合することを特徴とする請求項1に記載の流体供給管。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかの流体供給管に、冷却液を流入し、所定の流動特性を与えてから工具や被加工物に吐出させて、冷却するようにした工作機械。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかの流体供給管に、複数の異なる特性の流体を流入し、所定の流動特性を与えて、この複数の流体を混合したのち吐出させるようにした流体混合装置。
【請求項16】
流入口と流出口とを含む筒形部を有する管本体に収納される流体供給管の内部構造体であって、
断面が円形の共通の軸部材上に一体化して形成されている第1の部分と、第2の部分とを含んでおり、
第1の部分は、管本体に内部構造体が収納された際、管本体の上流側に位置し、軸部と、流体に渦巻流を発生させるように螺旋状に形成された複数の翼とを含んでおり、
第2の部分は、第1の部分より下流側に位置し、軸部と、軸部の外周面から突出した複数の突起部とを含んでおり、
第2の部分の複数の突
起部の高さが、全てが同一ではなく、低い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該低い突起部との隙間を流れる流体の流れが大であり、高い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該高い突起部との隙間を流れる流体の流れが小である或いはほぼ無い
ものであり、
この高い突起部は、突起部が管本体に収納されたときは、管本体の筒形部の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部は、筒形部の内面壁との間に隙間ができて、この隙間は高い突起部と低い突起部の高さの差にほぼ等しく、流体がこの隙間を流動できるようになることを特徴とする、
内部構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を供給する装置の流体供給管に関し、より具体的には、その内部を流れる流体に所定の流動特性を与える流体供給管に関する。例えば、本発明の流体供給管は、マシニングセンターや切削機、ドリル、研削盤の様々な工作機械のクーラント(冷却剤或いは加工液とも呼ばれる)の供給装置に適用可能である。特に、本発明は、潤滑性に優れた油性のクーラントを主に用いる工作機械に適用できる。また、流体をせん断、攪拌、拡散、混合するミキサーなどにも適用できる。特に、粘性が高い流体をミキシングする際に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械において、例えば、金属から成る被加工物(ワーク)を所望の形状に加工する際に、被加工物と刃物との当接する部分とその周囲にクーラントを供給することにより、加工中に発生する熱を冷ましたり、被加工物の切り屑や削り屑などを加工箇所から除去したりしている。被加工物と刃物との当接部で高い圧力と摩擦抵抗によって発生する切削熱は、刃先を摩耗させたり強度を落としたりして、刃物などの工具の寿命を減少させる。また、被加工物の切り屑などが十分に除去されなければ、加工中に刃先にへばりついて加工精度を落とすこともある。この場合、クーラントは、工具と被加工物との間の摩擦抵抗を減少させ、切削熱を除去する同時に、被加工物の表面からの切りくずを除去する洗浄作用を行う。このために、クーラントは摩擦係数が小さくて、沸騰点が高くて、刃物と被加工物との当接部によく浸透する特性を持つことが好ましい。
【0003】
本特許出願人は、特許第6245397号や特許6245401号において、流体の浸透性や潤滑性を上げることができる流体供給管を開示した。例えば、水溶性クーラントの場合は、かかる流体供給管を用いることによって、ファインバブル(マイクロバブルやナノオーダーのウルトラファインバブル)が発生でき、流体の表面張力を下げることで、流体の浸透性を上げ、また潤滑性を上げることに成功している。
【0004】
この流体供給管は、ファインバブルの供給を必要とする様々なアプリケーションにも適用できる。更に、この流体供給管を用いて、複数の流体をミキシングする場合にも、流体を微細にせん断し、攪拌し、拡散し、混合することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6245397号
【文献】特許第6245401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従前の流体供給管では、油性のクーラントや、粘性の高い流体の場合は、圧力損失(流体供給管の出口と入口の流体の圧力差)が大きくなり、クーラント供給の場合は、工具や被加工物に対するクーラントの噴射力が弱くなってしまったり、ミキサーの場合は、効率的にミキシングができなかったりする可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてこれまでの流体供給管を改善するものである。本発明の目的は、その内部を流れる流体が、粘性が高い場合であっても、圧力損失への対策が取れ、せん断、攪拌、拡散、混合が適切にできる流体供給管を提供することにある。工作機械の分野においては、油性クーラントを用いる場合であっても、流体供給管により出力する流体の粘性を下げて、その結果、浸透力を高め、冷却効果や洗浄効果が向上するようにする。また、粘性の高い流体でも、流体のミキシングが十分にできるので、ミキサーとしての機能も十分発揮できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するために、次のような構成にしてある。即ち、流体供給管は、内部構造体と、内部構造体を収納するための管本体とを含み、管本体は、流入口と流出口とを含む筒形部を有する。内部構造体は、断面が円形の共通の軸部材上に一体化して形成されている第1の部分と、第2の部分とを含む。