IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本多電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図1
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図2
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図3
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図4
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図5
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図6
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図7
  • 特許-超音波洗浄装置及び方法、波発生装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置及び方法、波発生装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20220627BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B08B3/12 A
B06B1/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018121277
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020000976
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 泰治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-135176(JP,A)
【文献】特開2009-071747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00-3/04
B08B 1/00-13/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する装置であって、
前記洗浄槽の底部に配置され、液面側に向けられる第1面と前記液面の反対側に向けられる第2面とを有する振動板と、
前記第2面に設置された第1超音波振動部と、
前記第2面において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部と、
前記第1超音波振動部に対して第1発振信号を出力して前記第1超音波振動部を駆動させる第1超音波発振器と、
前記第2超音波振動部に対して第2発振信号を出力して前記第2超音波振動部を駆動させる第2超音波発振器と、
前記液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせるべく、前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調する発振器制御手段と、を備えるとともに、
互いに対向する一対の側壁を有する前記洗浄槽において、前記一対の側壁からの距離が互いに等しくなる位置を槽中央位置と定義した場合、前記槽中央位置を挟んで互いに反対側となるように前記第1超音波振動部と前記第2超音波振動部とが設置されており、
前記槽中央位置に前記波の節が生じるとともに、前記第1超音波振動部の音響放射中心の上方位置及び前記第2超音波振動部の音響放射中心の上方位置に前記波の腹が生じる
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記発振器制御手段は、前記第1発振信号及び前記第2発振信号の出力を±30%の範囲内で振幅変調することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記発振器制御手段は、前記第1発振信号及び前記第2発振信号の出力を0.1秒以上の周期で振幅変調することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記第1超音波発振器及び前記第2超音波発振器は、50kHz以上10MHz以下の範囲内、好ましくは100kHz以上1MHz以下の範囲内であって周波数が等しい前記第1発振信号及び前記第2発振信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記第1超音波振動部及び前記第2超音波振動部は、前記洗浄槽の長手方向に沿って前記槽中央位置から等間隔を隔てて配置されるとともに、前記一対の側壁から離間して配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波洗浄装置を用いて、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する方法であって、
前記洗浄槽の底部に設置された第1超音波振動部を第1発振信号で駆動するとともに、前記洗浄槽の底部において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部を第2発振信号で駆動して、前記第1超音波振動部及び前記第2超音波振動部からそれぞれ超音波を発生させるとともに、
前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調することにより、洗浄時に液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせる
