(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】食肉の骨のスキャンのための方法と装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220627BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20220627BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20220627BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G01N21/27 B
G01N21/65
G01N29/07
G01N29/11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105465
(22)【出願日】2020-06-18
(62)【分割の表示】P 2017524072の分割
【原出願日】2015-07-21
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2014-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517023013
【氏名又は名称】7386819 マニトバ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プリストゥパ,デビッド
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508571(JP,A)
【文献】特表2013-535014(JP,A)
【文献】米国特許第05206699(US,A)
【文献】米国特許第05239180(US,A)
【文献】米国特許第03877818(US,A)
【文献】米国特許第04631413(US,A)
【文献】米国特許第04226540(US,A)
【文献】米国特許第07460227(US,B1)
【文献】国際公開第2008/102143(WO,A1)
【文献】特開平04-166063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0068535(US,A1)
【文献】特表2004-509649(JP,A)
【文献】米国特許第06129625(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 29/00-29/52
G01N 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織サンプル中に完全または部分的に埋め込まれた小さな物体を検出する方法であって、
該方法は、
(I)前記
軟組織サンプルの領域上に
複数の異なる波長の光を放射する工程、
(II)前記
軟組織サンプルの前記領域から反射された光を受け取り、前記反射された光の振幅を測定する工程、
(III)前記
軟組織サンプルの前記領域上に少なくとも1つの周波数の超音波を放射して、前記
軟組織サンプルから戻ってきた超音波信号を受け取る工程、
(IV)および、データ処理装置において、複数の異なる波長における
光の振幅
、前記振幅の勾配から得られたエッジ確率、および前記受け取られた超音波信号の多変量解析によって前記
軟組織サンプルの各前記領域の前記反射された、
前記複数の異なる波長における光の振幅を比較する工程、ならびに、
(V)前記多変量解析から導出された多変量統計的モデルを使用して、前記多変量解析から前記
軟組織サンプル中の表面の欠陥の存在を判定する工程、を含み、
ここで、前記
多変量統計的モデルは、波長依存性、前記振幅の
前記勾配から得られた
前記エッジ確率、および共通データベクトルにロードされた、
前記受け取られた超音波信号の
前記測定に基づいて、前記領域内に欠陥が存在する累積確率を計算する、方法。
【請求項2】
単一波長
の光が放射され、
前記反射された光はラマン散乱
され、
該方法は、
前記ラマン散乱
された光を異なる波長に分けるために波長選択器
を通して前記ラマン散乱光を
分光させる工程
をさらに含み、そしてさらに前記異なる波長の
光の振幅を測定するさらな
る工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単一波長が疑似単色であり、488、515、532、594、633、635、650、660、670、780、808、830、850、980、および1064nmの可視光と赤外光から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単一波長が488、515、532、594、633、635、650、660、670、780、808、830、850、980、および1064nmの可視光と赤外光から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記光が広帯域白色光であり、
該方法は、
反射された光を異なる波長に分けるために波長選択器によって前記反射された光を
分光させる追加の工程と、前記異なる波長の振幅を測定するさらなる追加の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの波長の光が900~2600nmの範囲から選択される近赤外線波長である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの波長の光が少なくとも2つの別の波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各々の波長について別々の時間に前記少なくとも2つの別の波長を放射する工程と、各々の波長について別々の時間に反射された光の前記振幅を測定する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの別の波長が620~640nmと720~760nmを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2つの別の波長が540~570、620~640、および720~760nmの3つの波長を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各々の別々の波長の振幅を測定する工程が、ピクセルの同じ焦点面アレイによって測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
各々の別々の波長の振幅を測定する工程が、ピクセルの2つの別の焦点面アレイによって測定され、各々の焦点面アレイが異なる波長を測定する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記データ処理装置は前記
軟組織サンプルのサンプル領域に対応する複数の光振幅を受け取り、前記データ処理装置は、光振幅からn-次元のデータベクトルを生成し、多変量解析によって生成される較正セットと前記データベクトルを比較して、これらがサンプルの各サンプル領域について骨、軟骨、脂肪、肉または皮膚、あるいは汚染物質に対応するかどうかを判定し、望ましくない物質が識別されると、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記データ処理装置は、各波長について、直接かつ対角線上に当接する隣接領域から前記サンプル領域までの振幅を識別し、すべての波長について前記サンプル領域と当接する領域全体の勾配を計算し、前記勾配と振幅からn-次元のデータベクトルを生成し、多変量解析によって生成される較正セットと前記データベクトルを比較し、さらにサンプル領域間の境界の存在を判定し、望ましくない物質が識別されると、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記データ処理装置は、前記
軟組織サンプルのサンプル領域に対応する複数の音響振幅と前記振幅の飛行時間を受け取り、前記データ処理装置は、前記サンプル中の骨の存在を判定するために前記振幅を標準的な振幅と比較し、骨が存在する場合、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記データ処理装置は、各波長について前記振幅を標準偏差に中心化および正規化する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
同じ波長のLEDの各タイプは、論理プロセッサと組み合わせて、スイッチング回路により制御される電力変換装置を有し、それによって同じ波長のLEDの各タイプが別々にストロボされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織に完全にまたは部分的に埋め込まれた小さな物体の検出に関する。一般に、本質的ではないが、物体は食肉中の骨片または非常に小さな骨である。大きな骨は見つけやすいので問題ではない。商業上、鶏の胸肉から骨を取るときに骨がばらばらになる傾向にあるため、食肉は鶏の胸肉であることが最も典型的である。本発明は家禽、魚、および骨片または非常に小さな骨を含みがちな他の食肉に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