第1の部分は、管本体に内部構造体が収納された際、管本体の上流側に位置し、軸部と、流体に渦巻流を発生させるように螺旋状に形成された複数の翼とを含む。第2の部分は、第1の部分より下流側に位置し、軸部と、軸部の外周面から突出した複数の突起部とを含む。第2の部分の複数の突起部の高さが、全てが同一ではなく、低い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該低い突起部との隙間を流れる流体の流れが大であり、高い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該高い突起部との隙間を流れる流体の流れが小である或いはほぼ無いものである。この高い突起部は、突起部が管本体に収納されたときは、管本体の筒形部の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部は、筒形部の内面壁との間に隙間ができて、この隙間は高い突起部と低い突起部の高さの差にほぼ等しく、流体がこの隙間を流動できるようになる。
【0009】
また、本発明に係る流入口と流出口とを含む筒形部を有する管本体に収納される流体供給管の内部構造体は、断面が円形の共通の軸部材上に一体化して形成されている第1の部分と、第2の部分とを含む。第1の部分は、管本体に内部構造体が収納された際、管本体の上流側に位置し、軸部と、流体に渦巻流を発生させるように螺旋状に形成された複数の翼とを含む。第2の部分は、第1の部分より下流側に位置し、軸部と、軸部の外周面から突出した複数の突起部とを含む。第2の部分の複数の突起部の高さが、全てが同一ではなく、低い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該低い突起部との隙間を流れる流体の流れが大であり、高い突起部の個所では、管本体と内部構造体の当該高い突起部との隙間を流れる流体の流れが小である或いはほぼ無いものである。この高い突起部は、突起部が管本体に収納されたときは、管本体の筒形部の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部は、筒形部の内面壁との間に隙間ができて、この隙間は高い突起部と低い突起部の高さの差にほぼ等しく、流体がこの隙間を流動できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体供給管を工作機械等のクーラント供給に用いれば、流体供給管の内では、複数の突起部間に形成された細い流路を通過する際に、突起に衝突するなどして、流体を微細にせん断し、攪拌し、拡散し、混合することで、流体の粘性を下げることになる。従って、本発明の流体供給管に、油性のクーラントを流入した場合、粘性が下がることによって、工作機械の被加工物や刃物により浸透しやすくなることで、冷却性や洗浄性が高まる。特に、複数の突起部の高さが全てが同一ではなく、低い突起部の個所では、管本体と内部構造体との隙間を流れる流体の流れが大となる。この高い突起部は、突起部が管本体に収納されたときは、管本体の筒形部の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部は、筒形部の内面壁との間に隙間ができて、この隙間は高い突起部と低い突起部の高さの差にほぼ等しく、流体がこの隙間を流動できるようになり、圧力損失の低減に寄与する。従って、被工作物や工作機械の刃物へ照射するクーラントは十分な噴出力となる。また、ミキサーに本流体供給管を適用した場合は、粘性の高い流体であっても、効率的、効果的にミキシングが可能となる。
更に、水溶性のクーラントを用いる場合においては、本流体供給管内部で発生した多数のファインバブルによって流体の表面張力が下がり、浸透性や潤滑性が高まる。その結果、工具と被加工物とが接する箇所で生じる熱の冷却効果が大きく上がる。このように、流体の浸透性を向上させて冷却効果を増大させ、潤滑性を向上させると共に、加工精度を向上させることができる。また発生したファインバブルが工具と被加工物とにぶつかって消滅する過程において発生する振動及び衝撃によって、従来に比べて洗浄効果が向上する。これは切削刃などの工具の寿命を延長させ、工具の取換えのために消耗する費用を節減する。
【0011】
また、本発明の多数の実施形態において、流体供給管の内部構造体は一体化した1つの部品として製造される。従って、内部構造体と管本体とを組み立てる工程が単純になる。
【0012】
本発明の流体供給管は、マシニングセンター、切削機、ドリル、研削盤等の様々な工作機械においての冷却剤供給に適用されることができる。それだけでなく、二つ以上の種類の流体を混合する装置でも効果的に用いることができる。特に、流体が粘性の高い場合にも圧力損失を低減して、必要な流量の出力が流体供給管から得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の詳細な記述が以下の図面と合わせて考慮されると、本願のより深い理解が得られる。これらの図面は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【