ことを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項7】
液槽内の液体に超音波を照射して液面に波を発生させる装置であって、
前記液槽の底部に配置され、液面側に向けられる第1面と前記液面の反対側に向けられる第2面とを有する振動板と、
前記第2面に設置された第1超音波振動部と、
前記第2面において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部と、
前記第1超音波振動部に対して第1発振信号を出力して前記第1超音波振動部を駆動させる第1超音波発振器と、
前記第2超音波振動部に対して第2発振信号を出力して前記第2超音波振動部を駆動させる第2超音波発振器と、
前記液面に前記液槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせるべく、前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調する発振器制御手段と、を備えるとともに、
互いに対向する一対の側壁を有する前記液槽において、前記一対の側壁からの距離が互いに等しくなる位置を槽中央位置と定義した場合、前記槽中央位置を挟んで互いに反対側となるように前記第1超音波振動部と前記第2超音波振動部とが設置されており、
前記槽中央位置に前記波の節が生じるとともに、前記第1超音波振動部の音響放射中心の上方位置及び前記第2超音波振動部の音響放射中心の上方位置に前記波の腹が生じる
ことを特徴とする波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置及び方法、液槽内の液体に超音波を照射して液面に波を発生させる波発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射することにより、被洗浄物の洗浄(超音波洗浄)を行う超音波洗浄装置が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。超音波洗浄は、超音波による物理的作用と洗浄液による化学的作用との組み合わせにより、複雑な形状をなす被洗浄物の細部にまで作用して効率良く洗浄できるため、精密機械部品、光学部品、液晶ディスプレイ、半導体等の製造には不可欠なものとなっている。
【0003】
ところで、一般的な超音波洗浄装置は、洗浄槽の底部に超音波振動部を設置した構成を有している。そして、超音波振動部が発生した超音波を洗浄液に照射すると、洗浄液中に音場が形成され、これにより被洗浄物が洗浄されるようになる。なお、超音波振動部が発生させた超音波は、液面で反射して、洗浄液中に定在波を生じさせることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4776689号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、定在波は、洗浄液の深さ方向に沿って音圧(音響放射圧)が最大となる部分(腹)と音圧が最小となる部分(節)とが交互に並んだものである。従って、被洗浄物を洗浄すると、被洗浄物の表面のうち、定在波の腹に対応する部分が効率良く洗浄される一方、定在波の節に対応する部分は殆ど洗浄されない状態となるため、洗浄ムラが生じてしまうという問題がある。また、特定部位に高い音圧が集中することは洗浄槽にダメージを生じさせる原因になるため、洗浄槽の特定の部分が侵食するおそれもある。
【0006】
そこで、従来では、洗浄ムラ等の発生を防止するために、被洗浄物や洗浄槽全体を揺動させることにより、定在波の発生を防止することが考えられている。また、超音波振動部を駆動させるための発振信号の周波数を変調させる周波数変調(FM変調)を行うことにより、洗浄ムラを防止することも提案されている。しかしながら、被洗浄物や洗浄槽を揺動させる場合には、揺動のための機構が大掛かりなものとなり装置コストが嵩むという問題がある。また、FM変調を行う場合には、超音波振動部の共振点とは別のポイントで振動するようになるため、超音波振動部に掛かる負担が大きいという問題もある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置コストや超音波振動部に掛かる負担を抑制しつつ、洗浄ムラを低減させることができる超音波洗浄装置及び方法を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、超音波振動部に掛かる負担を抑制しつつ、定在波の発生を防止することができる波発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する装置であって、前記洗浄槽の底部に配置され、液面側に向けられる第1面と前記液面の反対側に向けられる第2面とを有する振動板と、前記第2面に設置された第1超音波振動部と、前記第2面において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部と、前記第1超音波振動部に対して第1発振信号を出力して前記第1超音波振動部を駆動させる第1超音波発振器と、前記第2超音波振動部に対して第2発振信号を出力して前記第2超音波振動部を駆動させる第2超音波発振器と、前記液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせるべく、前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調する発振器制御手段と