食品中に存在し得る1mmよりも大きなサイズの骨片または硬い物体は、ヒトの健康に危険をもたらす。結果として、骨片は食品加工作業にとって規定リスクと訴訟リスクの両方を生じさせる。商業的に実現可能な骨検出法については、該方法は、その範囲の小端で骨片を確実に検出することができなければならない。表面の欠陥がより一般的であり、埋め込まれた欠陥はそれほど一般的ではない。
【0003】
骨は様々な形態を備えた複合マトリックスである。骨の主要な構造成分はハイドロキシアパタイトCa5(PO4)3OHとI型コラーゲンである。コラーゲンは、しばしば骨と密接に関連している軟骨の主要な成分でもある。大量の脂質と水和水も天然状態の骨と関連している。他の生体分子も存在するが、本明細書で開示される類の測定に対して有意な効果を与えるのに十分な量ではない。技術的な問題は、タンパク質と脂質からなる食肉マトリックス中の骨を見つけることである。
【0004】
この問題に対する最も初期のアプローチは、加工用の魚の切り身に対する光による検査(candling)(背面照明)方法の変化形を含んでいた。このアプローチでは、食肉サンプルは背後から光を当てられ、送信された強度の変化は、食肉中に吸収物体(通常は骨)の存在を示唆する。この方法の根本的な弱点は、組織がすべての屈折率不連続性で、細胞の寸法の規模に効果的に光子を散乱させるということである。細胞表面で散乱することから、光子の伝播の方向に関する情報は、およそ3mmの移動範囲内でほとんど完全に無作為化される。光子拡散モデルは、組織を通る光子の伝播について最も良く記載している。問題をさらに複雑にするために、肉の厚さが増すことは、表面下の骨の存在と同じくらいの減衰効果を有する。したがって、光による検査方法は、均一な厚さの薄いサンプルに限定される。それは時間ゲート(time gating)方法によって最大で10cmの組織を通って散乱することのないパルスレーザから移動する光子を測定することは実験室条件下では可能であるが、直接送信された骨片は約10-12の入射強度である。光による検査方法の範囲を拡張するのに必要なコストと高度化により、本発明により企図される食品加工用途にはふさわしくないものになる。
【0005】
米国特許第7363817号は、LEDの平面アレイを用いる500nm-600nmの背面照明と、塊の中の欠陥に対する感度を与えるために加えられる軸外の超音波散乱とを使用する光による検査方法を開示している。光検出器(カメラ)は入射光と位置合わせされる。記載される方法は、音響送信機と軸外の散乱を捕えるように向けられた受信機との間の減衰を測定する。ミー散乱の理論は、散乱物体のサイズが散乱波の波長に近いときの状況に当てはまる。この状況下では、散乱は高指向性であり得る。検出は、適切な散乱角度での検出器の偶然の存在に依存する。第2に、小さな欠陥からの信号は、食肉マトリックス内のテクスチャからのより大きな信号内で失われ得る。
【0006】
米国特許第4631413号は、骨、軟骨、および脂肪からの蛍光がUV放射によって励起される、洗練された方法を開示している。この方法には、タンパク質マトリックスからの蛍光が最小限であるという長所がある。高い振幅は骨軟骨または脂肪を示唆し、その一方で低い振幅は肉を示唆している。
【0007】
米国特許第7460227号は、UV蛍光方法の最新の変化形を記載しており、これは軟骨と骨の識別を改善するために2つの波長で蛍光を測定する。UV蛍光方法は、光による検査方法のように、肉の高い光子散乱断面積により薄いサンプルに限定される。工業用の設定では、この方法で使用されるUV放射から作業者を保護する必要がある。
【0008】
骨片を検出する問題に対する従来の注意のほとんどは、X線モダリティの開発に焦点を当てたものであり、これはより長い波長で光子よりもはるかに小さな散乱断面積を有しており、したがって直接できる、組織に深く埋められた欠陥を直接画像化することができる。さらに、X線散乱は電子密度に依存し、したがって、大量のマトリックス中の軽元素H、C、O、およびNよりも骨中のCaなどの重元素の方により高感度に反応する。X線方法は、弱鉱物化した骨と軟骨を検出するか、またはサンプル厚さのばらつきの原因を説明する能力に限りがある。歴史的には、これは、X線システムを単純な直接画像化から高度なコンピューター断層撮影システムへと変えてきた。X線は、重原子、とりわけ、両方とも骨の成分であるCaとPで高い電子密度を測定する。多くの米国特許は以下の如く詳述されるようにアプローチについて記載している。
第5585603号 物体の塊
第6023497号 調整された検出器
第6299524号
第6512812号 単一のエミッター
第6546071号 単一のエミッター
第6563904号 単一のエミッター
第6600805号 2つの源
第6370223号 2つの源と厚さを抑えるためのレーザープロファイル
第6449334号 2つの源、2つのエネルギー
第6597759号 2つの源、2つのエネルギー
第6597761号 CT
第5182764号 CT
第6430255号 CT
第6590956号 CT
第6018562号 CT
第7060981号 CTは、コストを増加させて複数の源を用いることによって速度を増加させた。
【0009】
CT、コンピューター断層撮影は、複数の角度で波の強度を測定し、再度画像を計算する。いくつかの問題は最新のCT系でも残っている。X線から作業者を保護し、かつ放射線暴露を毎日文書化する要件がある。X線のエミッターは高電圧を使用し、作業者にさらなるリスクを課す湿った環境中で操作される。高額な資本コストと高額な維持費により、食品加工用途でのX線方法の採用が制限されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、製造ライン上の食肉サンプル中の欠陥を検出する方法が提供され、
該方法は、
上記食肉サンプルの領域上に光の少なくとも1つの波長を放射する工程、
上記食肉サンプルの上記領域から反射された光を受け取り、上記反射された光の振幅を測定する工程、
および、データ処理装置において、多変量解析によって上記食肉サンプルの各領域の上記反射された光の振幅を比較する工程、ならびに、
上記多変量解析から上記食肉サンプル中の表面の欠陥の存在を判定する工程、を含む。
【0011】
本発明の重要な特徴として、好ましくは、方法は、以下の追加の工程を含む:
上記食肉サンプルの領域上に超音波の少なくとも1つの周波数を放射し、上記食肉サンプルから戻ってきた超音波を受け取る工程、
戻ってきた上記超音波の振幅と飛行時間を測定する工程、
多変量解析によって上記食肉サンプルの各領域について戻ってきた上記超音波の振幅と飛行時間を比較する工程、
上記多変量解析から、上記食肉サンプル中の表面と内部の欠陥の存在を判定する工程。
【0012】
本発明の別の態様によれば、製造ライン上の食肉サンプルの欠陥を検出する方法が提供され、
該方法は、
上記食肉サンプルの領域上に超音波の少なくとも1つの周波数を放射する工程、
上記食肉サンプルから戻ってきた超音波を受け取る工程、
戻ってきた上記超音波の振幅と飛行時間を測定する工程、
多変量解析によって上記食肉サンプルの各領域について戻ってきた上記超音波の振幅と飛行時間を比較する工程、
上記多変量解析から、上記食肉サンプル中の表面と内部の欠陥の存在を判定する工程を含む。
【0013】
以後、詳細に記載される方法は、以下の特徴、目的、または利点の1つ以上を提供することがある。
【0014】
主たる目的は、肉塊の表面上および奥深くの両方の小さな欠陥を検出するための頑強かつ経済的な手段を提供することである。
【0015】
1つの主要な目的は、製造ライン上の食肉検査官に代わって、食肉サンプル上の表面の欠陥を検出するためのスペクトル画像化システムおよび方法を提供することである。
【0016】
1つの主要な目的は、食肉サンプル上および食肉サンプル中の両方の骨を検出する音響超音波システムおよび方法を提供することである。
【0017】
別の主要な目的は、少なくとも1つの発光装置と、データ処理装置にデータとしての信号を供給する光信号を登録するための少なくとも1つの光検出器とを有する、製造ライン上の食肉サンプルの欠陥を検出するための装置を提供することであり、データ処理装置は上記食肉サンプル中の欠陥の存在を示すためにデータを処理し、データ処理装置は上記食肉サンプル中の欠陥の存在を示す関連指標を有する。
【0018】
別の主要な目的は、少なくとも1つの超音波エミッターと音響信号を登録するための少なくとも1つの音響検出器とを有する装置を提供することであり、光検出器と音響検出器はデータとしてデータ処理装置にデータとしての信号を供給する。
【0019】
副次的な目的は、発光装置が広帯域の白色光源、様々な波長の少なくとも2つのタイプのLEDを備えた光源、ラマン散乱放射線を励起するための準単色レーザー光源、ラマン散乱放射線を励起するために少なくとも1つのバンドパスフィルタによってフィルター処理された疑似単色LED光源、様々な波長の少なくとも2つの点滅式(strobed)LEDを備えた光源、ラマン散乱放射線を励起するための近赤外線源と紫外線源からなる群から選択される、装置を提供することである。
【0020】
さらなる副次的な目的は、620~640と720~760nmの間の波長の少なくとも2つのタイプのLEDを備えた光源を含む装置を提供することである。
【0021】
さらなる副次的な目的は、540~570、620~640、および720~760nmの間の波長の少なくとも3つのタイプのLEDを備えた光源を含む装置を提供することである。
【0022】
さらなる副次的な目的は、ラマン散乱を励起するために200~220nmの間の波長の光を放射する紫外線源を含む装置を提供することである。