図1】本発明の流体供給管を備えるマシニングセンターの一例を示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る流体供給管の側面分解図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る流体供給管の側面透視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る流体供給管の内部構造体の3次元斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る流体供給管の内部構造体の菱形突起部を形成する方法を説明する図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る流体供給管の内部構造体の菱形突起部によって形成される流路を流れる流体について説明する説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る流体供給管の側面分解図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る流体供給管の側面透視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る流体供給管の内部構造体の3次元斜視図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る流体供給管の側面分解図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る流体供給管の側面透視図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る流体供給管を示し、(A)は側面分解図であり、(B)は(A)のA方向の矢視図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る流体供給管の側面透視図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る流体供給管の内部構造体の菱形突起部によって形成される流路を流れる流体について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、主に本発明を研削装置などの工作機械に適用した実施形態について説明するが、本発明の適用分野はこれに限定されない。本発明は、流体を供給する様々なアプリケーションに適用可能であり、流体混合装置、特に、粘性の高い流体のミキサーにも適用可能である。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明が適用された流体供給部を備えるマシニングセンターの一実施形態を示す。図示されたように、マシニングセンター1は多数の種類の異なる刃物(ドリル、フライス、エンドミルなどの工具)2が、スピンドル3に交換可能に取り付けられる。スピンドル3は、図示しない主軸モータにより、刃物2を回転させることができる。また、スピンドル3や刃物2を上下させる図示しない駆動部も有する。マシニングセンター1では、刃物2の交換によって、フライス、穴あけ、中ぐり、ねじ立て等の種々の作業を可能とする。コラム4には、このスピンドル3のほかに、流体(冷却剤或いは加工液)を供給するノズル5-1~5-6が取り付けられている。2つのロックラインノズル5-1,5-2は、連結管6を介し、コラム4の内部を経由して供給される流体を、被加工物Wの工作箇所Gを中心に噴射する。また、マシニングセンター1には、小型の4個のシングルノズル5-3~5-6もあり、連結管6を介し、コラム4の内部を経由して供給される流体を適宜の吐出角度で自由に噴出する。これらのノズル5-1~5-6もコラム4に取り付けられている。また、マシニングセンター1には、被加工物Wを平面の上で移動させるテーブル7、被加工物W又は研削刃2を上下に移動させるコラム4等を備える基台8と、流体を刃物2や被加工物Wに供給する流体供給部9とを備える。流体供給部9は流体を貯留する加工液タンク10と、上記流体を加工液タンク10から流出させるポンプ11と、ポンプ11から流体供給管Pに流体を送出する配管12を備える。
【0017】
配管12から流体供給管Pに流入する流体は、流体供給管Pを通過しながらその内部構造体によって所定の流動特性を持つようになり、流体供給管Pの流出口を経て連結管6を介し、更に、コラム4の内部を介して、上述したノズル5-1~5-6に供給される。尚、工作箇所Gなどに向けて噴出された流体は、配管13によって回収された後、フィルター装置(図示せず)による濾過などを経て加工液タンク10にもどる。以下、流体供給管Pの様々な実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は本発明の第1の実施形態に係る流体供給管100の側面分解図であり、
図3は流体供給管100の側面透視図である。
図4は流体供給管100の内部構造体140の3次元斜視図である。
図2及び
図3に示されたように、流体供給管100は管本体110と内部構造体140とを含む。
図2及び
図3において、流体は流入口111から流出口112側へ流れる。
【0019】
管本体110は、流入側部材120と、流出側部材130から構成される。流入側部材120と流出側部材130とは、円筒形の中が空いている管の形態を有する。流入側部材120は、一端部に所定の直径の流入口111を有し、他の端部側には流出側部材130との接続のために内周面をねじ加工することによって形成された雌ねじ126を備える。流入口111の側には連結部122が形成されており、連結部122は配管12と結合される。例えば、連結部122の内周面に形成された雌ねじと配管12の端部の外周面に形成された雄ねじとのねじ結合により、流入側部材120と配管12とが連結される。本実施形態においては、
図2に示されたように、流入側部材120は両端部の内径、即ち、流入口111の内径と雌ねじ126との内径とが違い、流入口111の内径が雌ねじ126の内径より小さい。流入口111と雌ねじ126との間にはテーパー部124が形成されている。本発明はこの構成に限定されず、流入側部材120は両端部の内径が同一であってもよい。
【0020】