、を備えるとともに、互いに対向する一対の側壁を有する前記洗浄槽において、前記一対の側壁からの距離が互いに等しくなる位置を槽中央位置と定義した場合、前記槽中央位置を挟んで互いに反対側となるように前記第1超音波振動部と前記第2超音波振動部とが設置されており、前記槽中央位置に前記波の節が生じるとともに、前記第1超音波振動部の音響放射中心の上方位置及び前記第2超音波振動部の音響放射中心の上方位置に前記波の腹が生じることを特徴とする超音波洗浄装置をその要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の発明によると、第1超音波振動部に出力される第1発振信号及び第2超音波振動部に出力される第2発振信号が同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調(AM変調)を行うことにより、場所によって超音波の強さが変化して洗浄液の液面に波が生じるようになり、周期的に場所により液面の高さが変化するようになる。その結果、超音波が液面で反射したとしても定在波が生じにくくなるため、被洗浄物の表面が均等に洗浄されるようになり、洗浄ムラが低減されるようになる。また、定在波が生じにくくなることで洗浄槽の特定部位に音圧が集中しにくくなるため、集中した音圧に起因する洗浄槽のダメージを低減させることができる。しかも、被洗浄物や洗浄槽を揺動させるための機構が不要になるため、装置コストを抑えることができる。さらに、発振器制御手段は、第1発振信号及び第2発振信号を周波数変調するのではなく、第1発振信号及び第2発振信号を振幅変調することによって定在波の発生を抑制している。この場合、第1超音波振動部及び第2超音波振動部の共振周波数と同じ周波数で第1超音波振動部及び第2超音波振動部を駆動させればよいため、第1超音波振動部及び第2超音波振動部に掛かる負担を小さくすることができる。また、本発明によると、槽中央位置に波の節が生じるとともに、第1超音波振動部及び第2超音波振動部の音響放射中心の上方位置に波の腹が生じるため、洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせやすくなる。
【0010】
ここで、洗浄液としては、水系洗剤(水、純水、機能水、アルカリ系洗剤、中性洗剤、酸性洗剤)、準水系洗剤(炭化水素、グリコールエーテル、アルコール等と水とを組み合わせた洗剤)、可燃性洗剤(アルコール系洗剤、脂肪族炭化水素系洗剤、グリコールエーテル系洗剤)、不燃性洗剤(フッ素系洗剤、塩素系洗剤、臭素系洗剤)などが用いられる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記発振器制御手段は、前記第1発振信号及び前記第2発振信号の出力を±30%の範囲内で振幅変調することをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項2に記載の発明によると、第1発振信号及び第2発振信号の出力が過度に上昇しなくなるため、発振器制御手段を構成する回路を保護することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記発振器制御手段は、前記第1発振信号及び前記第2発振信号の出力を0.1秒以上の周期(即ち、10Hz以下の周波数)で振幅変調することをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項3に記載の発明によると、第1発振信号及び第2発振信号の出力を0.1秒以上の周期でゆっくり振幅変調することにより、液面に振幅の大きな波を発生させることができ、液面に確実に高低差を生じさせることができる。その結果、定在波の発生を確実に防止することができる。また、第1超音波発振器と第2超音波発振器との間に出力電力差が生じることによって音圧の差が生じ、音圧が高い方から低い方に向かって洗浄液の流れ(液面の面方向への洗浄液の動き)が生じるようになる。これにより、定在波の発生をより確実に防止することができる。なお、第1発振信号及び第2発振信号の出力を0.1秒未満の周期(即ち、10Hzよりも高い周波数)で振幅変調すると、洗浄液の液面に波を生じさせることが困難になる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1超音波発振器及び前記第2超音波発振器は、50kHz以上10MHz以下の範囲内、好ましくは100kHz以上1MHz以下の範囲内であって周波数が等しい前記第1発振信号及び前記第2発振信号を出力することをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項4に記載の発明によると、第1発振信号及び第2発振信号の周波数が100kHz以上1MHz以下の範囲内である場合に、第1超音波振動部及び第2超音波振動部から照射される超音波の直進性が高くなる。その結果、超音波が広がりにくくなるため、超音波は、液面において第1超音波振動部の音響放射中心の直上となる位置や、液面において第2超音波振動部の音響放射中心の直上となる位置に確実に到達するようになる。よって、腹と節とが交互に並んだ波を確実に生じさせることができる。また、第1発振信号及び第2発振信号の周波数が互いに等しいため、発振器制御手段による発振信号の制御が容易になる。なお、第1発振信号及び第2発振信号の周波数が50kHz未満になると、超音波を洗浄液中に照射した際に洗浄液中に気泡が生じる現象(キャビテーション)や、キャビテーションによる洗浄槽のダメージ(エロージョン)が発生しやすいという問題がある。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか1項において、前記第1超音波振動部及び前記第2超音波振動部は、前記洗浄槽の長手方向に沿って前記槽中央位置から等間隔を隔てて配置されるとともに、前記一対の側壁から離間して配置されていることをその要旨とする。