【0023】
さらなる副次的な目的は、疑似単色レーザー光源がラマン散乱を励起するために488、515、532、594、633、635、650、660、670、785、808、830、850、980、および1064nmからなる群から選択される可視光と赤外光の波長の光を放射する、装置を提供することである。
【0024】
さらなる副次的な目的は、疑似単色LED光源がラマン散乱を励起するために少なくとも1つのバンドパスフィルタによってフィルター処理されたラマン散乱を励起するべく、488、515、532、594、633、635、650、660、670 785、808、830、850、980、および1064nmからなる群から選択される可視光と赤外光の波長の光を放射する、装置を提供することである。
【0025】
さらなる副次的な目的は、近赤外線源が900~2600nmの間の波長の光を放射する装置を提供する。
【0026】
さらなる副次的な目的は、トランスデューサーの横方向アレイである超音波エミッターを提供する。
【0027】
さらなる副次的な目的は、各上記トランスデューサー向けの電力変換装置用のスイッチング回路電源を作動させる論理プロセッサーによって各々が別々に制御される超音波トランスデューサーのアレイを提供することである。
【0028】
さらなる副次的な目的は、ピクセルを含む横断線スキャン検出器、ピクセルの焦点面アレイからなる群から選択される光検出器を提供することであり、および、上記ピクセルは光の振幅を測定する。
【0029】
さらなる副次的な目的は、光検出器がピクセルの焦点面アレイである場合に、接続された波長選択器を提供することである。
【0030】
さらなる副次的な目的は、プリズム、回折格子、およびバンドパスフィルタからなる群から選択される接続された波長選択器を提供することであり、焦点面アレイは、ピクセルの複数の別々の横方向アレイを含み、各々の別々のアレイは異なる選択された波長に対応する。
【0031】
さらなる副次的な目的は、光検出器を備えたフーリエ変換分光器である接続された波長選択器を提供することであり、光検出器は、上記フーリエ変換分光器に不可欠な光検出器と、予備の検出器接続を介して上記フーリエ変換分光器に接続された光検出器からなる群から選択される。
【0032】
さらなる副次的な目的は音響検出器を提供することであり、音響検出器は、トランスデューサーの横方向アレイを含む超音波エミッターと、上記超音波エミッターから音響的に絶縁された音響トランスデューサーの別のアレイからなる群から選択され、音響検出器は音響振幅とそれぞれの音響振幅の飛行時間を測定する。
【0033】
さらなる副次的な目的は、上記食肉サンプルのサンプル領域に対応する複数の光振幅を受け取るためのデータ処理装置を提供することであり、多変量解析を使用するデータ処理装置は、較正セットからのnの固有ベクトル上への射影によって、直交するn-次元のデータベクトルを生成し、および、これらのデータベクトルを較正セットのベクトルと比較することで、これらが骨、軟骨、脂肪、肉または皮膚、あるいはサンプルの各サンプル領域の汚染物質に対応するかどうかを判断し、骨が識別されると、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲート(pass-fail gate)を作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない。
【0034】
さらなる副次的な目的は、データ処理装置が、各波長について、直接かつ対角線上に当接する隣接領域から上記サンプル領域の振幅をさらに識別することであり、すべての波長の当該領域と隣接領域の振幅は多変量解析にかけられ、データ処理装置は、較正セットからのnの固有ベクトル上への射影によって直交するn-次元のデータベクトルを生成し、較正セット中のベクトルとこれらのデータベクトルを比較し、さらにサンプル領域間の境界の存在を判定し、境界が識別されると、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない。
【0035】
さらなる副次的な目的は、データ処理装置が、上記食肉サンプルのサンプル領域に対応する複数の音響振幅と上記振幅の飛行時間を受け取ることであり、上記データ処理装置は、上記サンプル中の骨の存在を判定するために標準的な振幅と上記振幅を比較し、骨が存在する場合、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない。
【0036】
さらなる副次的な目的は、各波長について上記振幅を標準偏差に平均中心化および正規化するデータ処理装置を提供することである。
【0037】
別の主要な目的は、製造ライン上の食肉サンプルの欠陥を検出する方法を提供することであり、該方法は、上記食肉サンプルの領域に光の少なくとも1つの波長を放射する工程、上記食肉サンプルの上記領域から反射された光を受け取る工程、上記反射された光の振幅を測定する工程、多変量解析によって上記食肉サンプルの各領域の上記反射された光の振幅を比較する工程、上記多変量解析から上記食肉サンプル中の表面の欠陥の存在を判定する工程を含む。
【0038】
副次的な目的は、上記食肉サンプルの領域へ超音波の少なくとも1つの周波数を放射する工程、上記食肉サンプルから戻ってきた超音波を受け取る工程、上記戻ってきた超音波の振幅と飛行時間を測定する工程、多変量解析によって上記食肉サンプルの各領域の上記戻ってきた超音波の振幅と飛行時間を比較する工程、上記多変量解析から上記食肉サンプルの表面と内部の欠陥の存在を判定する工程を含む、追加の工程を含む方法を提供することである。
【0039】
さらなる副次的な目的は、多変量解析によって、上記食肉サンプルの各領域の上記反射された光の振幅と上記食肉サンプルの各領域の上記戻ってきた超音波の振幅と飛行時間を比較する工程、上記多変量解析から上記食肉サンプルの表面と内部の欠陥の存在を判定する工程を含む、追加の工程を含む方法を提供することである。
【0040】
さらなる副次的な目的は、光の単一波長が放射され、反射された光がラマン散乱である方法を提供することであり、該方法は、ラマン散乱光を異なる波長に分けるために波長選択器によって上記ラマン散乱光を分光させる追加の工程と、上記異なる波長の振幅を測定するさらなる追加の工程を含む。
【0041】
さらなる副次的な目的は、ラマン散乱光を励起するための上記単一の波長が疑似単色であり、200~220nmの波長領域の紫外線と、488、515、532、594、633、635、650、690、670、785、808、830、850、980、および1064nmの可視光と赤外光から選択される、方法を提供することである。
【0042】
さらなる副次的な目的は、光の少なくとも1つの波長が広帯域白色光である方法を提供することであり、該方法は、反射された光を異なる波長に分けるために波長選択器によって上記反射された光を分光させる追加の工程と、上記異なる波長の振幅を測定するさらなる追加の工程を含む。本発明のさらなる副次的な目的は、光の上記少なくとも1つの波長が900~2600nmの範囲から選択される近赤外線波長である方法を提供することである。本発明のさらなる副次的な目的は、光の上記少なくとも1つの波長が少なくとも2つの別の波長を含む方法を提供することである。
【0043】
さらなる副次的な目的は、別々の時間に少なくとも2つの別の波長を放射する工程と、別々の時間に反射された光の上記振幅を測定する工程を含む方法を提供することである。
【0044】
さらなる副次的な目的は、少なくとも2つの別の波長が620~640nmと720~760nmを含む方法を提供することである。本発明のさらなる副次的な目的は、少なくとも2つの別の波長が540~570、620~640、および720~760nmを含む方法を提供することである。これらの波長は好都合なことに非コヒーレントLEDによって放射された非コヒーレント光であってもよく、典型的には540~570、620~640m、720~760nmの波長帯域である。波長は好都合なことに非コヒーレントLEDによって放射された非コヒーレント光であってもよく、典型的に、540~570、620~640m、720~760nmの波長帯域である。540~570nmの帯域では、中心値は540~570nmの範囲であってもよく、620~640nmの帯域では、630nmの中心値が最適であり、720~760nmの帯域では、中心値は720~760nmの範囲であり得る。
【0045】
さらなる目的は、製造ライン上の食肉サンプルの欠陥を検出するための装置を提供することであり、該装置は、少なくとも1つの超音波エミッターと、音響信号を登録するための少なくとも1つの音響検出器を含み、音響検出器はデータとしての音響信号をデータ処理装置に供給する。データ処理装置は、上記食肉サンプルのサンプル領域に対応する複数の音響振幅とこうした振幅の飛行時間を受け取る。データ処理装置は、サンプル中の骨の存在を判定するためにこうした振幅を標準的な振幅と比較し、骨が存在する場合、ロジック信号が送信されてサンプルを止める合否判定ゲートを作動させ、そうでない場合、ロジック信号は送信されない。好ましくは、装置は、超音波エミッターの少なくとも1つのアレイと音響信号を登録するための音響検出器の少なくとも1つのアレイを含み、音響検出器のアレイはデータとしての信号をデータ処理装置に供給する。装置は、上記製造ラインの上に超音波エミッターの少なくとも1つのアレイと、上記製造ラインよりも下の音響信号を登録するために音響検出器の少なくとも1つのアレイを含むことがある。代替的に、装置は、上記製造ラインよりも下の超音波エミッターの少なくとも1つのアレイと、上記製造ラインの上の音響信号を登録するために音響検出器の少なくとも1つのアレイを含むことがある。