流出側部材130は、一端部に所定の直径の流出口112を有し、他の端部側には流入側部材120との接続のために外周面をねじ加工することによって形成された雄ねじ132を備える。流出側部材130の雄ねじ132の外周面の直径は流入側部材120の雌ねじ126の内径と同一である。流出口112の側には連結部138が形成されており、連結部138は連結管6と結合される。例えば、連結部138の内周面に形成された雌ねじと連結管6の端部の外周面に形成された雄ねじとのねじ結合により、流出側部材130と連結管6とが連結される。雄ねじ132と連結部138との間には筒形部134及びテーパー部136が形成される。本実施形態においては、流出側部材130は両端部の内径、即ち、流出口112の内径と雄ねじ132の内径とが違い、流出口112の内径が雄ねじ132の内径より小さい。本発明はこの構成に限定されず、流出側部材130は両端部の内径が同一であってもよい。流入側部材120の一端部の内周面の雌ねじ126と流出側部材130の一端部の外周面の雄ねじ132とのねじ結合によって、流入側部材120と流出側部材130とが連結されることで管本体110が形成される。
【0021】
一方、管本体110の上記構成は一つの実施形態に過ぎず、本発明は上記構成に限定されない。例えば、流入側部材120と流出側部材130との連結は上記のねじ結合に限定されず、当業者に知られた機械部品の結合方法はどれでも適用可能である。また、流入側部材120と流出側部材130との形態は、
図2及び
図3の形態に限定されず、設計者が任意に選択したり、流体供給管100の用途によって変更したりすることができる。流入側部材120又は流出側部材130は、例えば、スチールのような金属、又はプラスチックから成る。
【0022】
図2及び
図3を一緒に参照すれば、流体供給管100は、内部構造体140を流出側部材130に収納した後に、流出側部材130の外周面の雄ねじ132と流入側部材120の内周面の雌ねじ126とを結合させることによって構成されることが理解される。内部構造体140は、例えば、スチールのような金属からなる円柱部材を加工する方法又はプラスチックを成形する方法等によって形成される。
図2及び
図4に示されたように、本実施形態の内部構造体140は、断面が円形の共通の軸部材141の上に一体化して形成されている流体拡散部142と、渦巻発生部143と、菱形突起部145と、ドーム形態の誘導部150とを含む。本実施形態では、軸部材141は渦巻発生部143と、菱形突起部145とにおいて同一の直径を有する。流体拡散部142の断面の最も大きい部分の直径が、渦巻発生部143の軸部141-1の直径と同一である。流体拡散部142、渦巻発生部143、菱形突起部145、及び誘導部150のそれぞれは、例えば、一つの円柱部材の一部を加工することにより形成される。
【0023】
本実施形態において、流体拡散部
142は
円錐形の形態を有する。例えば、円柱部材の一端部を
円錐形の形態に加工することで形成される。流体拡散部142は流入口111を経て流入側部材120に流入する流体を管の中心部から外側へ、即ち、半径方向へ拡散させる。流体拡散部142は、管本体110に収納されたときは、流入側部材120のテーパー部124に対応する位置にある(
図2および
図3参照)。本実施形態においては流体拡散部142が円錐の形態を有するが、本発明はこの実施形態に限定されない。他の実施形態では、流体拡散部142がドームの形態を有する。その他、先端の一点から徐々に同心円的に拡大する形状であればよい。更に他の実施形態では、内部構造体140が流体拡散部142を備えない。つまり、この場合は、流入口111からの流体は渦巻発生部143に直接供給される。これらは以下に説明する他の実施形態においても同様である。
【0024】
渦巻発生部143は、
図4に示されたように、流体拡散部142より下流側に形成されている。渦巻発生部143は、円形の断面を有しその直径が一定した軸部141-1と、3個の反時計回転方向の回転を生じる螺旋状に形成された翼143-1、143-2、143-3とを含む(勿論、時計回転方向でもよい)。
図2に示されたように、本実施形態において、渦巻発生部143の長さm2は流体拡散部142の長さm1よりは長くて、菱形突起部145の長さm4よりは短い。また、流体拡散部142の断面積の最大である部分の直径は渦巻発生部143の軸部141-1の直径と同一である。他の実施形態においては、流体拡散部142の断面積の最大である部分の直径が軸部141-1の直径より小さい。更に他の実施形態においては、流体拡散部142の断面積の最大である部分の直径が軸部141-1の直径より大きい。この場合にも、流体拡散部142の断面積の最大である部分の半径は渦巻発生部143の半径(渦巻発生部143の軸部141-1の中心から各翼の先端までの距離)より小さいのが好ましい。渦巻発生部143の翼143-1、143-2、及び143-3の各々は、その先端が軸部141-1の円周方向に互いに120°ずつずらされており、軸部141-1の一端から他端まで外周面に所定の間隔をあけて反時計まわりに螺旋状に形成されている。本実施形態では翼の個数を3個にしたが、本発明はこのような実施形態に限定されない。また、渦巻発生部143の翼143-1、143-2、及び143-3の形態は、流体拡散部142をすぎながら拡散されて渦巻発生部143に進入した流体が、各翼の間を通過する間に渦巻流を起こすことができる形態であれば特に制限されない。一方、本実施形態では、渦巻発生部143は、内部構造体140を管本体110に収納した時に、管本体110の流出側部材130の筒形部134の内周面に近接する程度の外径を有する。
【0025】
菱形突起部145は、流体拡散部142及び渦巻発生部143より下流側に形成されている。
図2および
図4に示されたように、菱形突起部145は、円形の断面を有しその直径が一定した軸部141-3と、それぞれが菱形の断面を有する柱形をしている複数の突起部(凸部)145pが網状に形成されている。それぞれの突起部145pは、軸部141-3の表面から半径方向に外側に向かって突出した形態になるように、例えば、円柱部材の外周面を研削加工することによって形成される。詳細には、複数の菱形突起部145pには、軸部141-3の外周面から突出した複数の高い突起部(凸部)145p1、低い突起部(凸部)145p2を含む。
図2および