【0020】
従って、請求項に記載の発明によると、第1超音波振動部及び第2超音波振動部が洗浄槽の長手方向に沿って配置されるため、第1超音波振動部及び第2超音波振動部を洗浄槽の短手方向に沿って配置する場合よりも、洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせやすくなる。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波洗浄装置を用いて、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する方法であって、前記洗浄槽の底部に設置された第1超音波振動部を第1発振信号で駆動するとともに、前記洗浄槽の底部において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部を第2発振信号で駆動して、前記第1超音波振動部及び前記第2超音波振動部からそれぞれ超音波を発生させるとともに、前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調することにより、洗浄時に液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせることを特徴とする超音波洗浄方法をその要旨とする。
【0022】
従って、請求項に記載の発明によると、第1超音波振動部に出力される第1発振信号及び第2超音波振動部に出力される第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調することにより、場所によって超音波の強さが変化して洗浄液の液面に波が生じるようになり、周期的に場所により液面の高さが変化するようになる。その結果、超音波が液面で反射したとしても定在波が生じにくくなるため、被洗浄物の表面が均等に洗浄されるようになり、洗浄ムラが低減されるようになる。また、定在波が生じにくくなることで洗浄槽の特定部位に音圧が集中しにくくなるため、集中した音圧に起因する洗浄槽のダメージを低減させることができる。しかも、被洗浄物や洗浄槽を揺動させるための機構が不要になるため、装置コストを抑えることができる。さらに、請求項に記載の発明では、第1発振信号及び第2発振信号を周波数変調するのではなく、第1発振信号及び第2発振信号を振幅変調することによって定在波の発生を抑制している。この場合、第1超音波振動部及び第2超音波振動部の共振周波数と同じ周波数で第1超音波振動部及び第2超音波振動部を駆動させればよいため、第1超音波振動部及び第2超音波振動部に掛かる負担を小さくすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、液槽内の液体に超音波を照射して液面に波を発生させる装置であって、前記液槽の底部に配置され、液面側に向けられる第1面と前記液面の反対側に向けられる第2面とを有する振動板と、前記第2面に設置された第1超音波振動部と、前記第2面において前記第1超音波振動部とは別の位置に設置された第2超音波振動部と、前記第1超音波振動部に対して第1発振信号を出力して前記第1超音波振動部を駆動させる第1超音波発振器と、前記第2超音波振動部に対して第2発振信号を出力して前記第2超音波振動部を駆動させる第2超音波発振器と、前記液面に前記液槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせるべく、前記第1発振信号及び前記第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調する発振器制御手段と、を備えるとともに、互いに対向する一対の側壁を有する前記液槽において、前記一対の側壁からの距離が互いに等しくなる位置を槽中央位置と定義した場合、前記槽中央位置を挟んで互いに反対側となるように前記第1超音波振動部と前記第2超音波振動部とが設置されており、前記槽中央位置に前記波の節が生じるとともに、前記第1超音波振動部の音響放射中心の上方位置及び前記第2超音波振動部の音響放射中心の上方位置に前記波の腹が生じることを特徴とする波発生装置をその要旨とする。
【0024】
従って、請求項に記載の発明によると、第1超音波振動部に出力される第1発振信号及び第2超音波振動部に出力される第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調することにより、場所によって超音波の強さが変化して液体の液面に波が生じるようになり、周期的に場所により液面の高さが変化するようになる。その結果、超音波が液面で反射したとしても定在波が生じにくくなる。また、定在波が生じにくくなることで液槽の特定部位に音圧が集中しにくくなるため、集中した音圧に起因する液槽のダメージを低減させることができる。しかも、定在波の発生を防止するために、液槽を揺動させる機構などを設けなくても済むため、装置コストを抑えることができる。さらに、請求項に記載の発明では、第1発振信号及び第2発振信号を周波数変調するのではなく、第1発振信号及び第2発振信号を振幅変調することによって定在波の発生を抑制している。この場合、第1超音波振動部及び第2超音波振動部の共振周波数と同じ周波数で第1超音波振動部及び第2超音波振動部を駆動させればよいため、第1超音波振動部及び第2超音波振動部に掛かる負担を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、請求項1~に記載の発明によると、装置コストや超音波振動部に掛かる負担を抑制しつつ、洗浄ムラを低減させることができる超音波洗浄装置及び方法を提供することができる。また、請求項に記載の発明によると、装置コストや超音波振動部に掛かる負担を抑制しつつ、定在波の発生を防止することができる波発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態における超音波洗浄装置を示す概略構成図。