【0046】
さらなる目的は、製造ライン上の食肉サンプルの欠陥を検出する方法を提供することであり、該方法は、食肉サンプルの領域へ超音波の少なくとも1つの周波数を放射する工程、食肉サンプルから戻ってきた超音波を受け取る工程、戻ってきた超音波の振幅と飛行時間を測定する工程、多変量解析によって食肉サンプルの各領域について戻ってきた超音波の振幅と飛行時間を比較する工程、上記多変量解析から上記食肉サンプルの表面と内部の欠陥の存在を判定する工程を含む。
【0047】
<発明の説明>
本明細書に記載される配置は、表面上又は食物製品の塊中の異物の検出のための方法に、スペクトル画像解析と超音波測定の組み合わせを提供する。非常に大まかなスペクトル画像解析は、表面の付近にある異物を検出するために使用され、超音波は、サンプルの塊内の異物を検出するために使用される。サンプルは、光及び反射光、又は一連の振幅データポイントを提供するために測定されるラマン散乱光により照射される。サンプルは、超音波によっても同様に照射され、反射音波により、時間遅延を含む一連の振幅データポイントが提供される。その後、これらのスペクトルデータポイント及び音響データポイントは、n次元空間における一連のベクトルを導き出すための統計的方法により処理される。このようなベクトルは、欠陥の存在又は不在を示す。典型的に、ベクトルは、サンプル中の骨、軟骨、脂肪、肉(狭い意味で食肉又は筋肉)、又は皮膚の存在、及び故に欠陥の存在又は不在を示す。
【0048】
<光学測定>
不規則なサンプルの形状により起こり得るシャドーイング効果を排除するために、光学測定は全て、およその後方散乱の幾何学的形態(backscatter geometry)で行われる。照明は、鏡面反射の効果を制限するように、可能な限り均一に拡散している。拡散照明は、1以上のLambertianラジエータで構成される分散光源の使用により達成される。均質性を改善するために拡散器プレートが使用され得る。照明は随意に偏光され、偏光子は、鏡面反射を減少させるためにサンプルと検出器との間に位置する入射偏光に対して90°回転される。一般的な照明方向は、150°より大きく、好ましくは可能な限り180°に近く、通常5°以内での空間的な考慮を可能にする。ビームスプリッターが使用される場合、照明方向は180°であり得る。照明とサンプルとの間の空間は空気であり得るが、より好ましくは、屈折率の変化を減らすために液体である。別の実施形態において、対象の波長領域において送信する材料で構成されたローラーは、サンプルに接して配される。ローラーは、バイオフィルムの蓄積を防ぐために清潔にされる。全ての実施形態において、反射要素及び/又は屈折要素で構成される光学システムは、サンプルの小さな表面領域から散乱又は反射された放射線を検出素子上に拡大してマッピングするために使用される。小さな表面領域の長さ寸法はx/2であり、対応する空間周波数は2/xである。空間周波数1/xで特徴を解像するために、ナイキストの定理は、2/xでのサンプリングを必要とする。更に、光学システムは、変調伝達関数の分析により判定されるように、高忠実度でスペクトル周波数2/xの変調を伝達しなければならない。光学検出素子は、光ダイオード又はボロメーターである。広範囲の波長にわたって電磁放射に反応するボロメーターは、あまり敏感ではなく、応答時間が更に遅い。ボロメーターは、気流に敏感であり、通常は光学窓を持つ真空筐体で覆われている。窓の材料の光学的特徴は、ボロメーターの実際の波長領域を判定する。
【0049】
光ダイオード検出器は通常、光電効果に対して作動する半導体であり、バンドギャップに関連して有効な長波長が遮断される。光ダイオードはより敏感であり、より速い応答時間を有しているが、波長領域は制限されている。何れかのタイプの検出素子は頻繁にアレイにおいてグループ化され、アレイにおける各論理素子はピクセルと呼ばれる。ピクセルは、単一又は複数の検出素子から成り得る。複数の検出素子を持つピクセルは典型的に、異なる波長を選択するために各検出素子の前に光学フィルターを有している。カラーカメラにおいて使用されるRGBバイエルアレイが一例である。広範囲の波長フィルターが利用可能であり、8までの波長フィルターを持つデバイスが市販で入手可能である。ピクセルアレイ上にサンプルの画像を形成するために、サンプルとピクセルアレイの間に伝達光学系(Transfer optics)が配される。光学システムに必要な倍率は、ピクセルサイズとx/2との間の比率である。実際に、各サンプルの小さな表面領域は約1/2mm平方である。伝達光学素子は、屈折光学素子(レンズ)、反射光学素子(鏡)、又は回折光学素子(フレネルレンズ)を使用することができる。反射光学素子は無色である。対象の波長領域における色収差のために補正される屈折システムを選択するためには、注意を払わねばならない。回折システムは、焦点に集まり、且つ波長フィルターとして作用することができる。当業者に既知の他のデバイスが代わりに使用されてもよい。プリズム、回折格子、又はバンドパスフィルタであり得る波長選択器は、特定の波長、典型的に広範な波長を分離且つ集中させることを必要とされ得る。フーリエ変換分光器は、波長選択器として使用される場合、一体型光検出器、典型的には、光ダイオード、ボロメーター、又はラインスキャン或いは焦点面のアレイを通常は有している。大半のフーリエ変換分光器はまた、検出器が分光計の外部に位置し得るように、補助的な検出器接続部を有している。
【0050】
較正において、各ピクセルは、各波長のために標準光源により照射され、次いで、応答を等しくするために各ピクセルについてスケール係数が計算される。スケール係数は、各ピクセル要素のスペクトル応答の変化と同様に、ピクセル要素の物理的大きさの幾何学的な変化を考慮する。ピクセルのスペクトル応答と感度が温度に依存するものであり、及び、十分に設計されたシステムは、温度調節器にフィードバックを提供する又は温度の変化についてスケール係数を補正するために、ピクセル要素に近接した温度センサーを含むことに、注意されたい。通常低温で冷却された検出器はより敏感であり、ペルチェクーラーを備えた検出器及び検出器アレイは市販で入手可能である。各波長のために同じ物理受光器要素が使用されるので、較正は点滅されたシステムに対してより単純である。各波長に関するスケール係数の補正は、検出素子の分光感度曲線により判定され、第一次近似はアレイにおける要素の全てに対して同じである。発光体がストローブされる場合、ピクセルアレイは単一の横方向アレイ(transverse array)であり得る。光ダイオード/ピクセル感度の自然変動によりストローブを行うのがより好都合であり、故に、より確実な平均振幅のために較正することが更に容易になる。実質的に一次元であるラインスキャンが用いられると、ピクセルの3つの列、即ち3x1024が、誤差を確認し且つより確実な平均振幅を得るために使用され得る。二次元の焦点面ピクセルアレイが使用される場合、ピクセルの選択された列である、典型的に640x480又は1024x1024が、所望の波長に対応して使用される。再度、通常1より多くのピクセルの列が、個々の所望の波長域のために使用される。
【0051】
1つの実施形態において、照射は広帯域の白色光源によりもたらされ、サンプルから広く反射された光は、回折格子又はプリズムによる波長、及び各々が広範囲の波長を記録するピクセルの焦点面アレイ上の位置により分光される。
【0052】
別の実施形態において、2以上のタイプのLEDを備えた光源が使用され、サンプルから広く反射された光は、波長、及び焦点面アレイ上の位置により分光される。
【0053】
別の実施形態において、(レーザーであり得るが、通常はそうでない)準単色照明は、1以上のバンドパスフィルタに繋げたLED光源によりもたらされ、結果として生じるラマン散乱放射線は、波長及びピクセルの焦点面アレイ上の位置により分光される。ラマン散乱強度が偏光に依存するので、ラマン測定のために好ましい光源の偏光が解消されることに、注目されたい。LED光源は通常、この要件を満たす。レーザーが使用される場合、偏光を無作為化するために周波数帯変換器が必要とされ得る。LEDは、25から40nmのスペクトルFWHMを有しており、必要な帯域幅(FWHM)は約0.2nm以下である。0.15nmのバンドパスを持つ適切なフィルターを、Andover Corporation,Salem NHから得ることができる。干渉フィルターの中心に伝達された波長は、フィルターを回転させることにより調整することができ、この原則は、直列で使用される2つ以上のより広いバンドパス(及びあまり高価でない)フィルターから、狭いバンドパスフィルタを構築するために使用することができる。
【0054】
別の実施形態において、レーザーは準単色の照明をもたらしラマン散乱放射線は焦点面アレイ上の波長と位置により分光され、レーザーはより優れたスペクトル分解をもたらす。
【0055】
別の実施形態において、照明は、点滅されるLEDの2以上のセットによりもたらされ、サンプルにより広く反射された光(ラマンではない)は、両方の波長を測定するラインスキャン検出器により位置に応じて集められ、1つの波長だけが一度に測定される。
【0056】