図4の実施形態によれば、渦巻発生部143に最も近いのは、高い突起部145p1であり、その下流には、低い突起部145p2があり、更にその下流は高い突起部145p1が形成される。つまり、上流から下流にかけて、高い突起部145p1と低い突起部145p2とが交互に出現する配列となっている。この高い突起部145p1は、突起部145が管本体110に収納されたときは、管本体110の筒形部134の内面壁とほとんど隙間がない高さであり、低い突起部145p2は、筒形部134の内面壁と隙間(つまり、突起部145p1と突起部145p2の高さの差にほぼ等しい)ができて、流体がこの隙間を流動できるようになる。それぞれの突起部145p(145p1、145p2)の形成方法は、例えば、
図5に図示されたように、円柱部材の長さ方向に対して90度の方向に一定の間隔を持つ複数のラインと、上記長さ方向に対して所定の角度(例えば、60度)に傾いた一定の間隔のラインを交差させ、90度の方向のラインの間を一回ずつ飛ばして研削すると共に、傾いたラインの間を一回ずつ飛ばして研削する。このようにして、軸部141-3の外周面から突出した複数の突起部145pが上下(円周方向)、左右(軸部141-3の長さ方向)に一つずつ飛ばして規則的に形成される。研削により形成された溝底面が軸部141-3の外周面になる。従って、突起部145pによって形成される流路145rは、軸部材141の長手方向に対して60度の角度を持って反時計回転方向に旋回する流路と、それと交差する軸部材141の長手方向に対して90度の角度をもった、軸部材の円周を回転する流路とになる。なお、渦巻発生部143の3個の螺旋状の翼143-1~143-3の流体の螺旋回転を時計回転方向とするならば、軸部材141の長手方向に対して旋回する流路も例えば、60度の角度を持って時計回転方向に旋回するものとする。これは、他の実施形態においても同様である。また、本実施形態において、菱形突起部145は、内部構造体140を管本体110に収納した時に、管本体110の流出側部材130の筒形部134の内周面に突起部145p1が近接する程度の外径を有する。従って、突起部145p2とは、筒形部134の内周面との間に一定の隙間が生じ、流体がこの突起部145p2の上を一定量通過することができるようになる。なお、複数の突起部145pの形状は、上述の菱形突起でなくても良く(例えば、三角形、多角形、その他)、その配列も
図5から適宜(角度、幅など)変更できる。この変更は、以下に説明する他の実施形態においても同様である。加えて、上記説明では、突起部145pを研削加工で製作すると説明したが、研削加工に代えて切削加工、旋削加工を組み合わせて行うことで、時間短縮が図れることになる。なお、この加工方法は、他の実施形態においても同様である。
【0026】
本実施形態では、
図2乃至
図4に示されたように、渦巻発生部143の軸部141-1の直径と、菱形突起部145の軸部141-3の直径とが同一である。このために、渦巻発生部143と菱形突起部145との間の軸部141-2も同一の直径を有する。また、軸部141-2の長さm3は渦巻発生部143の軸部141-1の長さm2より短く、かつ流体拡散部142の長さm1よりも短い。しかし、本発明はこの実施形態に限定されない。軸部141-2の長さm3は、流体拡散部142の長さm1と同じ、又はそれよりも長くてもよい。また、渦巻発生部143の長さm2も、流体拡散部142の長さm1や軸部141-2の長さm3と同じあるいはそれらよりも短くてもよい。
【0027】
誘導部150は、例えば、円柱部材の下流側の端部を円錐形に加工することで形成される。後述するように、流体供給管100の内部を流れる流体が誘導部150によって管の中心に向かって誘導されることにより、流出口112を通じて流体を円滑に吐き出すことができる。一方、他の実施形態においては、内部構造体140が誘導部150を含まない。
【0028】
以下、流体が流体供給管100を通過する間の流動について説明する。インペラ(羽根車)が右折又は左折するポンプ11によって配管9(
図1参照)を経て流入口111を通じて流入された流体は、流入側部材120のテーパー部124の空間を過ぎて流体拡散部142にぶつかり、流体供給管100の中心から外側に向かって(即ち、半径方向へ)拡散される。拡散された流体は渦巻発生部143の螺旋状に形成された3個の翼143-1乃至143-3の間を通過して行く。流体拡散部142は配管9を通じて流入された流体が効果的に渦巻発生部143に進入するように流体を誘導する作用を行う。流体は渦巻発生部143の各翼によって強烈な渦巻流になって、軸部141-2を過ぎて菱形突起部145に送られる。
【0029】
そして、流体は菱形突起部145の複数の菱形突起部145pの間を通る。これらの複数の菱形突起部145pは複数の狭い流路(螺旋状)145rを形成する。流体が複数の菱形突起部145pによって形成された複数の狭い流路145rを通過することで、多数の微小な渦を発生させる。このような現象によって、流体の混合及び拡散を誘発する。菱形突起部145の上記構造は、異なる性質を有する二つ以上の流体を混合する場合にも有用である。詳細には、
図6に示す通り、流体は、軸部材141の長さ方向に対して60度の方向に強い旋回流となって流れ、長さ方向に対して90度の方向の流路と交差するところで、主として、図面上方に少量流れることになる。この他の流れとしては、
図6に一点鎖線で示す長さ方向に75度の角度を中心とした60度から90度の方向に、低い菱形突起部145p2と管本体145の内壁面との隙間を流れる流路が形成される。つまり、この一点鎖線の補助的な流れがあることによって、60度の角度の旋回流(および90度の角度のながれ)のみでは、圧力損失が生じてしまうのを、本実施形態では改善しているのである。
【0030】