図2】第1超音波振動部(第1超音波振動子)及び第2超音波振動部(第2超音波振動子)の配置態様を示す平面図。
図3】超音波洗浄装置における波の発生状態を示す説明図。
図4】超音波洗浄装置における波の発生状態を示す説明図。
図5】他の実施形態における波の発生状態を示す説明図。
図6】他の実施形態における第1超音波振動部(第1超音波振動子)及び第2超音波振動部(第2超音波振動子)の配置態様を示す平面図。
図7】他の実施形態における第1超音波振動子及び第2超音波振動子の配置態様を示す平面図。
図8】他の実施形態における第1超音波振動子及び第2超音波振動子の配置態様を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を超音波洗浄装置に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
図1に示されるように、超音波洗浄装置10は、洗浄液A1(液体)を貯留する金属製の洗浄槽11(液槽)を備えている。本実施形態の超音波洗浄装置10は、洗浄槽11内の洗浄液A1に超音波S1,S2(図3図4参照)を照射することにより、洗浄槽11内に収容された被洗浄物21を洗浄する装置である。なお、洗浄槽11は、底部12、天井部13、及び、互いに対向する一対の側壁14,15を有しており、幅440mm×奥行280mm×高さ260mmの略直方体状に形成されている。
【0029】
また、超音波洗浄装置10は、振動板30、第1超音波振動部41、第2超音波振動部42、第1超音波発振器51、第2超音波発振器52及び制御装置61を備えている。振動板30は、洗浄槽11の底部12を構成しており、略矩形板状の金属板(本実施形態ではステンレス板)である。即ち、本実施形態の振動板30は、いわゆる洗浄槽タイプの振動板である。また、振動板30は、一対の長辺31,32と一対の短辺33,34とを有している(図2参照)。さらに、振動板30は、洗浄液A1の液面A2側に向けられる第1面35、及び、液面A2の反対側に向けられる第2面36を有している。
【0030】
図1図2に示されるように、第1超音波振動部41は、振動板30の第2面36に設置されており、互いに近接して配置された複数(本実施形態では4つ)の第1超音波振動子43(図2参照)によって構成されている。各第1超音波振動子43は、超音波S1(図3図4参照)を照射するための振動子である。また、各第1超音波振動子43は、振動板30の短手方向(図2では上下方向)に沿って等間隔を隔てて配置されている。
【0031】
また、第2超音波振動部42は、振動板30の第2面36において第1超音波振動部41とは別の位置に設置されており、互いに近接して配置された複数(本実施形態では4つ)の第2超音波振動子44(図2参照)によって構成されている。各第2超音波振動子44は、超音波S2(図3図4参照)を照射するための振動子である。また、各第2超音波振動子44は、振動板30の短手方向(図2では上下方向)に沿って等間隔を隔てて配置されている。
【0032】
なお、各第1超音波振動子43及び各第2超音波振動子44は、振動板30の第2面36と面接合する接合面(図示略)、及び、接合面の反対側に位置する非接合面(図示略)を有する柱状をなしており、アルミニウム合金やステンレス、圧電セラミックス材料等からなっている。
【0033】
なお、図1図2に示されるように、洗浄槽11において、一方の側壁14からの距離L1ともう一方の側壁15からの距離L2とが互いに等しくなる位置を槽中央位置P0と定義した場合、槽中央位置P0を挟んで互いに反対側となるように第1超音波振動部41と第2超音波振動部42とが設置されている。第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42は、洗浄槽11の長手方向(図1では左右方向)に沿って槽中央位置P0から互いに等間隔を隔てて配置されている。そして、第1超音波振動部41は側壁14から離間して配置され、第2超音波振動部42は側壁15から離間して配置されている。なお、第1超音波振動部41の音響放射中心P1は、側壁14の内側面からの距離と槽中央位置P0からの距離とが互いに等しくなる位置であって、振動板30の一方の長辺31からの距離ともう一方の長辺32からの距離とが互いに等しくなる位置に配置されている。同様に、第2超音波振動部42の音響放射中心P2は、側壁15の内側面からの距離と槽中央位置P0からの距離とが互いに等しくなる位置であって、振動板30の一方の長辺31からの距離ともう一方の長辺32からの距離とが互いに等しくなる位置に配置されている。
【0034】
図1に示されるように、第1超音波発振器51は、第1超音波振動部41を構成する各第1超音波振動子43に対して電気的に接続されている。第1超音波発振器51は、各第1超音波振動部43に対して第1発振信号を出力して、各第1超音波振動子43を駆動させるようになっている。その結果、各第1超音波振動子43は、超音波S1を洗浄槽11内の洗浄液A1に照射する。なお、本実施形態の第1超音波発振器51は、出力(具体的には、各第1超音波振動子43に供給される平均供給電力)が600Wであって、周波数が1MHzの第1発振信号を出力する。