更なる実施形態において、InGaAsの光ダイオード/ピクセルが、波長領域900から2600nmで近赤外線スペクトルを集めるために使用される。代替的に、他のマイクロボロメーターアレイが使用され得る。当業者に周知の範囲における、様々な適切な赤外線放出器が存在する。近赤外線は理論上より深く浸透するが、あまり敏感ではない。
【0057】
ラマンスペクトルを励起するために準単色放射線を使用する実施形態は、より詳細なスペクトルである、本明細書に記載される他の方法よりも独立したデータポイントを生成し、従ってこの方法にはより大きな診断価値がある。典型的な例として、骨は、対称的な伸縮(symmetric stretching)からの約960cm-1での強いラマン散乱、及びヒドロキシアパタイトにおけるPO+の非対称の伸縮からの1050cm-1付近の帯域のより弱いセットにより、筋肉と区別され得る。脂質は、2850cm-1と3050cm-1の間の領域における対称的及び非対称的なC-H伸縮帯域から判定され得る。タンパク質は、タンパク質二次構造に関する情報を含む、異なるラマンスペクトルを生成する。最も重要なタンパク質特徴は、ペプチド中でアミノ酸残基が1650cm-1付近であるアミドI帯域である。これらの測定について、励起波長は、蛍光バックグラウンドにおいて著しい上昇を引き起こさない、最短の波長として選択されねばならない。ラマン散光の強度は、付帯的な周波数の4乗に比例する。蛍光は、より低い信号レベルを費やして、近赤外線入射光を使用することにより回避され得る。適切な波長は633nmであり、それは、LED又はHeNeレーザーの何れかにより提供され得、蛍光を回避する。サンプルから散乱した放射線を集め、且つ波長選択器に前記放射線を伝達するためのレンズシステムが、典型的に使用される。付帯的な波長での電力が典型的に測定波長での電力よりも100万倍高いので、波長選択器は、付帯的な波長での及びその付近の放射線が検出素子に到達するのを防がなければならない。付帯的な波長は、干渉フィルター、又は2重(又は3重)の回折システムにより遮断され得る。両方の選択肢は多くの供給業者から市販で入手可能であり、存在する多くの市販で入手可能なレーザーLEDは、488、515、532、594、635、650、660、610、785、808、830、850、980、及び1064nmを含む、ラマン励起に適切な可視赤外線及び近赤外線における波長を有している。実際に、動作波長は、操作条件の変動により約5nmまで表示波長とは異なることもある。検出器は、ラマン散乱光子波長領域における感度のために選択される。fwからpWの範囲に感度が存在するので、多くのアバランシェフォトダイオードが好ましい検出器技術であり、これはnW範囲におけるラマン信号と都合良く比較される。励起波長が600nm未満の場合、光電子増倍管も作動する。CCD技術も作動するが、より低い感度のために、より長いサンプリング時間(又はより高い入力電力)が必要とされる。筋肉のような軟骨はアミノ酸の配列で構成されているが、アミノ酸の非定型的な分布も有している。軟骨において、アミノ酸残基の約1/3がプロリンである。プロリンに対し選択的に敏感な共鳴ラマンスペクトルは、200nmと220nmの間の放射線で励起され得る。蛍光はUV励起に関する問題である。蛍光が回避できない場合、典型的に約200nsである、ラマン信号よりも大きな時間遅延で到達する蛍光を拒絶するために、時間ゲート検出と共にパルス光源によりラマンスペクトルを集めることが可能である。検出器は、蛍光が通過することを可能にするためにラマンの検出後に止められ、次いで、次のラマンの検出のために再びスイッチが入れられる。出力光は、デバイス、通常は回折格子(理論上、プリズムが使用され得る)を通過し、ピクセルアレイ、代替的にフーリエ変換分光器上で測定されたその強度が使用され、ラインスキャン検出器又は焦点面アレイと組み合わされ得る。
【0058】
最も有効な波長を判定するために、鶏のサンプルを、離散的な10nmの帯域と、各帯域について測定された反射振幅において、400から800nmの範囲にわたり試験した。振幅を標準偏差と比較して測定した。カメラは1024×1024のピクセルであったが、サンプルは700×700のピクセルに近似していた。軟骨、骨、皮膚、脂肪、及び筋肉の領域が識別され、明確に判定された表面のみを覆うマスクを使用して、確実な平均振幅と標準偏差を提供するためにピクセルが少なくとも数千から2万までに達する、表面の各タイプについてマスク内のピクセルの反射光の振幅をもたらす。540から570nm、620から640nm、及び720から760nmの範囲が最も有効であると見出された。3つの範囲は全て必要とされ、各々がサンプル中の差異を説明する固有ベクトルに著しく寄与する。以下に示されるように、固有ベクトルは、表面の性質を識別するのに十分であると導き出される。
【0059】
反射光を使用する実施形態について、有益な例が、家禽の胸肉に欠陥を見出すという問題に対する本発明の適用を説明することにより提供される。1つの実施形態において、Siベースの光ダイオードが使用される。鶏のあばら肉と胸筋のスペクトル感度は、約630nmの領域では統計的に判別不能であり、この特性は、630nmを優れた正規化基準とする。720nm付近のスペクトル領域において、鶏のあばら肉と胸肉の分布の手段は、それらの標準偏差の合計により分離される。従って、630nmと720nmでの測定が、鶏のあばら肉と胸筋を区別するのに十分である。軟骨は骨よりも反射的である。630nmと720nmにて、比率は約1.1であり、一方で570nmでの比率は約1.8である。従って、軟骨は、570nmでのより高い反射率、及び、630nmの基準測定に対して720nmでの同様の反射率により推測される。570nmにて、鶏の脂肪は、630nmの基準に対して筋肉よりも約3.4倍反射的である。皮膚は、分光反射率に関して脂肪に接近する。720nmにて、脂肪は、630nmの基準に対して筋肉(0.84)ほど反射的ではない。これら波長は、有効であり且つ多変量解析のための十分な基底集合を形成するための実験により判定された。3つの振幅が各ピクセルについて判定される。実際、後にサンプリングされた表面積の性質を判定するために使用される、n次元空間における固有ベクトル上に射影を導き出すために、各ピクセルにつき3つの振幅が、多変量解析にさらされる。
【0060】
570、630、及び720nmが好ましくは点滅される一方で、それらはそのように行われる必要はない。LEDの暖まりはマイクロ秒のオーダーで迅速であるが、シャットダウンは300マイクロ秒のオーダーで遅いものである。結果的に、約300マイクロ秒の遅延が、LEDが止められる時間と次の集積化間の始めとの間に必要とされる。点滅は通常、同じ波長の各LED又はLEDの群がその電力変換器を、電流制限器、LEDドライバ、又は同様の論理プロセッサーと組み合わせたHブリッジなどのスイッチング回路により制御することを必要とする。BuckPuck(LED Supply,Randolph VT)が適切な制御装置である。
【0061】
近年、食肉のサンプルを搬送するコンベアベルトは、毎時約15,000のサンプル、又は、1600mm/sのライン速度に相当する毎秒約4に速度を上げてきた。0.5mmの並進移動につき3回の測定を行なうために、必要なサンプリング周波数は直線アレイで9.6kHzであり、これは、上述のLEDターンオフ時間を考慮すると問題がある。我々の実験は800mm/sで流れるライン上で行われ、そのため直線アレイに必要なサンプリングレートは4.8kHzである。異なる時間で同じサンプル領域の複数の画像を記録するために、2次元の焦点面アレイを代わりに使用することができる。必要なのは、積分時間(我々の事例において0.625ms)中に0.5mm未満サンプルが並進移動するということである。故に、一連の重複する2-D画像を、各波長のために集める。各波長について各サンプルに関する単一の2-D画像を提供するように、画像間の相対運動により画像をオフセットしなければならない。これを2つの方法で行うことができる。集積時間は、前述のような所望のナイキスト空間分解能に従って設定される。1つの焦点面アレイ検出器により全ての波長を順に測定することが可能である。検出器のスイッチを入れて光子を受け且つそれらのエネルギーを合計する時間である積分時間は、典型的に約1/4から3/4ミリ秒である。焦点面は例えば、横1360×縦1024のピクセルであり、例えば、横約640×縦240のピクセルの領域は、フレーム、実質的に一枚の写真として使用される。フレームは、3つの別個の波長が存在するので、異なる時間に撮られる。フレーム間の期間は通常、データ処理装置にセンサデータを伝達するのに必要な時間により、積分時間よりも長い。フレーム間の期間中、サンプルは、好ましくは2Xのピクセルに相当する距離Xmmを並進移動する。Xの値とピクセルのずれは、サンプルの並進移動速度から計算される。間隔は典型的に21/2ミリ秒である。サンプルがカメラの下を通過すると、一連のフレームは各波長にて撮られ、1つのサイクルは、実際に約12ピクセルに相当して、71/2ミリ秒かかる。1つのフレームにおけるピクセルの特定の横方向の列の振幅は、同じ波長の次のフレームにおける列11、12、又は13と比較され、一般的にこれらのうち1つは、同じものとして識別され、つまり同一であると示される。サンプルが使用される場合、第1の画像と次の画像(広範なオフセットを持つ)の領域の間のドット積は、各データベクトルの大きさにより計算され且つ正規化される。1.000に最も近い値を生成するオフセットが使用される。フレーム、又はむしろ、適切なオフセット後に一般的な小型サンプル領域に相当するピクセル振幅を合計することで、より長い有効な積分化がもたらされる。20までのフレームが与えられた例において使用され得る一方、一般的な方法は、既知のずれによりオフセットされた視野を持つ複数の焦点面アレイの使用により、任意数のフレームにまで拡大され得る。合計された振幅は、フレームの数と共に増加し、ノイズは、同時に加えられたフレームの数の平方根に比例する、信号対ノイズの比率で全体的な改善をもたらすフレームの数の平方根に応じて増加する。この増幅方法は、本質的に弱い信号を用いたラマン測定に特に有用である。生のピクセル振幅は、白基準への反応を正規化するために、スケール係数により各波長にて正規化される。これらの振幅は、3次元のベクトルを生成し、これはサンプルの表面の性質を特徴づけるために使用される。