また、内部構造体140は、流体が断面積が大きい上流側(渦巻発生部143)から断面積が小さい下流側(菱形突起部145の複数の突起部145pの間に形成された流路)へ流れるようにする構造を有する。この構造は流体の静圧力(static pressure)を変化させる。流体に外部エネルギーが加えられない状態での圧力、速度、及び位置エネルギーの関係は次のようなベルヌーイ方程式として表される。
ここで、pは流線内の一点での圧力、ρは流体の密度、υはその点での流動の速度、gは重力加速度、hは基準面に対するその点の高さ、kは定数である。上記方程式として表現されるベルヌーイ定理は、エネルギー保存法則を流体に適用したものであり、流れる流体に対して流線上ですべての形態のエネルギーの合計はいつも一定であるということを説明する。ベルヌーイ定理によると、断面積が大きい上流では、流体の速度が遅くて静圧は高い。これに対して、断面積が小さい下流では、流体の速度が速くなり静圧は低くなる。
【0031】
流体が液体である場合、低くなった静圧が液体の飽和蒸気圧に到達すると液体の気化が始まる。このようにほぼ同一の温度において静圧がきわめて短い時間内に飽和蒸気圧より低くなって(水の場合、3000-4000Pa)液体が急激に気化する現象をキャビテーション(cavitation)と称する。本発明の流体供給管100の内部構造はこのようなキャビテーション現象を誘発する。この現象は、水を主成分とする水溶性クーラントの場合は生じやすい。キャビテーション現象によって液体のうちに存在する100ミクロン以下の微小な気泡核を核として液体が沸騰し小さい気泡が多数生じる。気化によって発生するファインバブルは水の表面張力を低下させるため浸透性及び潤滑性を向上させる。浸透性の向上は結果的に冷却効率を増加させる。或いは、流体に予め空気を注入し(
図1の配管12の途中で空気の注入手段を設ける)、菱形突起部145の多数の突起部145pとの流体の衝突によって溶存気体の遊離を起こさせ、多数のファインバブルを発生させることもできる。この場合も、発生するファインバブルは水の表面張力を低下させるため浸透性及び潤滑性を向上させる。浸透性の向上は結果的に冷却効率を増加させる。
【0032】
水の場合、1つの水分子が他の4個の水分子と水素結合を形成でき、この水素結合ネットワークを破壊することは容易ではない。そのために、水は水素結合を形成しない他の液体に比べて沸点や融点が非常に高いし、高い粘度を示す。水の沸点が高い性質は優秀な冷却効果をもたらすので、研削等を行う加工装置の冷却水として頻繁に用いられるが、水分子の大きさが大きくて加工箇所への浸透性や潤滑性は良くないという問題がある。そこで、通常は水でない特殊な潤滑油(即ち、切削油)を単独に、または、水と混合して用いる場合も多い。ところで、本発明の供給管を用いれば、上記したキャビテーション現象によって水の気化が起き、その結果、水の水素結合ネットワークが破壊されて粘度が低くなる。また、従って、本発明によると、特殊な潤滑油を使うこと無しに、水だけを用いても加工品質、即ち、工作機械の性能を向上させることができる。
【0033】
菱形突起部145を通過した流体は内部構造体140の端部に向かって流れる。菱形突起部145の複数の狭い流路145rから流出側部材130のテーパー部136へ流れれば流路が急激に広くなる。このとき内部構造体140の誘導部150のドーム形の曲面によって、コアンダ(Coanda)効果が発生する。コアンダ効果は、流体を曲面の周囲で流せば流体と曲面との間の圧力低下によって流体が曲面に吸い寄せられることによって流体が曲面に沿って流れる現象を称する。このようなコアンダ効果によって、流体は誘導部150の表面に沿って流れるように誘導される。流体は流出側部材130のテーパー部136と内部構造体140の誘導部150によって管の中心に向かって誘導されて流出口112を通じて流出され、
図1のノズル5-1~5-6を通じて工作箇所Gなどに向かって吐き出される。ノズル5-1~5-6から吐出される流体は、流体供給管P(
図3の流体供給管100)において、微細レベルで、せん断、攪拌、拡散、混合が十分起きており、油性クーラントの場合、もともと水溶性のクーラントに比べて潤滑性が優れているが、粘性を下げて、浸透性も高まっていて、冷却効果が向上することになる。また、流体に対して、菱形突起部145により、多数のファインバブルが含まれるようになっている場合(特に、水溶性クーラントの場合)、ノズル5-1~5-6から噴出することで、それが大気圧に露出し、刃物2と被加工物Wにぶつかってバブルがこわれたり爆発したりして消滅する。このようにバブルが消滅する過程で発生する振動及び衝撃は、工作箇所Gで発生するスラッジや切りくずを効果的に除去する。換言すれば、ファインバブルが消滅しながら工作箇所Gの周囲の洗浄効果を向上させる。
【0034】
本発明の流体供給管100を工作機械等の流体供給部に設けることによって、圧力損失の対策が取れたうえで、冷却剤或いは加工液が、ノズルより十分な噴射力の流体となって供給され、刃物と被加工物とで発生する熱を従来に比べてより効果的に冷却させることができ、浸透性及び潤滑性が良くなって加工精度を向上させることができる。また、被加工物の切りくずを加工箇所から効果的に除去することで、切削刃等の工具の寿命を延長させ、工具の取換えのために消耗する費用を節減することができる。
【0035】
尚、本実施形態では、1つの部材を加工して内部構造体140の流体拡散部142と、渦巻発生部143と、菱形突起部145と、誘導部150とを形成するので、内部構造体140が一体化した1つの部品として製造される。従って、内部構造体140を流出側部材130の内部に収納した後に、流出側部材130と流入側部材120とを結合(例えば、流出側部材130の雄ねじ132と流入側部材120の雌ねじ126とのねじ結合による)する簡単な工程だけで、流体供給管100を製造することができる。
【0036】