【0035】
同様に、第2超音波発振器52は、第2超音波振動部42を構成する各第2超音波振動子44に対して電気的に接続されている。第2超音波発振器52は、各第2超音波振動部44に対して第2発振信号を出力して、各第2超音波振動子44を駆動させるようになっている。その結果、各第2超音波振動子44は、超音波S2を洗浄槽11内の洗浄液A1に照射する。なお、本実施形態の第2超音波発振器52は、出力(具体的には、各第2超音波振動子44に供給される平均供給電力)が第1発振信号と同じ出力(600W)であって、第1発振信号と同じ周波数(1MHz)の第2発振信号を出力する。
【0036】
そして、図1に示されるように、制御装置61は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置61は、第1超音波発振器51及び第2超音波発振器52に電気的に接続されており、装置全体を統括的に制御する。
【0037】
次に、超音波洗浄装置10を用いた被洗浄物21の洗浄方法について説明する。
【0038】
まず、洗浄槽11内に洗浄液A1とともに被洗浄物21を収容した後、超音波洗浄装置10の電源(図示略)をオンする。このとき、制御装置61は、第1超音波発振器51から第1超音波振動部41を構成する各第1超音波振動子43に対して第1発振信号を出力させる制御を行い、各第1超音波振動子43を駆動させる。その結果、各第1超音波振動子43から洗浄液A1中に超音波S1が照射される。また、制御装置61は、第2超音波発振器52から第2超音波振動部42を構成する各第2超音波振動子44に対して第2発振信号を出力させる制御を行い、各第2超音波振動子44を駆動させる。その結果、各第2超音波振動子44から洗浄液A1中に超音波S2が照射される。なお、各第1超音波振動子43及び各第2超音波振動子44から照射された超音波S1,S2は、洗浄液A1中を伝搬し、被洗浄物21に作用する。その結果、被洗浄物21の表面が洗浄されるようになる。
【0039】
また、制御装置61は、液面A2に洗浄槽11全体の共振周波数(本実施形態では2.3Hz)に応じた波W1(図3図4参照)を生じさせるべく、第1発振信号及び第2発振信号を同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調(AM変調)を行う。即ち、制御装置61は、発振器制御手段としての機能を有している。なお、波W1は、液面A2の面方向に沿って腹W2と節W3とが交互に並んだものであり、波長が440mmである。本実施形態では、槽中央位置P0に波W1の節W3が生じるとともに、第1超音波振動部41の音響放射中心P1の上方位置及び第2超音波振動部42の音響放射中心P2の上方位置に波W1の腹W2が生じるようになっている。
【0040】
また、制御装置61は、第1発振信号及び第2発振信号の出力(いずれも600W)を±30%の範囲内で振幅変調する。さらに、制御装置61は、第1発振信号及び第2発振信号が互いに逆位相となるように振幅変調する。その結果、第1発振信号に基づいて第1超音波振動部41から照射される超音波S1の音圧と、第2発振信号に基づいて第2超音波振動部42から照射される超音波S2の音圧との差によって、超音波S1,S2の強さが変化し、洗浄液A1の液面A2に波W1が生じるようになる。
【0041】
例えば、制御装置61は、第1発振信号の出力を+30%(780W)とした場合に、第2発振信号の出力が-30%(420W)となるように、振幅変調を行う。このとき、第1発振信号に基づいて第1超音波振動部41から照射される超音波S1の音圧が、第2発振信号に基づいて第2超音波振動部42から照射される超音波S2の音圧よりも大きくなる。その結果、第1超音波振動部41の音響放射中心P1の上方位置にある波W1の腹W2が、第2超音波振動部42の音響放射中心P2の上方位置にある波W1の腹W2よりも上方に位置するようになる(図3参照)。
【0042】
次に、制御装置61は、第1発振信号の出力が-30%(420W)となるとともに、第2発振信号の出力が+30%(780W)となるように、振幅変調を行う。このとき、第1発振信号に基づいて照射される超音波S1の音圧が、第2発振信号に基づいて照射される超音波S2の音圧よりも小さくなる。その結果、音響放射中心P1の上方位置にある波W1の腹W2が、音響放射中心P2の上方位置にある波W1の腹W2よりも下方に位置するようになる(図4参照)。
【0043】
そして、制御装置61は、洗浄槽11全体の共振周波数に合わせて、第1発振信号及び第2発振信号の出力を2.3Hzの周波数で振幅変調する。その結果、音響放射中心P1の上方位置にある腹W2と音響放射中心P2の上方位置にあるW2とが交互に上下するため、大きな揺動が生じるようになり、被洗浄物21の表面がより確実に洗浄されるようになる。その後、作業者が電源をオフすると、制御装置61により第1超音波発振器51及び第2超音波発振器52が停止し、超音波洗浄が終了する。
【0044】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0045】