【0062】
ピクセルのオフセットを計算するためにサンプル搬送基体(コンベアベルト)上にエンコーダマークが含まれてもよい。このようなマークは、各フレームからの画像を一致させるために使用され得る、等間隔の別個のマーキングであり、マーキングは、後に識別され得る、各サンプルとの同じ位置的な関係性を有している。同じサンプル領域に関するピクセル値が、各波長のために加えられる。1つ以上のビームスプリッターの使用を伴って、別個の検出器を一斉に使用して、波長を全て測定することも可能である。別個の波長のためにピクセルを各々含む、3つのセットの焦点面が使用されると、正規化は、3つの波長全てにおいてピクセルを全て考慮しなければならないため、より複雑となる。この場合、測定の間の期間は短くなるが、検出器を共通の視界に位置合わせさせることに注意しなければならない。何れの場合も、有効な積分時間を増大させ、且つ結果として信号対ノイズの比率を改善する、各サンプル領域の複数の画像を記録することが可能である。典型的な例として、1280×1024ピクセルの焦点面アレイを持つカメラを使用してもよく、サンプルはY方向に並進移動される。サンプルは、同じ波長での測定の間の期間において、256のピクセルを並進移動させる。この例において、各物理的領域は4回測定される。データ処理時間は、バイトの数とプロセッサーの速度に応じる。
【0063】
好ましくは、光学システムは、60Hzの蛍光照明の効果を含む、周囲光から遮蔽されたチャンバで囲まれる。照明の振幅を調節し、変調信号を検出器の出力に繋げられたロックイン増幅器に通すことで、周囲光の効果が排除され得る。
【0064】
<音響測定>
本発明は更に、サンプル搬送装置の幅に及ぶように配置される超音波トランスデューサーのアレイを含み、これにより、サンプル領域の全ての領域をスキャンすることができる。サンプリング領域の壁は、超音波震動を吸収且つ弱めるように設計された材料で覆われる。例えば、アレイは、光学的な例に使用されるコンベアシステムの幅に一致するように約210mm幅であり得る。他の大きさも可能であり、特定のコンベアシステムの大きさにほぼ一致するように選択されねばならない。3つの変形が構想される。第1の変形は、水性媒体を介して音響振動をサンプルに伝達する。この場合、後方反射の幾何学的形態が好ましい。第2の変形において、サンプルは、コンベアベルトの片側に置かれ、少なくとも1つの変換器は、コンベヤベルトのもう片側に液体を介して繋がれる。音響信号は、コンベアベルトを介して、サンプルを介して伝達され、且つ、少なくとも1つの変換器により受けられる前に空気間隙を通って移動する。送信機と受信機の位置は交換されてもよい。第3の変形は、ローラーを介して音響振動をサンプルに伝達する。この場合、1つ以上の変換器がローラーに取り付けられる。変換器はローラーにより回転し得るが、より好ましくは、中心付近で固定して位置付けられ、液体を介してローラーの移動面に繋げられる。
【0065】
1つの実施形態において、好ましくは直径6mmである変換器のラインが使用され、通常、典型的な鶏の胸肉におよぶのに十分な、約32の変換器を有している。6mmの変換器は、十分に集束された超音波を生成するのに十分な大きさであるが、検出限界内で0.3mmもの小さな欠陥からの帰還(return)を維持するにも十分に小さいものである。この大きさに関するノイズ/信号の比率が理論的に計算される。変換器は、水性媒体中で1MHzと20MHzの間、最も好ましくは5MHzで共振し得る。空気中での適切な周波数は200kHzであり、より高い周波数により、より優れた分解能とより低い浸透深さがもたらされる。超音波周波数は、超音波波長が最小限の欠陥の大きさxより小さく、最も好ましくはx/2よりも小さくなるように選択される。この限界内で、寸法x以上を持つ構造は、後方散乱の幾何学的形態に観察され得る、音響の双極場を生成する。音響信号は、反射される場合、状況により異なる多くのローブを有しており、前方散乱と後方散乱両方のローブが常に存在する。前方散乱の幾何学的形態の場合のように、弱い散乱信号が強い入射波と組み合わないため、後方散乱の幾何学的形態は、前方散乱の幾何学的形態よりも本発明に使用される。欠陥が超音波波長とほぼ同じ大きさである特定の欠陥の形状は、幾つかの角度では信号が強く、且つ他の角度では信号が無い、散乱角度に強く応じた反射波を生成することができることに注目することが、有益である。後方散乱の幾何学的形態は、このような場合において可能な限り最も強力な信号を生成しないが、欠落した信号の可能性に好ましい、一貫した信号を生成する。出力するパルスの生成からの発振が、散乱波の到達前に無視できるレベルに弱まる場合、後方散乱の幾何学的形態は、同じ変換器が超音波を送受信することを可能にする。
【0066】
代替的な実施形態では、別のセットのトランスデューサーが、閉じた角度で近接して(in close angular proximity)位置付けられ得るが、受信機として機能するために第1セットのトランスデューサーから音響的に絶縁され得る。検出器は、試験された物質の有効な音響コンダクタンスまたはインピーダンスを測定し、それ故、その密度、骨、軟骨、脂肪および筋肉を示す差を示す。本実施形態では、トランスデューサーはすべて、一度に音響応答を放射し、音響応答を同時に測定し得る。トランスデューサーはまた、時間位相の遅れとともに音響応答を放射し、これによって、マイクロ秒でサンプルに触れる(sweep)ことができる。サンプルチャネルの幅は、N領域に分割され得る。各領域をサンプリングするのに必要な時間は、超音波がトランスデューサーからサンプルコンベアの底に移動し戻ってくるまでに必要なおよその時間である。トランスデューサーのセット/位相のアレイは、短焦点の音波列を各領域へと別々に送り、これは、サンプル領域にわたる完全なラインが探査される(interrogated)まで、順に領域1から始まって、領域Nで終了する。このプロセスは無期限に繰り返される。サンプリング時間中に、後方散乱波は、入射波形の周波数の2倍でサンプリングされる。例えば、20mmの軟組織を通る5MHzの波列が帰還する(return trip)のに必要な時間は、約28マイクロ秒であり、結果的に約280のデータポイントが、後方散乱波形を特徴づけるために必要とされる。別の実施形態では、1つを超える領域が同時にサンプリングされ得るが、これは該領域がクロストークを回避するために十分に遠く離れていることを条件とする。位相差の結果として、小さなサンプル領域内を除いて相殺的干渉がある。本質的に、1回の応答は、一度にサンプルの1つの領域から受信される。
【0067】
大気中の実施形態では、トランスデューサーはすべて、一度に音響応答を放射し、検出器は、音響応答を互いに同時に測定する。トランスデューサーはまた、時間位相の遅れとともに放射を行い、これによって、マイクロ秒でサンプルを走査することができる。サンプルチャネルの幅は、N領域に分割され得る。各領域をサンプリングするのに必要な時間は、超音波がトランスデューサーからサンプルコンベアの底で受信機に移動するまでに必要なおよその時間である。トランスデューサーのセット/位相のアレイは、短焦点の音波列を各領域へと別々に送り、これは、サンプル領域にわたる完全なラインが問い合わされるまで、順に領域Iから始まって、領域Nで終了する。このプロセスは無期限に繰り返される。例えば、20mmの軟組織を通る200MHzの波列が通過するのに必要な時間は、示される実施例において、約14マイクロ秒である。別の実施形態では、1つを超える領域が同時にサンプリングされ得るが、これは該領域がクロストークを回避するために十分に遠く離れていることを条件とする。位相差の結果として、小さなサンプル領域内を除いて相殺的干渉がある。本質的に、1回の応答は、一度にサンプルの1つの領域から受信される。送信機は製造ラインの上にあって、受信機は製造ラインの下にあり得るか、送信機が製造ラインの下にあって、受信機が製造ラインの上にあり得る。
【0068】
典型的に64または128の多数のトランスデューサーが、同じ物理的サイズの位相アレイで使用されてもよく、このセットアップは、医用超音波アプリケーションに類似しており、類似した解像度および感度を有している。
【0069】
別の実施形態では、外向き波列の振幅、位相、または周波数は、一時的な情報を符号化するために調節され得る。トランスデューサーアレイが時間位相の遅れにあるときに、各トランスデューサーは、Hブリッジなどのスイッチング回路、または類似した論理プロセッサーによって制御されたその電力変換器を有する。
【0070】
データ処理
スペクトル測定および超音波測定からの信号は、欠陥の有無を推論するために従来の統計モデルを使用するデータ処理装置に送信される。供給された情報は、検出器からの特定波長での振幅、および飛行時間とともに音響振幅を含む。