本発明の流体供給管は、マシニングセンター、切削機、ドリル、研削盤等の様々な工作機械においての冷却剤や加工液の供給に用いることが可能である。また、2つ以上の流体(液体と液体、液体と気体、又は、気体と気体等)、特に少なくとも一つの流体の粘性が高い場合において、複数の流体を混合する装置にも効果的に利用することができる。例えば、エマルジョン燃料のように、オイル(粘性が高い)と水とを混合する場合にも有用である。更には、本発明の流体供給管を燃焼エンジンに適用すれば、燃料と空気とが十分に混ざり合うことによって燃焼効率が向上する。また、本発明の流体供給管を洗浄装置に適用すれば、通常の洗浄装置に比べて洗浄効果をより向上させることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、
図7乃至
図9を参照して本発明の第2の実施形態に係る流体供給管200について説明する。第1の実施形態と同一の構成については説明を省略し、差のある部分を詳細に説明する。第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素に対しては同一の図面符号を使う。
図7は第2の実施形態に係る流体供給管200の側面分解図であり、
図8は流体供給管200の側面透視図である。
図7及び
図8に示されたように、流体供給管200は管本体110と内部構造体240とを含む。
図9は、内部構造体240の3次元斜視図である。第2の実施形態の管本体110は第1の実施形態のものと同一であるので、その説明を省略する。
図7及び
図8において、流体は流入口111から流出口112側へ流れる。
図8に示されたように、流体供給管200は、内部構造体240を流出側部材130に収納した後に、流出側部材130の外周面の雄ねじ132と流入側部材120の内周面の雌ねじ126とを結合することで構成される。
【0038】
第2の実施形態の内部構造体240は、上流側から下流側に向かって、断面が円形の共通の軸部材241の上に一体化して形成されている流体拡散部242と、渦巻発生部243と、菱形突起部245と、誘導部250とを含む。例えば、内部構造体240は一つの円柱形態の部材を加工して形成される。本実施形態において、軸部材241は渦巻発生部243と、菱形突起部245とにおいて同一の直径を有する。流体拡散部242の断面の最も大きい部分の直径が、渦巻発生部243の軸部の直径と同一である。流体拡散部242、渦巻発生部243、菱形突起部245のそれぞれは、第1の実施形態の流体拡散部142、渦巻発生部143、菱形突起部145のそれぞれと同様の構造を有し、同様の方法で形成することができる。
【0039】
本実施形態では流体拡散部242が円錐形をしているが、本発明はこの実施形態に限定されない。他の実施形態においては、流体拡散部242がドームの形態を有する。更に他の実施形態では、内部構造体240が流体拡散部242を備えない。また、ドーム形の誘導部150を有する第1の実施形態の内部構造体140と違い、第2の実施形態の内部構造体240は円錐形の誘導部250を有する。誘導部250は、例えば、円柱部材の下流側の端部を円錐形に加工して形成される。
【0040】
流体供給管200に流入した流体は流体拡散部242により拡散されて順に渦巻発生部243と、菱形突起部245とを過ぎる。そして、流体は菱形突起部245の複数の狭い流路から流出側部材130のテーパー部136へ流れるので流路が急激に広くなる。このとき、誘導部250の円錐形態の曲面によって、コアンダ効果が発生する。このコアンダ効果によって、流体は誘導部250の表面に沿って流れるように誘導される。円錐形態の誘導部250によって中心に向かって誘導された流体はテーパー部136を過ぎて流出口112を通じて流出される。流体供給管200に流入した流体は、第1の実施形態同様、圧力損失の改善がなされたうえで、流体を噴出させることができて、冷却機能及び洗浄効果を向上させる。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、
図10および
図11を参照して本発明の第3の実施形態に係る流体供給管300について説明する。第1の実施形態と同一の構成については説明を省略し、差のある部分を詳細に説明する。第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素に対しては同一の図面符号を使う。
図10は第3の実施形態に係る流体供給管300の側面分解図であり、
図11は流体供給管300の側面透視図である。
【0042】
図示されたように、流体供給管300は管本体110と内部構造体340とを含む。第3の実施形態の管本体110は第1の実施形態のものと同一であるので、その説明を省略する。
図10及び
図11において、流体は流入口111から流出口112側へ流れる。
図11に示されたように、流体供給管300は、内部構造体340を流出側部材130に収納した後に、流出側部材130の外周面の雄ねじ132と流入側部材120の内周面の雌ねじ126とを結合することで構成される。
【0043】
第3の実施形態の内部構造体340は、上流側から下流側に向かって、断面が円形の共通の軸部材341の上に一体化して形成されている流体拡散部342と、渦巻発生部343と、菱形突起部345と、ドーム形の誘導部350とを含む。流体拡散部342、渦巻発生部343、菱形突起部345及び誘導部350のそれぞれは、第1の実施形態の流体拡散部142、渦巻発生部143、菱形突起部145及び誘導部150のそれぞれと同様の構造を有し、同様の方法で形成することができる。他の実施形態では、流体拡散部342や誘導部350は無くてもよく、更には、誘導部350は、第2実施形態と同様に円錐形であってもよい。
【0044】
第3の実施形態では、菱形突起部345の複数の突起部345pの配列が、第1の実施形態の菱形突起部145の複数の突起部145pの配列と異なっている。詳細には、
図10にあるとおり、渦巻発生部343に最も近いのは、低い菱形突起部345p2である。その下流には、同じく低い突起部345p2が生成され、それに続いて、高い突起部345p1が形成される。つまり、上流から下流にかけて軸部材341には、2列の低い突起部345p2と1列の高い突起部345p1が、繰り返し出現する配列となっている。