(1)本実施形態の超音波洗浄装置10では、第1発振信号及び第2発振信号が同一周期でかつ互いに逆位相となるように振幅変調(AM変調)を行うことにより、場所によって超音波S1,S2の強さが変化して洗浄液A1の液面A2に波W1が生じるようになり、周期的に場所により液面A2の高さが変化するようになる。その結果、超音波S1,S2が液面A2で反射したとしても定在波が生じにくくなるため、被洗浄物21の表面が均等に洗浄されるようになり、洗浄ムラが低減されるようになる。また、定在波が生じにくくなることで洗浄槽11の特定部位に音圧が集中しにくくなるため、集中した音圧に起因する洗浄槽11のダメージを低減させることができる。しかも、被洗浄物21や洗浄槽11を揺動させるための機構が不要になるため、装置コストを抑えることができる。さらに、制御装置61は、第1発振信号及び第2発振信号を周波数変調するのではなく、第1発振信号及び第2発振信号を振幅変調することによって定在波の発生を抑制している。この場合、第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42の共振周波数と同じ周波数で第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42を駆動させればよいため、第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42に掛かる負担を小さくすることができる。その結果、第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42の長寿命化を図ることができる。
【0046】
(2)本実施形態の制御装置61は、第1発振信号及び第2発振信号のうち一方の発振信号の出力を上げる制御を行う際には、もう一方の発振信号の出力を下げる制御を行っている。即ち、制御装置61は、合計の出力や平均電力が常に一定になるように制御しているため、洗浄能力が常に一定以上に保持されるようになる。その結果、被洗浄物21の表面が常に均等に洗浄されるようになるため、洗浄ムラをよりいっそう低減させることができる。また、振幅変調によって波W1を生じさせる際に、第1発振信号及び第2発振信号の両方の出力を上げなくても済むため、消費電力を抑えることができる。
【0047】
(3)本実施形態では、第1超音波発振器51から第1超音波振動部41に対して出力される第1発振信号の周波数(1MHz)と、第2超音波発振器52から第2超音波振動部42に対して出力される第2発振信号の周波数(1MHz)とが互いに等しくなっている。その結果、第1超音波発振器51及び第2超音波発振器52の部品共通化や、第1超音波振動部41(第1超音波振動子43)及び第2超音波振動部42(第2超音波振動子44)の部品共通化を図ることができるため、装置コストをより確実に抑えることができる。
【0048】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、制御装置61が第1発振信号及び第2発振信号の出力を2.3Hzの周波数で振幅変調することにより、波W1が生じるようになっていたが、10Hz以下の他の周波数(換言すると、0.1秒以上の他の周期)で振幅変調することにより、波を生じさせてもよい。例えば、図5に示されるように、制御装置61が第1発振信号及び第2発振信号の出力を1.25Hzの周波数で振幅変調することにより、波W4を生じさせるようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、第1超音波振動部41及び第2超音波振動部42が、洗浄槽11(振動板30)の長手方向に沿って配置されていた。しかし、図6に示されるように、第1超音波振動部91及び第2超音波振動部92を、洗浄槽(振動板93)の短手方向(図6では上下方向)に沿って配置してもよい。この場合、第1超音波振動部91を構成する各第1超音波振動子94、及び、第2超音波振動部92を構成する各第2超音波振動子95は、振動板93の長手方向(図6では左右方向)に沿って等間隔を隔てて配置されるようになる。
【0051】
・上記実施形態では、第1超音波振動部41を構成する各第1超音波振動子43、及び、第2超音波振動部42を構成する各第2超音波振動子44が、振動板30の短手方向に沿って配置されていたが、超音波振動子の配置態様は適宜変更されていてもよい。例えば、図7に示されるように、第1超音波振動部71を構成する各第1超音波振動子72、及び、第2超音波振動部73を構成する各第2超音波振動子74を、それぞれ振動板75の長手方向に沿って配置してもよい。また、図8に示されるように、第1超音波振動部81を構成する各第1超音波振動子82、及び、第2超音波振動部83を構成する各第2超音波振動子84を、振動板85の第2面86においてそれぞれアレイ状(正方形状)に配置してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、第1超音波振動部41が4つの第1超音波振動子43によって構成され、第2超音波振動部42が4つの第2超音波振動子44によって構成されていた。しかし、超音波振動部41,42は、3つ以下の超音波振動子43,44によって構成されていてもよいし、5つ以上の超音波振動子43,44によって構成されていてもよい。
【0053】
・上記実施形態の超音波洗浄装置10は、2つの超音波振動部41,42を備え、第1超音波振動部41に対して出力される第1発振信号、及び、第2超音波振動部42に対して出力される第2発振信号を振幅変調することにより、波W1を生じさせるものであった。しかし、超音波洗浄装置は、3つ以上の超音波振動部を備え、各超音波振動部のうち少なくとも2つの超音波振動部に出力する発振信号をそれぞれ異なる位相となるように振幅変調することにより、波W1を生じさせるものであってもよい。
【0054】
・上記実施形態の超音波洗浄装置10では、振動板30が洗浄槽11の底部12を構成していたが、振動板を底部と別体で設け、パッキンを介して両者をボルトで取り付ける構造としてもよい。また、超音波洗浄装置10では、洗浄槽11の振動板30に装着される外付けタイプの超音波振動部41,42を使用していたが、これに限定されるものではない。例えば、洗浄槽11の洗浄液A1中に投げ込んで使用する投げ込みタイプの超音波振動部を用いて超音波洗浄装置10を構成してもよい。投げ込みタイプの超音波振動部は、水密構造のケースの内側に超音波振動子が接合された構造を有している。