【0071】
光振幅は、多変量解析にさらされたときに絶対値として使用され得る。光振幅が、平均中心化され、標準偏差に正規化されることが好ましい。振幅は、特定の閾値未満である(即ち、サンプルの部分が存在しない)場合、処理されない。サンプルに対する振幅の平均は、5回の横断走査のために得られ;この数字は、検出器に依存して、実際には変動し得る。この平均は、その後、電流走査の振幅から減算され、平均中心化した振幅が得られる。その走査に対する標準偏差が、その後計算され、平均中心化した振幅が標準偏差で割られ、平均中心化した正規化された振幅が得られる。これは、サンプルの高低差を考慮している。平均中心化した正規化された振幅、a’は、式;a’=(a-m)/sによって得られ、式中、aは測定された振幅であり、mは平均であり、およびsは標準偏差である。
エッジ振幅は、データ処理装置によって、直接および対角線上に当接している、8つの隣接領域から試験された領域まで特定される。理論上、これらは、その後、試験された中心振幅から隣接した周辺振幅までの勾配に関して比較され、勾配がノイズ閾値分だけ標準より大きいときに、エッジおよび従って骨の存在を検出する。
【0072】
水性の場合、各領域に対する各波長で1のスペクトル振幅があり、一方で、各領域に対して1を超える音響振幅がある。実際には、いずれのトランスデューサーの実施形態が使用されても、音響振幅は飛行時間に対してプロットされ、5つの結果が出る可能性がある。第1に、超音波は、サンプルなしで領域へと放射され、減衰しながらサンプリング領域の対向面に単純に反射し得る。第2に、超音波は、準同次音響インピーダンスを有するサンプル領域に当たり得る。この場合、サンプルの上面からの後方散乱波、サンプル塊による弱散乱、サンプルの底面からの別の後方散乱波、およびサンプルチャネルの底面からの最終的な散乱となる。事例3は、塊よりも高い音響インピーダンスを有する上面の小粒子が、上面から散乱された波の振幅を増加させること以外は、事例2と同じである。事例4は、小さな高インピーダンス粒子が、底面上にあり、その反射の振幅を増加させること以外は、事例3と同じである。事例3および4では、増加した散乱は、欠陥の存在を判定するために光学データと一緒に使用される。事例5は、高インピーダンス粒子が上面と底面との間にあること以外は、事例2と同じである。この場合、上面の信号の受信と底面の信号の受信との間の中間的な時間で追加の散乱信号がある。非水性の場合では、音速が骨においてより速いために、骨の存在は、伝送波の到着時間を変動させる。
【0073】
主成分分析(PCA)、ニューラル・ネットワーク(NN)、線形判別分析(LDA)、部分最小二乗(PLS)および類似したアルゴリズムなどの、多変量解析はすべて、骨片が存在する確率を推論するために使用され得る。光学測定から欠陥の存在を推論するために、2つの一般法が使用される。第1に、波長に応じて受信した信号の差に基づいて、個々のピクセル内に欠陥が存在する確率を割り当てることが可能である。第2に、ピクセルに対応する領域の欠陥の確率は、エッジを検出するためにピクセルを周辺ピクセルと比較することによって計算され得る。エッジは、骨の存在を暗示している。この検出は、直接的な勾配計算、Sobelのマスクの使用、または振幅の変化率(勾配)を引き出すために隣接した振幅を比較する、他のエッジ検出アルゴリズムを用いて行われる。より大きな勾配は、より高いエッジおよび欠陥の確率に相当する。実際に、各波長に対する8つの隣接する振幅は、各波長に対するエッジの確率振幅を生成するために、中心振幅と組み合わせられる。エッジの確率振幅は、較正のための固有ベクトルまたは操作のための固有ベクトルの射影を計算するために使用されるデータベクトルに含まれている。基準点に相対的な時間に応じた超音波信号は、データベクトルに含まれている。含まれる骨によってもたらされたパターンは、異なるが、直接的な物理モデルでモデル化するのは困難である。統計モデルは、欠陥が測定のすべてに基づいて小サンプル内に存在する累積確率を計算する。具体的には、波長依存性、エッジ確率、および表面反射に相対的な時間に応じた音響帰還は、共通データベクトルにロードされ(loaded)、直交の較正ベクトルのセットへのこのデータベクトルの射影が計算される。必ずしもではないが、データは、平均中心化され、各測定の標準偏差によって正規化されることが好ましい。例示目的で、PCA(主成分分析)を実施するための一般法は、本明細書で概説される。PCA方法では、基準ベクトルのセットは、固有ベクトルであり、その各々は、主成分のn次元空間について記載している。固有ベクトルと固有値のセットは、多変量解析(PCA)の慣例によってデータベクトルの較正セットから生成される。基準セットにおけるデータベクトルは、骨片を有するサンプルのセットおよび骨片のないサンプルのセットを表わす。各母集団内の自然変動が十分に表わされるように、各セット中のサンプルの数が選択される。分散行列が計算され、固有ベクトルと固有値は、分散行列を対角化することによって得られる。データベクトルが次元mのデータベクトルである場合、m固有ベクトルおよびm固有値がある。3の波長が測定される場合、3の振幅+24のエッジおよびm=27であり、音響測定が含まれる場合には、もっと増える。特有の固有値に対応する固有ベクトルはすべて、直交している。固有値が縮退する可能性があり、その場合、2つ以上の縮退した固有ベクトルのうちのいずれか1つが、固有値を表わすために使用される。各固有ベクトルによって表わされるサンプル分散は、関連する固有値の大きさに比例する。通常、変動の>99%は、最大の対応する固有値から最小の対応する固有値の順で、PC1、PC2、PC3などと呼ばれる最大の2~6の固有ベクトルによって表わされる。サンプル分散は、各データベクトルのドット積をとることによって縮小された次元ベクトルのPC空間へと射影され得、2~6の固有ベクトルの各々は、最大の固有値に相当する。ドット積は、各主成分の固有ベクトルに沿った元のデータベクトルの射影を与える。新しいベクトル空間はn次元であり(通常6未満であり、ほとんどの場合、約3のn)、ベクトルはすべて直交している。元のデータベクトルが、平均中心化され、標準偏差によって正規化されている場合、固有ベクトルの単位は標準偏差であり、これは、PC空間中のデータの解釈に好適である(必ずしもではない)。皮膚、骨、筋肉、脂肪、軟骨などに対応する較正ベクトルは、PC空間の異なる領域に集まる(cluster)。各組織タイプの分布の座位は、座位からの距離の増大の確率と一緒に、モデル化される。システムに未知のもの(unknown)が提供されるとき、データベクトルは、PC空間へと射影され、各組織タイプに対する確率を生成するために各組織タイプに対するモデルと比較される。サンプル領域に対する診断は、最も高い確率を有する組織タイプである。骨片を有する較正セット中のデータベクトルは、骨片のない較正セット中のデータベクトルからの主成分空間の異なる領域へと射影される。データベクトルのいくらかの変動が留意されるが、実際、それらは、曖昧さ(ambiguity)がほとんどない全く異なる群に分類される。主成分のプロットが利用可能であるが、明確な解釈のために異なる色が必要とされる。
【0074】
固有ベクトルを較正するために、骨、軟骨、脂肪、食肉、および皮膚の標準サンプルが使用される。一般に、汚染物質は、どの較正セットにも対応しておらず、際立っている。骨片が主成分空間の各小領域に対して存在する確率を計算するために、標準的なベイズの(Bayesian)統計的方法が使用される。主成分空間中への任意のデータベクトルの射影は、データベクトルが骨片の欠陥を表わす確率を判定する。計算された確率が閾値を越える場合、プロセスの流れから欠陥部分を取り除くために使用され得る論理システムによって、信号が生成される。欠陥部分は、随意に、トリムラインを介して再び作動され、その後、再検査され得る。他の波長およびアルゴリズムは、同じ最終結果に到達し得る。
【0075】
システムの利点は、それが鶏の胸肉中の表面および埋め込まれた骨の両方を検出することにある。食品サンプルの表面は大規模にかなりでこぼこしているかもしれないが、通常、数ミリメートルの規模の変動で、大きくは変動せず、そのため、反射の照度および平均角度はほぼ一定である。この近似値内で、閾値を超える反射強度の勾配の変化は、組成の変化を暗示し、エッジを検出するために使用され得る。エッジ検出は周知であり、既製の処理ソフトウエアが市販で入手可能である。エッジが検出されると、アルゴリズムは、他の近くのエッジを探索し、勾配の大きさ、エッジの長さ、および解析領域内のすべてのエッジ相互の幾何学的形状に基づいて、欠陥の確率を計算する。実例として、骨は、しばしばエッジ間の特徴的な間隔とほぼ平行なエッジを有する。鶏肉におけるいくらかのmm長さのおよそ2mm離れた平行なエッジの検出によって、アルゴリズムは、鶏のあばら肉の存在の高い確率を生成する。
【0076】
検査される製品は、大気中にあり得る。この事例では、使い捨ての透明フィルムは、光学系をサンプル領域から分離する。フィルムは、サンプルと検出器との間の明視界を維持する速度で2つのローラー間でゆっくり巻かれ得る。光学検査装置が、サンプルの各表面に面するように位置付けられ得ることが理解される。好ましい実施形態では、1セットの光検知器がサンプルの上面に面し、第2セットの光検知器が底面に面する。好ましくは、サンプルは透明液体溶液に浸され、これによって、光学走査中に正反射率が最小限にされるか又は正反射が除去され、空気界面よりも効果的に音波がサンプルへと結合される。透明液体溶液は主として水であり得る。本実施形態では、浸水された澄んだ窓は、光学系をサンプルから分離する。澄んだ窓は、好ましくは摩耗を防ぐためにくぼみが作られ、バイオフィルムの蓄積を防ぐために定期的に洗浄される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明による第1方法の概略的な側面図を示す。