【0045】
このように、突起部345pの配列は、圧力損失の状況に応じて、適宜選択、変更が出来るもので、他の実施形態では、1列の低い突起部345p2と2列の高い突起部345p1を繰り返して出現するようにしてもよい。更には、高、低の2段階の突起部345p1、345p2ではなく、3段階あるいは多段階の突起部を設けるようにしてもよい。
【0046】
(第4の実施形態)
次に、
図12乃至
図14を参照して本発明の第4の実施形態に係る流体供給管400について説明する。第1の実施形態と同一の構成については説明を省略し、差のある部分を詳細に説明する。第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素に対しては同一の図面符号を使う。
図12(A)は第4の実施形態に係る流体供給管400の側面分解図であり、(B)は、(A)の矢印Aの方向に見たときの矢視図であり、
図13は流体供給管400の側面透視図であり、
図14はひし形突起部によって形成される流路を流れる流体について説明する説明図である。
【0047】
図示されたように、流体供給管400は管本体110と内部構造体440とを含む。第4の実施形態の管本体110は第1の実施形態のものと同一であるので、その説明を省略する。
図12及び
図13において、流体は流入口111から流出口112側へ流れる。
図13に示されたように、流体供給管400は、内部構造体440を流出側部材130に収納した後に、流出側部材130の外周面の雄ねじ132と流入側部材120の内周面の雌ねじ126とを結合することで構成される。他の実施形態では、流体拡散部442や誘導部450は無くてもよく、更には、誘導部450は、第2実施形態と同様に円錐形であってもよい。
【0048】
第4の実施形態の内部構造体440は、上流側から下流側に向かって、断面が円形の共通の軸部材441の上に一体化して形成されている流体拡散部442と、渦巻発生部443と、菱形突起部445と、ドーム形の誘導部450とを含む。流体拡散部442、渦巻発生部443、菱形突起部445及び誘導部450のそれぞれは、第1の実施形態の流体拡散部142、渦巻発生部143、菱形突起部145、誘導部150のそれぞれと同様の構造を有し、同様の方法で形成することができる。
【0049】
第4の実施形態では、菱形突起部445の複数の突起部345pの配列が、第1の実施形態の菱形突起部145の複数の突起部145pの配列と異なっている。詳細には、
図12の(B)にあるとおり、軸部材441の円周方向に、高い突起部445p1の列と低い突起部445p2の列とが、交互に出現するようになっている。そして、低い突起部345p2は反時計回りに回転する方向に連続して出現する。従って、
図14に示す通り、流体の流れは、流体は、軸部材141の長さ方向に対して60度の方向に強い旋回流となって流れ、長さ方向に対して90度の方向の流路と交差するところで、主として、図面上方に少量流れることになる。この他の流れとしては、一点鎖線で示す低い軸部材441の長さ方向に75度の角度を中心とした60度から90度の角度を持った方向の、突起部145p2と管本体145の筒形部134の内壁面との隙間を流れる流路が形成される。つまり、この一点鎖線の補助的な流れがあることによって、60度の角度の旋回流(および90度の角度のながれ)のみでは、圧力損失が生じてしまうのを、本実施形態では改善しているのである。
【0050】
突起部445pの配列は、圧力損失の状況に応じて、適宜選択、変更が出来るもので、他の実施形態では、軸部材441の円周方向に1列の低い突起部345p2と2列の高い突起部345p1を円周方向に繰り返して出現するようにしてもよい。更には、高、低の2段階の突起部345p1、345p2ではなく、3段階あるいは多段階の突起部を設けるようにしてもよい。更には、低い突起部345p2の出現を、軸部材441の長さ方向に対して別の角度の35度、60度、75度、120度、などの角度を持って出現するようにしてもよい。いずれにしても、流体の粘性と、菱形の突起部345pでのせん断、攪拌、拡散、混合の能力とによって、適宜、高い突起部345p1と低い突起部345p2(更には多段階の高さの突起部)の配列の仕方を変更して、流体供給管の圧力損失の改善を図ることができる。
【0051】
以上、本発明を、複数の実施形態を利用して説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることではない。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、上記説明及び関連図面から本発明の多くの変形及び他の実施形態を導出することができる。本明細書では、複数の特定用語が使われているが、これらは一般的な意味として単に説明の目的のために使われただけであり、発明を制限する目的で使われたものではない。添付の特許請求の範囲及びその均等物により定義される一般的な発明の概念及び思想を抜け出さない範囲で多様な変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 マシニングセンター
W 被加工物
G 工作箇所
2 刃物
5-1~5-6 ノズル
P、100、200、300、400 流体供給管
110 管本体
120 流入側部材
130 流出側部材
140、240、340、440 内部構造体
141、241、341、441 軸部材
142、242、342、442 流体拡散部
143、243、343、443 渦巻発生部
145、245、345、445 菱形突起部
145p、245p、345p、445p 突起部
145p1、245p1、345p1、445p1 高い突起部
145p2、245p2、345p2、445p2 低い突起部
145r、245r、345r、445r 流路
150、250、350、450 誘導部