【0055】
・上記実施形態の洗浄槽11は、略直方体状に形成されていたが、略立方体状、略円柱状などの他の形状に形成されていてもよい。
【0056】
・上記実施形態は、超音波S1,S2を利用して洗浄を行う超音波洗浄装置10に具体化したものであったが、洗浄以外に、抽出、乳化、分散、混合、攪拌、破砕、霧化等の処理を行う超音波発生装置であってもよい。具体的には、例えば、超音波発生装置を超音波乳化装置に適用した場合、エマルジョンをナノ粒子まで高効率に微細化することができ、長期間安定化、界面活性剤の削減などの効果を期待することができる。また、超音波発生装置を超音波分散装置に適用した場合には、ナノ粒子(金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、セラミックスナノ粒子、磁性ナノ粒子など)を高効率に分散化することができる。さらに、超音波発生装置を、化学的作用を利用した超音波処理装置として具体化してもよい。この場合、キャビテーションを均一かつ広範囲で効率良く発生させることができるため、気泡圧壊時の高温高圧場により生じるOHラジカル等のラジカル生成量を増大させることが可能となる。従って、ラジカル種に起因するソノケミカルの反応効率を高めることができ、有害物質の分解無害化、殺菌、高分子重合などの処理を効率良く行うことができる。
【0057】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0058】
(1)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記第1超音波振動部及び前記第2超音波振動部は、互いに近接して配置された複数の超音波振動子によってそれぞれ構成されていることを特徴とする超音波洗浄装置。
【0059】
(2)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記波は、液面の面方向に沿って腹と節とが交互に並んだものであることを特徴とする超音波洗浄装置。
【0060】
(3)洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する装置であって、前記洗浄槽の底部に配置され、液面側に向けられる第1面と前記液面の反対側に向けられる第2面とを有する振動板と、前記第2面に設置された複数の超音波振動部と、前記複数の超音波振動部に対して発振信号を出力して前記複数の超音波振動部を駆動させる超音波発振器と、前記液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせるべく、前記複数の超音波振動部のうち少なくとも2つの超音波振動部に出力する前記発振信号をそれぞれ異なる位相となるように振幅変調する発振器制御手段とを備えることを特徴とする超音波洗浄装置。
【0061】
(4)洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射して被洗浄物を洗浄する方法であって、前記洗浄槽の底部に設置された複数の超音波振動部を発振信号で駆動して、前記複数の超音波振動部からそれぞれ超音波を発生させるとともに、前記複数の超音波振動部のうち少なくとも2つの超音波振動部に出力する前記発振信号をそれぞれ異なる位相となるように振幅変調することにより、洗浄時に液面に前記洗浄槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせることを特徴とする超音波洗浄方法。
【0062】
(5)液槽内の液体に超音波を照射して液面に波を発生させる方法であって、前記液槽の底部に設置された複数の超音波振動部を発振信号で駆動するとともに、前記複数の超音波振動部からそれぞれ超音波を発生させるとともに、前記複数の超音波振動部のうち少なくとも2つの超音波振動部に出力する前記発振信号をそれぞれ異なる位相となるように振幅変調することにより、前記液面に前記液槽全体の共振周波数に応じた波を生じさせることを特徴とする波発生方法。
【0063】
(6)洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射する複数の超音波振動部を振動させる超音波発振器の駆動制御方法であって、前記複数の超音波振動部を発振信号で駆動して、前記複数の超音波振動部からそれぞれ超音波を発生させるとともに、前記複数の超音波振動部のうち少なくとも2つの超音波振動部に出力する前記発振信号をそれぞれ異なる位相となるように、前記超音波発振器を制御することを特徴とする超音波発振器の駆動制御方法。
【符号の説明】
【0064】
10…超音波洗浄装置
11…液槽としての洗浄槽
12…底部
14,15…側壁
21…被洗浄物
30,75,85,93…振動板
35…第1面
36,86…第2面
41,71,81,91…第1超音波振動部
42,73,83,92…第2超音波振動部
51…第1超音波発振器
52…第2超音波発振器
61…発振器制御手段としての制御装置
A1…液体としての洗浄液
A2…液面
L1,L2…側壁からの距離
P0…槽中央位置
P1…第1超音波振動部の音響放射中心
P2…第2超音波振動部の音響放射中心
S1,S2…超音波
W1,W4…波
W2…波の腹
W3…波の節
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8