【
図1A】
図1の側面図に類似した本発明による第2方法の概略的な側面図を示す。
【
図1B】
図1の側面図に類似した本発明による第3方法の概略的な側面図を示す。
【
図1C】
図1の側面図に類似した本発明による第4方法の概略的な側面図を示す。
【
図2】本発明による更なる方法の概略的な側面図を示す。
【
図3A】装置の別の実施形態の線図の側面図を示す。
【
図4】ミリ秒での時間に対する振幅/標準偏差として測定された振幅のプロットを示す。
【
図5】波長に対するものとして測定された反射率のプロットを示す。
【
図6】波長に対するものとして測定されたスペクトル分離のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1では、装置(10)が提供され、ここで、食肉サンプル(20)がコンベアベルト(28)上で運ばれ、その上部の支持する流れ(run)が、金属板(22)上で運ばれている。電子制御部(32)によって駆動された音響トランスデューサー(26)は、金属板(22)に堅く取り付けられ、グリース(図示せず)で音響的に結合されている。金属板(22)は、水溶液(図示せず)の薄層を有するコンベアベルト(28)と音響的に結合されている。コンベアベルト(28)は、水溶液(図示せず)の薄層を有するベルト上で運ばれる食肉サンプル(20)と音響的に結合されている。開口部(24A)がプレート(24)に設けられ、これによって、トランスデューサー(26)によって放射され、サンプル(20)を通って音響トランスデューサー(30)に送られた信号の送信が可能となる。プレート(24)は、間接的な音響じょう乱(エコー)が音響トランスデューサー(30)を侵害するのを防ぐ。音響トランスデューサー(30)によって受信された信号は、電子制御部(32)に移され、それによって増幅される。筐体(48)は、システム(10)を囲み、周囲光が装置(10)に入るのを防ぐ。
【0079】
コンベアベルト(28)上のサンプル(20)の照明は、LED(52)、(54)および(56)によってもたらされる。LED(52)は570nmであり、LED(54)は630nmであり、およびLED(56)は720nmである。拡散器(58)は、LEDの前に位置し、均一な照明を提供する。LED(52)、(54)および(56)は、点滅され、各波長での反射画像が、カメラ(50)によって集められ、電子制御部(32)に送信される。音響信号および光信号は、データベクトル中で組み合わせられ、電子制御部(32)によって骨片の存在に関して分析される。
【0080】
図1Aでは、
図1に類似した装置が示される。本実施形態では、開口部(24)は近赤外放射に対して透過的であり、広帯域の近赤外線源(62)は食肉サンプル(20)を照射する。スペクトルカメラ(50A)は、およそ0.5mm幅のサンプル領域を選択するためにスリット(図示せず)を含んでいる第1面において反射された近赤外放射の画像を形成する。スリットを通る近赤外放射は、コリメートされ、回折格子またプリズム(図示せず)によって
分光され、InGaAsまたはマイクロボロメーターアレイ上に画像化される。スペクトルデータは、電子制御部(32)に送信される。音響信号および光信号は、データベクトル中で組み合わせられ、電子制御部(32)によって骨片の存在に関して分析される。
【0081】
図1Bでは、さらに類似した実施形態が示され、ここで、食肉サンプル(20)は、金属板(22)に支持されたコンベアベルト(28)上で運ばれる。本実施形態では、ローラー(66)は、懸架システム(図示せず)上に取り付けられ、該懸架システムは、ローラーの外側円筒表面(66A)の食肉サンプル(20)との接触を維持し、食肉サンプル(20)に圧力を加える。ローラー(66)には液体(68)が充填され、これによって、ローラー(66)とローラー(66)内部のトランスデューサー(26A)との間の音響的且つ光学的な結合が提供される。また、光源(52A)、ビームスプリッター(34)およびカメラ(50B)が、ローラー(66)に位置付けられ、その結果、光源(52A)からの照射が、ビームスプリッター(34)および透明壁(66A)を通って配向され、反射光が同じ経路に沿ってビームスプリッター(34)へと進み、ここで該ビームスプリッター(34)は、反射光をカメラSOBに配向するように角度が付けられている。音響信号および光信号は、データベクトル中で組み合わせられ、電子制御部(38)によって骨片の存在に関して制御システム(32)により分析される。
【0082】
図1Cでは、断面図で更なる類似した実施形態が示され、ここで、食肉サンプル(20)はコンベアベルト(28)上に載置されている。金属板(22)は、水溶液(22C)を保持するためにエッジを上に向けている。トランスデューサーアレイ(30A)が、金属板(22)に取り付けられている。
【0083】
図2では、更なる類似した実施形態が示され、ここで、検出装置(10)は、筐体(48)、カメラ(50)、LED(52)、(54)および(56)を有する。LED(52)は570nmであり、随意のLED(54)は630nmであり、およびLED(56)は720nmである。LEDは、カバープレート(64)の上に位置する関連する拡散器(58)を有する。空気浄化器(Air purgers)(66)および(68)は筐体(48)内の装置(10)から加熱空気を除去する。サンプル空間(20S)中の装置(10)の下には、コンベアベルト(70)、動作制御センサー(72)および(74)、ならびに合否判定ゲート(76)がある。また、鶏肉サンプル(20)が示される。
【0084】
幾つかの場合では、570nmおよび720nmのLEDのみが利用される。このシステムは、骨、軟骨、脂肪、皮膚、食肉/筋肉、および膜に対する非常に強い反射率を有する、反射された振幅を生成する。浸水は正反射を除去する。いくつかのサンプルを、実効反射率を確かめるために流した(run)。第3の随意の630nmのLEDがあることで、検出を増強させることができる。比較されるデュアルLEDセットアップからのコンピューター化された結果に対するサンプルの目視比較は、トリプルLEDセットアップからのコンピューター化された結果と比較として満足できるものではなかった。630nmを使用する正規化は、より優れた結果をもたらした。
【0085】
図3では、装置(10)の別の実施形態が示され、ここで、レーザー(90)は、ライン走査発生器(linescan generator)(92)を介して光を供給し、これによって、円形レーザービームを、横の線形ビームまたは横の線形ビームのセットへと変換する。ステアリングミラー(94)は、ビームを窓(98)に通して水または液体(96)に浸された鶏肉サンプル(20)に送るビームスプリッター(100)へとビームを転換させる。窓(98)は、気泡を回避するために液体(96)の水位より下でくぼみが作られている。反射されたラマン散乱光は、戻って窓(98)、ビームスプリッター(100)およびフィルター(102)を通り、振幅測定のためにフーリエ変換分光器(104)へと進む。レーザー(90)の波長で光を遮断するために、フィルター(102)が選択される。音響トランスデューサー(106)は超音波を放射する且つ受け取る。
【0086】
図3Aでは、
図3の実施形態に類似した装置(10)の別の実施形態が示され、ここで、鶏肉サンプル(20)は、液体(96)に浸されている。サンプルは、LED(52)(570nm)、LED(54)(630nm)およびLED(56)(720nm)によって順に窓(98)を通って照射される。入射光は、拡散器(58)によって均質化され、窓(98)を通過する。反射光は、窓(98)を通って戻り、振幅測定のためにカメラ(104)によって画像化される。音響トランスデューサー(106)は超音波を放射する且つ受け取る。
【0087】
図4では、ミリ秒での時間に対する標準偏差で測定された振幅のプロットが示される。
およそ50マイクロ秒の強い反応は骨を示す。
【0088】
図5では、骨、筋肉、膜、脂肪および軟骨として特定された鶏の胸肉の領域に対する平均反射率スペクトルが、420nm~720nmの範囲で与えられる。示されるスペクトルは、同じ組織タイプのピクセルを平均化し、各波長での平均を630nmでの平均で割ることによって得られた。正規化は、鶏の胸肉の不規則な表面によって引き起こされた変形を補う。各組織タイプは、異なる平均スペクトルを有する。
【0089】
図6では、骨と筋肉との間のスペクトル差が、420nm~720nmの範囲での標準偏差の合計によって正規化されて示されている。このプロットは、筋肉および骨組織の区別のための各波長の相対的な診断値を示す。絶対値のより大きな比率は、個々のピクセルのレベルで筋肉と骨を正確に区別することのより高い確立を示す。特定の波長に対する組織タイプのためのピクセル母集団の小さな標準偏差(低い変動性)は、診断目的でその波長の有用性を増大させる。筋肉および骨を統計的に区別できない最小値の630nmあたりが、正規化のための有用な基準点であることに留意されたい。